2017/03/25

フランス人の大好物はイタリア仕込み

フランスと言えばジャムがおいしいことで有名!
いろんな果物のいろんなジャムがあるのだ。
日本で輸入物を買うと高いけど、現地で買えばそこまででもないんだよね。
なので、日本では買えないような高級品にも手が出てしまう・・・。
ところが、そんなジャムがアルというのに、フランス人がよくパンやクレープにつけるのはヌテラだったりするんだよね(笑)

ヌテラは、イタリアのフェレロ社が販売している、チョコレート風味のスプレッド。
ヘーゼルナッツペーストに砂糖、ココア、脱脂粉乳などを加えたもの。
常温では固まってしまうカカオバターの代わりにヘーゼルナッツ由来の常温で液体の植物性油が入っているので、常温では固まらず、パンなどにぬるスプレッドにできるのだ。
チョコレート風味のピーナッツバターみたいなものだよね。
なぜかこれが人気で、カフェなんかでもヌテラを使ったデザートがけっこうあるよ。
特に、ヌテラをぬったクレープは定番みたい。

ヌテラを使ったお菓子もあって、ヌテラ味のクッキーとか(チョコレートがけクッキーのチョコ部分がヌテラ)、「やんやんつけ棒」のようにヌテラにスティック状ビスケットをつけるものも。
そして、ホテルの朝食では、当たり前のように、一人用使い切りのヌテラがあるのだ。
ジャムと同じように並んでいるよ。
米国だとピーナッツバターがあったから、扱いがおなじなんだなぁ。

ヌテラの英語サイトによれば、1946年に、イタリアのピエモンテ州でペーストリー職人だったピエトロ・フェレロさんが作り出したもの。
当時は第二次大戦後でココアが非常に貴重品で配給が少なかったので、その貴重な少量のココアにたくさんとれるヘーゼルナッツのペーストと砂糖をまぜ、バターのような固形のカカオ風味ペーストを作ったのがはじまりとのこと。
これはジャンドゥーヤと呼ばれるもので、1951年には、クリーム状になったパンにぬりやすいタイプができがったんだ。
これはスーパー・クレマ・ジャンドゥーヤで、瓶詰めされて販売されるように。
1964年に名前がヌテラになり、1965年にドイツで発売されたのを皮切りに、1966年には欧州中に広がったんだって。

日本でも見かけないことはないけど、そこまでメジャーじゃないよね。
なので、フランスでそこら中で見かけるのがおどろきだったのだ。
スーパーには様々な大きさの便があるからね。
とうてい食べきれないほどの大容量のものも・・・。
ほぼ毎日のように使う家庭もあるのかなぁ?

このヌテラを作っているフェレロ社は、最近はコンビニやドラッグストアでもよく見かけるようになった、フェレロ・ロシェを作っている会社でもあるんだ。
中にヘーゼルナッツクリームが入っているまるいチョコレートだよ。
ボクは洋酒漬けのさくらんぼがチョコレートで包まれているモン・シェリの方が好きだけど。
そして、チョコレートでできた卵のからの中におまけが入っているキンダー・サプライズ(チョコエッグ)もフェレロ社のものだって!
ヌテラ以外は日本にも浸透してきているなぁ。

実はなかなかすごい会社なんだね。
チョコレート風味スプレッドでここまで会社を大きくするとは。
でも、それだけヌテラが欧州で愛されているということなんだよね。
その浸透度合いにもまたびっくりだ。

2017/03/18

ドーバーをくぐる

三連休になったので、それを利用してちょっと旅行することにしたのだ。
行き先は、いろいろ考えた上でロンドン。
パリからだとユーロスターで行けるしね。
というわけで、生まれて初めてドーバー海峡を渡ることになったのだ。

ユーロスターは欧州の高速鉄道のひとつで、1994年に開業。
当時は大きな話題になったよね。
今ではロンドン-パリ間を催促2時間15分で結んでいるのだ(最高時速300km)。
東京からだと京都まで、というところ。
そう考えるとなんだか納得だなぁ(笑)
ユーロスターはクラスが3つあって、ビジネス、スタンダード・プレミア、スタンダードとあるんだけど、ビジネスならホットミールが、スタンダード・プレミアならコールドミールが提供されるんだ。
このあたりのサービスは飛航空便を意識しているのかな?
最新の列車だと社内でWiFiも使えるようだし、快適な旅になりそうだ♪

ユーロスターの開業に当たってはドーバー海峡の海底トンネルがみそなわけだけど、なんと、その構想は18世紀までさかのぼれるみたい。
すでにそのときに海底にトンネルを掘って大陸とグレートブリテン島を結ぶアイデアがあったのだ!
1855年のパリ万博には、海峡トンネルの模型まであったらしいよ。
で、トンネル掘削会社まで作って掘り始めたんだけど・・・。
建設中止。
きっと土木技術が追いつかなかったのだ。

戦後になって、1978年に再度掘削が開始されたんだけど、やっぱり注視。
そして、1986年に再び工事に着工し、1990年にトンネルがやっと貫通したのだ。
構想から230年あまり。
いかに大変な土木事業だったかがわかるよね。
で、この工事には、日本の企業も活躍しているのだ。
川崎重工製と三菱重工の掘削機が活躍したんだよ。
特に、フランス側からの掘削に使われた川崎重工の掘削機は難工事をこなしたということで、NHKのプロジェクトXにも取り上げられたんだよね。

海底トンネルというとまっすぐ作られているようにも思えるけど、実際にはけっこうくねくねしているのだ。
岩盤の関係で必ずしもまっすぐは掘れないんだろうね。
掘削には、TBM工法とシールド工法が試用され、円盤形の歯のついたシールドで丸く削りながら進めていくタイプのものなのだ。
これをイギリス側(フォークストン)からとフランス側(カレー)からで掘り進めていってつなげたんだよね。
海底部の総距離では37.9kmと青函トンネルを抜く世界一のものなので、まさに世紀の大工事だったのだ(陸上部を含めると世界第3位)。

だけど、大工事であるが故に工費は当初計画の6倍にものぼったとか。
さらに、想定よりも乗客も少なかったため、多大な負債になったみたいだよ・・・。
ユーロトンネル会社が管理運営を行っているんだけど、トンネル使用料収入だけじゃ赤字で、2006年にはいったん経営破綻したみたい。
ただし、最近ではユーロスターの旅客数も増えてきていて、挽回してきているみたい。
でも、こういう話を聞くと、日本の三セクと変わらないんだなぁ、と正直思ってしまうね(笑)

ちなみに、ユーロスターは最高時速が300kmだけど、トンネル内は160kmに抑えないといけないみたい。
これはトンネルの問題じゃなくて、トンネルの陸上部でより遅い(時速140km程度)貨物列車や車運搬用のシャトル列車とのすれ違いがあるためらしいけど。
海底部トンネル内は、列車用の単線トンネルが2本とその真ん中にサービス用トンネルがある構造なので、本来はトンネル内でのすれ違いは気にする必要はないんだよね。
確かにトンネル内で複線だと、すれ違うときの風圧が問題になるのでだめだけど。

とにもかくにも、乗るのが楽しみだ。
青函トンネルは北斗星で通ったことがあるんだけど、それとの違いが気になるところだね。
これは鉄ちゃんじゃなくてもわくわくするのだ。

2017/03/11

生搾りリンゴ

フランスに来てからよく見かけるようになったのが、リンゴのお酒のシードル。
ビールとともに、アルコール度数の低いお酒としてかなりメジャーな存在なのだ!
それに、ガレットを食べるときにはつきものなんだよね。
どちらもブルターニュの名産。
フランスではかつて水事情がよくなく、生水が飲めなかったので、アルコール度数の低いシードルは飲料として重要だったみたい。
アルコールに比較的弱い日本人にはなかなか理解しづらいけど(笑)

このシードル、製法はいたって簡単なのだ。
リンゴを皮ごとつぶして果汁を搾り、発酵させる。
これだけ。
リンゴの皮には天然でアルコール発酵を行う酵母がついているので、皮ごと果汁を搾ればいいんだって。
ただし、日本のように湿度が高いと、他の雑菌が繁殖する可能性があるので、そうは簡単にいかないけど。
それでも、それに気をつければ、家庭でも作れるものみたい。
実際、英や仏ではかつて家庭で作っていたみたいだし。
ただし、日本の場合は酒税法の関係で勝手にお酒を醸造しちゃいけないので、注意が必要だよ(アルコール度数が1%未満に抑えられればいいみたいだけど、市販のシードルは4~5%くらいみたい。)。

シードルの材料となるリンゴはそれ用のもので、しかも、甘みが強いもの、酸味が強いもの、少し渋みがあるものなどいろいろと種類があるみたい。
単純な製法なので、材料となるリンゴによりかなり風味が変わるようなのだ。
それと、発酵期間を調節することで、アルコール度数が比較的低くて甘めなもの、とか、アルコール度数が高くて辛口のもの、などなど種類も豊富なんだって。
フランスに来るまでそこまでバラエティがあるとは知らなかった・・・。

工業的な製法としては、生搾り果汁をそのまま発酵させるんじゃなくて、果汁を濾過したりして濁りを除いた後、人工的に酵母を加えて低温で発酵させるんだって。
発酵が終わった後に遠心分離・濾過して澱を取り除き、瓶詰めするのだ。
いわゆる「火入れ」はせずに発酵を熱で止めないので、瓶の中でも多少は発酵が進んで、発泡性のお酒になるよ。
シャンパンなどのスパークリングワインは、まずはベースとなるワインを作ってから、それに糖分と酵母を加えて二次発酵させ、同じように瓶詰めするのだ。
なのでアルコール度数が高いんだけど、シードルの場合は果汁を発酵させるだけなので、そこまでのアルコール度数にはならないのだ。

日本で本格的に発泡性リンゴ酒のシードルが作られ始めたのは戦後のようなんだけど、実は、戦前にニッカウヰスキーがアップルワインという名称でリンゴ酒を製造していたのだ。
朝の連続ドラマ「マッサン」で有名になったけど、もともと余市にウイスキー工場を作ったとき、ウイスキー製造には数年の時間がかかるので、まずはリンゴジュースの製造・販売から始めたんだよね。
そのリンゴ果汁を使って、非発泡性の醸造酒を造ったのだ。
そう言えば、ドラマにもアップルワインが出てきたような・・・。
今でもニッカのシードルは日本で売られているけど、これは戦後にアサヒ飲料が始めたシードルをニッカが引き継ぐ形で作っているものみたい。

シードルはアルコール度数が低いのだけど、これを蒸留してアルコール度数を高くしたのがカルヴァドス。
ただし、カルヴァドスはシャンパン同様に原産地呼称規制(AOC)の対象で、ノルマンディー産リンゴを基にしたもの以外はアップルブランデーと呼ぶんだそうだよ。
カルヴァドスを作るときには、いろんな風味のシードルを混ぜて作ることが大事なんだそうだよ。
さらに、リンゴだけでなく、洋なしが原料に使われることもあるそうなのだ。
このブレンドで蒸留酒になった後の風味がかなり変わるようなのだ。
これには熟練の技と知識が必要とされるみたい。
日本ではどちらかという製菓用のお酒のイメージなので、そこまでこだわりがあるとは思わなかったよ。

2017/03/04

乾杯とは杯を乾かすと書く

この前、中国の人と中華レストランで会食をしたんだよね。
その場で出てきたお酒が、中国の蒸留酒の「白酒(バイジュウ)」。
アルコール度数がめちゃくちゃ高くて、そのとき出てきたやつは52度だって!
いわゆる「スピリット」と呼ばれるお酒だよね・・・。
中国酒だと、紹興酒に代表される「黄酒(ホァンチュ)」が有名だけど、これは透明で香り高いお酒なんだ。

紹興酒などは日本酒と同じように、お米を原料にして、麹と酵母で並行複発酵させて作るんだけど(麹がデンプンを糖に変え、それを酵母がアルコール発酵させる。)、原料はモロコシ(コーリャン)。
蒸したモロコシに大麦や小麦、エンドウなどで作った麹の塊をまぜ、土の中に埋めて発酵させるんだそうだよ。
日本ではなかなか考えられない作り方だ・・・。
この麹の塊の中にはアルコール発酵を行う酵母も混ざっていて、塊のまま発酵していくんだって。
どろどろのもろみを造る日本酒や焼酎とはだいぶ様相が異なるのだ。
この塊を蒸留し、得た液体を瓶に入れて長期間熟成すると、「白酒」になるんだけど、仕上がりはだいたいアルコール度数は50度くらい。
芳香成分を多く含み、独特の香りがあるのだ。
ちなみに、蒸溜した後に残る「酒粕」は豚のえさにするんだって。

中国の宴席での乾杯にはこの白酒を使うのが通常で、小さなグラスにそそぎ、文字どおり「乾杯」するのだ。
なんか、日本の体育会系計の飲み会みたい・・・。
ボクも最初の一杯はつきあったけど、アルコール度数が50度もあるとのどが焼けるようだから、これはなかなかつらいよ。
中国は日本よりもお酒が強い人が多いんだね。
というより、アジア地域でここまでアルコール度数が高い蒸留酒は白酒くらいなんだよね。
泡盛だと最高で60度くらいあるけど、多くのものはブランデーとかウイスキーと同じらいで、白酒はウォッカとかジン並の高さ。
中にはスピリタスのような96度なんていうほぼエタノールというのもあるから、世の中は広いよ(笑)

でも、20世紀末くらいからアルコール度数の低い白酒も出回り始めているんだって。
今は40度くらいの低度酒が主流になりつつあるとか。
それでも十分にアルコール度数は高いと思うけど。
嗜好の変化だけでなく、海上輸送の制限とかいろいろあるんだって。
確か、その会食の時は、中国の人が持ち込んでいたよ(笑)
そこまでしなくていいのに。
それにしても、それをストレートで飲むんだから、中国はやっぱりあなどれない!

ちなみに、蒸留酒自体は古代メソポタミアや古代エジプトにもすでにあったことが知られているという歴史のあるもの。
今のような蒸留方式が確立されたのは錬金術の時代なんだとか。
中国での蒸留酒作りがいつ始まったのかはよくわかっていないみたいなんだけど、中世欧州で確立された技術が東南アジア経由で伝わったのでは、と考えられているらしいよ。
とはいえ、古代社会にもあったから、もっと単純なものはシルクロードで伝わっていたかもしれないけどね。