2025/05/31

こまい話

 進次郎農相の機動力で、放出された備蓄米が店頭に安価に並ぶようになった。
なんだかすごいセクシー。
これを受けて、テレビなんかでは「古米のおいしい食べ方」みたいなのを特集しているよね。
古米くらいならさほど問題ないし、むしろ寿司屋さんなんかは好んで古米を使ったりするんだけど(水分含有量が少ないから寿司酢を混ぜるのに向いているらしい。)、今回の放出は古古米や古古古米といった2~3年前のお米。
テレビに出てくる(自称)専門家は、「普段であれば家畜の飼料用に回していたようなもので、臭くて食べられたものではない」とか言っているけど、進次郎大臣は報道陣の前で食べて「どれもおいしい」と言っていたね。
もともとお米のにおいが苦手な人がいるから、そういう人にはきついんだろうけど、あまり気にせずに食べられる人も多いということかな?

この古いお米の臭み、「古米臭」の主成分はヘキサナールというアルデヒド。
米ぬか中の遊離脂肪酸が酸化されることで出てくる物質で、草いきれや大豆の「青臭さ」のもとなんだそうだよ。
米ぬか中には「米油」が搾り取れるほど多くの油脂が含まれているんだけど、菜種や綿実なんかとは違い、そこに同時に脂肪分解酵素のリパーゼもたくさんあるらしいのだ。
普通は子房の形にしてエネルギーを蓄えるので、分解酵素はえんるぎーを取り出すときに出てくると思うんだけど、米ぬか中には最初から多くの分解酵素が含まれているみたい。
玄米の状態って本来は温度と水分で発芽の条件を待っている状態なわけだけど、条件が整い次第ロケットスタートでエネルギーを取り出して発芽するぞ、ということなのだろうか?
とはいえ、実際にリパーゼが多く含まれているので、玄米は保存中に脂肪が分解されて遊離脂肪酸というのが出てくるのだ。

その遊離脂肪酸のひとつがn-ヘキサン(ノルマル・ヘキサン)で、これが酸化されるとアルデヒドのヘキサナールができてくるのだ。
さらに酸化されるとカルボン酸のカプリン酸というのになるんだけど、これはヤギの臭みだって。
イメージしづらいけど。
炭素数が4~6くらいのアルデヒドやカルボン酸(C4のブチナール/酪酸、C5のペンタナール/吉草酸、C6のヘキサナール/カプリン酸)はどれも悪臭で知られているんだよね。
この悪臭の鯨飲となるカルボン酸もアルコールとエステル結合するとフルーツ系の方向成分になるから不思議。
逆に言うと、よい香りを持つものは裏腹にこういう悪臭成分も併せ持つということなのだ。


これらの物質は揮発性があるので熱をかけるととんでいくわけだけど、これは炊飯という調理方法とはいまいち相性がよくないんだよね・・・。
つまり時間をかけて加熱しながら水分を浸透させていくわけだけど、通常二をするなどしてちょっと加圧するので、この悪臭成分が焚いている最中のお米にも映ってしまうのだ。
最初にふたを開けておいてにおいを確認しながら臭くなくなったらふたをする、とか、リゾットやピラフのように先に生米を炒める、みたいなやり方だとましになるかな?
よく知られている方法に、少しお酒を入れて炊くとよい、というのがあるけど、これはアルコールが一緒に混ざっていると、共沸という現象でアルコールと揮発性のある子^る成分がまだ温度が高くない状況で先にとんでくれるのでにおい移りしない、ということみたい。
「共沸」というのは沸点が異なるもの同士が混ざっているときに分留できずに一緒に混ざったまま蒸発していく現象のことだそうだよ。

もうひとつの解決策としては、炊く前に氷を入れておく、というのがあるのだ。
こうすることで、釜(又は鍋)の中があたたまるのに時間がかかる、つまり、悪臭成分は蒸発していくけど水分はさほど蒸発していかないという温度状態がちょっと長くなるので、においが移りづらくなるみたい。
けっこう簡単な方法だよね。
もちろん、悪臭成分をとばさなくても、そこから取り除くのでもよいわけ。
活性炭で吸着してしまう、というのがスタンダードで、お米と混ぜて炊くと嫌なにおいが取れる活性炭(竹炭など)や素焼きのプレートなんかは市販されているよね。
でも、氷を入れておけばいい、とか、日本酒をちょっとたらせばいい、と言われるとそっちの方が楽なような。

というわけで、仮に放出備蓄米を食べる場合は、そんな工夫を少しするとおいしく食べられるようなのだ。
前にコメの大不作でタイ米を緊急輸入したときは、食べ方を間違えて「おいしくない」という評判になってしまったけど、その二の舞は避けないとね。
古いお米にはにおいがある、というのはあらかじめわかっていることなので、それをちょっとの工夫で回避すればよいだけなのだ。

2025/05/24

虫愛づる万博

 いよいよ開幕した大阪・関西万博。
さっそく入場者数のことが話題になっていたけど、現在の話題の中心は「虫」。
どうも虫が大量発生していて、すごいことになっているらしいのだ。
これが「いのち輝く未来社会のデザイン」かと皮肉られてもいるよね・・・。
体調の蒸しとともに生きるのが未来社会ではないはずなんだけど。

現在大発生しているのはユスリカ。
そう、川や池の近くの水辺で「蚊柱」を作っている小さい羽虫。
広義には蚊の仲間ではあるけど、成虫は口は退化していて生殖活動をするだけの存在なので、人を刺したりするわけではないのだ。
そう、ただ単に「邪魔」、「気持ち悪い」と嫌悪感を向けらるだけで、それ以上の実害はないんだよね。
いわゆる「不快害虫」というやつ。
だったらこの繁殖期間はがまんするか、というのもあるんだけど、報道で見る限りはそのレベルは超えていそうだね。
とにかく、虫、虫、虫・・・、という感じだから。

それと、もろい虫なので、手で払ったりするだけですぐ死んじゃうんだけど、そうなると、虫の体液などがつくわけで。
服についた虫を払おうものなら死骸が服にこびりつく、体液がしみる・・・。
何かされる和じゃないから我慢しろと言われても、目の前がむしだらけだからなぁ。
こういうのは一番込めるよね。
万博協会はアース製薬なんかに協力を求めているらしいけど。

このユスリカの幼虫は「赤虫」と呼ばれるもの。
釣餌に使われたり、ペットの魚の餌にしたりするやうだよね。
あの赤いうねうねしたやつが水辺にいて、それが羽化するんだけど、一匹の雌の周りに大量の雄がぐるぐる回って蚊柱を形成するのだ。
川辺とかで出くわしても気持ちの良いものではないけど、その規模がすごいことになっているみたいだからなぁ。
たまったもんじゃないね。
幼虫の住む水域が富栄養化すると大量発生するようだから、今回の万博の開催に当たって周りの水辺でそういうことがあったんだろうね。

見た目が気持ち悪いとして忌避される虫はけっこういて、便所コオロギことカマドウマとか、本当はゴキブリを食べてくれる益虫なのに見た目が怖いと言われるアシダカグモだとか。
花壇とかにいるダンゴムシも、子供の時は平気で触れたはずなのに、大人になるとちょっと気持ち悪いとか思ってしまうよね。
住宅の密閉度が上がり、住環境化都市化していくと蒸しと触れる機会が少なくなるから余計にそうなるのだ。
でも、せっそk動物ってどうしても哺乳類とは全く異なる慶太をしているから、どうしても意思の疎通ができなさそう、と感じてしまい、それが忌避間につながるんだよね。
逆に、犬や猫はなんか話していることが伝わりそうなのでそうはならないのだ。
好きでカブトムシなんかを飼っている人は心の中で会話しているかもだけど。

万博に戻るけど、今は「不快害虫」のユスリカだからまだいいとして、このまま放っておくとボウフラから蚊が湧いてくる可能性も高いよね。
そうなると実害が出るのだ。
夏になっていけば食べ残しなんかにハエがわくこともあるだろうし、万博の虫対策は今後も大変だろうなぁ。
ああいう埋立地って虫が大量発生しやすい環境なんだから、もう少し事前に対策を打てたんじゃないかとも思うけど、どうなんだろう?
跡地利用のIR(統合型リゾート)のことを考えても、虫対策は大きな課題だよね。
ここで日本の虫対策の技術力を見せるのもありだ。

2025/05/17

百聞が一見を超える

 ネットのニュースで見たのだけど、総務省が実施した委託調査で、ネットで目にした情報をそのまま信じやすい人が半数に上る、という衝撃的な結果が出たのだ。
かつ、その情報を家族や友人と会話したり、SNSで拡散した人は25%程度とか。
こりゃあ、ネットを中心に陰謀論がはびこるわけだ。
全部DSがうらであやつっているギフハブが悪い!

ネットのない時代からうわさが広まる波佐谷というのは想像する以上のもので、悪事千里を走るじゃないけど、過去の調査で「口裂け女」の噂の広がりを計測すると、時速100kmの速さで伝播していっている、なんてのがあったんだよね。
で、こういうのは、本当らしいものより、むしろ、えっそんなことが、適菜八の方が広まるんだよね。
それは当たり前で、誰もがそうだよね、とすぐに納得できるような話にはバリューがないから口の端に上らないのだ。
その内容が衝撃的だったり、サプライズがある方が話題にするよね。
でも、口裂け女の話は子供を中心に広まるのであって大人はまともにはとりあわなかったのだ。
それは面白い話ではあるけど嘘っぽいとすぐに見抜けるから。
でも、子供は信じやすいので広めてしまう・・・。
そういう構図だったはずなんだよね。

ところが、先の調査でいうと、大人であってもフェイクニュースに騙されやすい、ということが浮き彫りになったんだよね。
情報の中身として完全に荒唐無稽と切って捨てられるような「口裂け女」の噂とは違い、もう少し「信じられないけどそう言われるとそんな気がする」的なものだろうから大人が全く信じないわけじゃないだろうけど、問題はそれよりも「ネットの情報」というのがミソだと思うのだ。
会話で話題にする場合、その情報を口に出すときに、本気で信じているのか、半信半疑なのか、デマだと話あったうえで話しているのか、などは明言しなくてもニュアンスでにじみ出てくるよね。
ネットの場合もメールとして転送するとか、ブログを書く、生地にコメントをつける場合はそうなんだけど、X(旧ツイッター)のリツイートみたいな機能の場合は、単純に情報をっ買う産するだけなんだよね。
ボタンをぽちっとするだけで。
なんでその情報を拡散しようと思ったのか本当の意図は読めないのだ。
もちろん、コメント付きで囲繞したうえでポストしてもよいのだけど。

リツイートの場合、その情報がそのままフォロワーのタイムラインに流れていき、拡散されていくんだよね。
で、ここでさらに問題なのが、多くの人は趣味・趣向・主張に従ってSNSをフォローするので、もともと似たような考え方を持つ人にバイアスがかかってコミュニティが形成されているということ。
すなわち、同じ内容の情報に興味を持つ可能性が高く、かる、同じようにリツイートする可能性も高いのだ。
そうなると、自分のSNSのタイムラインには複数のルートで同じ情報が流れていくことになるんだよね。
もともフォロー・フォロワーの関係はかなりバイアスがかかったコミュニティではあるんだけど、人間は自分を基準において物事を考えがちなので、「広くせけにっぱんの人がその情報を支持している」と誤認しがちなのだ。
実際は似たようなことを考えている集団の中での一過性のブームみたいなものなんだけど、コミュニティ内でその情報が拡大再生産されていくなかで、それが真実に思えてきてしまうのだ。
そう、いわゆる「エコーチェンバー」になってしまうのだ。

ネットではやっている陰謀論の多くは、冷静に考えれば「そんなことないだろ」という荒唐無稽なものではあるんだけど、ある種の願望であったり、現実逃避的な感情とかみ合ってしまうと、「信じたくなってしまう情報」になるんだよね。
古来より、人間は自分の認識の限界を超えた事象をものすごく恐れる傾向があって、無理やりにでもこじつけて理解しようとするのだ。
それが雷は雷神が太鼓をたたいて落とすものだ、とか、貧乏神に取りつかれて落ちぶれた、とかそういう続伸なわけ。
それと同じように、自分では理解不能なことを自分でも受け入れ可能な、かつ、他責的なこじつけをしてくれるようなトンデモ論には一定の魅力があって、無意識化には「それにのっかりたい」という願望があるのだ。
そういう状況下で、SNSで何度もそのトンデモ論が流れてきて目にするようになると、「一見信じられないような話だが、これだけ多くの人がその情報を拡散しているのならば、これは真実なのではないか」と思い込んでしまうんだよね。
こうなるともうあとは転げ落ちていくだけ。
ほぼ自己暗示の世界だけど。

最近は「コミュニティノート」機能があるので、善意の第三者から冷静なツッコミがはいることもあるけど、SNS情報が容易に拡散すること、かつ、同じような思想を持つ集団の中でエコーチェンバーになりやすいことは、ネットで陰謀論が広まる重要な要因だと思うんだよね。
なので、ネットの情報とはそういう性質を持っているものだと理解したうえで、適切に一定の距離を置いて受け止める必要があるのだ。
とはいえ、ボクもこの調査の話はニュースで見ただけで原本(一次ソース)には当たっていないので、すでに誤情報に踊らされているおそれはあるのだけど・・・。

2025/05/10

似て非なるポピー

 4月から5月にかけて、道端でかわいらしいオレンジの花をよく見かけるのだ。
ボクは「ヒナゲシ」と認識していたのだけど、実際には「ナガミヒナゲシ」という種類らしい。
紀和得て繁殖力の高い帰化植物で、それこそ生命力が高いことで知られるぺんぺん草(ナズナ)と同じくらいどこでも見かけるのだ。
この時期は花があるから余計に目につくんだよね。

このナガミヒナゲシやヒナゲシは名前にも入っているとおり「ケシ」の仲間。
ケシと同じように、花弁が落ちた後に子房が膨らんできて果実になるんだけど、未成熟なうち、いわゆる「芥子坊主」の打開で傷をつけると白い乳液がにじみ出てくるのだ。
ケシの場合はそこに大量のモルヒネなどのあへんアルカロイドが含まれているのだ(だいたい重量比で10%くらい)。
この状態が「生あへん」で、実はこれをあぶって吸引するだけでも十分なくらいなもので、古代から利用されてきたのだ。
よい純度の高いものはここからさらに生成していって白い粉にしていくんだ。
なお、現在では、芥子坊主に午前中に傷をつけ、午後に固まった粘液をかきとって、という「へらかき」の工程は人手がかかるのであまりやられておらず、茎ごとすりつぶして化学的に麻薬成分を抽出するようになってきているらしい・・・。

ヒナゲシやナガミヒナゲシは乳液は出るけどそこに麻薬成分は入っていたのだ。
で、芥子坊主が縦長なので「ナガミ」という名前になっているよ。
大きさはピーナッツくらい。
確かに、オレンジの反が終わるとそんな「こんぼう」状のものが風に揺られているよね。
これが成熟すると中に小さい黒い種が大量にできて、風で揺れると先端に空いた穴から放出されてあたりに種をばらまく、という感じで増えていくのだ。
土壌が悪くても、多少乾燥していても生えてくるので、どんどん繁殖するし、地表部分は枯れても越年してしまうのでなかなか駆除できないやっかいものだよ。
花はきれいで、ヒナゲシなんかはフランスの国花になったり、中国では虞美人草として親しまれたりしているくらいだから。

この、よく見るナガミゲシと紛らわしいのが、同じく繁殖力の強い帰化植物のアツミゲシ。
最初に渥美半島で群生しているのが見つかったのでその名前がついているのだ。
これは白~紅~赤紫の花を咲かせるポピーの花で、花の色以外はよく似ているようなのだ。
問題は、こっちのアツミゲシには麻薬成分が含まれていて、「あへん法」により栽培が原則禁止されているものだということ。
知らないで栽培してしまう例もあるみたいだけど、問題はけっこう勝手に自生していることみたい。
繁殖力が強く、駆除も困難なので、過去に群生が発見された地域では一番見つけやすい花の咲く時期にパトロールもするそうだよ。

このアツミゲシは、通常アヘン栽培に用いられるケシよりは小型で、芥子坊主も小さいのだ。
なので、伝統的な「へらかき」の行程は大変なので、麻薬の原料として栽培されることはないんだけど、科学的に抽出する方法を使えばそこもクリアできちゃうんだよね・・・。
わざわざ栽培はしなくても、群生地を見つけたら刈り取ってそこから麻薬成分を抽出するくらいはできてしまうのだ。
ニュースで調べてもけっこう出てくるので、かなり帰化植物として広まっているんじゃないかな。

ちなみに、あへん法で禁止されているのは、麻薬原料となるケシの栽培とあへんの採取・所持等なので、きれいな花だなと思ってアツミゲシの花を摘んでくるのはOK。
それを鉢に植え替えて育てるのは×。
もちろん、そこから麻薬成分を取り出すのも×。
ニュースで取り上げられているものの多くは、ヒナゲシの群生かと思ったらアツミゲシだったので処分した、とかなので問題ないのだけど、最近の報道では、山口県の地域交流館で誤ってアツミゲシの寄せ植えを販売した、なんてのがあるので、これは違法耕一うことになるよ。
よくよく花の色に気を付けたうえで、できればその場で楽しみにとどめて持ち帰らないのが身の安全上は重要かもね。
李下に冠を正さず。

2025/05/03

外の血(知)を入れよ

 酒井美紀さんが不二家の社外取締役になったことが話題になったり。
フジテレビが経営改革の一環で社外取締役の人数を増やしたり。
社外取締役ブームが来ているのだ(誤)
でも、会社の経営を担う取締役でありながら「社外」ってなんか矛盾してない?
外様大名でありながら家康公の側近として辣腕を振るった藤堂高虎みたいな、的な?
というわけで、少し調べてみたのだ。

「社外取締役」というのは、会社というものの基本放棄である会社法にきちんと定められているものなのだ。
まだ会社法が商法の一部だった平成14年(2002年)の商法大改正で法的な位置づけが与えられ、平成17年(2005年)に会社法が独立してからは会社法で規定されているのだ。
なので、法律にていっがある以上、わりと簡単に調べはつくんだよね。
ただし、それが一般人にすっと理解できるかどうかが問題なだけで。

現在の定義は、平成26年(2014年)の会社法大改正で厳格化されたもので、会社法第2条第15号に5つの要件があげられているのだ。
どれも、外からの視点でその会社の経営に物申す、というコンセプトを踏まえたものだよ。

イ号「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。」
これはわかりやすくて、少なくとも10年以上その会社の「中の人」ではなかった、ということだよね。
会社とのかかわり方を網羅的に書き下しているから少しわかりづらいけど。

ロ号「その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと」
これは正直なところ頭の中に「?」が浮かんでしまうけど、やっぱり「中の人」ではなかったことを言っているんだ。
会社組織には、会社の業務を遂行する「中の人」とその業務遂行を管理・監督する立場の人がいて、前者をダメと言っているのがイ号。
「業務遂行を管理・監督する立場の人」というのが、業務を執行しない取締役(基本的には「社外取締役」)、会計参与、監査役などということで、この役割自体は10年以内に担っていたことがあってもいいんだけど、その役職に就く前の10年間は「中の人」だった場合はダメ、と言っているのだ。
つまり、3年前に一度監査役に就任した人は一次予選は突破できるんだけど、3年前からその10年前にあたる13年前までの間に「中の人」だった場合は二次予選敗退、ということなのだ。
会社の期bにもよるけど、経理部長かなんかで定年を迎え、一度退職した後に監査役で迎えられたような人を社外取締役につかせることはできないというわけなのだ。

ハ号「当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと」
これはわかりやすいね。
これまではその会社かその子会社だけを対象にしてきたけど、さかのぼって親会社から下ってくるのもダメ、ということなのだ。
フジテレビの例でいうと、親会社は持株会者のフジ・メディア・ホールディングスで、子会社がフジテレビジョン、そのフジテレビジョンの子会社(フジ・メディア・ホールディングスから見れば孫会社)が、アニメ制作などをしているデイヴィッドプロダクション(「はたらく細胞」や令和版「うる星やつら」、「炎炎ノ消防隊」などを手掛けている。)という感じ。

ニ号「当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと」
これも一瞬わかりづらいけど、兄弟会社の「中の人」もダメ、ということ。
フジテレビでいえば、産経新聞やニッポン放送の「中の人」はフジテレビの社外取締役にはなれないのだ。

ホ号「当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと」
これも少し難解だけど、「中の人」そのものじゃなくても、特に影響力のある重要な「中の人」の親族もダメ、ということなのだ。
同族経営みたいになるけど、代表取締役社長の配偶者、親兄弟は普通の取締役にはなれても、社外取締役にはなれない、ということ。

そういう意味では、会社の業務の中身はわかりつつ、直接関係してこなかった人、という難しいような、誰でもいいような感じの人を当てないといけないのが「社外取締役」なんだけど、取締役会設置会社の場合は二人以上置かないといけないので、誰かしら連れてくる必要があるのだ。
そういうわけで、財務省などの高級官僚を「天下り」で迎えてみたり、著名人を連れてきて宣伝を狙ってみたり、ということが起こるのだ。
酒井美紀さんの例は、取締役会の女性比率の向上とそのネームバリューからの起用のようだよ。