誇り高く腐る
ボクは家系的にもお酒が苦手なんだけど、甘いワインとかだとついくいっとやっちゃって、一気に酔いが回ったりするんだよね・・・。
そういう飲み口のお酒は危ないので牽制しているのだ。
でも、お酒を飲む人の間では、デザートワインなどの甘いお酒の需要もあるんだよね。
食前や食後に楽しんだり、方向の強いチーズと合わせたり。
そんな代表選手が貴腐ワイン。
「貴」の字はついているけど、文字どおり「腐」ったぶどうから作るからこの名前なのだ。
腐っても鯛、じゃなくて、腐敗したブドウのみを使っているんだけど、芳醇な香りと強い甘みのワインができあがるので、「貴」の字をつけているんだ。
日本語の「貴腐」はそのままの訳語だそうで、欧州でも「高貴なる腐敗」を意味する言葉で表されているとか。
見た目は、皮はしわくちゃで、表面にカビが生えているんだけど、そこから取り出した実から搾り取った果汁は、とろりとした黄金色の香り高いもので、それを発行させてワインにするのだ。
現象的には、白ワインの原料となるブドウの果皮に、灰色かび病の病原菌のボトリティス・シネレアという糸状菌(かび)が感染したもの。
このかび自体はありふれたもので、普通に葉や茎などに感染すると大変な被害になるんだけど、一度成熟したブドウのみの果皮にだけ単独で感染すると、「貴腐」という現象を引き起こすことになるのだ。
果皮の表面には、ワックスを主成分とするクラチラ層というものに覆われていて(照葉樹の葉っぱのてかりもこのクラチラ層によるもの。)、内部の水分の蒸発を防いでいるんだけど、かびの感染によりこのクラチラ層が溶かされ、水分がとんでいってしまうことになるのだ。
このために外見上ブドウの実はしわくちゃになるんだけど、その分だけ果汁は凝縮されるので、はちみつのような濃い甘さになるんだって。
天然に果汁を凝縮した感じになっているわけだね。
実はアイスワインも同じようなもので、気温が零下になった厳寒の季節に凍ったブドウの実を収穫し、凍ったまま果汁を搾るのだ。
すると、凍った氷の部分は液体の果汁と分離できるので、果汁の方は凝縮された状態になっているわけ。
これで貴腐ワインと同様、糖度の高い果汁が得られ、そこから甘いワインが作られるのだ。
ある程度ブドウを干してから作る干しぶどうワインなんていうのもあるみたいだけど、どれここれも水分を飛ばすことで、糖度の高い凝縮された果汁を使うことになっているのだ。
貴腐ワインの場合は、かびの代謝によって独特の香りがつくというおまけもあるんだけど。
ブドウ果汁は酵母によるアルコール代謝によってワインになるんだけど、アルコール濃度がある程度高くなると、酵母がアルコール(エタノール)により死滅してしまうので、いくら糖分があっても、酵母による発酵ではアルコール度数には限界があるのだ。
これはだいたいアルコール濃度で16~20%なんだけど、普通のブドウ果汁を使う場合、このくらい発酵が進むと、もうそんなに糖が残っていないので、そこまで甘くはないんだよね。
ところが、貴腐ワインなどのようにもともと糖度を高めた果汁を使っている場合、このアルコール濃度に達してもまだ糖が多く残っているので、甘みが強くなるのだ!
逆に、発酵途中でそとからアルコールを入れて発酵を止め、中の糖分を残したままにする製法もあるんだって。
そういうのは「酒精強化ワイン」といって、多くの場合はブドウ果汁を原料としたブランデーなどを加えて作るのだ。
代表選手は、スペインのシェリー酒、ポルトガルのポートワイン(ポルト酒)やマディラなんかだよ。
それにしてもい、甘いワインを作るためにいろいろ工夫をしているんだねぇ。
それだけ需要があるってことだろうけど。
日本の場合、清酒でも焼酎でも甘いお酒はないような気がするから、この辺は食習慣とかの関係もあるのかな?
脂っこいものを食べると甘いお酒がほしくなるとか。
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