彼岸にぱっとサイデリア
すっかり秋っぽい陽気になってきた。
まだ時々暑いけど、秋の虫は泣いているし、ギンナンは落ち始めてにおっているし。
そして、この時期突然現れる、あの花も咲き始めた。
そう、曼殊沙華とも呼ばれる彼岸花。
秋のお彼岸の時期に突然花が出てくるから彼岸花なんだけど、その突然具合から幽霊花なんて呼ばれることもあるよね。
もともとは中国原産の多年草。
土の中には小型の玉ねぎのような鱗茎があって、地上部は枯れてもまたそこから花が出てくるのだ。
土の中で気温をセンシングしているらしく、夏が終わって涼しくなり始めると発芽し、1週間ほどであの真っ赤な花を咲かせるらしい。
高さが結構あるけど、成長度も早いな。
で、その花が枯れると、今度は葉が出てくるのだ。
花と葉は共存しないんだって。
葉だけの状態になると、知っている人じゃない限りは彼岸花とはわからないのだ。
それが冬を越えて春先に枯れ、次の秋を待つみたい。
鱗茎に栄養をため込むならむしろ逆の方がいいような気もするけど、これも競合相手との関係での戦略になっているんだろうね。
ちなみに、この鱗茎には毒があるので、普通の動物は食べないのだ。
なので、冬の間に地上部に葉があって目立っても、モグラやネズミにかじられることはないよ。
そういう性質があるから田んぼのあぜ道にネズミ除けとして植えられたりもするのだけど。
ただし、その毒は水溶性なので、人間だけはよく水にさらして毒抜きをして食べるのだ。
飢饉のときとかだけだったみたいだけど。
その意味でも田んぼのまわりにあるのはいいことなのだ。
お花の近くの彼岸花ははばかられるけどね。
日本の彼岸花はすべて三倍体。
つまり、有性生殖ができないので、発芽する種子が作れないのだ。
というわけで、地下部の李kネイが分かれてクローン増殖するんだ。
群生している彼岸花はほぼすべて同一の遺伝情報を持っているというわけ。
生命力も高いみたいなので、鱗茎を一部植えておくとそこからまた生えてくるようだよ。
そういう性質を利用して田んぼのまわりに植えるのだ。
でも、有性生殖をしないのであれば、なぜ花をつけるのか?
しかも、チョウが寄っていくので、蜜も出しているみたい。
かなりのエネルギーを使って短期間で一気に花を咲かせ、昆虫に蜜を提供し、とやっている割には、クローン生殖しかできない・・・。
きわめて不合理のような気がするけど、おそらく、その無駄は三倍体の彼岸花が圧倒的に不利になって淘汰されwるほどのことでもなかったということなのだ。
三倍体でクローン生殖していく場合、遺伝情報を交換できる二倍体の有性生殖に比べてはるかに遺伝的変異が入りづらいのだ。
なので、さほど不利でもないので、二倍体時代の有性生殖の名残でそのまま花と密を用意している、ということらしい。
これも彼岸花の神秘性を高めてはいるけどね。
原産地中国には事前に自生している二倍体の種があって、そこから三倍体のクローン生殖する変種が生まれ、それを有史以前に誰かが日本に持ってきた、と考えられているみたい。
弥生時代に稲作とか始めた時かなぁ?
基本的には自分の周りにじわじわと広がっていくことしかできないので、遠隔地に広がるのは人の手によるもの。
田んぼのまわりに植えるのはわかるけど、墓場によくあるのは、やっぱりお彼岸の頃に鮮やかな赤い花を咲かせるからかな。
他に植えようとしている彼岸花の鱗茎をどこかで落とした、というのもあるんだろうけど、基本的には誰かがそこに植えよう思って植えられたものだよ。
何もないところに咲いていても、そこにはかつて何かがあったかもしれないのだ。
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