2011/08/27

もちもちとしこしこ

暑い日にはつるつるっと食べられる麺類がありがたいよねぇ。
朝夜ともにお世話になっているのだm(_ _)m
朝は主に乾麺のそうめんやそばが多いんだけど、夜は讃岐うどん♪
しこしこもちもちのコシのある太麺が最高だよね!
ボクはもっぱら釜揚げがもっちりしていて好きなのだ。

で、このうどんのコシ、タンパク質のグルテンによるものなんだけど、小麦粉を使った麺類では共通なんだよね。
もともと小麦粉の中にはグリアジングルテニンというタンパク質が含まれていて、これがグルテンに変化すると麺類のコシが出てくるのだ。
うどんなどの麺類の生地をこねるときには必ず水と一緒に塩を入れるんだけど、これがポイント。
もともとグリアジンもグルテニンも比較的低分子のタンパク質で、これが塩の存在下で見ずと一緒に練ると、システインのチオール基(-SH)の間でジスルフィド結合(-S-S-)ができることで、三次元的な網目構造ができるのだ。
それがデンプンと水を抱え込んだのが「麺」だよ。

グリアジンもグルテニンも水溶性タンパク質で、小麦粉を水にさらすだけだと表面の親水基のまわりに水の分子が水素結合で水和して分散するのだ。
小麦粉を水で溶くとさらさらだよね。
でも、そこに塩を入れると、タンパク質のまわりに水和していた水分子がナトリウムイオン(Na+)や塩化物イオン(Cl-)に取られるので、タンパク質同士がお互いに密着するようになるのだ。
そこに「練る」という作業で外から力を加えてあげると、グリアジンとグルテニンの表面に出ているシステインのチオール基の間で化学反応が起こって、ジスルフィド結合でつながるわけ。
そうして重合してできた大きな網目状のタンパク質がグルテンなのだ。
塩がなくてもある程度練ることはできるけど、グルテンの網目構造が大きくならないのだ(>o<)
ちなみに、タンパク質が多すぎると麺が固くなるので、うどん粉は主に中力粉だよね。

うどんなんかは練った後に寝かせたりするけど、それはグルテンをより大きくするためなんだよね。
グルテンの重合度が高ければ高いほど強いコシになるのだ!
ゆっくりと重合反応が起きるのを待つわけ。
このグルテンは液性がアルカリに傾くとよりできやすくなるので、中華麺だとかん水を入れるんだよね。
すると、よりコシが出てくるし、麺の色も黄色くなるのだ。
ちなみに、このグルテンだけを取りだして乾燥させたのがお麩だよ。
練った小麦粉を水にさらしてデンプンを洗い流すのだ。
お麩の網目状構造がまさにグルテンの三次元ネットワークということだね。

麺は打っただけではだめで、必ずゆでるよね。
これはデンプンを糊化(α化)するため。
もともとデンプンはブドウ糖が重合した高分子で、長い螺旋状にブドウ糖がつながった直鎖に分枝として短いブドウ糖の直鎖が出ている構造を取っているんだ。
安定的な結晶構造だと、この枝分かれした部分は水素結合によってきれいにたたまれている状態なんだけど、熱を加えてやるとその水素結合が切れて枝が広がるのだ。
まさに使い古したほうきのようになるわけ。
で、この広がった枝の間に水が入り込んで膨潤すると、ゲル状になるんだよね。
小麦粉を溶いた水に熱を加えるととろみが出るのはこのためだよ。

で、麺の状態でも同じで、グルテンに抱え込まれたデンプンに熱が加わると糊化してゲル状になるのだ。
この状態が麺がゆであがった状態。
あんまりゆですぎると水を吸いすぎてコシがなくなるけど、適度に水を吸った状態では、グルテンの編み目がとろみを帯びたデンプンを抱え込んでいい感じになるんだ。
この状態ですぐ食べるのがいわゆる「釜揚げ」の状態。
この状態ではグルテンの網目構造は比較的ゆるく、デンプンのとろみが目立つので、もちもちした食感になるんだ。

これを冷水でしめると、グルテンの網目構造がかしっときつくなって、麺表面のとろっとしたデンプンは再び結晶化して固い構造になるので、しこしことした食感が生まれるのだ。
これがざるうどんなどで食べる状態。
温うどんにするときはもう一度麺の表面を温めるのが本来のゆで方だよ。
温うどんは二度ゆでるのだ。
ただし、冷え切ってしまうと、グルテンに抱え込まれたデンプンのとろみが失われ、固くぼろぼろ、ぼそぼそになるんだよね。
これが古いゆで麺が「のびた」状態。

一般にゆで麺で売られているのがこの状態で、再び湯がくことでデンプンの糊化が復活し、うどんの食感になるのだ。
焼きうどんにする場合でも、一度湯がいてから使うのはこのためだよ。
ゆで麺をそのまま炒めてもぼそぼそしておいしくないのだ(ToT)
一方、冷凍麺は実は釜揚げの状態で急速冷凍しているんだよね。
ただし、冷凍すると水分が凍結するときに体積が増えて、せっかくのデンプンの高次構造が破壊されて弾力が弱くなることがあるのだ。
そこで、破壊されにくいタピオカなどのデンプンが混ぜられているんだって。

というわけで、うどんなどの麺類のもちもち感としこしこ感はタンパク質とデンプンの重合・変性によるものだったのだ。
現在おいしい既製品うどんがあるのも、こうやって化学的にうどんが解明されたおかげなんだよね。
でも、先人はそれを経験の積み重ねで改良してきたんだから、もっとすごいよね。
よく讃岐うどんなんてものが生まれたと思うよ。

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