2010/08/28

あめちゃん

職場のおみやげで「フグ雑炊ドロップ」というのがあったのだ。
これはまさしくその味で、しゃれにならないもの・・・。
よくそんなものを本当に作るよ、味見しないのかな?、なんて思うよね。
で、気になったのが、「ドロップ」というもの。
いわゆるキャンディとは何が違うのか。
気になったので、調べてみたよ。

ドロップはハードキャンディの1種類で、砂糖80%、水飴20%の基材を140~150℃で煮詰め、そこに酸味を加えるクエン酸や香料、着色料などを加えて冷やしかためたもの。
非常に単純な材料で作られたあめだったのだ!
水飴と混ぜるところがポイントで、こうすることで砂糖の再結晶かがふせげて、透明感を残したままかためることができるんだって。
確かに色がきれいだよね。

もともとはオランダに甘草を使ったリコリス菓子の「ドロップ」というのがあって、それが語源と言われているのだ。
通常欧米のリコリス菓子は紐状だけど、オランダのものだけは動物やコインなどいろんな形にかためたもので、本場オランダでは親しまれているんだって・・・。
日本人にはリコリスの味と香りは苦手とする人が多いけど。
で、このいろんな形状にかためるところから名前が来ているのではないか、と言われているそうだよ。

じゃあ、キャンディは何かというと、砂糖や水飴を主原料とし、煮詰めた後に冷やしかためたお菓子の総称みたい。
かちっとかたくかためたものがハードキャンディ。
ドロップのほか、ペロペロキャンディのロリポップや、三温糖とバターを煮詰めたものをナッツと混ぜてかためたタフィやバタースコッチなんかがこれにあたるそうだよ。
やわらかくかためたものがソフトキャンディで、キャラメルやマシュマロ、ヌガーなどはこのソフトキャンディになるのだ。
ボンタン飴や森永ハイチュウもソフトキャンディだよね。

タフィなんかはキャラメルに近いような気がするけど、がりっと歯が砕けるかと思うほどかたいこともあるから「ハード」なのかな?
バタースコッチはとろっとしたソースのイメージだけど、かたく作ったチップもあるそうなので、やはりかたいものなのかも。
ちなみに、タフィとバタースコッチの違いはどこまであたためたかで、バタースコッチの場合はとろみがつく程度にまでしか加熱しないのに対し、タフィはカラメル化が起きるまで加熱するのだ。
なので、タフィの方が苦みと風味が出るわけ。
もともとタフィやバタースコッチの茶色は主に三温糖の色なんだけど、キャラメルの場合はカラメル化した砂糖の色で、さらに、バターでなく生クリームを加えるのでよりやわらかいのだ。

翻って、日本の飴がどうかというと、けっこう歴史が古いみたいなんだよね。
砂糖自体はむかしの日本では超貴重品だったので、基本はデンプンを酵素で分解して糖化したものが使われていたようなのだ。
今でも麦芽水飴というのがあるけど、それと同じように、米を発芽させ、その発芽した芽に含まれる酵素でデンプンを糖化して作っていたのではないか、と言われているよ。
これを精製していくとできるのが水飴。
むかしはこれも貴重品で、それで「附子(ぶす)」なんて狂言が生まれるのだ。
これはかくしておいた水飴が食べられないように毒だと言ってうそをつく話だよね(砂糖と言われるけど、どう考えても動作的に水飴をなめているのだ!)。

江戸時代くらいになって砂糖が手にはいるようになると、この水飴に少量の砂糖を加えて練って作るさらし飴が登場するんだよ。
これはよく寝ると空気が入り込んで白くなるのだ。
柔らかいうちに棒状に丸めてトントントンとこぎみよく切るのだ。
今でも神社やお寺の前ではそういう飴屋さんがあるよね。
ちなみに、やわらかいうちは加工が可能なので、飴細工にしたり、金太郎飴にしたりと色鮮やかにできるんだよ。

日本的な飴と思われるべっこう飴はもっと後の時代に出てくるもので、これは砂糖水(ザラメを水に溶かしたもの)を熱してから冷やしかためただけのもの。
加熱しているときにカラメル化が起きるので、黄金色に色づくのだ。
これがべっ甲の色に似ているのでべっこう飴と呼ばれるんだ。
色づいてから型に流し込むだけだけど、自分で作ろうとするとけっこう難しいんだよね。
焦げ付いたり、色がきれいにつかなかったりするのだ。
色がつかないと風味もないので、おいしくもないのだ。

というわけで、実はあめの世界も奥が深いみたい。
口ざみしいときについつい口に入れてしまうあめだけど、これは何のあめかな?なんて思いをはせると、食べ過ぎずにすむかも(笑)
いろんなあめで舌触りが違ったりするけど、それも長年の工夫の上に立っているんだねぇ。

2010/08/21

希釈でまろやかに

ここ最近はハイボールがはやっているみたいだねぇ。
一時期地酒や焼酎がはやったけど、不況だからか、安くて酔えるお酒に人気が集まってきたのかな?
宣伝がうまくいったというのもあるんだろうけど。
サントリーでは急激に消費量が増えたので角瓶の出荷量を制限する措置までとりだしているのだ。
ウィスキーの場合は熟成に時間がかかるので、すぐに生産量を増やせないという問題があるんだよね。
企業側としては、売れるのはうれしいけど、ということで痛しかゆしなのかも。

で、その最近のハイボールだけど、これはウィスキーをソーダ(炭酸水)で割ったもの。
広義にはアルコール度数の高い蒸留酒を炭酸水やソフトドリンクで割ったカクテルの総称なんだそうけど、日本では完全にウィスキーのソーダ割りだよね(笑)
ちなみに、酎ハイは焼酎をソーダで割ったもので、焼酎ハイボールなので酎ハイなんだとか。
でも、ハイボールを広義の意味で使う例は他にはあまり見ないのだ。

ウィスキーはアルコール度数が高いこともあって、もともとそんなにアルコールに強くない日本人としては、水割りやソーダ割りで飲むのが好まれているんだよね。
ところが、これはおよそ日本独特の飲み方で、海外ではストレートかロック(オン・ザ・ロック)が一般的な飲み方のようなのだ。
それをちびちびやるのが本道で、飲みやすくしたハイボールは「カクテル」という扱いなんだろうね。
むしろ、日本では、ウィスキーは割って飲むのが普通だから、「カクテル」扱いしたくないんだろうね(笑)

でもでも、この「割る」という行為はアルコール度数を薄める以上にメリットもあるのだ。
薄めることで飲み口がすっきりして飲みやすくなるんだけど、それとともに、アルコールの強い香気を弱め、ウィスキー独特の風味を楽しめる、ということもあるのだ。
ストレートで飲む場合もチェイサーで水を続けて飲んだりすることで、アルコールの香気を洗い流してウィスキーの風味を楽しむものだそうなのだ。
水割りの場合、水との配合比率でいろんなまろやかさ、飲みやすさに調整できるんだけど、ウィスキーの風味が際だつ黄金比というものがあるようなのだ。
ソーダ割りのハイボールの場合はさらに清涼感・爽快感がまして飲み口がさっぱりするというわけ。
暑い時期にはただの水割りより魅力的かもね。
で、ロックの場合は、徐々に氷が溶けていくので味の変化が楽しめるので、一粒で何度もおいしい、という飲み方になるのだ。

同じようにいろんな割り方をする熟成させた蒸留酒と言えば、沖縄の泡盛(古酒)があるよね。
泡盛は現地でもあんまりストレートで飲むことはなくて、割って飲むのが一般的。
やっぱり割り方に黄金比があって、泡盛の風味がもっとも引き立ち、甘みを感じる割り方があるらしいのだ。
普通の蒸留酒だと雑味を除いてアルコール度数を高めているだけなので、その引き立たせる風味があまりないので気にならないわけだけど、ウィスキーや泡盛のように熟成させる蒸留酒ならではなんだよね。

ところが、ウィスキーと泡盛ではまったく熟成の中身が違うんだよね。
ウィスキーは蒸留したての透明なものを樽に入れて熟成させるのだ。
そうすると、樽に使われているオーク材などからタンニンやリグニンなどのポリフェノールが溶け出していって、色と風味がついていくんだ。
重要なのは、風味を与えるのは樽なので、どの樽で熟成させるかが重要なわけ。
一報、泡盛はウィスキーほどには蒸留が進んでいなくて、まだ中には多くの雑味(エタノール以外のアルコールや脂肪酸エステルなど)が含まれていて、これが熟成過程で独特の風味を出していくわけ。
分解したり、結合したりとゆっくりと化学反応が進んで、味や香りのもととなるんだ。
泡盛の場合はかめに入れて熟成させるけど、内部の成分が熟成していくので、どのかめで熟成させるかは問題にならないというわけ。

同じ蒸留酒でもウォッカやジンなんかの徹底的にアルコール度数を高めるとカクテルの原料として使われるのが多くなるよね(ロシア人はウォッカをぐいっといくみたいだけど・・・。)。
一方、ラムやテキーラなんかはウィスキーと同じように樽で熟成させてから楽しんだりするのだ。
日本の焼酎はまだ風味が残る程度の蒸留なので、その風味を楽しみつつ、ストレートだったり、お湯割り、水割りで飲むよね。
これがブランデーまで行くと、その高貴な風味を楽しむためにストレートで飲むのが原則になるのだ。
というように、同じ蒸留酒でも飲み方は様々。
むかしから人類はアルコールを楽しむためにいろいろと工夫してきたんだなぁ、と感心するよ。

2010/08/14

Bon Vacation!

世間はすっかりお盆休みシーズンだねぇ。
街中から人は減り、帰省ラッシュのニュースが流れているのだ。
かくいうボクも今回はこのお盆の時期に夏休みを取得しているのだ。
お仕事の相手先もお休みのことが多いから休みやすいんだよね。
なんだかんだでまだ国民的な季節行事なのだ!

お盆というのは仏教で言う盂蘭盆会(うらぼんえ)から来ているもので、祖先の霊がもどってくるので、それを迎え、供養して、また送り出すというのが一連の流れ。
一説には、釈迦の十大弟子の一人、神通第一と言われた目連尊者が夏の修行(夏安吾)の最中に亡き母親の姿を探したところ、餓鬼道に落ちていることを発見したことから始まるのだ。
それをどうしたら救えるかとお釈迦様に相談すると、安吾の最後の日(解夏の日)にすべての比丘(仏教の修行者)に食べ物を施せば母親にも届くだろう、と教えられ、すべての比丘に布施をしたところ、餓鬼道にいた母親の口にも食べ物が届いたんだとか。
これが施餓鬼とも言われる所以だよ。
この話は中国で成立した偽経にあるものなので、中国由来なんだそうで、インドでは盂蘭盆の習慣はないんだって。

もともと中国では初春と夏の盛りに二度祖先の霊をまつる習慣があったようで、その夏の祖霊供養の習慣が仏教とまざってできたのが盂蘭盆なんだと考えられているようだよ。
中国の習慣は広く東アジアに広まるので、これは日本にも入ってきていて、さらに仏教とともに盂蘭盆が入ってくると、日本で独自に進化した夏の祖霊供養の民俗習慣と、仏教とともに入ってきた盂蘭盆が習合して現在のようなお盆になったのだ。
そういう意味で、仏教色が強いけど、純粋な仏教行事とはいえないんだよね。
お墓参りやお経をあげたりするほかにもお盆の行事があるのにはそういう事情があるのだ。
ちなみに、初春の行事は後にお正月の民俗につながっていって、中国では爆竹を鳴らしたり、日本では門松を立てて年神様を迎えたりするけど、それももともとは祖先の霊の供養だったんだって。

お盆が特殊なのは他の夏の行事とも密接に関係していること。
特に夏祭りが行われる地域だと、盆踊りとお祭りは密接不可分だよね。
夏祭り自体は疫病が流行しないように祈ったり、収穫前にしっかり雨が降るよう祈ったり、逆に台風の被害がないように祈ったりするもの。
これももともとは祖先の霊をまつって、感謝の気持ちを表すとともに、そういう祈願をしていたのかもしれないのだ。
もともと日本の神様は祖先的な意味合いもあるから、神仏混淆の世界ではそれでよいのかも。

盆踊りは地獄での受苦を逃れた亡者が喜んで踊る姿を燃したなんてことも言われるけど、むしろ祈願の踊りと考えた方がすっきりするかもね。
雨乞いの踊りのようなものなのだ。
沖縄のエイサーも盆踊りの一種だそうだけど、太鼓や鉦を大音量で打ち鳴らすのは疫病払いのお祭りの特徴だよね。
東北のねぶたも疫病払いと言われるけど、こっちもお盆と大きく関係しているようなのだ。
秋田の竿灯祭りは豊作祈願だけど、やっぱりお盆と関係しているよね。
やっぱり夏祭りとお盆は民俗行事としてつながっていそうなのだ。
ちなみに、これらのお祭りや盆踊りはむかしでは一大イベントでは、田舎の地域では重要な出会いの場だったんだよね(笑)

お盆によく見るのは迎え火や送り火。
これは祖先の霊を迎え、送り出すときのもの。
京都五山の送り火も祖霊を送るものだそうだよ。
灯籠流しや精霊流しも同じ意味があるそうなのだ。
むかしは海の彼方に常世=あの世があるとも考えられていたので、川に流すという発想が出てくるのだ。
そして、お盆の名物と言えばキュウリとナスに割り箸をさした馬と牛。
来るときは馬に乗って早く、帰るときは牛に乗ってゆっくりと、という意味が込められているんだって。
ちなみにこれは精霊馬と呼ばれるのだ。

で、現在はお盆というと8月中旬、終戦記念日と同じ15日に当てられることが多いよね。
この前後がお盆休みシーズンとなるのだ。
でも、もともとは旧暦の7月15日で、それが新暦になると約1ヶ月ずれるわけだけど、そのまま旧暦の日付に合わせ続けると新暦では毎年日が変わってしまうので、そのまま1ヶ月ずらした8月15日固定されるようになったんだ。
今でも旧暦の7月15日に旧盆をやる地域もあるよね。
さらに、新暦の7月15日という地域もあたりするから混乱するのだ。
とは言え、なんとなく、8月中旬、夏休みも折り返しを過ぎて、そろそろ休みも終わるなぁ、と思いをはせるこの時期がお盆っぽいよね。
お盆が終わるとヒグラシも鳴き始めて、夏の終わりを感じるのだ。
やっぱり日本人の季節感と密接に関連した民俗なんだね。

2010/08/07

清濁併せ呑む

最近韓国の濁り酒のマッコリがはやっているよね。
韓国料理屋さんだけじゃなく、普通の焼き肉屋さんでも見かけるようになったし、居酒屋でもときどき見かけるのだ。
特有の香りがあって苦手にしている人もいるみたいだけど、独特の甘みとほのかな酸味で飲みやすいとも言われているのだ。
アルコール度数もビール程度だからぐびぐびっといきがちだけど、濁り酒だけあって悪酔いしやすいので注意が必要なのだ(>_<)

韓国のマッコリと日本酒と同じお米のお酒で、麹でデンプンを糖化させてから酵母でアルコール発酵をさせる並発酵。
このとき、雑菌の繁殖を抑えるために乳酸菌発酵もさせているので、ちょっと酸味が出てくるんだ。
ただし、日本酒とは違って原料に小麦を加えることが多いんだとか。
芋焼酎のようにサツマイモからつくるマッコリもあるみたいだ。

発酵させたそのままを飲む生マッコリは微炭酸状態。
軽く発泡しているのだ。
その方がさわやかな飲み口と言われるけど、発酵が継続していて日持ちがしないので、加熱して発酵を止めたものが広く流通しているようだよ。
夏場に冷やしたものを飲むのが好まれているようだけど、この点はmかしの甘酒の飲み方に近いかも。
マッコリの方が発酵期間が長いのでアルコール度数が高いけど。

このマッコリに似ているのは日本のどぶろく。
どぶろくも甘みとほのかな酸味が特長の濁り酒だけど、すっきりした飲み口のわりにアルコール度数が高いのだ。
普通に上澄みをとって濾過して加熱処理すれば清酒にになるので、アルコール度数は日本酒並みなんだよね。
基本的に材料や起こっている発酵現象は同じなんだけど、作り方に工夫があるんだ。
どぶろくの場合、米と麹を複数回に分けて加えていく複発酵という方式で、これによりアルコール度数が高いお酒が造れるのだ。
一度発酵させたものにさらに麹と米を加えてさらに発酵させ、というのを繰り返すわけ。

マッコリと同じく、発酵途上では二酸化炭素が出てくるので、発泡性なのだ。
密閉した容器で作らないと雑菌が繁殖するおそれがあるけど、適度にガス抜きしないといけないんだ。
さらに、発酵を止めないので、早く消費しないと引用に適さないものになるので注意が必要なんだって。
と言っても、現在は酒税法の関係で勝手にどぶろくを作ると密造酒になるので、自分で作ることはまずないと思うけど。

このどぶろくの状態のものを静置しておくと白い沈殿ができるのだ。
これがもろみで、こしてから乾燥させると酒粕。
さらにこしたものを濾過して、「火入れ」と言われる加熱処理で発酵を止めると清酒になるのだ。
すごいことに、日本ではすでに平安時代には濾過して、火入れしてある程度の透明度を持った日本酒を造っていたようなのだ!
この火入れも難しくて、あまり高い温度で加熱してしまうと風味も飛んでしまうので、風味を極力残すように発酵を止める必要があるんだよね。
それを温度計なんてない時代から技術の伝承で培ってきた技なのだ。
日本は酒造を通じてむかしからすぐれた醸造技術を持っているというけど、本当にすごいんだよね(笑)