2018/01/27

危険水域

パリでは連日の雨模様でセーヌ川の水位が上がってきているのだ。
一昨年6月にも同じように水があふれて、床下浸水とかの被害も出ているんだよね。
今回もすでに、橋の下を通る水上バスは運休(水位が上がりすぎて橋の下をくぐれないため)、ルーブル美術館の一部展示室が閉鎖など影響が出ているけど、このまま行くと、過去最大級の水位上昇になりそうなんだとか。
パリのセーヌ河岸は世界遺産にも登録されているんだけど、今はドロ川のようになっているみたいだよ。

セーヌ川はフランス第二位の長さの川で、パリ市内でも大きく蛇行しているのだ。
かつて、パリでは上水道が分かれておらず、両方ともセーヌ川を活用していたんだって・・・。
それで疫病がよく蔓延したというのだけど、古代ローマですでに上下水道の概念があったのに、遅れていたんだね・・・。
ロンドンで当時世界最高と言われた水道システムを見たナポレオンさんが改革を断行し、上水道・下水道を整備し、セーヌ川の水をくまなくても水が使えるようになったのだ!
でも、けっきょくすべての排水はセーヌ川に流れ込む仕組みで、そこは変わっていないみたい。
これが今回の水位上昇の原因でもあると思うんだよね。

東京でも、昭和の時代まではよく神田川が氾濫していたのだ。
台風シーズンになると学習院下(住所は上高田)あたりがよくあふれたんだよね。
当時は下水がそのまま流れ込み、ヘドロの川になっていたのだけど、それがあふれるんだからすごいものだよ・・・。
江戸時代は「神田上水」として飲み水の確保のために整備された川なんだけどね。
神田川は一級河川で国の管理下にあるので、国としても河岸整備などを進め、今では危険水域に到達することはあっても、まずあふれなくなったのだ。

何をしたかというと、一つは河岸の整備でこれは川幅を広げること。
でも、それには用地の問題で限界があるので、同時に進めたのが放水路の確保。
川の水の流れ先を増やしたのだ。
これで増えた水が分散されるわけ。
よく氾濫して荒れるから「荒川」という名前がついている荒川も、放水路であふれることが減ったのだ。
現在のいわゆる「荒川」は放水路で、元の流れは隅田川なんだよ。
赤羽岩淵の当たりから大きく曲がって隅田川になるんだけど、この当たりがよくあふれたので、開削して中側の方に流路を増やしたのだ。
難工事だったようだけど、その感性で東京の洪水がほぼなくなったようだよ。

そして、話は戻って、神田川の秘密はもうひとつあるのだ。
それは地課の調節池。
地下に巨大な空間があって、そこに水をためておくことができるのだ。
一時的に水をプールしておいて、徐々に流すことであふれないようにしているんだ。
有名なのは、中野区・杉並区の環七(環状七号線)下にある、「神田川・環状7号線地下調節池」。
ここは事前申込みで見学できるのだけど、地下秘密基地のようですごいとよく言われるのだ。
それと、神田川と妙正寺川が「落ち合う」新宿区落合にある「妙正寺川落合調節池」。
もともと二つの川が合流する地点で、かつ、土地が低いのでよくあふれた場所なんだよね。
なので、流路を変更してもう少し先で合流するようにするとともに、調節池を設けたのだ。

このように、東京の治水は、いろいろと対策をしているわけ。
パリではどこまで対策をしているんだろう?
ただし、これらの対策には莫大な費用がかかるから、すぐにできるわけじゃないんだけど。
パリもこういう事態が続いたのだから、何か考えなければいけないんじゃないかな。

2018/01/20

パリでも定番

パンとケーキとチーズのおいしい街、パリ。
正直、料理はイタリアの方がおいしいと思うんだよね(笑)
何より、海産物が生臭くないし! でもでも、そんなパリでも、イタリア発祥のデザートである「ティラミス」はかなり定番。
フレンチのレストランでも出るし、カフェにも必ずあるのだ。
そう言えば、パンナコッタもかなり見かけるかも。

そんなティラミスの材料はチーズ! マスカルポーネだよね。
チーズはフランスの方がおいしいと思っていたんだけど、そう言えば、モッツァレッラも含め、熟成させないフレッシュチーズはイタリアのものがおいしいかも・・・。
やっぱり気候とか風土がかんけいしているのかなぁ。
フランスの寒さと乾燥がよいのかも。

で、マスカルポーネとはよく聞くけど、実際はなんだかよくわかっていないんだよね(笑)
調べてみると、生クリームを熱してからクエン酸又は酢酸を加えて固め、布でこして水分(乳清=ホエイ)を除いたものだって。
なんだかどこかで聞いたことあるような・・・、と思っていたら、フランスのデザートの定番でもあるフロマージュ・ブランと作り方が類似しているのだ!
フロマージュ・ブランの場合は、生クリームではなく、より脂肪分の少ない乳(全乳、低脂肪乳又は無脂肪乳)を温め、そこに乳酸菌と少量のレンネット(チーズを凝固させる酵素)を加えて固め、水分を除くのだ。

一般に、クリームチーズは、クリーム又は乳に乳酸菌を加え、発酵させて固めてから、水分を除いて作るのだ。
乳に乳酸菌を加えて発酵させた発酵乳はヨーグルトなんだけど、ヨーグルトの場合は乳酸菌の株がある程度決まっているようだよ。
でも、水分を切ったヨーグルトと、乳で作ったフレッシュ・チーズは非常に似ているのだ、っていうか、ほとんど同じ。
フロマージュ・ブランはヨーグルトと言われてもわからないからね。


マスカルポーネの特徴として、フロマージュ・ブランを含むクリームチーズと異なり、乳酸発酵をさせていないので酸味が少ないのだ。
しかも、乳にレモン汁や酢を加えて作るオランダのカッテージチーズに比べると、もともとの脂肪分が多いので、その「甘み」があるんだよね。
より濃厚なクリームになるのだ。 これが高カロリーの原因なんだけど。

作りたてのマスカルポーネは乳白色。
いわゆるティラミスの色である黄色は、サバイオーネと言われるカスタードの色なのだ。
これは、卵黄に砂糖を加えて泡立て、洋酒を加えて煮詰めたものだよ。
このカスタードとマスカルポーネを混ぜたものを使うのがティラミスなのだ。
一方、マスカルポーネは、古くなると黄色くなってくるんだよね。
これは中に含まれる乳脂肪が酸化されて色がつくため。
古い油が褐色になっていくのと同じだよ。
なので、ティラミスのイメージでマスカルポーネを選んではいけないのだ!

日本では、バブルの時期に「イタ飯」が大流行し、ティラミスも一気にメジャーになったんだよね。
デニーズなどのファミレスでも定番になったし、一気に需要が増えたのだ。
ところが、フレッシュチーズであるマスカルポーネは日持ちがよくないし、そんなに大量に輸入はできなかったのだ・・・。
そこで開発されたのが、植物性油脂から作られた代用品。
「マスカポーネ」だよ。
バターに対するマーガリンの発想だよね。
この代用品は、柔らかくて加工しやすく、かつ、日持ちもするので、カップデザートに使ったりするのにはもってこい。
スーパーやコンビニに並んでいる価格の安いものはこの代用品を使っているかもしれないよ。
本物のマスカルポーネを使ったものと食べ比べてみると面白いかもね。

2018/01/13

臭みに立ち向かう

パリの魚介類はくさい!
スーパーで売っているようなものは当然として、マルシェで氷の上に並べられているようなものもかなりのにおいなのだ・・・。
フランス人はあまり魚の臭みを気にしないのかな?
日本ほど冷蔵・冷凍輸送の体制が整っていないようなので、流通の問題であるのは確かなんだけど。
なので、パリでは家で魚料理を食べる機会は減ってしまうのだ(>_<)
職場の同僚はパリでは魚は食べないとか言っているよ。

実は、真空パックに入って売られているスモークサーモンもそうなんだよね。
日本で売っているものでもくさみが気になって・・・、なんてネットの相談を見たけど、パリで売られているものは多分もっとくさみがあるよ。
一応、パックを開けてそのままでも食べられるみたいなんだけど、推奨は、ドレッシングなどであえてカルパッチョやサラダにすることなのだ。
我が家では、塩漬けイクラとともに鮭親子丼にしたんだけど、わさび醤油でカバーしたのだ。

この魚のくさみの主な原因と言われているのは、トリメチルアミンという物質。
すごく簡単な構造の有機化合物だよ。
低濃度でいわゆる「魚臭」、高濃度ではアンモニアのような悪臭になるのだ。
悪臭防止法の規制対象でもあって、特定悪臭物質に指定されているんだって!
魚の場合、浸透圧を調節するために体内にトリメチルアミン-N-オキシドという物質を持っていて、これが魚の死後に付着している細菌による還元されると、悪臭の原因であるトリメチルアミンが出てくるのだ。
なので、トリメチルアミンは魚の腐敗の進行度によって増えるんだよね。
つまり、鮮度よく流通させないと、くさくなるわけ・・・。

このトリメチルアミンは水によく溶ける物質なので、水で洗えばある程度取り除けるんだけど、魚の切り身をそのまま真水で洗ってしまうと、浸透圧の関係で切り身が水分を吸ってしまい、食感も悪くなるし、味もぼやけたものになるのだ・・・。
そこで、仮に洗う場合は海水程度の塩水を使うのがよいらしいよ。
そうすると切り身は「ぶよぶよ」にはならないのだ。
伝統的には、魚の身から水分を吸い出して「締まった」状態にする方が、身がぷりぷりし、味も濃くなるので、塩水で洗うよりは、塩を振って、水分を吸った塩をぬぐい取る、という方法がとられているよ。
水分と一緒にくさみ成分もぬけるので、塩をして少し閉めると改善するみたい。
ただし、生魚はいいとして、スモークサーモンにはあまり使えないね(笑)

浸透圧を気にせずに水で洗うには、野菜ではやった「50度洗い」という方法もあるのだ。
50度前後(48度~52度)のぬるま湯を用意して洗う、というだけなんだけど。
野菜の場合は、50度前後の水で簡便に表面の殺菌をするとともに、適度な水分を吸収させてしゃっきり、みずみずしくさせるのだ。
でも、これだと魚ではまずいのでは?、と思うんだけど、ちょっと違うみたい。
表面の殺菌でこれ以上くさみ成分が増えないようにするのは効果があるとして、ぬるま湯で洗うのは、「余計な水分を吸わせない」ようにするためなのだ。
逆説的に聞こえるけど。

魚や肉の場合、やってみるとわかるのだけど、ぬるま湯に入れると表面が少し白く、固くなるのだ。
これはタンパク質が熱で変成しているからだよ。
そうすると、水が染みこみにくくなるのだ!
ところが、この程度の熱変性は可逆的なので、ぬるま湯で洗った後によく水分をぬぐい取って乾燥させると、元の色、というか、より鮮やかな発色になるのだ。
50度前後という絶妙な温度設定により、火は通らないんだけど、表面のタンパク質は変性する、というのがポイント。
熱すぎると「たたき」にしたように表面に火が通ってしまうし、ぬるすぎると殺菌できないので要注意。

ドレッシングであえるというのも効果があって、これは「酢」が威力を発揮しているのだ。
柑橘類の果汁でも一緒だよ。
トリメチルアミンは酸性条件下ではトリメチルアンモニウム塩に酸化されるので、くさみがなくなるのだ。
これは純粋に化学的な話。
ヨーグルトにつけるというのも同様の話で、中は乳酸によって酸性になっているので、くさみがなくなるのだ。
焼き魚にレモンをしぼるというのも一理あるわけだね。

ちなみに、トリメチルアミンは熱でも飛ぶので、焼いたり煮たりするとくさみは軽減するよ。
でも、先にくさみを取ってから焼いたり煮たりした方がおいしいわけで。
ちょっと工夫をすればよりおいしく魚が食べられそう。

2018/01/06

「フジコ」はこの配列で

年末年始の旅行中に突如パソコンがうんともすんとも言わなくなったのだorz
午前中に使えていたのに、夜になったら電源が入らない!
で、ネットで調べて応急の対処法を調べてもどうにもならない(ToT)
どうも内部がいかれてしまったみたい。
というわけで、仕方がないので、フランスで新しいものいを購入しようと思ったんだけど・・・。

フランスで売っているパソコンはキーボードの配列が違う!
ものすごく使いにくい。
日本語版も含めて、英字はスタンダードには「QWERTY」配列になっているんだけど、仏語版は「AZERTY」配列という特殊なもの。
これはフランスとベルギーくらいでしか使わないみたい。
なので、わざわざ英国版の「QWERTY」配列のものを探さないといけなんだよね。

このQWERTY配列というのはタイプライターの次代に確立された配列。
英字が三段に配置されていて、一番上の段の左からQ、W、E、R、T、Y、・・・と並んでいるので、「QWERTY」と呼ばれるのだ。
いわゆる見慣れた英字配列だよ。
一方、仏語版の場合、QとA、WとZの位置が入れ変わっているので、同じように一番上の段の左から読むと「AZERTY」になるのだ。
これは仏語の綴りの場合、この配置の方が打ちやすいからなんだって。

AZERTYの場合、数字の入力もめんどうなんだ。
仏語には、英字にアクサンがつくので、そのまま入力するとアクサン付の英字が入力されるようになっていて、数字を打ちたいときにはSHIFTキーとともに押す必要があるんだ。
別にテンキーがあればまだましだけど、かなり違和感があるよね。
でも、普通のQWERTYでアクサン付の英字を打つことに比べたらこの方が楽なのかも・・・。
独語版のQWERTZは、単純にYとZを入れ替えたもの。
これは使用品度の問題で、独語の単語はZを多用するけどYはあまり使わないので、そうなっているんだって。
これならまだましかな、違和感はあるけれど。

このほかに、もっと理論的に英字入力の際の効率性を求めた「Dvorak配列」というのもあるのだ。
これは開発者の名前をとったもの。
理論的にはこの方が指を動かす距離を短くして英語が入力できるそうなんだけど、一般にQWERTYでブラインド・タッチなどを練習することが多いため、いまいち普及しないようなのだ。
また、英字入力にはよいけど、その他言語のことは考慮されていないので、英語以外の言語を使う人にはまったく関係ないしろもの。
特に日本語のローマ字入力の場合には使いにくいみたいだよ。

ちなみに、ネットスラングで出てくる「フジコる」は、QWERTY配列をもとにしたものなのだ。
キーボードの上段と中段を左から交互に押していくと「qawsedrftgyhujikolp」となるんだけど、これがローマ字入力モードだと「qあwせdrftgyふじこlp」となって、「ふじこ」が出てくるんだよね。
もともとは音声にならない悲鳴などを表現するために使われていたんだけど、いつしか、何を言っているか意味がわからない人の言葉に使われるようになり、そこから、意味のわからないことを言う、という意味で「ふじこ」が用いられるようになったのだ。

さらに、キーボードは配列のほかに、キーの数でも分類があるんだって。
欧米式のスタンダードは101キーボード、メインの文字キー47+その他11キーに、テンキー17、ファンクションキー12、その他14が入ったもの。
メインはタイプライター時代からのものだよ。
日本語版はキーの数が増えて106キーボードと呼ばれるのだ。
これは、日本語入力用にキーを増やす必要があったため。
「無変換」、「変換」、「カタカナ・ひらがな」の3つの変換キーに、かな打ち用の「む」と「ろ」を加えたもの。
英字よりかなの方が多いので、キーを増やす必要があるのだ。
ま、今はかな打ちをする人はあんまりいないので、海外でQWERTYの101キーボードを買っても多少使いづらい程度なんだよね。