2022/06/18

液体白金

豪州の研究チームが、常温で液体の状態のプラチナを開発した、というニュースがあったのだ。
金属だから熱で融けるんだけど、プラチナは融点が1,700℃超と高いので、簡単には液状にはできないのだ。
それが常温で液体になるのがすごいんだけど、液体になること自体がすごいわけじゃないんだよね。
プラチナは金と同様に極めて安定的な元素で、腐食されないし、王水以外には溶けないのだ。
このために貴金属として扱われるんだけど、宝飾業界だけでなく、化学業界でも人気。
それは、この化学的に安定的な性質が高い触媒機能を示すから。
排ガスの浄化作用なんかが有名だけど、化学工業では、水素を添加する還元反応の触媒としてよく使われているのだ。
でも、非常に高価な金属なので、通常は、担体の上に白金の微粒子を並べて可能な限り表面積を稼ぐ、という使われ方なんだ。

今回の液体白金は、30度弱で融けるガリウムに溶かし込む、という手法。
液体の金属と合金を作って液体状態を維持する、というけっこう伝統的な方法なんだけど、この状態の白金でも触媒機能を示すんだって。
しかも、ガリウムに対して0.01%未満の含有量で触媒機能が発揮されるとか!
これまでの白金触媒では単体に対して10%程度のプラチナが必要だったというから、触媒反応に影響する表面積を考慮しても、これは非常に画期的で、扱いやすく、かつ、低コストになる可能性が高いのだ。
ただ液体にした、というのではなくて、この点が注目を集めているわけ。

液体金属というと水銀が思い浮かぶけど、そのむかしは水銀にほかの金属を溶かし込んで液状にし、それを塗料のように塗ることでメッキをしていたのだ。
無機水銀はすぐに蒸発するので、塗った後に放置しておくと溶かし込んで金属だけが表面に残るというわけ。
例えば、奈良の大仏は金メッキだったのだけど、青銅で作った大仏の表面に水銀と金の合金の液体を塗り、水銀を飛ばして作成されたのだ。
なので、できた当時は金ぴか。
でも、無機水銀がそこら中に発散されたので、製造現場の労働者には水銀中毒とおぼしき症状が出ていたことが確認されているよ・・・。
今では水銀はそこらにぽいと捨てるわけにもいかず、全部回収しないといけないから、こういう方法は採れないよね。

ちなみに、金属を液体どころか、来たいにして扱いやすくする、というのもあるんだよ。
それはウランの濃縮。
天然ウランの場合、そのほとんどはウラン238という核分裂しにくい同位体で、ほんの少しだけ核分裂しやすいウラン235という同位体が入っているのだ。
黒鉛炉や重水炉のような原子炉だと天然ウランのまま燃料に使えるんだけど、日本でも採用している軽水炉の場合はある程度ウラン235の濃度を高めた濃縮ウランを燃料に使うのだ(通常は濃縮度20%未満の低濃縮ウラン、それ以上の濃縮度の高濃縮ウランは主に核兵器に使われるものだよ。。)。
その濃縮はどうしているかというと、いったん気体にして遠心分離機で軽いそう(ウラン235をより多く含む)と重いそう(ウラン238をより多く含む)に分ける、という手法があるのだ。
日本では青森県六ヶ所村にある日本原燃の濃縮工場がこの遠心分離法でウラン濃縮を行っていたんだけど、現在は運転中止中なのだ。

金属ウランを完全にガス化しようとすると4,000度近い温度にしなければならず、これは現実的ではないのだ。
でも、ウランの化合物のうち、6フッ化ウランは60度弱で昇華するのだ。
なので、少し熱をかけてあげると気体になるし、そこから少し冷ますとすぐ固体に戻るので扱いが容易なんだよね。
取り出した濃縮ウランは今度は二酸化ウランに変換し、これをセラミックのように焼き固めたのがペレット(オセロの縊死のような円盤状のもの)。
そのペレットを被覆材の中に入れていって核燃料ができるのだ。
ちなみに、濃縮ウランの副産物として、天然ウランよりウラン235の存在比率が著しく低下したものが「劣化ウラン」だよ。
液体金属というのもすごいけど、このいったん気体にしてから、という話を知ったときは本当にびっくりしたよ。
そんなこともできるのか、と。
 

2022/06/11

水を奪って固める

関東も昨年より1週間ほど早く梅雨入り。
今のところ「梅雨寒」でむしろ肌寒いくらいだけど、まもなく蒸し暑い、深いな季節がやってくる。
そして、この時期は、においの方も気になる・・・。
汗をかくとどうしてもにおいが気になるよね。
そして、日本人には少ないとはいうものの、両脇に爆弾を抱えている人もいるのだ。
そんなときに活躍するのがミョウバン!
小学校の理科の実験で再結晶を作った思い出があったりするけど、実は何に使うものかよくわからないんだよね(笑)
唯一覚えていたのは、どうも脇のにおいを抑えるのに効果があるらしい、というネット情報。
そこで、少しミョウバンについて調べてみたよ。

ミョウバンは、1価の陽イオンと3価の陽イオンが一緒に硫酸塩になっている複塩の総称。
これだとわかりにくいけど、一般にミョウバンと言われているのは「カリウムミョウバン」というやつで、これは、AlK(SO4)2・12H2Oという化学式で表されるのだ。
最後の12H2Oは12水和物という意味で、硫酸カリウムと硫酸アルミニウムが複合的に結晶構造を作る中に水分子が入り込んでいる、という意味。
12水和物というので、1結晶単位の中に12分子の水があるわけで、相当な量の水を含有している結晶なのだ。
かといって、再結晶実験するとわかるけど、水っぽいかどうかはよくわからなくて、透明な正八面体の大型の結晶が得らるよ。
食塩(塩化ナトリウム)の場合は、温度による溶解度の変化が少ないので、熱水にぎりぎりまで溶かし込んでその食塩水を冷やしても、さほど塩の結晶(通常は立方体の四角い粒)は得られないのだ。
ミョウバンの場合は、温度変化による溶解度の変化が大きく、熱すれば熱するほど多く溶けるので、熱水に大量に溶かし込んで冷やしてやると大量の結晶が得られるんだよね。
ゆっくり冷やすと結晶が大きく成長して面白いのだ。

ちなみに、街中では「焼きミョウバン」というのが売られているけど、これは12水和物の結晶を加熱して水を取り去ったもので、ミョウバンが小粒の結晶で薬局などで売られているのに対し、焼きミョウバンは白い粉状で乾物屋さんなどにあるのだ。
これは食品添加物として使われるから。。
有名なのはウニで、そのままだと時間経過でウニはとろけてしまうのだけど、ミョウバン水で処理するとタンパク質が少し変性してとろけづらくなるのだ。
ただし、ミョウバン独特の苦みなんかも出てきてしまうんだよね。
高級なウニは苦みが少ないとかいうのはこのためで、高級なものは鮮度がよいまま運んでいるのでミョウバン水で処理をしていないのだ。
ナスの漬け物の発色をよくするためにもよく使われているよ。
ナスの独特の紫色はアントシアニン系の色素だけど、この色素を安定化させるので発色がよくなるのだ。
古代ローマでは、質の悪い井戸水にミョウバンを加えることで不純物を沈殿させる、なんてこともやっていて、水の浄化作用もあるんだよ。
いずれにしても、少量くらいなら口にしても問題ない、というところがミソだね。

で、なぜそんな作用が出てくるのか、というところが問題。
ミョウバンの最大の特徴は、水分子を引きつける以下らが強く、まわりから奪ってしまう、という性質。
多くのタンパク質は水素結合で立体構造を支え、水分子をまわりにまとうことで水の中に溶け込んでいる(正確には「分散している」)のだけど、ミョウバンを入れるとミョウバンに水分子を奪われてしまうので、水素結合は崩壊して立体構造が崩れる(=変性する)とともに、水に溶けづらくなって沈殿するのだ。
これがウニを長持ちさせたり、水を浄化させる作用の仕組み。
アントシアニン系色素は水分子と同様に極性のある分子なので、ミョウバン中のアルミニウムイオンと錯体を形成し、安定化するのだ。
もともとアントシアニン系色素はpHの影響で色が変わることが有名だけど(アジサイの花の色が土壌のpHで変わるのとか)、紫色の発色で安定化されるのだ。
下手すると茶色くなって汚くなるので、これは重要なんだよね。

で、最初に戻って、脇の問題になるけど、これは複数の要因でそのような効果が出ていると考えられているよ。
ひとつは、酸性を示すミョウバンの消臭効果。
においのもととなる分子はアンモニアなどをはじめ、弱塩基性のものが多いのだ。
これが酸性のもので中和されるとにおわなくなるんだよね。
いわゆる汗臭いにおいは弱酸性のもので中和できるのだ。
次に、金属イオンによる殺菌効果。
消臭スプレーや殺菌スプレーでは銀イオンがおなじみだけど、アルミニウムイオンでも同じような効果があるんだ。
脇のにおいは、汗の中に含まれるタンパク質などが微生物によって分解されてにおい原因物質が出てくるから。
なので、清潔にするとにおわなくなるんだけど、常にアルコールで拭き続けるわけにもいかないので、金属イオンで雑菌の繁殖を抑えるというわけ。
さらに、最後に聞いてくるのがタンパク質の変性作用(=収れん作用)。
微生物のえさとなるタンパク質を変性させると、水に溶けづらくなるので固形物として析出してくるのだ。
これが物理的に汗腺につまって、汗が出にくくなるんだよね。
これにより、雑菌へのえさの供給も抑えられるわけ。
これらの作用が複合的に働いて消臭・制汗を達成しているようなのだ。
薄めの濃度のミョウバン液をタオルやティッシュにしみこませて拭いたりしたらいいらしい。

2022/06/04

劣化でぼろぼろ

 
日本だと、平気で1000年以上前の文書が残っているので、むしろ丈夫くらいのイメージだけど、神は劣化してすぐぼろぼろになるので、記録メディアとしてはそこまで優秀ではないのだ。
俗に、フェニキア文字が刻まれた粘土板が一番優秀とか言うよね(笑)
それこそ、4000年以上前のギルガメッシュ叙事詩が刻まれた粘土板とかが残っているわけだし。
これは、粘土板自体が安定的なもので、そのためにそこに刻まれた情報が失われないため。

記録メディアの寿命の問題は、主に2つの要因があって、1つは記録している手法によるもの。
例えば、石碑に刻まれた文字は表面が摩耗して薄くなることはあっても、それ自体が消えることはないのだ。
ところが、インクで書かれた文字は徐々に薄れていくよね。
さらに、フロッピーディスクやフラッシュメモリなどの磁気で情報を記録するタイプのメディアは、外部磁場の影響でその磁気情報が狂ったり、徐々に磁気情報が読み取れなくなったりするのだ。
書き込まれた情報が読み取れなくなる、ということ。
インクの場合は保存状況にもよるけど数百年もつこともあるけど、磁気情報の場合はたいてい5~10年なのだ。

もうひとつは、記録媒体自体が劣化してしまって情報が失われるもの。
例えば、けっこう前に話題になったけど、CDやDVDなどの光ディスクは、そこに刻まれている情報自体は50年くらいは余裕でもつのだ。
ところが、これらの記録媒体の票mんのポリカーボネート(透明のプラの部分)は、紫外線等による劣化により、下手すると数年で曲がってしまって情報が読み取れなくなるのだ・・・。
保存状態が割ると磁気ディスクより寿命が短くなることも。
これは記録媒体自体の問題で、石碑であってもそれが破壊されれば情報は読み取れなくなるし、紙も劣化してぼろぼろになるよね。

でも、最近の紙はけっこう丈夫になったので、むかしほどはぼろぼろにはならなくなったのだ。
これは紙の製造工程の違いだよ。
むかしの大量生産の用紙である「酸性紙」は、木材などからパルプを作り、そこからセルロースの繊維を取りだして固めて作るんだけど、そのまま乾燥させただけだとインクがにじんで使い物にならないのだ。
そこで、にじみ防止剤のサイズ剤というのを添加するんだけど、これに使われていたのがロジン(松ヤニ)。
やっきゅうのピッチャーの滑り止めのあれだよ。
そのまま混ぜただけだと均一に混ざらないので、硫酸アルミニウムを添加することで錯体を形成させ、セルロース繊維に化学的に定着させているのだ。

ところが、これをしてしまうと、紙の中に硫酸イオンが残るのだ。
これが酸性を示すので「酸性紙」というのだけど、なぜ酸性化というと、水分の存在かでは硫酸が生じてしまうため。
この硫酸はセルロースを徐々に加水分解してしまうので、紙の本質であるセルロースが細かく分断されるのだ。
紙を紙たらしめているのは、セルロース繊維が互いに絡み合ってシート上の構造を形成しているからなんだけど、その繊維が細切れにされるのでぼろぼろになるというわけ。

西洋ではいち早く用紙の大量生産が始まっていたので、1970年代には酸性紙の劣化が大きな問題になったのだ。
古い本がみんなぼろぼろになっていくからね。
そこで出てきたのが中性紙。
ロジンと硫酸アルミニウムを使うと硫酸が出てきて紙を劣化させるので、それとは別の方法でにじみを抑えればいい、という発想。
この場合、できあがった紙は中性~弱塩基性なので、セルロースの加水分解が起こりづらく、酸性紙の3~4倍の寿命になったのだ。
今では上質紙と呼ばれるものはみんなこの中性紙だよ。
新聞や雑誌、読み捨てるためのペーパーバックなんかは劣化してもいいので安い酸性紙が使われているけど。

でもでも、中国で紙が発明されたときは、この劣化はさほど問題にならなかったので。
それよりも虫食いなどの方が問題だったんだよね。
それは単純にそういう化学的手法でにじみを抑えていたわけではないから。
さらに、和紙の場合、使っている繊維はコウゾやミツマタをとにかくたたいて取りだした繊維で、もとから相当長くて丈夫なのだ。
このため、紙のpHの問題以前に丈夫なんだよね。
なので、鎌倉時代の本とかが残っていたりするのだ。
伝統的な和紙は大量生産には向かないけど、その精神と伝統を引き継いでいる(?)のは、日本の紙幣(日本銀行券)に使われている紙だよね。
あれもミツマタをベースにしたものだけど、選択しても寄れる程度でぼろぼろにならないというのは、紙界では相当の強者なのだ(笑)

2022/05/28

追加料金いただきます

世界的にもコロナは「おさまってきた」という認識で、徐々に海外渡航が自由にできるようになってきたよね。
日本はまだ厳しいけど、国によってはPCR検査や隔離措置を求めないところも出てきて、夏休みに海外に行きたい、と考える人も増えているそうなのだ。
人気なのはハワイやタイだって。
ワクチン接種が証明できればかなり自由に入国できるから。
でもでも、実は航空チケットを抑えるなら今月中にしないとまずいみたい。
というのも、来月から燃油サーチャージで一気に航空料金が上がるから。
2~3割増しくらいになるみたいだよ!

この制度は、もともとはオイル・ショックに端を発する原油価格高騰に対応するため、海運の分野で導入されたのだ。
あらかじめ輸送料金を設定して契約しているわけだけど、その後燃料代が高騰してしまうと下手すれば赤字にもなりかねないので、そういう燃料価格の変動に柔軟に対応できるよう、一定基準を超える価格変動があった場合は運送料金にその差額を反映できるようにしたのだ。
日本で航空分野にこれが導入されるのは21世紀になってから。
航空機燃料であるケロシン(石油系燃料)型ジェット燃料の市場スポット価格が一定額以上の場合、差額が上乗せになるのだ。
今回は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格の高騰のあおりでこの市場価格が高騰していて、その調整が6月から適用されるので、今月中に発見しないと、ということらしい。
ちなみに、原油価格が基準価格以下になれば「上乗せ」はなくなるわけだけど、制度導入後、ごくごく短期間なくなった期間はあるものの、ほぼほぼ常に「上乗せ」分はあるようなのだ。
そういうのって基準額を見直した方がいいんじゃないの?、とも思うけど、航空料金の場合、基準価格を下回ってもマイナスの調整は行われないようなので、低めに設定しておいてもらった方がいいみたいだ。

これと同じような制度が電気料金にもあるんだよね。
それが「燃料費調整制度」。
もともと電気事業は地域独占が認められた公益事業で、厳しい料金規制が行われていたのだ。
電気料機を値上げしようと思うと国(資源エネルギー庁)に新料金案を申請して認可してもらわないといけなかったんだよね。
でも、火力発電の燃料である原油価格はけっこう変動するので、その価格変動に合わせていちいち国の認可を取らないと電気料金に反映できないのでは困るわけ。
燃料価格が上がれば電力会社のリスクになるし、燃料価格が下がれば顧客である需要家にとっては損している形に。
そこで、燃料価格に一定基準を設けて、その歯煮を超える価格変動があった場合は自動的に電気料金に反映できる仕組みを入れたんだよね。
それが燃料費調整制度。

これが電力全面自由化後も大手電力の料金体系には残っているのだ。
電力会社だけでなく、新電力と言われる新規参入事業者でも、インフラ系企業が電力分野に進出したガス系の新電力の場合は同じような制度があるよ。
そもそもガス料金でもそのむかしは規制料金で、同じような天然ガスの市場価格に連動させて自動的にガス料金を調整する仕組みがあったからだと思うけど。
なので、こういう事業者から電気を買っている場合、電気の使用量が減っても電気料金が上がることがあるのだ。
っていうか、現在はまさにそういう状態。
でも、実はこれはまだましな方なんだよね。

最近問題になってきているのは、格安の新電力と契約していたら電気料金が一気に跳ね上がったという話。
ここで問題になっているのは「市場連動型プラン」と言われる契約なんだよね。
電力の部分自由化が開始されてから、新規参入者を増やすため、自前で発電所を持っていなくても市場から調達できるよう、卸電力取引所が整備されたのだ。
で、このプランというのは、その卸電力取引所でのスポット価格に連動させて従量料金が変動するというもの。
電気が余っている状態、つまり、供給過剰の場合は、市場価格は下がるので、格安の電気料金となるのだ。
一方で、需給が逼迫すると市場価格は高騰するので、電気料金は上がるわけだよね。

現在の状況で言うと、原子力発電の再稼働が送れているので、日本全体で供給力が下がっていて慢性的な需給逼迫状態だったんだよね。
それに加えて、ロシアのウクライナ侵攻によって原油価格が高騰したため、さらに市場価格が押し上げられたのだ。
この市場には基本的に「余っている」(=自家消費を超える余剰分の)電気が売りに出るわけだけど、原子力が止まっている今、そのほとんどは火力発電の電気。
原油価格の高騰はこの市場価格にダイレクトにきいてくるのだ。

つまり、この「市場連動型プラン」を選んでいた場合、需給逼迫と原油価格高騰のダブルパンチで電気料金が跳ね上がったわけ。
報道では2~3倍になった例もあるとかいうよね。
さすがにそのまま請求できないと言うことで暫定的にもう少し小規模の値上げだけですませた事業者が多いみたいだけど、それって単純に事業者側でリスクを取っているだけなので長続きするものではないのだ。
このため、新規契約停止とか、電気事業からの撤退みたいなことになっているんだよね。
で、撤退されてしまうと、新たな事業者と契約しなくちゃいけないわけだけど、多くの事業者は新規契約停止になっているので、「詰んだ」ということになっているのだ。
原子力の再稼働でなくてもいいんだけどm早く供給余力を大幅に上げないとこの状況は回復しないんだよなぁ。
でも、いわゆる再生可能エネルギーと言われているやつは発電容量も小さいし、発電量も安定しないから、あまりよい選択肢ではないんだよね。

2022/05/21

謎の湯

この前ひさしぶりに出張に行ったとき、温泉憑きのホテルに泊まったのだ。
ちょっと高いけど、せっかくなら、ね(笑)
朝晩と湯を堪能したよ。
そんな温泉だけど、日本は火山列島と言われるだけあって、ほぼ全国的に存在しているのだ!
温泉というと、火山のイメージがあるよね。

有名どころだと、草津、箱根、別府なんかは、火山の特徴である硫黄の香りが漂っているよね。
火山活動のあるところでマグマに地下水が温められて高温になって湧出するのだ。
これは非常にわかりやすいもの。
でも、一見近くに火山がないのに温泉がある場合があるのだ。
メジャーなのは、岐阜の下呂温泉。
でも、この温泉は活断層の上にあるのだ。
つまり、地下には大きな応力ひずみがあって、そこに蓄えられているエネルギーが熱(摩擦熱)の形で放出されるとまわりの地下水を温めるのだ。
断層にはひずみがあって住み魔も多いので、水がよくしみこんでくるんだよね。
これが「温泉脈」となるのだ。
一気にエネルギーが解放されると地震になるわけ。
そして、愛媛の道後温泉なんかは、過去の火山活動の余熱で地下水が温められたもの、と考えられているよ。
k大は四国にも活火山があったんだとか。
その熱がまだ残っているというのもすごいけど。
いずれにせよ、これらは地下にある高エネルギーにより地下水が温められているものなのだ。
そして、同じような成分が溶け込んでいるので、泉質も似ているよ。

一方で、東京なんかでもいくつか「天然温泉」と言われているものがあるけど、これは火山にも断層にも関係なさそうだよね・・・。
こういうのは、よくよく見てみると、地下かなり深くからくみ上げられているものなのだ。
地表の場合、高度が高くなると100mごとに0.6℃気温が下がるけど、地下の場合、地球の中心は熱いので、100m深くなるごとに2~3℃ほど温度が上がるようなのだ。
なので、地下深くの地下水はこの原理で自然に温度が高いわけ。
これが自然に湧き出る場合は、地表に出てくるまでにすっかり冷めてしまうのでお湯ではなくなってしまうのだけど、ボウリングで地下深くまで人工的に穴を掘って、そこからポンプでくみ上げてしまえば、温かい地下水を地表に届けられるのだ。
これが東京なんかで見られる「天然温泉」のお湯。

ちなみに、温泉法の定義では、第2条で「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するもの」と定義していて、温度要件か溶存物質の含有量要件を満たせば「温泉」になるのだ。
別表においては、温度要件は「25℃」となっているので、けっこう冷めていても法律上は温泉になるよ。
また、もっと低温でも、この定義は「又は(or)」になっているので、一定量以上の溶存物質があれば温泉を名乗れるのだ。
こういう低温の温泉(なんか矛盾しているけど・・・)の場合は加温するんだよね。
逆に、草津のように超高温で湧出する場合は「湯もみ」したり、加水して冷ますのだ。
人間にとってちょうどよい温度のお湯が出てくる場合ばかりではないということ。

しかしながら、これらにも属さない温泉があるのだ。
それが、和歌山の南紀白浜温泉や兵庫の有馬温泉。
万葉集の時代から知られる温泉だけど、そもそも近畿地方には活火山なんてないのだ。
活断層はあるけど、そこまで大きなものはなし。
ましてや、地下から無理矢理くみ上げているわけではないのだ。
長らく謎の温泉とされてきたんだよね。
ところが、ごく最近になって、ひとつの仮説が出てきたのだ。
それは、南から来るフィリピン海プレートが四国沖の南海トラフでユーラシアプレートの下に沈み込んでいるところで発生している高温の水が滲出してきているのではないか、ということ。
プレートには水も含まれているんだけど、沈み込む場所付近で軽いものはそこで放出されてしまって、高温の水が出てくると見られているんだ。
それがしみてきてわき出してきているわけ。
確かに白浜や有馬の湯は塩分濃度が高くて、他の温泉と泉質がかなり異なるんだよね。
この沈み込みの場所から離れてくると、プレート境界面の熱でマグマが発生し、そのマグマで地下水が温められ、という形でスタンダードな温泉ができるのだ。
これが多くの九州の温泉。

でも、まだ不思議なこと。
有馬温泉は活断層のちょうど上にあるのだ。
なので、南海トラフ付近のプレート境界面で放出されたもともとフィリピン海プレートに含まれていた高温の水が、その活断層の隙間にしみこんで地表まで出てくるんだよね。
しかしながら、南紀白浜にはそういう活断層はないのだ。
和歌山の活断層は中国・四国の間の中央構造線だけど、そこからははるかに南。
よくわからないけど、和歌山南部でそうしてできた高温の地下水が湧出しているっぽいんだよね。
というわけで、まだまだ謎が残るのだ。

2022/05/14

海のロボ

知床沖の事故で、沈んだ船の調査に無人潜水機が使われているのだ。
100mを超える深さだと、ダイバーが潜って探ってくる、というのが難しいんだよね。
そもそも潜水や浮上をゆっくりやらないと潜水病になってしまうし、酸素タンクの容量にも限りがあるので、活動時間も相当限られるわけ。
そこで、ロボットに代わりにやってもらおう、というのは自然な発想。
もともとヒトがある程度以上の深さの海中に潜ろうとすると、耐圧や酸素確保の問題で制約が大きいので、だったらロボットをさっと沈めて調べてもらおう、ということなのだ。

今回の事故で使われているのは「ROV(Remotely Operated Vehicle)」と呼ばれるもの。
一般的には「遠隔操作型潜水機」と言われるもの。
海中では電波で信号を送れないので、有線で母船につながっていて、水上で操作するのだ。
正太郎少年が鉄人28号を動かしているのと同じ。
マリアナ海溝を潜ったことでも有名な海洋研究開発機構の「しんかい6500」は中に人が乗るのでガンダム型だね。
ところが、このケーブルが問題で、ケーブルの長さの分しか活動できないのだ。
深さも広さもどうしても制限が出てくるんだよね。
かといってケーブルを長くすればいいというものでもなく、あまりにケーブルが長いと絡んだりするのだ。
今回の知床の調査でもケーブルが絡んでしまって操作不能に陥っていたよね・・・・。
水上でヒトが操作できるので、その状況に応じて臨機応変にいろんなことができるのが魅力だけど、この短所は大きいのだ。

そこで出てくるのが、自律型の無人潜水機。
「AUV(Autonomous Underwater Vehicle)」と呼ばれるものだよ。
こちらはあらかじめ与えられたプログラムどおりに動くロボットで、ロボット掃除機のルンバのようなものを想定すればよいのだ。
ケーブルが不要なので、深さや広さには自由度があるんだけど、逆に、ケーブルを介しての電力供給ができないということなので、バッテリーの容量から来る活動限界があるのだ。
将来的によい蓄電池我ができれば連続潜行時間は伸ばせるど、これがひとつのネック。

もう一つは運用の自由度には限界があるのだ。
自分で周囲の環境を認識して動作を変更することはできるのだ。
これは障害物を回避するルンバと同じ。
さらに、必要に応じて音波で多少の通信はできるのだけど、それでもROVのようには自由自在には動かせないんだよね。
このあたりは小惑星探査機のはやぶさに似ているかな。
はやぶさの場合はあまりにも遠いところにいるので通信に制約があるのだけど、リアルタイムで自在に動かせない、という点では似ているのだ。

でもでも、技術の進歩は著しくて、最近では、複数のAUVが互いにコミュニケーションを取りながら編隊で活動する、なんてこともできるようになってきているみたい。
宇宙でも小型衛星が相互にコミュニケーションをとって編隊飛行(?)する「コンステレーション」というのがあるけど、宇宙では電波や光で高速・大容量の通信が可能なのにたいし、海中では音波による低ビットレートの通信しかできないので、なかなか難しいみたい。
それと、電波信号を受信するGPDが使えないので、位置情報をリアルタイムで更新するには別の手立てを考える必要があるのだ。
これには、海底に「海中灯台」のような形で位置情報を音波で発信してくれる装置を設置するなどを考えているみたい。
調査海域があらかじめ決まっていないと使えない手だけど。
でも、こういうのができると、「海のドローン」的に、ちょっと小さめのものが複数機で調査する、みたいなことができるようになるので、今回の事故調査なんかにも大きく役立ちそうなのだ。
広い海域でつぶさにローラーで調べなくちゃいけないなんて場合は有用だよね。

このようにROVもAUVも長所短所があるので、用途に応じて使い分けられているのだ。
もちろん、もっともきめ細やかな対応ができるのは「人の手」なわけで、そこは有人でやる必要があるんだろうけどね。
それでも、ルンバのように無人でできることが増えればそれだけ効率的なのだ。
もうすぐ、海の中でロボットが活躍する時代がやってくるね。

2022/05/07

日本のエバーグリーン

大型連休突入!
そして、5月のこの連休と言えば、こどもの日の柏餅。
けっきょくはただのあん入りの餅なんだけど、なんとなく季節ものとして食べたくなるよね。
これも柏の葉の存在が大きいかな?
香りは移っていてさわやかだけどね。

「カシワ」は、ブナ科の植物で落葉広葉樹でありながら冬になっても葉が落ちないので古代日本では申請なきとされてきたんだ。
神が宿る木とも。
そして、葉にはよい香りがあって、厚手で丈夫。
その特徴から、お皿の代わりに食べ物を載せたり、ものを包んで蒸したりするのに使われたんだ。
ここから「カシキハ(炊葉)」と呼ばれるようになり、それがいつしか言いやすい「カシワ」になった、と言われているよ。
なので、餅のようなものを包むのもむかしから行われてはいたんだけど、皐月の「端午の節句(菖蒲の節句)」に縁起物として柏餅が食べられるようになるのは、江戸時代の武家文化。

カシワはブナ科なので、秋に葉が枯れ、落ちるには落ちるんだけど、それは翌年新芽が出てから。
つまり、次の葉が出てくると、前の葉があとを譲って落ちるというわけ。
これが子々孫々代を重ねていくように見えて、武家社会では尊ばれたのだ。
もともと「菖蒲(しょうぶ)」は「尚武」につながるなんてありがたがっているくらいだから、こういう連想は重要なんだよね。
もとは18世紀後半くらいに江戸で始まった文化のようだけど、当時は参勤交代で各地の大名が江戸と地元を行ったり来たりしたので、全国区に広がっていったみたいだよ。
ちなみに、柏の葉は香りはつけてくれるけど、それ自体は硬くて食べられないのではずすのが正解。
桜餅のように葉っぱも一緒に食べるものではないのだ(笑)

ところが、問題はこの「柏」という字なんだよね。
カシワ自体は中国にもある木なんだけど、中国で「柏(はく)」というと、ヒノキ科の常緑針葉樹を指すのだ。
つまり、落葉広葉樹のカシワとは正反対!
日本で言うと、コノテガシワ、シダレイトスギ、イブキ、アスナロなんかがこれにあたるんだって。
中でも、柏槙(びゃくしん)と言われるイブキは、「松」と並んで「松柏」と称され、常緑樹の代表選手なのだ。
そう、この「松柏」のときの「柏」も「カシワ」ではなくて、中国の方の「柏(はく)」なのだ。
そして、日本のカシワを表す場合は、正式(?)には「槲」というむずかしい字を使うようだよ。
この字の場合は中国でも「カシワ」を指すのだ。

では、なぜこうした誤認が生まれたのか。
それこそ想像の域を出ないんだけど、調べた限りでは、樹木としての携帯は全く違うのだけど、その樹木の持つイメージが似通っているので、書物のテキスト情報でしか海外の情報を知り得ない古代においては混同されてもおかしくなかったのではないか、ということ。
中国の「柏(はく)」は、
①常緑樹であって、縁起物として門前などに植えられる神聖なきとして扱われた。
②葉や木材によい香りがして、木の葉を酒につけて香り付けをすることもあった。
という特徴があって、日本の「柏(かしわ)」は、
③冬になっても葉が落ちないことから神聖視され、大きな邸宅や字者などに植えられた。
④葉が大きくよい香りがし、酒食の際に打つわとして用いられた。
という特徴があるんだよね。
で、よくよく見てみると、①と③、②と④はちょっとずつイメージがかぶっていることがわかるのだ。
①と③は冬でも葉が落ちない神聖な木というイメージ、②と④はよい香りがして酒食の際に供されるというイメージ。
それこそ命がけで遣唐使を送っていたわけで、知識人といえども中国本土で「柏(はく)」という樹木の実物を見たことがあるわけではなく、知識としてこういうものというイメージを知っているだけなんだよね。
そんなときに、似たようなイメージを持つ日本の別種の樹木があった場合、混同してもおかしくないのだ。

ちなみに、この「柏」の日中問題はけっこう古くからどうも違う木を指しているようだとはわかっていたようだけど、「槲」という字は難しいし、熟語として出てくる「松柏」なんかの場合の「柏(はく)」は正しい方の植物で認識されていたので、日本人間だけでコミュニケーションしている分には全く困らず、直されなかったようなのだ・・・。
知る人ぞ知るで、漢籍を学ぶ人たちが、漢文に出てくる「柏(はく)」は日本で言う「柏(かしわ)」ではないよ、ということを語り継げばよかったのだ。
そんないい加減な、と思うけど、日本ではいまだにゲームに使うカードのこと「トランプ」と呼ぶけど、英語でのトランプの原義は「切り札」というものでは、カードそのものはカードと呼ぶんだよね(笑)
同じようなことは現代でも普通にあるというわけなのだ。