赤い惑星を捜索せよ
8月6日に米国の火星探査ミッション「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL)」のローバー「キュリオシティ」が無事に火星表面に軟着陸したのだ!
今回は中継なんかもあって、宇宙大好きな米国人は大興奮。
日本でもそれなりに報道されていたよね。
火星に生物の痕跡を見つける、という重要な任務を持っているのだ。
火星探査車といえば、今でも稼働しているオポチュニティが有名だよね。
これは双子の探査車で、「マーズ・エクスプロレーション・ローバー(MER)」というミッションで、1ヶ月弱を挟んで二つの探査車を送り込んだ計画の片割れなのだ。
火星の離れた場所に二つのローバーを下ろして、広範囲を探索しようというものだよ。
相方のスプリットも実は長持ちで、2010年1月までは元気に動き回っていて、その後動けなくなってから2011年4月にミッション終了が宣言されたんだ。
史上もっとも長く稼働し続けた惑星探査車じゃないかな?
何より、丈夫に作っているよね。
今回のキュリオシティにもそれくらいの活躍をしてほしいし、できれば、2台が出会うなんてのも夢があるよね(笑)
人類による火星探査の歴史は古くて、1960年の冷戦下で米ソによる宇宙開発競争が活発化している時代、付の次の目標として設定されたのが火星だったのだ。
ソ連も1970年代前半までに何機も探査機を送っているんだけど、たどり着けなかったり、探査車が着陸してもすぐに通信途絶になったりとうまくいかなかったのだ・・・。
その後も何度かトライしているけど、やはり運がないのかうまくいかないのだ(>o<)
月の探査も地球からは見えない裏側の探査がメインだし、このあたりではどうしても米国の一人勝ちなんだよね。
一方、米国は1960年代中盤から惑星探査を本格化し(ちょうど有人月面探査が軌道に乗り始めたところだから、次の目標ということだろうね。)、マリナー計画が始まったのだ。
マリナー計画は地球のおとなりの惑星を探査する計画で、金星と火星が対象なんだ。
最終的には太陽系外に出て行くボイジャー計画につながったんだよ。
このマリナー計画の3号・4号、6号~9号が火星探査に当てられているんだけど、最初の3号は失敗するものの、4号は火星の近傍(それでも9600km地点)を通過して、接近撮影に成功しているのだ。
さらに、5号・6号は3550kmまで近づき、表面写真を撮ることに成功したんだ。
8号の打上げ失敗をはさみ、9号では初めて火星の周回軌道へ入れることに成功し、火星表面の約70%を撮影したのだ。
これが1971年のできごとで、有人月面探査のアポロ計画ももう終盤にさしかかっているころだね。
で、この周回探査の成功を踏まえ、今度は火星表面へ探査機を送ろう、ということになったのだ。
その最初がバイキング計画。
小型の探査車(ランダー)をパラシュートと逆噴射ロケットで火星表面に軟着陸ことに成功し、世界で初めて火星表面の鮮明な写真を送ってきたのだ!
バイキングは1号も2号も1976年に軟着陸してから5年間ほど活躍したのだ。
火星の周回軌道に残ったオービターもトンデモ系で有名な「火星の人面岩」の写真を撮っているよね。
これは大成功を収めた探査だったのだ。
その後しばらくはスペースシャトルの開発に集中していたので火星探査はとぎれるんだけど、1990年代に再開。
火星探査の場合、地球と惑星の公転周期の違いから780日(約2.135年)の間隔で打上げの良タイミング’少ないエネルギーで火星に到達できるタイミング)が訪れるんだ。
ここからNASAは本気になって、このタイミングごとに火星ミッションを送ろうと計画することになるよ。
国際宇宙ステーションは着々と進んでいったけど、やはり地球の重力圏外に出たいという欲求が強いんだろうね。
ところが、1992年打上げのマーズ・オブザーバーは失敗orz
それを挽回したのは1996年に打ち上げられたマーズ・グローバル・サーベイヤーで、翌年に火星に到達し、詳細な地図の作成に成功したのだ。
これと対となる火星探査車ミッションもあるのだ。
マーズ・グローバル・サーベイヤーの1ヶ月遅れで、けっこう有名なマーズ・パス・ファインダーが打ち上げられ、なぜかマーズ・グローバル・サーベイヤーより4ヶ月早く火星に到達し、ローバーを軟着陸させたんだよね。
マーズ・グローバル・サーベイヤーはきれいに周回軌道に入れる必要があるけど、こっちはローバーを届けるだけだからかな?
マーズ・パス・ファインダーが有名になったのは、パラシュートとロケット噴射で減速した後、エアバッグをふくらませて火星表面で弾ませて衝撃を抑える、という着陸方法だよね。
すごいことを考えるものなのだ。
ローバーは1ヶ月程度の寿命の小型のもの(10.6kgと大きなラジコンくらい!)で、けっきょく3ヶ月弱にわたって探査したのだ。
火星にかつて水が存在した証拠を発見したことが功績だよ。
ちょうどこのころのNASAの長官はゴールディンさんで、「Faster, Better, Cheaper」の方針を提示し、バイキング計画の1/5の資金で、3年という短い開発期間で達成されたミッションだよ。
この成果をもとに、今度はもっと大きな探査車を送って大々的に探査しよう♪、と出てきたのが先ほどのスピリットとオポチュニティ。
その前にも1回探査機を送っているんだけど、それは着陸に失敗しているんだ・・・。
で、このスピリットとオポチュニティでもエアバッグ方式を採用。
今でも動いているオポチュニティは平坦な場所でなく、クレーターの中心付近に着陸したんだけど、なんとか抜け出したんだ。
着陸したときは「ホールインワン」とか言って喜んで、そのクレーターを「イーグルクレーター」なんて名付けたらしいけど・・・。
これらは火星の広範囲にわたって土壌と岩石の分析をし、火星に水があった証拠集めをしていたのだ。
今では火星に水が存在したことはほぼ定説なんだけど、液体の状態で水があったかどうかが焦点なんだよね。
地球型生命の場合、液体の水が存在することが重要なので。
そして、さらに大型の分析を行うべき開発されたのがマーズ・サイエンス・ラボラトリー。
名前が示すとおり、火星の表面で岩石や土砂をすくい、そのままそれをサンプルとして科学分析をしてしまおうという計画。
探査車のクリオシティも巨大で900kgくらいあるのだ(スピリットとオポチュニティは174kgなので約5倍!)。
軽自動車ほどの大きさかな?
過去と現在の火星で地球型生命が保持できるかどうかを確かめるのがミッションの目的なのだ。
コスト超過、計画遅延で打上げが危ぶまれたけど、去年の11月に打ち上げられ、つい先日ローバーが火星に降り立ったのだ。
さすがにこの大きさだとエアバッグは無理なので、パラシュートと逆噴射で軟着陸するんだけど、探査車を火星表面に送り届ける機構がまた複雑なんだ。
はやぶさで使われたような耐熱シールドのエアロシェルの中に入って火星の大気圏に突入。
その後パラシュートを開いて耐熱シールドを分離するのだ。
さらに、ローバー自体が逆噴射するんじゃなくて、逆噴射する降下ステージというのがあって、ローバーはそこにクレーンでぶら下げられているんだよ。
地表すれすれまできたところでクレーンからローバーを分離、降下ステージはそのまま逆噴射して別のところまで行ってから落ちるので、ローバーを傷つけないのだ!
よくこんなのを成功させたものだよ。
でも、これはいわばやっと目的地にたどり着いたところ。
ここから1火星年(約2.2年)は探査をすることになるのだ。
今度はどんな成果が出るのかな?
楽しみだよね。
0 件のコメント:
コメントを投稿