2013/01/26

グワッパグワッパ

なんと、世間では深刻なヘリウム不足に陥っているらしいのだ!
東京ディズニーリゾートでも、昨年11月からヘリウム不足からバルーンの販売をとりやめているらしいよ。
名前はよく知っているけど、たいして身近じゃないような気がするから気づかなかったよ・・・。
月曜から夜ふかし」を見ていて知ったのだ!

ヘリウムは、元素の周期表で水素の次に来る原子で、無色、無臭、無味、無毒でとても軽いことが特徴の希ガス。
水素は酸素と反応して爆発する危険性があるけど、ヘリウムはそういうことがないので、風船や飛行船の浮遊用ガスに使われるのだ。
中のガスが爆発すると、ヒンデンブルグ号みたいに大変なことになるからね・・・。
実は、全宇宙で見たときには水素に次いで2番目に多い元素だそうなのだ。
現在の物理学・量子理論でいくと、軽い元素ほど多くて、重い元素は少ないんだよね。

このヘリウム、すべての元素の中でもっとも沸点が低いことでも知られていて、なんと、絶対零度にしても常圧では固体にならないんだって!
超冷却して、さらに加圧しないといけないのだ(>o<)
不確定性原理によるらしいけど、なんでなんだろう?
逆に、液体にしたヘリウムは絶対零度近くまで冷やせるので、超伝導用の低温を作り出すのに使われているよ。
MRIなんかは液体ヘリウムを使っているのだ。

ヘリウムは、安全なガスということで、酸素と混ぜて深海潜水用のボンベにも入れられているのだ。
従来は窒素を使っていたんだけど、深海潜水時に窒素を吸うと、「窒素酔い」や「窒素中毒」と呼ばれる症状が出て、お酒を飲んだときのように精神が高揚し、正常な判断が下せなくなるらしいのだ・・・。
浅いところまで浮上すれば後遺症なく回復するものらしいけど、こわいよね。
これは潜水しているときには非常に危険なので、窒素に代えてヘリウムが使われ出したみたい。

でも、これにより、新たな発見があったのだ。
それは、ヘリウムを吸うと、変に声が高くなるということ。
いわゆる「ドナルドダック効果」だよ。
パーティーグッズでも、ヘリウムと酸素を混ぜた混合ガスの入ったスプレーが売られているのだ。
(ちなみに、ヘリウム不足の今は品薄らしいよ。)
これは、ヘリウム中では音が非常に早く伝わる=音速が大きくなることによるみたい。
音源からの距離が一定の場合、音速が大きくなると、音が到達する時間が短くなるのだ。
すると、音波は短い時間で同じだけの振動をするので、周波数は大きくなるわけ。
高周波は音が高く聞こえるので、声が高くなるんだよ。
自分では、骨振動で伝わってくる声も聞こえているので気づきにくんだけど、最初にボンベにヘリウムを入れたダイバーたちの間ではびっくりだったんじゃないかな。

ヘリウムは、地球上ではごくごく限られた地域からしか産出されないんだって。
一大産出国が米国で(商用では90%以上のシェア)、天然ガスと一緒に産出されるみたい。
でも、そこに設備トラブルが発生していて、一気に供給量が落ちているのだ(>o<)
日本はほとんどを米国から、ほんの少しだけカタールから輸入していたみたいなんだけど、カタールからの輸入を増やすことでなんとか解消しようとしているみたい。
今は輸入がストップしている状態で、ストックしているものを優先順位をつけて回しているみたい。
当然と言えば当然だけど、医療用が最優先で、次がIT産業、残ったらバルーンとか飛行船なんだとか。
だからディズニーリゾートも「ガスの調達が困難」ということなんだろうね。

このヘリウム、宇宙にはたくさんあるんだけど、例えば、太陽にはそれこそたくさんあるのだ。
なにしろ、太陽が燃えている原理は、水素が核融合してヘリウムになる反応だからね。
生成されたヘリウムは太陽風として太陽系に拡散していって、月面なんかにも堆積しているらしいよ。
この熱核融合の原理を使っているのが水素爆弾。
重水素と三重水素を核融合させてヘリウムを生み出すときに発生する莫大なエネルギーを使っているのだ。
ただし、この核融合反応は超高温・超高圧でしか起きないので、起爆剤として原爆を使っているんだよ。
そのためにたくさんの放射性物質が発生し、拡散されてしまうのだ(>o<)

きれいに核融合反応を起こそうというのが、国際熱核融合実験炉(ITER)計画。
これは高温・高圧のプラズマの中で核融合反応を起こさせようというのだ。
でも、このプラズマは何万度という高温で、そのままでは核融合炉自体が溶けてしまうので、超伝導コイルを使って空中に浮かせて閉じ込め、直接炉の壁面と接触させないようにしようとしているのだ。
このプラズマを中空に保持するのが技術的に難しいみたいだよ。
南仏のカダラッシュで建設が始まっているけど、実際に発電なんかに使えるようになるにはまだかなり時間がかかると言われているよ。
でも、実現すれば、まさに太陽のエネルギーを地上で再現したことになるのだ!

ちなみに、原子炉に比べれば核融合炉はクリーンと言われているけど、まったく放射性廃棄物を出さないわけでもないんだ。
核融合反応が起こるときに、中性子線や放射線が出るので、核融合炉などその中性子線が直に当たるところは「放射化」と言って放射性物質になってしまうのだ(>o<)
このために放射性廃棄物は発生してしまうんだって。
使用済み核燃料のようなものは出ないから、そこはいいんだけどね。
もちろん、太陽からもたくさん放射線が出ていて、宇宙空間に出るとかなり被ばくすることが知られているのだ。
地球には磁場があるので、荷電粒子などはその磁場にとらわれて地球の周りをドーナツ状に囲み、地上には降りてこないのだ(ヴァン・アレン帯)。
大気による遮蔽効果も大きくて、飛行機に乗ると宇宙放射線による被ばく量が上がるのは大気が薄くなって、遮蔽が弱まるからだよ。
でも、その大気圏・磁気圏を通り過ぎてしまうと、トラップしてくれるものがなくなるから、もろに影響を受けることになるんだよね。
国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士はけっこう被ばくしているのだ。

話はそれてしまったけど、ヘリウムはもともと太陽の光の分光分析で存在が知られたのだ。
ヘリウムという名前もギリシア語の太陽「ヘリオス」から来ているんだよ。
その太陽光の中で発見されたスペクトルと同じスペクトルを持つ物質が地上の鉱物からも発見され、人類が手にすることになったのだ。
米国では、石油とともに不燃性のガスが大量に出てきて、それが後にヘリウムだってわかったみたい。
そこからヘリウムの生産が始まったんだよね。
今では他の地域でも生産が始まっているんだけど、新興国をはじめとして需要が伸びているので、ますます貴重になってきているようなのだ。
何はともあれ、米国での生産が早く落ち着けばよいんだけど。
それでも、日本としては、米国以外にちゃんと供給元をおさえておかないと。

2013/01/19

予選突破目指せ!

いよいよやってきましたセンター試験!
受験生は1月中旬にこれが控えているから、年末年始も気が気がじゃないんだよね(>o<)
寒くてカゼが流行しやすい季節だけど、受験生には体調管理を万全にしてがんばってほしいのだ。
それと、この時期は雪のせいで交通機関が乱れたりするから、それも不安なんだよね・・・。

このセンター試験、かつては共通一次と呼ばれていたのだ。
正式には、大学共通第一次学力試験と言ったそうなんだけど、国公立大学及び産業医科大学の志望者を対象に、全国の会場で共通の試験を実施して基礎学力を計るものだったのだ。
共通で実施される一次試験だから共通一次。
昭和54年(1979年)から平成元年(1989年)までの11年間実施されていて、その間毎年変更を加えつつ、平成2年(1990年)からは、「新テスト」こと大学入試センター試験に移行したのだ。

導入の背景としては、受験戦争が激化しつつある中、各大学も入試問題に趣向をこらし、難問・奇問が出題されだしたのだ。
すると、たまたま知っていた、たまたま相性がよかったなどの理由で、受験生の間に有利不利が大きく出てくることが問題視されてきたんだって。
たしかに、過去問対策とか、出題傾向とかを予備校でみっちりやってきたのとそうでないのとでは、学力の差にかかわらず、入試の突破という点では大きく違ってくるのだ。
そこで浮かび上がってきたのが共通のテストという構想。
フランスのバカロレアなんかがそうだけど、大学に入るために必要な基礎学力が十分にあるかどうかを確認するという発想なのだ。
日本の場合はそれが一次試験で、続いて各大学ごとの二次試験が待っているわけだけど。

共通一次の導入以前は、国立大学は一期校・二期校に分かれていて、それぞれ別の日程(3月の上旬と下旬)で入試を行っていたんだ。
受験生は一期校・二期校のそれぞれから1校ずつ受験できたわけだけど、旧帝国大学が一期校に集中していることや、そもそも一期校の方が早くに試験が行われることなどから、一期校が第一志望、二期校は滑り止め、的な固定化・序列化があったんだそうだよ。
もともとは首都圏・都市圏にある大学への受験生の集中を緩和させるための区別だったけど、かえってそれが受験戦争を悪化させている、という話になって、共通のテストで一次試験を行って、その結果(自己採点によるものだけど)を踏まえて一発勝負で打って出る方式が考え出されたというわけ。
でもでも、やっぱり一発勝負というのはきつくて、かえって受験地獄が深刻化することになり、最後の3年間は瞑想するかのように変更が加えられていったのだ。

二次試験をA日程、B日程、一部公立大学のC日程に分け、複数校の受験を可能としたり、共通一次の試験科目を見直したり、二次試験の出願を共通一次前にしてみたり、でもやっぱり共通一次後にもどしたり。
「猫の目」なんて揶揄されるほどころころ変わったんだって。
浪人生なんかだとわけがわからなかったろうね・・・。
最後の年には、試験日を前期と後期に分け、前期の合格者は後期を受けられない分離分割方式を導入したのだ。
これによって後期日程は定員を一部留保して二次募集をかけるような体制になり、事実上滑り止めはあるけど、1校受験に近い方式になったんだよね。

で、これまでの反省も含めてスタートしたのがセンター試験。
大きな違いは、私立大学もセンター試験の結果が利用できるようになったこと。
今ではけっこう使っている私大も多いよね。
学力試験はセンター試験に任せ、あとは面接や小論文で思考力や個性を見る、というような方式になってきたのだ。
自前で試験問題を作らなくてよいので、特に定員が少ない私大にはありがたいよね。
それと、外国語として英語以外も選択できること。
フランス語やドイツ語はもちろん、中国語とか韓国語もあるらしいよ。

センター試験や共通一次は、高校で履修する数国英理社の各教科の学習指導要領の範囲内で、奇をてらわず、基礎学力を試すような良問が求められるわけ。
しかも、過去の大学入試や予備校の模試の問題と重複しないことも暗黙のうちに求められているのだ(これはそれをやったことがある受験生が有利になるおそれがあるため。)。
しかも、選択した試験科目によって難易度が大きく変わってもいけないので、平均60点になるように作るんだそうだよ。
それでもやっぱり難易度に差は出てしまうので、あまりにも差が大きい場合は点数の補正をすることもあるのだ。
外国語とか、理科社会では毎年問題になっているよ。

共通一次もセンター試験も基本は選択式問題で、開始当初は誰でも鉛筆を握れば解ける、と言われたとか。
さすがに受験生が多いので記述式だと採点が大変だよね・・・。
ちなみに、数学だけは選択式でなく、数字の穴埋めになっているのでこの批判は当たらないけど(笑)
センター試験になってからはマークシートが導入され、機械で採点できるようになったのだ!
ところが、今度出てくるのはマークミスの問題。
解答のマークミスはいかんともしがたいんだけど、会場コードや受験番号などのマークミスは受験生の学力には直接的に関係ないとの教育的配慮から、受験生が同定できる範囲において救済措置が執られているんだって。
でも、それは手作業でどの会場のどの教室のどのあたりから集められた解答用紙かを確認しながらやるので、ものすごい手間みたい。
ま、その人の人生がかかっているかもしれないから、大事なことなんだけど。

最近では、センター試験にICレコーダーを使ったリスニング試験が導入されて話題になっているよね。
ま、悪い方の話で、レコーダーが不調で試験がうまくいかなかった、というのが多いんだけど・・・。
かつては校内放送を使ってリスニング試験をしていたんだけど、音質が会場ごとに異なるので聞こえづらい受験生がいたり、放送がうまくできなかったりと、トラブルは常につきものだったんだよね。
それを解放しようとしているんだけど、まだうまくいかないのが現状なのだ(>_<)
全国に相当数の会場があるから、まったくトラブルなく実施するっていうのは奇跡に近いよね。

というわけで、今日・明日とセンター試験が行われるけど、大きなトラブルなく終わってほしいものだね。
そして、新聞紙上で発表される試験問題をちらっと見つつ、まだ解けるぞ、とか、こんな問題わからない、とかもおもしろいよ。
あんまり真剣にやると自尊心が傷つくかもだけど(笑)

2013/01/12

唐土の鳥は病気を運ぶのか?

1月7日は七草がゆの日。
お説料理やおもちでつかれた胃を休めるため、また、冬場に不足しがちな青野菜を補うため、七草がゆを食べる日と言われているのだ。
いろんな習俗が集合した結果、江戸時代に庶民も含めて1月7日に七草がゆを食べるという風習になったようだけど。
これは将軍家が公式行事にしたのが大きかったみたい。

で、ちょうどこのころは寒の入りをしたところで、日本ではもっとも寒くなる季節・・・。
空気も乾燥しているし、カゼに注意したい季節でもあるよね。
そんなことも反映してか、七草がゆは食べるとカゼを引かないとか言うよね。
今ではあまりやる家庭はないと思うけど、かつては、「七草なずな 唐土の鳥が 渡らぬうちに とんとんとん」とか歌いながら七草をまな板の上でたたいたそうなんだ。
まさに、唐土の鳥が疫病を運んでくるので、その前に七草がゆを食べようというわけ。

鳥が病気を運んでくるというと、どうしても思い浮かぶのは鳥インフルエンザ。
基本的にはトリからヒトへの感染はまれだし、さらに、ヒトからヒトに感染することはまずないので、ニワトリなどの家禽の病気なんだけど、突然変異で病原性が上がってしまうと(高病原性鳥インフルエンザ)、一気にヒトの間にも広がりかねないので、注意を払っておくべきものなのだ。
ウイルス的にはヒトのインフルエンザとそんなに大きく違わないんだよね。
さらに、インフルエンザが史上初世界を駆け巡った「スペイン風邪」は、もとは鳥インフルエンザだったのでは、と考えられているらしいよ。
実際、世界的なパンデミックには至らないような毎年のインフルエンザの蔓延にしても、もとはトリやブタに感染を突然変異を繰り返していってヒトに強力に感染するウイルスになって上陸するんだよね。
いわゆる「香港A型」とか「ソ連A型」と呼ばれているのがこの経路をたどっているよ。

インフルエンザ自体は古代エジプトから知られていたようで、通常のカゼとは違って、症状が重い、感染力が強く広く流行するなどの特徴があるのだ。
もちろん、むかしはウイルスの同定とかはできないから、症状の記述と流行の具合といった病理的・疫学的な情況証拠からそう判断しているだけだけど。
日本でも、平安時代にそれらしい流行病(はやりやまい)の記述があるんだって。
でも、このころは流行するといっても局地的なもので、世界中が大騒ぎになるようなことはなかったのだ。

転換点は大航海時代以降の国際交流の拡大による世界の「縮小」。
ものや知識や文化の交流が一気に進んだんだけど、同時に、局地的な病気もグローバルになったのだ。
有名なのは梅毒で、コロンブス以降に一気に世界に広まっているんだよね。
もともとは毒性の弱い病気だったのに、新大陸と旧大陸が出会ったところで強毒性のものに変わり、それがわずか20年ほどで世界を駆け巡ったようなのだ・・・。
わずかな人数のスペイン人が中南米を征服できたのも、欧州人が持ち込んだ病気に現地人は耐性がなかったことも大きいと考えられているんだ。
いずれにせよ、いろんな病原体を世界で共有するシステムが確立されてしまったんだよね。

そんなのもあって、現代では検疫が厳しくて、アフリカや東南アジアに行く際は予防接種が必須だったり、日本に帰国するときにちょっとでもあやしい症状があれば検査を受けさせられたり、隔離病棟に入れられたり、とパンデミックを防ぐための手段が講じられているのだ。
天然痘は撲滅できたし、コレラや赤痢はたまに聞くけど大きく流行することはなくなったのだ。
これは大きな進歩なんだけど、インフルエンザはこういう仕組みではなかなか防げないのだ。

潜伏期間中にヒトが運んでしまうリスクもあるんだけど、問題は、ヒト以外が運ぶことなのだ。
ヒトの間で流行するA型のインフルエンザウイルスは、トリ、ブタ、ウマなどにも感染するもので、宿主ごとに毒性は異なるんだよね。
で、トリなら感染してもそんなに症状がひどくないウイルスが、人に感染する問い深刻な症状になる場合もあるのだ。
このA型ウイルスは特に突然変異が起こりやすいことも知られていて、宿主間を移動している間に感染力がきわめて強くなってしまったりもするのだ。
それで局地的な流行が発生するだよね。

で、それだけなら検疫でなんとか防波堤になれるんだけど、最初に話した高病原性鳥インフルエンザがヒトにも感染し、なおかつ、それがヒトからヒトへも感染してしまうような場合がさあ大変!
鴨や白鳥などの渡り鳥が感染し、海を越えてしまうと、パンデミックが発生する可能性があるのだ。
渡り鳥を検疫するのは不可能だから、インフルエンザに感染してそうなトリが発見されたら極力接触を避け、そのトリが感染しているのがどんなタイプなのかを見極めて事後的な対策を講じることしかできないわけ。
これがこわいのだ。

まさに「唐土の鳥が渡らぬうちに」七草がゆでも食べて耐性をつけるしかないね・・・。
この歌自体はそんなことを意識しているわけもなく、なんとなくどこから発生するかよくわからない病気は外界(=海外)から誰かが持ってくるのだろう、だとすると、なんか鳥が怪しいのではないか、くらいの話だとは思うんだけどね(笑)
これからもう少し寒い季節が続いて、インフルエンザ流行のリスクが高まっているから、自分でできる予防対策はきっちりとしておかないと!

2013/01/05

まつりごと

昨日、首相が伊勢神宮に参拝したのだ。
首相の伊勢神宮参拝は、佐藤栄作総理以降代々続けられているもので(途中村山富市総理だけは新年の参拝はせず)、通例は三が日の混雑を避け、仕事始めの1月4日に行われるんだよ。
これについては政教分離の観点から様々な意見があるみたい・・・。
一国の首相が特定の宗教行事に参加していいのかどうか、とか。
米国の大統領は聖書の上に手を置いて大統領に就任するための宣誓をするんだけどね(笑)

これと一線を画すのが、我が国の国家元首たる天皇陛下の祭祀。
日本国憲法においては、天皇は日本国の象徴で、内閣の助言と承認に基づいて国事行為(内閣総理大臣の任命、法律の公布、国会の召集などなど)を行うことになっているよね。
このほか、公的な行為として、国内各地への行幸、外国への公式訪問、園遊会の主催、国会開会式への臨席などがあるんだ。
ここまでは主に「政」の世界のお仕事だけど、一方で、明治以降、天皇には国家神道の主催者という「祭」の方の位置づけもあるので、私的行為として様々な祭祀を行っているのだ。
それが宮中祭祀と呼ばれるものだよ(宮内庁のHPでは「宮中のご公務など」と位置づけられているよ。)
午餐・晩餐の主催や新年祝賀・一般参賀なんかと同じカテゴリーなのだ。

戦前は祭祀についても天皇の公的な行為であって、皇室祭祀令という皇室令という旧皇室典範に基づく規則に基づいて挙行されていたのだ。
皇室が関与する祭祀は長らく途絶えていたものもあったんだけど、王政復古の理念の下、延喜式や大宝令などを再編して改めて整備したものなんだ。
天皇自らが祭祀を斎行する(=親祭)「大祭」と掌典長が祭祀を執り行い天皇が参拝する(=親拝)「小祭」があるんだ。
例えば、正月元日で言えば、四方拝と言って天皇が宮中三殿において伊勢の内宮・外宮に拝礼した後、四方の諸神(明治天皇陵、大正天皇陵、昭和天皇陵、武蔵国一ノ宮氷川神社、山城国一ノ宮上下賀茂神社、石清水八幡宮、熱田神宮、鹿島神宮、香取神宮)に拝礼する儀式を「親行」(=天皇自らが行う。)するのだ。
この大祭の後、掌典長の親行で宮中三殿で新年の祝賀を行う「歳旦祭」というのが続くよ。
正月3日には皇位の元始を祝ぐ元始祭が大祭として挙行されるのだ(皇室祭祀令上はこっちが新年最初の大祭で、四方拝は四大節のひとつで別格扱いだったのだ。)。
これに新年祝賀・一般参賀なんかもあるんだから、お正月からいそがしいんだよね。

現在、皇室とともに宮中祭祀を行っているのが掌典職と呼ばれる人たちで、この人たちは宮内庁の職員ではないんだよ。
戦前は宮内省の式部職に掌典部がおかれて祭祀を取り仕切っていたんだけど、戦後は政教分離の観点から、祭祀を司る掌典職は宮内庁から切り離され、天皇の私的行為を手伝う、「私的使用人」の立場になったんだ。
皇室の歳費のうち、内廷の皇族(皇后、太皇太后、皇太后、皇太子とその家族、未婚の皇子女)の日常の費用などをまかなうために内廷費というのが計上されていて、この中から掌典職の人件費を含む宮中祭祀にかかる費用が捻出されているのだ。
ちなみに、内廷費は一度皇室に支払われたら宮内庁の管轄外になる「渡しきり」のお金なので、余ったとしても国庫に不用額が返還されるようなものではないんだって。

最近では今上天皇陛下の健康問題から、宮中祭祀の一部が宮中三殿ではなく御所で執り行われたりすることもあるけど、今上天皇陛下はかなり祭祀にも積極的で、代理を立てることはしないんだよね。
明治、大正の時代は「親祭」の大祭といっても代理が立てられることが多かったみたいなんだけど、昭和天皇以降は積極的に参加されるようになったらしいのだ。
そういう意味では、昭和天皇以降宮中祭祀の制度が確立したのかもしれないね。
儀式の詳細は不明なことが多いけど、古代から継承されていうる儀式もあるみたいだから、伝統・文化というだけでなく、歴史学的にも重要である可能性が高いんだよね。
個人的にはこういうのは大事にしていきたいのだ。