2025/10/11

ぴりっと一粒

 和歌山の高級山椒をもらったのだ。
我が家はわりと山椒の香りが好きで、近所のおいしい焼鳥屋さんでもたっぷりと使うし、最近はやりの山椒風味のチョコレートなんてのも好きなのだ。
ボクは個人的にむかしから京都の山椒餅もすきだけど、なんだかさわやかな香りだよね。
口の中を一気にすっきりさせてくれるというか。

山椒は英語ではJapanese pepperというんだえど、まさに日本独特の香辛料というとらえ方をされているみたい。
日本で使われる山椒は日本原産の植物だよ。
中国にも山椒の仲間はあるんだけど、ちょっと種類の異なるもので、日本の山椒とは香りも違うし、何より辛いらしい。
日本のものはぴりっとくらいだけど、がっつり絡みを加えるのに使われるんだそうだよ。
それと、中国には花椒(ホアジャオ)もあるよね。
こっちは麻辣の「麻」、つまりしびれるような辛さの香辛料。
ここ最近は本格支背料理のしびれるからさの素としておなじみなのだ。
カホクザンショウという種で、英語ではShichuan pepper、四川の山椒という呼び名だよ。

日本の山椒も、中国の花山椒もそうなんだけど、粉状になっているものは、完熟した実を乾燥させ、果皮の部分をすりつぶしたもの。
花山椒なんかだyと開いた果皮そのものを打っているのを見かけるようになったけど、完熟した山椒の実は、乾燥してくると三つにぱかっ問われて中から黒い種子が出てくるのだ。
で、その趣旨は捨てて(笑)、ぱっと開いた果皮の方だけ使うわけ。
ただし、この辛味の成分は精油成分なので、時間の経過とともに飛んで行ってしまって風味が劣化するのだ。
なので、基本的には使う直前に粉末状にするのがよいのだよね。
花椒はペッパーミルでその場で挽くこともあるけど、普通の山椒はまだ見たことないなぁ。
そっちも興味あるんだけどな。

山椒と言えば、粉状のものばかりではなく、ケッパーのようなころんとした実もあるよね。
ちりめん山椒に入っているやつ。
こちらは実山椒と呼ばれるのだ。
あれは夏前に収穫した未熟な実をゆでたり水にさらしたりしてアクを抜いたものなんだって。
未成熟なので将来的に中にできる黒い種子はまだ柔らかい状態で気にならないのだ。
これもまたさわやかな風味で好きなんだよなぁ。
これもすぐに風味が飛んで行ってしまうので、実山椒として買ってきた場合は冷凍するなりしないといけないのだ。

実は、この山椒の風味は実にあるだけではなく、木全体にあるんだよね。
煮物なんかに添えられる「木の芽」は山椒の若芽だし、実になるはるか前の「花山椒」。
ボクはまだ食べたことないと思うけど、お高級な和食には出てくるみたい。
さらに、山椒の木はすりこぎに使われているのだ。
これは香りだけではなく、木自体が固いというのも重要らしいよ。
さすがに微妙に削れるすりこぎからの香りづけを期待しているわけではなさそうだ。

最近、和歌山産のものは「ブドウ山椒」として売り出しているけど、これは山椒の実は密集してなってブドウの房のように見えるから。
実の密度にばらつきはあるのだろうけど、和歌山県、特に有田川地域のものは身も大きく、密集して実がなるのでそう呼ばれるようになったとか。
山椒自体はどうも縄文時代から香辛料として使われている形跡があるのだけど、和歌山は平安時代にはすでに山椒の名産地として知られ、現代にいたるまで生産量トップなのだ。
実は山椒はミカン科の植物なので、つくづく和歌山ってみかんとの相性が良いんだね。

ちなみに、山椒の別名に「はじかみ」というのがあるんだけど、そういえば、焼魚についてくるショウガの甘酢漬けも「はじかみ」だよね。
山椒の方のはじかみの「はじ」は「はじける実」から、ショウガの方のはじかみの「はじ」は「はじが赤い」からなんて説があるようだけど、どちらも口の中をすっきりさせる目的で食べられているから、口直しのものをそう呼んでいたのではないかと思うよ。
どちらかが先でそれで煮たような効果があるからもう一つの方もそう呼ぶようになった、とか。
個人的には、山椒のはじかみが先にあって、それと同じような効果があるショウガの酢漬けを「はじかみショウガ」とよぶようになったなじゃないか、という気がするね。

2025/10/04

彼岸にぱっとサイデリア

 すっかり秋っぽい陽気になってきた。
まだ時々暑いけど、秋の虫は泣いているし、ギンナンは落ち始めてにおっているし。
そして、この時期突然現れる、あの花も咲き始めた。
そう、曼殊沙華とも呼ばれる彼岸花。
秋のお彼岸の時期に突然花が出てくるから彼岸花なんだけど、その突然具合から幽霊花なんて呼ばれることもあるよね。

もともとは中国原産の多年草。
土の中には小型の玉ねぎのような鱗茎があって、地上部は枯れてもまたそこから花が出てくるのだ。
土の中で気温をセンシングしているらしく、夏が終わって涼しくなり始めると発芽し、1週間ほどであの真っ赤な花を咲かせるらしい。
高さが結構あるけど、成長度も早いな。
で、その花が枯れると、今度は葉が出てくるのだ。
花と葉は共存しないんだって。
葉だけの状態になると、知っている人じゃない限りは彼岸花とはわからないのだ。
それが冬を越えて春先に枯れ、次の秋を待つみたい。
鱗茎に栄養をため込むならむしろ逆の方がいいような気もするけど、これも競合相手との関係での戦略になっているんだろうね。

ちなみに、この鱗茎には毒があるので、普通の動物は食べないのだ。
なので、冬の間に地上部に葉があって目立っても、モグラやネズミにかじられることはないよ。
そういう性質があるから田んぼのあぜ道にネズミ除けとして植えられたりもするのだけど。
ただし、その毒は水溶性なので、人間だけはよく水にさらして毒抜きをして食べるのだ。
飢饉のときとかだけだったみたいだけど。
その意味でも田んぼのまわりにあるのはいいことなのだ。
お花の近くの彼岸花ははばかられるけどね。

日本の彼岸花はすべて三倍体。
つまり、有性生殖ができないので、発芽する種子が作れないのだ。
というわけで、地下部の李kネイが分かれてクローン増殖するんだ。
群生している彼岸花はほぼすべて同一の遺伝情報を持っているというわけ。
生命力も高いみたいなので、鱗茎を一部植えておくとそこからまた生えてくるようだよ。
そういう性質を利用して田んぼのまわりに植えるのだ。

でも、有性生殖をしないのであれば、なぜ花をつけるのか?
しかも、チョウが寄っていくので、蜜も出しているみたい。
かなりのエネルギーを使って短期間で一気に花を咲かせ、昆虫に蜜を提供し、とやっている割には、クローン生殖しかできない・・・。
きわめて不合理のような気がするけど、おそらく、その無駄は三倍体の彼岸花が圧倒的に不利になって淘汰されwるほどのことでもなかったということなのだ。
三倍体でクローン生殖していく場合、遺伝情報を交換できる二倍体の有性生殖に比べてはるかに遺伝的変異が入りづらいのだ。
なので、さほど不利でもないので、二倍体時代の有性生殖の名残でそのまま花と密を用意している、ということらしい。
これも彼岸花の神秘性を高めてはいるけどね。

原産地中国には事前に自生している二倍体の種があって、そこから三倍体のクローン生殖する変種が生まれ、それを有史以前に誰かが日本に持ってきた、と考えられているみたい。
弥生時代に稲作とか始めた時かなぁ?
基本的には自分の周りにじわじわと広がっていくことしかできないので、遠隔地に広がるのは人の手によるもの。
田んぼのまわりに植えるのはわかるけど、墓場によくあるのは、やっぱりお彼岸の頃に鮮やかな赤い花を咲かせるからかな。
他に植えようとしている彼岸花の鱗茎をどこかで落とした、というのもあるんだろうけど、基本的には誰かがそこに植えよう思って植えられたものだよ。
何もないところに咲いていても、そこにはかつて何かがあったかもしれないのだ。