2011/06/25

いつかは白いごはんを・・・

最近は外食するとごはんは白米だけじゃなくて、玄米や十穀米も選べたりするよね。
ついつい健康に良さそうだという理由でそっちを選んでしまうよね。
でも、むかしは「貧乏人は麦を食え」なんて話があったように、むかしは白米を食べることがひとつのステータスだったのだ。
江戸時代も貧しい農民は稲作をしていながら自分ではお米は食べられなくて、粟や稗などを食べていたんだよね。
そういう点で言うと、ぜいたくになったものなのだ。

玄米は精米する前のお米だけど、白米に精米すると量が減るし、それだけ手間もかかるので高級品だったのだ。
でも、お米を食べられるのはまだいい方で、お米が食べられないと、いわゆる雑穀と言われるものを雑炊とかにして食べていたんだよね。
明治以降は大麦(押麦)をお米と一緒に炊いた麦飯は代表的だけど、それより以前は粟や稗を雑炊にしたり、餅・団子にしたりするのがメジャーだったのだ。
今では家畜や小鳥のえさになっている粟や稗だけど、かつては重要な主食だったんだよね!

いわゆる雑穀の定義は微妙で、狭い意味では、イネ以外のイネ科キビ亜科の穀物を指すのだ。
すなわち、アワ、ヒエ、キビなんかがそう。
広い意味では、穀物だけでなく豆類なんかも含まれ、主食として食べられるもの全般を指すよ。
その場合は、イネ科のオートミールにするエンバク、麦茶でおなじみのハトムギ、マメ科ではダイズやアズキ、イネ科ではない穀物的な植物(擬穀類)のソバ、アマランサスなどなどが入るんだ。
これに油を取るゴマ、ナタネ、ヒマワリ(種子)なんかも含むこともあるみたい。
いわゆる十穀米は広い意味の雑穀なので、豆なんかも入っているんだ。

日本雑穀協会というい団体によると、穀物は主穀、雑穀、菽穀、擬穀の4種類に分けられるんだって。
主穀はイネ科植物のうち主食食物として食べられているイネ、コムギ、トウモロコシ、雑穀はイネ科のうち小さい穎果(籾殻に包まれた乾燥した実)をつけるアワ、ヒエ、キビなどの総称。
菽穀は豆類のことで、擬穀は上に出てきたように、ソバなどのイネ科でないのに穀物的な実をつける植物のこと(イネ科が単子葉植物であるのに対して、ソバなどは双子葉植物でだいぶ系統が異なるのだ!)。
でも、同協会ではより広く、主食以外に利用している穀物全般を対象にしているみたいだよ。

日本の食物起源神話に出てくる五穀は、稲、粟、麦、豆(大豆・小豆)、稗(又は黍)で、それが代表的な主食になる植物だったんだろうね。
五穀豊穣というのはこれらの植物の方策を願っているのだ。
でも、五穀には正確な定義がなくて、代表的な穀物くらいの意味で、さらに十穀になるともっと広い範囲、というくらいの認識みたい。
5とか10という数字にはほとんど意味がないようなのだ(>o<)
ま、そういうのはままあることだよね(笑)

ここにも表れているように、古代社会では雑穀も重要な位置を占めていたのだ。
そもそも乾燥地帯だとイネよりもムギの方が育てやすいし、より貧困な土地だとアワやヒエでないと育てられないなどの理由もあったんだよね。
だいだんと新田開発の技術も進み、農業技術も向上したので、水田稲作へとシフトしていったけど、春に収穫できるムギや荒れた土地でも栽培できる雑穀は引き続き受け継がれてきたのだ。
それが明治以降だんだんと廃れてきたわけだけど、いままた注目を浴びているのだ。

その理由は栄養価の高さ。
玄米であればまだビタミンBが補えるけど、白米だとビタミン類はほとんど失われているんだよね。
そのせいで、白米を大量に食べ始めた江戸時代は脚気が流行することになるのだ。
雑穀類は亜鉛、リン、カリウム、水溶性ビタミン類、ポリフェノールなどの栄養価が豊富で食物繊維が多い分、デンプンが少なめなのでカロリーは控えめ。
まさに飽食の現代にあった食物になっているみたい。
それで白米至上主義から徐々にゆりもどしが来ているのだ。

さらに、現代的な理由はそれだけじゃなく、アレルギーの問題というのもあるのだ。
お米はあんまりきかないけど、小麦のアレルギーって言うのはけっこうあるんだよね・・・。
そうなると麺類もパンも食べられなくてかわいそうだけど、そういう人たちのために雑穀を小麦の代わりに使うこともあるみたい。
ただし、雑穀はグルテンを含まないので、そのままでは麺やパンにはできないのが難点なのだ(ToT)
そこはずいぶん技術的に改善できているようだけどね。

というわけで、雑穀が見直されているわけ。
全世界的な食糧事情で考えると、稲や麦の栽培に向いていない土地が多いので、収量が少ないという欠点はありながらも、雑穀をもっと主食に振り向けていくことが重要なんだよね。
そのときも、米や麦に劣る位置づけというのではなくて、それはそれとして重要な主食と認識することが重要なのだ。
実はたいした手間をかけなくても育つという利点もあるので、今後は主要食糧としてますます評価がなされるかも。
これからがさらに注目が集まりそうなのだ。

2011/06/18

やんのか、やらへんのか、どっちやねん?

退陣表明をしたと思われた総理はまだしばらく居座るつもりみたいだね。
それもあって、今やっている通常国会の会期を延長するとかしないとかでもめている、というニュースが盛んに流れているのだ。
でもでも、一般国民からすると「会期の延長ってそもそも何?」っていうのが正直なところだよね(笑)
そこで、ちょろっと調べてみたのだ。

国会の会期については衆議院のHPの説明がわかりやすいよ。
って、それだけじゃ終わっちゃうので、少し解説すると、常に開催することが決まっているのが「常会」とも言われる「通常国会」。
国会法第2条では、「常会は、毎年一月中に召集するのを常例とする」とあるので、通常は1月中に招集されるのだ。
通常国会の会期は150日間と決められていて(途中で衆議院が任期満了となる場合はその日まで)、1回だけ延長できるんだ。
現在も通常国会の最中で、それがほうっておくと6月22日で会期末となるので、延長するしないという話題になっているわけ。

通例秋に招集されているのが「臨時会」こと「臨時国会」。
これは内閣が求めた場合、いずれかの議院に所属する総議員の1/4以上の要求があった場合、任期満了後の衆議院総選挙後又は参議院通常選挙後の場合に招集されるのだ。
「特別会」こと「特別国会」は解散後の衆議院総選挙の後に開かれるよ。
二つともその会期(開いている期間)は両議員の一致の議決で定めることになっていて(国会法第11条)、衆参で異なる議決となった場合は衆院の議決が優先するんだ(国会法第13条)。
で、この臨時会と特別会は2回まで延長ができるんだ。
特別会は解散総選挙後のみだけど、臨時会は普通は9月~12月にかけて開いているのだ。
常会を延長したり、臨時会を早めに開いたりしてほぼ1年中国会を開いている状態を「通年国会」と呼んでいるよ。
「震災対応は通年国会で対応」なんてことを言っている人もいるよね。

会期の延長を定めているのは国会法第12条で、その第1項では、両議員の一致の議決をもって延長することができると規定しているんだけど、さっきと同じで、第13条により、衆参で異なる議決となった場合は衆院の議決で決まるのだ。
なので、「ねじれ国会」でも衆院の議決だけで延長自体は可能なわけ。
ところが、そうやって無理に延長をすると野党が審議拒否をするおそれがあって、そうなると延長した意味がなくなるので、普通は与野党で合意してから延長するのだ。
その調整でもめているのが今の状況。
ただし、日本国憲法で定められた衆議院議決の優越を使って時間稼ぎをしたいときは無理やり延長することもあるんだよね(予算は衆院が参院に送ってから30日以内に議決しない場合は衆院の議決で決まるし、法案も衆院から参院に送られてから60日以内に議決しないと否決したものと見なされて、衆院の2/3以上の賛成で再可決で成立させることが可能なのだ。)。

これで延長問題が本質が何となく見えてきたけど、今回与党が会期延長をしたいのはいくつかの法案を成立させるためなので、やっぱり野党の協力がないときついんだよね。
一方、震災対応があるのに審議拒否をするとなると野党が責められるおそれもあって、野党も慎重なのだ。
そこにつけこんでけっこう与党が強引に延長を持ちかけているのもあるんだろうけどね。
で、例えば報道されているように90日延長すると9月下旬までになって、総理が言っている震災対応の三次補正までなんとかなりそう、ということになるのだ・・・。
とりあえず、今変性指示が出ている二次補正(1.5次補正?)を通すためには、多少は延長しないといけないのは確かなのだ。
どうなるかわからないけどね。

ちなみに、退陣を表明していて執行をしないであろう内閣が次の補正予算を編成して国会に提出するのはおかしい、というのは正論だけど、延長をいやがっているのは他にも大きな理由があるのだ。
それは「内閣不信任案」の提出問題。
これは国会法等で定められているものではなく、言わば「不文律」のルールなんだけど、「一事不再議」の原則というのがあるのだ。
同一会期中に同じ議案を再び審議しない、というもの。
すなわち、一度不信任案を出してしまって否決されているので、このルールを守る限りは、次の臨時会以降でないと再び不信任案が出せない、となるのだ。
法的拘束力のない参議院の問責決議なら出せるし、可決もできるけど、無視を決め込む可能性があるんだよね・・・。
通常はそれに対して審議拒否をすることで対抗するんだけど、やっぱり震災対応で大事な時期に、と批判されるので、この手も使いづらいのだ。
なので、会期延長に慎重にならざるを得ないわけ。

というわけで、今回は今般の政局を解説してみたのだ。
なんだか池上なんちゃらさんになったみたいだね(笑)
でも、法律のこととか、国会のルールなどの背景情報を知ってからニュースに接すると、よくわかっておもしろいよ♪

2011/06/11

アライグマの気持ちで

ネットで見かけてちょっとおどろいたんだけど、今般の福島の原発事故に関連して、「放射性セシウム減らす調理法は?」なんてのがあったのだ!
女性誌なんかでも食べ物の放射線をどうするか、みたいな特集が組まれているのだ。
確かに、食事を作ることが多い女性の関心事項なのかも。
でも、女性誌の中にくは、あれも汚染されている、これも汚染されている、と不安をあおるようなものもあるので注意しないといけないんだよね(>o<)
その点、ネットで見つけた「放射性セシウムを減らす調理法」はきわめめてまともなのだ。

放射性セシウム(137Cs)は、ナトリウムやカリウムと同じアルカリ金属というカテゴリーに入る元素で、性質的にもカリウムによく似ているんだよね。
なので、水に溶けやすく、カリウムと同様に体に取り込まれると血液を会して体中に広がるのだ。
ただし、尿中にすぐ排出されるものでもあるので、長く体の中にとどまって悪さをするようなものでもないんだよね。
とは言え、心配なのは確かなのだ。

そこで何をするかというと、まずは食材をよく洗うこと。
それで表面についた放射性セシウムは洗い落とすことができるのだ。
野菜や果物が中にセシウムを取り込んでしまっている場合は、塩をしたり、酢に漬けたりして水分を抜くことで、一緒にセシウムを出すこともできるよ。
といっても、100%取り除けるわけではないので、減らすだけだけどね。
さらに、もっと減らそうと思ったら、塩水に長時間つけるなどして置換する方法もあるのだ。
ナトリウムよりカリウムの方が性質が似ているので、天然塩の方が効果はあるかな?
ま、そこまでして抜く必要があるとも思えないんだけど・・・。

この薄めるという方法は、放射性物質の取り込みを減らすための手法として一般的なんだよね。
今回の事故でわりと有名になった「安定ヨウ素剤」がまさにそう。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料なので、のどの甲状腺に貯まる性質があるのだ。
なので、放射性ヨウ素(131」I)も甲状腺に集まり、そこで悪さをするので甲状腺がんのリスクが高まるんだよね。
チェルノブイリ原発事故の後、ウクライナでは子どもの甲状腺がんが増えたんだけど、その原因といわれているのがこの放射性ヨウ素。
子どもの方が甲状腺に多くのヨウ素を集めるのでリスクが高いのだ。
ただし、そこまでひどくなったのは、放射性ヨウ素に汚染された牛乳を規制せずにそのまま飲み続けたためで、そのリスクはかなりコントロールできるので、必ずしも福島で同じことが起きるわけではないんだよ。

このリスクを減らすための措置が「安定ヨウ素剤」の摂取で、安定ヨウ素剤というのは放射性でない天然のヨウ素でできた、ヨウ化カリウムのことなのだ。
外から放射性でないヨウ素を過剰に摂取することで、放射性のヨウ素を薄めようというわけ。
ヨウ素は取れば取るだけ貯まっていくわけではなくて、ためられる量に限界があって余剰な分は次々に排出されるので、放射性ヨウ素を追い出せるのだ。
ただし、ヨウ化カリウムは甲状腺の機能異常などの副作用があるので、きちんと専門家や医師の指示の下に服用しなきゃいけないよ。
予防的に、ということで飲めばよいというものではないのだ。
どうしても心配なら、ヨウ素を多く含む海藻をたくさん食べたりしてもよいけど。

ほとんど検出されていないけど、心配されているのにストロンチウム(放射性なのは90Sr)という元素もあるのだ。
これはマグネシウムやカルシウムと同じアルカリ土類に分類される元素で、カルシウムによく似た性質を持っているんだ。
そのため、摂取してしまうと骨に取り込まれた長い間体に影響を与えるおそれがあるのだ(>o<)
そのために危険視されているわけ。
これも心配な場合は、外からたくさんカルシウムを入れるしかないよね。
骨代謝は筋肉をよく動かすと活性化されるので、カルシウムを多く摂取して、体を動かすのがよいのかな?

ちなみに、食品が放射性物質に汚染されていてがんになる、なんて不安になるような報道がなされているけど、厚労省や農水省で暫定的な安全基準を定めているので、基本的には流通しているものであればそんなに危険はないのだ。
基準値を超えていても出荷していた、なんてケースがあるから完全に信用できるわけでもないんだけど(ToT)
とは言え、自然界にも放射線を出す放射性同位体はあって、それは食品中に微量ながら含まれているのだ。
放射性炭素(14Cなんかはもともと食べているんだ。
とは言え、今回問題視されているような放射性のセシウムやヨウ素、ストロンチウムは基本的には核分裂反応から出てくるもので、自然界には存在しないので、今回の事故がなければまず口にしないものであるのは確か。
そういう意味では気をつけるに越したことはないけど、それを必要以上に気にして、何を食べたらいいかわからない、なんてパニックを起こすのはよくないのだ。
とりあえず今のところはいつもよりよく食品を洗う程度でかなり効果はあるはずなので、それくらいでよいはずなんだよね。

2011/06/04

リキッド・メタル

最近歯医者に通っているんだけど、それは小学生くらいの時に治療した歯のつめものがとれたから・・・。
それはいわゆる「銀歯」。
むかしはキャラメルみたいな粘性の強いものを食べているとときどきとれたりしたよね(>o<)
ボクの場合は知らないうちにとれていたようなのだ。

この「銀歯」の正体は、銀錫アマルガムと呼ばれる合金。
銀と錫の合金に亜鉛や銅を添加した粉末を水銀で練ったものなんだよ。
それ自体は粘着性はないんだけど、しばらくすると膨張しながら固まるので、やわらかいうちに歯の隙間につめ、時間がたつとそこにしっかりはまって固まるのだ。
なので、むかしは歯につめものをした後はしばらくものを食べられなかったのだ。
簡単かつ手軽に患部をふさぐことができ、しかも安価なのでむかしはよく使われたんだけど、最近ではほとんど見られないんだ。
見た目的に目立って美しくないのと、つめものに含まれる水銀や銅などの金属が溶け出すおそれがあるからなのだ。
口中に溶け出したこれらの金属イオンが金属アレルギーの原因になることもあるので、このごろはチタンやセラミックスを使うんだよね。
セラミックスだと見た目も歯と同じようにきれいに仕上がるのだ!
保険がきかないから高価だけど。

水銀と言えば、むかしは体温計でも水銀を使っていたのだ。
水銀は熱に対する膨張率が一定で、体積が温度にほぼ線形に比例して増加するので、その性質を使って水銀の体積膨張を目盛りで刻んで温度計にしたわけ。
かつては気圧計も水銀を使っていて、mmHgなんていう単位もあるよね(1気圧は、760mmHgで、これは1013mb=1013hPaなのだ。)。
これは1気圧というのは、76cm分水銀を持ち上げるだけの力がある、という意味なんだよね。
今はあんまり使われないけど。

現代ではその強い毒性から使われることが少なくなった水銀だけど、近代までは工業技術的に非常に重要な金属だったのだ。
それは、金や銀などの金属を溶かし込んでアマルガムと呼ばれる合金を作る性質から来るんだ。
まるで水が塩を溶かすように、水銀の中には金属を溶かし込むことができるんだよね。
この液体の合金を作る性質を利用していたのが、メッキや鏡を作る技術。
これは古代から使われていた技術なのだ!

水銀は自然界では、辰砂(又は丹砂)と呼ばれる赤褐色の鉱石か、自然水銀と呼ばれる液体金属の形で算出されるのだ。
ほとんどは辰砂でそのまわりに自然水銀はあるみたい。
この辰砂は硫化水銀で、半透明から透明な赤い鉱石なんだけど、その色から、血が固まったもののように見えるんだよね。
そこから、古代中国では不老長生の霊薬として用いられていて、中国では王族が飲んでいたこともあるんだよ。
中国では不老不死の妙薬を作る技術を練丹術と呼び、その薬を金丹などとして服用していたんだけど、かえって水銀中毒で毒性があったんだよね(>o<)
水俣病で問題になった有機水銀ほど水溶性が高くないので毒性は相対的に低いとは言うけど、あまりよくないのだ。
また、その色が鮮やかなので粉にして顔料に使われていたけど、毒性があるので今はあまり使わないのだ。

この辰砂を数百度まで加熱すると水銀蒸気と亜硫酸ガスが出てくるのだ。
この水銀蒸気を集めて冷やしてあげると液体金属の水銀が得られるわけ。
ただし、この水銀蒸気は有毒なので、この作業は非常に危険なんだよ。
むかしはそれを人力でやっていたんだよね・・・。
で、こうして得られた水銀に金や銀を溶かし込んで、それをメッキに使っていたんだ。
仏像なんかの場合、銅で鋳造した仏像の表面を梅酢を使ってよく磨き上げ(梅酢に含まれるクエン酸で汚れを落とすのだ!)、そこに金や銀を溶かし込んだ水銀を温んだよね。
これを火にかざすと、その熱で水銀が蒸発し、銅の表面に金や銀が残るのだ。
このままだとまだ表面がでこぼこしていて光沢がないので、さらにへらで表面を平均化し、磨き上げ、ぴかぴかにするんだ。
まさに奈良の大仏がこの方法で金メッキされていたと考えられているんだけど、大量の水銀蒸気が閉鎖空間で発生するため、多くの作業者が水銀中毒になったと考えられているんだ(>_<)

鏡の作成にも当初から水銀は重要な役割を果たしているのだ。
原初の金属鏡は、銅や青銅の表面を磨いただけのもの。
それだとどうしても鈍いので、そこに錫メッキがなされるようになるのだ。
このとき、錫を水銀に溶かして塗ったわけ。
その後、カタバミやザクロの果汁で磨き上げるんだけど、カタバミやザクロにはシュウ酸が含まれていて、その還元力で「くもり」の原因である微細な金属の錆をとっていたのだ。

現代の鏡はガラスやプラスチックなどの裏面に金属を付着させたものだけど、最初はガラスに錫箔を貼り、そこに水銀を注いでアマルガムを作らせて付着させる方法をとっていたんだって。
ただし、これには非常に時間がかかる作業なのだ。
すなわち、超高級品というわけ。
19世紀になると、硝酸銀を使った銀鏡反応で直接ガラス表面に銀を付着させることができるようになったので、ガラス製の鏡がぐっと身近な存在になるのだ。
工業的に大量生産できるようになったんだよね。
今ではガラスだけじゃなく、プラスチックやアクリルなどの透明な板にアルミなどの金属を蒸着させて作っているのだ。
可視光の反射率という点では銀がよいみたいだけど、アクリル+アルミだと安価に軽く作れるんだよね。

というわけで、ついこの間まではだいぶ身近だった水銀も、今ではあまり見かけなくなってきているのだ。
それでも、人類の歴史の上では非常に重要な役割を演じてきた金属なんだよね。
常温で液体という特異な性質が有効利用されてきたのだ。
電池も水銀フリーになってきてますます見かけなくなったけど、今後も活躍の場は出てくるかな?