2007/11/30

東京の道路事情

ボクが今来ているワシントンDCはほとんど何もないところに作られた計画都市なので、首都の中心部の道路がきれいに整備されているのだ。
東西にはA、B、C、Dとアルファベットの通り(AはIndependence Avenue、BはConstitution Avenueなのだ。)が、南北には、1st、2nd、3rd、4thと数字の通りが走っているんだよね。
これに放射状に走る州の名前の通りが加わるのだ。
一度覚えるとけっこうわかりやすいんだよね。

一方、東京の道路は江戸時代からの道路を基本的に踏襲していて複雑なのだ(>_<)
道路幅が変わったり、急な坂をならしたりとかはしているんだけど、むかしの地図と重ねてみると、ほとんど道に変化がないことがわかるのだ!
でも、そんな東京でも、関東大震災の後には大幅な区画整理、公園整備(これは火災被害の拡大防止の意味もあるんだよ。)、道路整備が計画されたんだ。
その計画を打ち出したのは、帝都復興院総裁となった後藤新平さん。
満鉄総裁としての方が知名度が高いけど、東京の道路を語る上ではもっとも重要な人物なのだ。

このとき計画されたのは道幅の広い(中央に緑の中央分離帯のある70~90mの道)、放射道路と環状道路。
けっきょく資金難や用地買収の困難から計画どおりには行かなかったんだけど、それでも大きな道路整備が行われたんだよね。
このときできた有名な道路は新橋から上野を通って三ノ輪まで出る昭和通りや、新宿から靖国神社の前を通って浅草橋まで出る靖国通り。
東京を縦や横に走る大きな幹線道路はこのときの放射道路計画で大幅に整備されたんだよ。

さらに重要なのは環状道路。
この前やっと環八(環状8号線)が全通したけど、1号線から8号線まであるのだ。
環状1号線は内堀通り、永代通り、日比谷通り、晴海通りなどを含んでいて、内堀通りは皇居のまわりをちょうどくるっと1周しているけどそれ自体が1号線ではないのだ。
環状2号線は外堀通り、新大橋通りなどで、やっぱり外堀通りも1周できるけど、それ自体が2号線ではないみたい(外堀通りは東京、新橋、虎ノ門、赤坂、四谷・市ヶ谷、飯田橋、水道橋・お茶の水、神田とくるっと回れるんだよね。)。
環状3号線は、清澄通り、外苑東通り、言問通り、三ツ目通りなどで、かなり断片的になっているんだ。
茗荷谷駅前にある播磨坂の桜並木はまさに環状3号線の幅広い道として作られたんだけど、ほんの短い区間しかないのだ。
環状4号線は、外苑西通り、不忍通り、明治通り、四ツ目通りなどで、やっぱり断片的。
外苑東通りと外苑西通りは神宮外苑を間にはさんでほぼ並行に走ってるけど、それぞれ環状線の一部なんだよね。
三ツ目通りと四ツ目通りの関係も同じなのだ。

環状5号線は明治通りで、明治通りは4号線の一部でもあるし、5号線でもあるんだって。
明治通りはかなり環状に近いけど、麻布の古川橋から夢の島までで、そこから東京湾(芝浦ふ頭付近)までの部分が未開通なんだよね。
あと少しなのだ、すでに道路計画はないんだけど・・・。
環状6号線は山手通りのことで、品川から板橋まで。
リングの西側だけができている状態だよ。
そのまま環状にすると王子から浅草を通って隅田川に沿って南下するような形になるはずなんだよね(それは計画にはないみたいだけど・・・。)。
環状7号線からはそのまま環七と呼ばれていて、一番早くに全通したのだ。
かなり整備にお金がかかったようで、無用の長物とも批判されたらしいけど、今ではなくてはならない道路だよね。
平和島・大井埠頭から葛西臨海公園まで続いているのだ。
これは本当にくるっとまわっているんだよ。
最後の環状8号線こと環八は昨年やっと全通したんだけど、羽田の天空橋から赤羽まで。
山手通りと同じでリングの西側しかないんだけど、計画ももともとここまでなのでこれで全通なのだ。

で、どれをとて見てもよく渋滞することで知られる主要な幹線道路。
もしこれらの道路が作られていなかったらもっと大変なことになっていただろうね。
こういう道路の建設で江戸の情緒や街並みが失われた、という声もあるけど、都市として機能しなくなるよりはましなんじゃないかなぁ、と思うよ。
街をある手入ればまだまだ江戸時代とほぼ変わらない街の区画なんてよくあるから(例えば吉原の入口の吉原大門の「く」の字型の道路とか、下谷・入谷・谷中近辺なんかはそういうところだよね。旧東海道や旧中山道もその一部は今でも商店街として残っているのだ。)、ボクは作ってよかったと思うんだよね。

2007/11/29

沖縄の炒め

夏に食べそびれたそうめんが家にあったので、ソーミンチャンプルーを作って食べてみたのだ。
ネットでレシピを調べたら、特にこれといった形もなさそうなので、沖縄っぽいイメージで、玉ねぎ、ニンジン、キャベツ、もやし、かたい豆腐、卵、スパム(ランチョンミート)なんかを入れて作ったらわりとおいしくできたよ(スパムの塩味がポイントなのだ。)。
で、沖縄ではこういう炒め物のことを「チャンプルー」と呼ぶんだよねぇ、なんて思いながら、さらにちょっと調べてみたんだ。

「チャンプルー」というのはもともと琉球語で「混ぜこぜにした」というような意味ということで、野菜や豆腐を炒めた沖縄料理の総称なのだ。
長崎が有名な「ちゃんぽん」も「混ぜる」という意味だけど、インドネシア語・マレー語にも「チャンプール」という言葉があって、同じような意味なんだって。
朝鮮語にも「チャンポン」があるらしいので、これは東南アジアから東アジアにかけて共通の起源があるのかも。
なかなか興味深いねぇ。

沖縄のチャンプルーのポイントは野菜と豆腐で(一部豆腐が入らないものもあるけど)、豆腐は沖縄独特の島豆腐というとてもかたい豆腐を使うのだ。
この豆腐は水につけた大豆をまずすりつぶして豆乳を生のまま絞り、それを煮てにがりを加え、強めに重しをかけてかたくかためるものなのだ。
本土の豆腐は水につけた大豆を煮てからすりつぶして豆乳とおからに分けるんだけど、沖縄は生のまましぼるところが大きな違い。
この作り方をすると、木綿豆腐よりもさらにかたくなるんだよ。
なので、炒めてもまったく型くずれしないし、できあがった豆腐も水にさらさなくてもまったく平気なものらしいのだ。
ちなみに、米国内で売っている豆腐はとてもかたくて、「soft」というのを買っても木綿豆腐よりかたいのだ(>_<)
※日本では天然にがりの主成分である塩化マグネシウムでかためていたんだけど、もっと薄い豆乳でもかためられる硫酸マグネシウムなんかも使うようになって豆腐がやわらかくなっていったのだ。米国には古典的な製法が伝わったとかで、今でもかたいものを作っているみたい(マンガ「美味しんぼ」でブラック師匠が始めて出てくる回でそんな話があるのだ。)。たぶん、不器用だからかたい方が扱いやすいし、好きなんだろうね(笑)

沖縄は本土と違って仏教の影響を受けなかったから、肉も油もしっかりと食文化に取り込まれていて、よく摂取されているのだ。
琉球料理は本土のものより肉や油の使い方がうまいんだよ。
なので、このチャンプルーもなかなかおいしく栄養がバランスよくとれるように工夫されていて、豆腐や肉のタンパク質、野菜のビタミンや繊維質、そして肉や油から脂質がとれるのだ。
野菜炒めより多くのバリエーションもあるし、最近ではよく本土でも食べられるようになったんだよね。
ちょっとアレンジしてあるみたいだけど(特に重要な島豆腐が手に入らないので、同じものは作りにくいのだ。)。

チャンプルーは使う食材によっていろいろ種類があって、一番有名なのはニガウリを使ったゴーヤーチャンプルー。
この頃は居酒屋のメニューなんかにもあるのだ。
キャベツ(玉菜)を使うとタマナーチャンプルー、もやし(豆菜)を使うとマーミナーチャンプルー、青パパイヤを使うとパパヤーチャンプルー、ヘチマを使うとナーべーラーチャンプルーなどなど。
かためにゆでたそうめんと少しの野菜を炒めたソーミンチャンプルーもあるのだ。
ボクが作ったのは野菜チャンプルーのそうめん入りだけど(笑)

こうしたチャンプルーの特徴から、戦後の米国の統治期間を含めて、琉球独自の文化と、日本列島本土(特に薩摩)、東南アジア、中国、米国などの文化が混ざった沖縄の文化を「チャンプルー文化」なんて呼ぶらしいよ。
かなり柔軟に文化を受け入れて、自分たちのものにしてきたんだよね。
タコライスとかスパムの味噌汁なんかはその典型なのだ。
沖縄は昆布を大量に食べることで有名だけど、沖縄では昆布はとれないので、これも外来の文化なんだよね。
そういう面を見ると、沖縄の文化はとても興味深いのだ。
ボクは特に食文化が気になるけどね(笑)

2007/11/28

海のミルク

ワシントンDCは南北で言うとだいたい真ん中あたりにあるんだけど、地域区分だと南東部とされることが多いのだ。
でも、気候的には北東部に近いので、食文化もそうなっているんだよ。
海はないけど川があって海からもそんなに遠くないので、シーフードはわりと有名で、ボストンほどじゃないにしても、エビやカキは名物になっているのだ。
今回はそんなカキについてちょっと調べてみたよ。

カキは岩などにへばりついている二枚貝で、海の底の岩から「かきおとす」ことからカキと呼ばれるようになったんだって。
漢字では牡蠣と書くけど、本当は「蠣」だけで「カキ」という意味になるらしいのだ。
でも、わざわざ「オス」をつけるんだよね。
そのむかしは、一般に貝には雌雄で色の異なる部分があって、それが白いとオスと考えられていたらしいんだけど、カキの場合は全身が白いので、メスがいないオスだけの貝だと考えられていた、というのがその理由なんだそうだよ。
ものすごい話なのだ。

カキは「r」のつかいない月、つまり、5、6、7、8月は食べられないというけど、これはマガキの話で、マガキはこの時期に産卵期で生殖器が発達して食用とはならないためなのだ。
でも、もう少し大型のイワガキは別にこの時期でも食べられるので、基本的には1年中食べられるんだよ(イワガキもマガキ同様養殖できるのだ。)。
イワガキは夏に食べられるので「夏ガキ」とも呼ばれるようなのだ。
少し大型で、殻が緑色っぽいんだよね。

でも、カキの殻は岩にへばりつきながら成長していくので、形も表面のデコボコも一定じゃないのだ。
なので、カキの種類の分類はものすごく難しくて、分子生物学的に遺伝情報レベルで詳しく調べているそうだよ。
ひょっとするとまだ未分類の種類が隠れていたりして。
この殻にはしましまがあることが知られているけど、これは木の年輪のようなもので、カキの殻の成長線なのだ。
ハマグリやアサリでも見られるけど、ハマグリやアサリはきれいに貝殻の形がその形のまま大きくなっていってるのに対し、カキはへばりついた岩の形状で殻の成長の仕方が違うからこの線もランダムな曲線に見えるんだよね。

カキの栄養はなんと言っても豊富な亜鉛。
全食品中でずば抜けて多いのだ。
カルシウムなんかの他のミネラルも多いみたい。
それと、うま味があることからわかるようにアミノ酸やグリコーゲンもたくさん含んでいて、お菓子のグリコ(キャラメル)はそれまでは捨てられていたカキの煮汁からグリコーゲンを抽出してキャラメルに混ぜて作られていたんだよ。
グリコのグリコはグリコーゲンのことなのだ。
一粒300mは、ひとつ部分の栄養素がちょうど300mを全力疾走するときに必要なエネルギー量だからなんだよね。

カキといえば天然物と養殖物があるけど、日本では縄文時代から食べられ始め、室町時代にはすでに養殖が始まっていたとか。
カキは欧米でも生食される珍しい魚介類なんだけど、欧州原産のカキのヨーロッパヒラガキは1970年代以降寄生虫などの害で激減し、現在は日本山のマガキを輸入して養殖しているんだって。
なので、フランスで生ガキを食べても日本のマガキかもしれないのだ!
ちなみに、英語のoyster、フランス語のhuitreは日本語のカキよりも少し広い概念で、岩にへばりついている不定形の二枚貝で、表面がなめらかでないものはみんなそう呼ぶみたい。
なので、そもそもカキとはまったく異なる種類の貝も含まれるらしいよ。

欧米の人は生ガキが好きだけど、ボクはやっぱりカキフライが一番好きだね。
基本的に熱を通した方がうま味は増すのだ。
でも、魚介類は長時間熱を通すとかたくなってしまうので、カキ鍋だと煮すぎる可能性があるんだよ。
その点、カキフライだとさっと瞬間的に火を通すことができて、かつ、衣でカキのうま味も閉じこめることができるので、かなりおいしく食べる方法なのだ。
最初に考案した人は偉いよ。

ちなみに、カキには生食用と加工用があるけど、これは必ずしもカキの新鮮さによる分類ではないのだ。
むしろ、生食できるかどうかは病原性を持った微生物やウイルスの存在の有無で決まっていて、最近やウイルスは多くの場合生育環境である海水に由来しているんだって。
なので、生食用のカキの場合は、汽水域で植物性プランクトンを豊富に食べたカキを紫外線滅菌された介す一中で数日間飼育し、その間に断食させて無菌状態に近くしているんだって。
こうすると病原体はいなくなるので生食できるようになるんだけど、その分身がやせてしまうので、加工用のものの方がおいしかったりすることもあるみたい。
当然、海水がとてもきれいなら天然物でも生食できるんだけどね。

2007/11/27

降った水はいかほど

日本の天気予報ではよく降水量は○○mmくらい、とか言うけど、米国の天気予報だとそこまで細かいことは言わないで、雨が降る可能性がある、くらいのことしか言わないのだ。
そういう意味では、日本の予報になれたボクとしては少し情報不足のような気がするんだよね(>_<)
ま、予想される降水量を知ったところでどうしようもないと言えばそうなんだけど(笑)

この降水量というのは単位時間内に単位面積あたりに降る雨、雪、ひょう、あられなどを水に換算したときの量で、どのくらいの高さまで水がたまるかでmm単位で表すのが普通なのだ。
氷は水煮比べて体積が増えているし、雪になると空気もたくさん含まれていて密度が違うので、いったん水にしてから計測するんだって。
単純に雪が積もった量を表すときは積雪量という指標を使うのだ。

1967年までは0.1mm単位で計測していたらしいんだけど、今では0.5mm単位なんだって。
どうもアメダスで自動で気象データを集めるようになってからこうなったようなのだ。
アメダスの自動観測機器は各地域ごとに設置されていて、定期的にデータを送ってくれるんだけど、その中に雨量計もあって降水量のデータも送られてくるのだ。
このアメダスの仕様が0.5mm単位なんだよね。
ちなみに、雪などはきちんと融かしてから計測できる仕組みらしいよ。

よく天気予報などで聞くのは1時間あたりの降水量だけど、雨の多さを表すには日降水量というのをよく使うのだ。
これは0時から24時までの間の降水量なんだけど、深夜から未明にかけて雨が降っていると日付をまたいでしまうので、そういうときは任意の24時間を対象とする24時間降水量というのを使うんだそうだよ。
降水量は雨の強さを表す指標でもあるので、こういう措置が必要なのだ。
小学校や中学校の社会科では、月間降水量で○○気候とかの特徴を教える場合もあるよね。
日本国内でも尾鷲市は異様に降水量が多いとか、そういう特徴を見るときにこのデータは役に立つのだ。

ちなみに、1時間に1mmの降水量だと、普通の人の頭の上(50cm×50cm)に1時間あたり125ccの水(コップ半分程度)が降ることになるんだって。
このくらいだと傘がなくてもいいや、と思えるくらいなんだけど、2~3mmになると傘をさす人が多くなるような雨の降り方なんだって。
ま、個人差はあるけど、2mmだと1時間傘をささずに歩くとコップ1杯分くらいの水を浴びせられているのと同じということだよね。
これが1時間に3mm以上の降水量になると、舗装されていない道路では水たまりができるくらいの雨量なんだって。
地域で基準は異なるけど、20~40mmで大雨注意報が、40~60mmで大雨警報が出るくらいの雨量だそうなのだ。

2007/11/26

いわゆるカップケーキ

米国ではどこに行ってもマフィンが売っているんだよね。
日本でもスタバではよく見かけるけど、米国ではコンビニだろうが、街中のスタンドだろうが、どこにでも置いてあるのだ。
どうも米国には日本のようにおにぎりや菓子パンといった軽食類が少ないから、ちょっと小腹が空いたときなんかにマフィンを食べるみたい。

マフィンというのはいわゆるカップケーキで、通常は紙のシートをひいたカップの中で焼き上げるのだ。
なので、必ず下に紙がくっついているんだよね。
マフィンはパンとほぼ同じ材料だけど甘めに作ってあって、ドライフルーツやナッツなどを入れることも多いんだよね。
さらに、パンではなくてあくまでも焼き菓子たらしめているのは、イーストで発酵させるのではなく、ベーキング・パウダーでふくらませている、ということなのだ。
ベーキング・パウダーの量でふっくら感は違ってきて、ものによってはずっしりしたものもあるんだよね。
英国ではカップケーキ型のもののほかに、丸型で焼いたパン状のものもあるんだって。

で、このマフィンをふくらませているベーキング・パウダーなんだけど、主成分は炭酸水素ナトリウム、いわゆる重曹なのだ。
重曹は重炭酸曹達(ソーダ)の略だよ。
重曹の化学式はNaHCOだけど、重曹は熱が加わると分解して、NaOH(水酸化ナトリウム、苛性ソーダ)とCO(二酸化炭素、炭酸ガス)になるんだ。
さらに、水酸化ナトリウムは未反応の重曹と中和反応をして、NaCO(炭酸ナトリウム)とHO(水)になるのだ。
このときに発生する炭酸ガスによって生地がふくらんでふわふわになるというわけ。
ベーキング・パウダーの場合は、この分解を促進するように酒石酸やリン酸ナトリウムなんかが入れられているんだって。
最後にできる炭酸ナトリウムはそのままでは苦い味がするんだけど、酒石酸なんかが入っていると中和されて無味になるのだ。
分解する前の重曹は少し苦くて、酒石酸は少しすっぱいので、ベーキング・パウダーをなめると下がしびれるような独特のまずさなのだ(>_<)

イーストで発酵させる場合も、発酵の過程で出てくる炭酸ガスで生地がふくらむんだよね。
でも、イースト発酵の場合は焼く前にすでに生地がふくらんでいるんだけど、ベーキング・パウダーを使う麻ぢんやスポンジ・ケーキの場合は焼きながらふくらんでいくのだ。
なので、パンは焼くと少し縮まるんだけど、マフィンはスポンジ・ケーキは焼くとふくらむんだよね。
カップにギリギリに生地を入れて焼くと、マフィンはふくれ上がって独特のキノコ型になるというわけなのだ。
パンとマフィンの表面の堅さの違いもきっとこのふくらみ方の違いが影響しているんだろうね。
マフィンは焼きながらふくれて炭酸ガスが抜けていくから表面にも細かい穴が開いてやわらかいけど、はじめからふくらんでいるパンはそういうことがないからしっかり焼かれてかたくなるのだ。

2007/11/25

絵の具

米国に来てから無料で見られるのをいいことによく絵を見に行くようになったんだけど、いろいろな絵の具があることに気づいたんだよね。
水彩や油彩、日本画の顔料なんかも知ってはいたけど、水彩にも油彩にも種類があるようだし、アクリル絵の具なんてのもあるんだよね。
それぞれ特徴があって、使い分けられているようなのだ。

絵の具は色のついた粒子(顔料)をその粒子を溶かして画面に付着させる媒剤からなるのだ。
媒剤が水だと水彩、油だと水彩というわけ。
水彩絵の具は当然水に溶けるものでないといけないし、油彩絵の具は油に溶ける又は懸濁できるものであることが必要なのだ。
で、この媒剤が蒸発して乾燥すると、画面上に絵の具だけが残って、絵が完成するというわけ。
一般に水彩は油彩に比べて乾くのが早いし、重ねぬり(色の重ね)なんかもできるし、ぼやかしたり、にじませたりすることもできるという特色があるんだよね。

水彩といえば学校の美術の時間でも使うけど、あのチューブに入った絵の具は顔料の粉とアラビアゴムを混ぜたものなんだって。
それを水にといているのだ。
で、水彩絵の具には、透明感のあるウォーター・カラーというやつと、ポスター・カラーなどの不透明なやつもあるのだ。
学校で使っているのはその中間のマット水彩というやつなんだって。
ウォーターカラーだと均一な色にぬるのが難しいけど、ポスター・カラーだとけっこうきれいに均一にぬれるんだよね。
これはポスター・カラーが不透明で下の色を透かさないからで、その分、色の重ねやぼかしができないということなんだよね。
ちなみに、ポスター・カラーは顔料自体が異なることもあるけど、アラビアゴムの比率が違うということが大事みたい(一般的に不透明なポスター・カラーの方がアラビアゴムが少ないみたい。)。
ちなみに、日本画に使う粉末状の絵の具の岩絵の具(辰砂やクジャク石、ラピスラズリなどの粉末)はにかわにとかして画面に付着させるんだけど、これも水彩に分類されるみたい。

中世からルネサンス期の精密な風景画や宗教画に使われていたのはテンペラというもので、乳濁液を媒剤としたものなのだ。
水性の溶媒の中に油性の粒子を分散させたものと、油性の溶媒の中に水性の粒子を分散させたものがあるんだよね。
有名なのは卵の卵黄で絵の具をといた卵テンペラで、卵の黄身は水性の溶媒の中に油の細かい粒子が分散しているんだけど、この油の粒子の中に親油性の顔料を入れて色を出すのだ。
壁画にはあんまり向かないもので、油彩の登場によって徐々に廃れていってしまうのだ。
美術館でよく修復しているのがこのテンペラがだけど、時間が経って劣化してくるとぼろぼろと絵の具が鱗状にはがれ落ちてくるんだよね。

で、20世紀になると、アクリル樹脂の乳濁液(エマルジョン)を媒剤とした絵の具が登場するんだけど、これがアクリル絵の具。
水彩ではぬりにくい紙粘土などにもぬれるのだ。
乾くのもわりと早くて、水彩と同じように重ねぬりしたり、ぼかしたりすることもできるんだ。
水彩絵の具は乾いた後もぬれるとまた絵の具が溶け出して絵がダメになっちゃうんだけど、アクリル絵の具はその点も大丈夫なのだ。
水彩のようにも油彩のようにも使えるというのが特徴みたい。

日本のお家芸のひとつの漆器も漆をぬっているんだけど、漆も乳濁液になっていて、テンペラやアクリル絵の具と同じような絵の具なのだ。
むかしは赤い漆と黒い漆くらいしかなかったけど、最近ではいろんな顔料を混ぜることができるようになって、彩漆なんていって、かなり多色にできるようになったみたい。
でも、伝統的には赤か黒の漆に金や銀などをはめ込むんだよね。
このときは絵の具としてだけでなく接着剤つぃても使っているのが特徴なのだ。
漆は天然の樹脂だから、アクリル絵の具と同じようななものと言えばそうなんだけど。

最後の油彩は文字どおり油にとくから油彩なんだけど、ここで使う油は乾性油という特殊なものなのだ。
これは酸化してくると硬質化(重合)する油で、絵の具ごと油がかたまってしまうというわけ。
でも、酸化して化学反応しないとかたまらないので、油彩の乾燥にはとても時間がかかるのだ。
ゴッホさんの絵のようにキャンバスから立体的にぬった後がわかるようになっているのが油彩の特徴だよ(あそこまで絵の具をぬりつける必要性は必ずしもないのだけど・・・。)
乾燥時間が長いので、その間に微妙に色を混ぜてみたり、途中で拭き取ったりする尾kとができるのが特徴で、仕上がりも少しぬれた感じの光沢のある仕上がりになるのだ。
でも、油がかたまるときに少し黄色くなるので、白い色をぬったつもりでもクリーム色になったりするんだよね。
これは普通の食用油が酸化してくると黄色くなるのと同じ現象なのだ。

2007/11/24

薬屋

米国で最大の薬局チェーンのCVS/PharmacyはDCにもたくさんあって、薬局とはいいながらドラッグストアに近くて日用品やお菓子、飲み物も置いているのでボクもよく買い物に行くのだ。
でも、ここは薬局だけあって調剤業務もやっているんだよね。
日本でもマツモトキヨシは調剤をやっているけど、米国のドラッグストアは基本的に調剤はしないので、やっぱり薬局(pharmacy)で、これがCVSの大きな特徴なのだ。
で、CVSって24時間営業のお店があるんだよね。
そういうお店はやっぱり調剤業務は時間を限定しているのかな?
そうでないと24時間薬剤師さんを勤務させないといけないよね。

一方、日本のドラッグストアには2種類あって、薬局と薬店に分かれるのだ。
薬局は薬事法という法律に定められているもので、薬剤師さんがいて医師・歯科医師からの処方せんに基づいて調剤を行うお店なのだ。
医療機関以外で調剤を行うのが薬局だよ。
なので、処方せんがないと買えない医療用薬品を扱っているんだよね。
保険が使える薬局の場合は更に保険薬局と呼ばれるのだ。

もうひとつの薬店は薬事法上は一般販売業というやつで、いわゆる大衆薬(OTC:Over the Counter)の一般用医薬品を売っているお店。
一般用医薬品は処方せんがなくても買えるかぜ薬やうがい薬、ぬり薬なんかだよ。
でも、薬事法の規定では、一般販売業の薬店であっても、医薬品の管理を行う薬剤師さんを置かないといけないとしているのだ。
なので、けっきょく薬剤師さんを配置しないといけないんだけど、都道府県知事の許可を得た場合はその薬剤師さんの兼業も認められたりするので、そういうので対応していたりするのだ(悪質なものは「名義貸し」と呼ばれるんだけどね。)。

米国では国民皆保険制度をとっていないこともあって医療費がもともと高いのでそんなに薬を出さないし、医薬分業も進んでいるので、基本的に病院では診察しかしないのだ。
で、街の薬局に行って医師の処方せんに基づいて薬をもらうんだけど、そのときにより安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)なんかを選択することもできるのだ。
後発医薬品というのは、薬の有効成分に関する特許がきれた後に同じ成分を使って安く大量に作られる医薬品のことで、むかしは「ゾロ新」なんて呼ばれていたんだよね。
製造法を工夫することでコストを抑えたりすることができるし、特許使用料も発生しないので安く提供できるのだ。
最近は日本でも使われることが多くなっているよ。

で、日本の場合は厚生労働省はむかしから医薬分業を提唱しているんだけど、これがなかなかうまくいかないんだよね。
問題のひとつは病院の収入の大きな割合を薬品が占めていることで、悪い言葉では「薬漬け」なんて言われたけど、何かあればすぐ検査して薬を出す、というようなことでもしないとなかなか病院経営は黒字にならないのも事実なのだ。
で、厚生労働省は医薬分業を進めるために保険点数の見直しなんかをしているんだけど、あんまり進まないんだよね(>_<)
もうひとつの原因は、調剤をする薬局には医薬品を常に常備しておく義務があって、基本的には調剤を断れないのだ。
で、実際に医薬分業が進むと、今度は薬局の方がいろんな医薬品を常に備えておかないといけないからつらいというわけ。
調剤業務による収入はあるけど、医薬品のデッドストックによる損失が大きくなるリスクがあるのだ。

でも、医薬分業のメリットはかかりつけの薬局を作れることなんだ。
病院で調剤してもらうと、別の病院にかかっているときにそこでどんな薬が出されているかの情報がわからないことが多いんだよね。
でも、医薬分業で薬は必ずかかりつけの薬局でもらうようにすると、その薬局で薬の情報が一元化されるのだ。
薬の中には一緒に飲むとまずいもの(飲み合わせの悪いもの)なんかがあるので、そこでそういう事故が防げるというわけ。
今でもお薬手帳なんかで服用している薬の情報をまとめる取組は行われているけど、気軽に相談できるかかりつけの薬局があればなおよい、というコンセプトなんだ。
ま、たしかに理想的ではあるんだけど、そのためにはまだまだハードルが高そうなのだ。