これはそういうことで
第二次高市政権が始まったのだ。
全閣僚留任だけど。
で、真っ先に取り組みたいと首相が言っているのが、「働き方改革」の見直し。
サビ残の強要とか劣悪な働き方はこの世から駆逐しないといけないのだけど、厳しすぎる残業規制で人繰りが間に合わず、みたいな話が出てきているんだよね。
代表的なのが物流業界。
しかも、ここ最近は物価上昇などもあって副業する人も多く、働きたい氷魚には健康を害さない程度にもう少し残業させてあげてもよいのでは、みたいな声もあるのだ。
何事も行き過ぎはよくないから、労働者人口が減っていく将来に向けてよい妥結点が見いだせるとよいのだけど。
で、この話の中で話題になっているのは、「裁量労働制」という働き方。
本来、労働基準法では労働時間を定めていて、出退勤や休憩などをきちんと時間管理することを求めるとともに、残業についても上限を設けているのだ。
だけど、必ずしもそういう働き方にそぐわない職種もある、ということで導入されているのが「みなし労働時間制」というもの。
労働基準法の第38条の2から第38条の4にかけて規定されているよ。
労働時間管理の難しい職種についてはあらかじめ定めれれたルールの中で一定の労働時間だけはたららいたものとみなす、というもの。
このうち、第38条の3が「裁量労働制」なのだ。
第三十八条の三 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。
一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
二 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
三 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
四 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
五 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
2 前条第三項の規定は、前項の協定について準用する。
これが条文で、具体的な職種は厚生労働省令(労働基準法施行規則)で定めることとされていて、それがこれ。
第二十四条の二の二 法第三十八条の三第一項の規定は、法第四章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用する。
2 法第三十八条の三第一項第一号の厚生労働省令で定める業務は、次のとおりとする。
一 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
二 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務
三 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十八号に規定する放送番組(以下「放送番組」という。)の制作のための取材若しくは編集の業務
四 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
五 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
六 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務
3・4 (略)
これでわかるとおり、さらに厚生労働大臣が指定できることになっているんだけど、それは厚生労働省告示で決まっているのだ。
全体像については、厚生労働省の説明資料がわかりやすいよ。
ここの1~5までは省令で具体的に規定されているもの。
6~20がそれとは別に大臣が指定しているものなのだ。
これだけ見ると、確かに働いた時間だけで管理してもあんまり意味がない業務内容かな、というものだよね。
とはいえ、これって使い方によっては危険なものなんだよね。
裁量労働制を採用する場合は、業務として「いつまでにどこまでやってほしい」という業務内容を労使間で合意する必要があるのだけど、これが偉く高い達成目標になっていると、いくら残業しても足りない、でも、みなし労働時間は一定だから給与は増えない、という状況に陥ってしまうのだ。
なので、「普通」に働いているだけではなかなか達成できないような業務を押し付けるような形で決めてしまうと、残業代なしで働かせ放題にサブスクになってしまう・・・。
これが問題視されていて、だからこそ、この「裁量労働制」を入れてよい業種は限定しているんだよね。
ここが今回の見直しで拡大されるといやだなぁ、と言っている人が多いわけ。
一方で、経団連が提唱しているように、日本でも欧米式のジョブ型雇用(職階・業務内容によって給与を決定、自動的に昇進はしない)を導入する動きもあるよね。
これはいわゆる「成果主義」に非常に相性がよいので、「裁量労働制」と組み合わせやすいのだ。
現在でもIT土方と呼ばれる孫請け、非孫請けの会社のプログラマやシステムエンジニアなんかは「裁量労働制」の対象職種なんだけど、到底守れないような締め切り、過剰ともいえるような仕様要求で「みなし労働時間」の地獄にいると言われているのだ。
それがさらに拡大というのは政権がやりたいこととは逆行しているはずだよね。
そういう悪用されるリスクを極力なくしてうまく制度設計できればよいのだけどね。
ちなみに、うちの職場ではむかし「当直制度」があったらしいけど、一般職員にやってもらうと残業ダイヤラ手当やらが必要になってしまうので、残業代を払わなくてよい管理職だけで回していたそうな。
これって労働基準法違反なのか?