2025/11/01

冬の備えで樹木に巻こう

ついこの間まで夏日・真夏日・猛暑日だったのに、一気に秋めいてきた。
夏が長くなった分、秋が短くなってるなぁ。
冬に突入する時期はあまり変わらないからなんだよね。
そんな冬の備え。
一気に寒くなったから人の衣替えも大変だけど、日本庭園では冬に備えて庭師さんたちが準備をするのだ。

その一つが「こも巻き」。
霜降(10月下旬)のころに松の幹に藁でできたこもをまきつけるのだ。
江戸時代から行われている害虫の駆除法で、松の害虫のマツカレハという蛾の幼虫が冬の間にこのこもの中に潜り込むので、啓蟄(3月上旬)のころにこもをはずし、虫ごと燃やしてしまう(「こも焼き」)、という方法。
このマツカレハの幼虫の毛虫は狭い場所に入って越冬する習性があってそれを利用する、というのだけど・・・。
どうも効果はあやしいらしいのだ。
昔から、この幼虫の天敵となる益虫(サシガメやクモなど)も一緒に殺してしまっているのではないか、たいして毛虫は集められていないのではないか、と疑問に思われていたらしい。
で、21世紀になって科学的に調べてみたところ(兵庫県立大の研究グループが姫路城で行った研究)、

(1) こもを巻くことで益虫に越冬場所を提供し、益虫を増やす効果あり
(2) 一方で、昔から言われているように害虫防除効果がわずか
(3) こもをはずす際に幹を点検する作業が松のメンテナンス上は非常に重要
(4) こもを巻いて中にいる昆虫の種類を調べること自体は外注・益虫モニタリングの手法として有効

といった結果が出たらしい。
なので、今では害虫駆除目的でこも巻きをしなくなっているところもあるとか。
とはいえ、江戸時代に始まった手法なので、経験則的にメリットがあったはずで、気候や風土の違いが影響するのかも、とは思うんだよね。
寒さが厳しい、或いは、そこまで厳しくない地域では有効とか、雪の量の多寡で効果が変わるとか。

これと似たような見た目のものに「冬囲い」というのがあるんだよね。
こちらは松以外も含めて庭木などの樹木を積雪や冷機から保護する目的で幹にこもやむしろを巻き付けるもの。
特に積雪多い寒い地方で行われるものなのだ。
豪雪地帯だと雪の重みで幹や枝が折れたり、乾燥した冷たい風が幹や枝の表面が傷んだりするのを防ぐのだ。
そう、人間が防寒具を切るのと同じだね。

この「冬囲い」と同じように、冬に備えての準備となっているのが「雪吊」。
雪の重みで得蛾が折れないように、木の上にテントを張るような感じで縄を張るのだ。
広く張った枝はそのまま雪を受け止めてしまうけど、縄を張ることで角度をつけて雪が高く積もらないように工夫するわけだよね。
「冬囲い」も「雪吊」も金沢の兼六園が有名で、やはり雪深い北国の代表的な大名庭園を麺テンスしていくうえで洗練された技術用のようなのだ。
どこまで必要かは別として、都内の大名庭園(駒込の六義園や江戸川橋の肥後細川庭園など)で見られるよ。

これらは特徴的あ見た目もあって、秋の風物詩にもなっているんだよね。
これらの作業が始まると秋から冬に移っていくんだなぁ、と感じるわけ。
日本庭園の秋の楽しみは紅葉もあるけど、こっちもぜひ感じてみてほしいものなのだ。

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