2010/07/17

いかろす君もびっくり?

先日、ソーラーセイルを使って金星に向けて航行中の小型ソーラー電力セイル実証機(IKAROS)がガンマ線バーストを観測したのだ。
これは太陽よりもはるかに質量が大きな恒星が爆発してブラックホールになる際に放出されると考えられている放射線で、うまく観測できれば、更なる宇宙の謎の解明につながるんだとか。
で、このニュースを聞いて思い出したのが、ガンマ線とX線の違い。
両方とも波長がとても短い電磁波なんだけど、いまいち違いがよくわからないんだよね。
というわけで、改めて調べてみたよ。

ガンマ線は放射線の一種で、ヘリウム4の原子核のアルファ線、電子のベータ線に続いて見つかったもので、正体は原子核崩壊に伴い出てくる波長の短い電磁波だったのだ。
これは原子核内のエネルギー準位の遷移によるもので、アルファ崩壊で原子番号が小さくなったり、ベータ崩壊で陽子と中性子の比率が変わったりした後、原子核内に残っている余分なエネルギーが電磁波として放射されるものなんだって。
ま、意味不明だよね(笑)
ガンマ線は電磁波だけに放射線の中でも一番遮蔽がしづらくて、完全に遮蔽するには10cm以上の鉛の板がいるのだ。
アルファ線なら紙1枚で遮蔽できるし、ベータ線なら1cmのアクリル板で遮蔽ができるので大きな違いなのだ!
電離作用は弱いけど、透過力が高いのでめんどくさいんだよね。

一方、X線は高速の電子が金属などのターゲットに当たったときに発生する電磁波で、軌道電子の遷移に由来するものなのだ。
一番外側のエネルギーの低い軌道の電子がはじき飛ばされ、そこによりエネルギーの高い軌道にいる電子が落ちてくるとき、エネルギーの差分が電磁波として放出されるわけ。
電磁波を当てて励起した後に基底状態にもどるときのエネルギー準位の遷移で発生するものは相対的にエネルギーの差分が小さいので可視光領域になって、それは「蛍光」と呼ばれているのだ。
外から高速電子を当てたり、X線くらいのエネルギーの大きな電磁波を当てたりする場合はエネルギーの差分が大きくなって、波長の短いX線が出てくるのだ(X線を照射したときに出てくるX線は蛍光X線と呼ばれるよ。)。
このとき出るX線(蛍光X線を含む。)は原子核の種類ごとに波長が決まっているんだけど、特性X線と呼ばれ、未知の物質の同定にも使われるんだよ。
「はやぶさ」のカプセル内で採取された微粒子が小惑星イトカワ由来のものかどうかを確認する際にも蛍光X線分析が使われるみたい。

ちなみに、放射線の遮蔽というとすぐに鉛板が思い浮かぶけど、ベータ線がなまり板に当たるとX線が出てしまうので、先にアクリル板で遮蔽しておく必要があるのだ。
放射線防護をする場合(?)には、まずアクリル板、その次に鉛板の順だよ!
間違えるとガンマ線は遮蔽していても、新たにX線が発生していて被爆してしまうのだ(>_<)

X線の発見者はご存じドイツのレントゲン博士で、その功績でノーベル賞をとったのだ。
未知の電磁波と言うことで「X]線と名付けたんだって。
で、調べてみると波長の短い電磁波だったわけだけど、さらに調べてみると、実はガンマ線と波長領域が重複していたのだ!
これが混乱のもとで、発生機構の違いで定義しているので、電磁波の波長だけを調べてもどっちがどっちかは区別できないんだよね。
ただし、X線よりさらに波長が短いものを便宜的にガンマ線と呼ぶこともあるようなのだ。
こういうことをするから混乱に拍車がかかるんだけど・・・。

X線はレントゲン写真に使われるほか、いわゆる非破壊検査や結晶解析なんかに使われるのだ。
このときは金属製のターゲットに電子線を当てるX線源が使われているんだよね。
ガンマ線の場合は、放射性同位体のコバルトから放射されるものがガンマ線滅菌や放射線医療、放射線育種(放射線を照射して行う品種改良)などに使われるんだ。
工業的なX線写真と呼ばれるものの中にはガンマ線を当てて撮影されているものもあるようだよ(笑)

というわけで、どっちも波長の短い電磁波なわけだけど、出自も違うのできっちり区別してあげたいものなのだ。
他の電磁波の場合は波長又は周波数で一義的に定義されるからややこしいんだよね。
いっそのこと、波長領域で区別するときは「第三の名前」をつけてしまった方がすっきりするのかも。

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