2015/08/29

散弾銃婚

女優の堀北真希さんの電撃入籍のニュースで大騒ぎになったのだ。
こういう報道の時に最近気になるフレーズがあるんだよね。
それは、必ず最後に「なお、○○さんは現在妊娠はしていないそうです。」というもの。
っていうか、芸能人の結婚はいわゆる「できちゃった結婚」が前提ってこと?
どうも、事務所サイドなどが、「きちんと手順を踏んでの結婚です。」というのをアピールするためにつけてもらうこともあるようだけど、蛇足感を半端なく感じるんだよなぁ。

明治期以降、西洋的貞操観念が持ち込まれた日本社会では、婚前交渉はどちらかと言えばはばかられるべきものという建前があったし、なおかつ、避妊もせずに妊娠してしまうなんて・・・、というのが根底にあったんだよね。
なので、「できちゃった結婚」という言葉にも否定的なイメージがあるのだ。
そもそも「ちゃった」という言葉で「意図せず」というニュアンスを表現しているしね。
でも、2000年代以降、わりとメジャーになってきたため、最近ではあまりネガティブな響きのない「授かり婚」とか「おめでた婚」なんて言葉も使われ始めているんだよね。

世の中が少子化で子供が生まれること自体を歓迎するという風潮もあるのかもしれないけど、件数的にも多くなってきて「まれ」なことではなくなってきたので、いつまでも「忌避すべきもの」といったレッテルが貼りづらくなっているんだろね。
本当かどうかはよくわからない数字だけど、「4人に1人はできちゃった結婚」なんていう情報もあるし。
それと、社会生活が多様化し、晩婚化も進んできている中、さらに、若者が結婚に踏み切りにくくなっているので、「既成事実」として「妊娠」して、それを機に結婚しようという高等戦術(「既成事実婚」)というのもあるかもしれないのだ。
こういうのって一時期はドラマの中の話だけと思っていたけど、本当に狙っている女性はいるのかなぁ?
ブラフで「妊娠しているかも・・・」というのはあるだろうけど。

そういう状況下で、結婚情報誌では「ダブルハッピー」やら「マタニティウェディング」やらの言葉で特集を組んだりもしているようだよ。
妊娠初期の妊婦さんでもきれいに着られるウェディングドレスというのもあるのだ。
そんなにおなかが目立たないうちに挙式を、ということだよね。
でも、どうもこれも中途半端感があって、やっぱり結婚→妊娠っていうのが標準的な流れで、それに逆らっているという「後ろめたさ」がつきまとっているんだよね。
妊婦さんの健康の問題はあるけど、気にしないのであれば、おなかが大きくなってからの挙式だっていいし、フランスのように、結婚もせずにシングルマザーとして産むという選択がもっと選ばれてもよいのだ(ただし、これには社会的な条件整備がないとダメだけど。)。

では、その貞操観念を持ち込んだ西洋社会ではどうかというと、やっぱりもともとは「後ろめたいもの」と受け取られていたのが、だんだんと弱まってきているようなんだよね。
英語では「ショットガン・ウェディング」と呼ばれるんだけど、これは新婦の父親がショットガンで新郎を脅してでも結婚させる、というところから来ているのだ。
キリスト教をバックグラウンドとする世界では、婚前交渉は御法度だし(だから「ヴァージン・ロード」)、配偶者以外との姦通も厳禁なのだ。
なので、子供ができてしまった以上、なんとしても責任をとって結婚しろ、ってことなんだよね。
ただし、英語版のWikipediaを見ても、確かに19世紀まではそんな風潮だったけど、今では言葉だけでそこまでじゃない、とちゃんと書いてあるよ(笑)

この英語版の説明でおもしろいのは、東アジアでの状況として日本のことが書いてあるんだけど、歌手の安室奈美恵さん以降増えてきた、というニュアンスで書いてあるのだ。
主な例としてあげられているのは、辻希美さん、土屋アンナさん、黒木メイサさん、リア・ディゾンさんなど。
日本版だと、芸能人の元祖は2代目中村扇雀さんと扇千景さんのカップルと書いているから、例示が対照的だね(笑)
ただ、実感としては、確かにバブル期以降によく聞くようになった気もするから、英語版の説明も的を射ているのかも。

ここで気になるのは、なぜそうなったか、なんだよね。
婚前交渉まで否定する気は毛頭ないのだけど、なぜそのときに妊娠の「リスク」をきちんと考えていないのか、ということなんだよね。
ただ単に「ゆるく」なっているのであれば大問題で、下手をすると、「望まない妊娠」で生まれた赤ちゃんは「虐待」に遭うかもしれないのだ・・・。
「既成事実」を狙って女性側が計画的にやっているのだとすればまだましなのかもしれないけど、それも命を駆け引きのツール的に使っているところは倫理上問題があるかもしれないよね。
できれば、結婚はひとつの選択肢であってしてもしなくてもいいと思っていたカップルが妊娠を機に結婚の手続きを踏んだ、というのが一番よいのだけど、そういう例はそんなに多くないんだろうなぁ。
何はともあれ、生まれた子供が大事に育てられることが第一だよね!

2015/08/22

ネコはキウイで陶酔するか

今が時期の果物はいろいろあるけど、よくテレビCMでも見かけるのはキウイフルーツ。
鮮やかな緑色と、「君たちキウイ、パパイヤ、マンゴーだね♪」のフレーズでついつい南国産と思っているけど、東アジア原産なのだ!
マタタビの近縁種で、中国原産のオニマタタビを英国人が持ち帰り、英連邦のニュージーランドで品種改良されたものなのだ。
もとのオニマタタビに比べると大きさも少し大きくなっているけど、マタタビは生食するとえぐみがあるので、そこが改良されているんだろうね。
で、東アジア原産なので、温帯~亜熱帯にかけて栽培されている果物で、熱帯地方にはないのだ。
日本でも普通に木になるんだよね、甘くするのは難しいみたいだけど。

ボクはてっきりその形状がニュージーランドの国鳥であるキーウィに似ているのでその名前がついたと思っていたんだけど、そうではないんだって。
 ニュージーランドから米国に輸出する際、ニュージーランド産であることをアピールするためにキーウィにちなんで命名されたんだって。
それが1954年(昭和29年)だよ。
似てるっちゃ似てるけど、そこまでじゃないのかもね(笑)
ちなみに、米国ではオーストラリア産でも区別せずにキウイと呼んだので、それが一般名称化してsまったようなのだ・・・。
○○マタタビとかそういう名前よりはよかったよね。

全世界での生産量を見ると、なんと第一位はイタリア!
ニュージーランドではないのだ・・・。
第二位は原産国の中国。
ニュージーランドは第三位だって。
それぞれ、50万t弱、30数万t、30万t程度という生産量で、日本の3万t弱と比べて10倍以上。
なので、輸入物が多いのだ。

キウイの特徴といえばその酸味だけど、同時に下がぴりぴりする感じもするよね。
その正体がタンパク質分解酵素のアクチニジンというもの。
生の果肉を肉料理に使うと肉を軟らかくしてくれる作用もあるんだ。
酸味もあるから、豚肉とか鴨肉なんかには合うし、色合いも緑色できれいだよね。
でも、この酵素のせいで、パイナップルやパパイヤと同様にゼラチンでは固められず、生の果肉はゼリーに使えないのだ。
寒天で固めるか、一度シロップに煮にする必要があるんだよね。
あと、注意として、お弁当のデザートにキウイを入れる際は、かまぼこやちくわから離す必要があるんだ。
そうでないと、キウイの消化酵素で練り物はとろけちゃうんだよね・・・。

キウイは栄養密度が高いと言われていて、それで朝食にどうぞ、という広告が打たれているんだよね。
各栄養素の含有量は実はたいしたことないんだけど、ビタミンや食物繊維、ミネラルがバランスよく含まれていて、栄養が「濃い」のだ。
緑のキウイよりはゴールデンキウイの方がさらによいみたい。
そう聞くと、俄然キウイが食べたくなるなぁ。
ちなみに、マタタビの仲間なので、キウイの若木や芽はネコを引きつける作用があって、キウイ農家にはネコ被害もあるんだとか。
家でキウイを栽培するときは注意だね!

2015/08/15

宇宙開拓史序章

国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の油井宇宙飛行士が、ISSで育成した「宇宙レタス」を食べたのだ!
米国航空宇宙局(NASA)が持ち込んでいる野菜栽培装置のVEGGIEで栽培されたもの。
仲間の宇宙飛行士と乾杯のような仕草をした後食べる映像が流れていたよね。
今はまだ飲食物は原則として地上から宇宙へ引き上げているけど、将来的な火星探査なんかを想定すると、行くだけで半年もかかるので、どこまで自給自足できるかが鍵となるんだ。
今までは水の再利用はかなり進んでいたんだけど、こうして食べられる植物を栽培するのは画期的な成果だよ。
ちなみに、すでに昨年のうちに1回栽培していて、そのときは食べずに全部地上に持ち帰って検査に回したみたい。
安全性が確認されたので今回の試食に至ったわけだけど、残りは冷凍してやっぱり持ち帰るんだそうだよ。

このニュースを見てすぐに思い出したのが、旧日本海軍が潜水艦の中でもやしを育てていたという話。
大航海時代にはビタミンC欠乏による壊血病が長期航海の難敵で、それを防ぐために柑橘類を載せたりしていたんだよね。
そこで帝国海軍が着目したのがもやし。
もやしは光がなくても育つし、ビタミンCも多く含んでいるのだ!
なかなか頭がいい。

でも、今回はそこからまた格段と進歩している話なんだよ。
すでに野菜工場というのがあって、工場内で人工の光を使って野菜栽培がされているけど(レタスやサラダ菜など)、それを宇宙でやった、ということなのだ。
光合成の主役である葉緑体の中には葉緑素(クロロフィル)という色素があって、これが光合成において光のエネルギーを電気のエネルギーに変換して、二酸化炭素と水から糖を創り出すんだよね。
で、この葉緑素は、特徴として、450nmの波長の青い光と、650~700nmの波長の赤い光をよく吸収する性質があるのだ。
特に赤い光の方をよく吸収するので、その補色である緑色に見えるんだよ。
純粋にクロロフィルを溶かした溶液は緑色に見えるけど、光にかざしながら傾けると、吸収した光をまた放出しているので赤く見えるのだ。

で、光合成の光化学反応では、この赤い光の吸収がきいてくるんだ。
すなわち、人工的に光合成反応を起こそうと思ったら、太陽のようないろんな波長の光がスペクトルで混ざっている白色光である必要はなくて、葉緑素が吸収する赤い光だけでもなんとかなるのだ。
それを利用したのが野菜工場で、これまでは電球を使っていたんだけど、長寿命で省エネなので、光源が発光ダイオード(LED)に置き換わってきているんだよね。
今回も宇宙ではLED光源が使われているのだ。
っていうか、ISS内の照明もだいぶ前から蛍光灯からLEDに替わってきているんだよね。
ガラス管が割れることもないし、何より放射線にも強いので、強い宇宙線にさらされる宇宙空間でも壊れにくいのだ。

今回宇宙空間で育てたのは、リーフレタスの一種であるレッドロメインレタスだって(サニーレタスの近縁種。)。
映像で見る限り赤いなぁ、と思っていたけど、そういう種類だったのだ。
この赤い色はアントシアニンで、見土井色の結球型レタス(いわゆる普通のレタス)に比べてβ-カロチンの含有量が多いみたい。
他にビタミンCやカリウムも含まれるので、ビタミンやミネラルの補給にもよいのかも。
普通のレタスは食物繊維ばかりであまり栄養がないから、多少はましなのかな?
これでも、もやしだけに比べたら大きな進歩だよね(笑)

とりあえず今回はレタスなんだけど、長期の宇宙旅行を考える上では、タンパク源も考えないといけないのだ・・・。
そこで俄然注目が集まっているのが昆虫食。
もともとあまり昆虫を食べない日本人(イナゴや蜂の子を食べる習慣が地方によってはあるんだけど)からするとえっと驚くけど、東南アジアなんかはわりと普通に食材として昆虫を見ているんだよね。
チンパンジーなどの類人猿もよく昆虫を食べるので、「慣れ」の問題なのだ。
で、この昆虫たちは、ほ乳類に比べて少ない飼料で大量に育成できるので、宇宙空間のような限られた空間での貴重なタンパク源と目されているんだ。
ということは、近い将来には、宇宙レタスで育ったイモムシを食べる日が来るのかも・・・。
あ、ボクは地上住まいでいいや(笑)

2015/08/08

紅顔の美少年?

国立感染症研究所の発表によると、「リンゴ病」の報告数が例年を大きく上回るペースになっているそうで、流行の兆しを見せているとか。
手足口病も同様で、厚生労働省として注意喚起を呼びかけているのだ。
どちらも子どもの病気というイメージがあるけど、大人が感染するとより重大な症状が出るので危ないんだって・・・。
で、調べてみると、「リンゴ病」というのはけっこうとんでもない病気であることがわかったのだ!

「リンゴ病」というのは通称で、疾患名は「伝染性紅斑」というみたい。
伝染する疾病で、紅斑が特徴的だから、ということなんだけど、安直な名前の割に難しいよね。
「リンゴ病」という名称は、子どもが感染したとき、ほっぺたが真っ赤に腫れるところからついた名前で、特徴をよく捉えているんだよね。
でも、大人が感染した場合は多少赤くなる程度で、真っ赤になるわけではないみたい。
なので、自分が「リンゴ病」にかかっているかどうかがよくわからないのだ。
もうひとつの特徴としては、網目状の赤い発疹(紅斑)が腕や足に出てくるので、それもひとつの目安。

これはヒトパルボウイルスB19による感染によって引き起こされる疾患で、かつては風疹の一種と考えられた時期もあったんだけど、流行の時期の違いや、症状の進行の違いなどから別物であることがわかり、ウイルスレベルで同定したら全く異なるものであることがわかったのだ。
このウイルスには、ネコに感染するものやイヌに感染するものなどもあるよ。
感染経路は飛沫感染なんだけど、2mくらいしか飛距離がないので、よほど近づいていないともらうことはないのだ。
でも、おそろしいのは、頬の発赤や体の発疹が現れる前の、自覚症状がないときがウイルス排出のピークになっていて、知らないうちにウイルスをまき散らしている可能性が高いということなのだ。

感染してからの潜伏期間は5~6日で、その後軌道経由でウイルスが外に出てくるんだけど、実はこのころは体に明確な症状は出てこないのだ・・・。
成人だと多少発熱や悪寒などがある場合もあるけど、多くの場合は気づかずに過ごしてしまい、その後1週間くらいは無症状期間が続くんだ。
ところが、ウイルス排出が落ち着いたあたりで発赤・発疹が始まり、自分が病気にかかっていることがわかるのだ。
なので、病気になってることがわかってから患者を隔離しても手遅れで、すでにウイルスはまき散らされているんだよね。
これが一度流行してしまうとなかなか沈静化できない理由なのだ。

子どもの感染の場合は症状が軽いことが多く、ほっぺたが赤く腫れるくらいで発熱もないことが多いんだけど、成人は重症化することが多いのだ。
発熱や頭痛、関節痛が出るらしいんだけど、どれもきついらしいんだよね。
あまりの痛みに起き上がることが困難になる場合もあるとか。
さらに、子どもなら1週間かそこらで回復するんだけど、大人だと1ヶ月近く引きずることもあるそうで。
いやあ、おそろしい。
リンゴ病に特異的な治療方法はないので、基本は対症療法であまりにも熱や痛みがひどい場合に解熱鎮痛薬を使うくらい。
安静にしてただただ自然治癒力に頼ることになるのだ。

症状が出ていない時にウイルスがまき散らされるので、どこでウイルスを拾ってきているかはわからないんだけど、子どもの間で流行しているときに近づくのは危険なのだ。
母親が看病しているときに一緒に罹患することも多いらしいけど、これも子どもに症状が出てからもらっているというよりは、一緒に行動している間のどこかでもらっている場合が多いと思うのだ。
特に気をつけないといけないのは妊婦さんで、このウイルスは母子感染(垂直感染)をして、胎児に悪影響を与えることが知られているんだ。
ひどい場合は胎児水腫になって、流産や低体重出産により胎児の生命の危機につながるおそれもあるとか。
二人目を妊娠しているときに上の子の同世代でリンゴ病がはやっているときなんかはよくよく注意しないといけないんだよね・・・。

というわけで、調べてみるとおそろしい病気であることがよくわかるのだ。
職場にも謎の高熱と倦怠感で休んでいた人がいるんだけど、ひょっとしたら・・・、と思ってしまうよね。
特に、本人に自覚症状がないときにウイルスをまき散らしているというのがこわいよ。
今のところ大丈夫だけど、何もないことを祈るばかり。

2015/08/01

820

子供の夏休みの宿題の関係で、ということで、職場の人から、東京近郊で「埴輪」が見られる博物館でいいところがないか、と質問を受けたのだ。
とりあえずアクセスの良さから上野の東京国立博物館でいいんじゃないですか?、と答えたんだけど、千葉県佐倉の国立歴史民俗博物館まで行くとさらにいろいろと見られるんだよね。
一緒に古墳散策もするなら、東急多摩川駅の亀甲山古墳なんかでもよいけど(原型をよくとどめているし、多摩川台公園内には古墳展示室もあるのだ。)。
で、よくよく思い返してみると、小学校のときに習ったけど、埴輪ってなんだっけ、と気になったのだ。
土偶と違うのは知っているけど、どう違うの?、と言われるともごもごしちゃうし。
というわけで、ちょっと調べてみたのだ。

端的に言えば、埴輪は古墳時代に作られたもので、古墳のまわりで出土するのだ。
土偶は縄文時代のもので、墓に限らず集落跡から出土するんだよね。
これで終わりというとさみしいので、もう少し詳しく見てみると、埴輪というのは古代の有力者の墳墓である古墳の装飾品で、土偶はどちらかというと民間信仰に基づくものみたいなんだよね。
土偶はよく壊れた状態で発見されるので、むしろ「壊すもの」だったんじゃないかって考えられているくらい。
そうなると、よりまじないの要素が強くなるよね。
ぼんきゅぼんの形状はもともと女性を表していて、大地母神信仰にもつながるとか言うし。

で、問題の埴輪なんだけど、日本書紀によると、1世紀後半の垂仁天皇の御代、それまで墳墓に殉死者を生き埋めにしていた風俗を野見宿禰(のみのすくね)さんが改め、人の代わりに土で作った人馬を用いることを提案したのが始まり、と書かれているんだ。
はに丸やひんべえみたいなやつだよね。
でも、年代を追って古墳を調べていくと、この時代にはまだ人型や馬型の埴輪はなくて、円筒形埴輪と呼ばれる筒状のものしかないのだ。
なので、すでに日本書紀編纂時には埴輪がなんであるかがわからなくなっていた可能性があるんだよね・・・。
二歩sんほきは8世紀前半の成立なので、その時点ですでに半世紀以上の時が経っているから仕方がないのかもしれないけど(古墳が作られなくなるのは6席後半なので、そこから数えても150年は経っているのだ。)。

考古学的に調査していくと、埴輪は古墳の発展とともに広がっていって、ヤマト政権の象徴と言われる前方後円墳とともに全国展開されていくのだ。
初期の埴輪である円筒形埴輪はすでに弥生時代末期の有力者の墳墓に見られるようで、それが徐々に発展していって、形象埴輪と呼ばれる人型や馬型のものが生まれるんだよね。
もともとなんであったのかは想像するしかないんだけど、墳墓のまわりに規則正しく並べられていたようなので、聖域の境界線を表すためのものだったんじゃないかという説が一般的みたい。
まさに、カラーコーンやロープで区画するイメージだよね。

その後、家形埴輪というのが登場するんだけど、これは死者の依代として作られたんじゃないかと考えられているんだ。
さらに、武具や甲冑のような器財の埴輪や、人や馬をかたどったものも出てくるのだ。
これはもう5世紀頃の話で、かなり古墳文化が成熟してきてからだよね。
実際に玄室の中には副葬品として剣や玉、鏡なんかが一緒に埋葬されているんだけど、富の大きさや権力の象徴として古墳をそういう器財の形をした埴輪で装飾することは容易に考えられるよね。
さらに、人や馬は葬送儀礼や生前の祭政の様子を再現しているという説があって、やっぱりその中に葬られている有力者の偉大さを象徴するようなものと考えられるのだ。
古墳の形が単純な方墳や円分から前方後円墳になっていったように、古墳の「意味づけ」の一端を担っていたんだろうね。