2010/06/26

吹けば飛ぶような?

最近ちょっと困っているのがゴミ捨て。
ボクの住んでいる地域では、可燃ゴミと資源ゴミがメインで、洗ってもとれないような脂などが付着したプラスチックは可燃ゴミになり、洗ってきれいになるプレスチックは資源ゴミ。
当然、ペットボトルや空き缶、ビンも資源ゴミ。
で、はたと困ったのがスプレー缶。
さすがに空き缶とは扱いが違うんだろうけど、と思っていろいろ見ていると、どうも超レアものの「不燃ゴミ」だったようなのだ。
カテゴリはなくなっていたと思ったんだけど、電池や電球、蛍光灯などと並んで、高性能な焼却炉でも燃やせないゴミとして残っているみたい。

で、このスプレー缶、なんで不燃ゴミになるかというと、中に液化ガスが充填されているからなんだよね。
捨てる前にできるだけ中身を空にして、とは言っても、確実に履行されるわけではないので、中身が残った状態で燃やそうとすると缶が破裂して危険なのだ!
むかしは缶に穴を開けて捨ててください、なんて言われた時期もあったけど、ペットボトルでさえラベルをはがして、軽く水洗いをしてという下処理せずに出す人が多いので、それが実行されることは期待できないのだ(>_<)
というわけで、不燃ゴミになっているみたい。

このスプレー缶に入っている液化ガスについては、一時期フロンが問題になったよね。
一番最初は液化石油ガス(LPG)が使われていたようなんだけど、これは圧力をかけると簡単に液状になるし、石油の副産物として入手もしやすいから。
ところが、可燃性のガスなので扱いがむずかしいのも事実。
むかしは殺虫剤のスプレーなんかに使われていたけど、火気厳禁とはいいながら事故があったりしたのだ。
火が近くにあると火炎放射器のようになるからね・・・。

そこで出てきたのがフロンガス。
簡単に液化し、かつ、不燃性、無味・無臭で、人体にも無害というわけで使い勝手がきわめてよかったので一気に広まったのだ。
ところが、そこにも落とし穴が。
フロンは空気中に拡散した後、徐々に上昇していって、上空のオゾンと反応してしまい、有害な紫外線から地上を守っているオゾン層を破壊する性質があることがわかったのだ。
そこで使用が見直され、もともと気をつけて使われるようなところでは可燃性のLPGにもどり、そうでないところは代替フロンと呼ばれるものが使われ始めたんだよね。
ところが、この代替フロンも強力な温室効果ガスであることが判明したので、やはり使いづらいものになってきたんだよね。
で、最近では、もともと空気中にあるような二酸化炭素や窒素、或いはそのままの圧縮空気が使われているみたいだよ。

スプレーの中には、高圧をかけて液化してあるガスが詰め込まれているんだけど、これはノズルから噴射されると一気に常圧にもどされて気化するのだ。
そのとき爆発的に体積が膨張して拡散していくだけ。
ノズルの形状で前方向にだけ広がるように設計されているので、ぷしゅ~と吹き出してくるのだ。
このとき基本的には断熱膨張となるので、スプレーから出てくるガスは冷たいのだ。
最後にガスを出しきろうとがんばると缶が異様に冷たくなるのもそのせいだよ。

中身の成分は液化されて封入されているガスに溶かし込んであるか、懸濁された状態。
噴射されて液化ガスが気化するときに一緒に膨張しながら細かい粒子となって拡散されるのだ。
もともと液化ガスに溶けているものなのならそのまま噴射してかまわないんだけど、懸濁してあるだけのものだと、「よく振ってから」ということになるわけ。
均一に分散した状態で吹き出させないと缶の中にその成分だけが残っていってしまうのだ。

実は、同じような原理がカフェインの抽出に使われているんだよね。
二酸化炭素に高温で圧力をかけていくと、気体でも液体でもない超臨界流体という状態になるのだ。
気体の拡散性と液体の溶解性を持ち合わせていると言われていて、液体のようにもどを溶かすけど、粘性がなく広がっていくものなのだ。
この二酸化炭素の超臨界流体とコーヒーを混ぜると、コーヒーの中のカフェインが二酸化炭素中に溶け出すんだよね。
で、コーヒーの液体自体は混ざり合わないので、そこからコーヒーを取り出すと脱カフェイン(デカフェ)のコーヒーができるのだ。
これを使っているのがデカフェのインスタントコーヒーだよ。
カフェインが溶け込んだ超臨界流体の二酸化炭素を常温常圧にもどすと二酸化炭素は気体にもどるので、そこにはカフェインの粉末が残されるのだ。

スプレーからはだいぶ外れたけど(笑)、液状化したガスに溶かし込んで、というところは同じだよね。
イメージ的に普通気体だと思っているものに溶かすので不思議な感じがするのだ。
水もちょっと温めればすぐに蒸気になるから、それを考えるとある程度わかる部分もあるんだけどね。

2010/06/19

イオンの力ですいすい

工学実験実証探査機(MUSES-C)の「はやぶさ」が6月13日に地球に再突入し、7年にわたる宇宙の旅を終えたのだ。
機体本体は大気圏突入とともに分解し、燃えてしまったけど、それはきれいなファイヤーボールとして観測されているよ。
多くの流星の下の方でひとつだけ分かれて光っているのが熱シールドに守られた着陸用カプセル。
うまくいけば、試料回収カプセルには小惑星イトカワの砂が入っているかもしれなくて、それを地上に届けるものなんだ。
入っていなくても、7年にわたって約60億kmの宇宙の旅をしただけでもすごいんだけどね。

で、そのたびを支えたのが我が国のNECが開発した電気推進系。
最近有名になったイオンエンジンで、電気の力でイオンを加速して推進力にするものなのだ。
なかなか実用までは道のりが険しいと言われていた技術なんだけど、今回の「はやぶさ」の成果で長時間の運用実績が蓄積し、惑星間航行に使えることが証明されたんだ。
トラブルはいくつもあったけどね(笑)

通常、宇宙探査機の推進力というとヒドラジンなどの化学燃料を燃焼させ、その熱で爆発的に膨張した排気ガスを噴射することで進む化学推進系が一般的なのだ。
でも、宇宙には空気がないから、燃焼させるためには酸化剤を年長と一緒に積んでおく必要があるし、遠くに行くためには燃料もたくさんいるので、どうしても重くなってしまうんだよね。
NASAなんかは原子力電池と言って、放射線を出しながら原子崩壊する放射性同位体(RI)を熱源として積んで、そのエネルギーを推進力に換えている探査機も作っているよ。
外惑星探査のボイジャー・シリーズや木星探査機ガリレオ、土星探査機カッシーニ、冥王星の先まで行っているニュー・ホライズンズなんかはみんなそうで、燃料としてプルトニウムを積んでいるのだ!
熱源となるRIはそんなに大量じゃなくてよいので探査機も小型化できるし、何より、太陽から遠ざかると太陽光発電が使えなくなるので有効な手段なんだ。

でも、今回「はやぶさ」で採用されたのは、イオンエンジン。
火星の手前の小惑星が行き先なので、太陽光発電で発電しつつ、その電気を使ってイオンを加速するのだ。
具体的には、燃料として積んでいる希ガスのキセノン(Xe)にマイクロ波を放射し、電離させるんだって。
で、そこで発生したキセノンの正イオンに電圧をかけ、後方に加速して噴射するのだ。
でも、このときに噴射口付近で同じく電離した電子を中和機から噴射して電気的に中性にしてから噴射する必要があるんだ。
そうしないとどんどん本体が負の電荷を帯びていってしまい、まわりが真空で接地(アース)できない宇宙ではその電荷がそのまま残ってしまうのだ。

さらに、電子を噴射することで全体としてキセノンの噴射方向を絞ることができて、そのままだと正の電荷同士の反発力で広がっていろんな方向で出てしまうものを後方に絞って噴射できるようになるんだよ。
このとき、電気的には中和しているけど、キセノンはプラズマという状態になっているのだ。
プラズマは、正イオンと電子が電離している状態のガスで、よく「はやぶさ」のイオンエンジンの絵で青く光っているものがあるけど、あれがプラズマ発光の色だよ。

この方法だと、加速自体は電気の力なので、後は燃料の質量と加速された速度をかけた運動量の反作用分だけ前に進むのだ。
とは言え、比推力(単位重量当たりの推進剤で単位推力を発生させられる秒数、推進剤の効率の指標だよ。)は高いものの、加速に長時間を要するのだ。
つまり、時間をかけてちょっとずつ加速をしていくというもので、一気に爆発的な推力を産み出す化学エンジンとは大きく特長が異なるのだ。
これを長距離の宇宙航行に使おうという発想こそが「はやぶさ」では斬新だったというわけ。

これまでは静止軌道にある通信衛星の姿勢制御のためのスラスタに使われている例もあったようなんだけど、それも化学エンジンのスラスタが一般的だったみたい。
化学エンジンだとその分燃料をたくさん積んでおく必要があるんだけど、イオンエンジンはまだ動作が不安定で、扱いも難しいというのが原因みたい。
今回も長期間の運転は実現しているけど、途中で止まって、最後は2つの不調になったエンジンの生きている部分を組み合わせて使うという荒技まで使っているんだよね。
そういう意味ではまだまだ課題が残っていそうなのだ。

今回の「はやぶさ」の場合は、イオンエンジンによる加速だけじゃなくて、実際には惑星の重力を活用したスイングバイもやっているので遠くまで行けたんだよ。
何にせよ、頭を使ってより小さい探査機でどこまで遠くに行って帰ってくるか、という発想がよかったのだ。
そこがまさに「工学実証」だったんだけどね。
これである程度実証されたわけで、次はどういう展開になるか、ということなのかな?

2010/06/12

USI

ここのところ口蹄疫の問題が大きくなっていて心配だけど、そこでどうしても気になったのが「エース級種牛」という言葉。
エース級になるには、肉質がよいだけでなく、性格が穏やかで育てやすい、ということも必要なんだって。
なかなか畜産の世界も奥が深いなぁ、と感心したのだ。
そこで、今回は少し牛肉について調べてみたよ。

ボクもそうなんだけど、スーパーで牛肉を買う際にまず目がいくのが国産かどうか。
BSE問題以来国産指向が強まっているよね。
ボクもそんなに量を食べるわけでないので、多少高くても「国産牛」の表示があるものを買っているのだ。
ところが、「国産牛」とあっても、日本生まれの牛じゃないことがあるんだって!

基本的に日本国内で生まれ、肥育された牛は国産牛なんだけど、外国で育った牛でも、日本で3ヶ月以上肥育されると国産牛という表示になるそうだよ。
さらに、日本でと殺・精肉すると国産牛と言われることがあるそうなのだ。
そうすると、外国でのみ育て、外国でと殺・精肉されてから輸入されるのが外国産牛になるのだ(>_<)
これがからくりなんだね。
なので、国産牛というのはそんなにあがめ奉るようなものではないようなのだ。

一方、もっと高級品として見かけるのが和牛。
こっちは牛の品種のことで、黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4種類と、この間の交雑種のことを指すのだ。
品種だけの話で、ホルスタイン種とかジャージー種とかと同じで、どこで育てても和牛なんだけど、実際に流通している和牛のほとんどは国内産。
理論的には外国で育てた和牛も存在するはずだけど、食肉流通業界の自主規制と農林水産省の指導(ガイドラインで国内で飼育されたものであること、という条件があるのだ。)により、日本国内では外国産牛が和牛として流通することはまずないみたい。
なので、和牛と表示されていればほぼ間違いなく日本で育てられた牛。
こっちは安心して帰るわけ、高いけど(笑)

さらに牛肉の表示で書いてあるのは等級。
A3だとかA4だとかあるよね。
アルファベットは歩留まりの等級でA~Cの三段階で、Aが最高級。
歩留まりというのは、冷蔵庫に吊してある枝肉と呼ばれる状態から、各部位を切り出すときの割合で、等級が高いものほど多くとれるというわけ。
早い話が肉付きがよいのだ。
後ろの数字は肉質の等級。
こっちはさし(脂)の入りや光沢、やわらかさ、しまりなどを総合的に判断するみたい。
いわゆる霜降りの特上肉だと5で、赤身に脂が所々はいる固い肉は数字が小さいのだ。
欧米ではそういう赤身肉の方が好まれるんだけどね(笑)

2004年12月からは、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛肉トレーサビリティ法)の施行によって、国産牛肉には10桁の個体識別番号がついているのだ。
これによってその牛がどこで生まれ、どこで育ち、どこで精肉されたかなんていう履歴がわかるようになっているだって。
小間切れや挽肉などの一部の例外を除き、インターネットで調べればわかるそうだよ。
携帯でも見られるそうなので、国産牛表示で疑問に思ったらこういうのを調べてみるのもよいかも。
ボクは面倒なのでやらないけど・・・。

というわけで、牛肉の見方ががよくわかったのだ。
これからはスーパーの食肉売り場でも気をつけて見てみようかな?
とりあえず和牛を飼えば安全そうなので、急いでいてお金に余裕があるときは何も考えずに和牛を買うけど(笑)

2010/06/05

夏期軽装励行の候

うちの職場では6月から「夏期軽装の励行」、いわゆる「クール・ビズ」が始まったのだ。
ノージャケット、ノーネクタイに開襟シャツというラフなスタイルが認められるわけ。
ボクなんかはお仕事中はネクタイをしていないと落ち着かない方なので軽装にならないんだけど、かなりのマイノリティ。
なぜかみんなネクタイを外したがるんだよね(笑)

最近ではかなり浸透してきた感があるクール・ビズだけど、始まったのはつい最近の2005年。
小泉政権下で地球温暖化対策のひとつのシンボルとして開始されたんだ。
小泉元総理から「軽装による冷房の節約」についてアドバイスを受けた時の環境大臣の小池百合子さんが、持ち前のアピール戦術を使ってみごとに認知度を高めたんだよね。
閣議でも閣僚が沖縄の半袖開襟シャツの「かりゆし」を着るなんて慣例もできていて、この前は亀井大臣だけスーツにネクタイと「造反」したのだ。
前からクール・ビズをだらしないと批判していたんだよね。

でもでも、もともとはネクタイを外すことが目的ではなくて、冷房の設定温度は28度に上げる代わりに、その環境下でも快適に過ごせる服装にしましょう、ということ。
必然的に室温が上がるので、開襟シャツでいいよね?、というものなんだよ。
中央官庁なんかでは確かに冷房の設定温度を上げて、それに合わせてクール・ビズにしているんだけど、けっこうネクタイを外すだけ、と思っているところが多いような・・・。
冷房に使う消費電力を減らすことが目的なので、本当はそれでは困るのだ!

これに対してはネクタイ業界からは当然批判が出ていて、スーツの売上げも下がったようなんだよね。
でも、逆に開襟シャツ、特にクール・ビズ用の少しおしゃれな男性ものは売れ行きがよくなっているのも確か。
もともとクール・ビズという言葉自体も服飾メーカーのグンゼが公募で提案したものなんだとか。
どのみちスーツやネクタイは冬に必要だから、開襟シャツの新規需要が伸びた方がよいのかな?
夏用の薄手のスーツは売れなくなるけど。

これが一気に広まったのは小池大臣の手腕もあるんだけど(宣伝上手だからね。)、それ以上に、業界からの支援もあったからなのだ。
グンゼのようなクール・ビズのスタイルを売る服飾メーカーはもとより、電力会社からの賛同も得られていたのだ。
もともと電力会社では夏の電力ピークを抑える取組をやっていて、それにこれが合致したわけ。
電力会社は、夏の最大ピークを満たせるように発電所などの設備を整える必要があるんだけど、ピーク時にしか使わないから余剰な設備でもあるんだよね。
ピークが抑えられれば、設備投資に回す資本が節減できるので、ピークカットにむかしから取り組んでいるのだ。
でんこちゃんも冷房の設定温度を少し高めにしましょう♪って宣伝してたよね。

この差が如実に出たのは、クール・ビズと対照的なウォーム・ビズ。
冬に暖房の設定温度を下げて、その分あたたかい格好をしようということなんだけど、こちらは言葉自体もあまり普及していないのだ。
電力会社からすれば、冬は電力設備に余裕があるので、別に電力消費を抑えてもらう必要がなく、むしろ、電気を使ってもらった方が売上げも伸びるし、発電所の投資効率もよくなるので、このウォーム・ビズには乗ってこなかったのだ。
服飾業界としても、ベストやセーター、ひざかけなんかが売れるにしても、開襟シャツのように毎日変えるものでもないので、そんなに売上げが伸びないんだよね・・・。
というわけで、ウォーム・ビズの方は業界があまり乗ってこないので普及しないというわけ。

コンセプトは同じなのに、おもしろいものだねぇ。
ちなみに、クール・ビズのはるか前に、省エネルックという半袖のスーツを着ましょう、というものもあったのだ。
羽田元総理でおなじみだけど、はっきり言ってかっこわるいということで当時としてもほとんど浸透しなかったんだよね(笑)
そこ行くと、クール・ビズは打ち出しがよくて、おしゃれなものも出てきているので続いているのだ。
やっぱりそういう部分も大事なんだね。
あとは、それに合わせてしっかりと電力消費の節減をしてもらわないと!