2014/12/27

Let it wet!

最近は傷跡が残らずに早く治る、という絆創膏があるのだ!
商品名で言うと「キズパワーパッド」とかがそう。
これまでのシールにガーゼがついているものとは違って、見た目はのっぺりしたシールなんだよね。
傷口に貼ると、傷口からしみ出てきた体液を吸って、白いふくらみがぽこぽこ現れるのだ。
なんだか不思議な感じのものだよね。

この原理は、20世紀の終わり頃から浸透してきた湿潤療法というもの。
従来の創傷の治療は、とにかく消毒して、傷口をしっかり乾かして、と対処するんだけど、それを根本から否定して、消毒せずに水できれいに洗うだけで、かつ、適度に保湿して決して乾かさない、というもの。
創傷の治癒には繊維が細胞などが増殖して傷口を埋めていくことが大事なんだけど、そもそもそういう細胞の増殖は乾燥しているところではなく、細胞培養と同じように水分があるところでないと起きない、というところが発想の転換点なんだよね。
つまり、傷口に細胞が培養液に浸っているような状況は作り出せれば、そこで増殖が進んで、治癒も加速できるということなのだ。

生体機能としては、傷口には血小板が集まって、それが固まって「かさぶた」の形でふたをし、内部の乾燥を防ぐとともに、外からの雑菌や異物の侵入を防いでいるのだ。
でも、かさぶたの場合は、どうしても傷口に痕が残ってしまうんだよね・・・。
それと、かさぶたの場合は傷口が固く固定されるので、治癒に貢献する細胞の動きが制限されるため、治りも少し遅いのだ。
自然に直すという意味ではなかなか優れたシステムなんだけど。

このかさぶたの代わりに、傷口表面を覆って、その下で保湿した上で自然治癒力を高めるのが湿潤療法。
出血が止まった後、傷口からは薄い黄色の体液(滲出液)が出てくるけど、これが治癒力の鍵で、これが傷口を覆って自由に動けるようにしておくことが大切なのだ。
かさぶたでふたをしない分、滲出液が傷口表面も覆って、傷跡が残りづらく皮膚が再生するのだ。
最初に不純物を除いておけば、白血球などの自然免疫であまり感染症を気にする必要もなく、リジッドに傷口にふたをする必要はなくて、外気に触れず、乾燥させないようにすればいいんだよね。
ただし、動物にかまれた、さびた釘や枯れ枝なんかで深く傷ついた場合は、狂犬病や破傷風のおそれがあるので、しっかりと医師の診断を受けないとダメだよ。

消毒液を使わないのもみそ。
消毒液は雑菌も殺すんだけど、増殖して皮膚を再生しようとしている細胞にも悪影響が出るのだ。
それで治癒が送れる原因にもなるわけ。
自然治癒力でなんとかなる範囲なら、消毒液をつけ続けない方が治りが早くなるんだよ。
しみないし、一石二鳥なのだ。

この湿潤療法を簡便にやるのがラップで包むラップ療法。
傷口をきれいに洗い、色泌尿ラップをまくだけ。
場合によっては乾燥を防ぐためにワセリンを塗ったりすることもあるんだって。
で、適宜ラップを交換しながら、傷口を決して乾かさないように、ラップの下で滲出液が行き渡るようにするのだ。
しばらくすると、薄い皮膚が復活するので、その時点でラップを外すんだよ。
治る直前はかゆみも出てくるけど、がまんがまんで傷口に触れないようにしないと痕が残るのだ。
でも、かゆみがあまりにも強い、かぶれてきた、なんて場合は問題が生じている可能性もあるので、医師の診断を受けた方がよいみたい。
また、化膿した場合もすぐに中止して、きちんと消毒した方がよいよ。

家庭用にもっと気軽に湿潤療法をできるようにしたのが、新しい絆創膏。
この場合は、ポリウレタンのフィルムの下にハイドロポリマーというのがあって、これが滲出液を吸収して膨潤するのだ。
湿った状態のまま傷口にソフトに密着するので、滲出液の治癒力は妨げられないで、保湿できるんだ。
膨潤したポリマーが白いふくらみとして外から見えているんだけど、これが落ち着いてくると治ってきた証拠。
かゆみも治まって、ふくらみも収まってきたら治癒完了なのだ。
これはラップよりもさらに傷口を閉塞環境に置くので、難しい言葉では「閉塞性ドレッシング剤」というのだそうだよ。

この絆創膏は、もともとはスウェーデンの軍隊で使われ始めたんだって。
1985年に足にできたまめや靴擦れの治療に使われ始めたんだとか。
その後開発が進み、まずはスポーツショップでアスリート用の商品として出たのだ。
家庭用で売り出されたのは21世紀に入ってから。
わりと高価なものだけど、けっこう普及しているよね。
毎日お風呂に入るたびに従来の絆創膏を交換していたときより確かに、早く、きれいに治るし。
軍隊での最初の利用のように、いつまでも傷口がじゅくじゅくするような創傷には効果的なのだ。

2014/12/20

票を読め、動向を読め

総選挙が終わったのだ。
事前の報道でいろいろ言われていたけど、選挙結果はかなりの精度で予測されていたよね・・・。
そして、各局の選挙特番でも、開始と同時に発表される予想議席数は大きく外していないのだ。
いやはや、すごい世の中だ。
この予測の精度向上に大きく貢献しているのが出口調査なんだよね。

出口調査をする前は、電話や街頭アンケートによる世論調査や、各種団体・組織の支持表明の有無なんかを参考に予測をしていたんだよね。
で、その中でも一番大事なのは、投票締め切り後に各投票所で行われる票の仕分け作業の観察だったそうなのだ。
もちろん投票用紙は一票一票数えていくんだけど、開票して投票箱を開けた後、まず誰に投票されているのかで用紙を大まかに山に分けるんだって。
その後に各候補者ごとに何票あるか数えていくのだ。
で、よく開票と同時に「当確(当選確実)」が出ることがあるけど、これは圧倒的に強い候補者がいる場合、この「山分け」の作業で、まさに「数えるまでもなく」得票数が勝っていることがわかるからなんだって。
中に入って見せてもらうわけにはいかないので、双眼鏡とかでのぞいているらしいよ。

これに新たにツールとして加わったのが出口調査。
名前のごとく、投票を終えた人を捕まえて、どこに投票したかを聞き出す調査だよ。
でもでも、全部の投票所で調査するほど人件費をかけられるわけでもないので、当然のことながら、テレビの視聴率調査のような標本調査を行っているのだ。
まずは調査を行う投票所を抽出し、さらに、その投票所で投票した人の中で一部の人の声をかけるのだ。
地方の選挙区によっては投票者が少なすぎて統計調査に使えない投票所もあるので、そういうところをまず除外し、かつ、特定の支持者層・支持団体が多く占めている地域というのもあるので、そういうのも加味しながら選ぶんだって。
完全な無作為抽出ではないけど、逆にこうした方が精度はよくなるのだ。

声をかけるときは、一定の時間間隔で声をかける、或いは、何人ごとに声をかけるなど、こっちはできるだけ無作為な抽出をするみたい。
でも、高齢者ばかりに聞いてもバイアスが出るし、男女比なんかも影響するから、実際には年齢層、性別なんかも加味しながら声をかける人を現場の判断で決めているのだ。
ボクが投票に行く投票所では時々調査が来ているけど、なかなか声をかけてもらえないんだよねぇ。
しばらくあたりをうろついたりもしているんだけど(笑)

サンプル数は決して多くないんだけど、事前の世論調査・電話調査や、さっきの開票後の山分けの様子の観察なんかと合わせて総合的に判断するので、かなりの精度で予測ができるようになったんだよね。
出口調査の方法自体も洗練されてきているので、理想的な無作為抽出による調査と比べてそんなに誤差が大きくないとも言われているよ。
ただし、最近増えてきている「期日前投票(きじつぜんとうひょう)」の結果は反映できないという欠点はあるんだ。
もともと期日前投票は何が何でも一票を投じる、という固い決意の人が行うもので、そうなると、特定の政党・候補者を支持していたりする場合があるので、当日の投票所での投票行動と傾向が異なると考えられているのだ。
実際、事前に誰に投票するか決めずに行って、その場で判断することもあるよね。

とは言え、当日の票読みにおいては極めて有用なツールであることは明らかで、だからこそ新聞、テレビ、マスコミ各社は手間とお金をかけてやっているんだよね。
「当確」を早く出すとこにどこまで意味があるかは正直よくわからないけど、当日開票の選挙報道では速報性が重視されがちなのだ。
テレビ東京のように、選挙特番というコンテンツ自体をおもしろくするという工夫も出てきているけどね(笑)
ただし、新聞紙面は締め切りの関係で開票が終わるのを待っていられないという事情もあるから、どのみち精度よく数字を出すには必要な調査なんだよね。

で、完全ではないにしても、かなりの精度で投票行動のトレンドがわかってしまうので、原則として出口調査の結果は投票終了後にしか出さないことになっているのだ。
途中段階ではおおようするとその後の投票行動に影響を与える可能性があるから。
例えば、あの候補は僅差で負けそうだから動員をかけろ、とか。
でも、最後の最後に集計していたんじゃ投票終了後に予測を出せないので、基本的には随時データを送り、集計はしているみたい。
その部署では、選挙のトレンドがリアルタイムでわかるんだよね。
ちょっと興味あるかも。

2014/12/13

燃やさないであたためよう!

東京でも一気に寒くなってきた!
我が家でもいよいよエアコンの暖房モードがフル活動。
床暖房もあって、ものすごくあたたまるんだけど、電気代がかかるんだよねぇ。
ここぞという寒さの時にしか使えないのだ(笑)
そんな中、ちょっとほしいのがオイルヒーター。
やっぱり電気代はかかるけど、持っている人に聞くと、いいらしいんだよね。

人類の伝統的な暖房器具はなんと言っても火が基本。
燃焼の熱であたたまるのだ。
たき火から始まって、暖炉、石炭ストーブ、石油ストーブ、ガスストーブと燃料は変わっても現在まで連綿と続いているのだ。
でも、燃焼系の暖房器具の最大の欠点は換気が必要なこと。
部屋の中の酸素をどんどん消費していくので、換気が不十分だと一酸化炭素中毒になるおそれがあるのだ(>o<)
なので、せっかく部屋があたたまっても、定期的に換気する必要があって、窓を開けて冷たい空気を部屋に入れないとダメなんだよね・・・。

その欠点がないのが非燃焼系の暖房器具。
例えば、電気こたつや電気ストーブなんかは電気を熱エネルギーに変換するものなので、二酸化炭素は発生しないのだ。
ただし、燃焼系のものに比べるとコストが高めなんだよね。
日本の場合はそもそも電気料金が高いし、高温多湿な夏に備えて住宅は密閉性は低めで通気性が高めに設計されているので、あたたまりにくいというのもあるのだ。
転倒したとき、必要以上に加熱したときなどに自動的に電源が落ちるようになったので安全性は向上しているけど、それでも事故の原因としては電気ストーブが一番多いんだって。
本来は1mくらい離れないといけないんだけど、近づきすぎてやけどしたり、火がついたりということみたい。
燃焼させているストーブに比べて油断しやすいってことなのかな?

欧米のセントラルヒーティングで伝統的に使われているのは、温水又は熱い水蒸気をパイプラインで各部屋のラジエーターに通す方式。
ラジエーターからの輻射熱と空気の対流で部屋をあたためるのだ。
石造りで密閉性の高い欧米式住宅では効果的なんだよね。
各部屋の調整はラジエーターのところにある調節弁で温水又は水蒸気が入ってくる量でやるんだけど、そんなに調整がきくわけではないので、ほぼオン・オフのみだよね。
さらに、やっぱり部屋があたたまるのに時間がかかるのもあるのだ。
通常はボイラー室で重油なんかの安めの燃料で熱を発生させ、その熱を温水又は水蒸気として配分するという仕組みだよ。
日本でも古いホテルとか公共施設で見かけることもあるかな。

で、ボクが気になっているオイルヒーターは、電気によって密閉容器内の難燃性の油をあたため、その輻射熱と空気の対流で部屋をあたためるもの。
センタらルヒーティングの方式を部屋別に導入するに当たっての課題は、ラジエーターと一体型の本体でこの泊とにできることと、ボイラー室のような熱発生部もくっついていないといけないことの2つ。
なので、水を使うと蒸気が発生して密閉容器内では扱いにくいので、そこを油に代えるとともに、熱源も燃焼熱ではなく、電熱変換にしてあるのだ。
部屋の中での効果はセントラルヒーティングと同じ、じんわりとゆっくりあたたまってくる感じ。
ラジエーター自体もさほど高温にはならないので、老人や子供にも比較的安全だと言われているのだ。
でも、やっぱり密閉性が高くないと全然あたたまらないんだよね(笑)

調べてみてはじめて知ったんだけど、あたたまりにくい、ランニングコストが高いというほかにもデメリットがあったのだ。
それは、廃棄が大変ということ・・・。
中の油は交換の必要がないんだけど、そのために、油を抜くような構造になっていないのだ!
その油のために粗大ゴミとしての回収を断られるケースもあるそうだよ。
この理由もあって、単に捨てられるのではなく、リサイクルショップに出回ることが多いそうなのだ。
こうなると、やっぱり導入はもっとよく考えないとね、と思ってしまって、いつの間にか冬が終わるんだよね(笑)

2014/12/06

黄色いじゅうたん

12月になって急に冷え込み、青々としていた街路樹のイチョウも一気に黄色く色づいたのだ。
その後に雨が降ってまたまたあっという間に葉が落ち始めているけどね・・・。
で、道にはたくさんイチョウの葉が落ちているんだよね。
これが掃除をしてのけないと、いつまでたってもそのままあるのだ。
枯れ葉って水に濡れると特にすぐに発酵して腐っていくものと思っていたんだけど、どうもイチョウは事情が異なるようなんだよね。

調べてみると、多くの落葉樹の枯れ葉は土壌中の昆虫やダニ、環形動物(ミミズなど)、カビ、バクテリアなどの分解者により腐植土になるんだけど、イチョウの葉はマツと同様に腐植土になりづらいんだって!
明確に理由が書いてあるものを見つけられないんだけど、いくつかの要因が絡み合っているみたい。
まず物理的な特徴として、イチョウの葉にはケイ素が多めに含まれていて葉っぱが硬い、というのがあるみたい。
枯れ葉は乾燥状態だとちょっと触っただけでぼろぼろとくずれるイメージがあるけど、イチョウの黄色い葉って丈夫なんだよね。
道に落ちているイチョウの葉もかなりの確率で形状をとどめているし。
ぬれてから踏まれても、ペースト状になることはまれで、乾くとさらさらの砂状になるのだ。
こういう硬い葉っぱは分解者の食物になりづらいんだよね。

化学的な特徴としては、フラボノイドやテルペノイドなどの親油性の成分を多く含んでいるってことがあるみたい。
イチョウの葉エキスっていうのが健康食品として売られているけど、こういう物質ってヒトの体内でなんらかの生理活性を示すんだけど、当然他の生物にも影響があるんだよね。
特に、抗菌物質として働いて、カビやバクテリアの増殖を抑えるような働きがあることが多いのだ。
もともと油分が多いと水がしみこまないので発酵が進みづらいというのもあるんだけど。
ちなみに、イチョウの葉にはギンコール酸というアレルギー物質も含まれているので、自分で葉っぱを集めてきて煮出したりしてお茶にして飲むというのはやめた方がいいよ!
国民生活センターも警告しているのだ。
売られているものでもあやしいものがあって、十分に除去できていないものがあるから注意が必要なんだって。

ちなみに、マツの葉も同じようなもので、やっぱり油分が多く、硬いのであまり腐植土には向かないのだ。
確かに松の木の下に落ちている枯れた松葉っていつまでもほぼそのままの形でふかふかと地面を覆っているイメージがあるよね。
一方で、この松葉は油を多く含むが故に火がつきやすいので、かまどなどに火を入れる際には着火剤として使われていたのだ。
無理に堆肥にせずとも用途があったんだよね。
でも、今ではただただゴミとして処理せざるを得ないので、細かく刻んでから油かすなどと混ぜて発酵させ、堆肥化させるなんて取組を自治体レベルでやっているみたい。
イチョウの場合も落ち葉を集めている場合があるけど、あれはどうしているのかな?
焼却処分にしているようにしか見えないから、松葉よりもさらに腐植土にするのは大変なのかも。
1年以上かければ腐植土にならぬでもない、という感じらしいんだけど。

もともとイチョウやマツは陽樹といわれるもので、生育に多くの日光を必要とする植物種なんだよね。
生体維持のための光合成量が比較的多いのだ。
なので、イチョウやマツは森を形成することはなく、林にしかならないんだよね。
これに対比する概念が陰樹で、こちらはさほど日光がなくても生育できるので、鬱蒼とした森の中の木漏れ日でも生育できるのだ。
草地に木が生え始めると最初は陽樹が増えていくんだけど、徐々に密度が上がってきて得られる日の光が少なくなってくると、陰樹が優勢になり、やがて陰樹をメインとした森になっていくのだ。
草地に生えることができるだけあって、陽樹の多くは乾燥や低栄養に強いという特徴があるんだよね。
なので、街路樹なんかにも向いているわけ。
だとすると、自分の落とした落ち葉が腐植土になって栄養になる、というサイクルを必ずしも必要としないので、落ち葉が素早く分解されてまた自分の栄養として戻ってくることよりも、葉の中に有効成分があってそれが虫食いを防ぐとか乾燥を防ぐとかしてくれていた方が有利そうなのだ。
そういう自然淘汰の結果なのかもしれないね。

とにもかくにも、物理的にも、化学的にも、生物学的にも、イチョウの葉は容易には分解されないようで。
ということは、放っておくといつまでもそのまま残るので、これがぬれると滑って危ないのだ(>o<)
街路樹のイチョウの落ち葉はちゃんと掃除して片付けないと行けないってことだね。
後は風任せでどこかに吹き飛ばされるのを待つだけか(笑)

2014/11/29

川口「はやぶさ」探検隊

いよいよ小惑星探査機「はやぶさ2」の打上げが迫ってきたのだ。
予定どおり打上げが行われれば、明日の昼過ぎには宇宙に飛び出すんだよね。
そして、東京五輪開催と同じ2020年にまたもどってくるんだ。
前の「はやぶさ」は2010年にもどってきたから、その10年後にまた宇宙から小惑星のかけらがデリバリーされるかもしれないというわけ。

前回の「はやぶさ」はよく「小惑星探査機」と言われるけど、実験計画上は「工学実証機」で、イオンエンジンや化学スラスタなどの工学技術が長期にわたる新宇宙探査で本当に使えるかどうかを試す実験だったのだ。
その意味では、小惑星イトカワの性質を光学的手法で分析したり、そのかけらをお持ち帰りしたりした理学的な成果は「エクストラ・サクセス」ということなんだよね。
「はやぶさ」はのミッション名はMUSES-Cだけど、これはMu Space Enginnering Spacecraft Cの略で、ミュー・シリーズの固体ロケットで打ち上げられる宇宙工学実証衛星のCということなんだ。
ちなみに、MUSES-Aは日本の科学衛星ではじめて月探査をした「ひてん」、MUSES-Bは傘状の特徴的なアンテナを持つ電波天文観測衛星の「はるか」だよ。
「ひので(SOLAR-B)」の打上げでミュー・シリーズ最後のロケットだったM-V(ミュー・ファイブ)が退役したので、「はやぶさ」が最後のMUSESだったのだ。

今回の「はやぶさ2」は「はやぶさ」が実現した無人探査機による地球近傍小惑星探査の実績を踏まえ計画された正真正銘の小惑星探査計画で、そのために「はやぶさ」で発生した不具合などの対策がしっかり盛り込まれ、確実に行って帰ってきて、かつ、高確率でサンプルを持ち帰れるように工夫がされているんだ。
ほぼ同型機を打ち上げるわけではないんだよ。
見た目的にも、「はやぶさ」は大きなパラボラアンテナを一つ背負っていたのに対し、「はやぶさ2」は平面型の2つのアンテナを持っているんだ。
アンテナ一つが「はやぶさ」、2つが「あやぶさ2」と覚えるといいよ(笑)
2つになってもパラボラアンテナより平面アンテナより軽く、熱も集めないのでメリットが大きいらしいよ。
それに、今回は高速通信ができる高周波数帯に対応したアンテナがあるので、小惑星探査をした結果をより早く地球に送れるんだって。

他にもいろいろ進化しているんだけど、何より、打上げロケットがM-VからH-IIAになったことで、ちょっとだけ重くすることができるようになったのだ。
なので、搭載をあきらめていたようなミッション危機も積み込めるようになったんだよね。
燃料費込み込みでの衛星の重量は「はやぶさ」が510kgで、「はやぶさ2」が600kgと約2割増。
さらに相乗り衛星もあるしね。
大きさも、縦×横は1m×1.6mで同じなんだけど、奥行きは1.1mから1.25mになっているのだ。
前回は投下に失敗してしまったローバー(MINERVA)についても後継機が搭載されるんだけど、今度はMINERVAII1とMINERVAII2と2種類。
しかも、ドイツの小型着陸機(MASCOT)も同時に搭載されるよ。
やっぱり重量的に余裕があるんだねぇ。

「はやぶさ2」に一番期待される「サンプル・リターン」についても更なる工夫があるのだ。
前回は実は弾丸の射出には失敗していて、たまたまサンプラー・ホーンの中に入り込んだほこりを持ち帰ることができたんだよね・・・。
今回は、サンプラー・ホーンの口のところに「返し」をつけて、一度吸い上げた砂礫がホーン内にとどまるような工夫がなされていて、より確実にサンプルを採れるようになっているんだ。
さらに、サンプル格納庫の密閉度も上げて、小惑星表面にある希ガスなどの揮発性ガスも持ち帰るような構造になっているんだって。

そして、「はやぶさ2」の大きな特徴として、大きな銅の塊を高速で小惑星に衝突させ、人工的にクレーターを作った上で、そのクレーターからもサンプルを採取するというのがあるんだ。
タッチダウン時に弾丸を射出して舞い上がった砂礫を吸う、という方式だと小惑星表面のサンプルしか採れないわけだけど、クレーターを作ることで小惑星の内部からもサンプルが採れるようになるのだ。
そんなに深いところからはとれないけど、小惑星の表面では「風化」が起こっていると考えられているので、その「風化」が起こる前の小惑星の組成に関する情報が手に入る可能性があるんだ。
これは小惑星の探査という観点では大きな進歩だよね。

今回探査する小惑星の1999JU3はC型小惑星で、炭素系の物質を主成分としていると考えられているので、宇宙における生命の起源についての手がかりが手に入る可能性もあるんだ(隕石に付着していた有機物から生命が・・・、という宇宙生命起源説もあるんだよね。)。
イトカワはS型小惑星で岩石を主成分とする小惑星だったので、そもそも太陽系の成り立ちがどうだったか、という手がかりが得られたわけだけど、今回はもっとスリリングなことがわかるかもしれないんだ。
とにもかくにも、まずは打上げが成功して、無事に旅立ってもらわないと。

2014/11/22

冬の蝸牛

テレビを見ていて知ったんだけど、カタツムリって冬眠するんだね。
梅雨の高温多湿な時期にしか見かけないイメージだけど、かといって、1年のライフサイクルで生きているとも思えないので、なんだか納得。
そういえば、似たような生物のタニシも、冬の間は側溝や田んぼの縁にへばりついているのは見かけたことがあるから、同じようなものなのかもしれないね。
カタツムリの場合は、植物の陰とか、枯れ葉の下とか、多少湿気のあるところにかたまってじっとして過ごすんだそうだよ。
飼育する場合は土を引いてあげて、そこに隠れられるようなもの(例えば枯れ葉など)を置いておくと、その陰で冬眠するみたい。

秋のうちに食べられるだけ「食いだめ」して、体の代謝を極力下げるように寝て過ごすほ乳類の冬眠と違って、変温動物の冬眠は事実上体温が低下することによる活動の停止なのだ。
太陽光などの外的要因で活動に必要な熱を得る仕組みで、常に自分で活動に必要な熱を産生しているわけ出ないので、そうなる前にきちんと準備をしておかないと「座して死を待つ」のみになってしまうんだよね。
逆に、ほ乳類や鳥類のように恒温動物の場合は、体温を維持するために最低限の熱量の産生が必要となるため、基本はものを食べ続けないといけないのだ。
ワニや蛇は数ヶ月に一度食事をすればよいのだけど、ほ乳類はそうはいかないんだよね(>o<)
常に動ける代わりに燃費が悪いのだ。

カタツムリの場合は、外気温が下がってきて活動が鈍くなってくると、冬眠場所に移動しつつ、殻にこもって、その口のところに粘液で膜をはるようなのだ。
この粘液は、固まるとセロファンや障子紙のような半透明の質感になって、呼吸に必要な空気の出入りができるように細かな穴が空いているんだって。
一方で、乾燥を防ぐ必要もあるのだ。
こういうとき生物の作る膜とかって、自然淘汰の末にバランスのとれたものができているんだよねぇ。

カタツムリの殻って茶色くて、緑の葉っぱの上では目立つんだけど、冬眠中に土の上や、木の陰、枯れ葉の下にいるとこれがよい保護色になるのだ。
殻のいろってなかなか変化させづらいから、活動が鈍くなって一番危ないときに備えた色になっているんだね。
こういうところも感心するばかりだよ。
冬にカタツムリを見かけない理由は、目には入っているけど認識できていないっていう要素も大きいのかも。

そうなると、殻がないナメクジはどうなんだ?って気になるよね。
ナメクジの場合は、基本は冬眠という形で一カ所にじっとしていることはないみたい。
確かに、殻にこもることができないから、じっとしていると乾燥して死んでしまうのだ・・・。
で、どうしているかというと、あたたかい土の中にもぐっているんだって。
ただし、活動自体は低下しているので、ナメクジによる農業・園芸の被害は減少するのだ。
春先にあるとさっそく花芽をかじったりするらしいけど。

カタツムリ、ナメクジともに湿気が必要なので乾燥が苦手なんだけど、カタツムリの場合は、生存上もうひとつ重要な要素があるのだ。
それは、殻を作るためのカルシウムの摂取。
冬眠するにも殻は重要なので、カルシウム量が十分でないと生きていけないんだって。
人工飼育する場合は、卵の殻やコンクリート片など、カルシウム源を一緒に入れてあげないといけないのだ。
街中ではコンクリートからカルシウムを摂取するんだろうけど、もともとの野生のカタツムリの場合は石灰質の岩とかから摂取していたのかな?

積極的に見つけようとは思わないけど、枯れ葉の下とかを注意深く見てみると、冬眠中のカタツムリが見つかるかも。
でも、同じような場所にナメクジもいる可能性があるから、嫌いな人は注意しないとね(笑)
殻のあるなしくらいしか違いがないはずなんだけど、カタツムリはよくてもナメクジはダメっていうのはよくわることだから。
持ち手である殻がないというのは手に取る上では重要だけどね。

2014/11/15

三日、本か

前から不思議に思っていたんだけど、なぜとび職の人たちは太もも部分がだぶだぶになっている「ニッカポッカ」をはいているんだろう、というのが気になって調べてみたんだよね。
正直たいしてよくわからないんだけど(笑)、なんとなく見えてきたものはあるのだ。
少なくとも表面上は実用性は説明できそう。

今ではとび職の人たちなどのガテン系職人さんの作業服としておなじみになっているニッカポッカだけど、もともとはニッカボッカーズという、すそがくくられた膝下丈の半ズボンのことなのだ。
欧米では、ゴルフや乗馬、野球などのスポーツをする際に着用されるんだよね。
すそがじゃまにならないというのが一番のポイント。
多くの場合は長めの靴下(ストッキング)と合わせるんだよね。

すそがじゃまになる、という点では、帝国陸軍兵士がすねにゲートルを巻いていたのも同じ理由。
海外の将校の軍服のようにブーツの中にすそが入れられればこの問題はないんだけどね。
欧米ではすでにストッキングもあったので、巻くのにがかかるし、巻き方にこつがいるゲートルのようなものは使っていなかったのだ。
戦争時はこの差も大きくて、いったん休憩してゲートルを解いてしまうと、また巻直しに時間がかかるので、欧米の兵士に比べて初動が遅れたようなんだよね・・・。
終戦近くになると一般人が徴用されていたからゲートルを巻くなんてことには当然慣れていなくて、この影響はより大きくなっていたんじゃないかな?

日本の職人さんのはいているニッカポッカは、多くの場合地下足袋と合わせているよね。
足首まわりはすっきり、太もも部分はだぼだぼ、という感じなのだ。
江戸時代だと、職人の作業着のボトムスは股引が一般的だったようなので、足首まわりがすっきりしているのは共通。
袴じゃすそが広すぎるからね(笑)
かといって着流しじゃ動きづらいから、股引になるのだ。
ここからの相違点はだぼだぼ部分。
そこに何か意味があるかどうかということだよね。

一般に言われているのは、まずは足が上げやすくなるという効果。
ジーンズなんかは特にそうだけど、タイトに密着していると生地が引っかかって足の可動域は影響を受けるよね。
これは飛びの職人さんからすると大きなメリットかも。
でも、木綿の股引のようなものであれば、よほど汗をかいてぴたっと肌に張り付かない限りは可動域に影響が出るほどじゃないと思うけど。

で、次に出てくるのは目視しなくてもだぼだぼしている布の部分がまわりに触れることで幅感覚がつかめるという点。
高所で作業しているときにいちいち下も前も見ながら行動できないから、太もものだぶついているがまわりに引っかかるかどうかで、自分のまわりの環境がどうなっているかつかめるということなのだ。
また、釘などが飛び出ていても、だぶついている部分が引っかかればすぐにはけがをしないというのもあるみたい。
タイトなものだと、布がまわりに触れた時点ですでに幅的な余裕度はなくなっているし、釘などが飛び出ている場合はもうけがをしているよね・・・。

最後のは本当かな?、と思うけど、風の抵抗を受けやすくなるので、風の動きをより敏感に察知できるというのも。
強風が吹いたらそれだけ力を受けやすいから高所から落ちるリスクも高まるような気がしてならないんだけど。
もともと落ちるような風が強い日は高所には昇らないから、ちょっと風が強くなったかどうかを察知するのに役立つ、ということなのかな。
地平面と高所だと風の吹き方も違うから、高所で作業している人のニッカポッカが風でたわんでいたら、高所は風が強そうだ、というのはわかるけどね。

そんなこんなで実用性はありそうなんだけど、それだけじゃないような気がするんだよね。
それは、やんちゃな生徒が着用するボンタンとの類似性なのだ。
イメージ的にとび職になるような人はやんちゃだった確率が高いように思うんだけど、改良学生ズボンのボンタンとニッカポッカって似ているよね?
そういうのが多少なりとも影響しているんじゃないかなぁ、と思ってしまうのだ。
検証はできないんだけど。
ちなみに、ボンタンはなんでああいう形状なんだろうね?
ライオンのたてがみとかと同じで、自分を大きく見せようとしているのかな。

2014/11/08

次は22世紀

11月5日は世にも珍しい「二度目の十三夜」だったのだ!
ちまたでもミラクルムーンとか呼ばれて話題になっていたんだよね。
東京は残念ながらくもりがちの空だったのでくっきりとは見えなかったけど・・・。
それでも、おぼろげには見えたかな。

もともと十三夜というのは日本独自のものだそうで、旧暦8月の満月である十五夜(中秋の名月)にタイして、旧暦9月に設定されているものなのだ。
十五夜の月見は中国文化圏で広く行われているんだけど、なぜか日本では十五夜と十三夜の両方の月見をする風習なんだよね。
十三夜の方は「後の月」と呼ばれ、ちょうど秋の収穫の時期にも重なって食べ頃の大豆や栗を供えたので、「豆名月」や「栗名月」なんて呼び名も。
ちなみに、中秋の名月の方は里芋を供えることがあるので、「芋名月」とも呼ばれるのだ。
なんか芋とか栗とかほくほくしてそう(笑)
あとかぼちゃがそろえば、「いもたこなんきん」で、女性の好物がフルセットになるのに!

今回二度目の十三夜が来たのは、閏月が9月に入ったため。
新暦11月5日が旧暦閏9月13日になったからなのだ。
日本の旧暦は太陰太陽暦と言われる暦法で、原則として月の満ち欠けのサイクル(朔望月=29.53日)をもとに1ヶ月を設定し、それを12回繰り返して1年とするもの。
周期が29.53日なので、30日ある大の月と29日しかない小の月をそろぞれ6回ずつ入れるんだよね。
でも、これだと1年が355日になって10日ほど足らないので、暦と季節がずれていくのだ・・・。
そこで、3年に1度くらいの割合で「閏月」を挿入して、1年を13ヶ月にして調整するのだ。
実際には、太陽暦の1年(365.2422日)-太陰太陽暦の1年(平均朔望月29.53日×12=354.36日)=10.8822日で11日弱ずれていくので、3年に1度だと入れ過ぎで、19年に7回くらいがちょうどいいんだそうだよ(10.8822×19÷7=29.5374)。

すでに太陽暦になれた現代人にしてみると、大の月と小の月って年ごとに代わることはないけど、太陰太陽暦の世界では、どの月が大の月になるのか、小の月になるのかは毎年代わるし、どこに閏月を入れるのかも毎回代わるのだ(新月の日が1日=朔日になるように大の月と小の月を調整する必要があるんだよね。)。
これは季節の巡行に合わせて暦を調整する必要があるため、季節の巡行は二十四節気などの太陽の公転を基準とした指標(太陽の黄道上の一を二十四等分したもの)を参考に、立春立夏立秋立冬などが違和感のある月に入らないようにするんだ。
なので、暦(カレンダー)は誰もが作れるものじゃなくて、政府が公式に作るものとなるのだ。
中国では各王朝が定めていたし、日本でも江戸時代は幕府が自ら天体観測などを行いつつ調整して暦を定めていたのだ(以前は中国の暦をそのまま輸入しているだけだったことも。)。
ちなみに、太陽年との差分を補正する太陰太陽暦だとこのように複雑になってしまうんだけど、季節と月の関係を一切無視して月の満ち欠けだけで暦を定めるイスラム暦のような純粋な太陰暦の場合は大の月と小の月が交互に来るだけになるんだよね。
ただし、イスラム暦9月に設定される「ラマダーン」はどんどん季節がずれていくので、夏だったり冬だったりと一定しないのだけど。

今でも太陽や月の観測と、それに基づく二十四節気の設定や月の朔望の情報提供は国立天文台でやっているんだよね。

特に立春や立秋は祝日でもあるので、その日付の設定は重要なのだ。
やっぱり国家管理が必要なんだね。
勝手に自分は今日が立春だと思ってた、と言われて休まれても困るから(笑)
それはいいとしても、暦の設定というのは租税の徴収にも関係するので、やっぱり政府が公式に定める必要があるんだよね。
租税対象期間の1年の長さがまちまちだと本当に困るから。

ちなみに、前に2度目の十三夜があったのは1843年で、これは天保14年。
今度2度目の十三夜があるのは95年後の2109年!
もうドラえもんがいる時代だね。
ということは、実は今回見逃した場合、次はまず見られないということだったのだ。
あらかじめわかっていたらもっとしげしげとながめたのに。

2014/11/01

裏の畑でポチが鳴く

エボラ出血熱の問題でにわかに問題になったけど、我が国では、エボラ出血熱に罹患しているかどうかまでの検査はできるけど、いったんエボラ出血熱の患者だと判明した場合、その患者さんの検体を使ったエボラウイルスの研究はできないんだよね・・・。
これは、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)の枠組みによる規制なんだ。
この法律では、第一種病原体とされるエボラ出血ウイルスや天然痘ウイルス、ラッサ熱ウイルスなどはそもそも所持自体が禁止されていて、政令で定める病原体を厚生労働大臣が指定する施設で試験研究に使う場合は例外的に所持することができる、とされているんだ。
エボラ出血熱ウイルスについては、研究できるものとして政令で指定されているんだけど、研究できる施設がない、というのが問題なのだ。

扱える施設が全くないのか、というとまた違って、設備的には扱える施設はあるんだけど、その設備が使えない状況にあるんだよね。
具体的には、厚生労働省の試験研究機関で或国立感染症研究所の東村山庁舎の中に、バイオ・セーフティ・レベル4(BSL4)相当の研究施設があって、国際的な基準で言えば、そこでは第一種病原体を扱うことは可能なのだ。
でも、この施設については住民訴訟があって、住民と和解ができない限りは最高レベルであるBSL4としては稼働してはならない、という判決が出ているのだ。
なので、実質上使えないわけ・・・。

国益という官邸で言えば、国内でエボラ出血熱患者が発生しても、判定が陽性になってからはそれ以上国内で研究できないので、米国等に検体を送って研究してもらうしかないんだよね(>o<)
実際に、ラッサ熱が発生したときはそうしたようなのだ。
なので、国会での指摘でも、政府の方針でも、早期にBSL4施設として稼働できるようにすべき、というのが出ているんだけど、エボラ出血熱の患者がそこに運び込まれて、そのウイルスを増殖させたりする、と言われると、地元住民はたまったものじゃないよね・・・。
そうそう理解が得られるものではないのだ。
こくにとしてはやるべきだけど、自分の住んでいる地域ではちょっと、ということ。

この問題はより一般的には「NIMBY」と呼ばれていて、これは、「Not in My Back Yard」の略なんだ。
うちの裏庭でやるのはやめてくれ、ということ。
原子力発電関連施設やゴミ処理施設、刑務所、下水処理施設、食肉処理施設(いわゆる屠畜場)なんかの「迷惑施設」と呼ばれる施設に共通の問題なのだ。
今も福島に核廃棄物の最終処分場を作るかどうかについてもめているよね。
沖縄における米軍基地問題も同様なのだ。
国としてはそういう施設が必要であるのは理解するのだけど、いざ自分が住んでいる地域にそういうのがあるのはいやだ、という人間のエゴの表れみたいな問題なんだよね。

原子力発電関連施設だと今回の事故のようなことがあるとそもそも人が住めなくなりリスクがあるし、米軍基地の場合も、米軍兵士による事件・事故なんかは件数的にもけっこうあるから、実被害のリスクが伴うものなんだよね。
米軍海兵隊の兵士が事件や事故を起こしたとしても、基地内に戻られたら日本の司法ではどうしようもなくて、米軍の軍紀・軍法裁判に任せるしかなくなってしまうのだ。
ゴミ処理や下水処理みたいなのは、イメージ的に忌避感があるという部分が多いんだろうけどね。

そういう問題があるので、原子力発電関連施設の周辺地域には立地対策として立派な道路が整備されたり、豪勢な体育館・公民館ができたり、といろいろあるのだ。
地元自治体にも核燃料税などの地方税収入があったりもするし。
沖縄の米軍基地の場合もそうだけど、地元で大きな雇用を作り出しているというのもあるんだよね。
なので、反対する住民と、是認というか妥協というか、賛成する住民がいるわけで、そのかねあいで折り合いをつけるような格好になるのだ。
地方選(例えば自治体の首長など)では毎回大きな争点になるけどね。

一方で、この感染症対策の場合、そういう立地対策的な「にんじん」もぶら下がっているわけではないし、基本は大きな声で反対するか、とりあえず黙っているかしかないのだ。
そうなると、自治体を巻き込んだとしても、なかなか前には進まないわけだよねぇ。
非常にデリケートで難しい問題なのだ。
だからといって何かできるわけじゃないんだけど、何もしないでいいわけでもないので、打開策は考えないと行けないんだよね。
本土から離れた無人の離島に施設を作るとかなんとか、考えられるような気もするけど、そうなると疑いのある患者を緊急搬送するのが大変だし、研究者や医療従事者をそこにとどめておくのも難しいから、あんまり案にならないんだよねぇ。

2014/10/25

測るんだジョー

職場に引っ越しを考えている人が複数いて、どの地域がどうとか、部屋の間取りなんかが雑談の話題に上るのだ。
で、そんな話をしている中で改めて気になったのが、間取りにおける「ジョウ」の表現。
通常は畳の数で意識しているので「畳」を使うと思っていたのだけど、不動産関係の資料では「帖」という時を使っているんだよね。
なんでなんでしたっけ?

正解を言うと、畳の大きさに地域差があるので、畳の数では部屋の広さを正確に表現できないからなのだ。
なので、1帖=1.62平米と業界ルールで定めていて、不動産広告等では地域差なく正確に面積を表示できるようになっているんだ(間取り図によっては「J」で表現されているよ。)。
だったらそもそも平米で表現すればいいようなものだけど(笑)
とは言え、自分でも「何畳(又は何帖)」と言われた方が広さをイメージしやすいから、できるだけ4畳半やら、6畳間・8畳間のイメージを残しつつ、ということにしたかったんだろうね。

畳の大きさに地域差があるというのは割と有名な話で、「京間」は広くて「江戸間」はせまいんだよね。
具体的には、「京間」と呼ばれる伝統的なサイズは1間=6尺3寸=1.91mのもので、畳は半間×1間なので、1.82平米になるのだ。
「江戸間」というのは1間=6尺とするものなので、同じように計算すると畳は1.55平米。
1.2倍くらい違うのだ!
戦後には、さらに狭い「団地間」なんてのもあって、1.45平米くらいの畳もあるんだ。
やっぱり実際の部屋の床面積は意識しづらいから、並んでいる畳の数でごまかせるんだろうね。

なんでこんなことになったかというと、江戸が超過密都市だったことがあるんだよね。
当時すでに世界でも珍しい100万人都市で、いわゆる「朱引内」や「御府内」と呼ばれる江戸市中(「大江戸」の範囲)は、北は千住・板橋、西は代々木・角筈(つのはず、都庁周辺)、東は平井・亀戸、南は品川。
だいたい「四里四方」で、今の山手線の内側+本所・向島・深川の下町地域の70平方kmくらい。
さらに、実際には武家地や寺社地が多くて庶民が居住できるスペースはもっと限られていたので、今以上に家がせまかったんだよね!
そういう文化の中で、太閤検地以来1間=6尺3寸だったものが、6尺ちょうどになって狭くなったのだ。

もう一つの理由として、長さの単位である1間は検地により年貢米を算定する基準としての意味合いが強かったんだけど、江戸時代になると農業技術も向上して生産性が上がり、単位面積当たりの米の収穫量が増えたので、同じ石高で言えばより狭い範囲の土地があればよくなったんだよね。
なので、米の収穫量を中心にして、その石高に必要な土地面積を求める基準としての長さの単位を考えると、「1間」が短くなっても仕方ないのだ。
都市の住宅事情だけでなくて、こういうことも影響しているんじゃないかと言われているよ。
でも、江戸時代に公式に定められている石高って実際の収穫量とはマッチしていなくて、実質石高とはずれているんだよね。
なので、生産性の向上だけで説明というのも苦しい気はするのだ。

それと、最近では、土地にあわせて畳もオーダーメイドになることがあって、正確に1:2の縦横比率になっていないものもあるんだって。
土地に余裕がないけど和室がほしい、でも、そもままじゃきれいに畳が並べられない、となると、そういう変則的な形の畳を使うみたい。
見た目的には畳が並んでいるので、大きくサイズが変わらない限りはイメージとして「○畳」という風に映るのかな?
少し前はフローリングが主流で和室は減っていく傾向にあったけど、赤ちゃんの世話とか高齢者と一緒に住むことを考えると和室はあると便利なので、復権してきているんだよね。
単に面積単位として意識されていた「畳」がまた畳敷きのイメージに戻りつつあるのだ。
でも、そうなると、実際の畳の数と「帖数」はずれていたりして・・・。

2014/10/18

Do-No

2週連続で週末に台風が到来して、テレビのニュースでは例のごとく暴風波浪警報が出ているような地域で中継をしていたのだ。
今回は雨の量も多かったので、川などが氾濫して床上・床下浸水になった地域も多いみたいだね。
で、ここで改めて注目したのが土のう。
水が浸入してこないように積み上げて「防波堤」にするわけだけど、袋に土が詰まっているだけなのになんで水を通さないのかな?、って単純に疑問に思ったんだ。

実のところ、なんのことはなくて、土塀が水を通さないのと同じ。
袋の中に入れることで土が散乱せず、形状が保持されるので、隙間がない以上はそうそう水を通さないのだ。
パイプに土が詰まれば水が通らなくなるのと同じで、時間をかけてじわじわと水はにじみ出してくるけど、浸水を止めるという目的に対して問題になるほどしみ出すわけじゃないんだよね(笑)
問題は、隙間なく並べることで、そのための工夫がいるのだ。

ひとつは、袋はぱんぱんに土を詰め込まずに余裕を持たせること。
土は水を吸えばある程度膨潤するし、何より、袋に入った状態で自由に形状が変えられないと隙間ができるのだ。
あらかじめ袋の中の土もよく乾燥させてから踏んだりして柔らかくし、簡単に形状が変えられるようにしておくことも重要なのだ。
二つ目は、当然と言えば当然だけど、袋はしっかりひもなどで閉めておくこと。
中の土がもれるようであれば用をなさないのだ。
通常は袋の口のところにあるひもをきつく縛り、さらに、余ったひもを袋の口のところでぐるぐると巻くんだよね。
こうすると、袋が破れない範囲で自由に形状を変えられて、自重も手伝って隙間なく土のうが積み上がるのだ。

ただ土をもっただけではすぐに崩れてしまうので、しっかりと踏んだりたたいたりして固める必要があるけど、そうして作っていたのがむかしの堤。
簡易的に、かつ、短時間で同様の機能を持たせるために土のうを積み上げるのだ。
土を固める代わりに袋で形状を維持しているんだよね。
ただし、袋の中の土がぬれている限りにおいてはしっかりと隙間なく積み上がるけど、中身が乾いてきてある程度軽くなってくると、そこまでぎっちりとは密に積み上がらないのだ。
なので、緊急避難的には使えるけど、恒常的に堤にするわけにはいかないんだよね。

伝統的には麻袋に土をつめるんだけど、最近ではポリエチレン製の袋が主流なんだって。
その方が丈夫だし、長持ちするからね。
さらに、中身も土でなくて、高吸水性ポリマーのようなものがつまっていることも!
そうすると、水を吸う前は非常に軽いので、扱いやすくなるのだ。
積み上げてから水を吸わせると中身が膨潤していって、密に積み上がるという仕組み。
使用後に乾燥させれば再使用もできるそうで、軍隊のように袋だけ持ち歩いてその場その場で土を詰めて使う,というものでない限り、非常に便利なのだ。

さらに、最近では、生分解性のおがくずやら植物性繊維をつめたものもあって、もともと水よりも比重が重いので乾いた状態でも水に沈み、それが水を吸うと土のうの役割を果たすというのもあるんだって。
水が引いた後もそのまま放っておいても土に戻るし、中には植物の種が入れてあって、そのまま芝生の育成にも使えるものもあるとか。
こういうのは植生土のうと言われていて、緑化のための土木資材として使われているらしいよ。
水路に沿って置いて水の氾濫を防ぐとともに、水路際の植栽を行ったり、路肩に置いて路面への水の進入を防ぐとともに植栽を行ったりできるのだ。

今回、災害情報を調べていて知ったんだけど、もともと海抜高度が低くて、浸水が頻繁に起こるような地域だと、あらかじめ土のうを集めて置いてある「土のうステーション」があって、そこの土のうを持ってきて使うことができるんだって!
災害情報を見るたび、よくすぐに土のうなんて積めるものだ、と思っていたんだけど、そういう便利な公共サービスもあったんだね。
各家庭に常備していたわけではないのだ(笑)

2014/10/11

くさいほどうまい

最近とても気になっている料理があるのだ。
それはスイスのチーズ料理のラクレット。
ハードチーズを火であぶって表面を溶かし、それをそぎ取ってパンやゆで野菜につけて食べるのだ。
よく眞鍋かをりさんがワインとともにテレビで紹介しているんだよね。
かつて、アニメ「アルプスの少女ハイジ」でも全国の子供を釘付けにした料理なのだ!

チーズには独特の臭気があるので、長らく日本では加熱した上で各種チーズをブレンドして成型したプロセスチーズが主流だったんだよね。
別途乳化剤を入れないと固まらないけど、加熱して発酵を止めるので、保存期間が長くなるし、くせやにおいもマイルドにできるのだ。
米国ではプロセスチーズをよく食べるから、そこから来たんだろうけど。
でも、この頃は百貨店とかでも高級な輸入物ナチュラルチーズを売っているよね。
ボクはチーズが好きなのでわりと平気だけど、苦手な人にはきつそうなのだ(>o<)

チーズは、牛乳などの乳汁を長期保存するために工夫された伝統的な乳製品で、加熱しながら凝乳酵素(レンネット)を加えることで、乳脂肪や不溶性・難溶性の乳蛋白を乳清(ホエー)から分離して作るのだ。
水分を絞っただけのものがフレッシュチーズ(カッテージチーズ)。
これをさらに発酵させて作るのが「くさい」チーズたちだよ。
基本は乳酸発酵させて、中に含まれている糖分を分解して乳酸にし、酸性度を高めて雑菌が繁殖しづらい状態にすることで保存性を高めているのだ。
さらに、表面にかびを生やしたりして独特の風味を与えたりするんだよね。
最終的に残存する水分量で硬さが決まって、かっちかちのハードチーズから、とろりとしたカマンベールチーズのようなやわらかいチーズまであるのだ。

この発酵段階においては、タンパク質が分解されてアミノ酸になるんだけど、これがうまみのもとの一つ。
これは多くの発酵食品と同じなんだけど、このとき、脂肪分も同じように分解されて、脂肪酸ができてくるのだ。
この中でも、炭素数の少ない低級脂肪酸があの独特の臭気のものなんだよね。
酪酸やイソ吉草さんがまさにそれなんだけど、これは足のにおいの成分と同じなのだ・・・。
足のにおいも、汗の中に含まれていた皮脂が足の表面で雑菌に分解され、低級脂肪酸ができることで発生しているんだ。
においの発生メカニズムだけ見たら似たようなもの。

納豆やくさやなんかの「くさい」発酵食品は数あるけど、やはり発酵過程でにおい成分の分子ができているのだ。
この脂肪酸だけでなく、硫黄を含むアミノ酸が分解されてできる硫化水素やチオール(あるコースの酸素原子が硫黄原子になったもの)だったり、そのものずばりのアンモニアが発生していたり。
ただ、これらにおい分子ができているということは、発酵も進んでいるということで、うまみ成分が増えている証でもあるのだ。
くさいものほどうまいというのにもそれなりに意味があるわけ。
日本の「くさい」名産代表のふなずしも、乳酸発酵でタンパク質が分解されてうまみ成分が増えていくんだけど、同時ににおい分子も増えているんだよね(笑)
糖を分解するだけだとアルコールや酢酸、乳酸ができるだけだけど、脂肪やタンパク質が分解されるととたんにくさくなるのだ。
お酒の発酵があまりくさくないのは主に糖が分解されているからなんだよね。

チーズのにおい成分は主に低級脂肪酸なんだけど、これらは油状の不揮発性の液体なんだよね。
なので、常温ではずっとそこにあってくさいんだけど、ちょっと熱をかけてやると少しずつとんでいくので、多少においがやわらぐのだ。
チーズを加熱しているときはくさいけど、生のままより加熱したチーズの方が口の中では臭気が広がらないのはこのため。
好きな人は生のままちびちびかじりながら一緒にワインを、ということなんだろうけど、ボクはやっぱり加熱してとろっとしたやつを熱々で食べるのが好きだなぁ。
お酒をあまり飲まないというのもあるけど(笑)

2014/10/04

冬に咲く花

家の前の花壇にチューリップの球根を植えたのだ。
はじめて知ったんだけど、チューリップの球根って、秋のうちに植えて、しっかり値を張らせておくんだね。
で、春になると芽が出て、ということみたい。
でも、秋から冬にかけては地中でじっとしているので、水やりを忘れがちになるおそれがあるのだ!
見た目が変わらないから。
そこで、園芸の手引きを見ると、冬に咲くパンジーなんかの種をまいておくと、水りゃりを忘れないし、チューリップの芽が出るまでの間に花も楽しめる、と書いてあったのだ。

というわけで、さっそくパンジーとパンジーよりも少し花が小ぶりなビオラの種を買ってきてまいたんだ。
こちらは秋に芽が出て冬に咲くんだよね。
冬の寒い時期に咲く花は貴重なので、これからの季節は街中の花壇でもよく見かけるようになるのだ。
もともと発芽の適温が低くて、ある程度気温が下がってからでないと芽が出ないみたい。
これも棲み分け戦略なんだろうね。
寒い時期に咲く花は少ないので、虫に花粉を運んでもらう上で競合相手が少ないのだ。
冬に活動する虫が少ないのでは、という懸念があるけど・・・。
ちなみに、日本では夏が暑すぎるので夏に枯れてしまうことが多いけど、寒冷地では多年草で、1年目に葉を茂らせ、2年目に種を作ってから枯死するんだそうだよ。

パンジーは園芸品種のスミレ属の植物で、より花が小ぶりなものがビオラと呼ばれているんだ。
どちらも様々な色があって、花壇が賑わうのだ。
特に花が少ない時期に咲くので、園芸をする上で便利なんだよね。
もともとは、1800年代の北欧で、アマチュアの園芸家が交配で作り出したんだとか。
野生のサンシキスミレや野生のスミレ、近東のスミレなんかを交配して現在のような大きな花をつける品種になっていったのだ。
すでに19世紀前半にはかなり園芸品種として欧州に広まっていたみたい。
その後も現在に至るまで品種改良は進められていて、色が増えたり、さらに花が大きくなったり、ますます広がりが大きくなってきているのだ。
もともと寒冷な地方では春に咲く花なんだけど、温暖な地域では冬に咲くので、このあたりも園芸をする上で使い勝手がよかったんだよね。

パンジーが我が国に入ってきたのは江戸時代。
当時は「遊蝶花」や「胡蝶草」などと呼ばれていたんだって。
これは花の形から来ている名前なんだろうなぁ。
蝶が羽を開いたように見えるからね。
パンジーという名称は仏語の「パンセ(思慮)」から来ていて、8月末に花をつけたとき、深く思索にふけるように前に傾くことから来ているとか。
日本と欧米ではとらえ方が違うんだねぇ。
ちなみに、日本で一般的に栽培されるようになったのは戦後からなので、なかなか雅な名前だと思うけど、江戸時代の名称は引き継がれていないのだ(>o<)

ボクが買ってきたのは100均の種だし、植え替えをせずに球根を植えた花壇に直まきなのでどうなるか不明だけど、きれいに咲いてくれるといいなぁ。
わりとまだあたたかい時期に巻いたので、うまく行けば年内から花が咲くはずなんだけど。
せっかくだからきれいに咲かせたいものだよ。

2014/09/27

コメの消費を上げるためにも米粉を食べよう

先日、はじめて「ケンミンの焼きビーフン」を食べてみたんだ。
肉、味付ビーフン、野菜を重ねて水を入れて蒸し焼きにするだけ。
意外と簡単にできて、なかなかのもの。
CMでは存在を知っていたけど、こういうものだったんだ、と感心したよ。
東南アジア料理として食べるビーフンとはやっぱり違って、和食としてアレンジされているんだね。

ビーフンはうるち米を材料とするライスヌードルの一つで、中国福建省当たりが発祥のもの。
ベトナム、タイ、インドネシア、シンガポールなどでもメジャーなものなのだ。
ライスヌードルはその名前のとおりお米を原料として麺類の総称で、ベトナムのフォーや生春巻きに使うライスペーパー、中国の点心で出てくる腸粉、タイ風焼きそばパッタイに使う平太麺のセンレックなどが含まれるよ。
もともと中国では、小麦を原料とした麺類を「麺」と呼んで、米を原料としたものを「粉」と呼んだんだって。
よって、「ビーフン(米粉)」はまんまの名前なんだよね。
ちなみに、ここで言う「麺類」というのは、イタリアのパスタの概念と同じで、必ずしも細長いひも状のものだけでなく、シート状のものなど様々な形状のものが含まれるよ。
餃子も春巻きも麺類。

中国やインドのような国土が広い国だと、国内でも気候条件が大きく違うので、地方によって主食となる穀物が違うのだ。
北部の寒冷な乾燥した地域では主に小麦が、南部の温暖で湿潤な地域では主に米が食べられるんだよね。
(更に土壌が貧困な場合はそばなんかになるよ。)
なので、インドカレーでも北部料理はナンを、南部料理はライスをつけるのだ。
中国も同様で、北部由来の北京料理だと小麦がメインだし、南部由来の福建料理だと米がメイン。
炒めビーフンも福建省から伝わっているのだ!

麺と粉の大きな違いはその作り方。
小麦麺の場合、多くは小麦粉と水を混ぜ、生地を練って麺にしていくんだよね。
このときに塩を入れることで、コシのもととなるタンパク質のグルテンが生成され、独特の硬さ・粘りが出てくるのだ。
小麦麺の弾力があって、ぷっつりと切れる食感はグルテンによるところが多いよ。
一方、米粉の場合は、水につけたまま米をひいて白濁液を作るところから始めるんだ。
これを濾過してデンプンを主成分とする生地を取り出し、ところてんのように細かい穴から湯の中に押し出して作るのがビーフン。
生春巻きに使うライスペーパーの場合は、白濁液をクレープのように布の上に丸く広げ、蒸し上げるんだよ。
フォーのような平麺は、白濁液を熱した鉄板の上に広げ、シート状に固まったものを切っているんだ。
いずれもその後によく乾燥させるところがみそ。
パスタのように長期保存ができるのだ。
粉を水と一緒に練るんじゃなくて、水と一緒に米を砕いて、形を整えてから乾燥させる、というのが一般的な製法だよ。
点心の腸分のように乾燥させずに「生」で食べる料理もあるようだけど。

この粉の場合、もっちりとした食感になるけど、これはデンプンの中のアミロペクチンによるもの。
小麦よりも米の方がアミロペクチンが多いので、もちもち感が出るのだ。
同じようにデンプンを抽出して作る春雨は、小麦よりもアミロペクチンが少ない豆を原料に使うので、つるっとした食感で、もちもち感はほとんどないんだよね。
同じ米で、うるち米から作る上新粉と餅米から作る白玉粉では性質が違うけど、ビーフン類の多くはインディカ種のうるち米から作るので、そこまでもちっぽくはならないみたい。
最近では、米由来のデンプンだけじゃなく、ジャガイモやタピオカ由来のデンプンを句会えたりもするようで、すでに「粉」でも亡くなりつつあるようなのだ。

米粉が注目されてきているのは、我が国のように米が余っていて米食を推進したいからではなく、グルテンフリーの食品の必要性が認められてきたから、
セリアック病という自己免疫疾患では、グルテンが標的となるので、小麦を使った料理が食べられないのだ・・・。
いわゆる小麦アレルギー。
でも、これってかなり痛い話で、純然とした和食なら麩を食べなければ済むようなものだけど、洋食とかでは相当つらいよね。
そこで脚光を浴びたのが米粉を使った食品。
米粉パンであったり、米粉を使った麺類なのだ。
日本では未だにライスヌードルにあたる米粉を使った麺類の総称がないけど、これは伝統的には小麦を食べなくてもなんとかなっていたからなんだろうね。
今は逆輸入の形でライスヌードルが注目され、逆にもうカタカナ語でよくなってしまったので、改めて漢語を作る必要がないのだ。

2014/09/20

大英帝国崩壊の危機か

イギリスの正式な国名は、「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」であることはわりと有名だけど、この枠組みが崩れかけたのだ!
今月18日にグレートブリテン島北部に位置するスコットランドが独立するかどうかの投票を行ったのだ。
むかしからくすぶっていて、ずっと徐々に独立賛成派が増えていたんだよね。
独立すれば、300年以上ぶりの独立となるんだ。
今回はけっきょく独立は見送られる形になったけど。

日本から見るとよくわからないけど、もともとイングランドとスコットランドは分化も民族も違う別の国。
同じお受けが君臨して「二重帝国」になっていたのだけど、1707年に連合法というのがイングランド、スコットランド双方の議会で成立し、連合王国であるグレートブリテン王国が誕生したのだ。
北部アイルランドがこれに加わるのは1800年の連合法だよ。
ちなみに、もうひとつのウェールズだけはちょっと位置づけが違って、13世紀中頃にウェールズ大公(Prince of Wales)をいただくウェールズ公国が誕生するんだけど、すぐにイングランドのエドワード1世王に侵略され、イングランドの統治下に入ってしますうのだ。
なので、連合王国の一角ではあるけど、イングランドの一地方という扱いなんだよね。
ちなみに、このとき、エドワード1世は長男のエドワード2世にウェールズ大公の地位を継がせたので、それ以来、イングランドの皇太子は「プリンス・オブ・ウェールズ」の称号を引き継ぐことになるのだ。
これが連合王国になった今でも続いているわけ。

こういう経緯があって、イングランド、ウェールズ、スコットランド及び北部アイルランドが一つの連合王国になったのだけど、スコットランドだけは独立心が強く、たびたびイングランド主導の連合王国統治に不平・不満を漏らすのだ。
それで独立騒動がずっとくすぶっているわけ。
それが噴出したのは今のエリザベス2世女王陛下の戴冠のとき。
イングランドには「処女王(Virgin Queen)」と呼ばれたエリザベス1世が君臨していたけど、スコットランドとしてはエリザベス女王の統治ははじめてだったのだ。
そこで、新たに君臨するエリザベス女王が「1世」なのか「2世」なのかでもめたんだって・・・。
最終的には、女王本人の意思で「2世」となったんだけど、そのとき、新基準として、「○世」が異なる場合は大きい方の数字をとる、と決めたんだそうだよ。
ただし、国王又は女王が自らなんと名乗るかはまわりが決めるのではなくて、「国王大権」として本人が決めることなので、次の王がこの新基準を採用するかどうかは未定なんだとか(>o<)

1998年にはスコットランド法というのが制定され、外交、軍事、財政・金融、麻薬取り締まり、移民政策などの連合王国が一体として取り組むべき政策課題(いわゆるウェストミンスター議会留保事項)を除き、スコットランドは独自に法令を作ることが認められたのだ。
これにより、福祉政策や、所得税率、禁煙政策など、スコットランドは独自の法制度を持っているのだ。
かなりの裁量が認められるようになっているわけ。
もともとスコットランド法は大陸法系で、英米法ではないというところも興味深いけど。
これでも足りないから独立、ということなんだけどね。

日本から見てイギリスというと、タータンチェック、キルト、バグパイプ、ウィスキー(スコッチ又はアイリッシュ)、ゴルフ発祥の地(セント・アンドルーズ)などが思い浮かぶけど、これも多くはスコットランドの文化。
産業革命を支えた石炭もウェールズとスコットランドのものだし、「国富論」のアダム・スミス、「シャーロック・ホームズ」のコナン・ドイル、電話の発明者のグラハム・ベル、蒸気機関を発明したジェームス・ワットなど、スコットランド出身者が多く活躍しているんだ。
英国首相のトニーブレアさんやゴードン・ブラウンさんもスコットランドの出身。
英国の産業や文化、政治を支える上で重要な位置を占めているので、今さら独立されるとかなりの影響が出るはずなんだよね・・・。

それでも独立を画策しているのは、北海油田の石油があるからなんだとか。
スコットランドにはまだ石炭もあるし、欧州随一の埋蔵量と言われている石油もあれば、かなりの経済力が見込めるからね。
イングランドと一緒でなくてもやっていけるぜ、ということみたい。
ただ、本当にそうなのか、とスコットランドの中でも思っている人がいるわけで、ずっと独立はしなかったんだけど。
実際どうなるかはよくわからないけど、仮にスコットランドが独立すると、英国の国旗のユニオンジャックは変更されるのだ。
もともとイングランド、スコットランド及びアイルランドのそれぞれの国旗を組み合わせたものなので、背景の青地と白の斜めクロスのスコットランド国旗分がはずれるんだよね。

2014/09/13

実録シリーズ?

先日、「昭和天皇実録」の編纂が完了し、今上天皇陛下に奉呈された、という報道があったのだ。
現在はその写しを皇居東御苑で公開(特別閲覧)していて(11月いっぱいの予定)、奉呈されたのと同じ装幀の副本も展示されているんだって。
来年から5年間かけて刊行されるらしいけど、12,000ページもあるらしいし、きっとハードカバーだから高いんじゃないかな・・・。
こういうときこそ、図書館で読みたい時代だけ読むのがよいよね(笑)

もともと「実録」というのは、中国で正史を作る際に参考にされる各皇帝の一代記のことで、その統治下での事績がまとめられるのだ。
中国は必ず前王朝の成立から滅亡までを正史としてまとめ、今の王朝の正当性を主張するんだよね。
なので、「史官」という歴史書を作成する官職があるくらいなのだ。
米国の政府機関でも「historian」という役職の人がいて、政策史をまとめているんだよね。
日本では今回の「実録」を作るので、宮内庁の書陵部にはそういう役職の人がいるけど、正式に歴史を紡ぐ人はいないのだ(>o<)

日本での実録の扱いは中途半端で、各代について作成していたわけじゃなくて、「日本三代実録」のように、清和天皇・陽成天皇・光孝天皇の三代をまとめたようなものも。
そもそも大和朝廷がずっと続いていることもあって、「朝廷の正当性」を主張する正史の必要性は薄くて、「正史」もきちんと作られているわけではないのだ。
「王権神授」というか、皇祖皇宗の由来をひもとく日本書紀があれば事足りる部分もあったんだろうけどね。

一方で、江戸時代には「徳川実紀」というのが幕府によって編纂されていて、江戸幕府の公式記録になっているのだ。
もともとは初代家康公から10代家治公までの事績を12代家慶公に献じたもので、各将軍の諡号に実紀をつけて、「東照宮御実紀」(家康公)、「台徳院御実紀」(秀忠公)、・・・と将軍の治世ごとに事象を日付順で記載したもの。
将軍の逸話を収めた付録もあるとか。

11代家斉公以降も大政奉還まで実紀は編纂され続け、その後半部分は「続徳川実紀」とも呼ばれるのだ。
もともとは将軍ごとの実紀なので、幕府内では単に「御実紀」と呼んでいたものを、明治時代にまとめて総称する際に「徳川実紀」と名付けたとか。
江戸時代は火事が多かったので、古い時代のものは資料が散逸していて、幕府内の公式記録だけでなく、他からの資料の転載のようなものもあるらしいけど、江戸時代の歴史書として非常に貴重なものなのだ。
本体は国立公文書館が保管しているけど、国史大系の一部として刊行されているし、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでも見られるのだ。
これは実質上の「正史」なんだけど、幕府自らが作っているから、中国の歴代王朝の「正史」とはまた位置づけが異なるのだ。

話は「実録」にもどると、明治になって、きちんと各天皇の御代について実録を作ろうということになって、孝明天皇から実録の編纂が始まったのだ。
戦前は宮内省が担当で、それが戦後宮内庁に引き継がれているわけ。
「孝明天皇紀」、「明治天皇紀」は存在が知られていたんだけど、「大正天皇紀」は存在は推測されていたものの、長年宮内庁で情報公開の対象から外されていて、幻の実録だったのだ。
ところが、21世紀に入って、情報公開・個人情報保護審査会が非公開は不当とする判断を下したので(平成13年)、翌年以降一部が黒塗りの形で公開されることになったんだって。
それを受けてか、今回の「昭和天皇実録」は最初から全文が公開されることになっているのだ。
マッカーサー元帥とのやりとりや、終戦前夜の動向など、すでに知られていることも多いけど、未公開の側近や侍従の証言・メモなど、新たな情報も含まれているとか。
個人的にはかなり興味あるなぁ。

2014/09/06

保存食は防災訓練のタイミングで更新を!

9月1日の防災の日に、うちの職場でも防災訓練があったのだ。
毎年やってはいるけど、今回は訓練の一環として、備蓄倉庫にある乾パンとビスケットの配給も受けたのだ。
ま、これは訓練というより、単に配るだけだから、備蓄食料のリニューアルのために古いものを処分するという意味合いが強いような気もするけど(笑)

今回もらってきた乾パンもビスケットも実は中身は同じで、三立製菓という乾パン製造では主流メーカーのもの。
おやつ用に袋に入って売っているものよりは大型の乾パンがみっしりと5枚セットで袋詰めになっているもの。
長期保存するものだけあってかなりの乾燥度で、一口食べると口の中の水分がすべて持っていかれてしまう・・・。
水も貴重な災害時にこれを食べられるのかは少し疑問だなぁ。

乾パンは保存食としての堅パンの一種で、堅パン自体は欧州ではむかしから食べられていた保存食なのだ。
古代ローマでは兵糧として支給されていたらしいよ。
二度焼くなどの手法によって極限まで水分を除くことで、腐敗を防止して貯蔵性を高め、寒冷地での凍結にも強くなるのだ。
また、水分がない分だけ軽くなるので、携行も容易に。
まさに軍隊が戦地に持っていく食料としてはふさわしいものだったんだよね。
大航海時代にも活躍するのだ。

一方、我が国の伝統的な保存食は、乾燥させたお米。
伊勢物語にも旅の携行食として「干し飯」が出てくるよね。
「東下り」で三河国八つ橋まで来たところで、在原業平公が「かきつばた」の歌を詠んだとき、同行者はその歌に感動して「干飯(かれいい)」に涙をこぼし、ふやけた、というエピソードがあるのだ。
鎌倉時代以降は「糒(ほしい)」の字が当てられるようになって、代表的な携行食糧になるんだよね。
もちろん、兵糧としても使われていたよ。
水で戻してもいいし、そのままぱりぽり食べられるし。

江戸末期くらいに西洋から堅パンが導入され、やがて日本人の口に合うように日本式アレンジがなされ、今の乾パンができあがるのだ。
糖分を補うのと、唾液を出やすくして食べやすくする目的で、氷砂糖や金平糖が同梱されるようになるのだ。
試行錯誤の結果、陸軍が仕様を決めて郡民協働で開発して今の形になったようだよ。
たまに食べると、絶妙な甘さも合ってなかなかおいしいよね。
でも、これだけだとつらいけど・・・。

一方で、日本人としてはお米も食べたい、という欲求があるので、伝統的な糒も改良が重ねられ、「アルファ化米」として携行食糧となって軍に採用されるのだ。
お米の中のデンプンがアルファ化されるともっちりとおいしい食感になるんだけど、それには蒸したり、炊いたりして熱をかける必要があるし、一度アルファ化しても、時間がたつと劣化してきて堅くぼそぼそになるんだよね。
アルファ化米は、もっちりした状態のまま乾燥させることで、水やお湯でもどすともちもちしたお米が食べられる、というものなんだけど、いかんせん、戦時中のものはおいしくなかったようなのだ。
それでかなり否定的なイメージが国民の間に広がって、戦後は災害用の備蓄食料としてはおやつとして食べてもおいしい乾パンが主流になっていったんだ。
登山やキャンプ用の携行食糧としてはアルファ化米も生き続けるんだけどね。

ところが、阪神大震災の時にまた流れが変わるのだ。
実際に災害が起きて、毎日のように乾パンを食べることになると、とにかく飽きる。
そして、お米が食べたい、というニーズが高まったんだそうだよ。
そのころにはアルファ化米の技術も格段に進歩していて、おいしく戻せるものができあがっていたのだ。
で、アウトドア用品として売られていたアルファ化米を配ったところ、これが大好評。
また伝統的な糒が備蓄食料として復権したのだ。
もちろん、「サトウのごはん」のような加熱調理するものの方がおいしいのだけど、アルファ化米はお湯や水で戻すだけという簡便性があるし、何より、真空パック+乾燥技術で保存期間もかなり長期にできるのだ、やっぱり備蓄にはアルファ化米が便利なんだよね。

うちの職場にはアルファ化米はあるのかな?
防災訓練でもらった後、お昼に乾パンを食べたんだけど、最初はおいしいものの、やっぱり飽きるし、何より大量の水分がないと食べられないんだよね(>o<)
本当の災害時にはこれはけっこうきついかも、と思ったよ。
水で戻せるアルファ化米(しかも、今は五目ごはんやおこわ、赤飯など、それだけで食べられるものもあるよ!)があるといいんだけどなぁ。
ボクはどちらかというとごはん党だし(笑)

2014/08/30

協調しつつも各自の判断で

自律分散処理という概念があるのだ。
中央で一括処理するのではなく、処理を分散させて並行処理をさせるんだけど、勝手にばらばらと処理するのではなく、全体がちょうわするようにそれぞれが自律的に処理するようにするのだ。
というとなんだか難しいけど、こういうシステムは意外と身近にあるのだ。

例えば、人間の場合、脳で情報処理をしているわけだけどこういうシステムが採用されているんだよね。
膝のあたりをたたくと足がぴんと伸びる「膝蓋腱反射」というのがあるけど、これって意識して動かしているわけではなくて、刺激に応じて勝手に体が動いているのだ。
いわゆる「脊髄反射」みたいなもので、一番低レベルの情報処理でA=>Bというプログラムを実行するもの。
感知した刺激がAなのかそうでないのかだけを区別すればよいだけなので、脳の高次機能を使わず、あらかじめ組み込まれたプログラムに従って刺激が来たら無条件に動くので、「無条件反射」とも呼ばれるよ。
これは熱いものを触ったら手を引っ込める、転びそうになると手をつこうとする、というのと同じ。

ちょっと複雑になると、自転車に乗るためにバランスをとる動作というのがあるんだよね。
最初のうちは意識して苦労しながらバランスをとるんだけど、慣れると自然にバランスがとれるようになって、「バランスをとらなくてはいけない」なんてことは意識しなくて済むようになるのだ。
これは小脳の記憶によるもので、いったん小脳で細かいバランスをとる動きが記憶されると、以降はその記憶をもとに無意識で体が動くようになるんだって。
これは水泳でも同じで、泳げないうちは意識していないと体が沈むけど、いったん泳げるようになるとそんなことはまったく気にならなくなるのだ。

もうちょっと複雑なのは「パブロフの犬」の条件反射。
梅干しを診るとつばが出る、みたいなのだけど、これは先天的に備わっているプログラムではなく、後天的に獲得されたプログラムによる反射なのだ。
なので、まず最初にプログラムを条件付けとして記憶に書き込むことが必要で、「えさを与えるときは必ずベルを鳴らす」なんてことを繰り返すわけ。
これはAという刺激が来たときに過去に条件付けされたBという記憶と照らし合わせ、その二つが合致するときにCという反応をするプログラムなのだ。
なので、A+B=>Cみたいな感じ。
刺激が来てから条件が満たされているかどうかを判断する部分があるので、ちょっと高度な判断をしているんだよね。

でも、条件反射までは意識下で体が反応しているのだ。
もっと高次の反応になると、ある刺激に対して、過去の記憶に照らしてそれが好ましいものかどうか、危険なものでないかどうかなどを判断して反応するんだけど、この場合は意識的にああでもない、こうでもないと考えた末に行動するのだ。
それだけに時間がかかるわけだけど、プログラムとして自動的に答えが出せるようなものではない場合に多様な臨機応変に多様な反応が導き出せる点が有利なのだ。
悩むだけで先に進まないこともあるけど・・・。

これらはおそらく進化の過程で獲得してきたもので、無条件反射のようなものはそれこそ生存競争で生き抜くために必要だったもの。
条件反射は刻々と変わる環境の変化に適用する上で必要となるから、より生存が有利になるものとして身につけてきたもの。
そして、最後の意識的な反応は、群れを作る、子孫を残すパートナーを見つけるなどの社会性のある行動をとるために必要なのものとして手に入れたものと考えられるよね。

実はコンピュータのデータ処理も似たようなもので、最初はあらかじめ入ったプログラムに従ってインプットを入れるとアウトプットを出すだけ。
電子計算機がまさにそれだよね。
もう少し進化すると、インプットを入れたときの条件次第で反応が変わるというもの。
エアコンのスイッチを入れると室温によって暖房と冷房を切り替えるみたいな話だよね。
初期のパソコンのサブルーチン・プログラムなんかは、インプットがある条件を満たす場合はこういうアウトプット、そうでない場合はこういうアウトプットという形式のもので、これを複層的に積み重ねてファミコンのゲームなんかは作られていたんだよね。

で、今必要とされているのは、インプット又は処理すべきデータの種類によってどの階層で処理するかを自立的に判断し、末端から中央までの適切なところで処理を行うことで、全体の処理の効率化を上げる、というシステムなのだ。
例えば、クレジットカードの決済は必ず中央で処理をするので数分かかるんだけど、SUICAのような電子マネーは端末又はそのすぐ上のノードでデータを蓄積しておいて、一定期間ごとに中央に集めて整合性を検証するシステムになっているのだ。
これにより決裁スピードがほぼリアルタイムになっているし、例え中央サーバが落ちても端末が生きているとシステムは一定期間動き続けるんだよ!

ただし、これらはそれぞれ処理形式も含めてあらかじめ決められていて、データを見てその場でどの階層で処理するかを決めているわけではないのだ。
それには、データのタグ付けやデータの評価などをしてどの階層での処理が適しているかを振り分ける技術がいるわけで、しかも、その振り分け方によって全体が調和をもって運用できるシステムにならないといけないのだ。
でも、地理空間情報をリアルタイムで把握して自動車を無人走行させたりする場合、全部を中央処理にしてしまうとプラレールのように決まった動きしかできないのだ。
それぞれがいろんな動きをするんだけど全体としては調和がとれていて、仮に何かトラブルがあっても適切に処理できる、ということを考えると、自律分散処理にしないとダメなんだよね。

信号を守る、自分の速度・進行方向を適切に把握する、というのは一番低層の処理でよいのだけど、それをある程度集約して一定範囲内で自動車同士が衝突しないように調整する、という次の階層があって、さらにそれでいて効率的な交通・流通システムになるように自動車が動くという最も高次な調整を行う階層があるはずなのだ。
でも、一台一台全部の動きをミクロに解析して調和的に動かそうとするとどんなに処理速度の速いスパコンでもリアルタイムではできないし、そもそも各自動車からのデータの吸い上げにも時間がかかるので、機能しないシステムになるのだ。
処理するデータが増え、複雑になるほどこうやって処理しないと回せないのが現実で、ビッグデータがはやっているけど、次にはこの技術がないとけっきょく使えないということになるんだ。
なので、これから熱くなる言葉だよ!

2014/08/23

口伝

産経新聞が福島原発の故・吉田昌郎所長のインタビューが含まれる政府事故調の吉田町署について朝日新聞の報道を批判しているのだ。
もともとは朝日新聞が5月に独自ルー-とで入手した内容を報道していたんだけど、産経新聞が改めて8月に同文書を入手し、内容を分析したところ、朝日新聞の報道内容に疑義を呈しているんだよね。
つまり、自分たちの主張に都合のいいところだけとったのではないか、ということなんだけど。

従来の歴史学は主として文献資料や遺跡・遺物などの考古学的資料をもとに研究をしていたんだけど、それだけではつかみきれない情報があるということで、当時の担当者が存命中に直接インタビューをして、それまで紙に書き起こされていなかった情報を残す手法が始められたんだよね。
これが「オーラル・ヒストリー」というもの。
どうしても当時の関係者に話を聞くので、客観的な内容ではなく、その人の主観に基づく情報になるけど、複数の関係者、立場の異なる人の話を聞くことで、全体像が見えてくることもあるのだ。
福島の事故対応については、様々な政府の文書、東電の資料があるし、官邸・東電と福島原発との間のテレビ会議の録画画像なんかもあるんだけど、それだけでは足りないところは確かにあるんだよね。
例えば、今回問題になっている、官邸の指示を現場でどう受け止めていたのか、といったものなんかはあえて資料にはしないので、録画画像で微妙に現れてくる表情の変化を読み取る、といった世界になるのだ。
また、資料の最終版は紙で残されているけど、その検討過程でどのような議論があったのか、誰がどういう主張をしていたのか、といった情報は通常残されないので、そういったものをきちんと記録しておくという意味があるんだよね。

日本にも国立公文書館があって、江戸幕府以来の政府の政策文書を保存・管理しているんだけど、米国のナショナル・アーカイブスに比べると収集・保存している資料の数は段違いなのだ。
米国の場合、アポロ計画で使った月面地図とか、大統領の演説の音声データなんかは常に公開されているし、機密性の高い政策文書でも、一定の期間の経過の後に公開される仕組みが整っているのだ。
さらに、歴代大統領が残した資料については、手書きのメモも含めて、拡大頭領の出身地に整備される大統領図書館に保存されるんだよね。
これがものすごい貴重な資料のようなのだ。
ちょうどスプートニク・ショックやミサイル・ギャップの時の資料が公開されたとき、アイゼンハワー政権やケネディ政権はどういう情報をもとにどういう政策判断をしたのかの政策研究が進んだのだ。
日本では資料もあまりそろっていないし、分析する人も少ないので、なかなかこうはいかないんだけど。

日本でオーラル・ヒストリーをもとにした政治学研究をしている第一人者と言えば、時事放談の司会もしている御厨貴さんが有名。
学者ではないけど、ジャーナリストの立花隆さんなんかも時事問題について当時の関係者と対談したりしている著作が多いので、後々この分野では重要になるはずなのだ。
日本の宰相では、中曽根康文大勲位はかなりの数の自伝的著作を残していて、これは将来貴重な文献になるんだよね。
で、これらの著作の中には、本人が自伝として書いているものだけではなく、誰かに取材されて答えているものもあるので、オーラル・ヒストリーの記録でもあるんだ。
安全保障の専門家の佐々淳之さんの一連の著作も直接の関係者が浅間山荘事件や東大紛争をどのようにとらえて動いていたかがよくわかる資料だよね。

古代中国でも古代ギリシア・古代ローマでも、歴史は時の権力者が自らを正当化するために残されてきた、極めて政治色の強いものでもあったのだ。
特に中国の歴史書はその傾向が顕著で、元王朝の正当性を示すために、前王朝の成立から滅亡までを書いているんだよね。
で、その滅亡には相応の理由があって、となっているのだ。
一方で、権力者の側に属さない歴史的資料なんかもあって、それらは、権力者が作る「正史」に対して「稗史」と呼ばれるのだ。
この「稗史」と比較することで、政治色をさっ引いて分析できるところがあるんだよね。

オーラル・ヒストリーもこれに近いところがあって、やっぱり政府が残す文書にはどうしても政策的意図がつきまとうので、そこに意図的に或いは無意識のうちに音sれている情報を拾い上げるのに重要なのだ。
昭和天皇の側近が残したメモが公開されて話題になったりもするけど、そうした隠された世界の情報がもたらされるという意味でも大きな意義があるんだよね。
自分がそういう歴史の証言者になることはなかなか想定されないけど、いつ聴かれてもいいように、都合のよい記憶だけじゃなく、メモも残しておいた方がいいんだろうね(笑)

2014/08/16

「れい」の乗り物

お盆シーズン真っ盛り!
この時期は笑点以外のテレビ番組でお線香のCMが入るよね。
町中でもお盆用の提灯や灯籠、お供え物なんかを見かけるようになるよね。
まだまだ日本の風習が残っているんだなぁと思うよ。
仏壇がない家庭も増えてきているんだけどね。

お盆という風習自体は、古代から続く日本の習俗に、道教や仏教が入り交じってできているので、不明な点も多いし、地域ごとにけっこう違うんだけど、共通している認識は、先祖の霊がこの時期に戻ってくるので、きちんとお迎えし、送り返すということ。
地獄の釜のふたが開いてそこから霊が出てくるなんていうこともあるよね。
京都五山の送り火も、長崎の精霊流しも考え方は同じなのだ。
お盆の時期に昆虫などを殺してはいけない(無駄な殺生はしてはいけない)というのも、御先祖様がそういった形態で現世にもどってきているから、という考え方に基づくんだよね。
気づかないところでもけっこう身近なところにあるものなのだ。

で、この時期によく見かけるものと言えば、割り箸などをさして動物に見立てたキュウリとナス。
ともに夏野菜の代表選手なのでこの時期にお供え物に使われることもあるけど、この場合は、御先祖様の霊の乗り物と考えられているのだ。
来るときは足の速いキュウリの馬に乗って、帰りは足はのろく荷物をたくさん積めるナスの牛に乗って、ということらしいよ。
これらは「精霊馬(しょうりょううま)」と言うんだって。
同じ夏野菜と言ってもトマトやピーマンじゃダメなのだ(笑)
某人気漫画ではブロッコリーが出てきたけど・・・。

もともとは水辺に生えるマコモで馬型の人形を作っていて、それが乗り物だったのだ。
すでに推古天皇の時代から熱に先祖の霊をまつる風習があったみたいなんだけど、これに時期的に近かったのが中国から伝わった七夕の風習。
七夕伝説の中では、天の川は天の瓜(キュウリ)からできたものという話があって、七夕にキュウリはつきもののようなのだ。
また、ナスのへたは仏の蓮でできた台座である「うてな」に似ているので、仏事に関連しているんだよね。
こういうのが混ざって、季節の野菜でもあるキュウリとナスが馬型を作るのに使われたようなのだ。

マコモでできた馬なら送り火の時に一緒に燃やせばいいのだけど、キュウリやナスだとそうもいかないよね。
かといって生ゴミで捨てたり、カブトムシのえさにするわけにもいかないし。
多くの場合は、川に流したりしたらしいのだ。
これは精霊流しや灯籠流しと同じで、常世(死後の国)は海の彼方にあるという信仰に基づくんだよね。
でも、送る側のナスはわかるけど、迎える側のキュウリも一緒なのはちょっとおかしんだけどね。

いずれにしても、お盆は先祖の霊を敬慕するよい機会。
御先祖様がいるから自分がいるのであって、自分のルーツに思いをはせるのも大事だよね。
ぐちゃぐちで起源はは不明になってはいるけど、伝統・風習としては残していきたいものなのだ。
お墓参りとかも忘れないようにしないとね。

2014/08/09

水難事故注意!!

この時期になると川や海での事故のニュースが多くなるよね。
子供が亡くなったりと痛ましい事故が多いのだ。
もともと遊泳禁止のところで泳いだりするのも悪いんだけど、本人に非がなくても起きるから事故なわけで。
現代ではこうした事故について、なぜ発生したのかを科学的に考えるんけど、むかしはよくわからないから、超自然的な存在を仮定して、そこに原因を求めたんだよね。
川の事故の場合、多くは「カッパ」に関係づけられたのだ。

今となっては「カッパ」というのが代表的な名称になっているけど、実際には、様々なバリエーションの怪異が各地方でそれぞれの名前で呼ばれているんだよね。
カワタロだったり、ガタロだったり、ガラッパだったり、ケンムンだったり。
この地域性というのは習性の違いでもあって、川に住んでいて相撲が好き、キュウリが好きなんてのが共通的な性質でこれがカッパという共通認識につながっているのだ。
で、そんな中の一つに、人や牛馬を川に引き込むなんてのもあるんだよね。

おそらく、人や家畜にまつわる川の事故の原因を説明するために、カッパという怪異に仮託されているところがあるのだ。
つまり、カッパが川に引き込んだから、或いは、カッパが水の中で足を引っ張ったから、と理由をつけて、なぜその事故が発生したのかを納得しようとしたわけ。
実際には、浅瀬だと思って渡っていたところに深みがあってそこに足を取られた、だったり、川の中程に急に流れが速いところがあった、だったりするんだよね。
そうなると、何か別の力が働いて転んだ、という思考パターンになって、その「正体不明の原因」が「カッパ」に関連づけられるのだ。
これは雷は雲の上で雷神が太鼓をたたいている音が聞こえてきている、と考えるのと根本は一緒だよ。

そうなると、今度はそういった水の事故を引き起こす原因としてふさわしい性質がカッパに反映されてくるのだ。
話は逆なんだけど(笑)
例えば、カッパは「尻子玉」が好物で、これを抜かれると人はふぬけになったり、場合によっては命に関わるなんて言われているのだ。
これは、水死体は多くの場合肛門括約筋が緩んでいるので、生きている間はびしっと(?)しまっているはずの肛門が丸く開いているのを見て、「玉状の何かが抜かれたに違いない」という発想から来ているんだよね。
「尻子玉」というものが存在しているわけじゃなくて、水死体を見ると肛門がぽかんと広がっているのだ、そこにあった「はず」の何かを仮定して、かつ、水の事故を引き起こす原因であるカッパが抜いた、という発想につながっているのだ。

また、カッパは人の肝が好物という伝承もあるんだけど、これも同じようなものだと考えられているよ。
水死体は内臓から腐敗してきて、腹腔にその腐敗で発生したガスがたまることで浮力が発生して浮いてくるんだけど、これを引き上げてみると、腐敗しているからおなかの中に内臓がないんだよね。
すると、またまた「カッパが食べた」ということになるんだよね。
肛門から尻子玉をぬいて、そこから手を入れて内臓を取って食べた、となると、話もわかりやすくつながるし。
こうして、水難事故の原因として「特定」されたところから、逆にカッパの性質が付加されていくんだよね。

馬や牛を皮に引き込む、という性質は、実際に牛馬が皮で転んだりする事故もあったし、また、家畜を水神に生け贄として捧げていた古代の風習が習合しているとも言われているんだ。
キュウリ好きなのも同様で、疫病神である牛頭天王(祇園神)にキュウリを捧げる風習があって(これは祇園社の紋がキュウリの切り口に似ているからとか。)、その眷属であるカッパはキュウリが好き、となっていったようなのだ。
牛頭天王は水神とも考えられているんだけど、疫病というのは基本的には人か水によって運ばれてくるものなので、水神としての性質も併せ持つんだよね。
水を介して感染する感染症が多いので、水神に生け贄を捧げれば、そうした疫病の蔓延を防げる、と考えるのが普通だったのだ。

ちなみに、人を介して伝染する疫病を防ぐためには、村の入口に道祖神を置いて「道返し」の呪法による悪いものが道を通って村に入ってくるのを防ごうとしたんだよ。
その名残が辻々にある道祖神、庚申塔・庚申塚、地蔵など。
むかしの人も原因はわからないまでも、道や川を伝って外界から感染源が来ることは経験値として理解していて、それを当時の知識と文化的背景により理解する理屈が疫病神とかそういうものを想像することだったんだよね。
実際問題としても、人の行き来を遮断したり、危ないと思われる川の水を使わなくすれば疫病は収まっていくわけで、あながち対処法まで考えると、このように考えることに大きな不合理はないんだよね。

というわけで、水難事故を防ぐためにも、この川や池にはカッパがいて人を引き込むから入っちゃダメ、というのも不条理ではないんだよね。
もともと事故が多発するような危ない場所がそう言われているだけなので、迷信だと排除せず、耳を傾けるべきなのだ。
もっとも、遊泳禁止と言われているにもかかわらず入って泳ぐような人にはそもそも何を言っても通じないのかもしれないけど。

2014/08/02

しゃりしゃり冷た~い

最近はいろんなトッピングのかき氷があるそうで、ちょっとしたブームになっているとか。
九州のシロクマはフルーツをのせて加糖練乳をかけたものだけど、アサイー入りだとか外国テイストのものもでてきているみたい。
テレビで見たけど、山崎ウイスキーをかけて、最後は水割りとして飲む、なんてのも登場したとか。
地方の変わり種としては、ところてんのように酢醤油をかけたものもあるんだってね。

そんなかき氷だけど、日本を代表する夏の涼味なのだ。
でも、よくよく考えてみれば、氷がある程度安価に手に入らないと、かき氷を庶民が食べることはできないんだよね。
実際に、平安時代にすでに氷を削ったもの(削り氷)に甘い汁(甘葛の汁)を書けてものが高貴な人の食べ物として珍重されていたのだ。
枕草子や明月記に出てくるよ。

氷が一般に出回るようになったのは実は明治時代。
アイスクリームを国内で最初に売り出したことでも知られている横浜馬車道の町田房造さんが函館の五稜郭の外堀で作った氷を売る氷点を開いたのが最初。
それまでは「ボストン氷」といって、喜望峰を回ってきた米国産の天然氷を輸入していたとか!
もちろん、国内で冬に凍った氷を氷室に保存して、というのはあったけど、これはあまり流通しなかったんだよね。
この町田さんの天然氷「函館氷」は良質かつ低廉で、庶民でも氷を入手できるようになったんだって。

明治16年(1883年)に東京製氷株式会社ができて、人造氷(製氷機により作った氷)が大量に生産できるようになるんだけど、そのおかげで、明治20年代には、かき氷が大衆的な食べ物となっていて、大森貝塚を発見したエドワード・モリス博士の日記にも、かき氷を食べたという記録が出てくるとか。
この頃にはごりごり回してかき氷を作る氷削機も発明されたようだけど、台鉋で削るのが一般的で、氷削機が普及するのは昭和に入ってからだって。

戦前のかき氷は種類も多くなく、砂糖をふりかけた「雪」、砂糖蜜をかけた「みぞれ」、小豆あんをのせた「金時」くらいで、シンプルなもの。
戦後になると色のついたかき氷シロップが登場し、定番のメロン、イチゴ、レモンが出てきて、ブルーハワイとかマンゴーとか色も風味も増えていったんだよね(笑)
で、ここ最近になって、そこにフルーツ、白玉団子、タピオカなどのトッピングもするようになってきたのだ。
だんだんとパフェに近くなってきたのかな?
似たものにフラッペというのがあるけど、もともとはクラッシュドアいすにリキュールなどの酒類を注いだ飲み物がフラッペで、日本ではほぼかき氷と同義になってしまっているんだって。
洋風テイストを出したいときにフラッペと称するのだ。

かき氷の普及は製氷機の発達によるところが大きいわけだけど、ここ最近は天然氷を使っていることを売りにするものもあるんだよね。
ブランド戦略だけど、実際に質のよい天然氷は、透明度が高く、溶けにくいという性質があるのだ。
これは、ゆっくりと氷の結晶が作られていくので、氷の結晶の粒が大きくなり、かつ、氷の結晶中に空気があまり入っていないため。
急速冷凍で氷を作るとどうしても空気を巻き込んで凍ってしまうので、透明度が低くなってしまうし、小さな氷の結晶の集まりになってしまうので、融けやすくなるんだ。
ま、天然氷でなくても、ゆっくりと冷却していけば似たようなものを作れるんだけど。

2014/07/26

穴場的職業?

号泣県議が特に話題になっているけど、最近のニュースでは地方議会の不祥事がよく報道されているような気がするのだ。
ひとつが大きな話題になったから、今まで報道されなかったようなものまで目に触れるようになっただけかもしれないけど・・・。
それにしても、都道府県会議員や、市区町村議会議員って、けっこう偉い人たちだと漠然と思っていたわけだけど、実態はそうでもないらしいね。
年寄りだけでなく、若手が増えてきたのはよいことなんだろうけど、なんだかなぁ、という人もいるようで。

地方の議会は、明治憲法下からあるにはあるんだけど、法律できちんと位置づけられたのは戦後からなんだって。
日本国憲法第九十三条第一項では「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。」と規定されていて、これを受けて、地方自治法第八十九条で「普通地方公共団体に議会を置く。」と規定されているのだ。
これが地方議会の設置根拠。
その後の規定で地方の議会に関していろいろと定めているんだけど、おもしろいのは同法第九十四条で、「町村は、条例で、第八十九条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。」としていて、条例で定めさえすれば、地方では間接民主主義ではなく、直接民主主義もとれるようになっているのだ!
通常は議員定数なんかを条例で定めるんだけどね。

地方自治体については、国とは違って「首長制」をとっているので、都道府県知事や市区町村長と議会との関係は、むしろ米国の大統領と議会との関係にちかいところがあるのだ。
例えば、国会の場合は、国会の議決を内閣総理大臣が差し戻すことはできないけど、地方議会の場合は、首長に拒否権が認められていて、「再議に付す」ことができるのだ。
もちろん、議会で再議決されるとその議決は確定するので、あくまでも再考を促すという意味合いでだけど。
米国のように大統領が署名しないと法律として発効しない、というほどではないのだ。

また、首長には専決処分というのが認められていて、あらかじめ議会から権限がゆだねられている場合や、議会を開催する余裕がないほどの緊急時、議会が解散していて開けないときなど、本来的には議会の議決・決定が必要な事項について、首長の判断で処分を行うことも認められているんだって。
事後的に議会の承認を得たり、議会に事後報告をすることを求められたりはするんだけど。
ここも政府と国会との関係とは大きく違うのだ。
これも地方自治法により定められた手続なんだよ。

現在問題になっているのは、議員報酬や政務調査費など。
この議員報酬は自治体によってだいぶ違うんだけど、フルタイムの職業ではなく、パートタイムの職業として議員活動をするには高いと言われているんだ。
日本の地方議会は、短いと国民から批判を受けることが多い国会の会期よりさらに短くて、実働は40~50日と言われるんだよね。
ということは、週一。
それなのに、多くの都道府県、市町村では、平均的なサラリーマンの給与をはるかに超える給与を出しているんだって。

さらに、問題になるのが、その議員活動を支えるために支出されている経費。
ひとつは「費用弁償」というやつで、議員としての職務を行うに当たって必要となる旅費や通信費が支給されるというもの。
例の切手代のやつだ!
これは地方自治法第二百三条第三項で規定されているんだ。
ちなみに議員報酬自体はその第一項で、議員への期末手当の支給については第四項で定めているよ(期末手当は別途条例で支給する旨を定める必要あり。)。

加えて、地方自治法第百条第十三項では、条例の定めるところにより、議員の調査研究に視するための必要な経費として政務調査費を交付することができるとしているのだ。
ただし、その次の第十四項で、政務調査費の交付を受けた場合は、条例の定めるところにより、その収入及び支出の報告書を議長に提出することが義務づけられているんだ。
この報告書の内容がずさんで、コピペばっかりだった、なんて話も前にあったよね。
今回は領収書すらないとか、異常なものもあったけど・・・。

こうしてみると、地方の議会の議員はけっこう金銭的に恵まれていることが多いんだよねぇ。
自宅のある地区でもそうだけど、市区町村議会くらいだと、当選確率がめちゃめちゃ高くて、立候補した人のうち、一人二人だけしか落選しない、みたいな地域も多いようで。
上位何名が当選、というのではなくて、下位何名が落選というのじゃねぇ。
国会議員でも変な人がいると話題になることがあるけど、地方議会の現場はもっとすごいことになっていたりして。
選挙に出るノウハウと、実は当選確率が高い地域がルということを知っていれば、けっこう穴場な職業だと思うんだよね。

2014/07/19

誇り高く腐る

ボクは家系的にもお酒が苦手なんだけど、甘いワインとかだとついくいっとやっちゃって、一気に酔いが回ったりするんだよね・・・。
そういう飲み口のお酒は危ないので牽制しているのだ。
でも、お酒を飲む人の間では、デザートワインなどの甘いお酒の需要もあるんだよね。
食前や食後に楽しんだり、方向の強いチーズと合わせたり。
そんな代表選手が貴腐ワイン。

「貴」の字はついているけど、文字どおり「腐」ったぶどうから作るからこの名前なのだ。
腐っても鯛、じゃなくて、腐敗したブドウのみを使っているんだけど、芳醇な香りと強い甘みのワインができあがるので、「貴」の字をつけているんだ。
日本語の「貴腐」はそのままの訳語だそうで、欧州でも「高貴なる腐敗」を意味する言葉で表されているとか。
見た目は、皮はしわくちゃで、表面にカビが生えているんだけど、そこから取り出した実から搾り取った果汁は、とろりとした黄金色の香り高いもので、それを発行させてワインにするのだ。

現象的には、白ワインの原料となるブドウの果皮に、灰色かび病の病原菌のボトリティス・シネレアという糸状菌(かび)が感染したもの。
このかび自体はありふれたもので、普通に葉や茎などに感染すると大変な被害になるんだけど、一度成熟したブドウのみの果皮にだけ単独で感染すると、「貴腐」という現象を引き起こすことになるのだ。
果皮の表面には、ワックスを主成分とするクラチラ層というものに覆われていて(照葉樹の葉っぱのてかりもこのクラチラ層によるもの。)、内部の水分の蒸発を防いでいるんだけど、かびの感染によりこのクラチラ層が溶かされ、水分がとんでいってしまうことになるのだ。
このために外見上ブドウの実はしわくちゃになるんだけど、その分だけ果汁は凝縮されるので、はちみつのような濃い甘さになるんだって。
天然に果汁を凝縮した感じになっているわけだね。

実はアイスワインも同じようなもので、気温が零下になった厳寒の季節に凍ったブドウの実を収穫し、凍ったまま果汁を搾るのだ。
すると、凍った氷の部分は液体の果汁と分離できるので、果汁の方は凝縮された状態になっているわけ。
これで貴腐ワインと同様、糖度の高い果汁が得られ、そこから甘いワインが作られるのだ。
ある程度ブドウを干してから作る干しぶどうワインなんていうのもあるみたいだけど、どれここれも水分を飛ばすことで、糖度の高い凝縮された果汁を使うことになっているのだ。
貴腐ワインの場合は、かびの代謝によって独特の香りがつくというおまけもあるんだけど。

ブドウ果汁は酵母によるアルコール代謝によってワインになるんだけど、アルコール濃度がある程度高くなると、酵母がアルコール(エタノール)により死滅してしまうので、いくら糖分があっても、酵母による発酵ではアルコール度数には限界があるのだ。
これはだいたいアルコール濃度で16~20%なんだけど、普通のブドウ果汁を使う場合、このくらい発酵が進むと、もうそんなに糖が残っていないので、そこまで甘くはないんだよね。
ところが、貴腐ワインなどのようにもともと糖度を高めた果汁を使っている場合、このアルコール濃度に達してもまだ糖が多く残っているので、甘みが強くなるのだ!
逆に、発酵途中でそとからアルコールを入れて発酵を止め、中の糖分を残したままにする製法もあるんだって。
そういうのは「酒精強化ワイン」といって、多くの場合はブドウ果汁を原料としたブランデーなどを加えて作るのだ。
代表選手は、スペインのシェリー酒、ポルトガルのポートワイン(ポルト酒)やマディラなんかだよ。

それにしてもい、甘いワインを作るためにいろいろ工夫をしているんだねぇ。
それだけ需要があるってことだろうけど。
日本の場合、清酒でも焼酎でも甘いお酒はないような気がするから、この辺は食習慣とかの関係もあるのかな?
脂っこいものを食べると甘いお酒がほしくなるとか。

2014/07/12

我は海の子

7月にしては最大級の台風が来たのだ!
本州はまだ梅雨だけど、沖縄はもう台風の季節か。
それにしても、木が倒れたり、道路が水浸しだったり、衝撃的な映像だなぁ。
で、そんな被害状況の報道を見ながら思ったのが、台風或いは熱帯低気圧はどうやって出てくるんだろうってこと。

調べてみると、熱帯低気圧というのは海上でしか発生しないのだ!
赤道付近の低緯度地域の海水が、太陽光により温められ、高温高湿の空気の塊ができるところから始まるのだ。
この暖かく湿った空気は上昇していくんだけど、冷却されつつ上昇していく中で、含まれていた水蒸気が結露するのだ。
水は蒸発して水蒸気になるときに気化熱を奪っていくけど、逆に水蒸気が結露するときには、その気化熱と同じ熱量の潜熱というのが発生するのだ。
つまり、暖かい空気は上昇して行くに従って冷やされていくんだけど、中に含まれている水蒸気が結露すると発熱するのだ。

通常気温は100m上昇するごとに0.6度ずつ下がるけど、結露して発熱しながら上昇していく場合、100m上昇するごとに0.5度くらいしか下がらないんだよね。
そのままだと常に周りの空気より暖かいので上昇を続けていくことになるんだけど、水蒸気は無限にあるわけではなくて、ある時点で結露は止まるのだ。
そうなると、今度は断熱膨張(まわりの空気と熱の交換をせずに膨張していくこと)していくので、打って変わって、100mごとに1度近く温度が下がることになるんだ。
これで急ブレーキがかかって、一定の高度で上昇が止まるわけ。

海上でこの上昇気流が発生すると、まわりの湿った空気が巻き込まれて、一緒に上昇していくのだ。
すると、この巻き込まれた空気の中の水蒸気も結露するので、熱を発生しながら上昇していくわけ。
これにより上昇気流が大きくなるのだ。
まさに「マッチポンプ方式」でまわりの湿った空気を巻き込みながら、発達していくんだ。
上昇気流が発生するときには、地球の自転による「コリオリの力」が働くので、渦を巻いたようになるんだよ。

しかしながら、まわりに湿った空気がなくなると、「燃料」が供給されなくなるので、徐々に弱まっていくことになるのだ。
特に、陸上に出てしまうと、もう湿った空気はほぼ供給されないので、急速に弱まるよ。
台風が上陸すると徐々に弱まって、最後には温帯低気圧になっていく、というのはこのため。
いったん陸上に出てもまた海上に出ると、再び活性化することもあるのだ。

ちなみに、温帯低気圧は、暖かい空気の塊と冷たい空気の塊が接触するときに発生することが多いのだ。
暖かい空気は軽く、冷たい空気は重いので、冷たい空気の上に暖かい空気が乗り上げるんだよね。
すると、暖かい空気は強制的に上昇させられ、断熱膨張で冷えていくことになるんだけど、水蒸気を多く含んでいる場合、結露が発生して雲を作りながら上昇していくことになるのだ。
熱帯低気圧で巻き込まれたまわりの湿った空気のような感じで。
この暖かい空気と冷たい空気の接触面が「前線」で、そこで雲が発生するので、前線の下で雨が降るんだ。
温帯低気圧はよく前線を伴っているけど、これは温帯低気圧の発生の過程からすると必然なんだよね。

というわけで、台風が発達する原理はなんとなくわかったんだけど、なんで最初に上昇気流が発生するかってよくわからないよね(笑)
広い海上では、まわりの空気も同じように暖められているはずで、限られた空気の塊だけがより暖められる、或いは、まわりの空気がなんらかの理由で冷やされて相対的に暖かくなることが必要なのだ。
偏西風やら貿易風やらそういうのが関係しているのかもしれないけど。
ただ、寝たいの海上で一度それなりの規模の上昇気流が発生してしまうと、熱帯低気圧になって発達していくことだけは確かなのだ。

2014/07/05

生乾き?

テレビで大評判と紹介されていたので、我が家でも成城石井の「ちりめん山椒」を買ってきたので。
さっそく食べてみたんだけど、山椒の香りは鮮やかだけど、全体的に甘いような・・・。
こういうのは好みがあるからね。
これよりは、大根おろしと大葉と一緒にごはんに釜揚げしらすをのせたしらす丼の方が合うみたい。
で、気になったのが、ちりめんじゃことしらすって何が違うんだろう?、ということ。

調べてみると、かなり境界はあいまいなようで、明確な定義はない、なんてのも見かけるんだけど、一般的には使い分けがあるみたい。
それは、基本的に関西での呼び名が「ちりめんじゃこ」で、カタクチイワシの稚魚などの塩水でゆでたものを指し、ゆでただけの「釜揚げ」と、ゆでてから天日干しにして乾燥させた「上乾(じょうぼし)」があるのだ。
一方で、幼魚でまだ透明感がある状態の稚魚はゆでると白くなるので「しらす」と呼ばれていて、関東ではこれを生乾きの状態である「しらす干し」として食べるのが一般的なのだ。
最近は「釜揚げしらす」なんていう干していないしらすもあるんだけど・・・。

「ちりめんじゃこ」は漢字で書くと「縮緬雑魚」で、小さな魚をゆでて平らに広げて干したものが、細かいしわが特徴の織物の「縮緬」に似ているのでそう呼ばれるようなのだ。
シート状に干すと「たたみいわし」になるけど、これも畳表に似ているから。
こういうネーミングセンスってけっこう好きなんだよね(笑)
しらすは、まだ体に色素がない稚魚はゆでると白くなることからそう呼ばれるんだけどこれはその稚魚を指す言葉なのだ。
なので、正確には、食卓に上がるのは「しらす干し」になるんだよね。

ちなみに、しらすやちりめんには時々エビやカニの幼生、小さなタコ、タツノオトシゴなんかが混ざっているよね。
基本的には主にカタクチイワシなんだけど、一緒にとってしまうので入っているのだ。
一部では「ちりめんモンスター」なんて呼んでどういうのが混ざり込んでいるか楽しんでいる人たちもいるけど、確かに子供の時しらすをかき分けて探したっけ。
最近は見ないなぁ、と思っていたら、アレルギーとかの関係で取り除いているとか!
むかしは手作業で取り除くのが大変だから混ざったままだったんだろうけど、そこまでするんだねぇ。

我が家でも買ってきたちりめん山椒は、カタクチイワシの稚魚などを塩水でゆでた後、軽く天日干ししてから、山椒の実と炊き合わせたもの。
京都発祥の料理で、京の花街、上七軒の料理人が考案したとか。
僕も京都のイメージが強かったけど、最近はいろんなところで見かけるよね。
それこそ普通にスーパーでも売っているわけだし。
京都の市街は海からわりと離れているので、流通が発達していない当時は新鮮な魚介類はなかなか食べられなかったんだよね。
ハモみたいなとにかく生命力の高い魚を運んでくるか、ある程度保存のきく状態(=干したものなど)を持ち込むか、のどちらか。
なので、干したちりめんじゃこをおいしく食べる工夫としてこの料理が生まれたんだよねぇ。

2014/06/28

議場の華?

都議会でのセクハラやじが問題になっているのだ。
たぶん、やじだから発言者は不特定だろうと高をくくっていたんだろうけど、けっきょくは名乗り出るハメになったね・・・。
もっと失礼なやじは誰が発したのかはわからないようだけど。
無責任に特命ではやし立てるからやじなんだけど、かりそめにも選挙で選ばれた人が、国民・住民の代表として議会でやるような行為じゃないよね。


ところが、我が国では、むかしから「やじは議場の華」といった受け止めもあるのだ。
間の手のようにうまくさしはさむ人もいるんだよね。
例えば、鳩山政権下で、首相がガンジーの7つの社会的大罪のひとつとして「労働なき富」というのを施政方針演説で言及したとき、「それはお前だ-!」とやじられたのは印象深いのだ(笑)
そういうのはまだましだけど、聞くに堪えないようなひどいのもあるんだよね。
今回の都議会の件がまさにそうだけど、その少し前には、橋下大阪市長が大阪市議会の野党からのやじに怒ったこともあったのだ。
海外の議会でもこういうのはあるのかな?

「やじ」は「野次馬」の「馬」が省略された言葉と言われていて、もともとは、無責任にまわりからはやし立てる人のことを「野次馬」と言い、その「野次馬」が発する言葉が「やじ」だったのだ。
火事やけんか、事故があると集まってくるような人たちがまさに「野次馬」。
「やじる」と動詞形で使われることもあるし、「やじを飛ばす」なんて表現もあるよね。
問題となっている自称に直接関わるのではなくて、無責任に回りではやし立てるだけなので迷惑なのだ(>o<)
議会の場合は、議員であっても自由に発言してよいわけじゃないので、「やじ」ではやし立てる、相手の揚げ足をとる、みたいな文化ができてしまっているんだよね・・・。
悪い慣習なのだ。

「野次馬」の語源は「親父馬」が転訛したものと考えられていて、年老いた馬は役に立たず、ただただ若い馬の後ろをついてくるだけなので、後ろにいる役に立たない人たちを指す言葉として使われるようになったのだ。
「暴れ馬」の意味で「野次馬」が使われることもあったようだけど、御しきれない「暴れ馬」は役に立たないという意味で年老いた馬と同じ、ということみたい。
この意味も重なって、後ろで騒ぐだけの役に立たない連中、という否定的な意味につながるのだ。
で、こういう人たちの心理がまさに「野次馬根性」というわけだよね。

サッカーのワールドカップが開催されているけど、日本-コートジボワール戦後の渋谷駅前の交差点の騒ぎも野次馬的なんだよね。
日本は残念ながら敗戦したわけだけど、なぜかハイタッチしながら騒いでいる人たちがいたとか。
「にわかファン」とか言って敵視する人たちもいるようだけど、むしろ、ただただ騒ぎたいだけの人たちがワールドカップに乗じて集まっているような気がするよね。
「にわか」だろうとなんだろうと、「ファン」だったら負けてくやしかったり、がっくりしているわけだし。
海外の「フーリガン」のように負けた腹いせで暴れているというわけでもないようだから、まさに日本的な「野次馬」なのだ。
騒ぎが起こると警察も厳戒態勢をとらざるを得ないけど、こういうのでサッカーを応援していたサポーターに迷惑がかかるのはよくないよね。

やっぱり、「野次馬」とか「やじ」は下品なんだよね。
集団の中の匿名性でもって恥も外聞もなくそういうことをしてしまうというのが問題なのだ。
日本人って普段から抑圧されているからそういうのが出てしまうのかな?
本人のモラルの問題が大きいとは思うけど。
言いたいことがあるなら、「やじ」ではなく、正々堂々と面前で言いましょう!

2014/06/21

まずは冷ましてから

福島に中間貯蔵施設を作ろうという政府の方針についてもめているのだ・・・。
今回作ろうとしているのは、福島の原発事故に由来する放射性廃棄物の中間貯蔵施設。
除染に伴うものもあるみたい。
これは、大量に出てしまった放射性廃棄物を処分するに当たって、どうやって最終的に処分するのかがまだ決まっていないので、それが確定するまでの間、放射性物質が漏洩したりすることがないよう管理しながら、とりあえず置いておくための施設なんだよね。
そもそも使用済み核燃料に伴う高レベル廃棄物の最終処分もまだできていないような段階なので、仕方がないと言えば仕方がないのだ。

これまでは、原子力の世界で「中間貯蔵」というと、使用済み核燃料を再処理するまでの「中間貯蔵」と、再処理後に発生した高レベル廃棄物を最終処分するまでの「中間貯蔵」を指していたのだ。
どちらも次の工程に進むまでにとりあえず置いておく、ということなんだけど、これは次の工程がつまっているための順番待ち、というだけではないんだよね。
置いておくにはそれなりに意味があるのだ。

使用済み核燃料や高レベル廃棄物の中には、非常に不安定な放射性核種が含まれていて、常に原子核崩壊が起きて、放射線が出ているのだ。
だからこそ危険なんだけど。
で、この放射線を遮蔽だけしていればいいか、というと、そうではないんだよね。
原子核崩壊によって出てきた放射線、特にα線やβ線はまわりの物質に作用するのだ。
このとき、膨大な放射線のエネルギーの一部は熱エネルギーに変換され、発熱するんだよね。
この熱を「崩壊熱」と言うんだけど、これが無視できないくらいの熱なのだ。

福島の事故でも、使用済み核燃料が保管されているプールの水が枯渇すると大変なことになる、と騒がれたけど、まさにこの崩壊熱が問題なんだ。
冷却せずに放っておくと、この崩壊熱で使用済み核燃料はどろどろに融けてしまい、場合によっては土壌にしみ込んでいくおそれもあるのだ。
また、不定形になると扱いづらいので、通常は水を張ったプールの中で一定期間冷却し、ある程度冷めたところで再処理の工程に回すんだよね。
福島で問題になったのは、まさにその冷却期間中の使用済み核燃料で、水がなくなって冷却できなくなると、崩壊熱でどろどろに融けてしまうおそれがあったのだ。

使用済み核燃料が再処理されると、燃料になるウランやプルトニウムが抽出され、その他の燃料にならない放射性核種がたくさん入った廃液が出るのだ。
これをガラスで固めたのがガラス固化体と呼ばれるもので、実物はさすがに見たことないけど、真っ黒なガラスの塊だよ。
この固化体は自らの崩壊熱で融けるようなことはないけど、それでもけっこうな熱を放出していて、できたばかりだと200℃近いそうだよ。
これを30~50年間置いておくと徐々に冷却され、100℃以下になるので、そこではじめて最終処分できるようになるんだって。
それまでは空冷で冷まし続けることになるわけだね。

我が国では、300m以上の地中に埋める地層処分を最終処分として考えているのだ。
地下水脈が近くになくて地下水への放射性物質の漏洩が想定されず、地盤的にも安定で地震などで大きな地殻変動が起こることがない、などの生活環境から安全に隔離できるところに埋めようとしているんだ。
その場所がなかなか決まらないんだけど・・・。
もちろん、ただ埋めるわけじゃなくて、きちんと漏れがないかモニターしつつ、仮に漏れた場合も回りに広がらないように人工的なバリアも設け、管理していくことになるのだ。
でも、かなりの熱を発するものをいきなり地中に埋めるわけにもいかないので、まずは地上で十分冷却し、それを地下深くに保管するんだよ。
ちなみに、高レベル廃棄物の場合は、半減期が何万年とかいう核種が含まれているので、この地中での保管もそれと同じような時間的感覚になるんだよね(>o<)
そういう意味では、地上での数十年間はほんの一瞬なのかもしれないけど・・・。

今回問題になっている福島の中間貯蔵施設の場合は、当面の問題としてあるのが、放射性物質を含んだがれきや除染するときにはがした放射性物質を含む土をどうするか、なんだよね。
比較的線量は少ないので、高レベル廃棄物のような厳重な管理で、ということではないんだけど、とにかく量が多いので、処分に困っているのだ。
低レベル廃棄物は、50~100mの地下にコンクリートなどで囲いを作って埋設処分するんだけど、やっぱりどこに埋めるかが問題。
約300年後には、その上は宅地や農耕地として利用できるくらいまで放射線レベルは下がるというけど・・・。

福島の人たちからすると、中間貯蔵といいつつ、ずっとそこに置かれたままになったり、或いは、どのみち相当な長期間汚染された状態が続くからとなし崩し的にそこに埋設処分されるようなことを懸念しているんだろうね。
某大臣による問題発言もあったけど、どこかに「しわよせ」をしなくちゃいけないというのは確かなので、地域住民の理解を得た上で進めないと、大変な騒ぎになることは必至なのだ。
でも、処分しないといけないので、なんらかの形で折り合えるとよいのだけど。

2014/06/14

水もしたたるいいカサ

うっとうしい梅雨の季節到来!
この時期はカサを持ち歩かなきゃいけないのが面倒だよね(>o<)
しかも、電車の中でぬれたカサを押しつけてくる人とかもいるし・・・。
カサから垂れる水滴の量ってけっこうなもので、カサ袋なんかを使うとびっくりするほどたまっているよね。
ある程度カサを振って落としているつもりなのに。

買ったばかりのカサは撥水効果も抜群で、ちょっと振るだけですぐに水滴がきれるんだけど、使い込んでいくうちに水切れは悪くなり、しまいには、カサの布地がぬれるようになるのだ・・・。
こうなるとカサを乾かすのにも時間がかかるんだよね。
で、撥水コートスプレーなんかをかけるんだけど、その効果も短期的。
なかなかもとの撥水効果は復活しないのだ。
で、ネットでいろいろ調べてみると、おどろきの方法が!

布製のカサの場合、布地の表面にフッ素樹脂加工がしてあって、それで撥水効果が発揮されるのだ。
このフッ素樹脂はテフロン加工のフライパンと同じで、熱や化学薬品にも安定で、水と油をはじくんだよね。
テフロン加工のフライパンに少量の水を入れると水滴のまま転がるけど、ああいう状態でカサの表面ではじかれるというわけ。
ただ、フライパンも使い込んでいくとテフロン加工がはげ、水や油をはじかなくなるように、カサのフッ素樹脂加工もそんなに長持ちしないのだorz
これが最初はよく水をはじいていたけど、だんだんとはじかなくなる原因。

フッ素樹脂加工された布地の表面にはきれいにフッ素樹脂が並んでいるんだけど、カサをたたむときや持って歩いているときにこすれたり、手の脂がついたりなどで、このフッ素樹脂のきれいな並びに乱れが生じるのだ。
そうすると、その乱れたところは水をはじかなくなるので、水がしみこんでしまうわけ。
表面に規則正しく水をはじくフッ素樹脂が並んでいないと、撥水効果は期待できないのだ!
防水スプレーを上から吹き付ける場合は、こうしたフッ素樹脂の乱れに伴う凸凹を上からさらにコーティングしてしまうというもの(防水スプレーには、カーワックスにも使われるシリコン系樹脂も含まれているみたい。)。
穴だけ埋めるというよりは、厚塗りで重ね塗りしてごまかす感じかな(笑)
表現は悪いけど。
でも、そもそも均一にきれいにコーティングできないし、やっぱりもともと凸凹のあったところはまたコーティングがはがれやすいしで、あまり長持ちしないんだ。

そこで試してみたいのが、熱によってフッ素樹脂の規則正しい並びを復活される方法♪
こすれたりしてフッ素樹脂の並びに乱れができて撥水効果が弱まっている場合、フッ素樹脂自体がはがれてしまっているわけではないので、またきれいに並べられれば撥水効果はもどるはずなのだ。
で、実は、それは外から熱を加えることで簡単にできるんだって。
方法は簡単。
弱めのドライヤーの熱を当てるだけ。
少しずつぬらしながらやると、撥水効果の復活が目に見えてわかるそうだよ。
アイロンをかけるのでもいいそうだけど、解体しないでアイロンはきついよね。
ただし、使い古したカサだとすでにフッ素樹脂自体がはがれ始めている可能性があるので、その場合はあまり撥水効果はもどらないのだ。
また、フッ素樹脂加工によるものなら復活するけど、特殊な化学繊維などを使って撥水効果を出しているものなどには応用できないよ。
フッ素樹脂加工かどうかをまず確認しよう!

2014/06/07

せきたん

ここのところずっとのどの調子が悪いんだよね・・・。
咳が出て、痰がからむのだ(>o<)
それ以外はなんともなくて、熱が出るわけでも、体がだるいわけでもないので不思議。
声が出なくて苦しいので、早く治したい!
で、もはやプロポリス配合ののど飴でもダメで、トローチを使い始めているのだ。

総合感冒薬に入っている鎮咳去痰薬は、名前のとおり、咳を鎮め、痰を出しやすくするもの。
でも、実はそのメカニズムはいろんなところに関与していて、それだけいろんな種類の集合体になっているのだ。
調べてみると奥が深いねぇ。
自分の症状に合わせて、適切な薬を選ぶのがよさそう。

有名なのはジヒドロコデイン。
通常はリン酸ジヒドロコデインとして総合感冒薬などに入っているのだ。
これは中枢神経のオピオイド受容体に作用して、延髄の咳中枢を抑制すると考えられているんだ。
咳を出そうとする指令を出元から止めるわけ。
ただし、ジヒドロコデインはモルヒネ類似体で、弱い習慣性もあるのだ。
なので、麻薬性鎮咳薬と分類されているよ。
同じようにアヘン抽出物でモルヒネ類似体なんだけど、麻薬性の習慣性がないものもあるんだ。
ノスカピンなんかがその例。
これらは非麻薬性鎮咳薬と区別されるんだ。
なぜか便秘の副作用があるものがあるので(特にコデイン)、その点でも使用上注意が必要みたい。

次のグループは興奮作用により気道を拡張することで咳を止めるもの。
一つはアドレナリン作動薬で、アドレナリン受容体に作用して、交感神経を興奮させるもの。
漢方薬の麻黄から抽出されたエフェドリンなんかがその例だよ。
このグループの薬の場合、同時に心拍数や血圧を上げるとともに血管を拡張させるので、動悸や頭痛といった副作用も出てくるので注意が必要なのだ。
一方、中枢神経に作用して興奮作用をもたらすのはカフェインなどの薬物。
「アンナカ」として有名になった安息香酸ナトリウムなんかも使われるよ。
あんまり咳を止める目的で使われることはないとは思うけど、総合感冒薬には眠気覚ましとして入っているので、気管支拡張作用も期待される、という程度のものなのだ。

で、神経に作用するのではなくて、のどの筋肉(平滑筋)に作用するのがキサンチン誘導体。
喘息の薬のテオフィリンなんかがそうだよ。
気管支の拡張・収縮を担う平滑筋を弛緩させることで、気管支を拡張するのだ。
基本的には気管支を広げて呼吸をしやすくするものなんだよね。
むかしから濃いコーヒーを飲むと咳が止まることが知られていて、カフェインよりも気管支拡張作用が強力なものとして抽出されたものがテオフィリンなんだとか。
日本でも咳がひどいときにお茶を飲んだりするけど、あながち意味がないわけではないんだねぇ。

逆に、気管支の収縮を抑えることで、結果として呼吸がしやすいようにする薬もあるのだ。
それが抗ヒスタミン剤。
ヒスタミンはアレルギー症状のトリガーを引く神経伝達物質として知られているけど、アレルギー性のくしゃみや咳を止めるには、そのヒスタミンを押さえ込めばよい、というわけ。
中枢神経に作用する抗ヒスタミン薬は眠気を催す副作用があるので注意が必要だけど。
(総合感冒薬にもよく入っているけど、抗ヒスタミン剤による眠気を相殺するためにカフェインが入れられるのだ。)

ここまでは主に咳を抑えるものだけど、痰を出しやすくする作用を持つ薬もあるよ。
例えば、ブロムヘキシンなどの去痰剤。
気道の粘液分泌を促進することで、痰の粘度を下げ、出やすくするのだ。
通常痰が絡むような場合は、痰の粘度が高まっていて出にくくなっているんだよね。
かたくなっている痰を柔らかく溶かす作用の薬物もあって、それは気道粘液溶解薬と呼ばれるもの。
ブロムヘキシンにもその作用はあるんだけど、他にメチルシステインなど。
タンパク質の構成要素のアミノ酸であるシステインは、チオール基(-SH)同士がくっついてジスルフィド結合(-S-S-)を作ることで架橋し、タンパク質の高次構造を支えて安定化を担っているんだけど、この結合を切ることでタンパク質を水に溶けやすくし、粘度を下げることができるのだ。
これは薄めるんじゃなくて、そもそも粘度を下げるというところがみそ。
このほか、リゾチームのような消化酵素により、炎症の原因となる雑菌を排除するというのもあるのだ。
そうすると、そもそも痰がからめとる異物が少なくなるので、痰はかたくなならなくなるんだけど、これは効くには時間がかかる・・・。

というようなわけで、いろんな薬が使われているのだ。
で、多くは咳を止める薬なんだけど、そのまま咳だけ止まるとますます痰がつまるので、通常は去痰薬と一緒に使うんだって。
やっぱり勝手に「これ」と自分で選ぶんじゃなくて、市販の咳止め薬を使った方がよいのかなぁ。
いまのところトローチはけっこう効いているから、まずはこれに頼るか。

2014/05/31

もはや伝統芸の域か?

東南アジアでは、ベトナムの反中デモだけでなく、タイのクーデターも大きな騒ぎになっているのだ。
日本企業も脱中国を進めて東南アジアに生産拠点を移し始めているけど、なかなか政治的に安定しないものだねぇ。
日本がそれだけ平和ぼけするくらい平和なのかもしれないけど。
とにもかくにも、世界では暴力を伴う政治的な動きがけっこうあるのだ。

クーデターは、もともとフランス語のcoup d'Etatで、「国家への一撃」といった意味なんだって。
「革命」は、社会制度と支配的なイデオロギーの政治的転換だそうで、例えば、フランス革命のように絶対王政から共和制に大変革が起こったり、米国独立のように、植民地支配からの脱却だったりするのだ。
主に政治システムの大転換を伴うものを指すそうだよ。
似たもの「反乱」があるけど、これは統治機構に対して暴力をもって政治的反抗をするもので、これが革命のきっかけになることもあるのだ。
インドの独立はもともと反乱から始まっているしね。
これらに対し、クーデターの場合は、支配階級内部での権力闘争の中で発生する政治的な暴力の使用に分類されるのだ。
政権の中の反主流派が軍と結託して政治機能を停止させ、国を乗っ取るみたいな。
国のNo.2がクーデターを起こして政権を執る、というのもこれだよ。

テロリズムというのもあるけど、これは政治的な目的に従って計画的に暴力行為を行うもので、概念は広いみたい。
国家転覆のためにやるようなのもあるし、国家の政策に対する報復措置のようなもあるし。
宗教的なものもからむから複雑だよ。
これが大きな政治的なうねりになってくると「反乱」につながっていくのかな?
それと、「内戦」という場合は、単一国家の中で民族や宗教の違いによる対立で武力紛争が起こること。
英語では「反乱」も「内乱」も同じく「rebellion」で、「内戦」は「civil war」というのが通例だけど、実は「内戦」と「内乱」との違いは明確ではないんだよね。
ある程度継続的に紛争状態にあると「内戦」と呼ぶ場合が多いのかな?

タイの場合は、農村部から絶大な支持を得ているタクシン派と、それに反発する都市部に支持を得ている反タクシン派の政治的主導権に関する争いに起因しているみたい。
1932年に立憲君主制に移行して以来、もう19回目のクーデターだとか・・・。
政治でもめて行き詰まると軍が介入し、いったんちゃらにして新しい政権をスタートさせる、という流れになっているらしく、クーデターを起こした軍は、タイ国王にクーデターを認めるようお願いに行く伝統もあるんだって。
一応形的には、国家的省庁である国王が国の行く末を案じて仲介に入った、という体裁にもなるのだ。

ついこの間もタイではクーデターがあって、まさに当時のタクシン首相は外遊先から帰国できなくなってしまったわけだけど、クーデターによる政権交代後、普通に選挙をしたら、またタクシン派が勝ってしまったらしいのだ・・・。
どうしても農村部の方が票が多いから、従来の選挙システムでやるとそうなってしまうみたい。
それでタクシン派の首相が何台か就任し、そのたびに反タクシン派から糾弾され、スキャンダルなどの理由で政権を追われていったみたい(料理番組に出演してギャラをもらったことが首相の兼業規定に違反する、とかいう言いがかりに近いものも。)。
で、現在はタクシン元首相の妹に当たるインラックさんが首相になっていたわけだけど、やっぱり不満がたまってまたクーデター(>o<)
タイの場合、憲法裁判所は上院により判事が選ばれるんだけど、この上院はどちらかというと都市部より。
なので、現政権にタイする不利な判決ばかり出すそうで。
今回も首相を免職にしたり、タクシン派の優勢な下院の選挙は憲法違反で無効だとしたり、反タクシン派の思惑どおりに動いているみたい。

とりあえず現在は軍部が治安維持をしている状態だけど、また新しい憲法ができて、新政権が発足するようなのだ。
で、このまままた前と同じような選挙システムにするとタクシン派が郵政になってしまうので、そこをどうするかが鍵みたい。
タイでは軍事政変はよくあって国民も慣れっこだし、何より、最近はほとんど流血騒ぎもない、極めて穏当な(?)クーデターなので、タイ国民もそんなに心配はしていないみたいだけど、早く安定してほしいよねぇ。
タイは日本にとっても重要な国だし、東南アジアでも枢要な国だから。

2014/05/24

肉体疲労時の栄養補給

大学生くらいの頃は徹夜してもわりと平気だったんだけど、最近はもうつらくて・・・。
当日はまだよいのだけど、その後2~3日はつかれを引きずるんだよね(>o<)
やっぱり寄る年波には勝てないということなのか(笑)
そう考えると、下手に徹夜作業するよりは、適度に休みを入れつつやった方が作業効率はいいみたい。
でも、時に締め切りの関係でどうしても夜を徹して、ということにはなるんだよね。

で、仕方がないので、そういうときは栄養ドリンクに頼ったりするわけで。
ほとんど気休めのような気もするけど、一瞬だけ活力が復活した気がするのだ。
ま、本当に復活したのだとしても、いきなり疲労が回復するわけではないので、無理矢理体を動かすようにカンフル剤を投与しているだけなんだよねorz
そうなると、「神通力」が切れた頃にどっとつかれが押し寄せてくるのだ。

栄養ドリンクの主要な成分は、水溶性ビタミンのビタミンB1誘導体、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、タウリン、カフェインなどなど。
カフェインは言わずとしれた神経興奮作用。
眠気を抑え、集中力を持続することにつながるのだ。
で、水溶性ビタミンやタウリンは主に栄養補給の観点から入っているんだよね。
糖質や脂質の活性化を狙っているのだ。
タウリンは胆汁酸の分泌を促進するなど、脂質の代謝を高める、はずなのだ。
どこまで疲労時の回復に貢献するのかは不明だけど。

水溶性ビタミンの中でもビタミンB1誘導体は、いわゆるにんにくパワー。
ビタミンB1であるチアミンはアルカリ条件下では分解しづらく、また、腸からの吸収もあまりよくないんだよね。
ところが、にんにくの中では、臭気成分のアリインとくっついてアリチアミンという物質になっていて、これだとより分解されづらくて安定性も高く、腸からの吸収もよくなるのだ!
つかれたときににんにくや玉ねぎを、というのは栄養ドリンクを飲むくらいには意味があるというわけ。
ちなみに、これをもとに商品開発したのがアリナミンだよ。

で、チアミンは糖質代謝に関与しているので、不足すると体内にある糖質をエネルギーに転換できなくなるのだ。
欠乏症としては脚気(かっけ)で、最終的には末梢神経のしびれや心不全にもつながっていくのだ・・・。
栄養状態があまりよくない時代にはよく見られたし、大航海時代には航海中によく発生していたようなのだ。
日本でも、ビタミンB1を豊富に含む糠を落とした白米を食べるにようになってから問題になり始めて、江戸時代から明治時代までけっこう苦しんでいたのだ(>o<)
玄米のまま食べる、ぬか漬けを食べる、野菜をたくさん食べるなどで改善されることはわかっていたんだけど、ビタミンB1の欠乏症だとわかっていなかったので、対処が遅れた部分もあるのだ。
ま、現代では脚気が発生するほど不足することはないんだけど。

欠乏すると大問題として、疲れたときにアドオンで大量に摂取して意味があるかどうかはけっこう微妙・・・。
古代からつかれたときににんにくを食べると疲労回復が早い、と言われているので、多少は意味があるんだろうけど。
最近では、「にんにく注射」と称して、注射剤で直接血中にビタミンB1を入れることもあるんだよね。
注射した後ににんにく臭がするのでそう呼ばれているんだけど、ようはアリナミンを注射剤にしているようなものなのだ。
こうすると、腸管での吸収率を気にしなくてよいので、より大量に摂取できるわけ。
でも、ネットで調べると、医師の多くはどこまで意味があるのかよくわからない、って見解のようだね。
もともとは体を酷使するアスリートの間で行われていたもののようだけど、一般の人がそこまで疲労を蓄積しているか、っていうことなのかな?
ちなみに、ビタミンB1は大量に摂取しても基本的には尿中に排出されるので、そんなに過剰摂取は気にしなくてよいのだ。
カゼでも何でも注射を打ちたがる人はいるから、気休め効果がより高いのかもね。

ビタミンB2やビタミンB3もエネルギー代謝に関係していて、欠乏すると口内炎ができたりするのだ。
逆に、ストレス環境下でつかれがたまっていて口内炎ができている場合なんかは、栄養ドリンクを飲むことにそれなりに意味があるよ。
これらもまともな食事をとっている限りはまず不足することはないんだけどね。
ちなみに、栄養ドリンクを飲んだ後に、尿が鮮やかな蛍光色になるのはビタミンB2によるものなのだ。
でも、これって過剰に摂取していて体外に排出されているということなので、やっぱりそんなにふそくしていなかったんだね、ということなんだろうけど。

ま、とにもかくにも、栄養ドリンクに入っているような成分が圧倒的に不足するような状態はよほどの飢餓状態・低栄養状態なので、現実的にはないはずなんだよね。
でも、なおも人々を引きつけるのは、気休め効果が高いからなのだ。
しかも、高級なものを飲めば、それだけお金を使ったこともあってよりきいた気がする(笑)
それがわかった上でも時々飲んじゃうんだけどね。

2014/05/17

高額納税者はどいつだ

最近は少なくなってきたけど、うちの職場にも喫煙者はそれなりにいて、喫煙スペースでの雑談で独特のコミュニティが形成されているんだよね(笑)
それにしても、現在のタバコの価格は400円超!
子どもの頃は200円台だったと思うから、もう2倍くらいになっているのだ・・・。
牛丼が300円だったのが300円以下になっているんだから対照的だなぁ。

タバコの価格でよく言われるのは、そのほとんどが税金であると言うこと。
実際に日本たばこ(JT)のサイトでは、430円の商品の場合、価格のうち64.4%が税金だと説明されているのだ。
そのうちわけは、国たばこ税が106.04円(24.7%)、地方たばこ税が122.44円(28.5%)、たばこ特別税が16.40円(3.8%)、消費税が31.85円(7.4%)で、総計276.73円(64.4%)なんだって。
ちなみに、地方たばこ税は、都道府県税と市町村税があって、都道府県たばこ税が17.20円、市町村たばこ税が105.24円だよ。

この数字を見ただけでも、喫煙者は多くの税金を納めているなぁ、と思うけど、実際に税収の面でもたばこ税収はかなりの額に上るのだ。
財務省のサイトにあるデータによると、平成26年度予算で言うと、地方財政計画額ベースで、国税分は1兆646億円(国たばこ税:9,220億円、特別たばこ税:1,426億円)、地方税分は1兆739億円(都道府県たばこ税:1,509億円、市町村たばこ税:9,230億円)とされていて、総計2兆1,385円にものぼるのだ。
ちなみに、決算ベースの数字で見ると、平成24年度の国税の税収全体は43.9兆円で、国たばこ税とたばこ特別税を合わせて1兆1,754億円なので、2.7%に相当するのだ。
同じように地方税で見ると、平成24年度決算ベースで、地方税収全体は34.4兆円で、地方たばこ税は1兆1,760億円なので3.4%だって。
一部の人が納税しているだけでこれだけのインパクトなんだねぇ。
いくら税額が高いと言っても、軽々にやめられないわけだ。

タバコへの課税は明治期から始まっていた、日清戦争後に財政収入を増やすために専売制が開始されたのだ。
日露戦争の戦費調達でこれが拡大されて、戦後、国の直営から日本専売公社による独占販売に変わったのだ。
この時代は税金として徴収されるのではなく、国の会計にタバコの売上げ収入として入ってくるとともに、地方には納付金という形でお金を渡していたみたい。
これが、三公社五現業の見直しで、日本専売公社が廃止され、日本たばこ産業ができると、また税金の形で徴収することになったのだ。
このときにできたのが「たばこ消費税」で、後に一般消費税が導入されるときに「たばこ税」に名称が変更されたんだって。
地方たばこ税も日本専売公社がなくなったときに導入されたのだ。

国たばこ税はタバコの製造業者(主にJT)と海外産タバコの輸入業者に課税されるもので、紙巻きタバコだと本数当たりの税額が決められているのだ。
地方たばこ税は、卸売販売業者等が小売販売業者に売り渡す場合、小売り販売業者の営業所の所在の地方自治体に支払うもので(卸売販売業者等が直接消費者に売り渡しなどをする場合はその卸売業者等の所在地の自治体に払うことになるよ。)、やはり紙巻きタバコなら本数当たりで税額が決まっているよ。
さらに、たばこ特別税は、国鉄を民営化したときの累積赤字を精算するために作られた日本国有鉄道清算事業団と、国有林野事業特別会計の負債を一般会計に承継させるときに負担を補うために作られた税なのだ。
日本国有鉄道清算事業団はすでに解散しているんだけど、まだ負債は残っていて、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構がその業務を引き継いでいるよ。
国有林野事業特別会計の負債は、現在は一般会計から国有林野事業債務管理特別会計に承継されているのだ。

ちなみに、タバコに係る消費税は、国と地方のたばこ税がかかった上に消費税がかかるので二重課税だ、と言われるんだけど、実は厳密には二重課税ではないのだ。
国のたばこ税の納税義務があるのは製造業者や輸入業者で、その納税負担分を小売り価格に上乗せされているだけなんだよね。
地方のたばこ税も同様で、納税義務があるのは卸売販売業者で、その納税負担分がやはり小売価格に上乗せされているのだ。
消費税は物品又はサービスを取引する度に課税されるんだけど、税負担は製造業者、卸売業者、小売業者と転嫁されていって、最終的には消費者が負担する仕組み。
ただし、課税の累積を防ぐため、売上げにかかる消費税額から仕入れに係る消費税額を控除した額を納税する仕組みなんだよね。
つまり、100円の価格の商品を消費者が108円で買ったとき、小売業者が卸売業者から50円の価格で仕入れていたら、小売業者の納税額は100×8%-50×8%で4円になるんだよね。
卸売業者が製造業者から25円で仕入れたとすると、卸売業者の納税額が2円、製造業者の納税額が2円で、トータルで消費者の支払った8円が分担されて納税されることになるんだ。

これを踏まえると、国のたばこ税の場合は、製造業者に課税されるので、卸売業者が買うときにはすでに商品のコストに含まれているんだけど、地方のたばこ税は卸売業者に課税されるので、小売業者や消費者から見るとコストに含まれているけど、卸売業者にとってはコストになっていないのだ。
すなわち、国のたばこ税は、製造業者から消費者までのタバコの売り渡しのすべての取引で課税対象に含まれてしまうんだけど、地方のたばこ税は卸売業者以降でしか課税対象に含まれないわけ。
なので、タバコ一箱当たりの消費税は「8%」になっていなくて、「7.4%」だったのだ。
卸売業者が製造業者から商品を仕入れるときは地方たばこ税相当分に対する消費税は納税されていないのだ。

430円のタバコの場合、税金を除いた本体価格は35.6%に相当する153.08円で、これが製造業者から卸売業者に行くときに国のたばこ税として122.44円が課税されて、275.52円になるのだ。
この取引に係る消費税はその8%で22.04円で、この時点で価格は297.56円になっているのだ。
卸売から小売りに行くとき、この価格に地方のたばこ税122.44円が付加されて、420円になるよ。
小売りから消費者に渡るときは、仕入れ価格である297.52円を控除して消費税を計算するので、小売業者が納税する消費税は、実際は地方のたばこ税相当分にかかる部分だけになって、9.80円になるのだ。
これが420円に加わると、429.80円で、430円となるわけ。
消費税だけ足すと、31.84円になって、一番最初に出てきた数字の31.85円とほぼ一致するのだ!
いやあ、自分で計算してみて初めて理解できたけど、複雑だねぇ。

2014/05/10

虹の輪は二時頃消失した!

連休最終日の五月六日、長崎で珍しい気象現象が観測されたのだ。
それは「暈(かさ)」と呼ばれるもので、太陽の回りに虹色の光の輪が見えるというもの。
薄い雲が太陽を覆っている時に、雲の中の微小な氷の結晶がプリズムの役割を果たし、太陽光を屈折させるために起こる現象なんだって。
光は波長ごとに屈折率が異なるので、色が分かれて見えるようになるのだ。

暈が観測されるには、対流圏上層(地表から10km前後上空)に、巻層雲(白いベール状の薄い雲)、巻積雲(いわゆる、うろこ雲)、巻雲(細い雲が筋状に集まった雲)があることが条件。
これらの雲の中には細かい氷晶が多く含まれているんだって。
しかも、粒状に成長しておらず、きれいな六角柱状の結晶構造になっているので、光が側面又は底面から入射すると、中で屈折させて決まった方向から出てくることになるのだ。
すなわち、小さな天然のプリズムがたくさん並んだ中を光が通過するようなイメージになるわけ。
側面から入って別の側面から出てくる光による「内暈(ないうん)」というのが比較的よく観測されるもので、底面から入って側面から出る光による「外暈(がいうん)」というのもまれにあるそうなのだ。

それぞれ、22度或いは46度屈折して光が出てくるんだけど、屈折する度合いによってどれだけ太陽の外側に我ができるかが決まるのだ。
「視半径」と呼ばれるもので、太陽は点ではなく、見かけ上の大きさを持っていて、それが天球上の角度でどれくらいの大きさに相当するかを表すのが視半径という概念。
なんで角度で表すかというと、高度が高いところで太陽を見ると、それだけ太陽までの距離が短くなるので見かけ上の大きさも大きくなってしまうので、直接的な長さの単位で表現すると都合が悪いのだ。
そこで、天球上の「弧」の大きさとしてとらえた場合に角度として何度分というのを使うわけ。
こうすると、太陽との距離を気にせずに見かけ上の大きさを表すことが可能なのだ!
ちなみに、一般に太陽の見かけ上の大きさは、直径で0.53度(32分)と言われているので、22度の場合はこの40倍の直径の輪になって見え、46度の場合は90倍弱の直径の輪になって見えるという計算になるよ。
さらにちなみに、この「暈」は太陽だけじゃなくて、月に対しても発生することがあって、太陽の暈を「日暈(にちうん)」、月の暈を「月暈(げつうん)」と呼ぶそうだよ。

雲の中の小さな氷の結晶が太陽光を屈折し、分光すると「暈」になるわけだけど、大気中の細かな水滴が太陽光を屈折・分光して発生するのが「虹」。
虹の場合、水滴に入射した太陽光は水滴の中でまず屈折され、次いで水滴から出ようとする光の一部が中で反射されて、それがまた屈折して出て行く光が観測されたものなのだ。
なので、見かけ上は、観察者から見て、太陽と正反対の方向(これを「対日点」というのだ。)を中心とした輪になって見えるんだ。
でも、観測者から見て対日点は地平線の下に位置するので、虹は輪になって見えることはなく、半円状・弧状に見えるというわけ。
虹を構成している非変わりは実際には輪になっているんだよ。

虹の場合、水滴の中で一回だけ反射された光が出てくる主虹と、二回反射されて出てくる副虹があるんだけど、副虹は光の量も少ないので、通常は観測しづらいのだ。
副虹が見える場合は、主虹の内側に見えるよ。
副虹は二回反射されたものであるため、虹色が逆転していて、通常見ている虹(主虹)は外側が青くて中が赤いんだけど、副虹は外側が赤くて内側が青いのだ。
さらに、月光による月虹というのもあるんだけど、もともとの明るさが暗いので、現代の都会ではまず見えないのだ。

虹にしても暈にしても、連続光である太陽光をスペクトル分解しているので、基本的には色のグラデーションも連続的なんだけど、一般には「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の7色ととらえているのだ。
連続的に色が変化しているというよりはその方がわかりやすいからね(笑)
ちなみに、英国では伝統的に虹は5色だと考えられていたらしいんだけど、近代物理学の父・ニュートンさんが神聖な数字である7に結びつけたのだ。
もちろん、ニュートンさんは色が連続的に変化していることは承知の上でだよ。
これが日本に広まって、日本では7色が一般的になったみたい。
でも、もともとの英国では蚊なら次子も7色とは思われていなくて、5色だったり、6色ととらえられていることもあるみたい。
ここまで統一感がしっかりと醸成される日本の学校教育は立派だねぇ。

2014/05/03

煮て、ほぐして、よる

群馬県の富岡製糸場が世界遺産登録の候補になったのだ!
日本の近代化を象徴する産業遺産として認められたみたい。
我が国の工業化を支えたもので、この官営工場から全国に近代的な製糸業が広がっていくことになるのだ。
連休突入直前にその報道がなされたので、観光客が一気に増えたそうなのだ。
グンマーもびっくりかな?

蚕の繭から繊維をとりだして絹を作る技術は中国発祥で、およそ紀元前3世紀には始まっていたみたい。
ところが、この技術はしばらく西洋世界には伝わらず、中国産絹が高級品としてもてはやされていたらしいのだ。
6世紀になってはじめて東ローマ帝国にネストリウス派キリスト教(景教)を通じて伝わって、そこから欧州における生産が始まったみたい。
でも、長らく製法が伝わらなかったおかげで、絹を取引するための交易路としてシルク・ロードができあがったのだ。
これで大きく文化交流は進んだから、それよかったのかな。

日本には弥生時代には伝わっていたそうで、古事記や日本書紀の神話には養蚕の由来の話が出てくるよね。
古事記ではスサノオがオオゲツヒメを殺したときに頭から蚕が発生して、日本書紀ではツクヨミがウケモチを殺したときにやはり出てくるのだ。
この神話は、イネ、ムギ、ダイズなどの主要食物の起源譚なので、それほど蚕は重要な位置を占める農産物だったということが伺えるのだ。
今でも皇室は女系皇族が養蚕業を行っているよね。

ところが、江戸時代以前の日本の絹は品質が悪く、高級な中国産絹が輸入されていたようなのだ・・・。
幕府は天領で養蚕業を奨励し、日本でも盛んにしようとするんだけどなかなかうまくいかず、八代吉宗公の享保年間になって全国的に奨励して、技術も向上してきたんだって。
江戸末期には日本を代表する輸出産業になっていて、開国以降は、関東甲信地方で生産された生糸が八王子に集結し、それが横浜に運ばれて海外に出て行くことになるのだ。
こうして新たに開港した横浜港が大きく栄えることになるのだ。
この明治期の殖産興業を代表する存在が、富岡に作られた官営の製糸工場なんだよね。
蚕の繭から絹は作るのはなかなか大変で、それが機械化されて大量生産できるようになったんだ。
欧州で蚕の疫病がはやって生産量が落ちたこともあって、一気に伸びるんだよね。
その後すぐにすいたいが始まるのだけど・・・。

養蚕農家は、蚕がさなぎになって繭を作ったところで出荷するのだ。
この繭は乾燥され、中のさなぎを殺すとともに、水分を飛ばしてカビや細菌が増えないようにするのだ。
しばらく乾燥させた状態で保存し、まとまったところで、繭の一つ一つをチェックするんだって。
穴が空いていたり、繭が薄かったり、汚れていたりという品質を落とすものをここでふるいにかけるんだよ。
そうして選ばれた繭は大きな釜の中でぐつぐつと煮られるのだ。
蚕の繭は絹を較正する繊維タンパクであるフィブロインのまわりにセリシンという膠質状のタンパク質がついた状態になっていて、水の中で加熱することでこのセリシンを溶解させ、繭をほぐれやすくするのだ。
そうすると、糸口も出てきて、繭をほどけるようになるよ。
手作業でやっていた時代は、収穫した繭を自分の家で煮て、この工程までやっていたのだ。

ほぐれた糸を収束してまとめていくとできるのが生糸。
小さく巻き取った後、大きく巻き直したりして出荷できる生糸ができあがるのだ。
今度はこの生糸を複数本束ねて、さらに糸をよるんだよね。
こうすることで、絹糸の太さが均一にでき、また、伸びと弾力が出るのだ。
さらに、この後の精錬という作業をして絹糸ができあがるよ。
「精錬」する前だから「生糸」と言うんだよね。

精錬工程では、生糸の中にまだ残っているセリシンとその他の不純物を除くのだ。
古くは灰汁で処理したんだけど、最近は石けんや炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)などのアルカリ水応益で処理したり、タンパク質分解酵素を使ったりするんだって。
環境に優しくするために、高温高圧下の水の中でセリシンを溶解させる、というのもあるみたい。
ただし、絹独特の光沢はセリシン由来なので、完全に落としてしまうとつややかな風合いが失われるんだって(>o<)
なので、着物などに使う場合は処理の仕方を工夫しないといけないのだ。
草木染めをする場合は、このセリシンがないと色が乗らないそうだよ。
逆に、化学染料で染色する場合は、セリシンが残っていると色むらができるので、完全に落としてから染色するんだって。
この場合、光沢は染色によってつけることになるのだ。

ちなみに、富岡製糸場では、繭の乾燥(乾繭)し、貯蔵(貯繭)してから煮て(煮繭)、小枠に糸を巻き(繰糸)、大枠に巻き直す(揚返し)ところまでをやっていたのだ。
写真などで徐行山がぎっこんがっこんやっているのは繰糸の工程だよ。
繭の糸口から糸を引き出し、何本か束ねて巻き取っていって、一つの繭が終わらぬ打ちの次の繭を用意して・・・、とけっこう大変そうな作業なのだ。
今は全自動なんだろうけど、当時は人手に依存しているところが大きかったみたい。

当時この作業をしていた女性は「工女」さんと呼ばれていて、いわゆる紡績工場の「女工哀史」とは違って、かなり環境はよかったみたい。
住み込みだけでなく通勤の人もいたみたいだし、教育の機会も確保されていたとか。
この富岡から各地の向上に技術を伝える役割も担ったんだそうだよ。
最先端の働く女性だったのかなぁ?

2014/04/26

国を挙げての歓待?

昨日まで米国のオバマ大統領が国賓として来日していたのだ。
米国大統領を国賓として迎えるのは、平成8年(1996年)のクリントン大統領以来なんだって!
って、てっきり米国大統領が公式に来日する際は国賓として迎えているものだと思っていたから、逆にびっくり。
調べてみると、国賓であるかどうかというのは「接遇」の仕方に差があって、必ずしも政治的な意味を持っているわけではないんだって。

昭和59年(1984年)に閣議決定された(平成元年に一部改正)「国賓及び公賓並びに公式実務訪問賓客の接遇について」によると、外国の元首(国王・女王、大統領など)又はこれに準ずる者(英連邦所属国家の首相など)を招聘する場合、外務大臣が宮内庁長官と連絡して共同で請議し、閣議で決定することで国賓として接遇することができるとされているのだ。
今回のオバマ大統領の場合は、4月4日(金)の閣議で国賓としての接遇が決定されているよ。
ちなみに、「公賓」は、外国の皇族又は行政府の長若しくはこれに準ずる者を招聘する場合、外務大臣が閣議で了解を得ることで接遇できるものなのだ。
ちなみに、「又は」と「若しくは」は使い分けがあるので、「皇族」or「行政府の長若しくはこれに準ずる者(すなわち、首相、副大統領など)」と読むのが正しいのだ。
それから、平成元年の改正で加わったのが「公的実務訪問賓客」という概念で、これは、外国の元首若しくはこれに準ずる者、皇族又は行政府の長若しくはこれに準ずる者が実務を主たる目的として訪日することを希望する場合に、外務大臣が閣議で了解を得て接遇することができる様式。
この3種類の接遇の場合は、賓客本人+随行者について、日本政府が滞在費等を支出して迎えるということになっているようなのだ。
逆に言うと、賓客として迎えられない場合は相手もちで来ているってことだよね。

この国賓や公賓の接遇様式は、閣議決定では細かく定められていなくて、「政府として儀礼を尽くして公式に当該賓客を接遇するにふさわしいものとし、その接遇様式については国際慣例等を勘案して、外務大臣が関係大臣と協議の上、決定する」となっているだけ。
公的実務訪問賓客についても、「賓客の地位、訪問目的にふさわしいものとし、その接遇様式については国際慣例等を勘案して、外務大臣が関係大臣と協議の上、決定する」となっているのだ。
一般に国賓として迎える場合は、首脳会談に加えて、儀仗隊による栄誉礼付の歓迎式典、宮中における両陛下への会見、宮中晩餐会、退京時の両陛下による迎賓館への御訪問(すなわち両陛下が迎賓館までお見送りに来られる、ということ)などの公式行事が行われるよ。
国賓はこれらの公式行事が入るので、自動的に2泊以上滞在してもらうことになるんだって。
その意味では、今回のオバマ大統領の2泊3日は最低限のラインなのだ!

公賓の場合は、儀仗隊の栄誉礼がなかったり、晩餐会でなく午餐会になったり、両陛下のお見送りがなくなったりと格落ちになるのだ。
国賓・公賓の場合は通常迎賓館に宿泊してもらうんだけど、今回のオバマ大統領は米国側の希望もあって迎賓館には宿泊していないのだ。
公的実務訪問賓客の場合は、迎賓館には宿泊できず、かつ、宮中の午餐会も開かれないことがあるんだって。
宮中で陛下に会見することもあるけど、こっちもマストではないみたいで、要望があって時間が合えば、的なものみたい。
さらに、本当かどうかはわからないけど、ネットで調べると、随行者の滞在費が何人まで認められるかとかそういうところでも差があるみたい。
ちなみに、国ではなく外務省としておもてなしする「外務省賓客」というのもあるそうで、こちらは宮中行事が全く含まれなくなるのだ。

国賓は英語では「state guest」で、まさに国家としての賓客として迎えるんだけど、外交慣例上の接遇様式なので、日本だけで勝手に決めてやっているものではないのだ。
「お互い様」のところがあるので、海外でも似たような形式で接遇することになっているのだ。
日本での運用でいうと、国賓を迎えるのは概ね10年に一度で、10年以内に国賓として遇された経緯のある対象国や元首は国賓として迎えないようにしているのだ。
皇室日程もあるので、年間で国賓待遇で接遇できるのは1~2件に限られるというから、そんなものかな?
そうなると、よほどの長期政権でもない限り、国賓として接遇してもらえるのはほぼ一度きりってことだよね。
その代わり、多少格落ちにはなるけど、公賓とか公式実務訪問賓客として迎えるんだって。
国家元首の場合は公賓で迎えるのは厳しいので、「公式実務訪問賓客」という概念が作られているみたいなのだ。

東京では国賓を迎えるに当たって、JRや地下鉄の駅で自動販売機やコインロッカーが使えなくなったり、首都高が交通制限をしたりと、けっこう不便な点も多いんだよね・・・。
都心部ではいろんなところで警官が警護にあたっているし。
これも首都の運命なのかな。

2014/04/19

ないものは証明できない

理研の小保方さん騒動はさらに盛り上がってきているねぇ。
理研側がデータ改ざんの不正行為があった、と認定すれば、悪意のないミスであり不正に当たらない、と小保方さん側が不服申し立て。
なんだか泥仕合の様相を呈してきたような・・・。
個人的に気になるのは、人間関係とかのどろどろしたところじゃなくて、やっぱり化学的成果が妥当なものだったかどうかだよね。
でも、今回の一連の報道を見ていると、どうしても「常温核融合」の話が思い出されるのだ。

常温核融合は、平成元年(1989年)に観測されたと発表された現象で、通常超高温・超高圧下でないと起きないと思われていた核融合反応が常温で確認された、というもの。
英米の研究チームが発表したところによると、重水中にパラジウムとプラチナの電極を入れてしばらく電気を流すと、電解熱以上の熱が発生し、なおかつ、核融合反応の際に生じるトリチウム、中性子、ガンマ線などを検出したというのだ。
発表直後、全世界的に追試が試みられたんだけど、ほとんどの場合は過剰熱すら観測できず、過剰熱が観測できる場合も再現性が低かったんだよね。
中性子線やガンマ線などの核反応を示す証拠もほとんど得られなかったのだ。
このあたりが今回のSTAP細胞の騒動と酷似しているんだけど、大きな違いは、常温核融合の場合は単に研究成果が発表されただけで、査読付の学術誌で公表されたものではなかったのだ。
けっきょく、再現ができないということで学会の権威者からは否定され、メジャーな学術誌では常温核融合関係の研究というだけで掲載拒否(リジェクト)されるような状態になっているよ。

でも、この現象自体に興味を持っている研究者は少なからずいて、国際常温核融合学会なる組織もあって、学術的な研究は進められているのだ。
おそらく、夢のエネルギー源として常温核融合を選択肢のひとつとして考えている研究者はいなさそうだけど、現在の理論だけでは説明しきれない現象が観測されていると考えられる実験結果が得られるので、それは一体何なのかを突き詰めようとしているようなのだ。
ちなみに、現在の物理学・素粒子学理論でも、トンネル効果や宇宙線由来のミューオンにより極低頻度で常温でも水素の核融合反応が起きることは予想できるんだけど、それにしては得られる実験結果は確率が高すぎるんだよね。
何かあるはずだ、というのが研究者の探求心をくすぐっているようなのだ。
この話が出たとき、絶対零度近くでしか発生しないと思われていた超伝導現象が、もっと高い温度(と言っても零下百何十度だけど)でも発生することが証明されたので、研究者の期待は高まっていたんだよね。

ただし、有象無象も混じっていて、データのつじつまが合わない不正確なものなども玉石混交していて、議論が混乱しているのも確かなのだ。
大事なのは、「常温核融合」という現象の有無かどうかというより、現在の理論では説明できない現象が起こっているかどうか、のはずなんだけどね。
常温核融合や、それに近い常温での核変換が実現できる、と言われると一気にうさんくさくなって、疑似科学に近づいていくんだよね(>o<)
この手の研究は、もともと機器の較正がきちんとなされないまま実験しているとか、解釈に誤りがあるとか、いろいろと批判があるんだよね。
しかし、それをさっ引いても、何かありそうではあるのだ。
実際、日本でも米国でも、国費を使ったプロジェクトが実施されたことがあったみたいだけど、高温核融合現象自体は確認できなかったものの、過剰熱が観測されることは否定していないのだ。
中性子やガンマ線がまず確認できないことからも、核反応ではないのかもしれないけど、未知の現象が起きている可能性はあるというわけ。

でも、実はこれは「悪魔の証明」に陥っていて、「何かある」という時はその何かの存在を立証できればそれでいいんだけど、「何もない」ということの証明はどこまで行ってもできないのだ。
常温核融合も同じで、ひょっとしたら現在知られている現象以上のことは何も起きていないのかもしれないけど、一見すると未知の現象と思われる実験結果全てについて説明をつけたとしてもそれでは証明にならないのだ。
「ないということは証明できない」ということなんだよね。

STAP細胞の件もそれに近づいているような気がして、ある・できたと言っている人がいる以上、その人が事実を語っているなら、「何か」は存在して、できているのだ。
それが「STAP細胞」という体細胞を脱分化して作った幹細胞かどうかは別として。
再現性がないからといってそれはないことの証明には何もならなくて、たまたまある研究者だけができる「神業」がないとできないだけかもしれないのだ。
ただし、同じプロトコールに則れば同じ結果が出せる、という再現性が科学の基本だから、「ゴッドハンド」みたいな世界は科学ではなくなるんだけど(笑)
「ないこと」自体が証明できない以上、「ある」と主張している根拠が正当なものかどうかを突き詰めていって、証拠と呼ぶに当たらない、とするくらいが関の山。
だから「泥仕合」になるんだよね。
今回の場合、明らかに研究成果の発表までに至るプロセスには瑕疵があったと思うけど、できれば、「STAP細胞」のもの自体は真実であってほしいけどね。

2014/04/12

さくらって何の味?

春になった!
東京は急にあたたかくなって、桜もあっという間に開花♪
でもでも、今年はすぐに散ってしまったね・・・。
そのはかなさがよいのだけど。
で、この時期になると、ちまたに「さくら味」の食べ物・飲み物が増えるのだ。
って、「さくら味」って何?

おそらく、「さくら味」は「さくら風味」なんだよね。
いわゆる「桜餅」の香りと同じで、さわやかな春らしさを感じるようにしているのだ。
その正体はなんなのかな?、と探ると、すぐに答えに出会ったよ。
それは「クマリン」という芳香族化合物。
シナモンのシンナムアルデヒドや、コーヒーのコーヒー酸と同じくらい有名な香料成分なんだとか。
抗菌作用もあるけど、肝毒性もあるので、大量摂取はおすすめできないみたい・・・。
ま、桜の葉をkg単位で食べないとそこまでいかないだろうけど。
ちなみに、食品添加物としても認められていないようで、飲食物に使う場合は、天然材料(桜の葉)を使うか、似たような香りの香料を使うみたい。

桜餅になんで桜の葉が巻かれるようになったのかは定かではないようだけど、効果としては、桜の葉に含まれるクマリンによる抗菌効果のほか、もち本体の乾燥を防ぐ、ほのかな塩味で甘さを引き立てる、桜の風味で清涼感を出すなどなど。
東京向島の長命寺桜餅の場合は、3枚の葉でくるんであるのだ。
だた、そのまま食べるとしょっぱいし、葉っぱを食べている感じになるので、2枚ははがして、1枚だけ巻いた状態で食べるのがよいよ。
ボクは葉柄がひっかかるので、それも取り除いてから食べることが多いけど。

桜餅に使われるのは塩蔵したオオシマザクラの葉っぱ。
オオシマザクラは、葉の表面に毛が少なく、葉自体も柔らかいので、食用に使われるのだ。
そのシェアのほとんどは伊豆半島の松崎町でとれたものだとか!
ちなみに、桜湯はがくをとった桜の花を梅酢と塩で漬け込んだもの。
こっちは神奈川の秦野がシェアのほとんどを占めているみたい。
意外と距離が近いけど、静岡周辺の温暖な気候が桜の生育に適しているのかな?

さくら味の中でも伝統的なものは、和菓子のさくら餡。
桜色で、桜の風味がするのだ。
どうやって作っているのかと思ったら、白インゲンを使った白あんに桜の葉の塩漬けを刻んだものを混ぜ、そこに食紅で淡く色づけているようなのだ。
なので、本当のさくら餡は刻んだ葉が点々と見えるはずだよ。
そうでないのは香料だけを使ったものなのだ。
クマリン自体は食品添加物に使えないから、また別物ということになるよね。
そうすると本当にパチモンだなぁ。

というわけで、「さくら味」というのは、桜の葉の塩漬けの味だったのだ!
花のイメージが強いけど、葉っぱの味なんだね。
でも、さすがに「桜の葉風味」じゃあれだから、「さくら味」なんだろうね(笑)
今年も春のうちに、たくさん「桜の葉」の風味を楽しみますか。

2014/04/05

奈良の春日の青芝に♪

和食を食べるときにあるとうれしいのは漬け物。
自宅では買っても消費しきれないことが多いので、なかなか家で食べることは少ないけど。
外でおいしい漬け物に出会うとうれしいよね♪
先日は、近為の大丸東京店で食事をしたんだけど、さすがに漬物屋さんだけあっておいしかったのだ!
その中でも、おいしいなぁ、と感じたのが奈良漬け。

奈良漬けはアルコール分があるので前は苦手だったんだけど、どうもそれはおいしい奈良漬けを食べていなかっただけのようなのだ(笑)
よい奈良漬けは、酒の風味があるくらいで、塩辛くもなく、深みのある味わい。
むかしから口の中をさっぱりさせるからと、鰻の蒲焼きのような脂の多い料理と取り合わせになってきたんだよね。
確かに、脂ののった魚の後に食べるとさわやかな感じがするよ。

奈良漬けは歴史が古く、平城京移籍から出土した木簡にも「かすづけ」という名前で登場するのだ。
当時のお酒はいわゆるどぶろくでにごり酒なので、酒を濾過した後に残ったものではなく、ワインの澱のように酒瓶の底に沈殿しているものだったみたい。
これ自体が貴重なものなので、当然「かすづけ」も高級品で、庶民が食べられるようなものではなかったのだ。
江戸時代になると清酒が登場し、酒粕が普通に手に入るようになるので、そこから庶民のものとなるのだ。
幕府に献上されたり、奈良を訪れる旅人に供されたりして徐々に普及していったらしいよ。
ちなみに、「奈良漬け」という名称は、江戸時代初期の慶長年間に名付けられ、それが定着したもので、奈良以外の地で作っても、一般名称なので「奈良漬け」と言うのだ。

奈良漬けの作り方は手が込んでいて、まずは白瓜や胡瓜などの野菜を塩漬けにするのだ。
この下漬けの段階で歯ごたえが決まるらしいので、こつがあるようだよ。
水分をよく取り除いてから、酒粕に砂糖、みりんなどを加えた粕床に漬けていくのだ。
そのまま放っておくのではなくて、粕床は定期的に替え、漬け替えを行うんだって。
これにより塩分が適度に抜け、酒粕からアミノ酸などがしみこんでくるのだ。
と同時に、独特のべっ甲色、琥珀色に染まっていくよ。
ボクは醤油か何かの色かと思っていたけど、酒粕に漬けることで出てくる色だったのだ。

ここで使う酒粕は、スーパーなどでも見かける「板粕」ではなく、「踏込み粕」と呼ばれるものだよ。
シート状に固められている板粕は、日本酒の副産物で、最後にもろみを絞って清酒を取り出した後に残るもので、圧搾されて固まっているのだ。
酒成分が多く残っていたり、大吟醸のように米粒がまだ形状を残したままである場合などは板状に固まらないので、それは「ばら粕」と呼ばれるんだって。
この板粕やばら粕をタンクに入れ、足で踏み込んで空気を抜いてから数ヶ月から半年くらい発酵を進めたものが「踏込み粕」。
ペースト状になっていて、なおかつ、少し色がついているのだ。

これはメイラード反応によるもので、酒粕中で糖分とアミノ酸が反応し、褐色の色素ができるんだよね。
なので、発酵が進んだ酒粕が、黄色、茶色、黒とどんどん味噌のような色に変わってくるのだ。
醤油や味噌も同じメイラード反応で茶色くなっているので、まさに同じような色なわけ。
このメイラード反応が進むと独特の香気も出てきて、それが奈良漬けの風味にもつながるんだ。
最近はあまり長期間漬けないのが多いようだけど、長期間漬けて真っ黒になった奈良漬けは、塩も抜けているし、風味が強くなっているのだ。
醤油漬けではないから決してしょっぱくないんだよ。

奈良漬けと言えばアルコールが含まれていることでおなじみだけど、切りたてはちょっとアルコールが強いんだって。
切ってからしばらく置くと、適度にアルコールが飛んで、お酒が苦手な人でも食べやすくなるそうな。
ボクの場合がまさにこれだね(笑)
ちなみに、水で洗うと風味が飛ぶので、酒粕を手や布でぬぐって、そのまま切るのが正しいみたい。

ちなみに、奈良漬けに含まれる程度のアルコールの場合、よほど大量に食べなければ飲酒運転で捕まることはないそうだよ。
食べてからしばらくするともう検出されなくなるのだ!
以前、直前に奈良漬けを食べて・・・、といいわけをした人がいたみたいだけど、やっぱり飲酒していたことが判明したみたい。
アルコール分を5%ほど含んでいる奈良漬けの場合、400g(60切れくらい)も食べないと反応しないという実験結果も出ているのだ。
念のため30分以上は時間を置いた方がいいんだろうけど、奈良漬けだけならそんなに気にしなくてもよいみたい。
油断は禁物だけど。

2014/03/29

慣例により首相が答弁します

参議院でも予算が成立し、国会はいよいよ後半戦に突入!
これからは様々な法案が審議されることになるのだ。
その中でも、特に注目を集めるのが「重要広範議案」と呼ばれるもの。
新聞などの報道でも、その成立の見通しが記事になるのだ。

日本の国会制度は委員会審議制をとっているので、基本的に議案の中身の審議は各委員会に付託して行うのだ。
各委員会への付託は、議院運営委員会によって決定され、付託が決まれば、各委員会で趣旨説明、質疑、採決と続いて、最終的に本会議で採決されるんだ。
委員会ですでに賛否が出ているので、通常本会議においては、その議案を審議した委員会の委員長から、委員会ではこういう議論があって賛否はこうなった、と報告があって、その上で採決されるんだけど、これは「議了処理」と呼ばれるのだ。
なんだか本会議による議決は形式的と言っているような感じだけど。

ただし、たまに本会議の議決の前に討論することもあって、これは議院内の各会派の申し出により、賛成討論や反対討論を述べてから採決に突入することもあるよ。
また、議決の方法も複数あるんだ。
ひとつは、起立を求めるもので、この場合は「賛成多数により可決します」みたいな感じでぱっと見てすぐに賛否がわかるものに限られるよ。
二つ目は、記名投票を行うもので、賛成の場合は白票、反対の場合は青票を投じるよ。
事務総長が議員の名前を読み上げて、一人一人議長の前に札を持っていくのだ。
この場合、「牛歩戦術」がとられることがあるよ。
次に、異議の有無を確認するもので、議長が「御異議ございませんか」と聴いて、議場から「異議なし」と言ってもらうんだけど、基本的にはあらかじめ全会一致であることがわかっている場合にだけ使うのだ。
最後が、押しボタン式投票によるもので、参議院にだけ導入されている、議員席の手元にある賛否のボタンを押して投票を行う方式。
参議院広報を後で見ると各議院がどっちのボタンを押したか確認できるんだけど、間違えて押すこともあるみたい(笑)

一方、入口の段階で本会議で議論することもあるのだ。
それらの議案は「登壇もの」と呼ばれて、担当大臣が本会議においても法案の趣旨説明をして、それに対する質疑を行うのだ。
本会議における質疑の後、委員会に付託されて、より詳細な議論が行われることになるよ。
さらに、「登壇もの」のうち、「重要広範議案」と呼ばれるものもあって、この場合は、趣旨説明質疑で首相に質問することができるとともに、委員会の質疑でも各党一巡の基本的質疑や締めくくり総括質疑で首相に質問できるのだ。
ただし、これは与野党間の申合せによる慣例で、与野党の国会対策委員会が協議して決めるのだ。
「重要広範」に指定されると、本会議でも質疑が入るし、委員会の審議でも十分時間をとって議論することになるので、一般に法案審議に時間がかかるようになるのだ。
なので、内容的にはとても重要であっても、審議時間の関係で与党がいやがって「重要広範」とならないことも・・・。
一般的には4件程度の議案が「重要広範」指定されるんだけど、与野党間の駆け引きでこの数は増減するのだ。

予算が終わってから法案の審議が本格化するわけだけど、「重要広範議案」の場合は首相が答弁するので、当然注目を集めるのだ。
こういうのをあらかじめ知った上で報道を見てみると、国会の仕組みがよくわかっておもしろいよ。
意外に下手なバラエティを見るより、国会中継を見ている方がおもしろいこともあるからね(笑)

2014/03/22

実は公平?

いよいよ4月からは消費税率が上がるのだ。
駆け込み需要で高いものが売れているみたいだね。
かくいう我が家もいろいろとほしいものを3月中に買おうと画策しているけど。
実際、3%も税率が上がれば、1万円の価格で300円違うわけで、これがもっと高額なら大きいよね!
とは言え、むしろ目先の10円、20円の方が感覚的にはしっくり来て、節約節約と買いだめしたくなるのだけど(笑)

この消費税増税は、導入時点で「逆進性」の問題が指摘されたのだ。
ここで言う「逆進性」は、所得の低い人ほど消費税による税負担率が高くなる、というもの。
単純化すると、消費に占める食費の割合を示すエンゲル係数との関係で考えるとわかりやすいんだ。
つまり、収入が多く、生活に余裕がある人はエンゲル係数も低く、そのため、食費に係る消費税の負担率は低くなるのだ。
一方で、収入が少なく、食い詰めている人はエンゲル係数が高くなって、食費に係る消費税の負担率は大きくなるんだよね。
食費のように生活を営む上で絶対に必要な消費支出に着目すると、低所得者の方が消費税が重くのしかかっているように見えるというわけ。

もっと一般化して生活必需品の消費を考えた場合、生活必需品は所得が高ければそれだけ多く必要になるというものではなくて、一人あたりに必要な数・量が決まるものなので、所得が高くなれば生活必需品が消費支出に占める割合が少なくなるんだよね。
そうなると、生活必需品に係る消費税の負担率は所得に反比例することになるのだ。
これが消費税の逆進性と言われるもので、低所得者に税負担を押しつけているのではないか、という主張なんだよね。

ところが、これは論理的におかしいと反論もされているんだよね。
わかりやすい例で言えば、高所得者は高価なものを買うし、低所得者は割安なものを買うわけで、それぞれ所得に見合った消費をする限りにおいては税負担率は公平だ、というもの。
お金持ちはデパートで高級食材を買う一方で、庶民はスーパーのタイムセールで値引き品を買うのだから、お金持ちは庶民に比べて確かにたくさん税を払っているんだよね。
また、お金持ちは生活必需品だけでなくて嗜好品や美術品などの高価なものも買うわけで、生活必需品だけの消費支出で考えるのは適当ではないのだ。

こういう話があるので、いわゆる逆進性対策として、生活必需品については低減税率を適用して、低所得者の税負担率を下げよう、なんて話が出てくるんだよね。
ただ、海外では品目ごとに税率を変えている例もあるけど、それってけっこうシステムとして機能させるのは大変なんだよね・・・。
それに、何をもって「生活必需品」とするかの問題もあって、そうそう単純な話でもないのだ。
なので、とりあえずは8%に上げる段階では低減税率は適用されないことになっているのだ。
でも、将来的な課題として議論は残っているんだよね。

ところが、この話もおかしいと言われているんだよね。
ある一時点で見ると確かに高所得者は生活に余裕があって、収入に占める消費支出が低いように見えるんだけど、実際には生涯期間で考えると、

 生涯収入 = 生涯納税額 + 生涯消費支出 + 相続・贈与額

の式が成り立つはずで、相続や贈与しない分は最終的にはなんらかの形で消費に回っているんだよね。
それが数年に一度自動車を買うとか、一生に一度豪邸を買うとかだからいまいちこの議論で補足しきれないだけで。
そもそも相続税や贈与税は消費税よりはるかに高い税率だからとやかく言われる筋合いはないし、生涯消費で考えると、下手に食料品に低減税率を適用すると、高所得者の方が生涯に食費に充てる金額は高いので、税額負担軽減効果では得をすることにもなってしまうんだ!
そうなると、一定の税率で等しく全員に消費税を課税した方がよいということになるんだよね。

これは数式だけのことだけど、やっぱりなんかダマされた感は残るんだよね。
で、つらつらと考えてみると、この「不公平感」は「金持ちはたくさん税金を払うべき」というところから来ているような気がするのだ。
所得税なんかは累進課税になっているから、所得が増えるほど税率も上がって、高所得者ほど多くの税金を納める仕組みになっているんだよね。
これが「富の再配分」につながっているわけだけど、消費税の場合は、上で見たように、所得の多寡に関係なく等しく、公平に税負担が来るので、別のところで低所得者が優遇されていただけに、低所得者に一見厳しいように見えるんだよね。
おそらくここがポイント。

となると、むかしあった物品税のように、贅沢品にはむしろ高い税率で消費税をかける、ということになるんだけど、そうなると、庶民が一世一代の高い買い物として自動車や住宅、婚約指輪なんかの高額のものを買うのに支障が出るから、それも難しいんだよね・・・。
こうやって詰めて考えてみるとなかなか奥が深いことがよくわかったのだ。
でも、まずは3月中に何を買ったらいいのか考えないとね(笑)

2014/03/15

コットンで吸収せよ

もう東日本大震災から3年が経ったんだね。
がれきの山は消えても、まだ復興は道半ば・・・。
福島の除染の問題ばかり騒がれるけど、実際は津波により海水をかぶってしまった田畑の再生も大きな課題なのだ!
東北はもともと農業が主要産業だから、塩害により商品作物ができなくなったんじゃお手上げなんだよね(>o<)

実際にはどうやっているかと調べてみると、けっこう大変そうなのだ。
まずは、すでに塩が浮いている表土を削り取るのだ。
海水は当然地下へとしみこんでいるけど、やっぱり表面が塩分濃度が一番高いので、ここを除去するのが最初。
その上で、田んぼの場合は、真水をふんだんに入れて代掻きをし、土中の塩分をその水に溶かしてから排水する、ということを繰り返すのだ。
徐々に薄めていくというわけだけど、この希釈だけで元に戻すのは難しいみたい。
そもそも何度も代掻きをするという作業が大作業だし。
そして、津波で灌漑設備が破壊されてしまっている場合、この方法は使えないのだorz

そんな中、塩害に強い作物を育てながら、徐々に田畑の塩分を取り除いていこう、というプロジェクトも行われているのだ。
有名なのは、いろんな企業も協賛している「東北コットンプロジェクト」。
綿花は耐塩性が高い植物として知られていて、綿花を栽培しつつ、塩分を取り除くとともに、その綿花は商品作物なので、農家の収入源にもなるというわけ。
これで雇用対策にも貢献できるし、離農を防げるというのもあるのだ。
協賛企業はそこで収穫された綿花を市価より高めに買い取って、木綿の商品を展開するんだ。
こういうのがもっと有名になってくれるとよいのだけど。

植物の中には土中の塩分濃度に敏感で、少しでも塩分濃度が高いと育たないものから、マングローブ林を構成する植物のように、海水につかっていても成長できる塩分に強いものまでいろいろあるのだ。
例えば、荒れ地に強いサツマイモやトウモロコシは塩害には弱いんだよね。
イネも同じで、やはり塩害には弱く、今回のように津波被害を受けるとなかなか水田耕作を復帰させるのは難しいのだ。
逆に塩害にわりと強いのは、ダイズやササゲ、かなり強いのはオオムギ、テンサイ、ワタなんだって。
トマトも塩分に強いんだけど、トマトは塩分濃度の高い土地で育てると糖度が高くなることが知られていて、わざと塩分濃度の高い土で栽培することもあるんだって!

ワタは古来から開拓してすぐに育てられる植物として知られていて、これは土中の余計な塩分を吸収してくれるかららしいのだ。
マングローブ林を構成する植物の場合は、細胞内の液胞に塩分を貯めておいて、光合成の時にはの表面から塩分を排出するというようなシステムになっているようなのだ。
あらかじめ根で水分を吸うときに塩分を濾過するような植物もいるんだとか。
ワタの場合は、すでに生命活動を停止している古い葉の中などに塩分を貯めるようにしていて、それを離脱させることで土壌から塩分を吸収し、体外に排出しているみたい。
けっこう効果はあるようで、1年綿花を栽培しただけでかなり土中塩分濃度は下がるみたいだよ。
ただし、稲作ができるようになるまでにはやはり数年のオーダーで時間がかかるわけだけど・・・。

こうしてみてくると、自然の摂理っていうのは偉大だよね。
もともと川の河口付近とか汽水域の近辺に自生しているような植物は耐塩性が高いんだろうけど、今回のように津波で思わぬ塩害が発生することは人類誕生以前からあったはずなのだ。
でも、それによって未来永劫不毛の土地になってはいないので、津波後に耐塩性の高い植物がまず生えて、ある程度土中の塩分を吸収してくれたから他の植物も生えるようになって、最終的には元と同じような状況になる、ということがシステムとしてできあがったんじゃないかな?
場合によっては大きく植生が変わることもあったろうけど、それでも、きちんと自然は再生するんだね。

2014/03/08

隼町の主

報道によると、最高裁判所の竹崎長官は、年度内いっぱいで退官し、現在最高裁判所判事の寺田さんという人が後任になるそうなのだ。
最高裁判所長官の定年は70歳で、竹崎長官はまだ69歳なんだけど、健康上の理由から引退されるんだとか。
今度の寺田さんは、お父さんも最高裁判所の長官をしていたという裁判官サラブレッド!
はじめて司法の長に「世襲」が生まれたのだ(笑)

最高裁判所の長官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命する憲法に規定されているんだけど、憲法上は、第6条第2項で「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。」と書いてあって、長官とは言っていないのだ。
この憲法に言う「最高裁判所の長たる裁判官」については、裁判所法第5条第1項で「最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。」と規定していて、ここではじめて「長たる裁判官=長官」という図式になっているんだって。
米国の連邦最高裁判所の長は「Chief Justice」で、その他の裁判官は「Associate Justice」なんだよね。
これがそのまま和訳された感じに近いのかな?

憲法制定に至る過程を見ていくと、最初は最高裁判所の裁判官は全員並びで区別せずに「内閣が任命する」となっていたようなんだけど、同じ三権の長である最高裁判所の責任者の任命権もすべてが内閣に帰属することが問題になって、その「長」だけを別格にし、内閣総理大臣並びで「天皇が任命する」と修正したんだとか。
なので、憲法で言っている「長たる裁判官」というのは任命権の帰属において他の裁判官と区別するだけの話で、三権の長として何か権限を与えたりしているものではないんだとか。
最高裁判所という国の機関の責任者という意味では、長官が最終責任者ではあるんだけど、実際に司法権の行使の観点で言うと、他の最高裁判所判事との間で優越関係はないそうだよ。
ちなみに、最高裁判所の判事を内閣が任命することについては、憲法第79条第1項で「最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。」と規定しているよ。

こういう建て付けなので、そのガバナンスも行政を司る内閣とは自ずと異なっているのだ。
内閣におけるその長たる内閣総理大臣は、内閣を構成する国務大臣を任命することができるのが大きな違い(憲法第68条第1項)。
また、内閣総理大臣は、閣議を主宰し(内閣法第4条第1項)、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出するとともに(同法第5条)、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督し(同法第6条)、主任の大臣の間における権限についての疑義を閣議にかけて裁定することとなっているのだ(同法第7条)。
すなわち、内閣総理大臣は内閣においてリーダーシップをとる形のガバナンスになっているんだ。

一方で、上記のように、最高裁判所判事はすべて内閣が任命することになっていて、長官には任命権がないのだ(>o<)
憲法や裁判所法でも、最高裁判所において長たる裁判官(=長官)が他の裁判官(=判事)に対して優越的な地位を占めるとの規定はないんだよね。
せいぜい全裁判官を構成員とする大法廷で裁判長をするくらい。
これもリーダーシップをとるというよりは、全員の意見をとりまとめるくらいの役割でしかないから、同じ三権の長でも行政と司法では大きく違っているのだ。

ただし、司法行政事務についてはちょっとだけリーダーシップがとれる枠組みになっているよ。
司法行政事務は、最高裁判所の全裁判官を構成員とする裁判官会議により行われる、とされていて、それを長官が議長として総括する、ということになっているのだ(裁判所法第12条)。
これだと、戦前の帝国憲法下における内閣総理大臣の閣議における役割に近いかな?
でも、「会議による」って明確に書かれているから、その事務の執行は合議体組織で意思決定する必要があって、長官に裁量が任されているわけではないんだよね・・・・。
行政権の行使も内閣が連帯して責任を負うことになっているけど(内閣法第1条第2項)、内閣総理大臣には国務大臣の任命権があるので、権限上は言うことを聞かない国務大臣を更迭することができて、かなり裁量が任される部分があるんだよね。
やっぱり人事権を掌握できていないという点で、最高裁判所の長官のリーダーシップは弱く、「首座の裁判官」程度のものでしかないんだよね。
ただし、最高裁判所においてそんなに長官がリーダーシップをとってやるべきことがあるか、という問題はあるんだけど(笑)

こうして長官人事に異動でもなければ興味が出なかったけど、なかなかおもしろい仕組みになっているなぁ。
日常生活だと、司法の現場たる裁判自体にそもそもなじみがないからね。
なおかつ、その裁判所のガバナンスなんて(笑)
今度の衆議院総選挙の時は、最高裁判所裁判官の国民審査でもう少しまじめに各裁判官の業績を読んでみようかな?

2014/03/01

乳タイプ

むかしからわりと有名な話のようだけど、常温で保存できる「コーヒーフレッシュ」は乳製品ですらなく、主原料が植物性油脂だというのだ!
これを知ったきっかけは、たまたまネットで見た、家庭にあるよく燃えるもの、という記事で、コーヒーフレッシュは植物性油脂が主原料なので、火の近くで扱う場合は注意、と書いてあったんだ。
で、実際に調べてみると、主原料は植物性油脂(ようは植物由来の油)で、そこに乳化剤(食用の界面活性剤)と乳製品(脱脂粉乳とか乳糖とか)とカゼインを加えたもののようなんだ。
確かに、乳製品だったら常温では保存できないよね・・・。

もともとコーヒーには脂肪分の多いクリーム(牛乳を遠心分離にかけて、上に浮いたクリーム層をとったもの。逆に下の方の水層をとると低脂肪乳や無脂肪乳になるのだ。)を使っていたんだけど、これは日持ちがしないし冷蔵しないといけないのでコストがかかる。
そこでその打開策が考えられたのだ。
まず出てきたのは粉末状のクリーミングパウダー。
1960年代初頭に出てきたのは、乳製品のみを主原料とする森永乳業のクリープ。
ここまではまだ乳製品にこだわっているのだ。

単純に脱脂粉乳をコーヒーに入れてもよいような気がするけど、そもそもコーヒーに合うのは乳脂肪分の多いクリームであること、それからなによりの問題として、脱脂粉乳はかなり水に溶けづらいことから、それでは解決策にならなかったのだ。
森永乳業では、生クリームの粉末化に関する理論の書かれた米国の論文をもとに、独自に技術開発をして作り上げたんだって。
技術自体は1950年代にできていたけど、さほど家庭でコーヒーを飲む習慣が根付いていなかったので、売り出すまでには時間がかかっているのだ・・・。

具体的には、乳中に含まれるカルシウムやマグネシウムのような二価のイオンはコーヒーに含まれている有機酸と反応し、乳タンパクを架橋して固まらせてしまうのだ・・・・。
ミルクティーにレモン汁を入れると乳タンパクが凝固して沈殿するけど、まさにそれと同じ反応が起こってしまうわけ(>o<)
そこで、そういう反応が起きないように、二価の金属イオンを一価の金属イオン(ナトリウムなど)に交換するのだ。
このとき、一度無脂肪乳にしてカラムを通してイオン交換を行い、その後井某分とまた混合するんだって。
次に、そうを霧状にして乾燥させ、粉末にするのだ。
短時間でさっと乾燥させるので風味が飛ばないんだとか。
最後に、細かい粒子だと水に溶けづらいので、ある程度の大きな粒子になるように造粒するのだ。
意外とクリープがざらざらしているのはこのためみたい。

こうして手軽に使える粉末状のミルクが登場したわけだけど、この少し後に、そもそもミルクを主原料にしない、植物性油脂由来のコーヒーフレッシュが登場するのだ!
それが1970年代。
同時に、植物性油脂を主原料とする粉末タイプのもの、クリーミングパウダーも登場(こっちは植物由来の脂肪で作るのだ。)。
何より、低コストでできるんだよね。
インスタントコーヒーとクリーミングパウダー、砂糖が一緒に入っているタイプの商品があるけど、そういうところに需要があるのだ。
乳製品や香料を加えるので風味はそこそこあるけど、やっぱり乳製品のみを原料とするクリープには及ばないみたい。
クリープはそのままなめる子供がいるくらいだからね(笑)
そして、植物性原料由来とは言え、実はコーヒーフレッシュやクリーミングパウダーの方がカロリーは高いみたい・・・。
これも注意が必要だね。

本来、コーヒーには無糖練乳や生クリームを使うものだったのだ。
無糖練乳というのは牛乳を加熱して水分を飛ばしたもの。
英語ではエバミルクと呼ばれているけど、加熱時に砂糖を加えると、加糖練乳=コンデンスミルクになるのだ。
生クリームは牛乳を遠心分離にかけ、上の方(=軽い方)の乳脂肪が多い部分を取り出したもの。
原始的には、牛乳を加熱殺菌後に静置して冷却すると、上の方にクリームが分離してくるので、それをすくったものなんだよね。
コーヒーに使うクリームは通常脂肪分が20~40%の軽めのもので、ケーキなどに使うホイップクリームの場合は30~50%ともう少し濃厚なのだ。
ウインナー・コーヒーは濃いめに入れたコーヒーに、濃いめのクリームを使うというわけ。

というわけで、ポーションタイプのコーヒーフレッシュはミルクの代用ではあっても、乳製品ではないのだ!
どうも粉末タイプのココアを作るときにコーヒーフレッシュを添加してもミルク感が出ないなぁ、と思っていたんだけど、原因はここだったんだね・・・。
粉末タイプでも、やっぱりクリープでないとダメなのかな?
実際に飲み比べてみるとけっこう違ったりして。

2014/02/22

まずは首を突っ込む

テレビでストックホルムにあるABBAミュージアムを紹介していたんだけど、なんとその入口には「顔出し看板」が!
しかも、ABBAの各メンバーの顔の部分は着脱可能で、一人で行っても自分がABBAのメンバーになったかのような記念撮影ができるのだ(笑)
日本にあるやつは顔を出す部分はくりぬかれたままだけど、これはなかなか秀逸だね。
ま、それ以上におどろいたのが、この「顔出し看板」が海外にもあったことだけど。

「顔出し看板」又は「顔ハメ看板」は、観光地やレジャー施設に設置されている記念撮影用の書き割り看板で、通常はキャラクターが描いてあって、顔の部分に穴が空いているのだ。
そこに自分の顔を出して写真を撮ってもらうと、そのキャラクターになったみたいな写真が撮れるというわけ。
観光地ではその土地に関連したキャラクターや人物(神田明神なら銭形平次、桂浜なら坂本龍馬などなど)が多くて、レジャー施設だとその施設のマスコットキャラクターだったりするよね(某ネズミ施設には存在しないけど、むかしは後楽園にはドンチャックの顔出しがあったのだ。)。
キャラクターなりきり系の他にも、電車の運転席のところが切り抜かれていて、自分が運転士になったような写真が撮れるものなど、本来的な書き割りの趣を残すものもあるよ。

これがいつから広まったかは定かではないんだけど(一説には熱海にある金色夜叉の寛一・お宮のやつが最初とも!?)、今ではどこの観光地にもあるよね。
で、印刷や斜視の亜ネルを使ったものよりも、手書きの味のあるものの方が人気があるような気がするのだ。
どのみちまぬけな写真にしかならないから、そのチープさがよいんだよね♪
浅草では花魁の衣装が借りられるし、京都では舞妓さんの衣装が借りられるけど、そういう本格的なものじゃなくて、板に書いた絵に顔を出すだけで気分が出せるところが魅力かな?

この看板が活躍するためには、誰しもが観光地で記念撮影をするような状態になることが必要なんだけど、カメラの普及の歴史を振り返れば、80年代後半から90年代前半があやしいのだ。
70年代の終わりに、自動露出とオートフォーカス(又はピント合わせ不要の固定焦点方式)を搭載した小型のカメラが出たのだ。
ポケットカメラやコンパクトカメラと呼ばれたこのカメラは、シャッターを切るだけでほとんどピンぼけせずに写真が撮れるという優れもので、カメラの一般への普及に大きく貢献したんだ。
ただし、特殊な横長のフィルム(通常は35ミリ判だったけど、このカメラは110判というフィルムだったのだ。)を使っていて、カメラ自体も横長のもの。
おもちゃ的な扱いではあったものの、きちんと写真も撮れるので広まったみたい。

バブル時代に突入する80年代になると、オートフォーカスを搭載した一眼レフカメラが登場するのだ。
それまで一眼レフはピントや絞りを調整するのが難しく、素人には向かないので「趣味のもの」という扱いだったけど、これにより誰でもシャッターを切るだけでそれなりの写真が撮れるようになったのだ。
しかも、バブルで景気がよいから、けっこう高額な一眼レフカメラでも普及したわけ。
それまでは写真好きな人は旅行先にカメラを持って撮っていた程度だったのが、誰でもカメラ持参で写真を撮って帰ってくる時代に突入するわけだよ。

さらに、90年代になると、大革命が起きるのだ。
バブルははじけて高級なカメラはまた趣味人のものにもどるけど、一般大衆が旅行先などで写真を撮るものとして「使い捨てカメラ(レンズ付きフィルム)」が登場するのだ。
富士フイルムの「写ルンです」がメジャーだよね。
軽量で操作も簡単。
写真を撮ったらそのまま写真屋さん(DPEショップ)に持ち込んで、1時間後には現像ができている、という代物。
これにより、若い世代も旅行先で写真を撮ることが一般になるわけだよね。
修学旅行生が手軽に自分で記念撮影ができるようになったのだ!

おそらく、このあたりが顔出し看板の普及の時期なんじゃないかとにらんでいるんだよね。
誰もが気軽に写真を撮るようになって、顔出し看板の需要が出てきたわけなので。
しばらくこの使い捨てカメラが主流になるんだけど、低価格で高画質なデジカメが登場すると、今度はそっちにシフトしていくんだよね。
デジカメになるとさらに状況は変わって、撮影枚数に限りがなくなるので、ますます「くだらない」写真を撮るようになるんだよね(笑)
使い捨てカメラが手軽だけど、フィルムである以上撮影枚数に限りがあるし、何より撮った後は現像する必要があったけど、デジカメの場合は容量が許す限りいくらでも撮影できるし、パソコン等の画面で画像が確認できるので、紙媒体で残したいものだけプリントして、後は電子データで保存できるのだ。
こうなると、一度ならず二度、三度と失敗を恐れずに撮影できるし、顔出し看板があれば、いっちょ顔でも出してみますか、ということになるわけだよね。
そんなわけで、現代になってもなお存在し続けているんじゃないかなぁ。

ちなみに、海外にもけっこう顔出し看板は存在しているようで、アジアだけでなく、ハワイとかにもあるようなのだ。
日本人が広めたのか、各国の人が同じような発想を持ったのか。
また、最近ではスマホのカメラアプリに、あらかじめ「フレーム」として顔出し看板のようなものが入っているのもあるよね。
でもでも、あくまでも顔出し看板は旅の記念。
その場所に行かないと顔を出せない、という希少性が大事なはずだよね。
これからも御当地顔出し看板の繁栄を期待したいね。

2014/02/15

「ぽん」か「ほん」か

オリンピックになると、「ニッポン」という文字をよく見かけるようになるし、「ニッポン」というかけ声もよく聞くよね。
そうなると、「日本」という字は正式には「ニッポン」と読むのかというと、どうもそうなってはいないらしいのだ・・・。
平成21年6月にに当時民主党に所属していた岩國哲人元衆議院議員が提出した質問主意書への答弁を見ると、どっちでもいいと書いてあるのだ!
より正確には、
「にっぽん」又は「にほん」という読み方については、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はないと考えている。
だって。
そうだったのか。

日本の紙幣を見ると、「NIPPON GINKO」と書いてあるように、「日銀」こと「日本銀行」は「にっぽんぎんこう」なのだ。同様に、「日本放送協会(NHK)」は「にっぽんほうそうきょうかい」、「日本武道館」は「にっぽんぶどうかん」なんだって。
政党で言うと、「日本社会党」は「にっぽんしゃかいとう」と読むそうなのだ。
ところが、公的組織でも「日本オリンピック委員会」は「にほんおりんぴっくいいんかい」と読むし、公益法人だと「日本相撲協会」は「にほんすもうきょうかい」、国策会社でも「日本航空」は「にほんこうくう」が正式。
なんとなく、こういう場合は「にっぽん」、こういう場合は「にほん」というルールがあるわけじゃなく、語感で選ばれているような気がしないでもないよね(笑)
けっきょくどちらも圧倒的に使われているわけではなく、それぞれ通用しているので、今更政府としては決められない、といのが正解なのだ。

ただし、戦前には「にっぽん」に統一しようという動きもあったみたい。
昭和9年(1934年)の文部省臨時国語調査会で「にっぽん」に読みを統一し、外国語表記も「Japan」をやめて「Nippon」にしようとしたんだけど、不完全に終わったみたい。
「大日本帝国憲法」も、正式に「だいにっぽんていこくけんぽう」と読み仮名をつけようとした動きもあったそうだけど、けっきょくは公式には読みは定まっていないようなのだ。
戦前ですらそうなんだから、現代においてどちらかに統一する勢いはないだろうね。
語調を強めたいとき、勢いをつけたいときは破裂音がいいから「にっぽん」と言うし、よりマイルドに、平板に言いたいときは「にほん」と言うようにした方が使い分けできるしね(笑)

では、むかしはどうだったか、というのが問題だよね。
研究によれば、飛鳥時代後期、7世紀後半くらいの国際的な漢字の読みは呉音で「にっぽん」と読むか、漢音で「じっぽん」と読むかのどちらかだったのではないかと推測されるのだ。
漢字文化圏の場合、文字自体は変わらなくても、時代によって読みが変わるので複雑なんだよね・・・。
国際的には、当時の中国の王朝における主流の読みに従うんだろうけど。
で、ここでわかるのは、「じゃぱん」というのは、この漢音の「じっぽん」から来ているであろうということ。
「黄金の国ジパング」とかもおそらく同じ。
マルコ・ポーロさんは元代の中国を訪れているから、そのころの読みがそれに近かったんじゃないかな?

ところが、平安時代の仮名書きでは、「にほん」と表記されているんだって!
仮名の読み方字体が異なっている可能性もなくはないけど、確実に「にほん」と読む習慣はあったんだよね。
室町時代では、対外的には「にっぽん」とか「じっぽん」とか言うけど、普段は「にほん」と言っていたのではないか、というような説もあって、そうなると、かなりむかしから強いこだわりもなく、場面場面で読みを使い分けていたことに・・・。
これが日本の文化性かな(笑)
今と全く変わらない!
むしろ、中国では漢字の読みが時代で変わるのが普通だったから、大きなこだわりを持っても国際的に通用しなくなるだけだし、意味がなかったのかな?

ちなみに、我が国の国号は「日本国」とする、と定めている法律は特になくて、日本国憲法において、「天皇は、日本国の象徴であり・・・」というように使っているので、「日本国」が事実上の国号となっているのだ。
国旗と国家はもめたのでちゃんと法律で定めたんだけどね。
実は、戦前も「日本、日本国、日本帝国、大日本国、大日本帝国」などの様々な国号がばらばらに使われていたようで、昭和10年(1935年)に帝国議会で不統一が問題視され、以降は「大日本帝国」で統一されるようになったんだって。
それに比べれば今はほぼ「日本国」で統一されているから、デファクト・スタンダードとしてはうまく機能しているかな。
ま、読みは定まっていないのだけどね。

2014/02/08

重ねて重ねて

また、日本人が狂喜乱舞する祭り、「ヤマザキ春のパンまつり」が始まったのだ!
しばらくはお昼ごはんはパンだなぁ(笑)
ま、その方が手っ取り早いし、いつでも食べられるからよいのだけど。
で、その中でもついつい買ってしまうのがアップルパイなんだよね。
いわゆるケーキのアップルパイとは違って、パン・オ・ショコラのチョコレート部分がアップル・フィリングになった感じのものだけど。

パイの醍醐味と言えばそのさくさく感。
ぼろぼろとカスが落ちるので食べるのが大変だけど、やめられないぜ♪
このさくさく感を生み出しているのが、パイ生地に大量に含まれているバターやマーガリンなどの油脂。
手がべとべとになるわけだ・・・。
このせいで普通のパンよりカロリーが高めなんだよね。

パイ生地は、小麦粉と卵、水を練って、その上にバターを薄くのばして重ね、それを折りたたんでは伸ばし、折りたたんでは伸ばし、と作っていくのだ。
これにより、パイ生地の断面を見ると、小麦粉の生地の層とバターなどの脂の層が交互に並んでいる状態になるわけ。
これが焼成されるとき、生地と生地の間のバターが融け、沸騰し、そこに隙間ができるわけ。
これがさくさく感の正体で、生地がぽろぽろとはがれるのもこのため。
極薄の生地が重なっている状態に焼き上がるんだよね。

パンの場合は、生地の中に気泡が分散している、スポンジ状態に焼き上がっているんだよね。
これがふわふわ感を生み出しているのだ。
発酵パンの場合は、パン記事中でイーストが発酵反応を起こしたとき出てくる炭酸ガスで気泡ができ、ベーキングパウダーを使う場合は、熱で炭酸水素ナトリウムが分解されて炭酸ガスが発生して気泡になるのだ。
これにより気泡が三次元的に分散して、スポンジ状の構造になるんだ。

クロワッサンやデニッシュはその組み合わせで、パン生地のバターやマーガリンを重ねて折りたたんでいくのだ。
やっぱり多層構造になって、そのうち脂の層が融けて隙間ができるんだ。
ただし、パン生地を使っているので、極薄の生地自体がふわふわしていて、あの独特のしっとり間が出るみたい。

このバターを重ねて織り込んでいくところがミソなんだけど、これが難しいんだよね・・・。
というのも、折りたたんでいるうちにバターが融けてしまうと生地となじんでしまうのでさっくり感がだせなくなるのだ。
かといって、融けていない状態だとそれなりにかたいわけで、それをきれいに伸ばしていくのはコツがいるよ。
最後の方はものすごく薄いバターの層ができていて、手の表面の温度で融けかねないので、手を氷水で冷やしながら作業する、なんてこともあるようなのだ。
生地を折りたためば折りたたむほどさくさく感が出るんだけど、折りたたむ回数を増やすとそういう問題が出てくるわけ。
機械だったら冷やしながらローラーで伸ばしていくんだろうけどね。

ちなみに、折りたたむ以外のパイもあるのだ。
一般にアメリカン・パイと言われるもので、小麦粉とバターを均一にまぶし、塩水で生地にまとめたもの。
クッキーのようなさくさくした焼き上がりになるのだ。
アメリカのチェリーパイやパンプキンパイの底にしかれている部分だよ。
バターを切るようにして小麦粉とまぶしていくんだけど、これはこれでけっこう大変なんだよね。
おいしいものを食べるには手間暇が大事ということかな?

2014/02/01

バクテリアの力で中はとろとろ

日本でも水筒のように使われてきたひょうたん。
実はアフリカ原産で、その有用性から世界に広まった植物なのだ。
最古の栽培植物とも呼ばれ、アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカとそれこそいろんな地域で容れ物や楽器などに利用されているのだ。
ヒョウタンのみから加工されるひょうたんは、軽くて丈夫で、水が漏れないから便利なんだよね。
タネも乾燥に強く、海水にさらされても高い発芽力があるという植物としての強さも広まった要因のひとつなのだ。

ヒョウタンの果実にはククルビタシンという苦み成分があって、これは有毒で嘔吐や下痢などの食中毒症状をひきおこすものなのだ。
なので、食べるのではなく、日用品の材料として使われるわけ。
ちなみに、海苔巻きでもおなじみの干瓢は、ククルビタシンの含有量の少ないヒョウタンであるユウガオを加工したもの。
普通のヒョウタンの実を薄くむいて干しても干瓢にはならないので注意!
やる人はなかなかいないだろうけど・・・。

ヒョウタンからひょうたんへの加工は意外と手間がかかるのだ。
完熟したヒョウタンの実のへたの部分を切り落とし、そこから棒を中に突き入れて果肉を崩すのだ。
ヒョウタンは果肉が硬いことでも知られているので、けっこう大変みたい。
で、ある程度中をぐちゃぐちゃとかき回したら、重しをつけて水につけておくのだ。
そうすると、ヒョウタンの果肉や表皮はバクテリアにより分解され、表皮の下の硬い殻の部分だけが残るんだ。
これには1週間~1ヶ月くらい必要で、さらに、ものすごい腐敗臭がするので、いったん腐った果肉等を取り去った後、さらに1週間ほど水につけ、その後陰干し。
それでもまだにおいは残っているので、水筒や食器として使う場合は、さらにお酒や番茶を内部にみたして臭みを抜くんだって。
お酒を使うのは、臭み成分をアルコールに溶かして溶出させるため。
番茶を使うのは、大量に含まれるタンニンが臭み成分を難溶性塩になって不溶化されるのでにおいを感じなくなるのだ。
実は化学的に理にかなっている手法だよ!
最後に柿渋や漆、ニスなどを表面に塗って仕上げ。

このひょうたんになる部分は、セルロースとリグニンでできているんだけど、セルロースは植物性の繊維。
ヘチマたわしや綿糸もセルロースだよね。
まったくバクテリアに分解されないわけではないけど、分解には相当時間がかかるのだ。
ヘチマたわしもヒョウタンと同じように、完熟したヘチマの果実を腐らせて取り出すんだけど、果実は腐敗するけどセルロースの網目部分は分解されない状態で取り出すのだ。

リグニンは別名木質素とも呼ばれるもので、これは白色腐朽菌でしか分解できないのだ。
白色腐朽菌は、ヒラタケ、シイタケ、エノキ、ナメコなどのきのこのことで。茶色いリグニンを分解して、腐朽した木が白っぽくなるのでこの名前があるんだ。
パルプ製造の副産物として出る黒液には大量のリグニンが含まれているのだけど、まさにその色。
ポリフェノールの一種なので茶色いのだ。
で、こっちはセルロースよりさらに分解されにくいので、容れ物などにも使えるわけ。
ただし、表面にカビが生えたりはするから、適切にメンテナンスはしなくちゃいけないんだけど。

それにしても、果実を腐らせて、硬い部分だけ取り出すって言うのは誰が考えたんだろうねぇ。
自然に地面に落ちたヒョウタンの実が長い年月で果実が腐って、硬い部分だけが残されていたのを発見したのがはじまりなのかなぁ。
こういう先人の工夫には驚くものが多いよね。
それなりの年月をかけて洗練していったんだろうけど。

2014/01/25

のろのろすんな!

最近は冬になるとノロウイルスによる食中毒が話題になるのだ。
自分が子供の頃だと、食中毒は夏のもので、それこそ高い気温で腐敗が進むのが早くて、傷んだものを食べてしまうのが、いわゆる「食中毒」だったのだ。
細菌性のものだよね。
細菌性の食中毒は腐ったものを食べた人から先には広がらないんだけど、ノロウイルスによる食中毒は、感染した人の吐瀉物や糞便に含まれるウイルスが経口感染することで感染が広がってしまうのだ(>o<)
ノロウイルスは乾燥に強いから、乾燥した吐瀉物や糞便から出る塵埃が口に入るおそれがあるんだよね・・・。

もともと「カキにあたる」っていうのがあるけど、これが実はノロウイルスなんだよね。
ノロウイルスに感染すると、半日~2日くらいで急性胃腸炎を発症し、激しい嘔吐と下痢に見舞われ、発熱もするのだ。
で、それを看病していると、その患者の吐瀉物や糞便に触れる可能性があって、そこからまた感染が広がるんだよね・・・。
ノロウイルスの食中毒でこわいのは、この感染の広がりによる集団食中毒なのだ!
ウイルスが乾燥に強く、アルコールや逆性石けんなどでは消毒できないので、徹底的に洗い流すしかないんだって。
とにかく衛生管理あるのみ、ということみたい。

カキなどの貝であたるというのは、貝にこのウイルスが付着していることが原因なのだ。
貝の中では増殖はせず、感染するのはあくまでもヒトだけ。
感染者の糞便が下水に流れ、それが海に流されると、海水中に漏れ出た微量のウイルスを河口付近にいる貝が取り込むのだ。
これが蓄積されてしまい、相当量蓄積されてしまった貝を食べるとあたる、というわけ。
きれいな海域の貝しか生食用にはしちゃいけない、ということだよね・・・。
よく、カキなんかは生食用と加熱用とで分けて売られているけど、それは新鮮さの違いではなく、こういうところに違いがあるのだ。
どんなに新鮮でも、その貝のとれた場所によって生食にはできない、ということなのだ。

ノロウイルスが悪質なのは、研究室レベルで増やすことがまだできていない、という点。
このせいでなかなか研究が進まないのだ。
最初にウイルスの存在が知られるようになったときは、いちいち電子顕微鏡でウイルスがあるかどうかを確認していたとか。
今では、酵素反応と高原・抗体反応を使ったELISAという分析法や、ウイルスのRNAを逆転写PCR(RT-PCR)で検出する方法が使われているみたい。
検出するだけならそれでもいいんだけど、何か試験に使おうと思っても、患者から抽出したウイルスしかない状態だとどうしても数が限られるから、なかなかきびしいよね・・・。
電子顕微鏡でしか見られなかった時代なんてそもそも診断も難しかったわけで。
そのせいでずっとマイナーだったんだけど、その感染がもたらす被害が大きいし、最近はわりと簡便に検出できるようになったので話題になり始めたのだ。

このウイルスが戦後になって急に出てきた、ということはおそらくなくて、むかしからあったけど、なんだかわからなかっただけなんだよね。
日本でむかしから「おなかに来る風邪」というものがあったけど、それもノロウイルスだったのではないか、と考えられているみたい。
最初に見つかったのは、1968年米国オハイオ州ノーフォークの小学校における集団感染。
最初はノーフォークウイルスと呼ばれていたみたい。
1977年には札幌でも同様のウイルスが発見され、そっちはサッポロウイルスと呼ばれたのだ。
それぞれのウイルスが遺伝子レベルで同定できるようになったのは1990年。
それまでは電子顕微鏡でウイルスの形を観察したり、症状から推測するしかできなかったみたい。
2002年には国際ウイルス学会で、ノーフォークの「Nor」とサッポロの「Sap」を「virus」に「o」をはさんでつなげる命名が正式採用され、それぞれ「ノロウイルス」と「サポウイルス」となったのだ。
ただし、これは属名なので、日本語では「ノロウイルス属」、「サポウイルス属」になるよ。

研究が進んでいないだけあって、このノロウイルスによる症状の発症メカニズムは不明なんだとか。
そのため、基本的には対症療法しかできなくて、熱を下げたり、下痢がひどい場合には栄養輸液をしたりというのが基本。
ウイルスを出し切ることもあって、あまり止瀉薬は使わないとか。
出すだけ出してすっきりしろ、ってこと?
症状がそんなにひどくない場合には、経口補水液やスポーツドリンクを人肌にあたためて飲むがよいらしいよ。
ちなみに、ノロウイルスは血液型感染率に差があることが知られていて、O型は罹患しやすく、B型は罹患しづらいとか。
B型は丈夫だなぁ(笑)

とにもかくにも、こういうよくわからないものなので、予防には衛生管理あるのみ。
自分でできることは、手洗いの徹底と、自宅のキッチンまわりを清潔に保つことだね。
この寒い時期に寒いトイレにこもるのはつらいから、気をつけないと!