2024/05/25

最期はどちらか

 俳優の中尾彬さんの訃報が流れたのだ。
前に一度大きな病気をしてからかなり仕事はセーブしていたらしい。
その死因は「心不全」。
つまりは最後は心臓が機能しなくなって亡くなった、ということなんだけど・・・。

こういう著名人の不法で発表される死因って、事故死などの外因性でない場合、たいていは「心不全」か「呼吸不全」なんだよね。
つまり、心臓が機能しなくなったか、呼吸ができなくなったかのどちらか、というだけの意味。
人間の生命活動の根幹なのでそれはそうなんだけど、問題は、なぜ心臓が動かなくなったり、呼吸ができなくなったか、ということだよね。
とはいえ、死因についてもプライバシーだから何でもかんでも公表すればいいというわけでもなく、病死か、自然死(老衰など)か」、事故死かくらいわかればいい、と言えばそれもそうなんだよね。
でも、医師又は歯科医師が書くことになる死亡診断書(最終的にその人が死亡したということを医師又は歯科医師が判断した証拠の書類)では、そうもいかないのだ。
なんと、ネット上にはこうせいろうどうしょうによる死亡診断書の書き方マニュアルがあるよ。

この死亡診断書には死因について記入する欄があって、①病死・自然死、②外因死(交通事故、転倒・転落、溺水、煙・火災及び火焔による傷害、窒息、薬物による中毒、自殺・他殺等)、③不詳の3つに大きくカテゴライズされるのだ。
②の外因死の場合はかなり検案をする必要があって、火災現場で焼死体が見つかったときは、火災でなくなったのか、先に殺されていて死体が焼かれたのか、で話が変わってくるわけだよね。
そういうのは監察医が司法解剖をして確認することになるよ。
マニュアルを見ると、例えば、てんかん発作が起こって川に転落して溺死した場合、外因死の「溺水」でなくて「てんかん発作による病死」と書かないといけないらしい。
で、どうやってもなくなった原因がわからないのは③で、これは穴を掘っていたら白骨が出てきちゃって、ものすごく古いもので特に外傷の跡も見られない、なんてもの。
困ったときの分類だよね。

で、問題は「病死・自然死」の死因の書き方。
そのむかしは、心臓が止まったら「心不全」、呼吸が止まったら「呼吸不全」と書いていたみたいなんだ。
でも、こういう書き方だと、世界保健機関で集めている死亡原因の統計データに使えないため、もうちょっとなんで死に至るようになったのかをわかるように書くべし、ということになったみたい。
なので、例えば、がんの末期で最後に心臓が止まって亡くなった場合、かつては「心不全」と書いてしまったんだけど、「〇〇がん」と書かれるようになったのだ。
そうすると、これは統計上の死因は「悪性新生物」に分類されることになるよ。

現在の死亡診断書の様式においては、「直接の死因」、「それに至った原因」、「さらにそれに至った原因」と最大で4段階まで原因をさかのぼって書くようになっているんだ。
なので、最終的に心筋梗塞で心臓が止まった場合、直接の死因は「心筋梗塞」でよいのだけど、その心筋梗塞に至った原因として「冠状動脈硬化症」を書く、という感じになっていて、心臓の冠状動脈の状態が悪くてそれが心筋梗塞につながった、というのがわかるようになっているのだ。
がんの場合だと、原発は「大腸がん」でそれ「肝臓に転移」で「肝不全」みたいな感じになるよ。
ここまでくると、書く方もきちんと把握したうえでじゃないと書けないからけっこう大変なような気がする。

病院で亡くなった場合はカルテ情報やらなにやらあるからこういうのは書けると思うのだけど、問題は、自宅療養している場合だよね。
特に、高齢者の場合はいろんな疾病・症状を抱えていて、朝起きたら亡くなっていた、みたいなのもあるだろうから、そうなると死因を調べて特定する必要があるのだ。
せめて病院のベッドの上ではなく畳の上で死にたい、なんて言うけど、そうなると事後の処理が大変だったりするわけだよね・・・。
しかも、なんで亡くなったかけっきょくよくわからない場合もあって、その場合だけ「老衰」というのを死因にできるらしいよ。
もう体全体が弱っていて、ということだよね。

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