2011/12/31

え、蒸して乾燥!?

寒い季節においしい日本料理といえばふろふき大根♪
ボクはカブの方が早くやわらかくなるし、甘みもあるので好きだけどね。
前から気になっていたんだけど、なぜ「ふろふき」なのか?
まさかお風呂をわかしながらゆでるんじゃないよね(笑)

由来を調べてみると、漆器職人が漆を乾かすのに大根のゆで汁を吹き込むとよい、と教えられ、果たしてうまくいくんだけど、そのときにゆでた大根が余ったので近所に配るとこちらも評判。
漆器を乾燥させる場所が「風呂」と呼ばれていたので、「風呂吹き」大根になったのだとか。
むしろ前後逆転で、漆器を乾かす風呂に水蒸気を吹き込む際、ただただお湯をわかすだけじゃもったいないから、ついでに大根もゆでちゃえ、という方が正解かも、とも言われているよ。

ここで言う「風呂」とは「蒸し風呂」。
江戸時代以前は「風呂」と言えば蒸し風呂だったんだよね。
で、江戸時代の間、いつかはわからないんだけど、お湯につかるように変わったのだ。
弥次喜多の「東海道中膝栗毛」には五右衛門風呂の話が出てくるから、そのころ(19世紀初頭の文化・文政期)にはすでにお湯に入る風呂が一般的になっていたはずだよね。
ちなみに、人が入るお風呂でゆでた大根じゃ食べる気がしないから、風呂吹き大根は蒸し風呂がメインだったころの発明なんだろうね(笑)

で、ここでさらに疑問。
漆を乾かすのに「風呂」ってどういうこと?
乾かすというと、水分を飛ばすイメージがあるので、暖めるとしても乾燥させる必要があるよね。
でも、漆の場合は違うのだ!
「乾かす」と言っても、それは言葉上だけで、実際には水分を飛ばしているわけじゃないのだ。

漆はウルシノキの樹液から作るもので、主な成分はウルシオール(タイやミャンマー産の場合はラッコール)と呼ばれる長い炭素鎖のついたフェノール系化合物。
これが「乾かす」という工程を経ると重合して高分子の樹脂になるのだ。
それが漆器表面の被膜だよ。
この被膜により、木の器は耐熱性、耐水性、耐油性などなどが高まり、かつ、腐りにくくなるのだ。
漆器はお手入れは大変だけど、しっかり手入れすると長持ちするんだよね。

採取したウルシノキの樹液(これを荒味うるしと言うのだ。)は、最初は乳白色なんだけど、空気に触れると褐色になるんだ。
この荒味うるしに少し熱を加えて流動性を上げてから濾過をし、不純物を取り除くのだ。
こうしてできたのが「生漆」で、これをよく攪拌し、成分を均一にするとともに粒子を細かくすることを「やなし」と言うんだ。
漆の主成分のウルシオールは水に溶けないので、ウルシオールは小さな粒子状の脂が水溶液中に分散しているエマルジョンの状態なのだ。
その油の粒子を細かくし、さらに均一に分散させるわけ。

さらに天日干しなどで低温のまま水分を蒸発させる工程を「くろめ」と言い、ここまで来てやっと塗れる漆になるのだ。
この生成過程で鉄分を加えると色が化学反応で黒く発色するんだ。
それが重箱などの黒漆だよ。
何も入れずにそのまま塗るのが透漆(すきうるし)で、木地の目を活かしたいときや、金箔を貼るときの接着剤に使われるのだ。
辰砂(硫化水銀)などの顔料を加えて色をつけることもあるよ。
椀ものなんかであざやかな朱色のものがこれ。
(漆は水に溶けないので、まず水銀などは椀の中身には溶け出さないよ!)

この後、漆は何工程にも分けて「塗り」が行われるんだけど、塗った漆を乾かすのが「風呂」と呼ばれる場所なのだ。
漆の「乾燥」というのは、漆に含まれている「ラッカーゼ」という酵素の作用により重合して高分子化すること。
さらに空気中の酸素で酸化して硬化するのだ。
このうち、空気酸化は常温でもどんどん進むんだけど、酵素反応はある程度の熱と湿気が必要なので、わざわざ「風呂」で「乾かす」んだって。
ちなみに、「くろめ」の時に低温で水分を飛ばすのは酵素を失活させないためだよ。
具体的には、ウルシオールのベンゼン環についている水酸基が架橋してつながるのだ。
空気の酸化では長い炭素鎖に二重結合ができているんだけど、そこは紫外線に弱いので、漆器は洗った後によく拭いてから日に当てずに乾かす必要があるんだよ。

一方、酵素反応を使わず、単純に加熱して固める方法もあるのだ。
それが焼き付けと呼ばれるもの。
120~150度で30~60分焼くんだって。
この方法だとウルシオールが熱重合するんだけど、金属のような塗りではうまく漆がつけられない素材でもコーティングできるのだ。
甲冑なんかの武具の場合はこの焼き付けでコーティングしているのだ。

というわけで、大根から漆の話に変わってしまったのだ(笑)
手入れが大変だから最近は普段使いはしなくなってしまった漆器だけど、やっぱり風情があるよねぇ。
何より、英語ではjapaneseと呼ばれるくらい、海外では日本の名産品と思われているものなのだ。
ちょっとは漆のことを知っていると、海外に行ったときに役に立つかも。
ちなみに、中国や東南アジアにも漆器はあるので日本の特産品ではないよ。
磁器をchineseと呼ぶのと同じで、最初に欧州に入ったときにどこの名産品だったかが重要なのだ。

2011/12/24

乾燥注意報発令

この時期いやなのは乾燥肌。
ボクは手や足ががさがさになるんだよね(>o<)
見た目が悪いのもあるけど、乾燥しているところはざらざらするから布なんかが引っかかるのだ。
なので、この時期は保湿クリームなんかに気をつけているんだよね。
洗い物なんかをするときもわざわざお湯でなく水でやったりするんだよ!
でも、毎年毎年差鮫肌のようになってしまうのだ・・・。

この乾燥肌、文字どおり皮膚表面の水分量の低下が原因。
人間の皮膚は、一番表面にある表皮、その下の真皮、さらに下の皮下組織から成り立っているのだ。
いわゆる「皮革」は真皮の部分で、「しわ」はこの真皮に刻まれるんだよ。
真皮の繊維タンパク質のコラーゲンなんかが劣化して弾性を失うことが原因。
やけどなんかは真皮まで達してしまうと再生はムリで、痕が残ってしまうのだ(ToT)

その真皮の上の表皮は、外界と人間の体の内部を遮断する役割を持つ最終防衛戦!
適度に水をはじき、雑菌の体内への侵入を防ぎ、保温と汗の気化熱による放熱で体温調節にも役だっているんだ。
表皮の構造は特殊で、真皮のすぐ上にはケラチンという層状の硬いタンパク質を精算する表皮細胞があるのだ。
この細胞は内部にケラチンを蓄積して死ぬと、すぐにははがれ落ちずに、表皮の外側にくっついたままたまっていくのだ。
これが名高い「角質」。
古い角質はあかとなってはがれていくよ。

この角質が表皮による防護のミソなんだ。
角質の間には、皮膚の下にある皮脂腺から分泌された皮脂がしみ出て、表面に膜状になって薄く広がっているんだ。
皮脂が多いとてかりの原因となって、あぶらとり紙でとるよね(笑)
これが毛穴に詰まって雑菌が繁殖するとニキビになるのだ。
でも、皮脂には重要な役割があって、角質の内部の水分の蒸発を防いでいるんだ。
水の表面に油をはると蒸発が抑えられるよね。

角質の中にはアミノ酸やカルボン酸などの有機酸、尿素などの天然の保湿成分があって、それにより水分を保持しているんだ。
健康な状態だと20~30%くらいの水分量だとか。
これが少なくなると乾燥肌になるというわけ。
逆に、これが適度に保たれているのが、「ハリ」と「うるおい」のあるお肌だよ(^o^)/

乾燥肌の原因はいろいろとあるんだけど、一つは皮脂の分泌が悪くなることによるもの。
これは加齢やストレスが原因と考えられているよ。
この場合は代わりの油を足してあげればいいわけだよね。
なので、ハンドクリームにはセラミドとかの油脂が含まれているのだ。
馬油なんかを塗るのも同じだよ。

それと、よく言われるのが角質のタンパク質の劣化。
これはストレスにより発生する活性酸素や紫外線が原因のようなのだ。
これは骨組みががたつくから、天然保湿成分が失われていくので保湿力そのものが落ちてしまうんだよね。
活性酸素や紫外線の影響を低減させるために抗酸化剤が使われるのだ。
ビタミンE(αトコフェロール、酢酸トコフェロールなど)は親油性なのでよく配合されているよね。
保湿力を上げるのに使われるのは尿素やグリセリンなど。
高級なものではヒアルロン酸なんかも入っているよ。

人為的な原因もあって、あまりに潔癖すぎて強い石けんを使ったり、硬いタオルなどでごしごしこすると角質がはがれすぎてしまうのだ!
韓国式のあかすりなんかも赤くなったりするけど、あれも基本はこすりすぎ。
乾燥肌と同じように保湿力が失われ、かゆみが出たりするのだ。
ちなみに、皮膚の表面には常在菌がいるけど、この常在菌が皮脂を分解することで皮膚表面が弱酸性になっていて、それが抗菌作用を発揮しているのだ。
洗いすぎると常在菌叢にも影響が出て、かえって皮膚の健康に悪影響なんだよね。
くさくならない程度、あかがぼろぼろ落ちない程度、適度に洗うことが大切だよ。

乾燥肌になると、かさかさになるだけでなく、ひどくなるとかゆみとか痛みが出てくるよね。
これは皮膚の防御力が落ちるため。
保湿だけでなくて、皮膚は外界からの様々な刺激を防いでいるけど、その防御力は落ちるので、刺激がダイレクトに伝わるようになるのだ。
かゆみと痛みは実は同じもので、痛覚神経が弱く刺激されるとかゆみ、強く刺激されると痛みとして感知されるだけなので、皮膚への刺激でダメージを受けている、という証拠なのだ。
さらにひどくなるとあかぎれなんかになるけど、これはもう物理的なダメージにまで至っている、ということだよね(>o<)

というわけで、乾燥肌の仕組みはなんとなくわかったのだ。
保湿クリームは自分の状態(皮脂が少ないのか、角質のダメージなのか)をよく見極めて使わないと効果がないんだよ。
皮脂が出ているのに油系のクリームをぬってもてかりがひどくなるだけだし。
でも、それ以外でも、バランスのよい食事をする(肉食が多いと酸化数の多い質の悪い皮脂に成分が変わってしまうのだ!)とか、睡眠をよくとるとかも大事みたい。
冬はまだこれから。
乾燥対策をきちんとしないと!

2011/12/17

油をぬいてさっぱりと

ふと思ったんだけど、「脱脂綿」ってすごい言葉だよね。
油脂を除いた綿というそのままだけど(笑)
最近ではコットンと呼ぶ方が多いからあまり聞かないけどね。
で、なぜそもそも「脱脂」にする必要があるのか、などをつらつらと調べてみたのだ。
さすがに「脱脂粉乳」とは違うもんね、仲間みたいな響きだけど。

もともと「綿」は綿花の種を囲んだ白く細い繊維状の部分。
綿が開いた状態で収穫されたものが実綿(みわた)で、中の種は綿実(めんじつ)と言うんだよ。
綿毛の部分だけをはずし、これを2つのローラーの間に圧縮しながら通すと、種だけが手前に落ちて残って、綿毛だけが取り出せるのだ。
これが「綿繰り」という作業。
かつては弓状の道具でこの綿毛を弦ではじいてほぐしていたんだ。
これを「綿打ち」と言うんだけど、このときに残っていた異物やゴミなんかを除くのだ。
さらに、こうしてほぐした綿毛をくし状の針ですいてやると、長い繊維と短い繊維に分かれて、長い方はよって糸に、短い方は紙の原料なんかにするんだって。
綿糸にした後さらに織り込むと綿布となるのだ。

残った綿実は油分が多いので、ごまと同じように絞ると油がとれるのだ。
それが綿実油。
精製技術が低かった頃は黒~赤の色のついた、あまりきれいでない濁った油しかとれなかったらしいんだけど、石灰を使った精製法が開発されてからは透き通った透明な上質な油がとれるようになったのだ。
綿実油は酸化しづらいこともあって、揚げ油やツナ缶に使われたりしているよ。
かつては菜種油なんかより高級品として扱われていて、今でもビタミンEが豊富だったりするのでちょっと高級な食用油として使われているのだ。
でも、綿花自体をほとんど輸入に頼っている我が国(数字的には自給率0%)では、当然綿実油もごくわずかしか作られていないよ(>o<)
木綿の副産物とは言え、製造コストが高いのがネックみたいで、その意味では、健康食品とかの付加価値がつかないと売れないってことみたい。

で、話はもどって脱脂綿だけど、不純物を取り除いた綿毛を水酸化ナトリウムで処理し、さらに次亜塩素酸で漂白するとできるのが脱脂綿。
ほぼ純粋なセルロース繊維だけになるんだって。
水酸化ナトリウム処理をすることで油脂分は鹸化されて水に溶けていき、次亜塩素酸でクリーム色っぽい綿毛が真っ白になるのだ。
セルロースは人工合成もできるけど、綿毛状のシートに加工する上では天然物を使った方がよいみたいだね。
もともと木綿は吸水性が高いんだけど、余分な油脂分をさらに除いているのでより吸水性が高くなっているのだ。
つまり、水をはじかないのでしっとりとなじむわけ。
薬液や化粧水をふくませるにはその方が便利だよね。

綿花は古代から栽培されていて、人類に利用されてきているんだけど、日本で本格的に衣料に使われ始めたのは戦国時代なんだって!
もともと平安時代に綿花が伝えられたらしいんだけど、日本では根付かず、ずっと輸入に頼っていたらしいのだ。
なので、絹と同様に木綿も高級品で、庶民は麻布を使った衣服を着ていたんだそうだよ。
麻布はごわごわして肌触りもよくないし、密に織り込んでもけっこう寒いので、あんまり着心地はよくなさそうだよねorz
布団の綿もないわけで、冬は寒そうなのだ・・・。

そんな綿花は戦国時代に再度上陸し、このときは栽培が根付いたのだ。
まずは綿花が再上陸した河内から全国に広がっていったんだって。
江戸時代に突入すると生産量も上がり、庶民の衣服にも使われ始めたらしいよ。
こうして木綿が日本の衣料の主流になっていくのだ。
お布団にも綿が入るし、冬には綿入りのあわせの着物も登場。
これでだいぶあたたかいね♪
木綿は吸水性がよくて肌触りもよく、通気性もあってむれづらいのに保温性があって温かいから、日本の風土によく合っていたんだよね。

明治になってもしばらくは関税による保護で国内の綿花栽培も盛んだったんだけど、明治29年(1896年)に関税が廃止されると海外の安い綿花が大量に入ってくるようになって、それを使った繊維工業が発達するのだ。
木綿の生産量は上がったんだけど、国内の綿花栽培は衰退の一途。
さらに、化学繊維の台頭もあって、だいぶ様相が変わって現在に至るそうなのだ。
でも、最近ではオーガニック・コットンとか言って、むかしながらの木綿が再び脚光を浴びているよね。
それに、やっぱりまだまだ肌着などは木綿が好まれているのだ。

ボクは帯電体質なこともあって、木綿の服が好きなんだよね。
化繊だとすぐにビリビリ来るから(笑)
でも、こうして調べてみると、意外と日本での木綿の衣料の歴史ってそんなに深くもないんだな、とびっくり。
ただ単に名前が気になって調べてみただけだけど、なかなかおもしろい結果になって満足だよ(^o^)/

2011/12/10

感電注意

いよいよこの季節がやってきたね・・・。
そう、乾燥した冬の時期に人類を恐怖のずんどこに陥れる、静電気!
ドアノブにさわろうとして、電車の手すりに触れようとして、はたまた、人にさわろうとしただけでビリビリと来るのだ(>o<)
ボクなんかこの前シャツを脱ぐときに目の前に「青い稲妻」が見えたよ。

静電気は電気を通さない絶縁体が摩擦されるとそこに正又は負の電荷が蓄積したもの。
これが一気に放電されるとびりっと来るのだ。
なんだか自分が電撃を受けているようだけど、実際は自分の指先から放電されていることもあるんだよ(これはどっちに帯電しているかによるのだ。)。
空気が湿っていると静電気が空気中に逃げやすいのでそんなに気にならないんだけど、乾燥していると体に電気が残ったままの帯電状態が続くのだ。
それで金属のような電気を通しやすいものに近づくと放電してしまうわけ。
羊毛や化学繊維だと特に帯電しやすいので、柔軟剤を使って摩擦を少なくしたりするのが予防策だよ。
繊維の中に金属が織り込まれていて、静電気を逃がしやすくしている特殊な服もあるみたい。

でも、最近では、キーホルダー型の静電気除去装置、というか、静電気を先に逃がしてくれる便利なグッズがあるのだ。
手に持って先に金属にくっつけると、そこで接地(アース)して、帯電した電気をやんわりと逃がしてくれるのだ。
静電気でびりっと来るのは一気に放電されるからで、ゆっくりと電気を移動させてあげれば何も感じないんだよ。
それを助けてくれるグッズなのだ。

原理は意外と簡単で、抵抗値の高い導電性のゴム又はシリコンゴムから電気を逃がすようにしてあるんだ。
自分が帯電していると、まわりと比べて電位(電圧)が高くなったり、低くなったりしている状態なのだ。
その差分を埋めようと放電して電気が流れるとびりっと来るわけ。
人間の体はほぼ絶縁体なので、通常は電気が流れないんだけど、一定の条件を越えると(電位の差の大きさと距離)、火花放電(スパーク)の形で長短時間のうちに一気に電気が移動するのだ。
この電流が流れるとき、間に抵抗値の高い導電体を入れておくと、スムーズに、そして小さな電流が流れることで帯電状態が解消されるんだ。
電流が少なくてすむのは抵抗値が高いからで、オームの法則によるんだよ(電圧=抵抗値×電流なので、抵抗値が大きいと電流が小さくなる!)。

最近のものは電気を逃がすと液晶が光るようになっていたりするよね。
それがまた電気が動いているのが実感できて楽しいのだ♪
これは電気を逃がすときにちょっとだけその電気を使って光らせているのだ。
本体の中には放電管が入っていて、導電体から外に流れる電流のほか、一部が放電管に来るようになっているんだ。
帯電している量が多いほど、放電管に流れる電流も多くなるんだけど、比例するわけではないから、だいたいの目安くらい。
それでも、おっ、たくさん帯電していたな、とわかるとなんだかうれしいよ(笑)
びりっ!、なしで外に逃がしているしね。

で、このグッズの主役の導電性ゴムがどういうものかというと、それ自体では絶縁体のゴムやシリコンゴムに導電体である黒鉛の粉(カーボンブラック)や金属の微粉末を混ぜ込んだものなんだ。
本体自体は絶縁体だけど、中にちょっとだけ電気を通すものがまぶされているので、全体としてちょっとだけ電気が流れるようになっているのだ。
導電体を混ぜる量で電気の流れやすさが変わるので、用途に応じて使い分けるんだって。

その用途というのは何も静電気のびりっ!を防止するだけじゃないのだ。
精密機械工場だとちょっとの静電気で電子回路がダメになるので、入口のゴムの静電気除去パッドを踏むんだよね。
それも導電性ゴム。
もっと身近なものでは、リモコンのボタンやキーボードのボタンの裏側にあるシリコンなんかもこれだよ。
キーボードでここにほこりがつくと反応が悪くなるんだよね。
柔軟に動くゴムを使うことでスイッチングを容易にしているのだ。
このゴムが回路に接触した瞬間に電気が流れてON、離れるとOFFといったカンジだよ。

この導電性ゴムは導電性ポリマーの一種なんだけど、もう一つ種類があるのだ。
それが白川英樹博士がノーベル化学賞を取った導電性プラスチック。
こっちは導電体を混ぜ込むのではなくて、もともと電気を流すプラスチックなのだ。
高分子樹脂なんかは基本的には電気を流さない絶縁体なんだけど(天然ゴム自体が高分子樹脂だよね。)、炭素間の二重結合やベンゼン環(いわゆる「亀の子」)が規則的に並ぶような高分子は少し電気を流すのだ。
これは、構造式で書くようには二重結合の位置はきちんと決まっておらず、全体にπ電子と呼ばれる電子が偏在しているような状態になっているんだ。
このπ電子を介してところてん方式で電子の動きが伝えられるので、電気が流れるというわけ。

混ぜ込み型の導電性ポリマーよりもよく電気を流すところがポイント。
よく言われるのは折りたたみ型の携帯電話のヒンジ部に使われているという話だよね。
銅線でも曲げること自体は可能なわけだけど、何度も曲げたり伸ばしたりすると金属疲労で断線してしまうのだ・・・。
なので、もともと柔軟に動く電気を通す物質が重要だったんだ。
スマホになるとありがたみが薄れるような気もするけど、別に活躍の場はそこだけじゃないからね(笑)

2011/12/03

ぴりっと赤い

最近気になっている食べ物は「紅しょうが」。
ほどよい酸味と辛みで口の中がさっぱりするよね。
脂っこい肉料理なんかに入れるとおいしいのだ♪
小さい頃はよけて食べていたけど、オトナになるとかかせなくなるよね(笑)

そんな紅しょうがだけど、どうやって色をつけているんだろうと気になったわけ。
調べてみると、伝統的な紅しょうがは梅干しと一緒に作られることがわかったのだ。
梅干しを漬けたときに副産物でできる梅酢に新しょうがをつけるのが正式で、あそを後で細切りにするんだとか。
スーパーなんかで売っているやつは、あらかじめ細切りにした新しょうがを赤い食用色素を含む調味液につけこんだものだそうだよ。
このとき使われる色素はタール系の赤102号というやつで、あんまり体にはよくなさそう・・・。

梅干しは、完熟した梅の実を塩で漬けることから始めるんだけど。このとき浸透圧の関係で梅のみから水分がにじみ出てくるのだ。
それが「梅酢」というやつで、梅から水分だけでなくクエン酸も大量に出てくるんだよね。
そのせいで非常に酸っぱいので「梅酢」と呼ばれるのだ。
塩漬けの段階で出てきたのが「白梅酢」で、真っ赤な梅干し(いわゆる「紫蘇梅」)を作るときはこの梅酢を赤紫蘇で色づけして、「土用干し」と言って塩漬けした後しばらく乾燥させた梅の実(「白干し」という状態だよ。)を再度漬け込むのだ。
ちなみに、白干しを昆布と一緒に漬け込むと昆布梅、鰹節と一緒に漬け込むと鰹梅、蜂蜜と一緒に漬け込むと蜂蜜梅となるのだ!

このときの真っ赤な梅酢が「赤梅酢」で、梅干しを漬けて残った赤梅酢にしょうがを漬け込むのが真っ赤な紅しょうがの伝統的な作り方だよ。
ところが、白梅酢のままで新しょうがを漬け込むこともあるのだ。
この場合、梅酢の中の酸(クエン酸)と梅の実に含まれるアントシアン系色素が反応して淡いピンク色になるのだ。
お寿司についてくるガリなんかも淡いピンク色のものがあるけど、あれもしょうがを甘酢に漬け込んだときに酢の中の酸と色素が反応しているんだ(ひねしょうがを使うとピンク色にならないみたい。)。
上品な色の天然物(?)の紅しょうがはこうして作られているんだ。

本来の紅しょうがはかたまりのままじっくりと漬け込んで芯まで赤く染まってから切るわけだけど、時間がない場合は切ってから漬けると早いみたい。
大量生産の場合は、梅酢にアミノ酸やらを足した調味液に切ったものを漬け込むんだけど、これはあっという間に漬かるみたい。
調味液の方も浸透しやすいように工夫してあるんだよね。
さらに、少し漬けただけで調味液と一緒にパックして出荷してしまうのだ。
で、流通している間にも漬けている状態になって、手元に届く頃に食べ頃になるというわけ。

お寿司のガリの場合は口の中をさっぱりさせるだけじゃなくて、その殺菌作用で生魚を安全に食べる、という使用目的もあるのだ。
間にガリを挟むことで前のネタの味を一回リセットするとともに、殺菌も兼ねるわけ。
それと、しょうがの力で生魚を食べて冷えた体を温める、という効果もあるとか。
一方、紅しょうがの場合は彩りや味のアクセントといった役割が強いんだよね。
添えられる料理を見ても、あまり殺菌作用は期待されていなさそうなのだ。
茶色い焼きそばや牛丼なんかだとやっぱり赤い色があった方が見た目にもアクセントとなるし、油っぽさも酸味と辛みで緩和されて味が引き立つのだ!

ガリの場合は甘酢なのでそんなに塩分は入っていないけど、紅しょうがは梅干しの副産物の梅酢で漬けるので、実はけっこう塩分を含んでいるのだ。
伝統的な梅干しは塩分濃度が20%を超えるために長期保存が可能なわけだけど、それを漬けていた梅酢にもけっこうな量の塩分が含まれていることになるよね。
梅干しはその後の干す過程で水分が飛ぶのである程度塩分は濃縮されるけど、それでも梅酢には侮れないほどの塩分が含まれているのだ。
10%を超えるようなので、実は海水よりしょっぱい?

そんな梅酢に漬けるわけで、紅しょうがも意外と塩分が含まれていて、食塩相当量で見ると、昆布の佃煮とかと同じレベル。
イカの塩辛やシラス干しよりも塩分が多い場合もあるのだ!
梅干しに比べると1/3くらい、しょうゆや味噌に比べると半分以下だけど、それでも多いよねぇ。
市販されているものは調味液につけたものなのでけっこう塩分は抑えてあると思うけど、梅干しも梅酢も紅しょうがも自分で作るとけっこうな塩分になるので注意が必要なのだ。
自分で作って材料的には安心でも、塩分摂取の観点では危険かもよ。
ただし、塩分のおかげで長期保存は可能。
逆に市販のものは塩分を抑えているので、一度開封すると長期保存できないし、冷蔵庫でしっかり冷やして保存しないとダメだったりするんだ。

そんなに量を使うわけじゃないからと言いながら、牛丼・豚丼なんかを食べるときはついつい紅しょうがを大盛りにしてしまうんだよねorz
これからは少しだけ気をつけてみようかな。
牛丼とかを食べた後はのどが渇くけど、実は汁の濃さよりも紅しょうがが原因だったりして(>o<)