時間差攻撃
海外旅行や海外の人とのウェブ会議で実感するのが時差。
こっちが昼間でも米国では夜中だったりするわけだよね。
地球が球体で自転しながら太陽の周りをまわっている、と考えるとなんとなくイメージはできるけど。
そもそも、太陽が昇っている時間を昼、沈んでいる時間を夜とするような相対的な時間設定をするからそうなるんだよね。
とはいえ、世界中が協定世界時(UTC)を使ったところで、太陽のサイクルに合わせて生活する以上は数字以上の意味はないんだよね。
世界中で完全屋内生活で太陽とは無縁に生活するとなれば話は別だけど。
キリスト教世界では世界は平面だったのでこういう概念は出てこないのだけど、古代ギリシアではすでに地球は球体で太陽の周りをまわっているというのもわかっていたので、遠隔地では太陽高度がずれることはわかっていたのだ。
でもでも、太陽高度が大きくずれる=時差があるほどの遠隔地とリアルタイムで交信する手段がないわけで。
実感も確認もできないわけだよね。
現代人だって飛行機で超高速で移動したり、電話やネットで瞬時に遠隔地とつながらない限り意識しないのだから。
で、なんとなくこの世に時差があるとわかって来たのは大航海時代。
まさに再発見なんだけど、そのきっかけはマゼランによる世界一周。
マゼラン一行は西回りで世界一周し、スペインに戻って来たのだけど、このとき、航海日誌上の日付と実際の日付に1日ずれがあったのだ。
西回りということは、マイナスの時差方向に進んでいるので。日付変更線を越えたところで1日加えないと、ということなんだけど、そもそも時差というものをまったく理解していない時代なので大混乱。
船員にしてみれば、日の出・日の入りをきちんと観測して日を数えているわけで自分たちに誤りはないと主張するけど、西に進んでいるため、日の出から次の日の出までの時間は24時間より長くなってしまっていて、単純に太陽の動きだけで日付を数えるとずれが生じるわけだ。
マゼラン一行は、まさにこの世は平面ではなく球体だから、ずっと西に進んでいけばもどってこられるはず、と考えて実行して、成功しているわけで、よくよく考えればわからなくもないけど、そもそも時差という概念がすっぽり抜け落ちていて、その最終的な調整の仕方としての日付変更線なんて思いもよらないわけだ。
とはいえ、科学的にはきちんと説明できるので、あとでよくよく思い返してみれば、航海日誌と実際の日付が1日ずれるのはまさに世界一周を成し遂げた証拠でもあるわけだよね。
1873年、つまり19世紀後半になってから出版されたジュール・ヴェルヌの「八十日間世界一周」でもこの話がトリックとして使われていて、本人たちは1日分過ぎてしまった!、と思っていたけど、東回りだったため(マゼランとは逆)、日付変更線をまたいだところで本来は1日戻すことになってちゃんと80日間で世界一周できるのだ。
マゼランの世界一周は16世紀の偉業なわけだけど、19世紀後半の小説でもそれがトリックに使われてしまうくらい多くの人は一見ぴんと来ない話ではあったのだ。
では、人々が時差を意識するようになったきっかけはなんなのか?
多くの場合、鉄道による高速の長距離移動ができるようになったこと、と言われているよ。
蒸気機関により高速の長距離移動ができる鉄道が実現したのはまさに19世紀前半ころ。
鉄道を正確に動かすうえでは時間管理が必須なんだけど、当時は太陽の南中時刻を正午とするようなローカルタイムが主流。
遠くに移動すると、出発地の時間と到着地の時間はずれてしまうのだ。
そこで「鉄道時間」という標準時の原型となるようなものが導入されたんだよね。
これにより、数時間移動した先でちょっと時間がずれているというのが実感できるようになったのだ。
ちなみに、赤道は1周約4万kmなので、1時間の時差(=経度15度差)は1,670kmくらいになるのだ。
日本くらいの緯度(35度付近)だと1,300km、北欧くらいの緯度(60度付近)では900km弱。
なので、最初に鉄道が普及した欧米だと1,000kmを超える移動だとなんか時間がずれているな、と感じられたはず。
パリ-ウィーン間がそんなものなので、確かに実感する人は出てきそうだ。
米国だと東海岸と西海岸の間で3時間時差があるから、大陸横断鉄道に乗ればかなり時差を感じたはずだよ。
で、飛行機の登場によりもっと時差は問題になるわけだ。
今でも不思議といえば不思議だけど、米国に行く場合は昼過ぎのフライトで出て、同日に昼すぐに到着したりするからね。
途中で日付変更線をまたいでいるので、日付が1日もどるのだ。
実際には半日移動+半日分時差でほぼまる1日分くらい時間がずれているのだけど。