2012/03/31

インディゴはインドアイより出でて徐々に薄くなる

4月と言えば新入社員が入ってくる季節♪
それまでの学生生活からはがらっと変わるよね。
生活リズムもそうだけど、服装も変わるのだ。
多くの人はスーツで職場に行くことになるけど、それこそ学生時代はジーンズとTシャツでもよかったわけだから、最初のうちはその窮屈さに辟易とするのさ(笑)

でも、むかしはジーンズで学校に行くと怒る先生もいたんだよね。
それは、ジーンズがもともと作業着として作られたもので、作業着で神聖な授業に来るとは何事だっ!、ということなのだ。
日本の場合は戦後に米国文化の象徴のように、憧憬を伴って入ってきたからそんなイメージはあまりないけど、米国の大学ではそうだったみたい。
むかしは米国帰りでそういうのに感化された先生がいたんだろうね。
今でも米国の大学ではジーンズじゃダメなことがあるから注意が必要なのだ。

このジーンズが生まれたのはゴールドラッシュに沸く19世紀後半の米国。
1870年に仕立屋のヤコブ・デービスさんが馬車の幌やテントに使われていた丈夫なデニム生地でズボンを作ったのだ。
金鉱山で働く鉱夫からはすぐにすれてズボンがすり切れてしまうので丈夫なものが求められていたんだよね。
これが好評を博したので、類似商品が出回らないうちに特許を取ろうとしたんだけど、お金がない!
そこでデニム生地のメーカーと権利を折半することにして、メーカーを通じて特許を取ったのだ。
そのメーカーこそ、今もジーンズの一大ブランドであるリーバイス社。
リーバイ・ストラウスさんの会社なので「Levi's」なのだ。
こうして、ジーンズの原型が生まれたわけ。

ところが、この当時のジーンズはまだ青くないのだ。
幌とかテントとかの生地の転用だったので白っぽかったんだよね。
これが青くなるのはインディゴという染料で染められるようになったから。
当時、インディゴで染めると虫除け・蛇除けになると考えられていて、開拓時代のフロンティアでおそれられていたガラガラヘビ対策とか言われているよ。
ところがどっこい、すでにこの時代のインディゴにはそういう効果はなかったというのが通説。

天然のインディゴはインドのコマツナギから取られてものが有名で、欧州ではインド・東南アジアから輸入していたのだ。
ローマ時代から知られていたらしく、香辛料と並んで超貴重品だったみたい。
大航海時代になって海路も開拓されるとかなり広がりを見せるようになるけど、まだまだ貴重品なのだ。
ところが、19世紀の終わり、インディゴの化学合成に成功するのだ。
こうして、安価にインディゴが使えるようになり、ジーンズのような作業着にも使えるようになったわけ。
もともと天然インディゴにはジョチュウギクに含まれるような殺虫成分のあるものが微量に含まれているので「虫除け」になったんだけど、すでに合成インディゴになった時点でその効果は望めないのだ。
もはや「気持ちの問題」だね。

インディゴ自体は水に溶けないので、まずは水に溶ける形にしてから染める必要があったんだよね。
これもインディゴ染めが高価だった原因の一つで、毒性のあるインディゴを多段階の危険な作業が伴う染め方で染めていたんだそうだよ。
さらに、そういう性質なので選択で色落ちしやすい染料でもあるのだ(>o<)
古来からいろいろと工夫されているようだけど、欧州で18世紀までに使われていたのは腐った尿に溶かして染めるというもの。
尿中の尿素などによりインディゴが還元され、水溶性のインディゴ白という状態にしていたのだ。
このときは黄緑色の染料で、布を染めて乾かしていると、その間に再びインディゴ白が空気中の酸素で酸化されて青くなっていくんだって。
19世紀になると尿素が合成できるようになったので、尿素と合成インディゴで工業的に大量に染められるようになったのだ。
英国では、還元剤としての硫化ヒ素(III)と混ぜてから染めるペンシルブルー法(濃く染めることが可能)、直接繊維に不溶性のインディゴを塗りつけてから硫酸鉄(II)のそうに浸して繊維に浸透させるチャイナブルー法(色は薄いが細かい模様が描ける)などが19世紀に出てきたんだって。
化学が発達して、いろいろと工業的に工夫できるようになったのだ。

このインディゴを使った染めは日本でも発達していたのだ。
それは藍染めで、日本に自生するタデアイもインディゴの前駆体であるインディカンを含んでいて、その色素を利用して染色を行ってきたのだ。
ちなみに、アイヌの人たちが利用していたのはウォード、琉球で使われていたのはリュウキュウアイというもので、別の植物なんだって。
6世紀ころに中国から伝わり、江戸時代の徳島で大きく発展したんだって。
それまでは薄くしか染められなかったものが、「藍玉」が作られるようになってから、今の藍染めの作務衣なんかで見るような濃い色での染色ができるようになったんだよ。

古くは生葉染めといって生葉をたたきつけたり、生葉の絞り汁で染めたりするんだけど、インディゴは水に不用なので淡くしか染まらないのだ。
これは前駆体のインディカンは水に溶ける性質を利用して、インディカンのうちに繊維に染みこませているんだよ。
次に出てきたのが乾燥葉染め。
これではもうインディゴになってしまっているので、還元反応をしながら染める必要があるのだ。
古来どうやってきたかはよくわからないけど、おそらく木灰汁や石灰などのアルカリ溶液で還元しながらやったんじゃないかな?
でも、これもやっぱり淡い色にしか染められないのだ。

そこで登場するのがすくも染めという方法。
乾燥した葉を室の中で発酵させ、それをつき固めて「藍玉」を作るのだ。
この藍玉は持ち運びもでき、乾燥・発酵過程を経ることで色素も濃縮されているので便利なんだ。
ちなみに、インドの場合は、生葉を水につけて発酵させ、石灰で色素を抽出して固めるんだって(こっちの方法の方が不純物は少ないらしいよ。)。
やっぱり木灰や石灰で還元してから染液を作るのだ。
藍玉を木灰汁(草木の灰を熱湯に入れて上澄みをすくったもの)に入れ、そこにふすま、石灰、日本酒などと瓶に入れて攪拌すると染液ができるのだ。
10日くらい経つと、水面に藍色の泡「藍の華」が出てくるんだけど、これが染め頃。
何度もこの染液に染めることで日本独特の藍染め「ジャパン・ブルー」ができあがるのだ。

藍染めは布や糸を何度も染めて青く青くするけど、ジーンズに使うデニム生地の場合は縦糸だけ染めてあって、横糸は白いままで綾織りにするんだ。
なので、表は青いけど、中は白いというようになるわけ。
使い込みによる色落ちは藍染めやジーンズの醍醐味だけど、ジーンズの場合は過度に色落ちしないように裏返してから漂白剤を含まない洗剤で洗うのがよいそうだよ。
剣道着なんかはあんまりあざやかな色だと素人っぽいから早く色を抜きたいかもしれないけどね。

2012/03/24

かっふ~ん

春の訪れは花粉の訪れ。
まだまだ寒いというのに、すでに花粉症の人はつらそうだよね(>o<)
幸いにしてボクはまだそのおそろしさは未体験なので平気の平左なのだけど、苦しんでいる人を見ていると、いつか自分も?、と怖くなるのだ。
そんなくしゃみと涙を誘発する花粉だけど、そもそも花粉ってなんだっけ、ということがいまいちよくわからなかったので調べてみることにしたのだ。

花粉は植物の有性生殖に関与しているので、動物の精子と同じで単細胞なのかと思ったら大間違い!
ことはそんなに単純ではなさそうなのだ。
花粉も生殖細胞なので、まずは減数分裂するんだけど、花粉母細胞から4つの細胞ができるのだ。
動物の場合はここからそのまま生殖細胞へと分化していくんだけど、植物の場合はその先にさらに体細胞分裂をするのだ。
花粉自体は細胞壁で覆われていてひとつの細胞のように見えるんだけど、中は細胞分裂して分かれているというわけ。
これは受粉のメカニズムにも関係しているのだ。

花粉は花粉管細胞と生殖細胞に分かれていて、あわせて小胞子と呼ばれるのだ。
生殖細胞(又はその前駆体細胞)は花粉管細胞の「中」にある状態で、ミトコンドリアのように細胞内に取り込まれている状態なのだ。
花粉はめしべの先端にある柱頭に付着して受粉すると、花粉管という管をめしべの中に伸ばしていって、生殖細胞のある胚珠まで行くのだ。
花粉管が伸びている途上で生殖細胞は分化していくんだけど、常に花粉管の先端に来るようになっているんだって。

イチョウなどの裸子植物の場合は、生殖細胞は精子になり、胚珠中の卵細胞と受精するのだ。
植物で精子が形成されることがわかったのはけっこうな発見で(しかも、東洋にだけ残る生きた化石のイチョウで!)、東大の小石川植物園にはその発見碑があるくらいだよ。
被子植物の場合は、生殖細胞はほとんど原形質を持たない細胞核そのもののようなもので、それが胚珠の中の卵細胞と受精するんだけど、花粉管の中にある間にさらに二つに分かれていて、「重複受精」という特殊な受精の仕方をするのだ。
ひとつはそのまま胚となって固体まで成長するんだけど、もう片方は胚乳となって、趣旨が発芽するときの栄養成分となるのだ。
なので、それぞれを生殖受精と栄養受精と呼ぶみたい。

とにかく、受粉してから受精するまでに雄性生殖細胞を雌性生殖細胞まで届ける必要があるので、花粉管細胞の中に取り込まれていて、それが放出されるという特殊な形態になっているのだ。
ま、動物から見ると不思議だけど、植物から見たら当たり前なんだよね(笑)
なので、花粉は単細胞ではなく、複数の細胞からなる細胞の集合体なのだ。
いやあ、高校生物をとらなかったとは言え、まったく知らなかったよ。

受粉と言えば、自家受粉と他家受粉の2つがあるよね。
自家受粉は同一個体内で花粉がめしべに受粉して受精することだけど、花が開く勢いとか、少し風などで揺れてなどで受粉するのだ。
この場合、楽は楽だけど、遺伝的な多様性の確保の点からはあまりよいことではないんだよね。
近くに同種の植物がいない場合は有利だけど、そうでない場合は単性生殖と同じようになってしまうのだ!
そこで、自分の花粉で受粉しないようにしたのが他家受粉。
自家不和合性というのが発達していて、自分自身が非常に近縁な個体からの花粉では受粉しないメカニズムが構築されているのだ。
そうなると、よその花粉をどうやって受粉するかという問題が出てくるわけ。

被子植物の多くでは、昆虫などの動物によって花粉を運んでもらうという戦略をとっているのだ。
昆虫なら虫媒、鳥なら鳥媒だよ。
ただし、ただで花粉だけ運んでもらうわけにはいかないので、蜜を作ることで動物をおびき寄せ、その蜜を取りに来たついでに花粉を運んでもらう、ということにしているんだよね。
媒介してもらう動物によって花粉がつきやすいように花の構造も様々に発達しているのだ。
イチジクのように特定の昆虫(イチジクコバチ)に特化して花粉を運んでもらうという戦略をとっている植物もいるよ。
商品作物なんかだと人間が綿棒で受粉させたりもしているけど、多くはハチなどに花粉を運んでもらっているのだ。
なので、ミツバチの原因不明の個体数減は大きく農業に影響しているんだよね・・・。

一方で、イネなどの一部の被子植物やほとんどの裸子植物はまさに風任せで「風」に運んでもらうのだ。
これが風媒花。
動物に運んでもらう場合は蜜を作ったり、動物を呼び寄せる花を発達させるなどのコストがあるけど、風媒花の場合はコストのほとんどを花粉を作ることに傾注していて、大量に作って大量にとばして受粉させるようにしているのだ。
花粉症の人からすると迷惑千万な話だけど(笑)
風媒花の場合、風任せなので行き当たりばったり的な要素は多いけど、不特定に広範囲広げることはできるのだ。
ただし、風が吹いてくる方向はそんなに大きく変わらないから、どうしても風下方向にしか広がっていかないけどね。
動物による媒介の場合は動物の行動範囲にもよるけど、間に風を遮る障害物があっても動物に乗り越えてもらえるという利点があるんだよね。

そんなわけで、スギやヒノキが花粉を飛ばすのはけしからんと言いつつも、植物の性質だから仕方がないことなのだ。
ヒトが登場するよりもはるかむかしから続けていたことだしね。
でも、花粉症の原因が、微粘膜に付着した花粉が花粉管を伸ばし、それが粘膜を刺激して・・・、とかだったら少し気持ち悪いよね。

2012/03/17

イスカンダルまではどれくらい?

震災とそれに続く原発事故から1年。
まだまだ復興には課題が多いね。
そんな中でも将来にわたって気にしなくちゃいけないのは放射能の問題。
宇宙戦艦ヤマトの世界だと、放射能を除去できるコスモクリーナーをとりにイスカンダルに向かうのだ。
そんなのがあればいいのに!(原理的にむずかしいけどね・・・。)

そんなイスカンダルまでの距離は148,000光年!
光速で進んでも15万年かかる距離なのでワープ航法を使うわけ。
でも、こういう遠くの星までの距離はどうやって測るのか。
きちんと推定する方法があって求められているんだよ。

もっとも簡単な距離の測り方は、自分で歩いてみて、かかった時間で距離を推測するというもの。
方向が加われば位置も特定できるよね。
これと似たような方法でやられているのがレーザー測距。
月などの比較的地球に近い天体で、光を反射するものに使えるのだ。
原理は簡単で、レーザー光を照射し、その反射光が帰ってくるまでの時間を計測して、そこに光速をかけて距離を求めるというもの。
遠くになればなるほど散乱が多くなって反射光が弱くなるし、もともと大気による屈折・散乱なんかもあるから何度も継続して計測しないと正確には測れないのだ。

火星などの地球に近い惑星はレーザーで距離が測れるんだけど、太陽の場合は光を反射してくれないので測れないのだ(>o<)
そこで使うのが計算式。
惑星の公転運動はケプラーの法則(角運動量保存の法則)に従うので、地球以外の惑星までの距離がわかっていれば、太陽までの距離が計算で求められるのだ。
古典的には、惑星の動きをつぶさに観測し、複雑な幾何学的計算をして太陽と地球、他の惑星の位置関係を推測したんだよ。
その積み上げがあるから、太陽までの距離(=1天文単位)が推定できるのだ。

この太陽までの距離=1天文単位をもとに、もう少し離れた位置にある恒星までの距離も計測できるんだ。
それは三角測量を使ったもの。
地球は太陽のまわりを公転しているので、恒星の見え方は季節的に変動しているのだ。
ちょうど公転面を底辺とした円錐状になるよ。
そうすると、春分と秋分など、公転面の端と端の位置関係でそれぞれ恒星の見える角度を計測すると、その円錐の先っぽの分だけずれることになるんだよね。
それが年周視差と呼ばれるもので、これが正確に測れれば、三角関数を使って公転面の半径=天文単位を使って恒星までの距離が計算できるのだ。

年周視差が1秒(1度の3,600分の1)のときに3.26光年(これを1パーセクと言うそうなのだ。)なんだって。
でも、この1秒なんて角度を正確に測ることは難しいんだよね・・・。
実際にケプラーさんがケプラーの法則を導く基になった詳細な天文観測データを残したティコ・ブラーエさんは、この年周視差が「観測できない」ということをもって地動説を否定したくらい。
当時の観測技術では仕方がないけど、ケプラーさんのようにもう少し近い惑星の動きに注目すると地球が公転していることがわかったんだけどね(>_<)

年周視差は遠くなればなるほど小さい値になるので観測が難しくなるのと、観測対象の恒星も実は動いているという事実があるので、遠くの恒星になるとブレが大きくなるんだ。
そこで別の方法で推定したりするわけ。
例えば、同じような色(表面温度)の恒星と明るさを比べ、見かけ上の明るさは距離の二乗に反比例することから距離を推定したりするのだ。
実際には全く同じ色の星はないから、かなりの推測だけど。
さらに、円盤銀河の回転速度から距離を推定したり、ビッグバン以降の宇宙の広がりを説明するハッブルの法則を用いて光のドップラー効果(遠くに離れていく光は波長が長い方にシフトする=赤方偏移)で推定したりするんだって。

で、年周視差で距離を求めた恒星を基準とし、こうした他の方法を組み合わせてより遠い星までの距離を推定していくのだ。
これを「宇宙の距離梯子」と呼んでいるんだって。
なんか、魏志倭人伝(三国志魏書東夷伝倭人条)とか、山海経の世界における位置の説明のようになっているのだ。
つまり、ある地点までの距離と方角を示し、さらにそこからまた距離と方角を示し、とつなげていくのだ。
なので、どうしても誤差の上に誤差を積み重ねていくことになってしまうんだよね。

そこで考えられているのが、年周視差をより正確に測定しようという試み。
すでに欧州宇宙機関(ESA)は20世紀にヒッパルコスという衛星を打ち上げ、宇宙空間から年周視差の測定を行ったのだ。
宇宙からだと大気の影響も受けないし、地上とは独立した二系の観測データが得られるので、推定誤差を小さくすることができるのだ。
さらに高精度に測定しようという計画もあって、日本でも国立天文台などを中心にJASMINE計画というのがあるよ。
米国航空宇宙局(NASA)やESAも同じようなミッションを検討しているらしいけど、日本の計画では、赤外線で観測することでさらに測定誤差を小さくしようというものなのだ。
ただし、赤外線観測には技術的な課題もあるんだけどね(熱線なのでセンサ部分を極低温に保たないと正確に観測できないのだ。)。

というわけで、実は星までの距離は古代ギリシア時代から連綿と続く三角測量で測っていたのだ!
原理的には単純だけど、むしろ基礎データをきちんと観測することが課題なんだよね。
宇宙空間の壮大なスケールで三角測量をしているってなんだか不思議だよ。

2012/03/10

家出ペンギン

東京の葛西臨海水族園からフンボルトペンギンの幼鳥が逃げ出し、旧江戸川(東京と千葉の境)でそれらしく姿が確認されたのだ。
逃げた理由は調査中だということだけど、すごい家出だよね!
で、ペンギンについて気になったので調べてみたのだ。

今回話題になったのは中型のフンボルトペンギン。
ペンギンの体長というと、足下から頭の先までのような気がするけど、ペンギンはあくまで鳥類なので、二足歩行の状態で測るのではなく、くちばしの先から尾羽の先までの他の鳥類と同じ測り方をするんだって!
フンボルトペンギンの体長は60~70cmと言われるけど、実際にたった状態では40~50cmくらいなのだ。
ちなみに、もっとも大型のペンギンはコウテイペンギンで体長120cmほど(たった状態では1m弱)。
もっとも小型なのはその名もフェアリーペンギン(或いは小型ペンギン)と呼ばれるもので、体長40cmほど(たった状態では25cmくらい、かつ前傾姿勢で歩くのでもっと小さく見えるのだ。)。
葛西臨海水族園にはフンボルトペンギンとフェアリーペンギンの両方がいるので、その大きさの違いは歴然。
フェアリーペンギンはぬいぐるみくらいの大きさしかないのだ(>o<)/

ペンギンというと南極に生息しているイメージだけど、本当に南極大陸に生息しているのは大型のコウテイペンギンと中型のアデリーペンギンのみ。
アデリーペンギンというのはステレオタイプのペンギンのイメージそのままのペンギンで、クールミントガムのパッケージにいるペンギンなのだ(笑)
南極大陸のまわりのもう少しだけ温暖なところに何種類か中型のペンギンが棲んでいて、そのほか、南米大陸やアフリカ大陸、オセアニアの海沿いで、寒流によって気候が温暖なところに「温帯ペンギン」と呼ばれるものがいるのだ。
最小のフェアリーペンギンはオーストラリアやニュージーランドの南側にいるみたい。
もっとも低緯度に生活しているのがガラパゴスペンギンで、ほぼ赤道付近。
ここも寒流のおかげで冷涼な気候なんだけど、ちょっとだけ生息域が北半球にはみ出しているので、柄派越しペンギンは唯一北半球に生息するペンギンと言えるのだ!

一般に動物は寒い地方にいるものほど大型化する傾向があるんだよね。
日本にいるツキノワグマよりシベリアにいるグリズリーは大きく、極域にいるホッキョクグマはもっと大きいのだ。
これは大型化した方が体積に比して体表面積が相対的に小さくなるからで、熱放散を少なくする戦略なのだ。
熱量自体は蓄えた脂肪=体積に比例するから、その方が脂肪燃焼で発熱した熱が有効に活用できるというわけ。
ペンギンもだいたい同様で、南極に近いところにいるペンギンは大きく、温帯ペンギンは小さいのだ。
フンボルトペンギンとガラパゴスペンギンは同じフンボルトペンギン属だけど、ペルーからチリにかけて生息しているフンボルトペンギンに比べ、赤道付近にいるガラパゴスペンギンの方が一回り小さいよ。

日本は南氷洋付近で捕鯨をしていた関係で、一緒にペンギンもつかまえて持ち帰っていたらしいのだ。
漁業が盛んだったこともあってえさとなる生きた魚も豊富にあったので、早くから飼育技術が確立し、世界の動物園で飼育されているペンギンの4分の1ほどは日本にいるとも言われるくらいのペンギン大国なんだよ。
特に温帯ペンギンはあまり氷雪を好まないので、夏の間だけクーラーで冷やしてあげれば、日本の環境でも繁殖できるのだ。
今年は日中友好40周年だけど、日中国交回復の祈念として中国からジャイアントパンダが送られた際、日本からはニホンカモシカとケープペンギンが贈られたんだって!
ペンギンは日本の特使でもあったのだ。
ちなみに、一昔前には中型ペンギンをペットで飼うのもはやったよね。

ただ、野生のペンギンの多くは絶滅危惧種なのだ。
気候変化の影響もさることながら、えさとなるイワシなどの魚の乱獲や、繁殖場所となる海沿いの地域の環境汚染(重油流出やプラスチックゴミの投棄など)が原因みたい。
派遣された当初は捕獲されて肉や脂肪をとったりもしたらしいけど、もともと鳥類でそんなにとれるわけでもないので、今では資源目的での捕獲はあり得ないのだ。
ちなみに、南極条約の国内措置法の南極地域の環境の保護に関する法律では、南極でペンギンの卵を勝手にとったりすると1年以下の懲役又は100万円以下の罰金になるよ(南極での調査研究には環境大臣への申請が必要なのだ。)。

ペンギンの特徴は二足歩行とフリッパーと呼ばれるつばさだよね。
地上ではおぼつかなく歩くけど、水中では「飛ぶ」ように素早く泳ぐのだ。
海鳥の中には水中に潜って泳ぐ種類もいるけど、ペンギンは飛ぶことを捨て、さらにその泳ぐことに特化しているのだ。
そのときに役立っているのがヒレ状のフリッパー(これはものすごく硬い板のような感じなんだよ。)で、かいのように、かじのように使って泳ぐのだ。
体についた子房は寒冷な地域に適応するだけでなく、体全体を流線型に近くすることで泳ぐのにも適用しているのだ。
ちなみに、脚が短いように思われているけど、あれは脂肪に覆われているだけで、骨格で見るともっと脚が長いんだって!
それと、氷雪や砂浜の上では、フリッパーでバランスをとりながらよちよち歩くこともあるけど、おなかをつけて滑るように移動する「トボガン」という方法で進むのだ。
そうじゃないと長距離移動できないよね。

コウテイペンギンは最低気温が-60度にも達する環境に生息していることもあって、「子育て」をするのだ。
アデリーペンギンが海沿いで繁殖するのに対し、コウテイペンギンは天敵を避けて海から離れた氷原で繁殖するんだ。
雄は雌が散乱した後に交代で脚の間に卵をはさみ、おなかの脂肪でくるんで温める姿は有名だけど、その間雌はえさを求めて海に行くのだ。
さらに、ひなが生まれた後は、雌がもどってくるまで面倒を見る必要があるのだ。
コウテイペンギンは食堂から分泌する白い乳状の「ペンギンミルク」を与えることでも知られているよね。
雌がもどってくるとやっと交代してえさにありつけるのだ。
2ヶ月以上あたためるらしいけど、繁殖地に移動してからだと120日間くらい絶食期間が続くんだって!
こんな過酷な子育てなら映画にもなるよね(笑)
ちなみに、ある程度ひなが育つと二親ともえさを取りに行くようになり、ひな鳥は「クレイシ(保育所)」と呼ばれる集められた状態で若い成長に守られながら徐々に海岸へ移動していくらしいよ。

というわけで、ペンギンも奥が深いねぇ。
ボクはペンギンが好きなので動物園や水族館では必ず近くに行くんだけど、今度はもっとよく観察してみようっと。
でもでも、やっぱり鳥だから、意外と目は怖いよ(笑)

2012/03/03

実はそんなに悪くはないのかも

ラーメンはどうしても脂っぽいから敬遠しがちなんだけど、どうもこってり系がもてはやされているよね。
「背脂ちゃっちゃ」とか言ってゼリー状の脂がスープにぷかぷかと浮いているのだ。
確かに東アジア文化圏では肉や魚の「脂」をおいしいと感じる文化があるけど、個人的にはだんだん体が受け付けなくて・・・。
もともとは東アジアのモンゴロイドは寒冷気候に順応する際、体に脂肪を蓄えやすい体質になっていて、そういうのもあって脂を好むんだよね。
欧米などの肉食文化ではでは脂身の少ない赤身が好まれるのとは対照的なのだ。

この背脂と呼ばれているのは文字どおりブタの背中にある脂肪のことで、固まりの脂肪をぶつ切りにして水でじっくりとゆでるとだんだんと脂が融けてきて、とろとろになるのだ。
まだ多少固まりが残る状態で使ったり、完全にとろとろになるまで煮込んだり、使い方はいろいろ。
ラーメンに乗っているチャーシューは主に背中の肉であるロース肉を使うので、ブロックで買ってくると脂もついてくるんだよね。
おそらくそれを利用したのが始まりじゃないかと思うのだ。

ロースというのは日本独特の呼称で、裸でロースというと背中の肉(人間で言うと僧帽筋や広背筋)、、肩ロースは方の肉(人間で言うと三角筋)、わきのあたりがリブロース(人間で言うと肋間筋)のことだよ。
英語で言うとロインが近いんだけど、ずれているところがあるようなのだ。
この部分は適度に脂ものっているけど、バラ肉ほどではなく、とんかつやポークソテーなどに使われるのだ。
赤身で筋がなく柔らかい高級品のヒレ肉(人間で言うと大胸筋)に比べると庶民的だよね(笑)
とんかつの肉を見ればわかるように、分厚い脂が筋肉のまわりについていて、それを取り外したところが背脂(精肉されている状態では少し脂が残されている状態で、その外側にもっと脂肪がついているのだ!)。

この背脂をゆっくり熱して油脂だけを取りだしたのがラード。
結合組織などが油かすで残るのだ。
じっくり脂を落としながらあぶり焼きした脂身みたいな状態で、鶏皮の焼き鳥のようなものだからおつまみなんかにされることもあるよ。
なので、ラーメンの背脂はほとんどラードなのだ。

一般に脂肪酸は不飽和度が上がるほど(分子内に二重結合が増えるほど)融点が低くなるんだけど、植物油が不飽和脂肪酸を多く含み、常温で液体の「油」であるのに対し、獣脂は飽和脂肪酸が多く、常温で固体の「脂」なのだ。
馬由来の馬油が比較的融点が低くて体温に触れただけで融けるけど、牛脂のヘットはフライパンで熱しないと融けないよね。
なので、ラードも熱々のラーメンスープに入っていながら多少形が残っているのだ。

ラードの特徴としては、ほとんどが飽和脂肪酸なんだけど、少なからず入っている不飽和脂肪酸のほとんどが一価不飽和脂肪酸と言われる分子中にひとつだけ二重結合があるような脂肪酸なのだ。
オリーブ油に多く含まれるオレイン酸なんかなんだけど、一価不飽和脂肪酸は酸化されにくいので、熱をかけて抽出しても大丈夫だし、揚げ物に使っても劣化しづらいのだ。
植物油の場合は分子中に二つ以上の二重結合を含む多価不飽和脂肪酸が多いので、熱をかけるとすぐに酸化=劣化してしまい、いやなにおいがしたり、色が黄色くなったり、ねっとりと粘性が高くなったりするのだ(>o<)

ラードが揚げ物に使われるもう一つのメリットとしては、冷めてもさくさくの状態が維持できる、というのがあるんだよね。
家庭で揚げるテンプラやフライはすぐにべちゃっとなってしまうけど、これは植物油で揚げるからなんだよね。
どうしても液体の植物油が衣の中に残ってしまって、空気中の水分を吸って湿ってくるとへたってきちゃうんだよね。
ラードの場合は冷めると固体になるのでその分だけさくさく感が維持されるのだ。
沖縄銘菓のちんすこうも生地にラードを入れることでさくさく感を出しているんだよ。

このラードの代用品がショートニング。
植物油の中の多価不飽和脂肪酸に工業的に水素付加することで、一価不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸に変換するのだ。
すると、常温でもクリーム状のショートニングとなるわけ。
クッキーなどのお菓子によく使われているよね。
一見ラードと同じようだけど、植物由来なのでよりヘルシーに見えるけど、実はそうではないのだ!
ラードに含まれる一価不飽和脂肪酸はほとんどすべてが「シス型」と呼ばれる「└┘」くるっとカーブさせた形。
一方、ショートニングには「トランス型」と呼ばれる「└┐」というジグザグ構造のものが混ざっているのだ。
これが今話題のトランス脂肪酸というやつで、コレステロールを高めたり、悪さをすると言われ始めているんだよね(ToT)
米国ではトランス脂肪酸の規制が始まっているくらいなのだ。

かつてはラードは悪の代名詞のように言われていたけど、中に含まれているオレイン酸などの一価不飽和脂肪酸はむしろコレステロールを下げる働きもあるし、ショートニングに比べると健康的だと考えられるようになってきたのだ♪
とは言え、摂りすぎれば中性脂肪は増えるので注意しなくちゃだけど、そこまで体に悪いわけでもないみたい。
量に気をつけさえすれば、ショートニングやマーガリンのようなトランス脂肪酸を含む製品よりはましなのだ。
というわけで、これからは安心して背脂系のラーメンが食べられるね。
コンビニのマーガリンをはさんだパンや、さくさくのクッキーよりはましかもよ(笑)