2018/03/31

例外は出てくるもの

少し難しいニュースだけど、暗黒物質が存在していない銀河を発見した可能性がある、という報告が科学誌Natureのウェブサイトに掲載されたのだ。
Natureでは、確度は多少低くてもインパクトのあるものをまずウェブで掲載することがあるんだよね。
週刊誌と言えども、タイムリーに大きな成果を公表するにはこの方がよいんだよね。
ま、STAP細胞みたいな例もあるんだけど・・・。

通常、太陽系が所属している天の川銀河も含めて、目に見えている星々だけではなく、見えない(=観測できない)「暗黒物質」が大量に含まれている、と考えられているんだよね。
天の川銀河のような渦巻き銀河だとイメージしやすいけど、銀河も回転運動をしていて、その回転運動に物理法則を当てはめようとすると、観測値と理論値が合わない!、ということがわかったのだ。
端的に言うと、「重さ」が足りないんだよね。
光学的に観測できている星々の想定される質量を足し合わせただけでは、銀河の回転運動の性質を説明できなかったのだ。
そこで、観測はできないけど、質量を持っていて、銀河の回転運動に影響を与えているもの、として「暗黒物質」が仮定されるに至ったわけ。
さらに、この「暗黒物質」は、銀河の形成にも役立っていると考えられていて、最初に銀河が掲載されるとき、「暗黒物質」が足場となって重力でまわりのガスなどを引きつけ、それが徐々に大きくなって銀河になる、と仮説が構築されているのだ。

で、今回の発見が本当に「暗黒物質」の全くない銀河の発見だとすると、銀河の形成には少なくとも別のルートがある、ということになってしまうんだよね。
ただし、これまで観測されてきた多くの銀河が、見えるもの以上に大量の暗黒物質を含んでいるのだけど、今回発見された銀河は、これまでの観測結果では、見えているものの質量を足すだけで運動が説明できる、というもの。
なので、本当に「暗黒物質」を全く含まないかどうかはわからないんだよね。
ごくごく少ない量では存在しているかもしれないし、まだ観測データが少ないので、これからの観測で変わるかもしれないのだ・・・。

面白いことに、一昨年夏には、全く逆ベクトルの報告があったんだよね。
つまり、ほぼ「暗黒物質」でできている銀河の発見。
たまたま見つけられたもので、観測データに欠陥があるのかな?、と詳しく調べてみると、99.99%「暗黒物質」で構成されていると考えないと説明できないような銀河が存在するという結論に至ったんだそうだよ。
今回はまさにその逆なんだよね。
なんか、釣り合いはとれているような気はするけど(笑)

これからの更なる研究が重要なんだけど、この「暗黒物質」を含まないかもしれない銀河を詳しく調べていくことで、これまでの銀河に関する仮説を深化させたり、観測できず、理論的に存在が仮定されている「暗黒物質」への理解が深まる可能性があるんだよね。
ま、人類の日常生活には大きな影響はないんだけど。
それでも、ホーキング博士が亡くなって以降、エポック・メイキングな成果が出た可能性が高いんだよ。
現在は宇宙にあるハッブル宇宙望遠鏡と地上の天文台からの観測がメインなんだけど、開発が遅れに遅れているNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が使えるようになれば、もっと詳細なデータが得られる見込みなのだ。
これは宇宙好きにはたまらないね(笑)

2018/03/23

アルミ玉

なんか、ネット上でアルミホイルを丸めて、丸めて、金属光沢のある玉にする、っていうのがはやっているみたいだね。
アルミホイルを丸め、ひたすらたたいて、つぶして、圧力をかけて密な球状のものにし、それを磨いていくんだって。
磨くのも、紙やすりで粗いもの、細かいものと順々にかけていくみたい。
最終的に液体研磨剤で磨くと、そこに輝く金属球、だけどアルミだから、かなり軽いものができあがるそうだよ。
ただし、ものすごく時間はかかるみたい・・・。

アルミは軽量で加工性も高いので日常生活でもよく見かける金属だよね。
この加工性が高いというのは、展延性が高い、ということなのだ。
展性というのは、引っ張る力に対してせん断されることなく伸びる性質。
針金状に延ばすことができるという性質だよ。
延性というのは圧力をかけたときに柔軟に変形する性質。
圧力をかけながら延ばしていくと、シート状にできるのだ。
アルミホイルのようにうす~く延ばせるのはこの性質のおかげ。

さらに、アルミは比較的軟らかく、曲げたりするのにもあまり力がいらないのだ。
そして、曲げても割れたり切れたりしないのだ。
このおかげで、アルミホイルやアルミカップが使えるし、アルミ缶に成型もできるわけ。
ただし、あまりにも軟らかすぎるので、通常はアルミの入った合金を使うようだよ。
1円玉は純アルミニウムだけどね。

でも、残念なのは、1円玉を見ればわかるように、すぐくもってしまうのだ・・・。
これはアルミニウムはイオン化傾向が大きく、空気中の酸素で酸化されてしまうから。
つまり、表面に酸化アルミニウムが形成されてしまうのだ。
ところが、これが被膜となるために、耐浸食性が高くなっているんだよね。
なので、アルミ缶の中に炭酸飲料も入れられるわけ。
しかも、薄くて熱伝導度も高いので、すぐに冷えるのだ!

ところが、酸性や塩基性の液体には弱いので、その場合には被膜だけじゃなく、表面にコーティングをしてあげることが必要なんだって。
また、あまりにも軟らかいので、中から内圧がかかっているような飲料に適しているのだ。
つまり炭酸飲料。
お茶とかがスチール缶を使うのはこのためだよ。
でも、何より缶自体が軽いし、飲んだ後は簡単につぶせて場所も取りづらいし、便利なところもたくさん。
だからこそアルミ缶は広く使われるのだ。。

ところが、ネットで話題になっているアルミホイルを固めて作った玉は、磨けば磨くほど表面がなめらかにはなるんだけど、やっぱりそこにはすぐに酸化アルミニウムの被膜ができてしまって、くもるはず・・・。
酸素に触れないようにしておかないと、長い時間かけた苦労が、ということになってしまうよ。
もし試してみようという人は気をつけないとね。

ちなみに、アルミホイルを固めていくためには、いきなり強く圧力をかけてもうまくいかないみたい。
まずは手で丸め、それを優しくたたいていって、ある程度固くなってから金槌とかでがんがん固めていく、という手法らしいよ。
そうしないとどうしても隙間が残ったりするんだって。
日本刀も何度もたたいて鋼を鍛えるけど、きっとそういうものだね。
最後に丹念に磨くのも同じだし(笑)

2018/03/17

UME

パリもだんだんと春めいてきた。
この前は早咲きの桜を見かけたよ。
日本だと、まず梅が咲き、続いて桜が咲き、と春の近づきが実感できるのだけど、パリだとそれはさすがに難しいね・・・。
日本にいた頃は、馬が咲くともう温かくなるとわかるのでうれしかったものだけど。

で、この梅について、最近ネットで流れてきたネタを見てびっくり。
それは、白梅と紅梅の違い。
確かに花の色が違うのだけど、本質はそこではなかったのだ!
紅梅は、赤い色素であるアントシアニンを大量に作る品種で、そのために、そもそも枝の断面の色が違うのだ(>o<)/
桜伐るバカ梅伐らぬバカ、なんて言うけど、枝を剪定したときに、断面が赤っぽく色づいているのが紅梅、そうでないのは白梅なんだって。
花にだけ色素があるわけじゃなくて、樹木全体で色素が多いということのようなのだ。
なので、花が咲く前に紅梅か白梅かは区別できるんだって。

違いはそこだけではないんだよね。
一般に白梅は紅梅より香りが強いと言われるけど、これも事実。
いわゆる梅の香りの主成分は酢酸ベンジルという精油成分なんだけど、花王がかつて分析した結果によると、白梅の方が香り成分が多かったようなのだ!(ちなみに、その花王のプレスリリースの一次資料はすでにネット上では見られなくなっているよ・・・。)。
酢酸ベンジルは極めて単純な化合物だけど、ひょっとすると、色素のアントシアニンと生合成過程が重複しているのかな?
紅梅の場合は、より多くの材料が色素に使われてしまうので、香りは弱い代わりに色が濃い、となると合点がいくよね。

そして、梅干しなどに使う梅の実はほとんど白梅のもの。
紅梅由来の身は小さかったり、苦味があったりと食用には向かないんだそうだよ。
これも始めて知ったけど、確かに梅園によるある「白加賀」という梅の品種は、大きな白い花を咲かせるもので、江戸時代から広く栽培されているんだけど、大きな梅の実をつけるんだよね。
最近はもっと加工に向いた品種があるようだけど。
例えば、梅干しで有名な南高梅は果肉が厚いのに種が小さく、梅干しに向いた品種なのだ。
また、実がかたく、アルコールに漬け込んでも崩れにくいものが梅酒に向いているんだって。

一方、紅梅は花の色がきれいなので、観賞用でもあるんだけど、独特な赤みがかった木目の色は木材としても人気。
きめが細かく、磨くとつやも出るんだって。
なので、将棋の駒、そろばんのタマ、櫛、箱、ステッキなどに使われるそうだよ。
そこまで幹も太くはないから、大きな家具とかにはならないようだけど。

さすがに自分で枝を切って確かめるわけにはいかないけど、梅の場合はよく剪定をするので、その際に観察してみると面白いかもしれないね。
今度から気をつけるようにして見てみようっと。
会わせて梅の実のなり方の違いも比べてみると楽しいかも。

2018/03/10

肉と言えばウシ

フランスでは、「肉」と言えばウシ、っていうくらい牛肉ばかり。
トリもハトもウズラも食べているけど、やっぱりウシが多いよね。
っていうか、ステーキ好きだし、スーパー等で売っているのも牛ばかり。
ブタ肉料理を置いている店が少ないのだ(>_<)
日本人としては、特に家庭料理ではわりとくせのないブタ肉を使いたいのであまり売っていなくて困るよ。

ウシは、新石器時代に野生のオーロックスという、今は絶滅してしまった野生のウシ(いわゆるウシよりもう少し毛がふさふさしていたみたいだよ。)が西アジアで家畜化され、それが広まっていったと考えられていたんだって。
ところが、ミトコンドリア分析をしてみると、どうも二系統あるらしいことがわかって、それぞれ別の場所で二系統の家畜化ウシが作られ、それが交錯しながら広まっていったのではないか、と言われ始めているそうだよ。
でも、家畜化されたウシと野生のオーロックスは交配可能だったようなので、西アジアで家畜化されたウシが広まっていく過程で野生のウシと交配して二系統になった可能性もあるとか。
なんだか複雑みたいだよ。

でも、ウシが家畜化されたのは、他の家畜に比べると遅いそうだよ。
理由は簡単で、大きくてどう猛なので、まずは、小型のヤギや羊を飼い慣らすところから始めて、飼育技術が蓄積されたところで成功したんじゃないか、ということ。
でも、ウシはその大きさから家畜としては極めて有効で、特に始まったばかりの農業に活用されたのだ!
これは四大文明で共通なようで、エジプトでもメソポタミアでも中国でもインドでも、ウシは重要な農業の担い手だったみたい。
なので、それら古代文明ではウシが神聖視されることもしばしば。
インドのヒンドゥー教では今でもウシは聖なるものとみなされているよね。

中国なんかはより顕著で、三皇五帝の三皇の一人で、人々に農業を教えたという神農は牛頭人身の異形の神。
農業とウシが強く結びついている例なのだ。
でも、この神農は、「百草をなめ、毒と薬に分けた」とも言われていて、人々に生薬の知識を授けた神でもあって、そのために医療の神様としても知られているよ。
日本では、神仏習合でスクナビコナとともにまつられていることも多いよ。
東京の湯島聖堂には神農廟というのもあるけどね。

同じように神仏習合の牛の神様としては、八坂神社の祇園様こと牛頭天王がそうなのだ。
よくわからない神様で、祇園精舎の守護神ということになっているんだけど・・・。
この神様は「蘇民将来」伝説でおなじみで、疫病神なのだ。
護符を授けられた人だけが疫病を避けられる、というタイプ。
祇園祭は疫病の流行を避けるためにこの神様に捧げる祭りがもとだよ。
で、出自がよくわからないんだけど、医道の祖であり医療の神様でもある神農との関係は指摘されているのだ。
大陸にはこの神様はいないようなので、日本で、或いは、朝鮮半島も含んで疫病神の伝説があって、そこに中国伝来の神農の信仰が習合して、いつの間にかその疫病神の姿がウシになった可能性はあるんだよね。
むしろ、ウシと言えば、天満大自在天神こと菅原道真公との関係で天神社における神使としての姿の方がメジャーな気がするけど。

古代日本には牛飼部なんてのもあって、牛乳をとったり食用にしていたんだけど、仏教が広まってからは肉食が基本禁止され、乳製品も10世紀には廃れてしまい、ウシの用途は主に農耕作業などだったみたい。
最初に家畜としてのウシが確認されているのが古墳時代後期のようなので、普通に牛の肉を食べていた時代はかなり短いのだ。
でも、平安時代には牛車なんてのにのっていたわけで、文化的には身近な存在ではあったはず。
そんな存在だから平安貴族だった道真公とウシも結びつけられたんだろうけどね。

2018/03/03

さらっさら

パリでまた雪が降ったんだけど、なんと北海道のようなパウダースノー。
その日は最高気温でも零下の気温で非常に寒く、風もあったので、粉雪が風に舞っていたのだ!
ほんと、北海道のスキー場みたいな感じ。
雪が地面に到着しても、地表がきんきんに冷えているから融けることがなく、その上に積もった雪もさらさらのまま。
これは不思議な光景だったね。

パウダースノーというのは、まさに粉状の雪なんだけど、気温が低く、空気が乾燥している状態で降る雪なのだ。
雪の結晶が成長するときって、雲の中にある微少な水滴が凝結して核となる氷晶ができるのだけど、これがまわりの水滴を集めながら大きくなるわけではないみたい。
むしろ、氷晶のまわりの水蒸気が昇華していきなり氷になる方がスピードが速いんだって。
なので、雪の結晶はむしろ乾燥状態で成長していくということなのだ。
というわけで、上空では成長した雪の結晶が乾燥した状態であって、一定の大きさを越えると降ってくるんだけど、気温が高ければ降ってくる途中で融けるんだよね。

でも、気温が多少高くても、空気が乾燥している場合は気化熱で熱が奪われるため、雪の結晶が融けにくくなるんだって。
逆に言うと、湿度が高いと融けやすくなってしまうのだ。
降ってくる途中で、氷晶が完全に液体になってしまうと冷たい雨、雨の中に氷の結晶が混ざっている状態なのがみぞれ、ちょっと融け始めていて湿り気があって、複数の表がくっついて大きくなっているのが「ぼた雪」、そして、完全に乾燥しているとパウダースノーになるのだ。

雪に湿り気があるとその水のせいで雪の結晶がくっついてしまうのだけど(これは「雪片」というらしいよ。)、パウダースノーの場合は、それがないので、細かい雪がそのまま降ってくるのだ。
目をこらしてよく見ると、雪の結晶がわかることも!
で、こういう粉雪は、地表に積もってもそれぞれの雪の結晶がくっつくこともなく、さらさらしているので、強い風が吹くと巻き上げられるんだよね。
それが「地吹雪」。
さすがにこの前の粉雪はそこまでじゃなかったけど、もう少し積もったら地表から舞い上がりそうなくらいさらさらだったよ。
全く水気がなかったからね。

パリの気候について言えば、乾燥度合いについては十分合格点だけど、通常はそこまで気温が低くないので、パウダースノーにはならいんだよね。
でも、今回は、2~3日最高気温でも0度を越えない日が続いていて冷えきっていたので、パウダースノーになったみたいなのだ。
でも、こんなことは非常にまれだから、貴重な体験をしたんだろうなぁ。
もう二度とこんな寒くはならないでほしいけど(笑)