2025/05/03

外の血(知)を入れよ

 酒井美紀さんが不二家の社外取締役になったことが話題になったり。
フジテレビが経営改革の一環で社外取締役の人数を増やしたり。
社外取締役ブームが来ているのだ(誤)
でも、会社の経営を担う取締役でありながら「社外」ってなんか矛盾してない?
外様大名でありながら家康公の側近として辣腕を振るった藤堂高虎みたいな、的な?
というわけで、少し調べてみたのだ。

「社外取締役」というのは、会社というものの基本放棄である会社法にきちんと定められているものなのだ。
まだ会社法が商法の一部だった平成14年(2002年)の商法大改正で法的な位置づけが与えられ、平成17年(2005年)に会社法が独立してからは会社法で規定されているのだ。
なので、法律にていっがある以上、わりと簡単に調べはつくんだよね。
ただし、それが一般人にすっと理解できるかどうかが問題なだけで。

現在の定義は、平成26年(2014年)の会社法大改正で厳格化されたもので、会社法第2条第15号に5つの要件があげられているのだ。
どれも、外からの視点でその会社の経営に物申す、というコンセプトを踏まえたものだよ。

イ号「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。」
これはわかりやすくて、少なくとも10年以上その会社の「中の人」ではなかった、ということだよね。
会社とのかかわり方を網羅的に書き下しているから少しわかりづらいけど。

ロ号「その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと」
これは正直なところ頭の中に「?」が浮かんでしまうけど、やっぱり「中の人」ではなかったことを言っているんだ。
会社組織には、会社の業務を遂行する「中の人」とその業務遂行を管理・監督する立場の人がいて、前者をダメと言っているのがイ号。
「業務遂行を管理・監督する立場の人」というのが、業務を執行しない取締役(基本的には「社外取締役」)、会計参与、監査役などということで、この役割自体は10年以内に担っていたことがあってもいいんだけど、その役職に就く前の10年間は「中の人」だった場合はダメ、と言っているのだ。
つまり、3年前に一度監査役に就任した人は一次予選は突破できるんだけど、3年前からその10年前にあたる13年前までの間に「中の人」だった場合は二次予選敗退、ということなのだ。
会社の期bにもよるけど、経理部長かなんかで定年を迎え、一度退職した後に監査役で迎えられたような人を社外取締役につかせることはできないというわけなのだ。

ハ号「当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと」
これはわかりやすいね。
これまではその会社かその子会社だけを対象にしてきたけど、さかのぼって親会社から下ってくるのもダメ、ということなのだ。
フジテレビの例でいうと、親会社は持株会者のフジ・メディア・ホールディングスで、子会社がフジテレビジョン、そのフジテレビジョンの子会社(フジ・メディア・ホールディングスから見れば孫会社)が、アニメ制作などをしているデイヴィッドプロダクション(「はたらく細胞」や令和版「うる星やつら」、「炎炎ノ消防隊」などを手掛けている。)という感じ。

ニ号「当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと」
これも一瞬わかりづらいけど、兄弟会社の「中の人」もダメ、ということ。
フジテレビでいえば、産経新聞やニッポン放送の「中の人」はフジテレビの社外取締役にはなれないのだ。

ホ号「当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと」
これも少し難解だけど、「中の人」そのものじゃなくても、特に影響力のある重要な「中の人」の親族もダメ、ということなのだ。
同族経営みたいになるけど、代表取締役社長の配偶者、親兄弟は普通の取締役にはなれても、社外取締役にはなれない、ということ。

そういう意味では、会社の業務の中身はわかりつつ、直接関係してこなかった人、という難しいような、誰でもいいような感じの人を当てないといけないのが「社外取締役」なんだけど、取締役会設置会社の場合は二人以上置かないといけないので、誰かしら連れてくる必要があるのだ。
そういうわけで、財務省などの高級官僚を「天下り」で迎えてみたり、著名人を連れてきて宣伝を狙ってみたり、ということが起こるのだ。
酒井美紀さんの例は、取締役会の女性比率の向上とそのネームバリューからの起用のようだよ。

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