2024/05/11

この思い届けて!

 大型連休明けと言えば、会社や学校に行きたくなくてゆううつな気分になりがち。
まさにそれが社会現象として表れているようなのだ。
それは・・・。
退職代行の盛況。
テレビのニュースでも取り上げるほどなのだ。

民間事業者のやっている退職代行サービスは、基本的には「〇〇さんが退職したいとの意向をお持ちです」と会社などの雇用側にお伝えするだけ。
それ以上でもそれ以下でもないのだ。
自分で言い出しにくい人向けのサービス。
気を付けないといけないのは、退職する前に残っている有休を使いきりたいとか、業務上の引継ぎをどうしたいとかの退職に当たっての雇用者・被雇用者間のやりとりは仲介できないということ。
「有休を使いきって〇月×日付で退職されたい意向です」とか「業務の引継ぎについては整理してある書類や電子ファイルを見てもらえばわかります」みたいなのを伝言するところまではできるけど、間を取り持って調整はできなのだ。
なぜなら、それは雇用者・被雇用者間の労働契約上の権利・義務に関することで、本来的には弁護士資格がないと代理人となれないから。
つまり、そこまでやってしまうと「非弁行為」になるのだ。

なので、けっきょくその手の手続きは自分でやるか、別途弁護士に依頼することになるよ。
ま、直属の上司には話しにくいけど、事務的なやりとりを会社の人とするのはOKみたいなこともあるだろうから、それはそれでよいのかもだけど。
それにしても、そういうサービスがそこまではやるとは・・・。
実際にはもう少しいろいろ手続きをしてもらえると思って頼んでいる人もいるとは思うけどね。
まずは有無を言わせず雇用者に退職の意向を伝えたい、ということに特化したサービスになっているのだ。

退職代行というと、ブラック体質の企業に勤めていて、やめたいと思っても退職届・辞職願を受け取ってもらえないとか、ここでやめたら損害賠償政協すると脅されるとか、そういう辞めたいのにやめられない人が使うのかと思うよね。
でも、実際にはそういうケースの場合は、退職代行サービスに依頼するだけでは解決しないのだ。
お金はかかるけど弁護士に丸投げするというのもあるし、雇用者側とある程度戦う意向があるなら、労働基準監督署や労働組合と相談して自分で交渉するということをしないとだめなんだ。
そこまでしようとする人はなかなかいないのだけど。

では、どういう層がこのサービスを使っているのか?
テレビのニュースによると、150件近い申し込みのうち、30件ほどが新卒者らしい。
つまり、働き始めて1か月程度の人。
むかしは3年はこらえないと、なんてことを言われたものだけど、最近は合わないと思ったらスパッとやめるのだそうで。
確かに、病んでしまう前に違和感を感じたところで「損切り」ができるのが理想的だけど、ちょっと前までは前の職場を数か月でやめてる、なんてのが職歴として残っているとなかなか再就職できなかったりするんだよね。
それこそ、新卒一括採用の終身雇用制が一般的な会社だと特に。
でも、現在はそういう雇用状況も変化してきているのだ。

まだまだジョブ型雇用は採用されていないけど、現在は慢性的な人で不足で「売り手市場」なんだよね。
しかも、能力が高い人だけが引く手あまた、というのではなく、普通程度の能力であってもとにかく人手が不足しているから来てほしい、というくらい。
政府が一生懸命「第二新卒」なんて概念を広めようとしてもうまくいかなかったけど、今となってはある程度以上の能力のある(というか、足を引っ張ることなく一応の戦力にはなる)人材であれば、いつでも来てほしい、という企業が多くなっているのだ。
そうなると、昔はまさに「折り紙付き」の扱いだった「新卒カード」の意向は低下していて、前の職場をすぐにやめていても問題なさそうなら雇いたい、と考える企業が出てきているので、再就職するのに不利にならない状況なんだよね。
確かに一定数の「やばい」人がいるのは確実だけど、一方で、「やばい」会社がいまだに存在しているのも事実なわけで・・・。

つい先月の報道でも、チュールでおなじみの企業で新卒者が大量離職、というニュースがあったけど、あれは詳細が明かるになればなるほど企業側が「やばい」よね。
なので、そういうところでこらえて勤めるのではなく、早々に見切りをつけて次の就職先を探す、というのはある意味「見る目がある」人材でもあるのだ。
ただし、ジョブ型雇用でキャリアアップのために転職を繰り返す、というのでもなく、なんとなく合わないから、という理由ですぐに転職しようとする人も含まれるだろうから、雇う側もその人の人となりを見ておかないと危ないんだよね。
どうしても働き始めはスキル習得のために一定のコストがかかるわけで。
やっと戦力になると思った矢先にまた転職されてしまうと大変だから。

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