似て非なるポピー
4月から5月にかけて、道端でかわいらしいオレンジの花をよく見かけるのだ。
ボクは「ヒナゲシ」と認識していたのだけど、実際には「ナガミヒナゲシ」という種類らしい。
紀和得て繁殖力の高い帰化植物で、それこそ生命力が高いことで知られるぺんぺん草(ナズナ)と同じくらいどこでも見かけるのだ。
この時期は花があるから余計に目につくんだよね。
このナガミヒナゲシやヒナゲシは名前にも入っているとおり「ケシ」の仲間。
ケシと同じように、花弁が落ちた後に子房が膨らんできて果実になるんだけど、未成熟なうち、いわゆる「芥子坊主」の打開で傷をつけると白い乳液がにじみ出てくるのだ。
ケシの場合はそこに大量のモルヒネなどのあへんアルカロイドが含まれているのだ(だいたい重量比で10%くらい)。
この状態が「生あへん」で、実はこれをあぶって吸引するだけでも十分なくらいなもので、古代から利用されてきたのだ。
よい純度の高いものはここからさらに生成していって白い粉にしていくんだ。
なお、現在では、芥子坊主に午前中に傷をつけ、午後に固まった粘液をかきとって、という「へらかき」の工程は人手がかかるのであまりやられておらず、茎ごとすりつぶして化学的に麻薬成分を抽出するようになってきているらしい・・・。
ヒナゲシやナガミヒナゲシは乳液は出るけどそこに麻薬成分は入っていたのだ。
で、芥子坊主が縦長なので「ナガミ」という名前になっているよ。
大きさはピーナッツくらい。
確かに、オレンジの反が終わるとそんな「こんぼう」状のものが風に揺られているよね。
これが成熟すると中に小さい黒い種が大量にできて、風で揺れると先端に空いた穴から放出されてあたりに種をばらまく、という感じで増えていくのだ。
土壌が悪くても、多少乾燥していても生えてくるので、どんどん繁殖するし、地表部分は枯れても越年してしまうのでなかなか駆除できないやっかいものだよ。
花はきれいで、ヒナゲシなんかはフランスの国花になったり、中国では虞美人草として親しまれたりしているくらいだから。
この、よく見るナガミゲシと紛らわしいのが、同じく繁殖力の強い帰化植物のアツミゲシ。
最初に渥美半島で群生しているのが見つかったのでその名前がついているのだ。
これは白~紅~赤紫の花を咲かせるポピーの花で、花の色以外はよく似ているようなのだ。
問題は、こっちのアツミゲシには麻薬成分が含まれていて、「あへん法」により栽培が原則禁止されているものだということ。
知らないで栽培してしまう例もあるみたいだけど、問題はけっこう勝手に自生していることみたい。
繁殖力が強く、駆除も困難なので、過去に群生が発見された地域では一番見つけやすい花の咲く時期にパトロールもするそうだよ。
このアツミゲシは、通常アヘン栽培に用いられるケシよりは小型で、芥子坊主も小さいのだ。
なので、伝統的な「へらかき」の行程は大変なので、麻薬の原料として栽培されることはないんだけど、科学的に抽出する方法を使えばそこもクリアできちゃうんだよね・・・。
わざわざ栽培はしなくても、群生地を見つけたら刈り取ってそこから麻薬成分を抽出するくらいはできてしまうのだ。
ニュースで調べてもけっこう出てくるので、かなり帰化植物として広まっているんじゃないかな。
ちなみに、あへん法で禁止されているのは、麻薬原料となるケシの栽培とあへんの採取・所持等なので、きれいな花だなと思ってアツミゲシの花を摘んでくるのはOK。
それを鉢に植え替えて育てるのは×。
もちろん、そこから麻薬成分を取り出すのも×。
ニュースで取り上げられているものの多くは、ヒナゲシの群生かと思ったらアツミゲシだったので処分した、とかなので問題ないのだけど、最近の報道では、山口県の地域交流館で誤ってアツミゲシの寄せ植えを販売した、なんてのがあるので、これは違法耕一うことになるよ。
よくよく花の色に気を付けたうえで、できればその場で楽しみにとどめて持ち帰らないのが身の安全上は重要かもね。
李下に冠を正さず。
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