2025/01/18

当事者間で

 最近よく報道で耳にする言葉。
それは「示談」。
自動車の接触事故とかをイメージするけど、今話題になっているのは、泥酔したうえでの住居不法侵入だったり、和解金を9,000万円支払ったと言われるトラブルだったり。
そこで、改めて「示談」というものを調べてみたのだ。

一般に「示談」と言われているものは、法律上は、最場外の和解、私法上の和解と呼ばれるもの。
民法第695条「和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる」という条項に基づくもの。
重要なのは、双方が譲り合って妥結している、と定義されていることなのだ。
交通事故なんかの場合は、加害者側の謝罪と損害賠償によって被害者側が蛍雪への被害届を取り下げる、みたいな感じ。加害者側は謝罪と被害者側が納得する額の金銭の支払いで、被害者側は被害届の取り下げで、それぞれ裁判で争わないということを譲って合意していることになるよ。

民法事案であれば、双方が納得しているのであれば必ずしも裁判で決着をつけなくてもよいわけだけど(逆に言うと、双方の話し合いだけでは決着しないから民事裁判をするわけだけど)、刑事事案はそう単純ではないんだよね。
治安維持という観点では、社会通念上許されざる行為で法律上犯罪とされているものについてはきちんと罰する必要があるのだ。
なので、接触事故でけがをした、という程度であれば被害届が取り下げられれば送検・起訴されることはまずないけど、ひき逃げで被害者が亡くなっているような場合、被害者遺族と賠償金の支払い等で和解ができていたとしても、刑事罰は免れないのだ。

例えば、今回の住居不法侵入の場合、知らない人に勝手に家に入ってこられる、ということだけど、その家の住人が和解で来ている限りにおいてはそこまで目くじら立てて罰するほどでもないものだよね。
なので、このケースは示談で和解ができていれば刑事事件になる可能性は極めて低いのだ。
入っていただけでなくその場で暴れて器物損壊もある、なんて場合は別だけど、ただ入ってきただけで物的損害なく追い出しに成功していれば、入ってこられた住人側が許すというのであればそれ以上のものではなくなるよね。
一方で、問題は「トラブル」の方。
何があったのか全く詳細はわからないけど、金額的に相当なことがあったんじゃないかと推測してしまうよね。
すると、被害者との間で和解が成立していようが、刑事事件になる可能性はあるのだ。
実際、加害者側はコメントで「示談で和解しているから今後の活動に支障はない」とか書いているけど、すでにこれだけシャイ的に騒がれているわけで。
何があったのかの中身いかんでは、公序良俗の観点で、また、治安維持の観点で刑罰を科すべき、との判断は無きにしも非ずなんだよね。

ここで気になるのは、仮に強制的な行為があった場合、それって「親告罪」じゃなかったっけ?、ということ。
親告罪というのは、告訴が泣けれあ公訴を定義できない、つまり、検察官が刑法犯として裁判にかけられないという犯罪のこと。
プライバシーの保護の観点から、いわゆる「強姦罪」は長らく親告罪とされてきたので、被害者側から訴えがなければ状況証拠として確実にそういう事案があったとわかっていても裁判には持ち込めなかったのだ。
ところが、シャイ的な受け止めとして、強制行為や痴漢・盗撮のような性犯罪は被害者の訴えがなくても罰せられるべきというように社会の受け止めが変わってきたので、「不同意性交等罪」となった現在の刑法の扱いでは非親告罪になっているのだ。
なので、まず警察が捜査に乗り出すかどうかというのはあるけど、示談で和解していても刑事罰は回避できない可能性があるんだよ。
ここまで大々的に報道されるとその可能性はゼロには見えないよね。

というわけで、示談による和解で完全に刑事罰が回避できるのは親告罪のみなので、気を付ける必要があるのだ。
刑法上親告罪に規定されているのは3つのケースがあって、「告訴がなければ公訴を提起することができない」と明確に規定されているよ。
(1)事実が公になると、被害者に不利益が生じるおそれのある犯罪
 未成年略取・誘拐罪、名誉棄損罪・侮辱罪、新書開封罪・秘密漏示罪
(2)罪責が比較的軽微であり、または当事者相互での解決を計るべき犯罪
 過失損害罪、私用文書等毀棄罪・器物損壊罪・信書隠匿罪
(3)親族間の問題のため、介入に抑制的であるべき犯罪
 親族間の窃盗罪(親族相盗例)・不動産侵奪罪、親族間の詐欺罪・恐喝罪等、親族間の横領罪
このうち、(3)は相対的親告罪というもので、加害者と被害者の関係性が親族である場合の特例という扱いになっているのだ。

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