2009/04/25

ダイヤには大事なCが4つあります

ボクも婚約して幸せな結婚準備活動をしているのだけど、その中でも二人で最近よく話しているのが婚約指輪。
一生に一度のものだし、かなり大きな買い物だから、じっくり選んで十分に納得のいくものを選びたいよね。
で、最近デパートの中をうろうろし、はしごもして勉強しながら下見して回っているのだ。
婚約指輪の石といえば、純粋無垢な無色透明で、永遠の象徴とも言われるダイヤモンド。
化学的な性質はわりと知っていたけど、宝飾品としてのダイヤモンドというのも奥が深いねぇ。
というわけで、せっかく勉強したので、記録に残しておくことにしたのだ。

ダイヤモンドはいわずとしれた炭素の結晶で、地下深くで長い年月をかけ、高温・高圧下で作られるのだ。
でも、宝飾品に使われるような透明なきらきら光るダイヤは数%に満たないそうで、あとは黄色や黒などの色のついたもの。
ピンクやブルーはそれりに宝飾品として価値が認められるけど、それ以外はドリルの先端やカッターの刃など工業的に使われるのだ。
紫外線レーザーを出す半導体なんかはダイヤモンド薄膜を使っていたりするよね。

ダイヤモンドは漢字では金剛石で、この世でもっとも堅い天然結晶と言われるけど、なぜかそれをカッティングできるのだ。
でも、堅いというのと丈夫というのは違って、堅いというのは他の物質とすりあわせたときにどっちに傷がつくかで、ダイヤモンドは結晶構造ががっちりしすぎていているので実はもろいところもあるのだ。
鉄の板に挟んでハンマーでたたくと簡単に割れるんだよ。
なので、高速で回転させたグラインダーなどを使うと削ったりすることもできるというわけ。
細かい目のものでこすれば表面を磨いてぴかぴかにすることもできるのだ。

ダイヤモンドも炭(グラファイト)も同じ炭素からできているものだけど、ダイヤモンドがかっしりと結晶構造になっているのに対し、グラファイトはシート状に炭素原子がつながっているイメージなのだ。
ダイヤモンドの場合は、イスのように折れ曲がった六角構造(シクロヘキサンの安定な構造)が正四面体のように面を形成して結晶構造が作られているんだ。
実際に原子の大きさなどから計算してみても、隙のないがっしりした構造らしいよ。
他にも、炭素には炭素原子が60個サッカーボール状に結合したフラーレンなんていう構造もあるし、グラファイトのシートがまるく円筒状になって続いていくカーボンナノチューブなんてのもあるけど、これらは形が違うだけでかなり性質が変わってくるんだよねぇ。
不思議なものだよ。
でも、どれも熱により酸素と結合して燃焼して二酸化炭素になってしまうというのは同じなのだ。

話はダイヤモンドにもどって、いよいよ宝飾品としてのダイヤモンドの質の話。
宝飾品として使う場合は4つの「C」で等級分けされているのだ。
つまり、Carat:カラット(重量)、Color:カラー(色)、Clarity:クラリティ(透明度)、Cut:カットがそれなのだ。
カットだけはいくらでも工夫できるわけだけど、それ以外はその石の持つ本来の性質によるところが多いんだよね。
で、それぞれで等級があって、その組み合わせで価値が決まってくるのだ。

カラットが一番わかりやすくて、これは単純に石の重さ。
ある程度カットしないと宝飾品としては使えないので、まわりをそぎ落として宝石として正味使える分の重さということなのだ。
一般には大きさのように思われているけど、重量なんだよね。
同じ重量でも、少し扁平な形で縦方向に薄くすると平面的に広がって大きく見えたりするのだ。
また、宝石として使う場合、どうしても下端をとがらせるので、平面的な大きさとして半径は大きくなったように感じなかったりするらしいよ。
科との都合もあるけど、同じ重量なら大きく見せるこつがいるのだ。

カラーはまさに色で、D~Zまであって、Dは完全に無色透明、Zはほぼ黄色なのだ(トパーズくらいの色だよ。)。
一般には、Jくらいまではほぼ無色と言われているけど、Dと並べてみると、素人でもGだと黄色く色づいているのがわかるよ。
ま、石にもよるところはあるし、照明の具合もあるけどね。
普通の人が見てF以上なら透明にしか見えないので婚約指輪なんかだとF以上が進められるよ。
石を大きくしようとするとGもあるけどね。
ちなみに、ピンクダイヤやブルーダイヤはこれとは別の観点で色むらやそもそもの色の入り方のきれいさなどで評価するんだよ。
工業的に使われている人工ダイヤなんかだと、真っ黒なものもあるんだって。
素人にはもはやダイヤモンドとはわからないのだ・・・。

クラリティは結晶としてのきれいさで、傷の全くないものから、ほぼ見えないような傷のあるもの、素人にも傷のあるのがわかるものなどグレードが分かれるのだ。
お店で見かけることはないけど、最高はFLでフローレス。
これは全くの無傷だよ。
次のIFのインターナル・フローレスもほとんど見かけないけど、これは表面にわずかでも傷のあるもので、専門家でもそれはほぼ見つけられないそうなのだ。
実際には表面にはどうしても傷がついてしまうから、これが実質上最高のランクだよね。
それに次ぐのがVVS1やVVS2で、専門家が10倍のルーペで丹念に調べてやっと見つかるような微少な内包物や傷があるもの。
その内包物や傷が少し大きくなるとVS1やVS2になるのだ。
VS2だとルーペを使うと素人でも見つけられることがあるみたいだけど、それにしても見つけるのは非常に困難なので、これ以上が通常婚約指輪に使われるのだ。
その下はS1、S2となって、ぱっと見ておやっと思うような微少な傷があるもの。
最下級がI1、I2、I3で、これだと肉眼で内包物や傷が確認できるのだ。

ここで言う内包物というのは、結晶構造の崩れによる泡だったり、たまたままざった別の鉱物だったり、同じ炭素でもグラファイトの黒い点だったりするのだ。
グラファイトの混入の場合はすぐに見つけやすいので嫌われるんだよね。
傷にもいろいろあって、表面上もともとかけているチップと呼ばれるようなもの(元の結晶の形からどうしてもうまく切り出せず、一部かけることがあるのだ。)や、人工的につけられた傷やかけなんかだよ。
指輪のデザインにもよるけど、そこにちょうど「爪」があたるようにしたり、下にしたりして隠されることもあるのだ。
石の大きさのわりに安いものはそういうものが多いそうだよ。

で、ここまでのカラット、カラー、クラリティの3つの指標でトレードオフして石を決めることになるのだ。
とにかく色がきれいで傷がないものがよいと思えば、同じ値段だと石は小さくなるし、sろうとにはわからない程度の色つきや傷なら無視してもよい、ということなら大きくなるんだよね。
その辺は好みが出てくるけど、それなりに石の大きさを求める人が多いので、EかFでVS1かVS2というのが多いみたい。
お店にはDの大きなもののVVS1とかも飾ってあるけど、それだと100万円を超えていたりするよ!

最後がカットで、これは熟練した職人なら最高のものを用意できるのだ。
でも、もともとの石の形が悪いとそうもいかないので、そういうのはより小さく砕いて脇石に使ったり、ハート型や卵型などのちょっと趣向を凝らした形にしたりするのだ。
でも、ダイヤモンドといえばあの独特の形を思い浮かべるよね。
あれはブリリアントかとという58面体で、もっとも輝いて見えるように工夫されたものなんだって。
カットのグレードにはエクセレント、ベリーグッド、グッド、フェア、プアーのグレードがあって、通常はエクセレントなのだ。
安いものだとたまにベリーグッドがあるらしいけど。

これは輝き方の違いで、ダイヤモンドは屈折率が大きいので表面からはいた光は結晶中で全反射されて表面から出てくるんだけど、それが全部上方から出てくるようにカットされているのがエクセレント
なので、まわり中の光を集めて輝くのだ!
これが少しずつずれるとグレードが落ちていくわけだけど、ベリーグッドだと少し照明を当てただけで違いがわかるそうだよ。
お店に基本的においていないのでボクはまだ見たことがないのだけど。
どんなによい石でもカット次第でダメになるので、これも重要な要素だし、何より唯一人の手で何とかできる部分なので妥協がでいないところなのだ。

というわけで、ダイヤモンドっていうのも奥が深いものだよね。
でも、よくよく話を聞いていると、むかし化学や地学の授業で聞いたような話も混じっていてなかなか興味深く聞けたのだ。
そういう目で宝飾品としてのダイヤモンドを見てみるというのもなかなか楽しいかもよ。

2009/04/18

野菜ラーメンとは違うぜっ

最近ちょっと体重が増えてきたので、食事に気を遣っているのだ。
それでも、おかしやおやつを食べてしまうからなかなか減らないんだけど・・・。
で、特に気をつけているのは、あんまり脂っこくないもの、炭水化物の少なめのもの、そして、野菜が多いもの。
やっぱり量をそれなりに食べたいし、かつ、食物繊維をたくさん摂取すると健康にもよいので、野菜を食べたくなるんだよね。
そんなとき、実は気軽に食べられるのがタンメン。
味もあっさりしているし、なかなかよいのだ♪

実はこのタンメン、中国にはない料理で、日本オリジナルなんだとか。
ラーメン自体も中国にはないけど、似たような料理があってその日本風アレンジだったわけだけど、タンメンばかりは似た料理もないようなのだ!
中国で「湯麺」というと、スープと麺のみのシンプルな麺料理で、日本のタンメンとはまったく関係ないんだって。
しかも、関東ではよく食べられるけど、中部以西ではマイナーな麺料理なだとか。
関西では知っている人も少ないそうだよ。
この地域的偏りはおどろきだよね・・・。

タンメンは塩味のラーメンに野菜炒めがのっているイメージだけど、そうではなくて、それは野菜ラーメンなのだそうなのだ。
タンメンの場合は、キャベツ、もやし、ニラ、キクラゲ、豚肉などの野菜炒めと同じような材料を、やっぱり野菜炒めのように塩味をつけながら炒めるんだけど、この先が違うのだ。
スープの入った麺の上にのせてしまうと野菜ラーメンで、この炒めた野菜に鶏ガラのスープを加えて煮たてたものを麺の上にかえるのがタンメンなのだ。
つまりは野菜とスープの一体感が違うわけ。
この作り方自体は長崎ちゃんぽんなんかにも似ているけど、ちゃんぽんの場合は麺を入れてさらに一緒に煮込むのだ。
スープの多い塩味焼きそば(スープパスタの中華版)とも言えなくもないのだ。

このタンメン、発祥も謎で、東京か横浜あたりで生まれただろうと言われているものの、いつどこで生まれたのかがわからないんだって。
いつの間にか広まっていて、それがどこの中華屋さんでも見られるくらい広まったということなのだ。
最初に作られたのは戦前とも戦後とも言われているんだよね。
長崎ちゃんぽんは明治時代には生まれていたというから、それが関東に伝わってきて、ラーメンに使う中華麺で作るようになったのかも。
ちゃんぽん麺は太いので似ても大丈夫だけど、ラーメンの縮れ麺だと煮込むのに向いていないので、野菜たっぷりの具入りスープをかけるようになったと考えると合理的なのだ。
ま、実際はどうかわからないけどね(笑)
でも、それが発展して、味噌味のものが出たり、もやしそばのようなバリエーションが出たりと広がっているんだから、おいしい料理として受け入れられたことは確かなのだ。

で、これとは対照的に、万人受けしない野菜たっぷりの麺と言えば三田が発祥のラーメン二郎。
ラードたっぷりの醤油味の濃厚なスープ、大量の麺と野菜が特徴で、野菜たっぷりのラーメンではなく、もはや「二郎」という食べ物とも言われるくらいなのだ。
三田本店には長い行列ができているし、他の支店もけっこう人が並んでいるよ。
好きな人にはたまらない大食い料理なのだ。
似たような麺を出す二郎リスペクトのお店もあるんだよね。

もともとはお金のない学生のために安い値段でたっぷり食べてもらおうという発想で作られたらしいけど、そこから独自路線を歩むことになったみたいだよ。
その歴史については、かつて三田本店の親父さんにインタビューしてまとめられているのだ。
このサイトで読めるよ。
知れば知るほど興味がわくんだけど、ボクは未体験なんだよね。
一度挑戦しようかな?

2009/04/12

ついだりさしたり

東京では桜も散ってきていて、これからはいよいよ八重桜の季節になるねぇ。
で、その後は街路樹としてもたくさん植えられているツツジがたくさんの花をつけるよね。
でも、実はこれらの植物は種をまいて育てているわけではなくて、おなじ遺伝情報を持つ植物個体を増やす技術のクローン技術で増やされているのだ!
しかも、それは」今始まったことじゃなくむかしから行われていたんだよ。
けっこう農業技術って奥が深いんだよね、ということで、今回はこれらの方法について調べてみたのだ。

日本の桜としておなじみのソメイヨシノは江戸時代に駒込近辺の染井村で生まれたのだ。
当初はヤマザクラの一種と思われていて、ヤマザクラの名品・吉野桜にかけて染井吉野と命名されたのだ。
でも、実際はヒガンザクラの一種だったんだけどね(葉が花の後に出てくるんだよ。)。
でも、このソメイヨシノは園芸品種として作成されたので、基本的には最初の一本しかないんだよね。
しかも、ソメイヨシノはごくごく小さな実はなるんだけど、そこから芽の出る種は取れないのだ(>_<)
というわけで、「接ぎ木」で増やしていったんだ。

これはよく見かける八重桜も同じで、八重桜は百人一首に「いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな」と詠まれているように、もともとは奈良の名物として知られていたもので、それが全国に広まっていったんだ。
それがナラノヤエザクラという品種だよ。
でも、八重桜は、重弁化といって花びらやおしべなどが増えてしまう突然変異なんだけど、たいていはほとんど芽が出る種ができないのだ。
なので、ソメイヨシノと同じように接ぎ木で増やしていったんだ。
というわけで、すでに平安時代には接ぎ木の技術はあったんだよね。

野菜や果物でも接ぎ木は行われていて、一般にスイカやメロンはより丈夫なカボチャやユウガオ(カンピョウにするやつだよ。)に出てきたフタバを接ぎ木するんだよ。
こうすると病気にも強くなるのだ。
リンゴとかナシの場合も新品種ができると、そこから種を取って・・・、とやると時間がかかるし、どうしても父方と母方の遺伝情報が混ざってしまって元通りの品種になるとは限らないので、クローン技術で同じ個体を増やす方が効率的なわけ。
なので、そうやって広めていくんだよ。

接ぎ木の場合は、より丈夫な木や草の上の部分を切って、そこに接ぎ木するものを差し込むのだ。
このとき斜めに切ったものをさす、とか、さした後しばらく布を巻いておいてそこをしめらせておくとか、いろいろ技術がるんだよ。
桜の場合は他の丈夫な桜の木の太い枝を先から落として、そこにソメイヨシノの枝を差し込むんだ。
スイカやメロンは、カボチャの地上から出ている根元の部分から切ってしまって、そこにフタバを接ぐのだ。
接いだ部分はいわるキメラになるんだけど、先の方まで融合しないので、花や実はもとの品種のままなんだよ。
でも、根からの水の吸い上げや病気への強さは向上するのだ!
ちなみに、人間の臓器移植などと違って、植物は免疫反応・拒絶反応がないのでこれができるんだよ。

もっと簡単なのは「挿し木」。
こっちは土や砂にそのまま切った枝や茎をさすだけ。
すると、切り口の部分が少しふくらんで、そこから不定根というのが生えてくるのだ。
水にさしておくだけで根が生えてくることがあるよね。
少しふくらんでくるのは、その中では細胞が脱分化して未分化の細胞になり、増殖するとともに新たに根や茎などの他の細胞に分化していくのだ。
この方法で増える代表選手はイモだよね。
ジャガイモは根がふくらんだものだけど、サツマイモやレンコンは地下茎がふくらんだものなので、まさに茎を植えているようなものなのだ。
パイナップルやバナナも挿し木でやっているそうで、サツキやツツジなどの園芸植物も挿し木で増やしていて、どのあたりから切るか、いつくらいに挿し木にするかなどでかなりスキルがあるみたいだよ。
これも種で荒廃させるとせっかくできた園芸品種がそのまま保存できないので、挿し木でクローン増殖させるのだ。

というわけで、けっこう身近なところに接ぎ木や挿し木は多いみたいだねぇ。
単に種をまけばいい、というわけではないのだ。
そうやって周りの植物を見回してみるのもおもしろいかもしれないのだ。

2009/04/04

当たるも八卦、当たらぬも八卦?

北朝鮮の衛星実験が大きな話題になっているけど、今日はついに「ミサイル発射」の誤報さわぎまであったのだ。
すぐに官房長かが誤報だったと発表したようだけど、かなり混乱があったみたいだね・・・。
その前には官房副長官からミサイル防衛は迎撃できない、なんてきわどい発言もあったし、今、ミサイル防衛が非常に大きな注目を集めているのだ。
というわけで、今回はミサイル防衛について調べてみたよ。

ミサイル防衛の構想はなんと1960年代、米ソの冷戦時代にさかのぼるのだ。
原子力爆弾、水素爆弾ができた後、これにロケット技術が加わってできてのが核ミサイル。
宇宙空間を通過して世界の端から端まで届く大量破壊兵器が開発されてしまったのだ。
で、これを防ごうという発想から出てきたのがミサイル防衛の考え方だよ。
ようは、核ミサイルが着弾する前に無効化しようというわけで、そのために検知する技術と迎撃する技術が開発されることになるのだ。

レーガン大統領時代の戦略防衛構想(SDI:Strategic Defense Initiative)は、宇宙空間を飛行する核ミサイルを人工衛星に搭載したレーザー兵器やミサイルで破壊しようとするもので、スターウォーズ構造なんて呼ばれたよね。
宇宙空間に機雷のように配備される小型のミサイルのブリリアント・ペブルなんてのもあったし、そのまま機雷のように触れるものを巻き込んで爆発する宇宙機雷のスペース・マインなんてのもあったのだ。
でも、開発に巨額な投資が必要であることや、宇宙空間にそういう兵器を置く是非もあってこれはキャンセルされたんだよね。
最近よく話題になっているスペースデブリを大量に発生させる可能性もあるんだよね。
で、そのレーガン大統領のあとを継いだパパ・ブッシュの時代になると、今のミサイル防衛構想が始まるんだよ。
日本では、平成10年に、ミサイル防衛に関する日米共同技術開発を行う方針が閣議決定されたのだ。
ここから防衛省/自衛隊が我が国のミサイル防衛の枠組みである、弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)システムの構築が始まったのだ。

現在のミサイル防衛は三段階にわかれているのだ。
ミサイルが発射されて宇宙空間に出るまでに打ち落とすブースト・フェーズ、宇宙空間を弾道飛行している間に打ち落とすミッドコース・フェーズ、最後再突入から着弾の間に打ち落とすターミナル・フェーズがあるんだ。
ブースト・フェーズでは、ジャンボ機の先端にレーザー兵器を搭載したABL(Airborne LASER)や弾頭のついていない地対空ミサイル(運動エネルギー兵器)で迎撃するんだ。
日本では航空自衛隊がABLに関する基礎的な技術開発を進めているけど、これって発射されたのをすぐに検知してそこまで駆けつけないといけないから、ほぼ不可能なんだよね・・・。
いくら発射段階では速度は速くないとは言え、地対空ミサイルをピンポイントで衝突させるのも難しいのだ(>_<)

一番有望視されているのがミッドコース・フェーズの迎撃で、これは弾道ミサイルをぶつけて打ち落とすのだ。
日本でそのために配備されているのがSM(Standard Missile)-3だよ。
弾道飛行の軌跡をあらかじめシミュレーションで予測して、そこに合わせて衝突させるんだけど、ぶつける方のミサイルも高度に制御しないとぶつけられないし、シミュレーションで予測してうまく衝突するように計算するのも大変なのだ。
で、宇宙空間を弾道飛行しているミサイルの速度は音速をはるかに超える超高速なので、官房副長官が言ったように、銃弾に銃弾をぶつけるような感じで、とても大変なのだ。
でも、通常は1発じゃなくて、複数の迎撃ミサイルを発射するので、バックアップはとれているんだよ。
でも、かつて米国が実験したときでもなかなか当たらなくて、かえってその難しさが実証されてしまったのだ。

最後のターミナル・フェーズでの迎撃は地対空ミサイル。
日本で配備を進めているのがPAC-3だよ。
再突入からターゲットへの着弾まではかなり飛行経路も予測しやすいので、弾道飛行中に当てようとするミッドコース・フェーズよりは当てやすい、と言われているんだけど、それでも速いことには変わらないから難しいのだ。
それと、もっと大きな問題があるんだよね。
ターミナル・フェーズで迎撃する場合は、どうしても日本上空で核ミサイルを爆発させることになるので、放射能の影響は防ぎきれないのだ!
放射能のある破片が地上に降り注ぐ可能性があるんだよね。
直接的な被害は防げるけど、間接的な放射能による影響は出てしまうかもしれないんだよね・・・。

というわけで、迎撃するのは相当難しいんだけど、それ以上に大事なのは核ミサイルの発射を検知する方なんだよね。
迎撃は技術が進化すれば当てられなくもないけど、それにはまず発射を速やかに検知して、すぐに迎撃できる体制をとる必要があるんだよね。
日本の場合は、この部分を米国にかなり依存しているので、一部で問題ではないか、と言われているんだ。

平時においては、人工衛星による画像を分析しているんだよね。
ミサイルが発射台に置かれたとか、燃料が注入されているとかいうのは、だいたい米国の偵察衛星や商用のリモートセンシング衛星が撮った衛星画像を分析した結果だよ。
日本でも平成10年に最初のテポドン事件を契機として情報収集衛星(IGS:Information Gathering Satellite)を導入することが閣議決定され、平成14年から運用されているのだ。
内閣情報調査室に置かれた内閣衛星情報センターが運用し、撮像された画像を分析しているのだ。
でも、その画像や分析結果は一般には公表されないので、どの程度わかっているのかもよくわからないんだよね。
確かに米国の商用衛星の画像しか出て来ないけど、やっぱりインテリジェンスの話なので不透明なんだよね。

で、実際に発射されたかどうかを検知するのは早期警戒衛星。
低軌道や超楕円軌道、静止軌道なんかに複数置かれた赤外線監視衛星で、ミサイルが発射されたり、核実験が行われたときの巨大な熱反応を監視しているのだ。
もともと画像でミサイルが配備されているかどうかの情報はあるので、そこで大きな熱反応があればそのミサイルが発射された、ということがわかるわけ。
日本はこの早期警戒衛星を保有していないので、米国に完全に依存しているんだよね。
で、この発射されたという一番大事な情報が米軍経由になるため、初動が遅れるんじゃないか、というのが一部の人が心配していることだよ。

ミサイルの発射が確認されると、今度はその飛行経路を分析することになるのだ。
そのときに活躍するのがイージス・システム。
日本でも「こんごう」などのイージス艦に搭載されているけど、これは大きなレーダーで、Xバンド(8~12GHzの周波数のマイクロ波だよ。)と呼ばれる波長の電磁波で上空を飛行しているものを捕捉するのだ。
その早さや発射情報から、ミサイルを特定し、その飛行経路を予測するというわけ。
ちなみに、イージスというのはギリシアの戦いの女神アテナが全能の神ゼウスから授けられた、あらゆる魔を祓い、攻撃を防ぐというアイギスという防具の名前から来ているんだよ。
FFには「イージスのたて」なんてのが出てくるけど、まさにそれだよ。

で、日本の場合は、イージス艦による捕捉システムを整備するとともに、実際の迎撃手段としてミッドコース・フェーズ用のSM-3とターミナル・フェーズ用のPAC-3の配備を進めているというわけ。
こういうのは使われないにこしたことはないけど、あの国は脅しなのか、本当にやってしまうのかがよくわからないから、牽制の意味も込めてある程度は用意しておく必要があるかも、なんだよね。
でも、当然安いものではなく、多額の税金が投入されるものなので、早くこういうものがなくてもすむ平和な世の中になってほしいものなのだ。