2013/12/28

大追跡

今年もサンタさんが世界中を飛び回る様子がネットで流れたのだ。
これは、北米航空宇宙防衛司令部(North American Aerospace Defense Command)こと、通称NORADが毎年恒例でやっているイベントなんだよね。
これまで、googleやmicrosoftが協力して、地図情報にサンタさんの位置情報を貼り付け、そこに画像や動画を配置して、今世界のどこを回っているかを視覚化しているんだ。
眺めているだけでも楽しいよ。
今年は去年と同じくmicrosoftの協力でやっていて、googleは独自に追跡サイトを立ち上げているみたい。
12月いっぱい追跡の様子は公開されるのだ。

NORADは米国とカナダが共同で運営している軍事組織で、もともとは人工衛星、核ミサイル、戦略爆撃機などの上空~宇宙の監視を行っているもの。
冷戦下には米空軍に中央防衛航空軍基地(CONAD)というのがあって、そこでソ連からの核ミサイルや爆撃機の上空監視をレーダーで行っていたのだ。
1956年の米加合同軍事会議で、北米大陸上空を両国協働で監視することに合意が得られ、1957年に米国統合参謀本部で了承されて発足したのだ。
その後、アイゼンハワー政権下で実際に人工衛星が打ち上げられるようになると宇宙の監視も加わって、さらに、最近の重要な任務としては、宇宙デブリの監視もあるのだ。

時々国際宇宙ステーションにデブリがかすったなんてニュースがあるけど、宇宙デブリは地球のまわりを音速の何倍もの早さで回っているので、人工衛星などにぶつかると人工衛星を破壊してしまうのだ!
通信・放送衛星、気象衛星のような生活に関わる衛星もあるし、軍事衛星もあるから、衝突が起きないように避けないといけないんだよね。
しかも、衝突が起きて人工衛星が破壊されると、またそれがデブリになるので、大変なのだ(>o<)
中国が2007年に衛星破壊実験をしてデブリを増やしたことが各国から非難されたけど、今や宇宙はゴミにあふれていて、よけるのが大変なんだそうだよ。
それを監視しているのが米空軍で整備している宇宙フェンスというレーダー群で、その情報を各国に提供し、デブリと人工衛星の衝突が起きないようにしているのだ。
もちろん、軍事機密情報は秘匿した上で、情報提供しているんだけどね。

そんなNORADが一般に知られているのが、毎年クリスマスに行っている「NORAD Tracks SANTA」というもの。
NORADの対空レーダーがサンタさんの位置を補足し、今どの辺にいるのかを公開するともに、スクランブルをかけて航空機で追跡しているというのだ(笑)
もともとはそういう情報だけだったんだけど、インターネットの普及で視覚化されるようになったんだよね。
そのおかげで米国内のみならず、斉会中で認識されるようになったのだ。
こういうお茶目なところがあるのが米軍の余裕かな?

もともとは、冷戦下の1955年のCONADで始まったものなんだって。
コロラド州にあるスーパーのシアーズが、子供向けに「サンタ・ホットライン」というのを開設したらしいんだけど、電話番号を間違えて記載していたらしいのだ・・・。
しかも、その番号はCONADの司令長官へのホットラインの番号!
子供から当時の司令長官のシャウプ大佐に「サンタはどこにいるの?」との問い合わせに、「レーダーで調べた結果、サンタが北極から南に向かった形跡がある」と回答して以来、60年近くも続けているのだ。
で、実際に「追跡」してみると、24時間で世界中を駆け回るので、新幹線のおよそ100倍くらいのスピードで飛び回っているみたい(日本地域での移動速度からの推測)。
それでも戸別訪問はできなくて、空中からプレゼントをまく感じだけど(笑)

それにしても、カナダと共同運営になったNORADでも引き継いだのがすごいよね。
カナダもノリがよいことで。
今では人口精製なんかも活用して、サンタさんを24時間ばっちり追跡するのだ。
追跡結果をもとに、自分の家にはいつくらいに来たのかを検証しよう♪

2013/12/21

ぴりりとさっぱり

夕ごはんのおかずにマグロの赤身の刺身を買っていたんだけど、ついつい食べ忘れちゃったんだよね。
仕方がないので、翌日に漬け丼にしていただいたのだ。
付け汁に少しショウガを入れると、臭みもなくなるし、アクセントにもなるよね。
おいしくいただいたのだ。

よくよく考えてみると、日本の食卓にはよくショウガがあるよね。
薬味として冷や奴や刺身に使うだけでなく、豚肉のショウガ焼きなんてのもあるし。
煮魚や焼き魚にははじかみショウガがついてくるよ。
お寿司にはショウガの甘酢漬けのガリがつきもので、牛丼や焼きそば、たこ焼き、お好み焼き、豚骨ラーメンには紅ショウガ。
甘酒に少しショウガを入れることもあるのだ。
この場合、ショウガは臭み消しや、辛みのアクセント、殺菌作用なんかが期待されて使われているんだよね。

お寿司のガリは、ショウガを薄切りにしたものを甘酢に漬けたもので、食感ががりがりするから、或いは、ショウガを薄切りにするときにがりがり音がするから、という理由で、寿司業界の符牒としてそう呼ばれるようになったのだ。
醤油をムラサキ、お茶をアガリというのと同じ。
でも、ガリはショウガの甘酢漬けということはほとんどなくなっていて、ほとんど一般名詞化しているよね。
それだけ浸透しているのだ。

もともとは生魚を使った寿司を食べるに当たって、口の中に残る生臭さを解消するとともに、その殺菌作用で食中毒を防ぐ役割があったのだ。
通の人はガリでネタに醤油を塗って食べたりもするよね。
普通の人でも、ネタとネタの間にガリを挟むと、前のネタの味が残らないので、それぞれをおいしく食べられるのだ。
特に、脂ののった青魚やトロなんかを食べた後は、ガリを挟むとさっぱりするよね。
お寿司屋さんで熱いお茶が出るのも、それで口の中に残る魚臭のもとの不飽和脂肪酸を洗い流すためで、むかしからお寿司をおいしく食べる工夫が続けられてきたということなのだ!

一般にガリはうすいピンク色だけど、これは着色しているのではなくて、ショウガの中に含まれるアントシアニン系の色素がお酢に反応して色づいているため。
新ショウガの甘酢漬けも薄いピンク色だよね。
収穫してからしばらく保存・乾燥させているひねショウガを使うと、その色素が少なくなっているのであまり色がつかないのだ。
黄色いガリはひねショウガを使ったものだよ。
ただし、スーパーで売っているようなお寿司についている工業的に作っているガリはおいしく見えるように着色している場合もあるよ。

一方、赤い色が鮮やかな紅ショウガ。
こちらはショウガをまるごと梅酢に漬け、その後細切りにするんだって。
漬けるときに紫蘇を一緒に加えると真っ赤になるのだ(赤い梅干しと同じ。)。
これが本来の色なんだけど、市販品の多くは、細切りにしてから酢と着色料の入った調味液につけたものなんだそうだよ。
無着色をうたっている紅ショウガもほんのり赤いのは、ガリと同じでショウガ中に含まれるアントシアニン系色素によるもの。
やっぱり紅ショウガだから、赤くないととは思うんだけど、着色料はちょっとね、という声が大きいのか、最近は色がおとなしめのものが増えてきたような・・・。

日本で栽培されているショウガは3種類で、大中小の3つ。
小ショウガは名前のとおり小さいもので、谷中ショウガとして生で食べたり、やはじかみなんかに使ったりするもの。
葉と茎がついた形で八百屋さんに並ぶものだよ。
早生で辛みが強いのが特長なのだ。
一方、大ショウガは一株が1kgくらいにもなうようなもの。
手のひらのような大きなショウガの塊根がそれなのだ。
主に貯蔵されてひねショウガになり、根ショウガとして店頭に並ぶよ。
おろしショウガにしたり、漬け物にするのはこれが多いみたい。
大きくなるのに時間がかかるので、晩生なのだ。
間の中ショウガは中生から晩生で、大ショウガに比べて小ぶりで、辛みが強いのだ。
また、貯蔵しておくと繊維質が形成されてかたくなるので、貯蔵せずに加工品や漬け物に使われるんだそうだよ。

小ショウガを貯蔵せずに食べるのが新ショウガ。
ショウガ自体の色も白~薄いピンクで、鮮烈な辛さがあるのだ。
大ショウガを貯蔵したものがひねショウガで、色もショウガらしい黄土色になり、繊維質ができていわゆるショウガらしいショウガになるよ。
通常は2ヶ月くらい貯蔵して、水分を飛ばし、長期保存できるようにしているのだ。
水分が飛ぶので辛みも強くなるよ。
中ショウガは薄めの黄土色のもので、あまりかたくない状態で使ってしまうのだ。
八百屋さんとかではあんまり見かけないけど、水分が多めで色が薄めのショウガあれば中ショウガかも。

自宅でガリや紅ショウガを作る場合は、どのショウガを使うか気をつけないといけないのだ。
ガリを作るなら、新ショウガを薄くスライスして甘酢に漬けるのがベスト。
紅ショウガなら、根ショウガを買ってきて、塩漬けしてから梅酢に漬け直して作るのだ。
紅ショウガだと大変だけど、ガリくらいなら作れそうな気も・・・。
でも、漬け物って意外と作るのが大変なんだよね。
駆った方が安くておいしいことも多いし(笑)

2013/12/14

転げ回る草のように

ナショナル・グラフィックスの写真記事を見て知ったんだけど、西部劇とかでよく見かけるころころと転がっていく草の塊は、「回転草(tumble weed:転がる雑草)」というものらしいのだ。
てっきり積んでおいた干し草の山が一部崩れて転げ回っていると思っていたんだけど、あれはああいう生態のようなのだ。
不思議なものだよね。
でも、転げ回るのにも理由があるみたい。

「回転草」は、オカヒジキ属の植物で、日本でもときどき食べられるオカヒジキの仲間。
西部劇でおなじみだけど、実は150年ほど前にロシアから飼料用の草と一緒にタネが米大陸に運ばれてきて、繁殖したみたい。
もともとはウラル山脈東部の草原を転げ回っていた草なんだって。
なんとなく、米国西部のフロンティアのイメージがつきまとうけど、本来は騎馬民族が馬を駆っている間を一緒に転がっていたのかも。
1870年又は1874年に米国に来たと考えられていて、最初に発見されたのはサウスダコタ州とのこと。
そこから一気に広がったらしいよ。

その広がった何よりの理由はその繁殖力の高さ。
もともとユーラシア大陸の乾燥した草原のステップ気候で生きてきた植物なので、北米の乾燥した気候にも適応できたのだ。
しかも、最低気温が零度を越えれば発芽し、少しでも土が軟らかくなっていれば根を下ろし、ちょっとでも水分があれば成長するんだって。
回転草の吸水力は目を見張るものがあって、これが生えてしまうと周りの植物から水を奪ってしまうのだとか。
小麦畑の近くに来ようものなら小麦の生育に悪影響が出るのだ(>o<)

回転草には小さなとげとげがあって、もとはこれが葉なんだって。
で、そのとげの中に小さな花をつけ、実をつけるのだ。
1年草なので秋口になると枯れて茶色くなるんだけど、タネの準備が整うと目元からぽっきりと折れて、米国の秋によく吹く強風にあおられて転がっていくのだ。
このとき、ただ転がるだけでなくて、転がりながらあちらこちらにタネをまいていくんだ。
鳥に実を食べさせてタネを運んでもらったり、グライダーやパラシュートのように風を使ってタネを遠くまで運んだりする植物はあるけど、これは自ら転がりながらタネをまいていくのだ。
数kmころがることもあるようで、相当遠くまで運べるよね。
広い米大陸にはびこるわけだ・・・。

家畜の飼料になるかもしれないとカンザス州などでは栽培も試みられているんだけど、どうもうまくいかないみたい。
むしろ、転がってくる草の塊で民家が埋もれることになったり、非常に乾燥したよく燃える塊なので火事のもとになったりと、けっこう迷惑な存在なのだ。
場合によっては軽自動車くらいの大きさになるものもあるそうで、そんなのが転がってきたら大変だよね。
動画サイトには巨大な回転草におそわれそうになる(?)自動車なんてのもあるみたい。
西部劇のように小さいのがピューと風に吹かれてころがっているだけならよいけど。

で、これをなんとかしようと、米国農商務省では、もともとの生育地のロシア、ウズベキスタン、トルコの研究なんかと協力して、原産地でこの回転草をえさとしていたダニ、ゾウムシ、ガ、菌類などで駆逐できないか研究しているようなのだ。
ただし、この回転草の天敵もやっぱり外来種になるので、野外に放つようなことはしていないのだ。
日本でも食用ガエルとしてのウシガエルのえさとしてアメリカザリガニが導入されたけど、在来種を駆逐する勢いで広がったことなんかがあるしね。
米国政府も根絶やしにしたいわけじゃなくて、被害を小さくしたいということのようなので、なかなか難しいかもしれないのだ。

それにしても、西部劇で見かけたあのころころ転がるやつがそんなものだったなんて!
ボクも米国には1年ほどいたけど、東側だから知らなかったよ。
一度荒野を転げ回る回転草を見てみたかったなぁ。
もちろん、日本に持ってくる気はないけどね(笑)

2013/12/07

Eがいいらしい

寒さと乾燥が本格的になってきた!
指先がかさかさになって、ハンドクリームが欠かせない季節だよ・・・。
気温が低くなるとどうしても手を洗ったりするのにお湯を使うんだけど、どうすると、皮膚の表面の油脂分を余計に洗い流してしまうので、適度な油脂が確保できずにかさかさになるのだ。
原因はわかっていても、この時期に冷水を使うのはためらわれるよね。

しかも、冷水を使うともっと気になるのは、あかぎれ。
皮膚の表面が角質化して、さけたところから血がにじむのだ。
これは、しもやけの状態になっている手足が、乾燥により皮膚表面がかさかさに硬くなると、ぱっくり割れて細かい傷になってしまうのだ(>o<)
ひびが入り始めた状態が「ひびわれ」で、皮下に達して血が出るとあかぎれなのだ。
で、これを防ぐには、手の保湿を大事にするとともに、まずはしもやけを防止することだよね。

しもやけは、体の末梢が寒さによって血行不良になり起こる炎症で、手足のほか、ほほ、鼻先、耳たぶなんかもなることがあるよ。
ジンジンと脈動に応じてむずがゆい、或いは、痛い、熱いと感じるのだ。
寒さによって熱傷様の炎症が起こるので「しもやけ」と言うんだよね。
てっきり寒ければ寒いほどなりやすいかと思いきや、一番しもやけになりやすいのは、気温が5度前後で、昼夜の温度差が大きい時期なんだとか。
ということは、秋から冬に変わるこの時期や、春先のまだ寒い時期ということだよね。
雪がしんしんと降るような寒い時期は思ったより多くないようなのだ。

手足をぬれたまま放っておくと気化熱により皮膚表面の温度が下がるので、しもやけをおこしやすくなるのだ。
水で濡れたらすぐふくのは当然なんだけど、靴の中に「あたたかくなる中敷き」みたいのを入れておいて、靴の中が暖まって足が汗をかいたとき、すぐに靴下を交換しないとその汗が気化熱で足先を冷やしていくこともあるのだ。
もともと汗をかきやすい人や、代謝が高い子供は気をつけないといけないんだよ。
先が細っている靴だと、もともと血行不良になりやすいので、これも気をつけないといけないのだ。

血行不良でしもやけが起こることはわかっているんだけど、なんで炎症になるかはあまりはっきりしたことが書かれていないのだ。
でも、5度前後の気温で寒暖差が激しい時期に起こりやすいこと、しもやけの予防にはビタミンE(酢酸トコフェロール)が効果的であることが知られていることを考え合わせると、おそらく、活性酸素が悪さをしていると考えられるんだよね。
血行が悪くなったところに急激に血流が再開すると、そこで活性酸素(フリーラジカル)が生まれて、炎症を誘発すると言われているのだ。
「床ずれ」も同様で、ずっと同じ姿勢で寝ていて血行が悪くなったところで、体位が変わって血行が回復すると、そこで炎症が発生するのだ。
やっぱりビタミンEが効くと言われているよ。
ビタミンEは抗酸化剤なので、発生した活性酸素とさっと反応して消してくれるのだ。

しもやけの場合も寒さにより血管が収縮し、血行が悪くなった状態であたたかい場所に入ると血液が急に流れ込んできて、活性酸素が発生している可能性があるのだ。
そのままにしておくと、その場に活性酸素がとどまって、まわりに悪さをするので、この活性酸素を消すか、血流中に散らす必要があるのだ。、
ひどいしもやけの治療だと、お湯と冷水を用意して、ゆっくりと交互に手をつけていくんだよね。
これをやると、血管が収縮・拡張をゆっくり繰り返し、血行が改善するんだよね。
しもやけの場合は、血流は一時的に回復するんだけど血行は悪いままなので、そこに血液が滞りがちなのだ。
これをきちんと流してやることが大事なわけ。

というわけで、この季節はビタミンEを摂取するように心がけて、手足の保湿に気をつけ、ぬれたまま放っておかないようにすることが大事なのだ。
それと、血行不良が原因だから、手をもんだりして軽くマッサージしながら血行をよくしてあげるのも大事だよね。
シャワーで済ませず、ゆっくり浴槽につかると全身の血行もよくなるから、そういうところにも気をつけないと。

2013/11/30

放るもんちゃうで!

この季節になってくると宴会メニューでよく出てくるのがもつ鍋。
BSE問題の時に一時下火になったけど、まだまだ根強い人気があるのか、もつ鍋の店は消えないのだ。
一時期はやったけどすぐに姿を消してしまったジンギスカンとは違うね・・・。
肉なのに安価だし、あたたまるし、居酒屋の宴会にはちょうどよいのかも。

「もつ」は、一般に内臓肉のことで、小腸・大腸や、胃、肝臓、心臓、横隔膜なんかがメジャーだよね。
タン(舌)やテールも含めることがあるので、日本畜産副産物協会というところでは、鳥獣肉のうち、正肉を除いた部分の可食部で、臓物や舌、皮、尾、血液などをまとめて「畜産副産物」として定義しているよ。
なんか内臓の名前がそのまま出てくるとあれだけど、ミノ、ハチノス、レバー、ハツ、ハラミなんて言われると焼き肉が食べたくなるよね(笑)
現代ではもつ鍋だけじゃなく、いわゆるホルモン料理がかなり市民権を得て、国民の間に広まっているのだ。

牛肉なんかだと正肉は枝肉としてつるしておいて熟成してから食べるんだけど、内臓部分はいたみが早いのですぐダメになってしまうのだ。
ブタやトリのようなすぐに正肉として流通させるものでも、内臓部分はやはり腐りやすいので、むかしは捨てていたんだよね。
なので、と殺場で手に入れてすぐに下処理をする必要があったのだ。
このため、あまり一般には流通せず、一部の人(主に在日系の肉体労働者と言われているよ。)の食べ物とみなされていたんだ。
ただし、流通経路に乗らずにと殺場からそのまま持ってくるため、極めて安価に入手でき、きちんと処理して臭みを抜けばおいしいので、食べている人の間ではソウルフード的になっていったみたい。
実際、中華料理では普通に内臓肉も使うし、欧州でもイタリアなんかでは内臓肉の料理でメジャーなものがあるよね(トリッパとか。)。

日本でも古代から食べていないわけではなかったんだけど、広く普及するまでには至っていなかったのだ。
明治になって肉食が一般化していっても、内臓肉は安いけど独特のにおいがあるし、外見も悪いので避けられる傾向にあったらしいのだ。
それが、終戦後になって、安いという理由で大衆酒場でもつ煮込みやどて煮などの料理として親しまれるようになったのだ。
もともと焼き鳥の代用品としてもつ焼きなんかもあって、もつ料理がちょっと一般化してくるんだよね。
関西のおでん(関東炊き)に使われるすじ肉も本来は食材として不適格とされてきたものなんだけど、長時間煮込んで柔らかくするとおいしく食べられるので、使われるようになったのだ(ただし、煮ている間にすごいにおいがするよ・・・。)。

一気にもつが食材として広まったのはもつ鍋ブームから。
関東ではもつの味噌煮込み、関西ではどて煮がもつの煮込み料理として親しまれていたんだけど、にんにくをきかせた醤油ベースのスープでニラやキャベツと一緒にもつを煮込んだ鍋が博多からやってきたのだ!
安くておいしい、と一気に広まっていったんだよね。
これに続いて、焼き肉でも、従来はカルビやロースが中心だったのが、ホルモンも注目されるようになり、ミノやレバーだけでなく、ハラミとかタンなどもよく食べられるようになったのだ。
で、こうして一度食べる習慣がつくと、他の場面でも登場するようになるんだよね。
それまで日本ではあまり任期がなかった欧米の内臓肉料理も普通に食べられるようになるんだよね。

もつと言えば、広く「ホルモン」という言葉は「放るもん(=本来捨てるもの)」から来ているという言説が流布しているよね。
でも、どうもこれは正しくないようで、もともとは、「栄養満点な料理」という意味で、本来のホルモンの意味をひっかけていたようなのだ。
そのときの「ホルモン料理」というのは、内臓肉の料理だけでなく、卵、納豆、山芋なども含め、精力を増強する料理ということだったみたい。
「ホルモンがみなぎっている」という言い方のホルモンに近いわけ。

今でももつにはコラーゲンがたっぷり含まれているので美容によい、なんて言われるけど、これはちょっと微妙なんだよね。
確かに大量のコラーゲンは含んでいるけど、経口で摂取した場合、しっかりアミノ酸まで分解されてから吸収されるので、別にコラーゲンとして摂取されるわけではないのだ。
一般に内臓肉系は消化があまりよくなく(よくかまないと飲み込めないしね)、プリン体も多いので、生活習慣病には悪影響があるとの意見も・・・。
肉食獣が獲物を仕留めたときに真っ先に内臓を食べるので、そういう「栄養満点」的なイメージがあるんだろうけど、それはその場で生で食べる場合。
内臓に栄養があるのはそこに大量の血が通っているからで、血液にはビタミンや糖分、脂肪など栄養素がたっぷり入っているのだ。
でも、処理した内臓肉だと、そういうわけにもいかないんだよね。

別に栄養価が低いとかいうわけじゃないけど、いわゆる普通の正肉に比べて格段によい、というものではないのだ。
腸や肝臓なんかだと脂肪分も多いし、それを理解した上で食べる必要があるんだよね。
何はともあれ、おいしく食べられればよいのだけど(笑)
今では甲州もつ煮とか、B級グルメとしても広がりを見せてきているから、さらにおいしいもつ料理を食べる機会は増えるかもね。

2013/11/23

ふところもあたたまる

11月になって一気に寒さも増してきた気がするなぁ。
昼間はまだ日差しがあるとあたたかいんだけど、朝晩が冷え込むよね・・・。
こういう時期にほしくなるのはあたたかい缶コーヒー!
寒さでかじかんだ手がじわじわ、ほわほわとあたたまるのだ♪
でも、それでも足りないときは、もう使い捨てカイロしかないね。
一生懸命もんで、発熱させるのだ。

「かいろ」は「懐炉」で、もともとはふところに入れておく暖房器具。
古くは「温石(おんじゃく)」と言ってあたためた石を入れたらしいけど(懐石料理の懐石なのだ。)、江戸時代に入ると、印籠くらいの大きさの通気孔の空いた金属容器の中に木炭末と灰を入れて、ゆっくりと燃焼させるタイプの懐炉が出たのだ。
懐の中で燃やしているからまさに「懐炉」だね。
この灰式懐炉にはなすの茎や麻殻の灰なんかが使われたんだけど、桐の灰もメジャーだったのだ。
使い捨てカイロのメーカーでもある桐灰の名前はここから来ているみたい。
今でもカメラレンズの結露防止用に使われていて、現役の器具なんだって。

対象になって出てくるのが白金触媒式懐炉。
金属容器の中で白金触媒による炭化水素燃料の酸化発熱を起こさせるものなのだ。
ベンジンを使うハクキンカイロが有名だよ。
燃焼ではなく、触媒を介したゆるやかな酸化反応なので、300~400度という低温域で反応が進むのだ。
今でも金属ライター状の回路を使っているナイスミドル、というか、老紳士はいるよね。
オイルラーたーのように燃料を補充する必要があるので、今の使い捨てカイロになれてしまった世代には使いにくいのだ。
ちょっとかっこい感じはして、あこがれはするけど。

昭和も50年代に入ってから登場するのがおなじみの使い捨てカイロ。
もともとは米陸軍が朝鮮戦争時に使っていた携帯保温機(フットウォーマー)らしいのだ。
基本特許は明治の頃にもあったようなんだけど、直接は米軍の器具にヒントを得ているみたい。
仕組みは簡単で、鉄がさびるときに熱であたためるというもの。
鉄粉とおがくず、塩を混ぜ、水を垂らすと鉄粉がさびて熱が発生するのだ。
これは小学生でもできる実験だけど、それを袋の中で起こるようにしているわけ。
化学式で言うと、Fe+3/4O2+3/2H2O=Fe(OH)3+96kcal/mol
いわゆる赤さびはFe3O2で、黒さびはFe3O4だけど、このカイロの反応でできているのは、黒さびと同じ酸化数の水酸化鉄(III)なのだ。
1モル(鉄は原子量は約56だから、約56g)で96kcalの熱を発することになるよ。

使い捨てカイロの場合、不織布の袋の中に、さびて発熱する鉄粉、さびを進行させる水と塩、空気中の酸素を吸着して反応を早める活性炭、保水作用を持つバーミキュライト(観葉植物の保水土にも使われる人工土)なんかがまざっているのだ。
袋の通気量と中身の配合比率で発熱量や発熱持続時間が変わるので、そこを工夫して様々な製品が出ているのだ。
テレビで使い捨てカイロを作っている工場を見たことあるけど、中身を混ぜるところからすでに発熱は始まっているんだって!
で、それを袋に詰めて、真空包装したり、無酸素包装することでやがて反応が止まり、開封されたときにまた発熱反応が始まるというわけ。
あらかじめ発熱しないように作っているのかと思いきや、途中で発熱していようが、さっさと混ぜて空気に触れないようにして反応を止めているだけなんだね(笑)

この使い捨てカイロは、低温やけどの恐れはあるけど発熱量も低く、袋から出せば勝手に発熱するので、子供でも扱えるし、何より安価なので広まったのだ。
湿布式に貼るタイプとか、靴の中に入れるタイプとか、用途も広がってきているよね。
袋に粉が入っているだけの構造なので、大きさや形が変えやすいというのも大きな利点なのだ。
ただし、「使い捨て」と言われるように再利用はできないのだ・・・。
さびて酸化した鉄をもう一度還元してあげれば再利用できないことはないけど、鉄を還元するのは大変で、この袋に入ったままでは無理なので、そういう製品はできていないのだ。
(製鉄はまさに酸化鉄として採掘される鉄鉱石を還元して鉄を作るけど、大型の炉でコークスと反応させてたりと大変な工程が必要だよね。)

で、最近では使い捨てでないカイロも出てきているのだ。
ひとつは、電子レンジでジェルをあたためるタイプのもの。
日本では湯たんぽとしてよく使われているのだ。
もうひとつは、充電式の電池式カイロ。
使いたいときだけスイッチを入れてあたためられるのが利点。
技術の進歩で大容量で軽い充電池ができたので実現したのだ。
車のバッテリー並みに重い充電池じゃ持ち歩けないしね(笑)

そして、最後に登場してきたのがエコカイロと呼ばれるもの。
酢酸ナトリウムの凝固熱(液体が固体に変わるときに発生する熱)を利用したもの。
酢酸ナトリウムは高濃度で過飽和を起こしやすく、かつ、室温以上の凝固点で過冷却状態も安定なんだけど、過冷却状態でどろどろっとしている酢酸ナトリウムの高濃度溶液に刺激を与えると、一気に結晶化が進行して熱が発生するのだ。
この熱を使うんだけど、放熱後にまたお湯であたためてあげると過冷却状態が復活し、再び使えるようになるというわけ。
ただし、使い捨てカイロほどの発熱量はないみたいなので、取って代わるほどのものではないかな?
ボクはまだ見たことないんだけど、ちょっと興味あるねぇ。

というわけで、カイロも進化してきたのだ。
でも、よくよく見てみると、灰式懐炉、白金触媒式懐炉、使い捨てカイロはどれも酸化熱を利用したものなんだよねぇ。
多くの発熱反応は酸化反応だからかもだけど。
今ではその酸化反応を飛び越えた技術が出てきているみたいだから、この先さらに進展があるのかもね。
使い捨てカイロが過去の遺物になる日は来るのか!?

2013/11/16

下からほんわか

今週は一気に寒くなってびっくり!
部屋も冷え切ってしまって、暖房を入れる季節になったのだ(>o<)
でも、エアコンの暖房って上からあたためられるからちょっと気持ち悪くなるというか、頭がぼーっとしちゃうんだよね・・・。
でも、我が家は床暖房装備なので、下からぽかぽかなのだ♪
まだ今季は使っていないけど。

あたたかい空気は空気が膨張するので密度が低くなり軽くなるのだ。
なので、基本的には上に行こうとするわけ。
ストーブのように床に設置している器具なら、そこから出た熱が上昇していくんだけど、エアコンだと最初から上から温風が出るので、いくら下向きに風を出しても、なかなか床表面はあたたまらないんだよね。
それで部屋の空気の上はあたたまるけど、下は冷たいままになるのだ。
なので、なんだかあたたかいような気はするけど、足下が寒いままなのであんまり「あたたかい」と感じないんだよね。

こたつや石油ストーブなんかは下からあたためる器具なのである程度解消されるんだけど、やっぱり熱はどんどん上に上昇していくので、床すれすれのあたりはあまりあたためられないのだ。
オイルヒーターは別にしても、ストーブは火事の危険があって小さい子供や老人だけだと危ないし、こたつも中はあたたかいけど、外はあたたかくならないんだよね。
そこで、床から直接あたためる方法が考案されるわけなのだ。
まず広がっているのはホットカーペット。
電熱器が編み込まれたじゅうたんで、カーペット自体があたたかいので、下からあたたまるよ。
最近ではホットカーペットの上にふとんをかけたテーブルを載せてこたつ代わりにすることもあるよね。

でも、あたたかくて気持ちいいからとホットカーペットの上でうとうとすると低温やけどのおそれがあるのだ・・・。
ホットカーペットの上にさらにカバーを掛ければかなり安心だけど、そうなると今度は暖房効率が落ちるんだよね(>o<)
そこで、最近新築やリフォームではやっているのが床暖房。
工事が必要なので初期費用はかかるんだけど、省エネタイプのものも多いし、エアコンの暖房をがんがんつけ続けるよりはコストはかからないみたい。

朝鮮半島や中国東北部(満州地方)では古くから床下に台所の竈の煙(熱)を通して、床下からあたためるオンドルがあったのだ。
日本にも仏教の伝来とともに伝わったみたいだけど、その後普及はしなかったみたい。
そこまで冬の寒さが厳しくないからか、オンドルだと家屋の構造に制限がかかるから、木造平家建てが基本の日本には合わなかったのか。
平安時代になると今とあまり変わらない畳が普及するようなんだけど、畳があると、夏は蒸れず、冬は熱(床の冷たさ)を遮断してあたたかいので、そういうので足りていたのかもね。
でも、現代になって、やっぱり床下からあたためる手法がとられるようになったのだ!
畳敷きの和室が減ってフローリングの洋間が増えてこともかんけいあるんだろうなぁ。

床暖房の主な様式は、温水式、電気式、温風式。
温水式というのは床下にパイプラインを張り巡らせて温水を循環させるタイプ。
電気式は電熱器を床下に置いておいて、その熱であたためるもの。
ともに、深夜電力を活用して夜間に蓄熱しておいて昼間に使ったりすると省エネになるのだ。
小型ヒートポンプ(高効率エアコンと同じ熱交換機)を使って、少ない電力で大気から熱を取り出すのもあるよ。
太陽光発電で熱を作るタイプもあるし、最近がガス式で、ガス給湯器と一体的になっているものもあるよね。
温風式はオンドルがまさにそうだけど、家庭用だとあまり使わない方式なのだ。
大きなビルとかだとパイプラインに熱蒸気を循環させる蒸気ヒーターがわりと効率よく使えるので、全体の熱供給システムに組み込むのはやりやすいんだよね。

床暖房は床下から直接床をあたためて、そこからの輻射熱で部屋をあたためるのだ。
あまり熱伝導がよい床材だとすぐに低温やけどになってしまうので、通常は木やセラミックが使われるんだよね。
セラミックだと床暖房を切っている間にひんやりと冷たくなってしまうんだけど、あたためると遠赤外線が出るメリットもあるのだ。
ともにまず床材をあたためなくてはならないので、あたたまるのに時間がかかるんだよね。
そこはすぐに温風が出るエアコンやストーブに比べると弱いところ。
ただ、徐々にあたためていくので、体にはやさしいのだ。

床暖房が普及した重要な点のひとつに、浴室やトイレが寒いと心臓が弱い人は温度差でヒートショックを起こすリスクがあるんだよね。
そこで高齢者対応住宅では床暖房が普及していったのだ。
法要に参加してびっくりしたけど、最近ではお寺の本堂にも導入されているんだよ!
確かにお寺って寒々しいからね・・・。
床暖房が入っているとかなり快適なのだ。

今冬がどこまで寒くなるかはわからないけど、床暖房があるから安心。
雪がしんしんと降るような日だと、芯から冷えてくるから、そういうときにこそ床暖房が活躍するんだよね。
いやあ、よい時代に生まれたなぁ。

2013/11/09

寄せて、集めて、偽造?

ホテルや百貨店における食品偽装問題がものすごい広がりを見せているのだ!
車エビが実はブラックタイガーだったり、芝エビが実はバナメイエビだったり。
普段家庭ではなかなか食べられない国産食材を外食でぜいたくに食べる、と思っていたら、実はスーパーでいつも買っているのと同じ食材だったわけだ・・・。
エビはまだましな方だけど、野菜とかが中国産っていうのはかなりショックな人もいるよね。

より悪質に見えるのは、「肉」の偽装。
和牛や国産牛と表示されたメニューが実は別の牛肉を使っていた、なんてのはエビの話と同じだけど、切り身の肉だと思っていたら、それが実は葛肉などを寄せ集めた成型肉だった、っていうのはちょっとひどいよね・・・。
前にステーキのチェーン店で同じような問題が発覚したけど、業界では引き続きそういうことをしていたということになるのだ。

一般に、格安で提供されているステーキは、実はハラミ(横隔膜)なんだよね。
焼き肉なんかではカルビよりむしろハラミが好き、という人もいるけど、ハラミはあくまでも内臓扱いなので、多少安いのだ。
もう少しお金を出すと米国産や豪州産の肉になるけど。
いずれにせよ、日本人が好む脂のサシの入った「霜降り肉」に比べるとかたいのだ。
今回の問題となった奈良の旅館の例だと、お客さんから肉がかたいとのクレームが入ったので、食感が柔らかい成型肉に変えたって言うんだけど、確かに下手な肉よりは成型肉の方がおいしく感じたりはするのかも。

いわゆる成型肉というのは、食肉加工品の一種で、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)にしたがって「加工品」と表示上明記する必要があるんだよね。
それを怠っているのが問題なのだ。
成型肉の場合は、切り身の肉を切り出した後の残りや骨や筋についたまま残った肉などのくず肉やハラミなどの内臓肉を軟化剤で柔らかくし、結着剤で固めて形を整えたもの。
ハンバーグみたいなものだよね。
軟化剤として使われるのはソルビトールやグリセリンで、食肉加工品の表示を見るとよく見かけるものなのだ。
結着剤、つまりは「つなぎ」として使われているのはカゼインナトリウムなど。
これも食品添加物として表示上明記する必要があるよ。
ちなみに、乳アレルギーの人は乳タンパクの一種であるカゼインに反応する可能性があるので、結着剤にカゼインナトリウムが使われている成型肉と知らずに食べると大変なことになるおそれも・・・。

切り身の肉のステーキと成型肉のステーキは、いわばそのばばジャガイモをスライスして揚げたポテトチップスと、チップスターやプリングルスのようにフレーク化したジャガイモをつなぎで固めて成型してから揚げたポテトチップスとの関係と同じなのだ。
そのまま揚げたものだと外からしか味付けができないけど、成型してから揚げたものは、あらかじめ調味料を混ぜ込むことができるんだよね。
なので、ジャガイモの出来・不出来に大きく左右されることなく、味的にも品質的にも一定の質が確保できるのだ。
成型肉も同じで、適量の脂などを混ぜ込むことで、肉汁が適度に出る、とか、食感が柔らかいなどの質が確保できるんだ。
安い赤身肉よりおいしくなるわけ。

だから、成型肉と割り切って食べる分には問題ないんだけど、だまして、とか、偽って、ってなると問題なんだよね。
ま、値段設定からして明らかにわかる場合もあるけど。
また、切り身の肉の場合、内部に雑菌がいることはまずないけど、成型肉の場合はくず肉などを寄せ集めるので、内部に雑菌がいる可能性があるのだ。
くず肉の表面についていた雑菌が成型肉の内部にいってしまうことがままあるからね。
なので、成型肉はレアで食べてはダメで、よく火を通す必要があるんだ。
この点でもあらかじめきちんと成型肉であることを言っておかないと食中毒のリスクが高まってしまうんだよね。

さらに、近年の食肉加工技術の向上により生まれたのが、人工霜降り肉。
赤身のかたい肉に、インジェクション加工という方法で牛脂や調味料を赤身肉の中に「サシ」のように入れ込むのだ。
具体的にどのようにして注入し、まるで霜降り肉であるかのように肉の中で分散させるのかはよくわからないんだけど(まさにそこが技術の粋であって、特許とかとってるんだろうね。)、見た目には極上の霜降り肉に見えるのだ。
雪華肉というブランドがメジャーなようだけど、これはかたくておいしくない肉を加工することで、天然の霜降り肉以上においしいものを作ろうとしたんだとか。
もともと加工肉と断ってそういう技術を駆使しておいしい食肉加工品を作るのはすばらしいんだけど、できたものを「天然物」と詐称するのは大問題だよね。
いいものができるとそういう悪いことを考える人がどうしても出てきてしまうのだ。
ちなみに、このインジェクション加工においても肉の内部に雑菌が混入するおそれがあるので、やっぱりレアではなく、しっかり焼いて食べないとダメなんだそうだよ。

個人的には食肉加工品が悪いとは言わないし、安くておいしいものが食べられるのは技術の成果なのでむしろ喜ばしいことだと思うんだよね。
なので、きちんと法令に従って「加工品」と明記した上で、正しく、おいしく消費したいものなのだ。
そのためにも、だます人をうまく取り締まれるようにしないとダメなんだよね。
それもなかなかに難しいことなんだけど。

2013/11/02

アルカンターラは電気牛の夢を見るか?

最近新しく革靴を買ったのだ。
まだはき慣れてないのでちょっと硬いし、足にもフィットしていない感じ。
でも、天然皮革の靴の場合、履いているうちに徐々になじんできて、履き心地がよくなるんだよね♪
その分手入れなどで面倒なことがあるわけだけど・・・。
一方、数年前に買った合皮のダウンジャケットは表面が少しぼろぼろになってきたんだよね。
合皮の運命とは言え、悲しいのだ(>o<)

天然皮革より安価で、手入れや加工がしやすいものとして登場したのが「人造皮革」というもの。
合成皮革と人工皮革に分かれるんだって!
合成皮革は天然の布地の表面に合成樹脂を塗布したもの。
人工皮革はマイクロファイバー(ナイロンやポリエステルなどの極細の合成繊維)の布地(通常は不織布)に合成樹脂を含浸させたもの。
そのまま使うか、表面にさらに合成樹脂を塗布するのだ。

合成皮革の方が歴史的には古く、19世紀中頃には登場したんだって。
最初は布地にニトロセルロースを多層にわたって塗布したもので、自動車のシートや屋根に使われたんだって。
でも、ニトロセルロースはよく燃えるので、第二次大戦後は難燃性のポリ塩化ビニルが使われるようになるのだ。
この頃の合成皮革はとにかく通気性が悪いので、衣服や靴だと蒸れに蒸れてしまうので使えず、やっぱり自動車のシートとかそういうものに使っていたみたい。
さらにその後、人工皮革が登場するんだけど、その頃にはかなり改良されていて、通気性や耐久性がよくなり、衣服や靴を含む様々な分野に進出するようになったんだ。
日本初の人工皮革としては、自動車のシートに使われる東レのエクセーヌ(ブランド名はアルカンターラ)や、ランドセルでもおなじみのクラレのクラリーノなんかがあるよ。
アルカンターラはスウェード状の表面加工で、クラリーノはつるつるぴかぴかの銀面加工というやつなのだ。

一般に人造皮革は、品質が均一で、動物由来ではないのでどんな形にも対応可能、染色も容易と、加工性に優れたところが大きなメリット。
安価で水をはじき、手入れも簡単。
ドライクリーニングもできるのだ。
でも、天然皮革に比べると劣化が早いと言われているのだ。
天然皮革も何もしなければかびたり、硬くなってひび割れたりするけど、保革油という油をしみこませて手入れをすることで長持ちするわけで、そういう手入れをしない人造皮革は長持ちしない、というのは当たり前なのかも。
特にポリウレタンを塗布したものは劣化が早く、数年で表面がひび割れ、ぽろぽろと樹脂がはがれてくるのだ。
これはもう運命的なものなので、そういうものとして使わないといけないんだよね。

そのほかにも、やっぱり肌触りや通気性では劣るところがあるのだ(>o<)
天然皮革だと多少ながらも水分や油を吸い取るから、「手になじむ」んだよね。
これが独特の手触りになるのだ。
また、触れたときにあたたかみがあるんだよね。
これは熱伝導の違いかな?
ポリ塩化ビニルだと、長時間接触した状態にするとくっついてしまい、表面がはがれたり、色移りしたりするから、しまい方も気をつけないといけないんだ。

何よりの違いは、使い込んでいくうちに「なじみ」や「風合い」が出てくることだよね。
人造皮革は布地や不織布が基材になっているので、基本的に形状が変わることがないのだ。
逆に、天然皮革だとタンパク質の繊維が三次元でからみあっているんだけど、使い込んでいくうちにフィットするように変形していくんだよね。
これは革靴や革手袋でよく言われる話なのだ。
「風合い」も油がしみたり、色が落ちたりの積み重ねで出てくるもの。
人造皮革は水をはじき、汚れにくいが故にこういう変化もないのだ。
変化が出るほど長く使えるわけでもないしね。

というわけで、なんだか天然皮革の方がいいような気もするけど、やっぱり手入れが楽で安価というのは大きな魅力なんだよね。
だからこそ今でも人造皮革が使われるわけで。
用途用途で使い分けるっていうのが賢い使い方かな。

2013/10/26

落花生を練りまくる

最近街中でスヌーピーをよく見かけるようになったんだけど、はやっているのかな?
日本人には「スヌーピー」でおなじみだけど、あの漫画のタイトルは「ピーナッツ」なんだよね。
そんな関係もあってか、アヲハタのピーナッツバターの瓶にはスヌーピーの絵がついているんだよね。
作品中でもチャーリー・ブラウン少年はよくピーナッツバターをはさんだサンドイッチを食べているよね。
米国の子供たちには大人気の味なのだ!
日本で言うと鮭おにぎりみたいなもの?

日本でピーナッツバターと言うとまず思い浮かぶのはソントンの紙のカップ(ファミリーカップ)に入ったピーナッツクリーム。
国内で最初にピーナッツバターを製造・販売したのがソントンなんだって。
社名は創業者が敬愛し、ピーナッツバターの作り方を教わった米国人宣教師からとか。
日本用にアレンジしているので、商品名は「ピーナッツクリーム」となっているのだ。
ピーナッツだけで作る伝統的なピーナッツバターは甘みも少なく、ちょっと硬いんだけど、糖蜜を加えて甘みを付加し、パンに塗りやすいように柔らかく仕上げているのだ。
今のものは冷蔵庫に入れても固まらないんだって!

伝統的なピーナッツバターの作り方は簡単。
十分に乾燥させたピーナッツをさらに160度で30分ほど煎って完全に水分を飛ばし、薄皮と胚芽を取り除くのだ。
この胚乳の部分を粗砕きしてからミルでよくすりつぶしてから練るのだ。
すると、ピーナッツの中に大量に含まれる油分により、ペースト状になってくるんだよね。
これが純粋なピーナッツバターで、コーンフレークを発明したケロッグ博士が作り始めたみたい。
米国の食文化の基礎(?)を築いているね。

100%ピーナッツバターは香りは高いけど、そのままだと甘みも少なくて硬いので、日本で砂糖などの甘味を加えたり、油脂を加えて柔らかくするのだ。
ソントンのピーナッツクリームもまさにそうなっているんだけど、さらに工夫もしているわけだ。
米国なんかだとけっこうそのままの純粋ピーナッツバターを食べるみたい。
保存目的で添加物は多少入れるんだろうけど。
確かに米国で食べたピーナッツバターサンドはほとんど甘みもなく、むしろナッツ感が強かったような。

ピーナッツをつぶして練っただけでペースト状になるのは、ピーナッツに多く油が含まれるため。
冷やしながらピーナッツを圧搾すると落花生油がとれるよね。
これはわりと高級品で、香りがよく、熱に酸化されづらいので、中華料理なんかによく使われるとか。
香港の高めの中華料理は落花生油を使っているらしいよ。
比較的ごま油に成分が近いんだけど、ごま油がオレイン酸とリノレン酸がほぼ同量くらい含まれているのに対し、落花生油ではオレイン酸が多く、リノレン酸が少ないのだ。
だからかどうかはわからないけど(笑)、ごま油で揚げるより落花生油で揚げた方がさくっと揚がり、いつまでもへたらないんだそうだよ。

同じようにすりつぶしたピーナッツから作るのは沖縄料理のじーまーみ豆腐。
「じーまーみ」というのは「地豆」のことで、ピーナッツ(落花生)のこと。
地中に豆ができるので「地豆」と呼ぶのだ。
じーまーみ豆腐の場合は、水につけておいた生のピーナッツに水を加えてミキサーにかけ、豆乳を絞るようにしぼって、おからとピーナッツ乳にわけるのだ。
このピーナッツ乳にサツマイモから作るデンプン(芋葛)を加え、加熱しながらよく練っていくと粘りけが出てくるので、それを冷やし固めるとできあがり。
基本的にはごま豆腐と一緒で、ごまの代わりにピーナッツ、吉野葛の代わりに芋葛を使っているわけ。
沖縄では、甘くしないで酒の肴にしたり、甘くしてデザート感覚で食べたり、いろいろと食べ方があるみたい。
もちもち感があって、ピーナッツ風味のくず餅に近いのかな?

普段は煎ったピーナッツをかじるくらいしかしないし、それも柿ピーとして食べるくらいだけど、たまに見かけるとソントンのピーナッツクリームも食べてみたい気がするんだよね。
とはいえ、けっこう量が多いからなかなか手が伸びないんだけど。
今度買ってみようかな?
たいして高いものでもないし。
チャーリー・ブラウン気分を味わうか。

2013/10/19

泣くなら名作劇場を見て泣きたまえ

今年も日本の研究がイグノーベル賞を受賞したのだ(笑)
恒例とは言え、一見間抜けに見える研究にも力を入れている日本の底力が垣間見れるよ。
でも、これって本人たちはわりと、というか、完全に真剣に研究しているんだよね。
研究結果だけ見ると、そんなことのために研究を!?、と思うようなこともあるけど、実際には、研究途上でそういう発見があった、ということの方が多かったりするのだ。

今回の日本の受賞研究はハウス食品による、タマネギの研究。
タマネギを切ると涙が出るけど、その催涙作用を持つ成分を生成させる酵素を発見した、というものなのだ。
この酵素の機能をうまくなくせれば、切っても涙が出ないタマネギができるというわけ。
遺伝子改変食物だと抵抗感があるけど、目が痛くならないタマネギならほしい人も多いんじゃないかな?

これまで、タマネギを切ると涙が出るのは、タマネギに含まれる硫黄化合物がニンニクやタマネギに含まれる酵素のアリイナーゼという酵素で分解されて発生するプロパンチオールSオキサイドという催涙成分であることはわかっていたのだ。
これは目の表面から刺激するだけでなく、鼻の粘膜からも刺激してくるので、ゴーグルや水中めがねではタマネギの「攻撃」を完全には防げないんだよね・・・。
なので、鼻栓も必要なのだ。
この催涙成分は気化性なので、水につけながら切るとわりと平気なのだ。
或いは、あらかじめ電子レンジで加熱してから切ると、アリイナーゼの活性が落ちるので、催涙成分そのものができにくくなるよ。

でもでも、タマネギ独特の風味もまたこのアリイナーゼによる分解によって作られるのだ。
なので、水につけたり、レンジで加熱したりすると風味も失われ、味が落ちるわけ。
そこで仕方がないから我慢してそのまま切るんだよね・・・。
ハウス食品の発見まではそう考えられていたのだ。

ところが、今回の発見で重要なことがわかったのだ。
タマネギ中の硫黄化合物は、アリイナーゼによってプロペニルスルフェン酸という不安定な物質になった後、催涙成分であるプロパンチオールSオキサイドや、風味成分になるチオスルフィネートになるんだけど、これはどちらも偶発的にできるものと思われていたのだ。
ところが、催涙成分の方はタマネギに含まれる別の酵素、催涙成分合成酵素によって作られていることが発見されたのだ。
ニンニクを刻んでもアリイナーゼで中間体のプロペニルスルフェン酸はできているはずだけど、たいして目が痛くならないのが、刻んでいる量が少ないというのではなくて、その催涙成分合成酵素があまり含まれていないからなのだ!

この酵素の発見に至ったのは、タマネギとニンニクのペーストを混ぜて炒めたときにたまに見られる緑変減少。
通常は飴色になるんだけど、中で緑色の色素ができることがあるのだ。
この色素は、タマネギに含まれる硫黄化合物、ニンニクに含まれるアリイン、酵素のアリイナーゼ、そしてアミノ酸の4種類の物質があるとできるのだ。
で、色素ができる仕組みを調べようとしていくと、タマネギ由来の粗精製のアリイナーゼとニンニク由来の粗精製のアリイナーゼを使ったときに色素ができるように大きな差があったのだ(ニンニク由来の酵素を使った方が色素ができる量が多い。)。
この緑色の色素はタマネギの風味成分と同じく、チオスルフィネートからできることが知られていたので、タマネギとニンニクの差は、チオスルフィネートができる量の差だということになるんだよね。

チオスルフィネートと、催涙成分のプロパンチオールSオキサイドは同じプロペニルスルフェン酸からできているので、逆にプロパンチオールSオキサイドの量を調べてみると、ニンニク由来の酵素で反応させた場合はほとんど検出できないのに、タマネギ由来の酵素で反応させると確かに検出されたんだよね。
そうなると、これまでの定説のように、催涙成分が偶発的にできる、というのでは説明できず、何かタマネギ由来の粗精製アリイナーゼに含まれるものによって催涙成分が作られていることになるわけ。

その未知の成分について、高速液体クロマトグラフィやらを使って分析した結果、新たな酵素の発見に至ったのだ。
この酵素のアミノ酸配列を解析し、さらに、そこから遺伝子をクローニングして、逆転写法を使ったRT-PCR法で、cDNAを得ることに成功したのだ。
これをもとにタマネギのゲノム上で催涙成分を合成する酵素の遺伝子が同定できたんだ。
実際、この遺伝子を大腸菌に導入してみると、催涙成分を合成する活性が確認できて、この酵素こそがタマネギを切ったときに涙を出させる張本人であることがわかったんだ。

なんと、この成果はかのNature誌に掲載されるほどの成果で、現在は切っても涙のでないタマネギの開発を進めているのだとか。
タマネギの風味成分や健康によいと言われる生理活性成分はチオスルフィネートからできることがわかっているので、今回見つけた酵素さえ何とかできると、切っても涙は出ないけど、風味も効能も遜色ない夢のタマネギができるかも、なんだって。
ハウス食品ってどうしてもカレー粉のイメージがあるけど、こんな研究もしていたんだねぇ。

2013/10/12

カラータイマー点滅?

夕ごはんにハンバーグを食べたんだけど、そこでちょっと不思議なことがあったのだ。
自家製ハンバーグだと、買ってきた赤い挽肉にタマネギなど具材とパン粉などを混ぜて、しばらく休ませてから焼くよね。
そうすると、ハンバーグの種の色は、混ぜた直後はピンク色だったものが、休ませた後は茶褐色になっているのだ。
これが普通だと思っていたんだけど、よくよく見てみると、スーパーとかで売っているできあいの(=焼くだけ)のハンバーグはきれいなピンク色のまま!

なんか危ない添加物でも入っているのかと思いきや、入っているのはせいぜい酸化防止剤やpH調整剤なんだよね・・・。
ハムやソーセージのように発色剤は入っていないようなのだ。
で、一体何が起こっているんだろ?、と思って、ちょっと調べてみたわけ。
この変色の原因は、筋肉の中で酸素を貯蔵する役割のあるミオグロビンが関係していたのだ。

ミオグロビンは筋肉に含まれる色素タンパク質で、通常は血液中のヘモグロビンから酸素を受け取って、筋肉がエネルギーを使うときにミオグロビンで貯めた酸素が消費されるのだ。
ヘモグロビンよりミオグロビンの方が酸素の親和性が高いので、自然に酸素が受け渡せるんだって。
よくできているものだよね。
このミオグロビンにも、ヘモグロビンと同様にヘム構造があって、その中心にある鉄イオンが酸素との結合に関係しているのだ。
ミオグロビンの色の変化は、血液の動脈と静脈の血液の色の違いと同じで、酸素との結合に原因があるみたい。

酸素と結合していない状態のミオグロビンのヘム鉄は、還元型のFe2+
になっていて、このままだと暗い赤紫色なんだよね。
ちょうど静脈の酸素結合度が低いときの血の色だよ。
ここに酸素イオンが配位すると鮮やかな赤色(鮮紅色)になるのだ。
動脈の真っ赤な血の色と同じ。
で、酸素が結合したままで放置されると、ヘム鉄の鉄イオンが酸化されてFe3+になるんだけど、これは鉄の黒さびの色で、暗褐色になるのだ・・・。
これは血痕の赤黒い血の色と同じだよ。

食肉の場合、切り出したばかりの状態だと、まだ酸素が結合していないので、少し暗い色をしているのだ。
これが空気中の酸素に触れると、ヘム鉄に酸素が配位して鮮やかな赤に変わるのだ。
これが肉屋さんなんかで並んでいる状態。
お肉屋さんでスライスを頼むと、肉の薄切りが重なった部分ではまだ空気に触れていないので、暗い色をしていることがあるのだ!
離してしばらく放っておくと赤くなってくるよ。

生体中だと酸素が結合してヘム鉄が酸化された後、まわりの酵素によりもう一度ヘム鉄が還元されるので色が元にもどるんだけど、食肉の場合は酸化されるとそこでおしまい。
なので、赤い肉は鮮度が落ちてくると茶色く変色してくるのだ。
通常は腐敗臭もしてくるからそれでも傷んでいることはわかるよね。
切りたての暗い色と、傷んでいるときの褐色では微妙に色も違うみたいだけど、普通は並べてみないからわからないよね・・・。
そういうときはにおいや味(酸味や苦みがあるかどうか)で確かめよう!

ハンバーグの場合、ただでさえ表面積が広い挽肉を使うので肉の中のミオグロビンが酸化されやすいんだけど、さらに空気を混ぜ込んでこねるため、ますます色が変わりやすくなるのだ。
なので、自家製ハンバーグで色が多少茶色くなるのは仕方がないことなんだ。
だけど、売り物で茶色くなってしまうと傷んでいるのと区別がつきにくいので、市販品の場合は酸化による着色をさけるために、酸化防止剤やpH調整剤を入れるのだ。
酸化防止剤でよく使われるのはビタミンC(アスコルビン酸)。
非常に酸化されやすい物質なので、代わりに酸素と反応し、身代わりになってくれるのだ。
pH調整剤に使われるリン酸塩は、pHを一定に保って酸化反応を起こりにくくするだけでなく、肉の結合材としても作用するので、こねたハンバーグがばらばらになりにくくなるのだ。
これが売り物のハンバーグは色も変わらないし、くずれにく理由だよ。

一方、ハムやソーセージなどの場合は発色剤が使われるんだよね。
よくあるのが亜硝酸ナトリウム。
ヘム鉄を化学的に修飾して、きれいなピンク色に発色させるのだ。
具体的には、-NO基(ニトロソ基)がヘム鉄に結合することで、ヘム鉄は安定化し、色も固定されるんだ。
ただし、劇物指定もされているし、危ない物質ではあるので注意が必要だよ(>o<)
スーパーに並んでいるハムやソーセージは、塩漬けにする(塩せきする)時に発色剤を入れるんだ。
これは色調を整えるだけでなく、獣臭さをなくし、雑菌の繁殖を抑えるため、と言われているよ。
最近では発色剤不使用のものもあるけどね(っていうか、もともとの伝統的なハムでは使わないんだけど。)。
日持ちをさせるためにはある程度仕方がないので、残存量で基準値が決められていて、それで規制されているのだ。
さすがに既製品ハンバーグでは使われていないみたい。

というわけで、肉の色にはカラーたーまーのような秘密があったのだ。
でも、通常は牛肉くらいしか色味はあまり気にならないよね・・・。
ブタやトリだとミオグロビンの量が少ないので、目に見えて色が違う、とは感じづらいみたい。
ヒツジとかウサギ、シカなんかだと赤身肉でミオグロビンが多いから違いがわかるんだろうけど。
ちなみに、この話はマグロの赤身でも一緒で、切り立てのマグロはちょっと暗い色で、空気に触れると鮮やかな赤になり、古くなると茶色くなるのだ。
ま、マグロの切りたての色なんて築地にでも行かないと見られないけど(笑)

2013/10/05

発酵なしでもふわふわ

最近コンビニとかでよく蒸しパンを見かけるようになったのだ。
はやっているのかな?
焼成したパンよりふわふわで、食感も違うから、ずっとコンビニ食で飽きている身にはうれしいよね(笑)
しかも、かつてはもさもさしてあんまりおいしくない印象だったけど、このごとのものはしっとりふわふわだったり、もっちりだったり、おいしくできているのだ!

発酵させて焼くパンは古代エジプトで生まれ、西洋世界に広まるとともに、インド、中国まで広がったのだ。
インドでは発酵させないパンのロティみたいのもあるけど、日本人にはインドカレーに欠かせないものとして発酵させてからタンドールで焼くナンがおなじみだよね。
中国と言えば饅頭(マントウ)。
古くは三国志の時代に諸葛亮孔明が生み出したとか言う伝説もあるけど、発酵させた生地を役のではなくて蒸して作るんだよね。
ちなみに、中華まんのように具が中に入っているのが包子(パオズ)、具なしが饅頭なんだとか。
点心で出てくるマーラーカオも蒸しパンだよね、
さらに、中国では揚げパンもあって、中華粥と一緒に食べたりする油条なんかがそうなのだ。

日本には中国から朝鮮半島経由或いは琉球経由で伝わってきて、饅頭(マントウ)は禅とともにやってきて、小豆から作ったあんが入ったまんじゅうとなるのだ。
禅と一緒に入ってきたので、肉入りの包子のままではまずいと植物性の具に置き換わり、さらに、砂糖の普及に伴って甘いお菓子に変わったのだ。
日本でまんじゅうが普及する際、甘酒を生地に混ぜ込んで酒母で発酵させる酒まんじゅうとふくらし粉で発酵させずにふわふわにする「薬(やく)まんじゅう」にわかれるんだ。
その中間的なものとして、長野名物の「おやき」みたいな、発酵させないし、膨張剤も入れない生地に具を包んで焼くみたいな形態もあるのだけど。

この薬まんじゅうの延長線上に、日本の蒸しパンはあるのだ。
明治になると西洋文化礼賛で洋食がはやるんだけど、木村屋のあんぱんの発明なんかもあってパン食も増えてくるのだ。
その流れでまんじゅうのような「古い」小麦食文化はいったん廃れていくんだけど、このころには膨張剤としての重曹の入手が容易になったのもあって、発酵なしで蒸すだけで簡便に作れる蒸しパンは子供のおやつなどとして普及していくのだ。
パンの焼成にはオーブンや窯が必要なので家庭では厳しいけど、当時の日本だとどの家庭にも蒸籠(せいろ)はあったので、蒸しパンなら手軽に家庭で作れたというわけ。

戦後は「ロバのパン屋」の活躍などでやっぱり子供のおやつなどで人気だったんだけど、焼成していない蒸しパンは含水量が多く、そのためにあまり日持ちしないので、大手製パンが大量に作って流通に載せるには不向きだったのだ・・・。
なので、コンビニなんかの店頭では、焼成した菓子パンやカレーパンのような揚げパンが主流になり、いつしか蒸しパンはあまり見かけなくなっていったんだ(>o<)
ところが、流通革命でできたものをすぐに店舗に届け、店舗でも回転率は約売る、ということができるようになったので、再び表舞台に登場してきたわけ。
むかしながらの蒸しパンだけでなく、チーズとかフルーツとか新たなフレーバーも登場してきているよね。
黒糖蒸しパンとかだけじゃないのだ(笑)
米粉を加えることでもちもち感を出したり、大手製パンでも商品開発に四年がないみたいだよ。
蒸しパンは焼成したパンや揚げパンよりもちょっとだけカロリーが低いので、女性に人気のようなのだ。

蒸しパンの場合は発酵させないので、ふわふわ感を出すのに重要な役割を担うのが膨張剤。
一般にはベーキングパウダーを使うことが多いのかな。
ベーキングパウダーの主成分は重曹こと炭酸水素ナトリウムで、熱を加えると分解して二酸化炭素と水酸化ナトリウムになるのだ。
このとき発生する炭酸ガスが生地の中に空隙を作ってふわふわ感が出るのだ。
単純に膨張させるだけなら重曹だけでよいのだけど、炭酸ガスと同時に発生する水酸化ナトリウムのせいで、少し苦みが出たり、生地に黄色い色がついたり、独特ににおいが出たりするんだよね。

そこで開発されたのがベーキングパウダー。
重曹にクエン酸や酒石酸、リン酸二水素カルシウム(第一リン酸カルシウム)、焼きミョウバンなどの酸性の助剤が加えられているのだ。
重曹は酸性の助剤と反応すると、やっぱり炭酸ガスが発生するのだ。
熱分解だと水酸化ナトリウムが出てくるけど、助剤が存在していると中和反応が起こるので、水酸化ナトリウムによる苦み、におい、着色などの欠点が克服されるんだ。
保存状態で勝手に重曹と助剤が反応しないように、コーンスターチなどの分散剤も混ぜ込んであるよ。

ベーキングパウダーを使うと、生地を練っているうちから炭酸ガスが発生するので、生地を練ったらすぐに熱を通すのが原則。
逆に生地を休ませたい場合は重曹でないとダメなのだ。
ベーキングパウダーだと、中和反応と熱反応の二段階で炭酸ガスが発生するので、よりふっくらとなるんだよね。
その辺にも使い方に差が出てくるようなのだ。
それぞれ特徴があるので、自分で作るならレシピを見ながらちゃんと推奨されている方を使う方がよいかな。

2013/09/28

リーダー的存在

現在の第二次安倍政権は、第一次政権に比べてもかなり強力になっていると言われているよね。
衆議院総選挙でも大勝したし、衆議院議員の任期が満了するまでは安泰だからやりたいことができる、と言われているのだ。
与党内では反発の声もあるみたいだけど、消費税増税も踏み切るみたいだしね。
でも、実はこれは戦後の内閣制度だからこそ可能なリーダーシップなんだ。

戦前の大日本帝国憲法下の内閣制度では、内閣総理大臣は国務大臣の首班で行政各部の統一の保持を図ることはできたんだけど、それ以上でもそれ以下でもなかったのだ。
「諸侯の中の第一人者」といった位置づけで、指揮監督権もないし、法制上は権限は極めて弱かったんだよね。
実際、大日本帝国憲法においては、天皇の大権は規定されているものの、内閣については規程がなく、第55条に「国務大臣」の責務が規定されているに過ぎないんだ。
内閣制度については、勅令(今で言う政令に相当)の「内閣官制」において定められていて、その中で、内閣は国務大臣を以て組織することを定めるとともに(第一条)、内閣総理大臣が国務大臣の首班であることを規定しているのだ(第二条)。
で、問題になるのは、内閣総理大臣や他の国務大臣の任免の問題なんだよね。

大日本帝国憲法では、国務大臣の任免に関する規定はなく、内閣をどうやって組閣するかが法文上定められていなかったんだよね。
ではどうしていたかというと、天皇による「大命降下」という形で行われたのだ。
天皇から内閣総理大臣候補者に「大命」を下し、組閣を命じたのだ。
内閣官制において内閣総理大臣に与えられた権限として「機務奏宣権(天皇に裁可を求める奏請権と天皇の裁可を宣下する権限)」というのがあって、天皇に行政の重要事項に関する裁可を仰ぐ権利なのだ。
この「奏請権」の中には国務大臣の任命にかかる「奏薦権」というのが入っているので、実際には、「大命降下」で選ばれた内閣総理大臣候補者は、組閣名簿案を持って天皇の裁可を仰ぎ、組閣をすることになるんだ。
そういう意味では、実質的には国務大臣の任命権はあるんだよね。

ところが、話は複雑で、陸軍大臣と海軍大臣については、「軍部大臣現役武官制」というのがあって、現役の武官(軍人)から登用することになっていたのだ(軍部大臣現役武官制がなかった時代も、慣例として現役武官が選ばれていたのだ。)。
すると、両大臣についての任命権はかなり狭まってしまうんだよね。
通常は軍からの推薦を受けたので、軍が候補者を推薦してこないと組閣できない、という事態に陥るのだ!
軍部の支持を取り付けていないと内閣が発足できないという不思議な構図だったわけ。
現在は日本国憲法第66条第2項の規定により、すべての国務大臣は文民でなくてはならないので、そういうことはあり得ないよ(もともと自衛隊は軍隊ではないけど。)。

さらに、組閣に当たっての推薦はできるんだけど、明文規定がないので、罷免ができないのだ。
これが困りもので、内閣総理大臣が辞職勧告をしたにも関わらずやめない場合はどうしようもなくなってしまうんだよね。
閣内不一致になってにっちもさっちもいかなくなると、内閣総辞職をせざるを得ない状況になるわけ。
実際に東條内閣では岸商工大臣が辞職を拒否したため、総辞職する羽目になったのだ。
ちなみに、日本国憲法では内閣総理大臣が国務大臣を任意罷免できるので(第68条第2項)、同じ問題は起きないよ。

この流れで出てくる話が「憲政の常道」という慣例。
天皇が「大命降下」で内閣総理大臣を選ぶ際は勝手に選んでいるのではなくて、元老や重臣会議からの推薦を受けていたのだ。
元老も法制上の位置づけのない機関で、天皇が勅語や勅命を以て任命するのだ。
事実上の国家の最高意思決定機関となっていて、天皇の諮問に答える形で内閣総理大臣の奏薦だけでなく、開戦や講和、同盟締結なんかにも関与したんだ。
元老が公家出身の西園寺公望だけになってから、その後を引き継ぐ形で昭和初期に作られたのが重臣会議で、こちらは枢密院議長と内閣総理大臣経験者からなる会議体だったのだ。
で、この西園寺公望が唯一の元老だった時代にできた慣例が「憲政の常道」なんだよね。

明治期は藩閥政治で、それこそ薩長が交代で内閣総理大臣を務めたりしたんだけど、大正デモクラシーの時代になると、英国の議院内閣制にならって、民意を直接反映した総選挙で選ばれた衆議院の第一党が与党となって内閣を組閣するべき、という風潮になってきたのだ。
松方正義が死去して元老が西園寺公望だけになると、事実上西園寺公望の一存で内閣総理大臣候補者が決まってしまうこととなるので、西園寺公望は衆議院の第一党となった政党の党首を内閣総理大臣の候補として推薦することに決めたんだ。
これにより、憲法上は議院内閣制が規定されていないんだけど、事実上議院内閣制と同じような組閣が行われることとなるのだ。
法的拘束力はないので、あくまでも慣例なんだけどね。

さらに、「憲政の常道」で大事なのは、与党による内閣が失政で倒れることとなった場合、野党第一党の党首が組閣するんだよね。
与党に失政があったのに引き続き与党の別の誰かが組閣をしたのでは民意が反映されないので、ということなのだ。
これは二大政党制を強く意識したもの。
これも慣例なので必ずしもそうしなければならないものではないんだけど。
で、当然、これは議院内閣制とは関係ない話なので、議院内閣制が日本国憲法に規定される際には外されているのだ。
とはいえ、今でも野党は「憲政の常道」を引き合いに出して、内閣総辞職があったときに野党の党首を首班指名すべき、と主張するけどね。
ただし、戦後でも、昭和22年(1947年)の芦田内閣総辞職後は、日本社会党委員長だった片山哲が首班指名され、片山内閣が発足している例もあるよ。

これはすべて戦前の話で、戦後の内閣総理大臣はもっと強い権限を持っているのだ。
国務大臣の任免権を持っているのもそうなんだけど、平成11年(1999年)の内閣法の改正においては、内閣法第4条第2項を改正して、「閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。」という規定の後ろに「この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。」という一文を挿入したのだ。
これにより、内閣総理大臣自ら発議できることが法制上明確化され、ますますリーダーシップが強化されたのだ。
日本は大統領制ではないんだけど、そうは言っても強力なリーダーが必要なので、議院内閣制の枠内でどこまで内閣総理大臣に強い権限を持たせるかっていうのは課題なんだよね。
実際問題としては、属人的な話で、法制上の権限がどうであっても、その人本人の能力によるところが大きいんだけど。

2013/09/21

兄弟星を観測せよ

先週、新型固体ロケットのイプシロンにより、小型科学衛星1号(SPRINT-A)の打上げが行われたのだ。
この衛星は惑星分光観測衛星で、愛称は打上げが行われた内之浦の地名である「火崎」から「ひさき」と名付けられたのだ。
太陽電池パドルも正常に開き、太陽の位置も補足してクリティカル運用期間も終了。
とりあえずこれで一安心というところかな。
今後は2ヶ月くらいかけて高精度の姿勢制御機能の確認をして、その後でやっと観測開始なのだ。

この衛星は、口径20cmの望遠鏡で惑星の大気を観測するんだけど、その観測対象が、極端紫外線という、紫外線の中でも波長が短く、X線に近い領域の電磁波を観測するんだ。
この極端紫外線は、地球の大気に吸収されてしまう波長帯であるため、地上の望遠鏡では観測できず、宇宙で観測することが不可欠なんだって。
これまでの地上の望遠鏡を使った惑星観測で、惑星の大気の状況や元素構成なんかを推測してきているわけだけど、今回の宇宙望遠鏡ではもっとつっこんだ観測ができるようになるよ!
具体的には、固体型惑星で、地球の兄弟星とも言われる金星や火星の大気の観測、太陽に最も近い水星の大気の観測、木星のオーロラの観測、木星の衛星のイオの大気の観測などが予定されているんだ。

ここから先は少し難しいんだけど、惑星や大気の磁気圏の状況を知るには、どんな波長の極端紫外線が出ているかを見ることで推測できる、というのがその原理で、波長別に観測するから「分光」観測なのだ。
太陽からは様々な波長の電磁波(=光)とともに、高エネルギーの粒子が放出されて、これを太陽風と呼んでいるのだ。
この太陽風には生物にとっては有害な放射線も含まれているんだけど、地球の周りにあるヴァン・アレン帯によって守られているんだよね。
ヴァン・アレン帯は地球の地磁気による磁気圏にとらえられた要旨や電子などの荷電粒子の集合で、ここで放射線がトラップされるのだ。
これと同じように、金星や火星といった惑星でも、それぞれの磁気圏と太陽風との相互作用があって、その現象の一部を極端紫外線を観測することでとらえることができるのだ。
この磁気圏と太陽風の相互作用の一端がオーロラなので、「ひさき」はオーロラ観測もするんだけど、見て美しいからではなくて、磁気圏の荷電粒子分布がどうなっているかを知るためにオーロラを観測するのだ。
(地球の磁気圏観測は「geoail」や「れいめい(index)」といった科学衛星で観測してきた歴史があるのだ。)

太陽風が磁気圏に「当たる」と、周辺の電子の衝突が起こって発光現象が起こるのだ。
このとき発生する光のうち、極端紫外線を観測すると、その強度から電子の密度や温度を推測することができるんだって。
空間的に分解して、どの位置だとどういう状態かというのを積み上げていくと、その磁気圏全体の概要が見えてくるというわけ。
時間変化も追うと、空間的な広がりだけでなく、時間的な変化もわかるようになるのだ。

太陽風中のプラズマは磁気圏の中に入ってくることがあるんだけど、通常はその中にたまっていくのだ。
たまに惑星の磁力線に沿って落ちてくることがあって、この加速しながら落ちてきたプラズマと惑星の大気が衝突すると発光現象が起きるのだ。
これがオーロラで、このオーロラの発光現象のうち、極端紫外線を見ることで、どんなプラズマと大気の分子が衝突したのかがわかるんだ。
スペクトル解析をすると、磁気圏のプラズマと大気の組成比がわかるので、これまでの地上からの観測による推測と合わせると、各惑星の大気の状態がより鮮明にわかってくるのだ!
また、太陽光のうち共鳴する波長だけ発光する共鳴散乱という現象を観測すると、もともとの太陽の光量から大気やプラズマの密度の絶対値がわかるんだとか。
この2つを合わせれば、どういう大気の構成になっているのかがわかるんだよね。

これまでの観測だと、金星大気は二酸化炭素が多く、それによる温室効果で非常に高温なんだけど、逆に火星では水蒸気もほとんど流出し大気が非常に希薄で、ほとんど温室効果がないから寒冷になっているのだ。
こういう現象を改めて大気の組成という点で観測できるようになるので、地上からの観測では見えなかった部分が見えてくる可能性があるんだ。
衛星自体は非常に小さいものなんだけど、なかなかすごい発見をしてくれるかもしれないんだよ。
出てきた成果について一般人がすぐに理解できるかどうかは微妙なんだけど・・・。

ちなみに、打上げに使われたロケットのイプシロンは、H-IIAロケットの固体ロケットブースターであるSRB-Aを第一段に改良し、その上にMV(ミューファイブ)ロケットで培った固体ロケット技術を駆使して開発した第二段を載っけたものなのだ。
これまでなんで「イプシロン」かなぞだったんだけど、打上げ成功後の会見で、「MV」の「M」を横にすると「ε」が出てくる、ということだったみたい!
けっこうしゃれがきいているなぁ。

2013/09/14

まずい、げふ、もういっぱい・・・

先日、職場の健康診断でひさびさに胃のX線検査をしたのだ。
だいぶ前にやったことがあったんだけど、あんまりよく覚えてなかったんだよね。
で、実際にやってみると、けっこう大変な目にあったよ。
前日の夜から飲まず食わずだし、当日はバリウムで胃がふくらんでいるのにごろごろ動かされるし。
特に、食べられないのはまだがまんできるとして、水が飲めないのがきついのだ・・・。
あしたのジョーの力石の気持ちがよくわかるよ(笑)
仕方がないからうがいして紛らわしていたんだ。

で、この「前日夜から水を含む飲食物摂取厳禁」という過酷な条件は、検査方法に理由があったのだ。
胃の検査を受ける前って、飲まず食わずでいるところに発泡剤と少量の水を渡されるんだよね。
それをぐいっと飲むと、胃の中でしゅわしゅわと炭酸ガスが発生して、ものすごい膨満感を感じるのだ(>o<)
その後、ぐっとげっぷしたいのをがまんして、白いとろとろのバリウム液を渡され、それをごくごくと胃に流し込むのだ。

これが何を意味しているかというと、まず、飲まず食わずですっかりしぼんだ胃の中で炭酸ガスを発生させてふくらませるのだ。
発泡剤として出されているのは重曹(炭酸水素ナトリウム)と酒石酸を混ぜた顆粒で、水に溶かすとこの2つが化学反応を起こして、酒石酸ナトリウムと炭酸ガス(二酸化炭素)と水に変わるのだ。
これがしゅわしゅわのもとだよ。
胃が広がったところでバリウムを流し込むんだけど、そうすると、バリウム液が胃の内面に付着して、膜のような層を作るのだ。
炭酸ガスはX線をほとんど投下させてしまうけど、バリウムは重金属でそれなりにX線を吸収するので、炭酸ガスが充満した空隙部分は黒く、バリウムがついた胃壁は白く写るんだ。
この白黒のコントラストで胃の形状を見ているんだけど、この方法を二重造影法と呼んでいるみたい。

げっぷをがまんしないといけないのは、バリウムを飲んでいる最中にげっぷすると、バリウム液がアワアワになってしまうので、胃の中にバリウムの泡が写ってしまって、きれいに胃の形がわからなくなるのだorz
そうなると、少し時間をおいてからバリウムを飲み直すことになるんだよね。
バリウムを飲んでから検査台に載せられてごろごろと2回転ばかりさせられるのは、胃の内面にバリウムをきれいにつけるため。
ゆっくり回転することでつけるんだけど、このとき、胃酸などの分泌があるときれいにバリウムが付着しないのだ。
なので、前日夜から何も飲めない、何も食べられないわけ。
胃の精密検査の時なんかは、弛緩剤・鎮痙剤を注射して、胃の蠕動運動も止めてしまうんだよ!

飲まされるバリウム液に入っているのは硫酸バリウム。
最近はアジや香りがついたものもあるけど、やっぱり飲みづらいのだ。
通常バリウムイオンはカリウムチャネルでカリウムイオンと拮抗して、神経伝達を阻害してしまうので毒性があるのだ。
殺鼠剤で使われるような炭酸バリウムがよい例。
ところが、硫酸バリウムだけは水にも胃酸にも腸液にも溶けないので、その弊害がないわけ。
(時々硫酸バリウムの過敏症があるらしいので気をつけないといけないんだけど。)
ちなみに、少量のバリウムだと興奮剤になるんだけど、量が多いと筋力低下や呼吸困難、不整脈なんかが出てくるよ。
一般にはバリウムとだけ読んでいるので、自分が飲んでいるのが硫酸バリウムかどうかは注意しないといけないのだ!
他のバリウムは飲んじゃダメだよ。

検査が終わると下剤を渡され、すぐに飲むとともに、バリウムが排出されるまで水分をしっかりとるように言われるんだよね。
バリウムはいわば石膏液を飲んでいるようなものなので、そのまま放っておくと胃や腸の中で固まってしまうのだ。
なので、水分をしっかりとるとともに、下剤で強制的に排出するわけ。
そのままにしてくと、消化管の中に石があるような感じになって、下手すると穿孔といって穴が空くようなことも・・・。
それと、検査後は、バリウムがきちんと排出されるまでアルコールは避けるようにも言われるけど、アルコールは分解するときに水が必要で、水分を奪ってしまうので、バリウムが固まりやすくなるのだ。
検診の前ってどんなにお酒が好きな人でもがまんするけど、もう少しだけがまんしていないと危ないんだ。

ちなみに、胃部X線検査一回あたりに被ばくする線量は600μSvくらい。
肺のX線検査(胸部X線検査)だと50μSvくらいだからおよそ12倍!
東京-ニューヨーク間を航空機で移動すると宇宙放射線で200μSvくらいの被ばくなので、3往復くら。
これって自然放射線からの被ばくと比べるとけっこう大きいので、胃の検診は数年おきだったりするのだ。
被ばくで増加するがんのリスクと 異常の早期発見のメリットとのバランスなんだよね。
それ以上に、バリウムを飲んでごろごろ回転するのはつらいけど(笑)

2013/09/07

運が悪いのはあきらめるしかない?

東京ディズニーランドの夏イベントのショー「爽涼鼓舞」の抽選が当たらない、というツイートをよく見かけたのだ。
この夏のディズニーランドでは、3種類のショーがあって、ワンマンズ・ドリームII(初回は抽選なし、抽選ありが4回)、昼の「爽涼鼓舞ジ・エンブ」が4回(すべて抽選あり)、夜の「爽涼鼓舞ザ・ファイナル」が2回(すべて抽選あり)となっているのだ。
つまり、1回入場すると3回抽選できることになるんだけど、3つ全部外れた、とか、年間パスポートで何度も通っているのに「爽涼鼓舞」が当たらない、とかいう不満の声がネットに流れているのだ。

平均入場者数と座席数から、全員が抽選をしたと仮定すると当たる確率は10%前後くらい、半分の人しか抽選しなければ20%くらいで当たるはずなのだ。
つまり、そんなに当たらないわけではないんだよね。
ところが、10回連続で外れた、とかいう話もあるようで・・・。
仮に当選確率を低めに見積もって10%と仮定すると、3つのショーの抽選にすべてはずれる確率は、9/10の3乗なので、72.9%。
実に7割以上の人はどのショーも当たらないのだ。
一度行ったくらいでは見られないと思った方がよいということか・・・。
これって本当にいいのかどうか微妙だけど。
で、10回連続で外れる確率は、9/10の10乗なので34.9%。
この数字だと意外とよくある?

現象論だけ見るとそうなんだけど、この当たり・はずれには感覚的な錯覚が生じるのだ。
つまり、先に抽選ではずれていると、後の抽選では当たる確率が高いような気がするんだよね。
3つのショー全部がはずれるのが7割の確率で起こるとわかっていると、すでに2回連続ではずれている場合に次にはずれる(=3回連続ではずれる)確率を7割と勘違いするのだ。
そうなると、当たる確率を3倍くらいに見積もってしまうんだよね・・・。
でも、あくまでも1回1回の抽選の当選確率は不変なので、これは錯覚なのだ。

もっとわかりやすい例でいくと、さいころを振ったとき、9回連続で偶数の目が出たので、次の目は奇数が出るに違いない、と思い込むようなもの。
でも、9回目までの事象はすでに確定しているので、本来的には10回目の事象には影響しないのだ。
冷静になればわかるけど、さいころが物理的に変わるわけでもなし、それまで連続で偶数の目が続いていても、さいころが急に奇数の目が出やすくなることはあり得ないんだよね。
10回さいころを振るという行為を繰り返したときに、すべてが偶数の目になる確率は1/1024だけど、9回目まで偶数で10回目に奇数が出る確率もまた1/1024なのだ。
さいころを1回も振る前なら、9回偶数の目が続いた後にさらに偶数の目が出るのは確かに1/1024なんだけど、何回目だろと、毎回さいころを振ったときに偶数の目が出る確率は1/2だよね。

これって、ありていに言うと、運悪くはずれが続いた人でも、次に当たるか当たらないかは他の人と変わらない、ってことなんだ。
結果としての平等を求めると、外れが続いた人は次が当たりやすくなってほしいものだけど、確率の世界は冷たい!
あくまでも毎回毎回の確率は同じで、すでに確定している事象には影響を及ぼさないんだよね。
ところが、これが心情的には理解できないので錯覚に陥るのだ。
それが不満のもとになるわけ。
だって、これまでずっとはずれているのに、他の人と当たる確率が一緒だなんて・・・。
中には連続で当たっている運がよい人もいるのに、ということ。

でも、東京ディズニーリゾートでの抽選は完全にランダムではないので、ちょっとだけ事情が違うのだ。
決められた抽選期間内に決められた当選数を必ず出すようなシステムになっていて、抽選を行う時間によって当たる確率が変動する仕組みになっているのだ。
特許申請をしていたらしいけど、とれなかったみたい。
完全にランダムにすると抽選を始めて早々に当たりが出尽くすかもしれないし、逆に、中千時間が終わっても当たりが残っているおそれも。
それを回避するために、最終的に当たりが残らないように「出目」の調整をし、いつ抽選に行っても「公平」に当たる、という理屈になっているんだ。

でもでも、これってよく考えると、ぎりぎりに抽選した方が当たりやすいはずなんだよね、当たりが残らないようにしないといけないから。
最近はそれも考慮してか、ぎりぎりメソッドは通じなくなっているようだけど・・・。
どういうシステムか詳細は不明だけど、時間当たりの当選数が一定になるように当選確率をいじっているなら、込んでいるときよりすいているときのが当たる確率は高くなるし、最初はランダムに抽選しておいて後で調節する方法だと、最初に当選が集中していない限りはなかなか有効な先方ということになるよ。
そのあたりは分析すれば攻略法は出てきそうだけど、そもそも誰がどのタイミングで当たったかは運営者側にしかわからないから、素人が編み出すのはつらいだろうね。
ずっと横で見張っていて、いつ当選が出たかをチェックしていれば別だけど(笑)

2013/08/31

手作りだとぶよぶよ

家のお風呂でもらった手作り石けんを使っているんだけど、これがすぐにとろとろのどろどろ、ぶよぶよに溶け崩れてしまうんだよね(>o<)
で、素人が作ったものだから、と思っていたのだけど、プロが作った有機素材の手作り石けんというやっぱり同じことが起こることがわかったのだ!
やっぱり興行的に作っているやつとは何か成分が違うのかなぁ?、工業製品だと溶けにくくなるような成分が入っているのかなぁ?、なんて考えていたんだよね。
ところが、これが実は「逆」だったのだ。

むしろ手作り石けんには余計な成分が残っているので、高温多湿な場所にあるととろけてきてしまうんだって。
一般に、手作り石けんは、油脂をあたためたところに苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を加え、よく撹拌するのだ。
全体がトロンとなってきたところで型に入れて固めたらできあがり。
これを化学反応で考えると、トリアシルグリセロール(グリセリンに3つの脂肪酸がエステル結合したもの)である油脂が水酸化ナトリウムで加水分解され、3つの脂肪酸ナトリウムとグリセリンになるのだ。
で、この反応を進めるのには熱が必要なのであたためてかき回すわけ。
分解反応が起きると反応熱があるので、最初に反応を起こせばある程度自動的に反応は進んでいくのだ。
この反応は「けん化」と呼ばれるものだよ。

石けんを作る場合は必要な水酸化ナトリウムの量をあらかじめ計算して加えるんだけど、油脂の種類ごとに必要な量が変わるので、注意が必要なんだ。
1gの油脂をけん化するのに必要な水酸化ナトリウムの量をけん化価と言っていて、通常は油脂の種類ごとにだいたいの値が書いてある一覧表をもとに計算するんだ。
油脂はグリセリンに様々な脂肪酸が結合した状態なので、この脂肪酸の分子量の大きさでけん化価が変わってくるわけ。
炭素鎖の長い大きな脂肪酸がついたものだと、重量に比べて分子数は少なくなるのでけん化価は小さくなるし、その逆に炭素鎖の短い小さな脂肪酸がついたものだとけん化価は大きくなるよ。
ちなみに、油脂の種類というか、油脂に含まれる脂肪酸の種類で、石けんの水への溶けやすさ、泡立ち、洗浄力なんかも変わってくるのだ。
手作りする場合はそういうところにも気を遣っている人がいるみたい(オリーブ油石けんとか、パーム油石けんとか)。

で、けん化反応を終えたものをそのまま型に流し込んでしまうと、未反応の油脂が残っているし、グリセリンも混ぜ込まれている状態なんだよね。
さらに、廃油なんかを使っている場合は、油脂に含まれていた不純物も残っているのだ。
手作り石けんが柔らかかったり、溶け崩れを起こす主な原因はこの未反応の油脂やグリセリンが原因。
特に、油脂はできた手作り石けんの融点を下げるので、溶けやすいものになるよ。
グリセリンは吸湿性があるくらい水に溶けやすいので、これが入っていると水分を吸ってとろとろになるのだ。
で、この二つが合わさると、手作り石けんの特徴の溶け崩れが発生するよ(>o<)

あらかじめけん化価は計算していても、厳密に計算しているわけじゃなくて概算だし、そもそも反応が100%進むわけでもないので、未反応のものが残るのは仕方がないのだ。
でも、この未反応の油脂が手作り石けんの保湿性の高さの所以だったりするんだよね。
スキンケア用のクリームにも油脂が入っているわけで、肌の表面から水分が奪われるのを防ぐのだ。
また、グリセリンは化粧品の中で保湿成分にも使われるようなものなので、こちらも貢献しているよ。
それから、未反応の油脂は洗浄力を落とすんだけど、これが過剰に肌の表面から脂質をそぎ落とすのを防ぐ効果もあって、肌に優しい石けん、ということにもなるのだ。
このため、わざとあまりあたためずに、反応熱だけでけん化する製法もあるくらい。
ただし、オリーブ油とかにかぶれる人もいるし、油脂の中には刺激性のものもあるので、注意が必要なのだ。
また、未反応の油脂や残っている不純物は酸化されて劣化するので、手作り石けんはそんなに長期には保存できないみたい。

工業的にはどうしてるかというと、けん化反応が終わったところで塩析をして、不純物とグリセリンを除いているのだ。
石けん分子はコロイド粒子として液中に分散していて、これは水分子が水素反応で石けん分子のまわりに適度に水和しているからなんだけど、ここにより水和力の強いイオンを加えると、石けんは分散できなくなり、析出してくるのだ。
これが塩析という現象で、とろとろになった反応液に食塩水とかの塩の水溶液を加えて混ぜてやると、石けんが析出してきて、液の上に浮かんでくるよ。
このとき、たいていの不純物は水より重くて下に沈むので、石けんと不純物を分離できるのだ。
この塩析による精製を何度かして石けん素地(ニートソープ)というものを作り、これに香料や色素を加えて練ってから型にはめて固めると、売られている堅くて溶け崩れしにくい石けんができあがるのだ。

塩析をしない方法としては、あらかじめ高温加水分解で油脂を脂肪酸とグリセリンに分解しておき、脂肪酸だけをとりだして水酸化ナトリウムと反応させる中和法というのもあるよ。
あらかじめ脂肪酸を選べるし、後で不純物を除く必要もないので、いろいろと目的に応じたものが作りやすくなるのだ。
刺激性の強い分子量が小さい脂肪酸を抜くこともできるし、けん化反応に使うアルカリも残留しないので、より高い品質の製品が作れるんだよ。
ただし、塩析する方が個性的な石けん(=画一化していない)になるので、小規模事業者だと伝統的な塩析を使う方法(=釜焚き法)を続けているみたい。

で手作りした石けんを溶けづらくする方法だけど、塩析までして精製すればよいわけだけど、これってけっこう大変なんだよね。
そこまでやらないにしても、少しの工夫で溶け崩れを起こしづらくすることは可能なのだ。
それは、型に入れてからもある程度の温度に保温してやることで、けん化反応をしっかり起こさせるというもの。
通常は型に入れてからは反応熱でけん化が進むと同時に冷やされていくんだけど、型が大きかったりすると中心部はいいとして、周辺部では早々に冷やされて反応が止まってしまうのだ。
なので、保温しながらゆっくり固めることでけん化率を上げ、未反応の油脂を減らそうというわけ。
残留する水酸化ナトリウムの量も減らせるので、より安全になるのだ。
グリセリンは残っているから多少の保湿性は残っているし、わりとよい感じでできるみたい。
夏休みの宿題で石けんを作ったりすることもあるけど、そのまま固めたものと、保温しながらゆっくり固めたもので溶け崩れの差まで調べたらおもしろいかも。

2013/08/24

むぎゅ~

最近職場の冷蔵庫には麦茶が入っているのだ!
不断はコーヒーやお茶を飲むことが多いんだけど、やっぱり夏は麦茶だよね。
さっぱりすっきりでくせがない。
ウーロン茶とは違ってカフェインも入っていないので、妊婦さんや赤ちゃん、乳幼児も安心して飲めるのもよいよね。

そんな麦茶、最近ではまた徐々に復権してきているんだって。
どうしても昭和の飲み物、という印象だけど、なんだかんだでぐるっと回って見直され、評価されているようなのだ。
やっぱり一番大きいのはカフェインが入っていないこと。
カフェインは覚醒作用だけでなく、利尿作用もあるので、あんまりお茶やコーヒーを飲み過ぎるとトイレが近くなるんだよね・・・。
で、夏の水分補給を考えると、これはあんまりよくないことなのだ(>o<)
麦茶ならカフェインレスなので、水分補給にはばっちり♪というわけ。

さらに、研究も進んでいて、いろんな効用がわかってきているらしいよ。
どこまで本当に有効なのかはよくわからないけど(笑)
よく言われているのは、胃の粘膜を保護する作用、高い抗酸化作用(発がん物質を方挙したり、生活習慣病を予防したりする効果も期待できるとか)、血液さらさら作用(血液の粘度を下げ、流動性を上げる効果があるとか)、バクテリアの定着を予防する作用(特に、虫歯の原因菌として名高いミュータンス菌の菌膜生成を阻害して、虫歯予防にもなるんだとか)などなど。
そんなこんなで、むかしから愛され、飲まれてきたけど、地味にすごい飲み物だった!、と再び脚光を浴びつつあるのだ。

でも、ボクたちがイメージする、ひんやりと冷たい麦茶というのは戦後のもの。
冷蔵庫の普及で冷やして飲まれるようになっただけで、その前は温かい(或いはぬるい)飲み物として親しまれていたのだ。
これは今は温かい飲み物として親しまれているけど、むかしは冷たくして飲んでいた甘酒と対照的。
煎った麦を煎じて飲むようになったのは、緑茶が伝わるはるか以前の平安時代と言われているよ。
お茶がなかった時代からあったから、当然名称も「麦茶」ではなく「麦湯」だよ。
っていうか、戦後になってから「麦茶」という名前が定着したみたい。
実はつい最近の出来事なのだ。

室町時代までは主に貴族の飲み物で、戦国時代になると武将の間でも飲まれるようになったのだ。
江戸期に入ると、町中に麦湯を売る屋台が現れ、夏の夕方に屋台のそばで縁台に座りながら麦湯を飲んで涼む、という風物詩が生まれているみたい。
麦湯の専門店では、若い少女が麦湯だけを売っていて、水茶屋のように団子などの軽食は置いてなかったようなのだ。
簡易カフェだね。
麦湯は明治期までそういう形で親しまれていたんだけど、西洋からカフェ文化が入ってくると廃れてしまったみたい・・・。
でも、家庭で作る清涼飲料として飲まれ続けるのだ。

明治になると自宅で大麦を煎ったり、煎られた大麦を買ってきたりして麦湯を作ったんだって。
なんで麦湯にしたかというと、そこには上水の整備の問題が絡んでくるのだ。
当時はまだ井戸が一般的だし、一部で敷設されていた上水道も基本的には川や池から直接を水を引いてきたもの。
つまり、そこにある水は基本が「生水」なのだ。
したがって、飲料水にするために、湯冷ましにすることがスタンダードだったんだって。
で、どうせいったん沸かすなら、麦湯にして香ばしくしておいしく飲もう、ということになったみたい。
おいしい水がそのままごくごく飲める社会で普及しなかったわけだね!

戦後に冷蔵庫が普及してからは冷やして飲むのが一般的になったのは最初に書いたとおり。
で、夏場の定番の冷たい飲み物となったんだけど、他の例に漏れず、もっと勘弁に麦茶を飲みたい、という四級から、商品開発が進むのだ。
そうして出てきたのが、ティーバッグタイプの水出し麦茶。
むかしから水出しというのはあったようで、より香ばしくなるらしいんだけど、時間がかかるので通常は煮出していたのだ。
でも、それが面倒だ、ということで、水に入れておくだけで麦茶にしたい、とこの商品が生まれたわけ。
その後、すでにできている麦茶が缶やペットボトルに入れられて売られるようになり、ポーションタイプの水で薄めるようなものまで出てきたよ。

ただし、注意したいのは、こういう即席タイプの麦茶は、早く色を出せるように純粋な麦茶でないものがあるらしいのだ。
お茶の粉が混じったりしていて、タンニンやカフェインを含んでいるものあるので気をつけないといけないみたい。
特に、小さい子に飲ませるならよく調べてみないとね。
麦茶は実は家庭でもけっこう簡単にできて(だから明治期に家庭に普及したんだけど)、六条大麦をフライパンなどで2分ほどから煎りしてあら熱をとったものを沸かしたお湯に入れ、5~10分煮出したらできあがりなのだ。
そのまま麦を入れたままだと苦みなどの雑味が出るので、温かいうちにふきんなどでこして冷やせばいいみたい。
ティーバッグタイプは煎るのを省略できるのと、煮出した後に取り出しやすくするところが楽になっているのだ。
でも、夏休みに子供と一緒に作ったりしたらおもしろそうだよね。
煎る時間や煮出す時間を変えて色や香りを比べてみて、なんて夏休みの宿題にも使えそう。

2013/08/17

「南国」土佐はやはり南国だった!

今年の夏は恐ろしいほどの猛暑続き。
なんと、ついこの間更新されたばかりの日本最高気温がまたまた更新されたのだ。
ほぼお風呂の温度と同じ41度だよ!
最高気温が40度を越えた日も4日連続だったからたまらないよ・・・。
実際は蒸し風呂状態なんだろうね。

長らく日本の最高気温は山形市で観測された40.8度だったのだ。
これは戦前の昭和8年(1933年)の7月のデータ。
平成19年(2007年)8月に埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で40.9度が観測されるまで、チャンピオンだったわけ。
山形というと雪深いイメージだから、最高気温が山形で観測されたというのは意外性があって、よくクイズでも出題されていたっけ。
今度は高知県なので、暑いだろうなぁ、という気はするけど、それでも今までそこまで暑い印象はなかったので意外なのだ。
ところが、最高気温の順位なんかを見ていると、今回最高気温が観測された江川崎観測所っていうのは上位の常連さんだったんだよね。
ついにトップに躍り出た、ということなのだ。

山形市で最高気温が観測された理由として考えられているのは、主にフェーン現象なのだ。
海側から来る湿った風が山を越えて吹き下ろすと、暖かい、乾いた風になるんだよね。
これについては以前に調査したのだ。
で、山形市は盆地なので、その熱風が来た後にそこにたまってしまうので、必然的に気温が上がってしまうわけ。
山梨県の甲府や、京都や奈良の市街も盆地だけど、フェーン現象が起こらない分、そこまでの気温にはならいんだ。
(もともと盆地は山に囲まれた天然の要塞なので、古くから街が栄えるんだけど、暑いのが欠点なのだ!)

埼玉の熊谷もフェーン現象と盆地のコンボで猛暑になると考えられているんだ。
実は群馬の館林も地図で見ればわかるとおりすぐ近くなので、暑い理由は同じ。
東京湾方面から吹いてくる湿った南風が秩父の山にいったん遮られ、埼玉や群馬に吹き下ろすときには熱い乾いた風になっているというわけなのだ。
さらに、北西の三陸沖から吹いてくる風は赤城山で遮られ、フェーン現象であたためられた「からっ風」として吹き下ろしてくるのだ。
このあたりは熱風の交差点と言われているらしいよ。
長らく1位だった山形を抜いたのは、東京都心部のヒートアイランド現象で南方面から来る風がさらに熱くなったから、と考えられていて、人工的な要因がからんでいる可能性があるのだ。

で、今回の四万十市。
高知県というと海に近いイメージがあるし、市の名前のとおり、四万十川も流れていて涼やかな印象を与えるんだけど、地図で見るとわかるとおり、実は高知と愛媛の県境付近で四国でもかなりの内陸部。
しかも、山に囲まれている盆地なのだ!
というわけで、フェーン現象+盆地のコンボにより暑くなる地域のひとつというわけ。
これまではトップになるほどは暑くはならなかったんだけど、どうも今年は太平洋高気圧が上空まで強く張り出していて、このあたりに下向きの強い空気の流れがあって、どんどん熱が流れ込んだようなのだ。
しかも、いつもは瀬戸内海側から来る風によって多少熱が流されるんだけど、強い高気圧の張り出しで今年はそれもあまり吹かなかったので、ますます熱がたまったんだとか・・・。




というわけで、平年以上に熱が流れ込んでくる状態になったと同時に、その熱を冷ます作用も弱まったので、あたたまり続けた、というわけ。
もともとこのあたりは降雨量も少ないし、雨に冷やしてもらうこともかなわず。
熱がまったく逃げないので連日40度越えという状況にもなったのだ(ToT;)
あなおそろしや。
ここまで暑いと、35度になったくらいでも涼しく感じるんだろうなぁ。

そういう意味では、四万十市が日本最高気温を記録したのは今年の気圧の状況によるところが多いので、又来年も同じように暑いとは限らないのだ。
もちろん、もともと暑いところだから、日本一じゃなくても、日本で5本の指に入るくらいの暑さにはなるんだろうけどorz
果たしてこれが名誉なのかどうかはよくわからないけど、とにかく有名にはなったよね(笑)
高知県は鳥取、島根に次いで人口が少なく(世田谷区と同じくらい。)、坂本龍馬以外に全国に誇れるものがないのが悩みだったんだけど、これでかなり挽回できたよね?
熊谷や館林は「暑い」ことを地域興しにつなげているので、四万十市にもがんばってほしいのだ。

2013/08/10

Tの魅力

ボクは紅茶よりはコーヒー派なのであまり使わないけど、職場のお茶スペースにはいろんなティーバッグがおいてあるのだ。
紅茶も茶葉の種類やフレーバーでいろんな種類があるよね。
ティーバッグだと1回分ずついろんなものが楽しめるのが魅力なのだ。
お湯を注ぐだけで簡単だしね。

で、このティーバッグ、実は偶然から生まれたものなんだって。
すでに有名な話としてその経歴(?)は明らかにされていて、時は1908年、場所はニューヨーク。
コーヒーの貿易商をしていたトーマス・サリバン氏が、コーヒーの売れ行きが悪く、紅茶に手を出したのが始まり。
当時はお茶のサンプルはブリキ缶に入れて送るのが主流だったんだけど、お金がないので絹の袋に入れて送ったそうなのだ。
でも、送られた方はそんなのは見たことないわけで。
どうしたらよいかわからず、そのままお湯を注いでしまったとか。
するとあら不思議、紅茶がきれいに煮出せるじゃありませんか!
茶葉を濾す必要もないし、後で袋を取り出せばポットを洗うのも楽ちん♪
ということで、1920年代には米国中に広がっていったみたい。

英国では伝統的な淹れ方が主流で、ティーバッグには距離が置かれていたみたいなんだけど、今ではかなり広がり、英国で消費される紅茶の8割以上がティーバッグと言われているのだ!
1960年代以降に広まったというから、米国文化が世界を席巻した後のことなのかな?
ちなみに、日本や米国、欧州のほとんどでは1杯分ずつの地位名ティーバッグが主流なんだけど、英国やカナダでは複数人分をいっぺんに入れる大きなティーバッグが主流とのこと。
ティーバッグは使っても、なおティーポットで入れたい、ということなのかもね(笑)

最初こそ絹の袋だったけど、何も使い捨てにするのにそんな高級な布は必要ないわけで、やがてそれは綿に変わるのだ。
そして、合成繊維や不織布なんかが出てくると、そっちに取って代わられることになるよ。
形も進化していって、最初は単にてゃばを放送していただけなので本当に袋に入っているだけだけど、やがておいしく、きれいに紅茶が抽出できるように工夫されていくのだ。
ポットに入れるタイプとして、円形のティーバッグが生まれ、今度は、すぐに取り出せるようにひもがついたり。
袋の形状も、普通に折りたたんだ四角いタイプから、中で茶葉が動けるように隙間を作るために三角錐型になったりと様々。

で、紅茶だけじゃなくて、緑茶やハーブティー、中国茶なんかでもティーバッグが増えてきているよね。
ところが、いわゆる「茶」カウントされるものはそうなんだけど、コーヒーの方はなぜかそうなっていないのだ。
粉状の溶かすだけのインスタントコーヒーか、簡易にドリップするタイプしかないよね。
ティーバッグ上のものの中にコーヒーの粉が入っていてもいいような気はするんだけど・・・。
逆に、粉タイプの紅茶ってほとんどないよね。
ミルクティーでお湯を注ぐだけの粉はないことはないけど。
これは何か理由があるのかなぁ?

最後に、おいしいティーバッグでの紅茶の淹れ方をひとつ。
リプトンの公式ページによると、ティーバッグをゆすったり、押したりすると渋みが出るので、ゆっくりと出し入れするのがコツとあるよ。
あらかじめカップを温めておいて、そこに沸騰した熱湯を投入。
カップの縁からゆっくりとティーバッグを滑り込ませ、1~2分待つのだ。
ふたがあればより香りが楽しめるとか。
で、出すときも慎重にゆっくりとティーバッグを引き出す。
アイスの場合は、ポットで同様に人数分のティーバッグを使って作るんだけど、氷の分濃いめに作るんだって。
というわけで、ボクはあまり飲む機会はないけど、今度やってみようっと。

2013/08/03

アゲアゲ

先日伊勢丹新宿店の沖縄展で「かまぼこ」を買ってきたのだ。
沖縄のかまぼこは、小田原名物のかまぼこや仙台名物の笹かまぼことは違って、揚げたもの。
むしろ鹿児島名物の薩摩揚げに近いもの。
ただ、本場の薩摩揚げはかなり甘みがあるし、色も茶色いんだけど、沖縄かまぼこはきつね色くらいで、味付けも強くはないのだ。
なので、そのまま食べるだけでなく、チャンプルー(炒め物)や沖縄そばの具なんかに使われるんだよ。

もともとかまぼこは魚をおいしく食べるために考案されたもののようなのだ。
平安初期の文献にすでに現れるらしいんだけど、この頃はナマズなどの淡水魚を使っていたみたい。
ま、京都が都だから、琵琶湖や鴨川なんかでとれた淡水魚の方がよかったんだろうね。
というのも、かまぼこは生魚ほどではないにしても傷みやすい食材・・・。
干物みたいな保存食とは違うのでそんなに遠くには運べないのだ(>o<)

このころのかまぼこは、棒に魚のすり身を巻き付けてやいたもの。
見た目が「蒲の穂」や「鉾」に似ているので、「がまほこ」になって、これが「かまぼこ」になるのだ。
漢字では今でも「蒲鉾」だよね。
後にいたにすり身をつけて蒸す製法が開発されると、棒につけて焼く方は「竹輪蒲鉾」と呼ばれるようになり、それが単に「ちくわ」になったみたい。
笹かまぼこみたいに今でも棒につけて焼いたものが「かまぼこ」の名を冠している場合もあるけどね。
一方、蒸す方は板についているので「板かまぼこ」。

一般には白身の魚で作られるけど、むかしはスケトウダラやサメなんかが大量に水揚げされることもないので、実は高級品だったらしいよ。
今ではおせち料理の中で脇役的な扱いだけど、実はかまぼこは紅白で縁起もよいし、高級な食材だったのだ。
でも、実は高級な白身魚を使わないかまぼこもあって、静岡の黒はんぺんとか、愛媛のじゃこ天なんかはその代表例。
どちらも色がちょっと灰色っぽいのだ。
でも、これはもっと身近な魚を使っているので、庶民の味だったはずなんだよね。

ここで、焼く、蒸すに次ぐ第三の調理法として揚げるが出てくるのだ。
一般には薩摩地方の名物なので「薩摩揚げ」と呼ばれるけど、鹿児島ではつけ揚げ、沖縄では「ちきあぎ」と呼ばれているよ。
語源や発祥もあまり定かではなく、「つけ揚げ」自体も沖縄の「ちきあぎ」から来ているんじゃないかと言われる位なので、ひょっとすると、沖縄経由で中国大陸の調理法が入ってきたのかも。
もともと肉団子などミンチした肉を油で揚げる調理法があるからね。

一般名称としては「揚げかまぼこ」と呼ばれていて、すり身だけを揚げたものと、具材を混ぜて揚げたものなどバリエーションは様々。
形も、四角いもの、丸いもの、球状のもの、棒状のもの、円筒状のもの、成型していない不定型なものなどこっちもいろいろ。
沖縄には、じゅーしー(味付けごはん)を包んだ揚げかまぼこもあるんだ。
特に具材を巻いたものや、具を混ぜたものは「天ぷら」と呼ばれる場合も。
東京だとゴボウ天うどんは、ゴボウの天ぷらが入ったうどんだけど、九州だとゴボウ入りの薩摩揚げがのったうどんの場合もあるので注意が必要だよ。
ま、どっちでもおいしいんだろうけど(笑)

揚げかまぼこの次の革命は魚肉ソーセージ!
戦後すぐのころは遠洋で獲れたマグロを冷凍して持ってくる技術がなかったので、氷冷だったんだって。
そうすると、どうしても鮮度が落ちてしまってよい値がつかなかったそうなのだ。
そこで考案されたのが、そういう魚肉を使ってハムやソーセージを作ってはどうかというアイデア。
基本はかまぼこと同様にすり身にするんだけど、そこにブタの脂やスパイスを加え、ビニールに包んで加熱殺菌したもの。
すると、殺菌されているので日持ちもよくなって、まだ肉が高かった日本の市場で大きなブームが起きたのだ。
最近はかなり減ってきたみたいだけど、今でも時々食べたくなるあじだよね。

その後も、スケトウダラの冷凍すり身化技術の確立とか、かに風味かまぼこの開発など、技術革新が進んでいるそうだよ。
やっぱり日本の食卓には欠かせない食材となっているんだねぇ。
おでんに揚げかまぼことか竹輪が入っていないのは想像できないし。
米国では豚肉のミンチを使ったミートローフがまさに国民食となっているけど、海とともに生きてきた日本人にはやっぱり魚肉すり身だね♪
低カロリー高タンパク食品として見直されてきているし、これからどんどんかまぼこを食べよう。

2013/07/27

何よりも安定を第一とする

参議院選挙は与党の勝利で終わったのだ。
第一次安倍政権の時に参院選で敗戦して以来、6年ぶりに自公政権で衆参両院で過半数を確保し、「ねじれ」が解消されたのだ。
安倍総理もそういう経緯があるから感慨もひとしおなんだよね。
で、この参院選の選挙結果のニュースでよく耳にしたのが「絶対安定多数の確保」という言葉。
調べてみるとなかなかおもしろいことがわかったよ。

もともと「安定多数」とか「絶対安定多数」というのは衆議院の議席数に使われる言葉で、与党が国会運営をしていく上での「やりやすさ」を示す指標なのだ。
本会議で可決するには定数の過半数があればいいわけだけど、日本の国会は基本的に委員会審議をすることとなっているので、各委員会で議案を可決し、本会議に持ってくる必要があるのだ。
委員会で否決されたのを本会議でひっくり返して可決することもなくはないけど、あんまり「安定的」な運営ではないよね・・・。
で、この委員会における審議を与党が思うがままに進めるには、各委員会で過半数を占める必要があるというわけ。
これが「安定多数」という概念だよ。

委員会への議員の割り当てについては、国会法第46条第1項で「常任委員及び特別委員は、各会派の所属議員数の比率により、これを各会派に割り当て選任する。」と定められているので、基本的には議席数に応じて比例配分されるのだ。
衆議院では17の常任委員会が設置されていて、その定数の総和は610。
全常任委員会で過半数を確保するとすると、320必要なので、320÷610=52.5%の議席数、すなわち、衆議院の議員定数480のうち252議席が必要ということになるよ。

委員会では委員長が選出されるんだけど、委員長は委員会での議決が賛否同数だった場合に裁決することになっているので、委員だけで議案を可決しようとすると、委員長の分を抜いて委員だけで過半数を確保する必要があるんだ。
これが確保できている状態を「絶対的安定多数」と言っていて、この状態だと、委員会での審議は与党の思うとおりスムーズに進むわけ。
各常任委員会で委員長ポストを確保した上で委員の過半数を得ようとすると、単純に必要な委員数だけなら324確保すればよいのだけど、このときは324÷610=53.1%で、このままだと定数25の議院運営委員会では25×53.1%=13.3で、委員長+過半数に必要な14が確保できないのだ!
で、この議院運営委員会でも委員長ポストをとった上で過半数を確保しようとすると、14÷25=56.0%が必要なので、絶対安定多数の議席数は、480×56.0%=268.8、小数点を切り上げて269議席が必要となるわけ。

ちなみに、衆議院の場合、参議院で否決された議案を再度議員総数の3分の2以上の賛成で再可決できることになっているけど、これに必要な320議席は「圧倒的多数」というそうなのだ。
ここまで議席があると参議院が何を言おうと、時間さえあれば衆議院だけで議案を可決することができるのだ。
そうなると、参議院の立場がないわけだけど・・・。
現在の衆議院の勢力では、自民党は294議席なので単独で過半数を突破しているのだ。
これに連立与党である公明党の31議席を加えると325議席になるので、圧倒的多数も超えているわけ。
ということは、たとえ「ねじれ」ていても、なんとかなる状態ではあるんだよね。

圧倒的多数はあまり参議院では言われないけど、安定多数や絶対安定多数は言われるのだ。
衆議院で再可決すればいいと言っても、実際に恐慌的にやると国会が不正常になって審議拒否なんかにつながるから、「伝家の宝刀」であってもなかなか抜けないんだよね。
なので、参議院でも安定多数や絶対安定多数を確保していることが望ましいのだ。
今回の参議院選挙では、改選のなかった分も含めて、自民党は115議席で単独過半数には届かず、公明党の20議席を加えると135議席で、安定多数は超えるのだ。
参議院の常任委員会の定数などは別表にまとめたとおり。





単純に委員の過半数を確保しようとすると必要な議席は、214÷402×242=128.8、小数点切り上げて129議席。
これに委員長ポストと委員の過半数の両方を確保しようとすると、222÷402×242=133.6、小数点切り上げて134議席。
実際に134議席だと、占有率は134÷242=55.4%になるんだけど、これで行くと、小数点以下を四捨五入すれば委員長+過半数が確保できていることになるのだ!
で、衆議院の場合は、四捨五入なしで各常任委員会で必要な数を満たす条件で絶対的安定多数が算出されているんだけど、そのまま当てはめると、一番条件のきつい懲罰委員会に引きずられて占有率60.0%が必要になるので、146議席になるはずなのだ。
ところが、一般には140議席と言われているんだよね・・・。
なおかつ、今回の選挙報道では、与党135議席で「絶対的安定多数を確保した」とか言われているのだ。
これはなんだ?

実際に議案の採否にあまり関係のない懲罰委員会を別格として扱う場合、次に条件がきついのは定数が21の外交防衛委員会と経済産業委員会。
21のうち12が必要なので、占有率では57.1%が必要で、議席数では139になるはず。
ここでも数が合わないorz
なんかからくりがあるのかなぁ?
単純に参議院だからとまじめに計算していないのか、常任委員会の定数がどこかで変更になったけど計算が更新されていないのか。
ネットやウィキペディアの情報もまるまる信じてはいけないんだね(>o<)

実際には絶対的安定多数を確保していても野党に委員長ポストを譲ったりするので全部の常任委員会を与党がしきれるわけではないんだけど、それも考慮すると、すべての委員会で与党が過半数を確保できていることは確かなんだよね。
ということは、採決まで持ち込めれば与党の考えるとおりに議案を通せるということ。
これが安倍政権が長期化できるだろう、という予測の根拠なのだ。
ま、実際には与野党の駆け引きなんかもあるし、国民の目もあるから、あんまり無茶なことはしないんだけどね。
とにかく、これで「決められない政治」からは脱却するはずなので、しっかりと日本の行く末を議論し、よい国にしてもらいたいものだよ。

2013/07/20

ただ静かに上澄みをすする

先日、海外旅行のおみやげでコーヒー(豆を挽いたもの)をもらったのだ。
ここまではよくある話で、それが南米の豆だったり、アフリカの豆だったり、あるいはハワイの豆だったりするんだよね。
今回もらったのはインドネシアの豆。
バリ島のお土産だよ。

ところが、これがおどろきのコーヒーで、いわゆるペーパードリップで抽出するのではないのだ!
まるでまるであたかもインスタントコーヒーのようにスプーンで適量をカップに入れ、その上からお湯をじょぼじょぼと・・・。
よくかき回したらできあがり、じゃなくて(笑)、そこから数分静置するのだ。
すると、コーヒーの豆が沈むので、上澄みを飲むというわけ。
ものすごい簡便な抽出法だけど、これが意外といけてる味になるんだよね。
本場ではコーヒー豆と砂糖を一緒にカップに入れ、最初から甘くするんだって。
(熱帯であるバリでは冷蔵庫がない時代に生乳の扱いが難しかったので、伝統的には砂糖のみを入れるんだけど、たまにベトナムコーヒーのように練乳も足すみたい。)

植物としてのコーヒーノキの原産地はエチオピアあたりで、文化としてコーヒーを飲み始めたのはイスラム世界が最初と考えられているんだ。
カフェインを含むコーヒーは覚醒作用がある刺激物で、アルコールが禁止されているイスラム世界ではその扱いが長らく議論されていたようなのだ。
それまでは神秘主義の中で秘薬として興奮作用をもたらすもの、といった扱いだったみたい。
15世紀になって正式にイスラム法上の扱いが確定すると、一気にイスラム世界に広がっていって、オスマン・トルコ帝国を介して欧州にももたらされたのだ。
コーヒーは欧州から植民地だった米大陸や東南アジアに広まり、現在のコーヒーベルトと呼ばれるコーヒー栽培可能地域(北回帰線と南回帰線の間)に広がっていったのだ。

この経緯からいくと、一般的な嗜好飲料としてはトルコでの飲み方が古いわけ。
トルコでは、コーヒー豆を粉砕したものと砂糖を一緒に鍋に入れて煮出すのだ。
コーヒーと砂糖は同量というから、相当甘いはず。
これはアジア地域での茶の飲み方に近いよね。
日本茶や中国茶は茶葉に湯を加えて抽出するけど、モンゴルやチベットのバター茶やインドのチャイは茶葉を乳製品と一緒に煮出すのだ。
おそらく、質のよい茶葉が得られなかったからそういう飲み方になっているんだろうけど、そういう基本の上にこういう飲み方ができているような気がするんだよね。
コーヒーの場合、ゆっくりと抽出しないとあまり抽出できないので、工夫が必要なのだ。

欧州にコーヒーが伝わると、この上澄みを飲む淹れ方から、沈殿物を濾す淹れ方に変わるんだ。
まずは布で濾過する方式がフランスで考案され、布ドリップの原型になるのだ。
布で濾すことでコーヒーがらをよけられるし、ゆっくりと淹れられるので、煮出さなくてもしっかりと抽出できるというわけ。
そこから1世紀ほど経つと、今度はサイフォンの原理を応用したサイフォン・ドリップが考案されるのだ。
ドリップ式だとお湯を注ぐ量や速さでぶれが出るけど、サイフォンだと条件さえそろえれば抽出の質が一定するのだ。
こぽこぽと見ていてもおもしろいよね。

20世紀初頭には、金属製のフィルターを使って圧力をかけて抽出するエスプレッソマシンが登場。
その後になってようやく紙で濾過するペーパードリップが確立するのだ。
絵数れっそよりはペーパードリップの方が簡単そうだけど、むしろ、濾紙を作る技術が問題だったんだろうね。
目詰まりせずちょうどよく抽出できる紙を作る技術はけっこう高度なのだ。
19世紀にフランスから入ったベトナムコーヒーなんかだとやっぱり金属製のフィルターを使うんだよね。
豆を粗めに挽いて、小さい穴からぽたぽたと5~10分かけて抽出するんだって。
高温多湿なベトナムなんかだと熱いコーヒーがマストではないから、こういう冷めてしまうようなゆったりとした淹れ方でも問題ないようなのだ。
エスプレッソは熱く淹れるために圧力をかけるけど、その必要はないんだね。

で、問題のバリのコーヒーはフィルターなど使わずかき混ぜるだけ。
物資的な問題もあったんだろうけど、原点回帰で粉をお湯に混ぜるだけなのだ(笑)
やっぱり熱いコーヒーは必ずしも必要ないから、数分置いておいて冷めてよい、ということでないとこれは広がらないよね。
ちなみに、沸騰したお湯で淹れれば、ちょうどよく冷めて飲みやすくなった頃に飲めるようになるよ。
ただし、バリコーヒーの場合は、よく抽出するために粉をものすごく細かく挽くのだ。
この技術は高いんじゃないかな?

こうして見てくると、コーヒーって本来は甘くして飲むものなんだよね。
おそらく、覚醒作用がほしいけど苦いのは・・・、ということで、飲みやすさのために甘くしたり、ミルクを入れるようになったはずなのだ。
チョコレートも同じように砂糖を入れて甘くすることで食べやすくした結果、今ではお菓子になったのだ。
ということで、ブラックはむしろ進化した姿なんだよね。

でも、南の地域では相変わらず甘いものが主流なのも事実。
紅茶なんかでも甘くして飲むよね。
米国南部のソウルドリンクであるスウィートティーなんて、限界まで溶かし込んでいるんじゃないか、と思われるほど砂糖をたくさん入れたアイスティーなのだ。
やっぱり暑いと甘いものが恋しくなるのかな?
ちなみに、日本で飲む分にはバリのコーヒーでもブラックで飲んでまったく問題ないよ(笑)

2013/07/13

命の水

関東でも梅雨が明けて夏の蒸し暑さが本格化してきた!
気温が30度を越える真夏日は当たり前で、35度を越える猛暑日なんてのも・・・。
で、テレビなどでは盛んに熱中症対策を訴えているのだ。
お年寄りや小さい子は特に危ないからね。
コンビニなんかでも、この時期には「塩○○」なんて塩分補給のためのお菓子が目立つのだ!

熱中症は、多量の発刊により体内の水分量が減りすぎたり、ナトリウムが少なくなってイオンバランスが崩れたり、水分と塩分も不足して脱水症状に陥ったりするもの。
けいれんや失神、意識障害などが出て、場合によっては死亡することも・・・。
体温のコントロールが不能になるから重度になるともうどうしようもなくて、助けてもらうしかないのだ。
なので予防が大事なわけで、日陰で休む、水分だけでなく、塩分も補給するなんてのが推奨されているんだ。

その中でも注目を受けているのが経口補水液。
大塚製薬のOS-1が有名だよね。
ボクはスポーツドリンクのポカリスエットとたいして変わらないものだろう、と勝手に思っていたんだけど、実はけっこう違うのだ。
ずばり、ポカリスエットでは脱水症状を起こしている状態では「薄すぎる」のだ。
ナトリウムが足りないんだって。
飲まないよりはいいような気もするけど、低ナトリウム血症になって水中毒になるおそれもあるので(特に乳幼児)、気をつけないといけないよ。
どうしてもスポーツドリンクしかないときは、さらにひとつかみ塩を加える必要があるのだ!

経口補水液の主要成分は、水とブドウ糖と塩化ナトリウム(食塩)。
発展途上国なんかだと、コレラなどの感染症による下痢や嘔吐による脱水症状に対して、沸騰させた水にひとつかみの塩と砂糖を入れたもので対応することもあるのだ。
水1Lに食塩小さじ1/2、砂糖大さじ4と1/2を加えると簡便に作れるそうな。
売られているものにはさらに塩化カリウムや(低カリウム血症もこわいので)、硫酸マグネシウム。
重炭酸イオンがあると水の吸収率がさらに高まるそうで、その前駆体になるクエン酸なんかが入っていることも。
OS-1の場合は乳酸が入っているね。

実は、これって日本の伝統の病食である重湯に近いものがあるのだ。
重湯はおかゆをかなり柔らかく炊いて上澄みをとったものだけど、ブドウ糖が重合したデンプンがのり状になっているのだ。
これに塩を加えて味を調えてやると、あら不思議、経口補水液と同じような成分に!
しかも、これにむかしながらの塩辛い梅干しを加えてやると、塩分が追加されるだけでなく、クエン酸も入ってくるのだ。
今でも術後の最初の流動食で重湯が使われたりするけど、優れものだったというわけだね。

人間は大腸で最後のの水分を吸収し、硬い便を作っているのだけど、大腸での水分吸収がうまくいかなくなると下痢になるのだ(>o<)
これは主に感染症による症状だったりするわけだけど、すでに脱水症状を起こしていても、大腸での水分吸収はうまくできなくなってしまうんだって。
そこで注目されたのが、小腸での吸収。
小腸は水分を吸収する役割を持つ器官ではないけど、ブドウ糖やナトリウムなどの塩を吸収する際に水分を一緒に吸収することが知られているのだ。
これは共輸送系と呼ばれるもので、浸透圧の関係で糖やイオンが移動すると水分子もついてくるということなのだ。
で、これをうまく使ってやろうというのが経口補水液で、水にブドウ糖と塩分を加えることで、象徴から水分をすばやく吸収させよう、という発想なわけ。
あまりにもひどい熱中症の時は欠陥に輸液を入れて無理矢理水分を補給するわけだけど、そこまで行かないような脱水症状に使える便利な方法なのだ!

けっこう甘く見ていたんだけど、経口補水液っていうのはよくできているんだねぇ。
これだけ暑いと過信は禁物だから、予防に努めるとともに、こういう知識を身につけておくとよいのだ。
その場に経口補水江木がなくても、砂糖と塩くらいならある場合があるからね。
お世話にならないに越したことはないけど(笑)

2013/07/06

海藻ペーパー

暑い季節になってきた!
こんなときにはさっぱりしたものが食べたいもの。
で、コンブですよ(笑)
おでんとか昆布巻きじゃなくて、とろろ昆布。
醤油と鰹節を加えてお湯を注げば簡単にお吸い物になるので便利に使っているんだけど、冷たいそばやうどん、そうめんの具としてもさっぱりおいしいよね♪

とろろ昆布に似たものにおぼろ昆布というのがあるけど、この2つの違いは削り方なのだ。
どちらもコンブを酢漬けにして柔らかくした後に削るんだけど、とろろ昆布はコンブを重ねてプレスしてから、側面から糸状に削っていくのだ。
なので、できあがりは細い繊維がからまったようになるわけ。
一方、おぼろ昆布は一本のコンブを延ばし、特殊な包丁を使って表面を面的に削っていくのだ。
刃を当ててすっと引くと鉋のように薄いシート状のおぼろ昆布ができあがるのだ。
こちらは削るのに手間がかかるので、とろろ昆布より高級品なんだって!

関東だとあまり見かけないけど、関西だと海苔の代わりにおにぎりに巻いたり、うどんの具になったりする結構メジャーなものなのだ。
起源はあまり定かでないものの、鍛冶職人が多く、刃物の街でもあった大坂・堺で生まれたと言われているよ。
もともとコンブには少し渋みがあるので、湿気のあるところで貯蔵することで甘みを出していたんだって。
大阪(当時は大坂)はそれに適していたので、大坂にはたくさんのコンブがあったのだ。
ところが、保存状態が必ずしもよくなく、表面がかびてしまうことも・・・。
そこで、酢に漬けて柔らかくしてから表面を削る、なんてことを考え出したみたい。
この手法は北陸地方に伝わり、北陸では郷土料理にも取り入れられるほどコンブの加工が盛んになったんだそうだよ。

酢に漬けると肉でもなんでも柔らかくなるけど、一般的には、酢で漬けると液性が酸性になるので、もともと持っている酵素による加水分解が進むから、と考えられているのだ。
肉なんかは放っておけば徐々にタンパク質の加水分解が進んで柔らかく、というか、どろどろになっていくんだけど、腐敗させずにタンパク質の加水分解を加速しようというのだ=3
これは柑橘系の果物の果汁やヨーグルトで肉を軟らかくするのと同じ。
(パイナップルやパパイヤの場合は、果物側に含まれるタンパク質分解酵素を利用しているので別だよ。)
牛肉なんかは熟成させるといって吊しておくけど、これもゆっくりと自分の酵素でタンパク質の加水分解をさせ、うまみ成分であるアミノ酸を作らせているのだ。

ちなみに、サバやコハダを酢締めにするのは肉質を柔らかくする、というよりは腐敗防止。
酢に含まれる酢酸にはけっこう強力な殺菌作用があるので、塩をして余計な水分を抜いた後に酢に漬けるんだよ。
すると、身の表面は酢のタンパク質凝固作用で少しかたくなり(同時にちょっと白くなるよ)、身の中には酢が染み通って抗菌仕様になるのだ。
青みの魚なんかは足が速くてすぐに腐敗するから、酢で肉質を柔らかく、というより、殺菌作用で保存できるようにする方が重要なんだよね。
なので、しめ鯖なんかは刺身に比べるとむしろ肉質が少しかたくなるというわけ。

肝心のコンブはどうかというと、よくわからないんだけど、おそらく細胞同士を接着しているようなタンパク質が変成て柔らかくなるんじゃないかなぁ?
一度乾燥させているので内在性の酵素が働くとも思えないから、酢のタンパク質凝固作用によってタンパク質の高次構造が失われて、結果として構造が柔らかくなるんじゃないかと思うのだ。
コンブはそのまま煮ても実はなかなか柔らかくならず、弱火でじっくりと長時間煮るか、圧力鍋で煮ないとダメなんだよね。
ところが、酢と一緒にすると一気に柔らかくなるのだ。
食物繊維の本体であるセルロースは酢や熱でそうそう分解しないから、やっぱり間をつないでいるようなタンパク質が関係しているんだろね。
熱分解するのは大変だけど(これは肉を軟らかく煮るのと同じ)、酢の化学作用を使うと早いというわけ。

で、おぼろ昆布に話をもどすと、柔らかくなったコンブを削っていくんだけど、この課程で3種類の加工品ができあがるのだ。
まずは、削りはじめのコンブ表面が薄くなったもの。
色が黒いので黒おぼろと呼ばれるんだけど、ここは酢がよく浸透しているので酸味が強いのだ。
さらに削っていくと白い部分が現れるんだよね。
あんまり酢が染み込んでいないので、酸味はあまりなく、むしろコンブ独特の甘みが強いのだ。
ここが太白おぼろや白おぼろと呼ばれる部分。
高級品だよ。
で、削れないところとして残る芯のの部分が白板昆布。
バッテラなんかに載っているやつだよ。
で、副産品としてコンブの両端(削るときに固定する部分)が残るのだ。
ここは爪昆布と呼ばれ、お菓子として食べられたり、煮込むと出てくる粘り(はやりの「フコイダイン」)であく取りに使われたりするそうだよ。
さすがにむかしの日本人だけあって無駄がない!

というわけで、コンブは出汁をとるだけじゃなく、佃煮にするだけじゃなく、酢コンブとしてしゃぶるだけのものでもないのだ(笑)
とろろ昆布はちょっと酸っぱいにおいがするので苦手な人もいるのかもしれないけど、汁ものの具にするのもよし、削り節のように使うもよしで意外といろん
な料理に使えるのだ。
コンブを愛し、食してきた日本人が生み出した伝統の技術の成果をしっかり味わおう!

2013/06/29

氷をかじって病を防ごう

いよいよ6月も終わり。
これで半年が過ぎ去ったのだ。
で、この時期神社に行くと、大きな茅の輪があったりするんだよね。
これは「夏越しの祓え」と呼ばれる行事で、この茅の輪を「水無月の夏越しの祓えする人は千歳の命延ぶと言ふなり」と言いながら8の字に回ると無病息災が約束される、というものなのだ。

もともとは宮中行事にも取り入れられていた「大祓」のひとつで、正月から半年が過ぎる水無月の末(夏越しの祓え)と年末である師走の末(年越しの祓え)にそれまでの半年間の「ケガレ」を祓う行事なんだ。
古代日本では、「ケガレ」によって病気になったり、不幸が起きたりと考えていたので、これをなんとか身から落とすことが必要だったのだ。
その方法のひとつが茅の輪くぐりであり、紙で作った人型の依り代に名前や年齢を書いて川に流すようなこともしたんだ。
それが現代の夏越しの祓えにも続いているというわけ。
(旧暦の行事のはずだけど、お盆と一緒で新暦で行われるようになってしまっているけど。)

なぜ茅の輪が病除けにつながるかというと、それは「蘇民将来」の神話に由来していると言われているよ。
鎌倉時代の「釈日本紀」に引用されている「備後国風土記」の逸文によると、旅の途中で乞食のような人が一晩の宿を乞うたとき、裕福な弟の巨旦(こたん)将来は断ったが、貧しい兄の蘇民将来は快く受け入れ、もてなしたのだ。
この乞食のような人が実は神様である武塔神(むとうのかみ)で、巨旦の妻になっていた蘇民の娘に茅の輪の目印をつけさせ、それをつけていない巨旦の一族を滅ぼしたというのだ。
以来、茅の輪を目印にし、「蘇民将来之子孫也」の護符を門口に掲げておくと疫病による難を免れる、と言われるようになったんだ。
おそらく、先に茅の輪を作る風習があって、そこからこの話ができたような気もするけど、茅の輪は災厄を祓うイコンとなっているのは確実なんだよね。
(注連縄と同じように、神として崇拝される蛇を表しているとかなんとかあるのかもだけど。)

この神話に出てくる武塔神の正体は実は素戔嗚尊で、素戔嗚尊は牛頭(ごず)天王と同一視されているから、全国の天王社、須賀神社等々で護符や茅の輪守りが配られているよ。
中でも大きいのは祇園様こと京都の八坂神社。
祇園祭ももともとは疫病除けを祈願するお祭りで、やっぱり夏のお祭りなのだ。
どうも日本では夏に疫病除けを祈願する風習があるんだよね。
で、調べてみると、赤痢は夏の季語なのだ!
夏に流行することが多かったのかな?
また、衛生状況が悪かったので、梅雨明けでじめじめと暑くなる旧暦の水無月から長月にかけては食中毒も相当多かったんじゃないかと思うんだよね。
なので、疫病対策が重要な課題だったと考えられるのだ。

実は、年越しの祓えと同じように年末の宮中行事だった追儺(節分の原型と言われるけど、年末の行事なのだ!)は、疱瘡の疫鬼を石を投げて追い払うものなんだよね。
疱瘡は今で言う天然痘。
感染力の強い天然痘は基本的には時期を問わずに流行するから、疱瘡は季語にはなっていないみたい。
だからこそ年末にまとめて追い出したのかもしれないけど、むしろ、こういう時期を選ばないものは「祟り」や「怨霊」のなせる技と考えられるので、「御霊信仰」や「御霊会」によって鎮められるべきものになっていったんじゃないかな?
また、正月の七草がゆを作るときの囃し歌では「唐土の鳥が渡らぬうちに♪」と歌うけど、これは冬に感染症が流行することを想定していると考えられるんだよね。
乾燥した冬の時期だとやっぱりメインはそっちになるのだ。

で、夏越しの祓えの時期に京都で食べられる和菓子と言えば「水無月」。
そのままの名前だけど、白いういろうに粒あんがのっているお菓子だよ。
これがなかなかおいしいのだ。
冷ややかな見た目とさっぱりした甘さ。
これを夏越しの祓えに食べると無病息災がにつながると言われるのだ。

このういろう部分は氷を表しているようで、もともと旧暦の水無月の朔日に氷室から氷を出してそのとけ具合からその年の豊作・凶作を占うという行事があったようなのだ(氷の朔日の節句)。
春がどれだけあたたかかったのかを示すことになるから、けっこう科学的かも(笑)
で、このとき出してきた氷のかけらを食べると病気にならない、と言われていたんだって。
それが時期の近い疫病除けの夏越しの祓えと習合し、氷をかたどったお菓子を食べるようになったわけ。

粒あんの部分は氷室から出してきた氷についている砂や土という考え方もあるようだけど、より一般的には、小豆の魔除けの効果を狙ったものと考えられているよ。
日本ではむかしから赤や朱という色が悪いものを防ぐと考えていて、鳥居を赤く塗るのもそのため。
ついなの儀式では疫鬼を避けるのに赤いものを身につけていたらしいよ。
で、小豆もその色から魔除けの食材として重要だったのだ。
氷室の氷と魔除けの小豆で疫病除けの効果もパワーアップということだね!

2013/06/22

トロー・ミー

ときどきネットですごいものを目にするのだ。
それは「メシマズ」。
料理が上手でない、という以上に、食べるのが危険なものを作る人たちみたい・・・。
で、その中には、友人や家族の指導でなんとか上達していった、というものがあるんだけど、そういうものは、たいていの原因が、「味見をしない」というのと「レシピどおりに作らず勝手にアレンジする」というものみたい。
もともと味覚音痴の人もいるので、その場合はもう無理なんだけどorz

「レシピどおりに作る」っていうのは意外にできていないもので、あんまり人のことを言えない部分もあるのだ。
よくあるのは、カレーやシチューのルーのレシピで、「ルーはいったん火を止めてから割り入れる」とあるんだけど、たいていの人は弱火のまま入れて溶かしているんじゃないかな?
まさにボクもそうだったんだけど、実は、ここはけっこう重要なポイントのようなのだ!
火を止めてから入れ、十分溶かしてから再加熱する。
これだけでとろみがまろやかになり、ダマにもなりにくいんだって。

カレーなどのとろみはデンプンの糊化によるもの。
吸水したデンプンは加熱すると結晶構造がゆるみ、そこに水分子が入り込むことでゲル状になるのだ。
あんまり加熱しすぎると結晶構造が完全に崩壊してかえって粘度は低下するんだよね。
八宝菜とか麻婆豆腐とかのとろみのある料理を電子レンジで温めすぎるとさらっとなってとろみが消えてしまうのはこのためなのだ。
とろみは二度と復活しないので、もう一度水溶き片栗粉でとろみをつけるほかないよ(>o<)
鍋で温める場合はそこまで急激に加熱しないのでとろみは残るんだけどね。

カレーのルーのとろみの主成分は小麦粉。
ルーが溶けた状態で加熱されると、小麦粉の中のデンプンが糊化してとろみになるのだ。
このとき、火を止めずにルーを入れてしまうと、ルーが溶けきれないままルーの表面の小麦粉デンプンが糊化していてしまうんだ。
すると、ルーはさらに溶けにくくなって、ルーのダマができてしまうのだ(ToT)
これが火を止めてから入れるようにレシピに書いてある理由だよ。
まずは火を止めて加熱をやめ、余熱でルーを完全に分散させることが大事で、その後加熱してあげれば均一に小麦粉デンプンが糊化してなめらかなとろみになるのだ♪
給食のカレーでも、肉かと思ったらルーの溶け残りかよ!、ということがあるけど、きちんとレシピどおりにやればそういう不幸な事故は避けられるのだ。

水溶き片栗粉の場合も、失敗を少なくするためにはいったん火を止めてから加え、よくかき回してから加熱する、というレシピがあるよ。
プロは煮立った中にさっと「の」の字を書くように入れ、さっくり混ぜて作ってしまうんだけど、これはかき回す速度が重要で、もたもたしていると水溶き片栗粉は入ったそばから糊化していくので、ダマになっていくのだ・・・。
あらかじめ水と片栗粉を混ぜて十分に膨潤させておいて、入れる直前によくかき混ぜ、全体に広がるようにさっと入れてそのまますぐかき混ぜる、という手際の良さがあってこその技、ということだよ。
上っ面だけまねしてもなかなかうまくいかないのだ。
実は加熱時間も重要で、とろみが出てきたなぁ、と思ってからさらにしばらく加熱しないとまだデンプンの粒子が残っているので、口当たりがあまりよくない状態なんだって。
そこから完全にデンプン粒子が崩れるまでにはタイムラグがあるので、しっかり熱を入れて方がよいそうだよ(カレーなどの煮込みだとあまり問題にならない部分だけど。)。

ちなみに、とろみをつけることのメリットとしては、炒め物なんかだと表面につやが出て美しいというのがあるよね。
これは日本料理のくず寄せなんかでも同じ。
また、薄味でもしっかり味わえる、とか、冷めにくい、なんてのもあるのだ。
これはとろみの物理的性質によるもので、粘度があるので口の中での移動速度が遅くなるのだ。
すると、とろみがないさらっとしたものと比較してより長い間口の中にあるわけ。
舌の上で味を感じる味蕾にも長い間接するので、味を強く感じるのだ。
熱についても同様で、「のど元過ぎれば・・・」だけど、なかなかのど元を過ぎないのでより熱を感じているというわけ。
冷めるのが遅くなるわけじゃないので注意だよ。
ちなみに、冷めると塩分はより強く感じるので、冷めてしまったとろみがついた料理は塩辛く感じることが多いのだ。

というわけで、ちょっとした料理のこつというのは経験の中から出てきたものだけど、科学的にも妥当なものなんだよね。
レシピの中の工程や材料にはアレンジがきくところもあるけど、逆に絶対に外せない部分もあるので、そこの見極めがポイントってこと!
ここでセンスのあるなしが出てくるわけ(笑)
センスがよろしくないと、果敢な「アレンジャー」としてメシマズ路線に陥ってしまうのだ。
原理的なところまで勉強する必要はないけど、まずはレシピどおりちゃんとい作ってみる、その後ちょっとずつアレンジを加えてみて、失敗したらそれは二度とやらない、ということでしか上達はしないのだ。
メシウマの道は一日にしてならず。

2013/06/15

東アジアの新機軸通貨?

7月になると日韓通貨スワップ協定の30億ドル分が期限切れになるのだ。
まだ韓国から正式に延長要請はないらしいけど、東アジア経済の最大の関心事だよね。
アベノミクスで日本経済がけっこう盛り返してくる中、急成長を遂げている中国経済にも陰が見え始め、韓国経済も停滞気味だから・・・。
でも、それ以上にボクが気になる東アジアの経済問題は「チョコパイ本位制」なのだ!

もともとは韓国と北朝鮮の合同事業である開城(けそん)工業団地が震源地(?)なんだよね。
北朝鮮内の安価な労働力を活用しようと、韓国が資本を提供して工業団地を運営していたのだ。
今は両国の緊張関係で操業が止まっているけど、北朝鮮にとっては貴重な外貨獲得のドル箱だったみたい。
正規ルートで外貨が入ってくるわけだし、自国内の工業化も進むし、メリットが大きかったのだ。
でも、この団地で働く人口の95%以上を占める北朝鮮の人には、韓国側から給与が直接支払われることなくって、北朝鮮当局が一括して受け取っているんだって。
ということは、労働者にはきちんと給料がわたっていない可能性も・・・。

そんな労働環境の中、開城工業団地に工場を持っている韓国のアパレル企業が、労働者へのおやつとして「チョコパイ」を配りだしたんだよね。
そうしたら、これが大人気で、チョコパイの配給量が少ないと労働生産力が落ちるまでの事態に!
そこで急遽チョコパイ配給にかかるガイドラインまで作成されるに至ったのだ。
北朝鮮国内の状況は推測するしかないけど、おそらく食料は不足気味で、しかも、甘いものなんて貴重品だし、ましてやチョコレートなんてなかなか庶民が口にできるようなものではないだろうから、人気が加速したと思われるのだ。
戦後日本の「ぎぶみー・ちょこれーと」にちょっと通じるものがあるのかも。

で、工場内の労働者間で争奪戦が繰り広げられるだけでなく、いったん持ち帰られて取引されるようになってきているらしいのだ。
一説にはお米1kgと交換されるとも・・・。
北朝鮮ではすでに、チョコパイは単なるおやつではなく、裏経済の中で取引される重要な物品ともなっていたのだ。
慢性的な品不足お金があっても自由にものが買えないことがあるお国柄というのもあって、北朝鮮ウォンよりもチョコパイの方が購買力が強いなんてことも。
これをネットで揶揄して、「チョコパイ本位制」なんて呼ばれ始めたんだよね。
開城工業団地が操業停止になったときには、労働者がチョコパイを求めて暴動が起きるかも、なんて思っていたけど、今のところはそういう報道はないね。
せいぜい相場が高騰しているというものくらい。
あとは虚構新聞の記事かな(笑)

このチョコパイ、日本ではロッテが販売しているのだ。
ソフトケーキの間のバニラクリームをはさみ、チョコレートコーティングしたもの。
もともとは1917年にテネシー州の炭鉱で労働者向けに売られたムーンパイというお菓子が元祖なんだって。
このムーンパイはグラハム・クラッカーにマシュマロを挟んだもので、米国南部では労働者向けの定番のお菓子になっていったみたい。
日本にもこれが伝わり、戦後の1958年に森永製菓がエンゼルパイを発売するのだ。
エンゼルパイは本場のムーンパイと同様にマシュマロを挟んでいるんだけど、かたいビスケットではなく、ふっくらしたソフトケーキで挟み、さらにチョコレートでコーティングしたものだったのだ。
これが現在まで続いているエンゼルパイで、今ではミニサイズのものもあるよ。

バブル経済が始まる前の1983年には、ロッテからチョコパイが発売されるのだ。
エンゼルパイと違って、ソフトケーキに挟むのはマシュマロではなくバニラクリーム。
これでお菓子というよりケーキ的な感じになったのだ。
エンゼルパイ側でも翌1984年にソフト・エンゼルパイとしてマシュマロの代わりにクリームを挟んだものを発売するんだけど、いつの間にかなくなっているから、むしろ差別化した方が売れる、ということなんだろうね。
今では100円ショップなんかでも見かけるけど、その廉価版は韓国やベトナム、中国でライセンス生産しているものみたい。
確かにロッテのものの方がおいしいような気が・・・。

北朝鮮で大人気のチョコパイは韓国のものだけど、韓国ではオリオン(日本の駄菓子メーカーのオリオンとは別で、コンビニなどで売っているマーケット・オーのリアルブラウニーを作っている会社)が1974年に売り出したらしいのだ。
こちらもエンゼルパイ同様に中に挟んでいるのはマシュマロ。
また、そのマシュマロを挟んでいるのも、日本のようなソフトケーキでなく、米国のものに近いやわらかめのビスケットみたい。
このお菓子は韓国でも爆発的なヒット商品らしく、メジャーな存在なんだって。
韓国映画「JSA」では、韓国軍が北朝鮮兵士に「脱北したらチョコパイが腹一杯食べられる」と脱北を促すシーンがあるんだそうけど、そこで出てくるのもこのチョコパイなんだって。

一方、韓国内でもロッテはチョコパイを販売していて、それは日本のものと同様にクリームを挟んだやわらかいもの。
でも、やっぱり韓国でチョコパイというとマシュマロを挟んだかたいもののようなのだ。
ということで、おそらく北朝鮮でもてはやされているのはマシュマロを挟んだもの。
ここに日本のエンゼルパイやチョコパイを持って行ったらどうなるんだろう?
至高のお菓子になるのか、或いは、やっぱり韓国のものでないと、となるのか。
ちょっと興味があるよね。
ボクは日本の柔らかいものの方がおいしいような気はするけど、流通にはむしろかたい方が適しているのかも。
やわらかいと「通貨の代わり」にはしづらいよね(笑)

2013/06/08

わらびもくずもかたくりも使ってない!

初夏に突入して暑い季節がやってきた!
こうなると、冷たい和菓子がおいしい季節だよねぇ♪
水ようかんやあんみつもよいけど、個人的にはわらび餅がけっこう好きなんだよね。
涼しげな見た目と、さっぱりな味がよいのだ。

このわらびもち、もともとは山菜のわらびの根からとったわらび粉で練って作ったものだったんだけど、今ではわらび粉は使っていないのだ。
というのも、わらび粉っていうのは数kgのわらびの根から数十gしかとれないという貴重なもので、今では高価な食材なんだよ・・・。
実際に見てみるとわかるけど、わらびって細く長い根が地中に張っていて、そもそも掘り出すのが大変。
で、この細い根からデンプンを抽出したのがわらび粉なのだ。
本物のわらび粉でわらび餅を作ると、少し赤茶けた灰色になるんだけど、和菓子屋さんで見かける多くのものは透明だよね。
これはわらび粉の代わりにサツマイモ由来のデンプンを使っているんだとか。

同じようなことは他でもあって、例えば、同じ和菓子のくず餅もくず粉が使われていない例が多いのだ。
関東のくず餅はもともと小麦粉デンプンを乳酸発酵させて作る別物だけど、関西のくず餅はくず粉から作るものだったんだよね。
でも、このくずも貴重なもので、やっぱり別のもので代用されているのだ。
本当にくずを使っている場合は、「本くず使用」なんてわざわざ書いてあるしね(笑)
奈良の吉野くずなんかが有名。
そして、日本の台所ではおなじみの片栗粉。
かつてはかたくりの根から作ったからそういう名前がついているんだけど、今ではジャガイモデンプンなのだ。

原料は違えどデンプンの抽出方法は基本的には同じで、細かく破砕して水にさらした後、濾過したものを整地しておくのだ。
すると、水に溶けないデンプンが沈んでくるので、上澄みを捨て、また水で懸濁して沈殿させ、と精製していくのだ。
わらび粉もわらびの根を細かく砕いてデンプンを抽出していくんだけど、そもそもの量が少ないし、精製が大変なんだって。
特に、デンプンの粒子が小さめなので、沈殿に時間がかかるのだ。
ジャガイモなんかはデンプンの粒子が大きめなので、短時間で精製できるんだけど。

植物由来のデンプンは、原料によってけっこう性質が違うのだ。
これはデンプンの粒子の大きさが違うだけでなく、デンプンの質自体がことなるため。
デンプンはブドウ糖が重合したものなんだけど、一本の鎖状に重合したアミロースと、枝分かれが多くて房状に重合したアミロペクチンの2つの高分子が混ざっているものなのだ。
懸濁液中にデンプンが分散しているときは、アミロペクチンでできたかごの中にアミロースが詰まっている「ミセル」の状態になっていて、これが顕微鏡で見えるデンプンの粒子なのだ。
アミロースやアミロペクチンの重合度(=長さ)とその比率でいろんな大きさ、形になるんだ。

デンプンの粒子が水中で加熱されると、アミロペクチンのかごが緩んできて、中に水分子が入り込んでくるようになるのだ。
これは、アミロペクチンの房状の構造の変化で、低温状態では折りたたまれているけど、高温では開いてくるから。
すると、中に入っているアミロースと水分子が水和していって粘りが出てくるよ。
これはゲル化した状態で、糊化と呼ばれる現象なのだ。
一般にアミロペクチンが多いと低温で糊化しやすく、粘度も高くなるのだ。
アミロースが多いと高温じゃないと糊化せず、さらっとしているよ。
これがそれぞれのデンプンの性質に大きく関わってくるわけ。

日本では、デンプンが糊化してねばりが出たた状態を「αデンプン」と呼んでいて、糊化する前の結晶状態のデンプンをβデンプンと呼ぶのだ。
一度α化したデンプンも冷えていくとしだいに再結晶かが進んで堅くなるけど、これを「老化」と呼んでいるよ。
芋の煮物はあたたかいうちはねっとりだったり、ほくほくしているけど、冷めるとかたくなるよね。
たきたての御飯がふっくらもちもちなのに、冷や飯がかたいのも、一度α化したデンプンが老化するから。
老化の場合はもとの結晶状態にもどるわけでもないので、加熱前の状態ともまた違うんだ。
再び加熱するとα化されるけど、これにも差があって、お米なんかは温めるとわりとたきたてに近い状態に戻せるけど、ジャガイモなんかはよほど高温でしっかり温めないとかたいままなのだ(>o<)

話はわらび餅にもどるんだけど、わらび餅の場合は、デンプンに水を加えて加熱しながら練って糊化させ、冷やしたものなのだ。
ということは、糊化したデンプンが老化してかたくなったらまずいわけ。
実際に本物のわらび粉で作ったわらび餅は井戸水なんかで冷やすのは大丈夫だけど、冷蔵庫に入れると白くかたくなるんだって。
まさに老化してしまうのだ・・・。
で、今店頭に並んでいるわらび餅なんかは、冷蔵庫に入れても老化しにくいサツマイモ由来のデンプンやタピオカ由来のデンプンを使っているようなのだ。
たしかに、ふかしたサツマイモって冷めてもそんなにかたくならないし(これはジャガイモに比べて、だけど。)、タピオカも冷たい飲み物に入っているくらいだから、老化しにくいんだろうね。
こういうところにも科学が生きているんだなぁ。

2013/06/01

これでカンダタも安心?

山形のベンチャー企業が人工クモ糸の量産化に成功したらしいのだ。
もともとは慶應義塾大学で研究されていたもので、その成果をもとに山形県鶴岡市で起業したんだって。
ここにインタビュー記事もあるのだ。
六本木ヒルズに人工クモ糸で織ったドレスも展示されていたらしいよ。
2015年からは実際に人工クモ糸製品が市場に出るみたい。
なんかクモ糸って言われると女性からは避けられそうだけど・・・。

虫の出す糸と言えば、カイコの作る絹はメジャーだよね。
古代から人類とともに生きているよね。
日本では天皇家も養蚕をするくらい、文化に密着した存在だし。
木綿、麻と並ぶ天然繊維としては極めて重要だったんだよね。

クモではなくてカイコの糸を使ってきた理由は、飼育・生産が可能だから。
えさは桑の葉なのでこちらも栽培可能だし、繭という形で大量に糸を吐き出してくれるので、量的な確保もできるのだ。
一方で、クモの場合はそもそも肉食なのでえさを確保するのは大変。
クモの巣から糸を絡め取るにしても、たいして量がないんだよね・・・。
なので、クモの糸自体が優れた繊維であることは知られていたんだけど(鋼鉄より堅く、ナイロンより伸縮性があって、引っ張り強度でもとにかく丈夫なのだ。)、使われることはなかったのだ。
逆に言うと、何らかの手段で量産化できれば、実用化できるはず、ということで研究を始めたのが今回の成果のきっかけだよ。

クモの糸もカイコの糸も、その主成分となっているのはフィブロインというタンパク質。
特徴的な構造をもっているタンパク質で、グリシンとアラニンという小さいアミノ酸の含有量が高いことで知られているのだ。
グリシンは約1/3に当たる35%、アラニンは約1/4に当たる27%で、この2つのアミノ酸で全体の6割以上を占めているのだ!
次いで多いのはセリンとチロシンで、4つ合わせると9割を超えるようだよ。
シルクの場合、この偏った種類のアミノ酸が3000~4000個つながった鎖状のタンパク質が、分子量が35万~37万くらいになるまでくっついたものがフィブロインの分子になっているんだって。

このフィブロインの分子も特徴的な形をしていて、緻密に規則正しく分子が並んでリジッドに構造が保存されている結晶性の部分と、分子の並びが不規則で緩くなっている非結晶性の部分があって、それが交互に並んでいるんだって。
結晶性の部分が全体の4~5割程度で、この結晶性の部分には側鎖の小さいグリシン、アラニン、セリンが非常に多く含まれているみたい。
逆に緩いところにはチロシンなどの側鎖の大きいアミノ酸がいるんだって。
イメージで言うと、結晶性の部分はでこぼこの少ない鎖が密にからみあっていて、緩い部分はときどき大きな出っ張りがあるのでそこまで鎖がからみあっていない、というところかな?

この結晶性と非結晶性の2つの部分からなる構造がフィブロインの繊維としての特徴を生み出していると考えられていて、独特の引っ張りや伸び、吸水性、染色性に関係していると言われているのだ。
例えば、結晶性の部分はがっちり結合しているけど、その間に比較的ゆるい非結晶性の部分がからみあっているので、この部分が伸縮するときの「伸び」のもとになるのだ。
また、フィブロインは多孔質になっているんだけど(非結晶性の部分が穴になるのだ。)、分子量が小さい水や水蒸気は通すものの、大きな水滴は通さないので、通気性はあって蒸れないけど防水性もある、という便利な特性につながるのだ。
また、多孔質であることによって表面で光を乱反射し、光沢を持つことにもつながっているんだ。
これで着心地と肌触りがよい上に見た目もきれい、という絹の特性が出るのだ。
クモ糸の場合はもっと丈夫になるみたい。

フィブロインは液体の状態で体内にためられているんだけど、外にはき出されるときに繊維化するのだ。
これは不可逆な反応なので、一度繊維になったものをもう一度液体状にはもどせないみたい。
つまり、やり直しがきかない、ということ。
これが人工クモ糸の繊維化に当たっても技術がいるところみたいだよ。
タンパク質自体は、遺伝子を解析してアミノ酸配列を決定すれば、多少改変をした上で大量生産ベースに載せることは可能なのだ。
問題は、できたタンパク質をどうやって繊維の形にするかなんだよね。
繊維の三次元構造で引っ張り強度や伸び、通気性、吸水性などの特徴が変わってくるので、ここにこそ技術が必要になるんだよ!
実際に紡糸技術が一番難しかったみたいで、なかなか天然クモ糸ほどの伸縮性が出なかったりと技術的課題が多かったようなのだ。

今回の成果では、タンパク質の大量生産技術と、強くて丈夫な糸にする紡糸技術の2つが結実したことで量産化ができるようになったというわけ。
他にも、染色技術もいるし、まだまだ必要な技術はあるんだけど。
さらに、このベンチャー企業では、糸にするだけでなく、フィルムやナノファイバーなどの様々な形に加工することで、軽くて丈夫な材料への展開を目指しているみたい。
すごいことになってきたねぇ。
もともと地獄から罪人を引き上げるくらい強い材料だしね(笑)

というわけで、この人工クモ糸は夢の材料として注目を集めているのだ。
最近は「ほこ×たて」で日本の中小企業が持つすごい技術が再び着目されているけど、こういう技術開発ベンチャーもがんばっているんだねぇ。
うれしい限りだよ♪
日本はやっぱり技術立国の国なので、これからもばんばんこういう事例が出てほしいものなのだ。

2013/05/25

そのままの色で

最近は自然派志向が増えてきて、天然色素使用とか、草木染めとか、合成染料を使わないものをよく見かけるようになったのだ。
で、これは色のついたものだけでなく、「白」でもそうなんだよね。
漂白して不自然に白くすることなく、もとの素材の白さを活かすのだ。
木綿だと、オーガニックコットンをよく見かけるようになったよ。
栽培するときに有機肥料しか使わず、加工するときにも人工の漂白剤なんかを使わず、ちょっと黄色みがかった色をしているのだ。
これを「生成(きなり)」と言うんだよね。

現在の真っ白な木綿は、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で脱脂しつつ、次亜塩素酸ナトリウム(さらし粉)で漂白をしているのだ。
これで吸水性がよく、真っ白な繊維ができるわけ。
でも、これは明治期以降に導入された西洋式のやり方で、江戸時代までの日本では別のやり方をしていたのだ。
それが「和晒し」と呼ばれるもの。

日本では、麻や木綿、繊維をほぐし、糸によってから布にした後、灰汁で煮て、水にさらしてから天日にさらしたのだ。
灰汁は木灰や藁灰を水に浸したものの上澄み液で、炭酸カリウムを主成分とするアルカリ性の溶液。
これで煮ることで繊維についている油脂が鹸化されて水に溶けるようになるし、油脂が鹸化されると石けん(界面活性剤)ができることになるので洗浄効果もあるのだ!
これをよく水にさらしてから天日干しにするんだ。

天日干しにする理由は、可視光や紫外線によって繊維の中にある色素を分解するため。
植物性の繊維の場合、含まれている色素はポリフェノール系なので、紫外線を当ててやると酸化分解され、低分子になって水に溶けるようになるのだ。
カレーによる黄色いシミはターメリックに含まれるクルクミンという黄色い色素だけど、これもポリフェノールの一種なので、紫外線で分解されるのだ。
なので、カレーのシミは染み抜きをしなくても、選択してなんどか天日干しをして上げるといつの間にか白くなっているんだよ。
木材が白茶けたり、天然色素が退色するのはたいていポリフェノール系の色素が分解されてしまうからなのだ・・・。
太陽の力ってすごい!
(なので、よい染めの着物なんかは直射日光に当てずに陰干しにするんだよ。)

というわけで、むかしながらのやり方だと、川の近くなどに作業場があって、長い木綿の布が川の水にさらされ、その後陸上で干されたのだ。
調布の布多天神には万葉集の歌碑があるけど、「たまがわに さらすてづくり さらさらに なんぞこのこの ここだかなしき」という東歌はまさに多摩川で「晒し」が行われている様子を詠んでいるのだ。
もう奈良時代には天日による漂白をしていたっていうことだよね。
ただ、この方法じゃ大量生産ができないので、西洋式のさらし粉を使って化学的に漂白される方法が主流になってしまうのだ(>o<)
「生成」の場合は漂白前の状態なので、もう少し黄褐色なんだけどね。

「生成」はエクリュを訳するときに作られた言葉だけど、そのまま導入された言葉もあるのだ。
それはベージュ。
もともとは羊毛の漂白前の色を差すんだって。
こちらもやっぱり茶色がかった淡い灰色。
刈りたての羊の毛は土で汚れているからもっと茶色いけどね(笑)

羊毛の場合は、ゴミなどを取り除いた後、石けんと水酸化ナトリウムでよく洗うのだ。
羊毛の根元にはウールグリースとかウールワックスと呼ばれる脂(グリセリンに脂肪酸がついている脂肪ではなく、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルなので、むしろ「蝋」なんだけど、柔らかいのでグリースと呼ばれているのだ。)がついていて、そのままでは水をはじいてしまって染色もしづらいし、来ても蒸れてしまうのだ(>o<)
そこで、その脂をある程度取り除いてあげるわけ。
羊毛を洗った廃液を遠心分離すると、いわゆる「石けんかす」が下に沈殿するんだけど、これがウールグリースのなれの果てなので、これを回収して上げて、酸処理なんかをしてあげるとウールグリースを抽出することができるのだ。
実際には10%くらいしか回収できないんだそうだけど。

このウールグリースは優れもので、人間が分泌する油脂成分に極めて近い、ということもあって、肌への浸透性がよく、保水性も高いんだとか。
今ではアレルギーの問題もあるので減ってきているらしいけど、ウールグリースから精製されたラノリンは化粧品や軟膏などの基剤にも使われていたみたい。
古代ギリシアの時代から、羊毛についている脂をつけると手荒れが治る、と知られていたらしいよ!
古代ローマでは、公衆便所で集めた尿を使ってこのウールグリースを抽出していたみたい(水酸化ナトリウムの代わりに発酵した尿中にあるアンモニアを使うのだ。)。
古代エジプトでは灰汁を使ったりもしたみたいけど、アルカリ性溶液を使ってむかしから取り出していたのだ。

というわけで、原理的なことはわかっていたのかどうかはともかく、人類はむかしから化学的なプロセスで脱脂や漂白をしていたんだね。
当然化学反応とかはわかっていないから、試行錯誤の末にこうしたらうまくいく、というのが伝承されていったんだろうけど、先人の英知もあなどれないよ。
改めて調べてみると、身近にあるものを使ってよくここまで工夫できたなぁと感心するよね。

2013/05/18

世界帝国の味

某都知事による変な発言もあったけど、2020年のオリンピック招致の関係でトルコの話がよく出るようになってきたのだ。
もともとトルコは世界有数の親日国として有名だし、カッパドキアやイスタンブールは観光地としてもかなりメジャーになってきているよね。
名物の鯖サンドも認知度が高まってきているのだ。
そんな中、やっぱり注目されているのがトルコライス♪
ま、こっちは長崎の御当地B級グルメとして話題になっているんだけど(笑)

一般的な長崎のトルコライスは、ピラフ(多くはカレー味)とスパゲッティ(大概においてナポリタン)がさらに一緒に盛られ、その上にデミグラスソースをかけたとんかつが載っているのだ。
ピラフがサフランライスになって、とんかつにカレーが係っているようなものもあるよ。
基本形は味のついた米料理と具のほとんどない炒めスパゲッティ、ソースのかかったとんかつから構成されているのだ。
最近は食堂とかでも定番メニューになってきているし、ファミレスのロイヤルホストなんかはメニューに入れていることもあったよ。
ボクも最初に食べたのは学生の時で、大学の食堂で食べたはず。
なんでトルコなのかはわからないけど(笑)

ボクが最初に聞いたトルコライスの名称の由来は、西洋と東洋をつなぐ存在を表している、という説。
ピラフ(チャーハン)やカレーは中国やインドで、スパゲッティは欧州、それをとんかつが橋渡ししているので、まさに西洋と東洋をつなぐトルコのような存在だ、というもの。
これはけっこうよく言われているよね。
「トリコロール(三色)」がなまった、という説もあって、これはピラフ、スパゲッティ、とんかつで三色ということなのだそうなのだ。
中にはトルコ発祥なんて説もあるけど、トルコでは多くの人がイスラム教徒で豚肉は禁忌だから、トルコから伝わったっていうのはそのままではいただけないよね・・・。

でも、案外トルコ伝来説というのは侮れないようなんだ。
というのも、明治期の料理本に、米を肉や野菜などの具とともにスープで炊いてからバターで炒める料理が「土耳古(トルコ)飯」として照会されているんだ。
おそらく、土耳古料理のピラフ(ピラヴ)を紹介したもので、ちょっと日本風にアレンジされているのだ(本当のピラフは生米を炒めてからスープで炊くのでもっとぱらっとできる。)。
こういったピラフ風料理が「トルコ風ライス」と呼ばれて提供されるようになり、それがトルコライスにつながっている可能性があるのだ。

そうなると、スパゲッティととんかつはどこから出てくるのか、という話になるけど、どうも付け合わせだったんじゃないか、ということになるのだ。
具のないスパゲッティは洋食の付け合わせの定番だけど、トルコライスのスパゲッティはその量が増えてメイン的になったもの。
とんかつの方はおそらくボリュームを増すためにやはり洋食の定番だったとんかつがおかずとして加わったんじゃないか、と考えられるのだ。
本場トルコ料理のケバブでは、ピラヴとサラダ、肉をひとつの皿に盛ることがあるそうで、あながち肉料理を一緒にするのは外れていないみたい。
そういえば、トルコライスには千切りキャベツがついていることも多いね(これもスパゲッティと同じ洋食の付け合わせの定番だけど。)。

こう考えると、もともとはピラフ的な料理だったトルコ風ライスが現在のトルコライスになったのもうなづけるのだ。
比較的安価でボリュームがあることもあるけど、お子様ランチ的な盛り合わせも魅力なのだ。
いろんなものをちょっとずつでも食べたい、っていうのがあるからね。
そんな欲求を満たす料理として定番化していったんじゃないかなぁ。
もはやまったくトルコとは関係なくなってきているような気がするけど。

実は、トルコライスには大阪風や神戸風というのもあるのだ。
大阪風はチキンライスにオムライス的に薄い卵焼きをかけ、その上にデミグラスソースのかかったとんかつを載せたもの。
神戸風はケチャップ味でない炒め飯の上にカレーをかけて生卵をトッピングしたものなんだとか。
どちらも長崎風のトルコライスと比べるとだいぶ違うけど、もともとトルコライスがピラフ的なものだった、と考えると、それぞれがそれぞれの地域で独自に派生していったと納得できるかも。

ちなみに、米をスープで炊くピラフという料理は、古くはアレクサンドロス大王の時代の文献にも登場するんだそうで、非常に古いものなのだ。
そのときは中央アジアの料理で、マケドニアに伝えられてから東欧に広まったとか。
中央アジアからは自然に中東地域にも広がっていって、ムガル帝国の時代にインドまで広がったようなのだ。
まさに、世界帝国並みに広がっている料理だったんだねぇ。
それが文化の最果ての日本でトルコライスになったのだ!
今度は東京五輪を通じてこの料理が世界に広まるとおもしろいのだけど(笑)

2013/05/11

沈没した大陸?

海洋研究開発機構とブラジル政府が、かつて大西洋上に大陸があったことが判明した、と発表したのだ。
リオデジャネイロ沖の海底台地を有人潜水艇「しんかい6500」で調査したもので、「伝説のアトランティス大陸のような陸地が存在した極めて強い証拠」として、海底で花崗岩を発見したことを指しているんだ。
花崗岩というのはマグマがゆっくりと冷やされて固まってできる深成岩の一種で、通常は陸域でしか作られないのだ。
海底火山の噴火だったらマグマはすぐに冷やされてしまうので、深成岩でなくて火山岩になってしまうんだよね。
で、その深成岩の一種である花崗岩が大量に見つかったので、調査した海底大地はかつて陸地だった、ということが科学的にわかるのだ。
調査では、数千万年前に海底に沈んだと見られているので(化石から5千万年前くらいには地上にあったことが確認できていて、それから数百万年後に沈んだと考えられているみたい。)、当然人工物はないんだけど(人類の起源は数百万年前だし、アトランティスが沈んだとされるのは約1万2千年前。)。

で、にわかに伝説の大陸「アトランティス」に注目が集まるのだ。
日本ではむしろ太平洋上にあったとされる「ムー大陸」の方が人気があるようだけど、西洋世界ではアトランティスの方が身近なのか、いろいろと説があったり、創作に活かされたりしているんだよね。
古典としてはジュール・ヴェルヌさんの「海底二万マイル」がおなじみ。
日本だとやっぱりドラえもん「のび太の海底鬼岩城」かな?(リメイクもされたしね。)

このアトランティスの伝説、現在残っているものでおおもとになっているのはギリシアの大哲人プラトンさんの著作。
2つの作品の中で羽根井していたが改訂に沈んだ大陸があった、と記述されているのだ。
これらの作品の中でも、エジプトの神官から聞いた話で、エジプトでは文書の形でもその伝承が残っている、となっているらしいよ。
ギリシアは度重なる水害で古い文献が失われていたけど、古代エジプトには残っていた、というのだ。
アテナイ率いる欧州勢力とも争ったことがある、というんだよ。

これについては、他の作品に引用される形で広まっているんだけど、中にはプラトンさんの原文に載っていない情報もあったりして、本当にそういう伝承があったとは考えられるのだ。
でも、すでに古代ギリシア・ローマの時代にアトランティスの話はプラトンさんの創作した寓話であり、実在しなかった、なんて批判がなされたりもしているんだ・・・。
それでも、現在に至るまでアトランティスの繁栄と滅亡の伝説は大人気で、その直接的なモデルとしていろんなものが提唱されているのだ。
ただし、学術的には歴史的事実に基づくものではなく、単なる伝承か、プラトンさんによる創作と考えられているよ。
今回の発見も人類の登場以前に沈んだ証拠みたいだしね。

代表的な説としては、実は地中海にあった島のことを指しているというもの。
プラトンさんの記述には具体的な島の大きさなんかも書いてあるんだけど、年代や大きさは誇張又は誤記で、それ以外では合致している記述が多い、というのだ。
日本でも沖縄沖に海底に沈んだ遺跡があることが知られてるけど、地中海にもそういうのがあるそうで、それじゃないか、というんだ。
だとすると、アテナイと争ったのも頷けるし、古代エジプトで知られていたのも納得がいくよね。

それでもやっぱり大西洋にあった、という説も人気で、アゾレス諸島やカナリア諸島の当たりにあったんじゃないか、というもの。
氷河期の集結に伴う海面上昇や、海底火山の噴火によってできた空洞がつぶれることで島が沈んだ、なんて考えているみたい。
カナリア諸島沖にもやっぱり海底遺跡があるみたいで、そういうのから連想しているみたい。
今回の発見は南半球だけど、確かに大西洋上に今はない陸地があったことは確かみたいだけど、これらの地域でも海底を調べれば何かわかるのかな?
ちなみに、アメリカ大陸こそがアトランティスの正体で、沈んだわけではなくて通行ができなくなっただけ、とする説もあるそうだよ。
似たようなものに、実はインドのことで、かつて存在した運河が使えなくなって渡れなくなったので「失われた」ことになったという説も。

もう少し科学的なのはプレートテクトニクスに基づく、と称するもの。
もともとアフリカ大陸と南米大陸の海岸線がぴったりくっつく、ということから考え出されたものだけど、大陸が別れる前の超大陸の状態を仮想すると、どうしても欧州、北米、アフリカの集まる北大西洋あたりに大陸棚がうまくくっつかない空隙ができるんだって。
その空白地帯こそがアトランティスだ、とするんだ。
よく考えるねぇ。
これも今回と同じような海底の岩石を調査すれば、陸地が沈んだのか、もともとくぼんでいたのかはわかるんだろうけど。
ちなみに、今回見つかった海底台地も、南米とアフリカが別れたときに取り残された陸地が沈んだんじゃないか、と見られているので、場所の問題はあるけど、そういう考え方はなくはないらしいよ(笑)
もっと荒唐無稽なものには南極大陸がアトランティスで、ポールシフトにより極域となったので氷に覆われるようになった、なんてのもあるんだって。
南極の地下にはかつて緑の大地があって恐竜がいた痕跡もあるけど、それは大陸移動で説明できるので、大規模なポールシフトでいきなり極になるとは考えられないのだ(>o<)

いずれにせよ、地中海やカナリア諸島付近には文明が栄えた後に沈んだ島があること、ブラジル沖にはかつて陸地だった海底台地があることは事実なのだ。
文明が栄えた後に沈んだ島が実際にあったという歴史的事実は伝承の「もと」になることもあるから、そこから想像がふくらまされた可能性もあるよね。
創世記のノアの箱舟の話も、局地的な大洪水から連想されている可能性も指摘されているから、さもありなんというところかな(古代オリエント地域で大きな洪水があったことは地層の調査から明か。)。
さすがに人類登場以前に沈んだ陸地があったという記憶が伝承されているとは考えづらいから、今回の発見事態はアトランティス伝説とは直接的に関係ないだろうけど(笑)

2013/05/04

先頭には何がある?

今年のGWは円安になったこともあって国内指向が強まったそうで、各地で渋滞も発生しているね。
ボクがもっと小さかった頃は何十kmという渋滞がGWやお盆には常識だったけど、今ではだいぶ緩和されているのだ。
これって、そもそも渋滞がどういう原因で起こるのか、っていう研究が進んだからなんだよね。
原因がわかれば対策が講じられるわけで、技術的に解消できる部分も出てくるのだ!

一般に渋滞という現象は、道路の交通容量を超える交通量となったときに発生するもので、通行に「よどみ」ができている状態。
警視庁の統計では、一般道では走行速度が毎時20km以下になった状態、高速道では走行速度が毎時40km以下になった状態と定義しているみたい。
赤信号で停止するのは当たり前として、青信号になってもなかなか動かない、動いたとしても遅々として進まない、という状況なのだ(>o<)
高速道路の場合は信号がないから、単純に走行速度が遅くなっているということだよね。

車両が走行する場合、車間距離をとるので、一定区間(例えば信号と信号の間)の道路には快適に走行できる車両の数の上限というのがあるのだ。
これが交通容量で、これを超えると信号が青の間にすべての車両がはけきれなくなり、青信号でも前に進めない、ということになるのだ。
高速の場合では、車間距離が短くなり、前の車両が軽くブレーキを踏んだだけでも、連鎖的に後続の車両がブレーキを踏むことになってしまい、走行速度の遅い車両の集団が形成されるのだ。
前の車両のブレーキに気づいてからブレーキを踏むまでの反応速度の分だけ遅れるので、この連鎖的なブレーキは雪崩的に拡散して、後ろの方まで行くと止まってしまうくらいにまでなるんだよ。
これが渋滞の発生で、渋滞学ではこれを「相転移」と呼んでいるみたい。

何も研究されていない頃は、それこそ先頭に「とろい」車両がいるせいで全体が遅くなるくらいにしか考えられていなかったんだけど、実際に渋滞が発生している時にヘリコプターで上空から観測すると、渋滞の先頭はある位置に特定されていて、そこから先は車両が流れているけど、その後ろは車両の流れが滞っていることがわかるんだよね。
つまり、そこにある何かが渋滞が発生するトリガーを引いているので、その原因を突き止めて、解決してあげれば渋滞が緩和するということなのだ。
実は、こういうのがわかってきたのってここ最近なんだよね。

一般道では、信号・交差点や踏切、橋などの定常的な要因と、事故や悪天候のような一時的な要因があるのだ。
交差点ではどうしても右折・左折待ちの車両があるので、右折・左折専用レーンなどを作ることで対応するんだよね。
踏切も、高架線にしたり、逆に道路を下に潜らせたりして回避するようになってきているのだ。
橋はどうしてもそこだけ交通量が限られてしまうので、橋を増やして分散させるくらいしかないんだよね・・・。
お台場もレインボーブリッジくらいしかないときはそこがボトルネックになってすっごい混雑していたけど、蒲田トンネルなどの他のルートができると分散してきて、さほど混雑しなくなったのだ。

高速道路の場合はちょっと事情が違って、交通量がもともと多いときに、渋滞が発生するレベルにまで車両の密度が高くなる(=車間距離が短くなる)きっかけがあると、そこから渋滞が発生するんだ。
そのきっかけというのは「ブレーキ」。
高速道路には信号がないので、基本はアクセルの踏み込みで速度を調節しているんだけど、誰かがブレーキを踏んでいきなり減速すると、そのブレーキが連鎖的に後続車両に伝播して、通行のよどみが発生するのだ。
すいていれば車間距離が十分にあるので、前の車両がちょっとブレーキを踏んだくらいじゃアクセルを緩めればすむんだけど、もともと交通量が多いと車間距離もそんなにないので、前の車両にブレーキを踏まれると自分も踏まないとぶつかってしまうのだ(ToT)
ちなみに、走行車線より追い越し車線の方が一般に走行速度が速いので、追い越し車線の方が渋滞が発生しやすいと言われているのだ(前の車両の急ブレーキに対応するにはブレーキしかないので。)。

じゃあ、なんでブレーキを踏む必要が出てくるかというと、さらにその前の車両が「無意識」に速度を低下させてしまったから、というのがわかっているんだ。
これは渋滞の名所と呼ばれるところを見ていってわかったことなんだけど、運転者が自然とアクセルを緩めてしまうポイントがあるのだ。
そのひとつが合流地点。
インターチェンジだったり、ジャンクションだったりがこれ。
もうひとつはトンネルの手前。
トンネルの中は暗いので、どうしてもその手前で速度を落としてしまいがちなんだって。
そして、研究してわかってきたのが「サグ」というもの。
これはすり鉢状にへこんだところ(「\_/」という形状)で、勾配が急ではなく、ゆるやかなところが問題なのだ。
ゆるやかに下った後にゆるやかな登りがあるんだけど、勾配が小さいと登りであることに気づかず、アクセルを踏み込まないので自然と速度が落ちてしまうのだ!
勾配が急だと「登坂車線」なんかもあってあんまり問題にならないのだ。

これらはそれぞれ渋滞の名所に対応していて、東名下りの渋滞のメッカ、厚木インターチェンジ付近にそろっていたんだ(笑)
合流地点と言えば厚木の少し先の伊勢原バス停付近。
ここは東名高速と小田原厚木道路が合流するところなんだよね。
さらに、むかしはここまでが三車線で、この先が二車線だったので、車線数の減少による効果もあったのだ・・・。
今では車線数の問題が解消されてだいぶましになったけどね。
渋滞のトンネルと言えば大和トンネル。
渋滞情報でもいまだに「大和トンネル入口付近を先頭に・・・」というのが多いよね。
そして、「サグ」は、厚木インターチェンジ手前の綾瀬バス停付近。
ここは長らくなんで渋滞が発生するかよくわかっていなかったんだ。

「サグ」については、「この先上り坂になるので速度ゆるめるな」的な注意を促すことである程度解消できるそうなんだけど、綾瀬バス停付近は特に渋滞がひどかったので、三車線から四車線に車線数を増やしたのだ。
それによりほぼ渋滞は解消されたんだけど、逆に、大和トンネル手前でまた三車線にもどってしまうので、トンネル前の渋滞がひどくなったとか・・・。
なかなかうまくいかないんだよね(>ε<)
こうなると、車線を増やすとか、東名高速のように2つのルートに分けて分岐させて車両を分散する、さらには第二東名を作る、といった交通容量を増加させるしか手段がないのが現実。
とりあえず、自分でできるのは、「サグ」やトンネルの手前では意識的に速度を落とさないようにする、ってことくらいかな?
前の車両がそもそも速度を落としていたらそれもできないんだけど(笑)

2013/04/27

アナタの見えない世界

春になって天気予報でも紫外線情報が出されるようになってきているのだ。
UVカット製品もここからが売りどころだしね。
紫外線というのは、「紫の外」と書くけど、これは人間が見える可視光領域の「赤(620-750nm)~橙(590-620nm)~黄(570-590nm)~緑(495-570nm)~青(445-495nm)~藍(420-445nm)~紫(380-420nm)」(括弧内は波長で目安)の外側にあるから。
波長が380nmより短いのが紫外線で、逆に波長が750nmより長くなると赤外線なのだ。
さらに、可視光にすぐ近い、ちょっとだけ波長が短い/長い光を特に近紫外線/近赤外線と言うよ。

驚いたことに、昆虫にはこの近紫外線が「見えて」いるらしいのだ!
昆虫だけじゃなく、鳥やネズミ、トカゲなんかも見えるらしいんだけど。
可視光領域って人間が見えるかどうかで勝手に定義しているからあれなんだけど(笑)、昆虫の世界は人間には見えない世界で溢れていることになるのだ。
よく紫外線が撮影できるカメラで昆虫の視界を再現するような写真があるよね。
実際には、昆虫は可視光も見えているので、もっと次元の違う視界が広がっているはずなのだ。
(ヘビなんかはピット器官を通じて近赤外線を感知しているから、蛇の世界では赤外線が「見える」ということなんだよね。)

昆虫が見えている紫外線は波長で言うと300-380nmの近紫外線。
UVAというやつだね。
実は、人間の視細胞もこの光には反応しているらしいんだけど、角膜で吸収してしまうので、水晶体・網膜まで届かないらしいのだ。
瞳の色は虹彩のメラニン色素の量で決まるけど、目の青い人でも茶色い人でも黒目の中央にある角膜部分は黒くなっているのだ。
ここで紫外線はフィルターしてしまっているわけだね。

紫外線も含めて見えた方が便利なような気もするけど、実はデメリットもあるみたい。
ひとつは、角の日焼けが肌にとって有害なように、紫外線が水晶体や網膜を傷つける可能性がある、ということ。
紫外線はDNAやタンパク質を傷つける(変成させる)作用があるので、それで細胞がダメージを受けてしまうのだ。
昆虫はせいぜい数年の寿命なのでそのリスクは相対的に低いけど、ヒトのように数十年~百年近く生きる生物にとっては重要な問題なのだ。

カメラ的な原理でもデメリットがあって、それは遠くの景色がよりかすんで見えるということ。
可視光とその近傍領域では、波長が短い光ほど空気の分子に散乱されやすい性質があって、そのために遠くの景色は青っぽくかすんでみるのだ。
昼間の空が青く見えるのも青い光がよりよく散乱されているからで、朝焼け・夕焼けが赤いのは青い光が散乱される結果、光が届くまでの距離が長いと赤い光の方が届きやすいからなんだ。
近紫外線は青い光よりさらに散乱されやすく、円形ではより紫外線が散乱されていて、ぼやっと明るく見えるというわけ。
これもヒトのような大型のほ乳類にとってはちょっと困るよね。
むかしのカメラのレンズは紫外線を十分に反射できなかったので、紫外線カットのフィルターをつけないと晴天下では遠景がくっきり撮れなかったそうだよ。

さらに、色収差という問題があるのだ。
視覚のメカニズムでは、角膜で絞って水晶体で屈折させて網膜に像を結ばせるんだけど、実は、光は波長によって微妙に屈折率が変わるのだ。
これはレンズ側の材質によってどれくらいのズレが生じるかは異なるんだけど、例えば、ガラス製のレンズの場合、近紫外線や近赤外線まで含めるとこの屈折率のズレにより生じる像のブレ(=色収差)が大きくなってしまって、像がかなりぼやけてしまうのだ。
これが目の中の水晶体でも起こるだろ、ということ。
近くのものならズレは小さいけど、遠くのものだとズレが大きくなるので、かすむ上に像がぼやけるのだ。

そんなこんなで紫外線が見えないことにも一定の意義があるんだけど、見えたら見えたで違う世界が開けるのも事実。
有名なのはモンシロチョウの羽根の色で、ヒトの目で見ると白地に黒のワンポイントが入ったシンプルな柄で、雄も雌も区別がつかないけど、昆虫の目で見ると違うのだ。
実は雄と雌の羽根では紫外線の吸収率が異なるので、雄は黒っぽく、雌は白っぽく見えるんだ。
花の色も同じで、タンポポの花はヒトの目には単一色の黄色に見えるけど、昆虫が見ると中央が暗く、周辺部が明るく見えているんだって。
これも紫外線の吸収率の違いで、多くの花は蜜のあるところを黒っぽく見せることで昆虫を引き寄せているみたい。

誘蛾灯というのは、昆虫が光が来た方向に進む性質(正の走光性)を利用しているんだけど、昆虫は紫外線も見えているので、紫外線で明るくしてやるとそこに昆虫が寄ってくるのだ。
普通の蛍光灯でもいいけどそれでは明るすぎるから、ヒトの目には見えない紫外線を使えば周辺をそんなに明るくせずとも昆虫を呼び寄せられるわけ(誘蛾灯の場合は紫の光も必要だよ。)。
遊園地のアトラクションの中になんかあるブラックライトも紫外線を照射している照明器具で、ヒトの目には暗い中で紫外線を吸収してより波長が短くなった(=可視光領域になった)蛍光を発しているほこりとかだけがきらきら光って見えるのだ。
逆に、昆虫からすると、紫外線で明るい中、ヒトの目できらきら光って見えるところは紫外線を吸収する黒い点に見えるはずなのだ。

特殊なカメラを使えばなんとなくのイメージはつかめそうではあるんだけど、まったくの異質の世界なんだろうなぁ。
今見えている世界にアドオンで紫外線が加わるわけだから、紫外線だけ見た映像とはまた異なるんだよね。
紫外線も見える世界ってちょっとだけ体験してみたいような。

2013/04/20

その審議を進められることを望みまーーーーす!

今年度も昨年度と同様に暫定予算で始まったのだ。
前は5日間で終わったけど、今年は最大で50日間。
とりあえず25年度予算案は4月16日(火)に衆議院で可決されたから、30日間ルールで5月中旬には予算は自然成立するのだ。
暫定予算は5月20日(月)までだったからかなりぎりぎりだけどね。

で、暫定予算になっているのは国会での議論が収束しなかったから。
通常は年末までに政府予算案ができて国会に提出され、年明け、通常国会が始まってから審議をして3月中には成立させるんだよね。
25年度予算については、12月に総選挙が入って政権交代もしたので、予算の中身の見直しなんかをしたりしているうちに遅れたのだ。
例外的に長い暫定予算になったけど、必ずしも国会がサボっているわけではないんだよ(笑)

その証拠のひとつが、衆議院で提出された予算の修正動議とか編成替え動議。
むかしの野党はただただ反対するだけだったような気がするんだけど、近頃は「こう直すべし」みたいな政策提言をするんだよね。
自分たちにも十分に政権担当能力がある、ということを政治的にアピールしたいのだ。
ま、民主党政権ができてからの「お金(財源)がない!」の騒動が記憶に新しいから、それとこれとは別のような気も・・・。
それでも建設的にこう変えたらよい、とカウンタープロポーザルができるようになったのは進歩なのだ。

ここで気になるのが、修正動議と編成替え動議の2種類があるということ。
修正動議はそのままで、政府予算案に国会が修正を加えようとする際に出される動議で、国会法第57条の2「予算につき議院の会議で修正の動議を議題とするには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」に基づいて提出されるもの。
仮に可決されるとその修正案どおりに予算が修正されるのだ。
ま、そういう事態はほとんどないんだけど・・・。

もう一つの編成替え動議というのは、一般的な議案のひとつとして扱われるもので、国会法第56条第1項「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」という一般的な規定に基づくもの。
その内容も修正動議とは違って、政府に予算案の撤回と修正の上での再提出をい求めるものなのだ。
通常は提案理由と修正の方針が動議の中で示されるよ。
ただし、こちらは予算を修正するのではなく、あくまでも直した上での再提出を求めるものなので、可決されても再び再提出された予算案について議決をする必要があるのだ。
もちろん、動議で示した理由や方針と照らして修正が不十分ならここでまた突っ返すことも理論的には可能だよ。
国では聞いたことないけど、地方議会の場合は与野党が合意した上で編成替え動議に基づき修正した予算案を再提出することもあるようなのだ。

で、わざわざ国会法に定めがあるのになんで修正動議でなく、編成替え動議を出すかというと、そこには憲法が関係してきているんだ。
日本国憲法では第65条で「行政権は、内閣に属する。」とした上で、第86条で「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」としているのだ。
つまり、予算を作成するのは内閣の専権であって、国会は審議・議決するのみなんだ。
ちょっと修正するくらいならいいけど、大幅に変えてしまって元の案とはまるで異なる予算を目指す場合、これがひっかかってくるそうなのだ。
立法府の越権行為なのかどうかは実際のところなんとも言えないんだけど、これを形式的に回避するために、撤回させた上でこれこれこういう方針で直して持ってこい、という編成替え動議が出されることになるんだ。
実際に24年度予算に対してみんなの党が出した動議を見てみると、
http://www.your-party.jp/activity/gian/001183/
 ・歳入では、消費税の全額地方移管、法人税率の半減、政府保有株の売却、公債発行額の削減
 ・歳出では、子ども手当・高校無償化の地方移管、交付金・補助金・負担金等の20%カット、教員・地方公務員の給与カット
などで、歳入・歳出両面で抜本的な見直しを行うものなのだ。
これだとほぼゼロから作り直す感じになるから、「修正」という言葉では入りきらないのかもね。

ちなみに、憲法では「内閣は予算を作成する」となっているので、国会に提出するのもあくまで「予算」であって「予算案」ではないそうなのだ。
「予算案」と呼び慣らされているけど、正式には「案」がつかないそうだよ。
確かに、国会法でも「法案」は「法律案」と「案」付で書き分けているから、意味があるんだろうね。
法案が行政府、立法府の双方で提出できるのと違い、予算は内閣しか出せず、国会はあくまでも修正しかできないというしきりになっているから、わざと変えているんだろうなぁ。

日本の場合は憲法の段階で法律と予算が分けられているんだけど、これはある程度米国の反省から来ている可能性があるんだよね。
米国の場合、予算も法律の一種で、歳入法と歳出法が議会で作られ、大統領が署名することで効力を発揮するのだ。
一応大統領府で予算要求をまとめて議会に提出するけど、それはあくまでも参考資料扱いで、議会で予算をつめていくんだよね。
そのための議会スタッフも充実しているし、場合によっては行政庁にデータの提出や細かい積算をやらせたりもするみたいだけど。

それでも、議会が主導するので、どうしても声の大きな議員の地元の要望というのが多かれ少なかれ入ってくるのだ。
こういうのは取捨選択も難しいから、議会に任せるとたいてい肥大しがちなんだよね・・・。
それに、実際に執行する行政府の思惑とは異なるコンセプトで作られるので、使いづらい場合があるのだ(何かと議会に報告と制約も多いしね・・・。)。
で、実際に執行責任を持つ行政府がやりやすいように予算を作る仕組みとして、予算と法案を分けて規定したんじゃないかなぁ、と思うのだ。
すると、予算は安定性が増すけど、硬直性も生まれるので、果たしてどっちのシステムが優れているかはにわかには言えないけど。

暫定予算についても、日本では政府が必要な予算を積算して作るのに対し、米国では、「Continuing Resolution」というのを議会で可決し、大統領が署名するだけなのだ。
基本は、前年度予算額を上限として、新規事業は開始せず、必要な継続事業のみを実施する、というもので、そこに必要に応じて特記事項がつくもの。
ぎりぎりまでもめても、すっとつなげられるところは利点だけど、そもそも議会が紛糾したり、大統領との間で合意が得られないと、延長に延長を重ねて予算が成立しないまま会計年度が終わることもあるから、それもどうかと思うけど・・・(その場合はその会計年度は新しいことがまったく始められないことになるよ!)。

2013/04/13

ぷっちもち

最近コンビニで気になっているのが、「もち麦入りおにぎり」という商品。
いわゆる麦飯のおにぎりなんだけど、麦粒がかたくなくて、ぷっちぷちでもちもちしているのだ。
これはなかなかおもしろい食感。
ボクは割と麦飯が好きなんだけど、これはよいよ。

麦飯に使われる麦はオオムギで、オオムギには大きく分けて2種類あるのだ。
脱穀したときに穀皮が一緒にはがれてしまうハダカムギと、皮が残ったままのカワムギの2つ。
もともとはカワムギが基本で、突然変異で皮がはがれやすいオオムギが出てきたみたい。
自然界ではメリットがないけど、人間が栽培することで増えてきたのだ。
ハダカムギは押麦にして麦飯として食べたり、麦味噌の原料にされるみたいだよ。
カワムギは麦茶になったり、切断麦にして麦飯として食べたり、ビールの原料になったりするのだ。

オオムギにはもうひとつ分け方があって、それは穂の付き方。
茎の軸に沿って2列になるのが二条オオムギ、4列になるのが四条オオムギ、6列になるのが六条オオムギ。
上から見るとそれぞれ直線状、十字状、アスタリスク状に見えるよ。
京都の地名とはまったく関係ないのだ(笑)
もともとは二条オオムギが野生種に近く、穂を多くつける種が突然変異でできて広まったみたい。
ちなみに、ハダカムギ、カワムギそれぞれに二条や六条があるけど、現在主に栽培されているのは、六条ハダカムギと二条カワムギ(=ビール大麦)なんだって。

二条オオムギは主にビールや麦焼酎の原料にされるんだけど、これは麦芽にして発酵させるのに都合がよいからなんだ。
もともと穂の列の数が違うこともあって、二条オオムギは六条オオムギに比べて粒が大きく、デンプンも豊富なので醸造に適しているみたい。
日本でビールの原料となる二条オオムギはあらかじめビール会社と農家が契約して栽培しているそうで、勝手に作ってもビール醸造用には買ってくれないそうだよ。
栽培段階から品質管理にこだわっているのかな?

六条オオムギは麦飯として食べるのが主なんだけど、米と比べて煮えにくいので、そのまま混ぜてもうまく炊けないのだ。
西洋では砕いてかゆにして食べることが多かったみたいだけど、日本の場合は、古くは大まかに砕いたひき割り麦を混ぜたりしたんだ。
先にオオムギだけにてにじること冷まして作るえまし麦(麦粒が割れて「笑った」ように見えるので「笑まし」というらしいよ。)なんかにもして混ぜ込んだみたい。
えまし麦を作った煮汁には麦からデンプンが出ているので、洗濯のりに使ったそうだよ。

現在の麦飯に使われるのは、押麦、切断麦、米粒麦のどれか。
押麦というのはよくとろろごはんの麦飯で見かける平たくつぶされた麦粒のことで、外皮をはいでから水と熱を加えて上下のローラーでつぶしたものなんだって。
こうすることで水の吸収が改善されるのだ。
切断麦というのは、オオムギの特徴でもある麦粒中心部の黒条のところで2つに切ってから、水と熱を加えてローラーでつぶしたもの。
麦飯を嫌う人の多くがこの黒条のところが口に引っかかるというので、これを取り除くために切るんだよ。
黒条がなくなるので「白麦(はくばく)」とも言うのだ。
米粒麦というのは、黒条で半分に切ってからさらに削って米粒のような形にしたもので、麦飯にしてもぱっと見それと気づかないという利点があるのだ。
なので、学校給食なんかに登場しているみたい。
食味はぱらっとしていて、食べてみると白飯とは違うみたい。

今でこそ麦飯の方が高級になったけど、むかしは白飯より安かったので、貧乏人の食べ物と見なされていたのだ。
「貧乏人は麦を食え」なんて発言もあったくらいで。
で、この麦飯っていうのは、時間がたつと黄色~褐色に色がつくんだよね。
なので、麦飯の弁当を持ってきている子どもはふたで中身を隠しながら食べたそうなのだ。
この色の正体はオオムギに多量に含まれるポリフェノール。
オオムギはビタミンBなんかが多いだけでなく、にポリフェノールやタンニンも多いのでいまいち食味が悪いとされるんだけど、今ではかえってそのポリフェノールが健康志向にばっちり合っているんだよね。
食物繊維も米より多いし、ホリエモンの監獄ダイエットの成功でますます注目を集めているかも。

で、問題のもち麦。
もち米と同じで、アミロースとアミロペクチンの含有量の違いで、デンプンに粘りがあるかさらっとしているかの違いが出るのだ。
もち米がほぼアミロースの含有量がゼロなのに比べると、もち麦の場合はアミロースも多少含まれているんだって。
このもち性の麦は日中韓三国にしかないそうで、日本でも九州北部と中国・四国の瀬戸内海沿岸地域でのみ栽培されていたとか。
しかも、いったん昭和30年頃に栽培が途絶えたものを復活させたらしいよ。
それがまた着目されるようになったみたい。
このもち麦は穂がすみれ色だそうで、実ると麦畑一面があざやかな色になるんだとか。
いやあ、春(麦秋)だねぇ。

2013/04/06

茎が葉っぱで葉っぱが茎で

ここ最近スーパーで見かけるようになって気になっている野菜があったのだ。
それは「ミョウガタケ」。
ミョウガが長ネギのように伸びたものだよ。
で、買って食べてみたら、思ったよりもかたくて、ミョウガの風味も弱いんだね。
春の食材と言うけど、もっとおいしい食べ方があったのかな?

このミョウガタケは、魚料理に添えられるはじかみや長ネギと同じように薄い皮が何枚も巻き付いている構造で、実は葉っぱなのだ。
一見茎に見えるので、偽茎と呼ばれるんだ。
アシやイネのように葉っぱが丸まって巻き付くものを葉鞘といって、その葉鞘がタイトに巻き付いて管状・筒状になっているのが偽茎なのだ。
バナナなんかもそうで、バナナの実がなっている木の幹に見える部分はやっぱり偽茎なんだ。

偽茎の場合、葉っぱが丸まって巻き付いているので、水平断面はバームクーヘンのような同心円。
まさにネギの輪切りのようになっているのだ。
一方、本当の茎は中に栄養や水分を運ぶ維管束が通っていて、筒の中に穴が開いているよ。
極端な例えだとレンコン状ということだけど、フキを思い浮かべるとわかりやすいかな?
葉鞘は1枚1枚はがせるので偽茎は外側の部分をはがすのが簡単だけど、茎はそういう構造ではないから皮をむくのは難しいのだ。
ネギならさっと表面をむけるけど、フキの皮むきは大変だよね・・・。

偽茎を形成する植物の典型的なものは2つあって、ひとつは地下茎が発達していて、地上には偽茎が出てくるもの。
ショウガ科の植物がそうで、ショウガやミョウガが代表選手。
地下茎は土壌からの栄養を吸収しないことで根からは区別されるけど、引き抜くと根のように地下をはいまわっているのだ。
地下茎としてはイモ類やタケ類が有名だよね。
ちなみに、サトイモは球茎といって茎の基部に栄養がたまったもの、ジャガイモは塊茎といって茎の一部に栄養がたまったものだよ。
サトイモの場合は葉鞘が乾燥してできた薄皮に包まれているんだけど、ジャガイモは包まれていないのだ。
なお、サツマイモは根が栄養をためて肥大化したもので、地下茎ではないよ。
タケノコは根のように地中を伸びる根茎というものなのだ。

もうひとつの典型は茎が非常に短いもの。
これは長ネギなんかがそうで、根の上の1cmくらいだけが茎で、あとは偽茎=葉っぱが丸まったもの。
葉っぱの基部にだけ茎があるイメージだね。
長ネギは例外的に鱗茎を形成しないけど、地中ににんにくのような鱗茎を持っていることが多いのだ。
タマネギ、エシャロット、ラッキョウなんかがそうだよ。
構造自体は似ているけど、長ネギとタマネギだと食べているところが全然違うのだ!

偽茎とは逆に、葉が退化して茎で光合成まで行うようになった植物もあるのだ。
カニサボテンやウチワサボテンは茎を扁平にして光合成を効率よく行っているよ。
サボテン類は葉っぱがトゲに進化しているので、基本的には茎主体の植物なのだ(笑)
乾燥に強いように葉っぱが肉厚になって(「多肉」)、茎という感じではなくなってしまっているけど。
アスパラガスも茎主体の植物で、葉っぱはほぼ退化していて、長く伸びた茎で光合成しているそうなのだ。
巻き付いている鱗状のものが本来の葉っぱなんだって。
料理するときにはずすやつだよね。

というわけで、よく街中で見かける野菜でも、いろいろと不思議な生態があるものなのだ。
そういうのは気にせず食べちゃっているけど、よくよく観察してみるとおもしろいかもね。
ま、食べるだけなら葉っぱとか茎とか根っことかを区別する必要はないんだけど(笑)

2013/03/30

格差社会は違憲?

とうとう広島高裁で先の衆議院選挙を無効とする判決が出たのだ。
これまでも「一票の格差」をめぐっては、「違憲状態である」という判決が出ていたんだけど、合理的な期間内に是正をすることが求められるだけで、すでに終わっている国政選挙を無効とする判決は出ていなかったんだよね・・・。
これはかなりゆゆしきこと。
前回選挙では、一票がもっとも軽いのが千葉4区(野田前首相の選挙区)、もっとも重いのは高知3区で、その差は2.42倍。
ずっと2倍を越える格差が続いているけど、前回、前々回、さらにその前より悪化しているのが問題のようなのだ。

一票の格差問題は常に国会でも話題で、今も「0増5減」の是正案が出ているけど、周知期間の問題や「区割り勧告」との関係もあって、前回選挙までには実現できなかったのだ。
次の選挙には適用されるんだろうけど、それでも大きな改善にはならないんだよねぇ(>o<)
次の選挙がいつになるかがわからないけど、その間にも人口動態が変わるし、なかなか難しい問題なのだ。
ゼロベースで見直しすればいいような気もするけど、国会議員としては自分たちの利害が関係するから、そんなにドラスティックな見直しはしづらいのだ・・・。

衆議院議員選挙の場合は、内閣府に設置されている審議会である「衆議院議員選挙区画定審議会」が、選挙区の区割りに問題があって改定が必要と判断した場合に総理に勧告することになっているのだ(直近では28日に出たばかり!)。
実際には国会で与野党が是正案を議論し、合意したものをかけることになっていて、「○増○減」というのが決まったら、実際にデータを基に選挙区の区割りをしていくんだ。。
ちなみに、委員は7名、任期は5年で、国会同意人事だよ。
この区割りの基準に使っているのはあくまでも人口で、有権者でない子どもも含んでいることに注意なのだ。
衆議院議員選挙区画定審議会設置」第3条において、「前条の規定による改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口(官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口をいう。以下同じ。)のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない。」と定めていることに由来するんだ。
で、ここに出てくる「最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすることを基本」というのがいわゆる「二倍の壁」というやつで、「一票の格差」が出るのは仕方がないから、せめて2倍以内に納めようよ、という趣旨だよ。
あくまでも「基本とし」で、後に「総合的に考慮して合理的に行」うこととなっているので、努力目標なんだけど。

このときに出てくる「○増○減」というのは選挙区の増減の話で、議員一人当たりの人口が多すぎる地域では新たに選挙区を増やし、逆に少なすぎる地域では選挙区をへらすことで是正を図るんだ。
今回は「0増5減」なので、単純に選挙区が減るだけで、議員定数も減ることになるよ。
なので国会でも抵抗が強かったんだよね。
例えば、次の区割りでは、千葉や神奈川は全体的に議員一人当たりの人口が多いので選挙区を増やし、逆に議員一人当たりの人口が少ない高知や山梨なんかで選挙区を減らすんだ。
選挙区の数は減らなくても、人口の偏りなんかもあるので、他の地域でも区割りの見直しは行われるのだ。

で、平成6年(1994年)の小選挙区導入のときから構造的な問題となっていたのが「一人別枠方式」という配分方法。
衆議院の小選挙区の場合、過疎地域に厚く配慮するとの理念のもとに、300あった小選挙区のうち、まず各都道府県に1ずつ割り当て、残りの253を人口で比例配分していたのだ。
比例配分は最大剰余方式というやつで、標準的な議員一人当たりの人口を基数として定め、都道府県の人口をこの基数で割るのだ。
このとき、商の整数部分はそのまま小選挙区の数として割り当て、残った選挙区は小数点以下が大きい方から割り当てていくんだ。
ただし、この方法だとどうしても限界があって、一票の格差はなくならないんだよねorz
(議席数の増減で割当数が大きく変わるパラドックスも知られているのだ・・・。)

今回の「0増5減」ではこれを廃止されることになっていて、昨年11月に「衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律」が成立して実現されたのだ。
この法律では、公職選挙法を改正して衆議院定数を480から475に減らす(そのうち小選挙区分は300から295に減らす)とともに、衆議院議員選挙区画定審議会設置法も改正しているんだ。
改正前の衆議院議員選挙区画定審議会設置法では、第3条に第2項があって、「前項の改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は、一に、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第四条第一項に規定する衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とする。」と定められていて、これがまさに「一人別枠方式」の法的根拠だったのだ!
これが今回削除されたことにより、一人別枠方式もなくなったんだ。
すると、今後鳥取や島根で人口減少が続いていくと、それぞれ衆議院の選挙区は全県区になり、さらに人口が減れば、両県でひとつの選挙区、なんてことにもなりかねないんだよ。

参議院の場合はこういう仕組みではなく、あくまでも議院の中で議論、処理されていくのだ。
基本的に参議院は都道府県単位の選挙区と全国比例だから、各都道府県に議席をどれだけ配分するかしかないんだけど。
でも、一票の格差ということでは衆議院をはるかに上回る5倍を越える格差が生じているよ。
3年ごとに半分ずつを改選するというのも問題なんだよね・・・。
これを是正するには都道府県単位の選挙区をやめるしかないので、大きな問題なのだ。
ちなみに、米国の上院のように人口にかかわらず、都道府県ごとに一定の議席を割り振ればよい、という意見もあるんだけど、日本国憲法では、第43条で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と定めていて、参議院議員も地方の代表ではなく、全国民の代表という建前なので、憲法改正が必要なのだ・・・。

選挙の違憲判決は、日本国憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」に基づくわけだけど、なかなか難しい問題だね。
今回の是正でどれだけ改善するのかはよくわからないけど、理論的に衆議院の小選挙区制を続ける限りは大きく改善はされないのだ。
それこそ日本全国をひとつの選挙区にして、上位四百数十名を選ぶような選挙なら完全に平等なんだけど、そうなると得票数の少ない下位の方の人は本当に国民の代表かどうかあやしくなるしね(笑)
むかしみたいに中選挙区制を導入すると、けっこう格差は解消できるんだよね。
もともとは二大政党制を目指して小選挙区制を入れたけど、与党に匹敵する大きな野党が育つどころか、むしろ小さな野党が乱立しているような・・・。
さてさて、今度の是正とその後の選挙でどうなることやら。