2020/04/25

適切なハイターを

新型コロナウイルスが収まる気配がないよねぇ。
さらに緊急事態宣言が全国規模になったこともあって、マスク不足も解消される見込みがないのだ・・・。
シャープが売り出したやつもサーバがダウンして1日で販売中止になってしまったしね。
そんな中で、注目を受けているのがマスクの再利用。
洗って消毒して数回使いましょう、という流れだよね。

布マスクはOKなんだけど、不織布のマスクは熱湯消毒がダメなことが多いし、ウレタンマスクも熱湯につけると劣化が早まることがあるんだよね。
そこで、消毒剤として人気なのがハイター。
消毒用アルコールはもう手に入りづらいけど、漂白剤のハイターはまだ手に入る、ということで推奨されていることが多いのだ。
つけ置きして、よくすすいでから陰干しすればいいということなのだ。
でも、ここで注意が必要。
ハイターという名称でも、この消毒には使えないものがあるよ!

ハイターやキッチンハイターは塩素系で、次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする、アルカリ性の漂白剤なのだ。
液中に存在する次亜塩素酸イオンや電離していない次亜塩素酸に殺菌効果があるのだ。
次亜塩素酸はHClOという化学式だけど、H-O-Clという形で元素が結びついているんだよね。
酸素は-2価で、水素と塩素がそれぞれ+1価になっているわけだけど、通常塩素は-1価になりやすいので、この状態は極めて不安定。
そこで、塩素は電子を2つもらって-1価になろうとするのだ。
これが強い酸化力のもとで、殺菌や漂白の作用の源だよ。

このほかに、ワイドハイターやハイドロハイターというのがあるのだ。
ワイドハイターは酸素系の漂白剤で、過炭酸ナトリウム(炭酸ナトリウム過酸化水素水)の酸化力をつかうものなんだけど、塩素系に比べて酸化力は弱く、そのために色物にも使えるけど、殺菌作用はないよ。
酵素の力で色素を分解するだけで、ウイルスや細菌を無効化することはできないのだ。
ワイドハイターはいわゆる「カルキ臭」がしないのでマスクの消毒に使いたくなるんだけど、それじゃダメなのだ。
もうひとつのハイドロハイターは還元系の漂白剤で、ハイターが強力な酸化剤であるのに対し、こっちは電子を受け渡して還元するもの。
やっぱりこれでは殺菌力はないよ。
ハイターやワイドハイターは液体だけど、ハイドロハイターは粉末なので、まず間違えないとは思うけど。

ハイターやキッチンハイターのような塩素系漂白剤を使うときの最大の注意点は、「混ぜるな危険」。
さんと混ぜると有毒な塩素ガスが発生してしまうのだ・・・。
仮に布マスクを洗濯して、消毒して、と考える場合、強酸性の洗剤を使わないように気をつけないといけないのだ。
といっても、酸性洗剤って強いものが多くて、普通はトイレ・風呂場用のカビ取りなんかなので、洗濯に使うことはまずないはずだけど。

2020/04/18

ばっちり注射で元気を保つ?

日本では新型コロナウイルス感染で重症化する例が少ないと言われているよね。
で、その理由がいろいろ考察されていて、もともと手洗い・うがいが励行されているから、医療提供体制が充実しているから、神風に守られているから(?)、などなど様々な意見があるんだよね。
そんな中に、まことしやかに提唱されているのが、BCGが抵抗力を上げているのではないか、というもの。
これはつい先日世界保健機関(WHO)から否定する声明が出てしまったけど、その可能性があるということで科学的検証も行われつつあるんだよね。
どうも日本で接種されている株が有効らしいとかで、それが本当に効果があるかを確かめるのだ。
ちなみに、日本医師会からは、未だに科学的根拠が確かめられていない、という見解が示されているのだ。

BCGというと、ボクらの世代は「はんこ注射」を思い出すんだよね。
筋肉注射で痛いツベルクリンをやった後、陽性でないとあんまり痛くないはんこ注射を打たれたのだ。
これは皮下注射で一度にいくつもの針で刺すんだよね。
痛みはないけどきっちりと跡は残って、ボクも上腕部に跡があるのだ。
でも、結核予防法が改正され、今は生後3ヶ月程度の赤ちゃんにツベルクリン反応の有無にかかわらず接種するんだって。
若い子はあの跡がないのか・・・。

ボクは、BCGっていうのは何か英語の頭文字をとったものだと思っていたんだよね。
予防接種の三種混合は、ジフテリア(Diphtheria)、百日咳(Pertussis)、破傷風(Tetanus)の3つなので、俗にDPT注射と呼ばれたのだ。
これと同じような感じ。
でも、BCGって、フランス語で「Bacille de Calmette et Guérin(カルメット・ゲラン桿菌)」の略なんだって!
ウシ型結核菌を実験室で培養を繰り返して確立された弱毒性の結核菌で、これを生ワクチンとして使うので、そのワクチン自体もBCGと呼ばれるようになったとか。
結核といえばかつては死因の大きな部分を占めるほどの脅威だったけど、BCGによる予防でかなりリスクの低減ができたんだよね。
今でも日本では定期接種になっているのだ。

ここで言う「生ワクチン」というのは、生きた菌をそのまま接種し、感染させるタイプのワクチンのこと。
症状の軽い感染状態を作り出して、免疫を作るのだ。
天然痘の対策として考案された牛刀の流れを直接くむもの。
逆に、死滅した細菌やウイルスを用いたワクチンは不活化ワクチンと呼ばれるのだ。
この場合は毒素だけを取り出したり、病原体に特徴的なタンパク質だけを取り出したりして、それに対する抗体を作るよ。
生ワクチンで代表的なのは、BCGのほか、風疹、麻疹、おたふくかぜ、水疱瘡など。
不活化ワクチンは、さっきも出てきた三種混合、インフルエンザ、日本脳炎など。

当然このふたつには違いがあるんだよね。
生ワクチンは実際に感染させるので、細胞性免疫と言われる、感染した細胞をT細胞やNK細胞が除去する免疫システムも活性化させるのだ。
これがひょっとしたら新型コロナウイルスへの耐性を高めている可能性があるといわれているよ。
ただし、感染を引き起こすので、免疫が低下している人やもともと抵抗力の弱い人の場合は症状がひどくなるおそれもあるんだよね。
また、弱毒性の細菌やウイルスが作れないと使えないので、開発にはけっこう時間がかかるよ。

これに対し、不活化ワクチンは病原体の特徴的な部分に対してのみ抗原抗体反応(液性免疫)を惹起するもの。
生ワクチンと違って直接感染させるわけではないので相対的にリスクは低いんだけど、製剤自体の扱いが難しかったり、免疫の持続時間が短いなどのデメリットもあるのだ。
また、一気に免疫が獲得されないので、通常は何度かに分けて接種するよ。
有名なインフルエンザの予防接種だと2回接種が基本だよね。
で、こっちは原則として病原体と免疫が1:1対応になるので、BCGが新型コロナに効く?、みたいな副次効果は期待できないのだ。

2020/04/11

エマージェンシー、これは訓練ではない

ついに一都一府五県に非常事態宣言が出たのだ。
これで生活も大きく変わるのか?
といっても、実際問題として何が変わるかいまいちよくわからないんだよね・・・。
というわけで、少し調べてみることにしたよ。

まず、今回の「非常事態宣言」は2009年の新型インフルエンザの感染蔓延を契機に制定された「新型インフルエンザ等特別措置法(新型インフル特措法)」の第32条に基づくもの。
もともとこの法律の対象は、新型インフルエンザ等で、その対象は、同法第2条の定義において、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)」第6条第7項に規定する「新型インフルエンザ等感染症」及び同条第9項に規定する「新感染症」なのだ。
前者の「新型インフルエンザ等感染症」は単純で、新型インフルエンザと再興型インフルエンザのこと。
後者の「新感染症」は未知だけど脅威のある感染症を広く対象にできるように規定されているもので、「人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの」となっているのだ。

ところが、ここで問題が発生。
今回の「新型コロナウイルス」については、この感染症予防法が対象とする「新感染症」とするのは難しい、との法解釈があったので、そのままでは新型インフル特措法の対象にならないとされたのだ。
これは総理も厚労大臣も国会で答弁しているようだよ。
そこで、改めて、「新型コロナウイルス」が新型インフル特措法の対象になるように法改正が行われたんだよね。
それにより、最大2年間、「新型コロナウイルス」は新型インフル特措法における「新型インフルエンザ等」とみなす、ということになったんだ。

この改正法が通って施行された後、いつ「非常事態宣言」が出るかでメディアがさわがしかったわけだけど、実は、「非常事態宣言」が出ずとも、「新型インフル特措法」の対象になればこれまでできなかったことができるようになっているのだ。
例えば、政府は総理を本部長都市、全閣僚を構成員とする、法定の対策本部を設置し、新型コロナウイルス対策に関する基本的対処方針を定めることになるんだよね。
加えて、政府対策本部が設置された場合は、各都道府県にも都道府県対策本部が設置されることに安るんだよね。
これで全国規模の指揮命令系統が確立するのだ。
そして、医療関係者に対する優先的な予防接種の実施や、感染症発生国からの船舶や航空機の検疫を強化する「水際措置」が発動できるようになるよ。
で、しばらくはこれで対応していくわけ。

いよいよ切羽詰まってくると、「非常事態宣言」が出されるのだけど、その際に2つの要件があるのだ。
これは新型インフル特措法の施行令第6条に規定されているよ。
ひとつは、対象感染症の範囲で、「当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められる」とされたいるのだ。
今回の新型コロナウイルスは微妙ではあるけど、肺炎のリスクが高いと判断されているわけだね。
もうひとつは感染・流行の態様で、ざっくり言うと、調査等を行っても感染経路がとどれないなど感染拡大のおそれが疑われる場合、ということ。
これは完全に当てはまるよね。
というわけで、今回の新型コロナウイルスもこれら要件を満たしたとされて、「非常事態宣言」が出たのだ。

「非常事態宣言」は最大2年間の期間(更なる1年間の延長は可能)に、特定の範囲(都道府県単位)で出されるもので、これが出ると更なる措置が可能となるのだ。
体系的には、都道府県対策本部に加えて、市町村対策本部も設置が義務化されるよ。
対象範囲となっている都道府県知事は「特定都道府県知事」、市町村長は「特定市町村長」となり、各種要請の主体となって対策を講じていくんだ。
実際に「非常事態宣言」が出た場合にどういうことができるかは法律で決まっているんだけど、この内閣官房の概要資料が比較的わかりやすくまとめられているよ、。

代表的なもので言えば、すでによく話題になっているけど、外出の自粛要請。
そして、補償問題で騒がれつつあるのが、人が集まる施設等の使用制限に関する要請。
こちらは、施行令第11条でより細かく範囲が規定されていて、学校、保育所、介護施設、劇場、映画館、演芸場、集会場、公会堂、展示場、百貨店や物販販売業(食品や医薬品などを除く)、ホテル・旅館、体育館、水泳場、ボーリング場、博物館・美術館、図書館、遊興施設(キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール等)、理髪店、質屋、貸衣装屋、自動車教習所、学習塾等々。
これは各都道府県知事が各都道府県の実情に応じてそれぞれ要請するのだ。
ちなみに、法律上は制限の要請をしても国又は都道府県がその損失を補償することにはなっていない、というのが騒がれているポイント。

これとは逆に、補償されるものもあるんだよね。
それは、医療のように供するために土地や建物を使わせてもらう場合。
原則所有者の同意を得るんだけど、同意下得られなくても強制的に使用することができる、というのが特別な措置。
例えば、今進められているのは、軽症患者を収容するためにホテルを使わせてもらう、なんていうやつだよ。
この場合は国や都道府県がそのお金を支払ってくれるのだ。
これは法律に規定されているんだよね。

というわけで、政府対策本部が「非常事態宣言」を出した後は、対象範囲に入った都道府県の特定都道府県知事が各種要請をどのように出すかがポイントになるわけ。
それによってだいぶ生活の仕方も変わってくるのだ。
東京都はすでに要請先を公表、大阪とかは週明けだって。
感染拡大を未然に防ぐのはこれからが本番。
これがうまくワークすればよいのだけど、新型インフル特措法に基づく「非常事態宣言」って今回が初だから、なんとも言えないんだよね・・・。

2020/04/04

古来よりおそろしい病気

新型コロナウイルスの世界的な流行で、改めて「肺炎」という病気に注目が集まっているのだ。
でも、実は肺炎は古くから主要な死亡原因の一つなんだよね・・・。
特に、高齢者は感染症による肺炎で亡くなるケースが多くて、医療先進国を自称する日本でも毎年相応の死者を出しているおそろしい病気なのだ。
とはいえ、いまいち「カゼ」との区別もつかないので、少し調べてみたよ。

「肺炎」は字義どおり、肺における炎症のこと。
これは「胃炎」だとか「腸炎」と同じ。
問題なのは、胃や腸のような消化器系は多少臓器の中に機能を失った部分ができても、まわりでなんとかカバーできるのに対し、肺の場合はそうはいかないということ。
十二指腸なんかは最悪全摘しても生きていけるわけだけど、肺は容量が減った分だけ肺活量が減って呼吸が苦しくなるのだ。
肝臓なんかなは見事に際していて機能回復するんだけど、肺は一度ダメになると二度と機能が戻らず、人間の代謝に不可欠なガス交換ができなくなってしまうのだ。
肺は構造的にも難しいので、再生医療でもなかなか手が出ないんだよね。
再生できるとものすごいメリットがあるんだけど。

で、「肺炎」と言う場合には、下気道より先に炎症が起きている状態。
逆に、カゼの場合は上気道までの炎症だよ。
上気道は食道と気道が分岐する喉頭まで。
口腔から声帯のあるあたりまでの炎症なので、お医者さんでのどが腫れているかどうかを確認すればわかるわけ。
下気道は食道と分かれた後、いわゆる気管に入ってから、肺の本体に至る気管支まで。
肺炎がひどくなると肺の本体である肺胞にも炎症が広がって、重篤化すると肺のガス交換機能が失われるのだ・・・。
こうなると呼吸不全になるので、人工呼吸器をつけたりすることになるよ。

「肺炎」かどうかを診断するには、まず、問診と聴診が重要なのだ。
高熱や胸の痛みがあるか、激しい咳や息切れがあるかなどの症状を問診で確認した上で、「肺炎」に特徴的な呼吸音、いわゆる喘鳴(ぜいめい)があるかどうかを聴診で確認するのだ。
肺のガス交換機能に影響が出ている場合、「ぜーぜー」とか「ひゅーひゅー」といった音が呼吸音に混じるのだ。
カゼで医者にかかったときに胸に聴診器を当てられるのはこれを確認しているわけ。

ここまでで「肺炎」の疑いが濃厚な場合は、レントゲン(胸部X線)やCTで画像を撮って肺に白い影がないかを確認したり、血液検査をして白血球が増えていないか(炎症が起きている場合の兆候)、C反応性タンパク質(CRP)の量が増えていないか(炎症が起きると増えることで知られているもの)などを確認し、下気道から肺にかけて炎症があるかないかを調べるのだ。
さらに、「肺炎」というのは炎症が起きている症状であって、原因はいろいろあるので、原因を究明する必要があるんだよね。
そこで行われるのが喀痰検査や血液抗体検査。
痰の中に最近が発見されれば細菌性なので、基本的には抗生物質で対処するのだ。
痰中に最近が確認できない場合、ウイルス性である可能性が高いので、血液中に抗体ができているかどうかで原因ウイルスを特定するよ。
インフルエンザのような抗ウイルス剤がある場合はそれで対処するんだけど、ない場合は安静にするしかないんだよね・・・。
しかも、今回の新型コロナウイルスについては、抗体検査がまだできない状況なので、PCR検査で確かめないといけないんだよね。
新型コロナウイルスと確定したとしても、対症療法以外には治療法がないんだけど、感染拡大を防ぐ観点で確認しているのだ。

抗生物質や抗ウイルス剤が使えない場合は、本人の免疫力に頼るしかないわけで、子供や高齢者がリスクが高いと言われるのはこのため。
ちなみに、細菌性のものでも耐性菌が原因菌の場合は抗生物質ではどうにもならないので怖いのだ。
喫煙のリスクは、また別で、喫煙者がもともと肺のガス交換機能が低くなってしまっているので、そこに肺炎でさらに機能が失われると致命的、ということだよ。
健常な人よりダメージの許容量が少なくなっているのだ。
RPGで言えば、HPが赤字で「瀕死」になっているような状態。
なので、普段から規則正しい生活をして免疫力を保つとともに、喫煙習慣は改めて肺機能にも万全を尽くしておくことが大事なのだ。