2015/02/28

栄養食材・一粒?メートル

冬が旬の食材と言えばカキ。
一般にマガキは「R」のつかない月に食べられる、と言われるけど、中でも、秋から冬にかけては実もぷりぷりにふくらんでおいしいと言われているのだ。
これは身の中に大量のグリコーゲンをため込むため。
このほかにも、カキは必須アミノ酸を全て含み、カルシウムや亜鉛といったミネラルも豊富なので、非常に栄養満点なんだ!
カキを食べて、栄養をつけて、冬を乗り越えよう。

このカキのグリコーゲンは、キャラメルのグリコの名前の由来でもあるんだよ。
グリコの創業者の江崎利一さんはもともと薬種業を営んでいたんだけど、故郷の佐賀県有明海沿いの堤防で、漁師さんたちがカキを煮ているのを目撃するのだ。
カキを塩ゆでしてから天日干しにして干しガキを作っていたんだけど、干しガキは中国では古くからうまみのある食材として珍重されていたのだ。
で、その茹でた後の煮汁は捨てられていたんだよね。
ところが、九大に依頼して分析してみると、この煮汁には大量のグリコーゲンが溶け出していて、カルシウムや銅などのミネラルもたっぷり。
そこで、捨てられるはずのこのカキの煮汁からグリコーゲンを抽出し、キャラメル菓子に混ぜ、栄養菓子として売り出すことにしたんだ。
これが一粒300mのグリコ。
300m走る分だけのカロリーがあるということだよ。
育ち盛りの子供にたっぷりと栄養をとってもらいたい、ということから考案されたんだって。

日本では捨てられていたカキの煮汁だけど、中国ではちゃんと使われていたんだよね。
煮汁を煮詰めて濃縮してから、小麦粉やデンプンでとろみをつけ、砂糖とうまみ調味料で味を調えてカラメル色素で色をつけたものがオイスターソース。
カキのうまみと風味が詰まった調味料となるのだ。
もともとは干しガキを使っていたわけだけど、19世紀の終わり近くになって、煮汁にもうまみがあることに気づき、濃縮して調味料にしたのがはじまりなんだとか。
広東省で李錦裳さんが作り始めたんだけど、この人が澳門(マカオ)に移り住んだので、澳門・香港で広まっていくことになるのだ。
今では広東料理で広く使われるよね。
グリコは大正初期に製造が始まるんだけど、実はどちらも20世紀はじめに普及しているのだ。

話をカキに戻すと、カキの食べ方として、生のまま食べるか、加熱して食べるかの大きく分けて二通りがあるのだ。
スーパーでも加熱用と生食用が売っているよね。
一般には、生食用の方が新鮮と思われがちだけど、実は違うんだよね・・・。
生食できるかどうかは、食中毒の原因となる大腸菌にどれだけさらされていたかの違いなんだ。
もともと大腸菌が少ない海域で採れたものはそのまま生で食べられるんだけど、養殖物なんかは沿岸部で採れるので、どうしても大腸菌にまみれているんだ(>o<)
そこで、大腸菌の少ないきれいな海水又は人工海水の中でしばらく飼育し、「浄化」する必要があるのだ。
普通にスーパーで見かける生食用のカキはこっちで、数日間絶食状態に置かれた後のものなので、実は加熱用のカキより味が劣ることもあるんだ・・・。
海女さんがきれいな海域から採ってきた天然物なら、生食すると全然違うんだけどね。

ちなみに、大腸菌などのバクテリアはある程度ぬくことはできるんだけど、気をつけたいのはノロウイルス。
感染者の排泄物を下水処理するときにどうしてもウイルスは除去しきれないらしく、河口付近にはウイルスが漂っているらしいんだ。
なので、養殖物ではそのウイルスを体内で生物濃縮してしまうことがあって、それをたまたま生食すると感染するのだ。
基本的には中までしっかりと火を通せば感染は防げるので、やっぱり養殖物なら加熱して食べた方がよいのかな?
カキフライや焼きガキ、カキ鍋などなど、加熱しても十分においしいよね。

2015/02/21

ビリっでニョキっ

たまたまた知ったんだけど、「ほだ木」に菌糸を植えるキノコの原木栽培をするとき、この原木に電気刺激を与えるとキノコの収量が増えるんだそうなんだよね。
もともと、雷が落ちるとキノコがよく採れる、という俗説があって、それを実際に模擬してみると、確かに収量が増えることがわかったんだそうだよ。
古代ギリシアでもすでに言及されているくらい古くから知られている話なんだとか。
今でもキノコ栽培で使われている技術で、「キノコ増産装置」の名前で電気パルスをかける機械もあるようなのだ。

このメカニズムの詳細は不明な点も多いようだけど、一般的には、キノコ=菌類の防衛本能ではないか、と考えられているんだ。
キノコはいわゆるカビである真菌類の作る「子実体」で、胞子をまき散らすことがその役割。
カビとしては網目状に菌糸体が広がっていくんだけど、風に乗せたり、無視に運ばせる形で物理的に遠く離れたところに胞子を移動させたいときに、菌糸が立体的に絡まって子実体が作られるのだ。
カビは徐々に広がっていくことはできるけど、そのままでは別の場所に移動できないので、生育環境の悪化などの要因で、「もはやこれまで・・・」となったら、胞子を遠くに飛ばし、そこで新たな菌生を始めるということなのだ。
落雷のショックがまさにその生存本能・防衛本能に火をつけているのではないか、というわけ。

当然、菌に生死の瀬戸際を感じさせるような刺激であればいいわけで、実は落雷だけじゃなくて、熱でも光でも、物理的な衝撃でもなんでもいいのだ。
いろいろと科学的に試した実験もあるけど、熱刺激や光刺激、物理的刺激等々で子実体形成が活性化されることがわかっているのだ。
原木栽培では電気パルス刺激なんかがやりやすいわけだけど、キノコ農家によっては、原木に菌糸を植えた後、55度のお湯につけてから乾かすとか(いわゆる「ヒートショック」)、原木を木槌で思い切りたたく(物理的衝撃)などの方法を使っている例もあるみたい。
熱刺激や光刺激を加えたときに菌糸の中でどういうタンパク質が増えるかとか見ている研究もあるようだけど、まだよくわからないみたいだね。

キノコの人工栽培は、欧州ではすでに16世紀には始まっていたようだけど、これは堆肥の上にマッシュルームをはやすもの。
シイタケなどの日本式の原木栽培は、江戸時代になって始まるのだ。
ただし、このときは、クヌギやナラなどの原木を伐採してきて、なたなどで傷つけたものを林の中に放置する、というもので、自然に胞子が付着し、そこからキノコが生えてくるのを待つ、というものだったみたい。
なので、必ずキノコが生えるわけでもなく、きっと、生育条件やそもそもの場所などのノウハウが大きくきいてくるものだったのだ。
種菌をあらかじめほだ木に接種して、というのはもっと時代が下ってからの話。

現在では、温度湿度を管理したり、雑菌が混入しないように無菌室のような栽培室で栽培したりと、栽培環境がこうじょうしているのだ。
さらに、ホクトの力が大きいけど、これまで人工栽培できなかったキノコの栽培条件がわかってきたり、場合によっては、そのままでは人工栽培できないキノコを、他のキノコと細胞レベルで融合させて栽培できるようにしたり、とさらに進化しているようだよ。
最終的には、マツタケをなんとかしたくて、シイタケやヒラタケと融合させて、ということを試行錯誤しているみたいだけど、天然物のマツタケの風味や食感が再現できないみたい。

ただ、かつては「見つけたら小躍りして喜ぶ」と言われたマイタケの人工栽培は実現しているから、そう遠くない将来に人工栽培マツタケも実現するかもだよね。
そのときに、この電気刺激だとか、熱刺激なんてのもきいてくるかもしれないのだ。
マツタケが自然界でどういうきっかけで生えてくるかが何となくわかれば、それを模擬すればいいわけだからね。
希少だからありがたいのかもしれないけど、安くておいしいマツタケが市場に出回るというのも魅力的だよね。

2015/02/14

あの聖人はどこへいった!?

2月14日と言えば、「ふんどしの日」。
じゃなくて、バレンタインデー。
日本では女子が気になる男子に告白する日みたいな感じだけど、本場(?)の欧米では、単に恋人たちの日として受け止められていて、男性から女性に花束を贈ったりとかの方が多いようなのだ。
チョコレートを贈るというのも製菓業界に躍らされている、という説もあるよね・・・。

諸説はあるけど、その起源で有名なのは、古代ローマでの聖バレンタイン(ウァレンティヌス)の伝説。
時のローマ皇帝クラウディウス2世は、ローマ兵士の士気が下がらないようにと兵士の結婚を禁止したんだけど、ウァレンティヌスはその命令に逆らい、兵士たちに結婚の秘蹟を授けた、というもの。
これにより帝国の怒りを買ったウァレンティヌスは、2月14日に処刑され、殉教するのだ・・・。
そこから、2月14日が聖ウァレンティヌスの祝日とされ、恋人たちの日として祝われるようになった。
と言うんだけど、これはどうも後付けの話で、まったくもって真実ではないようなのだ(笑)

そもそも3世紀のローマではキリスト教は迫害されていないし、ローマ皇帝が兵士の結婚を禁止した、という事実も確認できないのだ。
むしろ、皇帝は兵士長に結婚を奨めたみたいな話は残っているようなので、前提からしておかしいんだよね。
さらに、そのころの殉教した人の名前を探しても、ウァレンティヌスの名前は見つからないようなのだ・・・。
なぜか5世紀になると名前が登場し、そこから聖人として信仰されるようになるみたいなんだけど、それも「恋人たちの守護聖人」ではなく、むしろ「てんかんの守護聖人」といったものだったとか。
「恋人」と結びつけられたのは15世紀になってからで、イングランドの詩人、ジェフリー・チョーサーさんの創作からなんだって。
バレンタイン反対派のみなさんにはうれしいお知らせだね(笑)

日本人からわかりづらいのは、結婚が禁止されたときに、結婚の秘蹟を授けた、という部分。
キリスト教では、信者同士が結婚するときは、司祭が間に入って昇任となることが必要なのだ。
今でもキリスト教式の結婚式だと司祭の前で結婚の誓いを述べたりするけど、あれは本来は正式な宗教儀式なんだよね。
法制度としての戸籍がない時代だから、事実婚も内縁も何もないような気がするけど、キリスト教社会においては、教会に認められることが結婚の条件だったんだね。
一夫一婦制で不特定多数を対象とした姦淫を認めないキリスト教としては、特定のパートナーをオーソライズすることが必要だったんだろうね。
ちなみに、相手がキリスト教信者でない場合は秘蹟にならないので、司祭がいようがいまいが関係ないのだ。
ただし、キリスト教社会では正式に結婚したとは見なされないんだろうけど・・・。

話をもどして、バレンタインデーの起源なんだけど、すでに世界中に広まっている聖名祝日なんだけど、今ではカトリックの正式な祝日ではないのだ!
戦後にバチカンで聖人の整理が行われて、実在があやしい聖人は聖人暦から除外されてしまったのだ。
ウァレンティヌスはすべてがあやしいので、当然外されてしまい、今では教会とは関係ない世界で祝われているんだよ。
ウァレンティヌスの遺骸を保存している教会もあちらこちらにあるんだけど、すでに聖遺物ではないということなんだよね・・・。
ちなみに、西方教会では2月がウァレンティヌスの日なんだけど、東方教会では7月又は8月なんだって。
もちろん、恋人とかは関係なく、一殉教聖人ということみたい。

では、なぜ2月中旬にウァレンティヌスの祝日が設定されたか、が問題になるよね。
関連づけられているのは、古代ローマのルペルカリア祭。
結婚の女神ユノや豊穣の女神マイアを祭る豊穣と健康を祈る祭典なのだ。
これは、2月には立春があって、冬の終わりが見えて徐々にあたたかくなっていく、という季節であることに関連しているんだよね。
東洋の旧正月も同じ考えで2月を旧正月(新春)と設定しているけど、春の訪れを祝う季節なのだ。
(ちなみに、マイアは5月=Mayの、ユノは6月=Juneの語源だよ。どちらも春の女神なのだ!)
なので、ユノというよりは、むしろマイアが大事だったんじゃないかと思うんだよね。
結婚の女神も子孫繁栄という意味で広くは豊穣につながるんだけど。

で、この土俗の祭りをキリスト教に取り込むとき、この聖ウァレンティヌスが使われたと考えられるのだ。
クリスマスやハロウィンももともとはキリスト教徒は関係ないとこから取り込んだものだけど、同じだよね。
でも、元来のバレンタインデーはよくわからない祝日だったし、後に全く関係なかった恋人たちの日なんていう属性が与えられてしまったがために、カトリック教会も取り込んでおく必要性がなくなったんじゃないかな。
今となっては、キリスト教から離れた方が逆によかったのかもしれないけど。

2015/02/07

砂糖より甘い

コーヒーにハチミツは合うのか?、というのは個人の好みが分かれるところで、賛否両論あるんだよね。
でも、スタバなんかにはハチミツが置いてあるし、ハニーなんちゃらラテ、なんていうのもあるから、味的に合わないというわけではないんだよね。
ボクの個人的な感覚からすると、ハチミツってブラックコーヒーに入れてもあまり甘くならないので、ハチミツだけしか入れないというのはあまり選択肢にならないかな・・・。
ミルク+ハチミツが最高!、という意見がわりとあるのもそういうことだと思うけど。
で、大して気にしていなかったんだけど、ホットコーヒーにハチミツを入れてもたいして甘くならない、というのは、実は科学的に本当だったのだ!

一般にハチミツは砂糖(ショ糖)より甘味が強いとされているんだよね。
ミツバチが花から蜜を集めている段階では、その蜜の甘みは主にショ糖なんだけど、ミツバチがいったん飲み込んで、巣の中で保存していく過程で、酵素により化学変化が起きているのだ。
二糖であるショ糖は分解され、単糖であるブドウ糖と果糖に分解されているんだ。
ブドウ糖(=グラニュー糖)はショ糖より甘みが少ないんだけど、果糖はショ糖より甘いのだ。
ショ糖の甘みを100とした場合、ブドウ糖は65~80、果糖は120~170なので、ショ糖を分解してブドウ糖と果糖が1:1で混ざっている状態になったとすると、ショ糖より1.2倍くらい甘くなるんだよね。
このため、ハチミツの方が砂糖より甘いのだ。

ところが、この果糖は冷やした状態だと甘いんだけど、高温になると甘みがなくなるという性質があるんだよね。
具体的には40度以下ではショ糖より甘くなるけど、この温度を超えるとショ糖より甘みが弱くなるのだ。
したがって、ホットのブラックコーヒーにハチミツを入れてもたいして甘みを感じない、ということになるわけ。
逆に、冷たくすると甘みが強くなるので、果糖を多く含む果物は冷やした方が甘くておいしくなるのだ。
一般に果物を冷やして食べるのはこのためだよ。
確かに、スイカは冷やして食べないと甘みが薄いような・・・。

このハチミツのような状態を人工的に作り出したのが転化糖というもの。
ショ糖は、賛成条件下で加熱するか、インベルターゼという酵素を作用させて加水分解るとブドウ糖と果糖に分解されるんだけど、ジャムを作る過程では、もともと果汁中に含まれるクエン酸やアスコルビン酸(ビタミンC)によってショ糖の加水分解が進み、自然に転化糖になるんだよね。
なので、ジャムは大量に砂糖を使って作るけど、それ以上に甘くなっているんだ!
砂糖を抑えたジャムでもけっこう甘くなるのはこのため。

完全に分解するには酵素を使った方がいいみたいだけど、家庭でも簡便に転化糖を作るためには、1kgの砂糖に1gのクエン酸を加えて20分くらい加熱しながらシロップを作ると、ほどよく転化糖が混ざったものになるみたい。
レモン汁なんかでもいいみたいだけど、このシロップだと、冷めても砂糖が結晶化しない(白く固まらない)し、酸味も感じない程度のものになるんだって。
家でアイスコーヒー用のシロップを作る際には参考になるね!
なかなか自分で作ろうとは思わないけど(笑)

転化糖の場合、カロリーを抑えて甘みを強くできるので、微糖やカロリー控えめと銘打った食品に使われることが多いのだ。
その視点で見ていくと、転化糖でなく、異性化糖というのも出てくるんだよね。
これもブドウ糖と果糖が混ざったものなんだけど、ショ糖を分解するのではなく、デンプンをアミラーゼという酵素を使ってブドウ糖に分解し、さらにそのブドウ糖をイソメラーゼという酵素を使って果糖に変化させたものなのだ。
さらに、処理後に濾過やイオン交換などで精製し、水分を蒸発させると、42%の果糖を含むブドウ糖液になるんだって。
このあと、さらに果糖の比率を高める加工もできるのだ。
サトウキビやテンサイから砂糖を作るよりも安価に砂糖より甘いシロップが作ることができるので、キューバ危機後の米国で普及し、主に清涼飲料水の甘味料として広まったんだって(キューバ危機以前はキューバから砂糖を輸入していたので、一気に砂糖不足に陥ったのだ。)。
もともとは通商産業省工業技術院(現在は独法化されて産業技術総合研究所)の研究成果で、国有特許の輸出第1号なんだとか。

この異性化糖(又は、高フルクトースコーンシロップ)は、安くて甘くていいんだけど、肥満の大きな原因になるともいわれているんだよね。
米国人はコーラを始め、甘い飲み物を大量に飲むイメージがあるけど、その甘みのもとがこの異性化糖なんだよね。
砂糖を使うよりはカロリーは控えめのはずなんだけど、血糖値の制御機構に悪影響があると考えられているのだ。
ステビアとかサッカリンとかアスパルテームとかの人工甘味料も同じなんだけど、末梢組織で直接取り込まれて消費されるのはブドウ糖だけで、転化糖・異性化糖に含まれる果糖はすべて肝臓で代謝されるんだよね。
このため、血糖値をコントロールしているインスリンの制御機構から外れてしまうのだ。
ハチミツをたまに食べる、ジャムを食べる程度ならよいのかもしれないけど、恒常的に甘い飲料を飲むようになると、甘みを摂取しているのに血糖値が上がらない変な状態が続くことになって、コントロールがおかしくなるのだ。
さらに、果糖は肝臓で代謝され、中性脂肪としてたまっていくので、肥満を助長すると考えられているんだよね・・・。
表面上のカロリー控えめにダマされてはいけないというわけか。
やっぱり、ダイエットを考えるなら、コーヒーはブラックで飲むべきだね(笑)