2010/04/23

立体視の偽

ついこの間デジタル・ハイビジョンが出てきたと思ったら、今度は立体テレビが出てきたねぇ。
これまでは専用のメガネが必要だったりしたけど、ついに裸眼でも立体的に見えるディスプレイが開発されたのだ!
なんでも、次世代型のDSではその立体視ディスプレイが装備されるのだとか。
なんだかむかしアニメで見たようなホログラフィーが浮き上がってくるディスプレイのようだねぇ。
で、こうなると気になるのが、なんで立体的に見えるか、ということで、さっそく調べてみたよ。

まずおさらいをしておかないといけないので、人間がどうやって立体視をしているかという話。
人間や多くの猿、一部の鳥では、目が顔の正面に並んで二つついているので、ものを立体的に見ることができるのだ。
これは、右目で見たときと左目で見たときでは入っている映像情報が異なり、その「差」(ずれ)を脳内で「奥行き」として処理しているからなんだ。
このずれのことを両眼視差と言っていて、近くにあるものであれば差が大きく、遠くにあると小さくなるのだ。
簡単にイメージしてみると、右目で見ればものの右側がより深く見えるし、左目だとその逆になるので、両目で見られる中心の共通領域と片目でしか見えない領域との見え方で奥行きを判断しているということになるよ。

草食動物や魚のように顔の側面に目がある場合はあまり立体視が得意じゃないんだよね。
目が顔の前方に並んでいると目だけで見渡せる範囲は狭くなるけど(そのために首の運動で顔の面を動かす必要が出てくるのだ。)、立体視ができるので奥行きや距離感をつかみやすく、遠近感覚に優れるのだ。
一方、目が顔の側面にある場合、立体視がしにくいので、対象が自分からどの程度離れているかは見える大きさだけで判断する必要があるんだけど、その分一度に広範囲を見渡せるんだよね(自然界では外的などは当然大きさがあらかじめわかっているものなので、さほど不自由はしないみたい。)。
これは進化の過程でどちらがその動物の生活環境に有利だったか、ということにつながるんだよね。

これが人間が立体視をしている原理なんだけど、逆に、左右の目にずれのある画像情報を送ることができると、脳内で勝手に「奥行き」があるものと処理して立体的に見えるようになるのだ!
これは一種の錯覚で、遠近法を使った絵に奥行きが感じられるようなものがさらに高度化されているようなものかな?
で、右目用の情報と左目用の情報をどうやってそれぞれの目に届けるかで、立体映像の方式が変わってくるわけ。

ホログラフィーのように三次元像を再現する技術もあるようだけど、ディスプレイに使う場合は、平面の画面に映し出された映像を見て、それを立体的だと錯覚するようにし向けているんだよ。
もっとも古典的なのは赤と青のメガネを使うもので、赤いセロファンを通すと青色の映像情報だけが目に入り、青いセロファンを通すと赤色の映像情報だけが目にはいるので、これを右と左に振り分ければよいのだ。
雑誌の付録にもよくついていたようなものだよね。
でも、このままだとモノクロ映像になってしまうのだ。
最近はカラー情報を残すこともできるようになっていて、それを使った立体映像のアニメなんかもあったよね。
でも、青と赤のフィルターを通すという原理を使う限り、どうしてもカラーバランスは崩れてしまうのだ。
その分技術的に簡単で安くすむようだけど。

ここからもう少し進化したのが偏光を使ったもの。
一般に偏光と呼ばれるのは、電場(又は磁場)の振動方向がそろった光のことで、直線的に振動するのが直線偏光、振動面が回転していくのが円偏光と呼ばれるのだ。
自然光の場合はいろんな方向に振動している光(=電磁波)が混ざっているんだけど、偏光子と呼ばれる素子を通すことで振動面をそろえて偏光に変換することができるんだ。
この偏光子は逆方向から見ると偏光フィルターにもなっていて、特定の振動面を持つ偏光しか通さない性質があるので、これを利用して左右の目に別の映像を振り分けることができるのだ。
右用・左用それぞれの映像を異なる振動面を持つ偏光で作っておいて、偏光フィルターのついたメガネをかけると片側の偏光の映像だけが目に入ってくるという仕組みだよ。
遊園地などにある立体映像のアトラクションは主にこの原理を使ったもので、入るときにわたされるサングラスのようなメガネが偏光メガネで、あれがけっこう高価なんだよね(笑)

最近出てきているのは液晶シャッターメガネを使うもの。
これは、画面上は右目用映像と左目用映像が高速で入れ替わっていて、それに合わせてメガネのレンズにシャッターが下りて片目だけに映像情報が入るという仕組み。
左目用映像を映し出しているときには右目のシャッターが下りているのだ。
実際には何かが物理的に下りてくるんじゃなくて、鋭気称になっていてそこに電圧をかけて一時的に見えなくするというメカニズムみたい。
すぐれた仕組みで、二重にぶれた映像を流していないので裸眼でそのまま画面を見ても気持ち悪くないのだ(笑)
ただし、メガネの方を無線で画面に合わせて駆動させなくてはいけないので、けっこう大がかりなものではあるし、けっきょくメガネが必要なのだ。

そこで出てきているのが裸眼で立体視できるもの。
現在報道などで出てきているのは2つで、メガネなしでも左右の目に別の映像を届けようとする手法と、そもそも普段目から入ってくる視覚情報のように映像情報を光線として再現する手法なんだって。
前者は、画面に細かなスリットが入っていて、二重に映像を映し出しても、スリットによる解説で右目用の映像は右方向に、左目用の映像は左方向に出てくるというもの。
まもなく量産も開始されるそうだけど、メガネがいらないとは言いながら、画面を正面から見ないとうまく立体的に見えないのが難点なのだ。

そこも解消する技術がNHK放送技術研究所なんかでやられているインテグラル立体テレビシステムというもので、屈折率の異なる複数のレンズを通して撮影し、それをやはり屈折率の異なる複数のレンズを通して映像として映し出すことで、普通に目に入ってくる視覚情報と同じような光線の波面が再現されるんだとか。
簡単に言うと、普通にものを見たときの視覚情報を擬似的に再現して映し出してくれということだよ。
これだと、側面から見ても、寝転がってみても立体的に見えるそうなのだ!
すごい技術だねぇ。

というわけで、立体テレビはどんどん技術が進歩していて、そのうちに浸透していくみたい。
ゲーム機にまで採用されれば、立体放送が標準化されるのも近いかな?
でも、地デジですら導入が遅れているのに、またすぐに立体テレビじゃなかなか浸透しないだろうけど。
とりあえずは、裸眼でその映像を見てもぶれて見えないけど、対応テレビで見ると立体的に見える、というのから始めるとよいのかもね。

2010/04/15

直接描く絵の具

たまたまつけていたテレビでクレヨンとクレパスの違いを紹介していたのを見たのだ。
実は同じものだと思っていたので「目からウロコ」の興味深い話。
で、自分でももう少し掘り下げて調べてみたよ。

最大の違いは、クレヨンは一般名称だけど、クレパスはサクラクレパスの登録商標なんだって。
つまりは商品名で、その一般名称はオイルパステルというらしいのだ。
見た目の違いとしては、クレヨンはかたくて先がとがっているけど、クレパスはやわらかめで先がとがっていないのだ。
で、ここまでわかるともう区別はつくよね。

で、まずはクレヨンの正体だけど、もともとは顔料をろう(固形ワックス)で固めたもので、色鉛筆よりもなめらかに紙に描くことができる画材として使われるのだ。
顔料というのは水や油に溶けない色のついた細かい粒子のことで(逆に水や油に溶けるものを染料と言うよ。)、その細かい色のついた粒子がろうの中で分散しているというわけ。
紙の上で滑らせると、紙の表面のでこぼこによって顔料入りのろうがけずられ、紙の上に付着するんだ。
顔料だけだと紙に付着しづらいけど、ろうによって定着するというわけなのだ。
ちなみに、現在国内で販売されているクレヨンは顔料とろうだけでなく、そこに体質顔料(水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタンのような白い不溶性の粉末に染料で色をつけたもの)と液体油も付加されていて、よりしっとり(?)、よりやわらかく、描きやすくできているそうだよ(海外のものはいまだに顔料とろうのみなので、日本のものに比べて固いそうなのだ。)。

一方、クレパスというのは、一般に固くて描きにくいというクレヨンを改良したもので、海外でデッサンなどに使われるパステルのようなやわらかい書き味を実現しようと発明されたものなのだ。
具体的には、クレパスでは体質顔料と液体油の含有量が多くなっていて、よりなめらかに紙の上に描けるようになっていて、それで混色したり、色をのばしてぼやかしたり、なんてことができるようになっているんだ。
ただし、輪郭線をしっかりと描きたい場合はクレヨンの方がしっかり描けるので向いているみたい。
クレパスの先がとがっていないのは、クレヨンのような線描ではなく、パステルのように面描するのに向いているということがあるみたい。

で、そのパステルはというと、顔料を粘着剤でゆるく固めたもので、よくデッサンに使われるのだ。
でも、顔料を紙に塗りつけるだけで粉がぼろぼろ出るし、きちんと定着させるためには定着液を噴霧しないといけないなどのプロ仕様の画材なんだよね。
とは言え、パステルカラーなんて言葉があるように、原色だけでない、中間的な淡い色合いを出すことができるし、重ね塗りで混色もできるしと、色合いに広がりを持った画材なんだよね。
で、クレヨンのような定着の良さでパステルのような色合いを出せる、ということでクレパスが誕生したのだ。

似たようなものに、やはり同じサクラクレパスが開発したクーピーペンシルというのがあるよね。
こちらは全体が色鉛筆の芯というモチーフで考案されたもので、顔料を合成樹脂やワックスで固めたものなんだそうだよ。
色鉛筆と違って消しゴムで消せるという特徴があって、折れづらい、削りやすい、手に色がつかないなどのメリットもあるのだ。
最近はその使いやすさからクレヨンやクレパスに取って代わって子どものお絵かきに使われることが多いよね。

クレヨンやパステルはそのまま描ける絵の具として考案されたもののようだけど、それがさらに進化して使いやすいものになってきているのだ。
その一方で、芸術家の観点からは、使いやすさだけでなく、色合いや色の定着の特性などもあるので、どれもなくなることはなく、棲み分けているんだよね。
大人になったらそういう特性もふまえながら画材を選ばないとね(笑)
最近は100円ショップなんかでも売っているし、ひさびさにお絵かきをしてみたくなったよ。

2010/04/08

重力で回す

宇宙航空研究開発機構の発表によると、火星と木星の間にある小惑星イトカワにタッチダウンしてきた「はやぶさ」がまもなく地球に帰ってくるのだ。
小さな探査機ながら、火星より遠くまで行き、そして、もどってくるんだよね。
しかしながら、その旅路は決して順調ではなく、姿勢制御に使うリアクション・ホイールは不調、推進剤をスラスタで噴射する化学推進系も不調、バッテリーも不調で太陽電池パネルが頼り、唯一残された電気推進系のイオンエンジンも万全ではなく、ギリギリの運用で満身創痍でもどってくる、というイメージなんだそうだよ。
しかも、最初はサンプルが回収できているんじゃないか?、と期待されている試料回収カプセルを地球に射出する計画だったようなんだけど、現在の計画では、本体ごと豪州に着陸するものに変更になっているのだ(本体のほとんどは大気圏で燃えてしまうけど・・・。)。

で、この「はやぶさ」の一連の探査で話題になったのは「スイングバイ」という航法。
太陽系探査機でよく使われる航法で、燃料をほとんど消費せずに進行方向の変更とともに加減速を行うことができるのだ。
いろんな機能が不全になってしまった「はやぶさ」も、詳細な軌道計算の結果、スイングバイなどを活用して小惑星イトカワまで到達し、そして、地球まで帰ってくることができるようになるのだ。
燃料をほぼ消費せずにできるというのがポイントで、だからこそ使える技なんだよね(笑)

宇宙空間を移動する場合、基本的にはほとんど何も抵抗となるものがない状態なので、一度力を与えると慣性で等速度運動をするのだ。
なので、加減速だけでなく、進路変更をする場合にもスラスタを噴射して軌道修正のための「新たな力」を加えてやる必要があるわけ。
ところが、ロケットの打上げ能力に限界があるので、探査機に積載できる燃料には自ずと制限があって、できれば燃料を使わずに軌道修正をしたい、ということになるのだ。
そこで考え出されたのがこのスイングバイで、近傍の天体の重力を使って進行方向を変えるので、重力ターンとも呼ばれるよ。
近傍を飛行するだけだと「fly by」だけど、近傍を飛行しつつ進行方向を振るので「swing by」なのだ。

スイングバイのミソは探査機よりはるかに巨大な天体の重力を使うということ。
探査機が天体の近くを通ると、探査機とその天体の間での重力が無視できない大きさになり、互いに引っ張られるのだ。
2つの物体の間に働く重力はその物体の質量に比例するので、相手側の天体の質量が大きければ大きいほど重力も大きくなるし、相手側が大きいと、探査機が一方的に天体側に引き寄せられることとなるんだ。
この天体に向けて引き寄せられる力をもとにして探査機の進行方向を変えるんだよ。
ベクトルで考えるとわかりやすいけど、近づいた天体をくるっと回る形でターンをすることになって、どこまでその天体に近づくかで回る度合い=進路変更の度合いも変わってくるよ。
探査機ももともと動いているので、天体に近いところではより強く、遠いところではより弱く重力の影響を受けることになって、そのためにブーメラン型に曲がることになるんだ。
完全に重力圏にとらわれてしまうとその天体の周回軌道を回ることになるよ。
さらに、あんまり近づきすぎるとその天体と衝突してしまうのだ。
一度重力圏にとらわれてしまうと脱出速度まで加速する必要があるんだけど、逆に一度着陸した天体から飛び立つ場合は、この脱出速度を超える速度まで加速すれば再び宇宙空間に出られるのだ。
地球から飛び立つ場合、この速度を「第二宇宙速度」と言うんだよね(この速度を超えない限り、地球を周回する人工衛星になってしまうのだ。)。

スイングバイの場合、ただ進行方向を変えるだけでなく、探査機の速度も変わっているのだ。
制止している天体の近くを通るのであれば進行方向が変わるだけなんだけど、その天体が動いている場合、重力の働く方向が常に変わるので、その影響を受けるというわけ。
太陽の周りを公転している惑星でスイングバイをする場合、その公転速度の分が上乗せになれば加速するし、逆の場合は減速になるのだ。
実際には、公転方向に対して航法から近づいてスイングバイすると、探査機の進行方向と惑星の公転の進行方向に重なる部分が出てくるので、公転速度が上乗せになって加速になるのだ。
逆に、公転の進行方向に前方から近づくと、探査機の進行方向と惑星の公転の進行方向がバッティングするので、逆に減速してしまうよ。
ちなみに、公転面に対して垂直方向から近づいた場合、この加減速は影響しないけど、公転方向に引きずられて弧を描いて曲がることになるのだ。
実際には三次元的なのでもっと難しいはずで、しかも、スイングバイによる軌道修正は近づくときの小さなずれが大きく増幅される可能性もあるので、高度な軌道制御技術と精密な運用が必要なんだって。
そうそう簡単に燃料なしでターンをさせてもらえるわけではないのだ(笑)

燃料を使わずに加減速をしているわけだけど、エネルギー保存の法則は成り立っているわけで、探査機はどこからかエネルギーをもらっていることになるんだよね。
実際は、近くを通る天体からもらっているのだ!
スイングバイをするのに探査機が天体に近づいたとき、天体が巨大なので一方的に天体の重力で探査機が引き寄せられると考えがちだけど、実際には両物体の間に働いているのは万有引力なので、天体の探査機に引き寄せられているのだ。
加速スイングバイの場合、探査機は天体の公転方向の後ろから近づくけど、そうなると、天体は公転方向と逆向きに引っ張られるというわけで、その分の公転の減速分のエネルギーが探査機の加速分のエネルギーに振り替えられているのだ。
ただし、天体があまりにも大きいので、その変化分はほぼ無視できるというだけ。
エネルギーは質量と速度の二乗に比例するので、同じエネルギー変化でも質量が大きいと変化がごくごく微細なものになるのだ。
そうでないと惑星の公転軌道が変わってしまって大変だけど(笑)

で、「はやぶさ」はそんなスイングバイを活用して宇宙を旅して帰ってくるのだ。
でも、その成果は、火星に行こうと必死の努力をして、けっきょく届かなかった「のぞみ」の上に立っているんだよね。
日本は、月に行った「ひてん」のときにスイングバイ技術を習得して、「のぞみ」の運用でノウハウを蓄積し、それを活用して「はやぶさ」の奇跡的な運用につなげているのだ。
その積み重ねがなければここまでこられなかったというわけで、火星には行けなかったけど、「のぞみ」の成果はきちんと活かされているんだよ。

2010/04/02

春眠暁を覚えず?

いよいよ本格的に春がやってきたのだ♪
それにしても、春になると心地よい陽気で眠くなるねぇ(=o=)zzZ
ぼーっとしているとついついうとうとしてしまうのだ!
でも、動物の世界ではむしろ逆。
冬眠していた動物たちが目覚めて活動し出すんだよね。
実は、この冬眠もただ眠っているだけ、ではないのだ。

冬眠する代表的な動物と言えば両生類やは虫類のような変温動物。
気温が一定温度以下になると、越冬すべく土の中や池の中で「冬眠」するのだ。
でも、これは「眠っている」というよりはむしろ「仮死状態」になっているだけで、ギリギリ生きているという状態まで代謝が低下している状態。
体温は外気温に並行してぐんぐんと下がって、冷たくなっていくのだ。
それであたたかくなると体も温まり、代謝が再び活性化されて目覚めるというわけ。
もともと変温動物は体温を一定に保たない代わりにエネルギー消費が抑えられていて、エサを頻繁に食べる必要がないんだけど、その絶食期間が長くなっただけ、とも考えられるのだ。

体温が下がっていくと言っても、体の中の水分が凍結して氷になってしまうと細胞が破壊されていくのでさすがに生きていけないのだ。
液体窒素なんかで一気に冷凍するとそれが避けられることもあるけど、自然界で徐々に周囲の気温が下がっていくような場合ではそうはいかないんだよね。
でも、氷の張った池の中でカエルが冬眠していることがあるよね。
これは、凝固点降下のおかげで、電解質(ナトリウムやカリウムなどのイオン)や糖分に富む細胞中の水分は0度より低い温度にならないと凍結しないから。
氷の張った水の下でワカサギが泳いでいられるのもそのおかげだよ。

さらに、両生類・は虫類の場合は、冬眠前にエサを食いだめしないのだ。
もともと変温動物の場合は、太陽熱や地熱なんかを利用して体を温めて生体機能を維持していて、食物の消化も例外ではないのだ。
イグアナは低温になると死んでしまうことが知られているけど、これは代謝が低下してエサが消化できなくなるため。
まさに冬眠前の変温動物もそうで、寝ながら消化して食物をエネルギーに変換することができないので、しっかり食べて消化してから冬眠する必要があるのだ。
ペットのは虫類を冬眠させるとき、エサを大量に与えてから冬眠させようとすると死んでしまうこともあるそうなので注意が必要だよ。

冬眠するのは変温動物だけでなく、ほ乳類であるネズミやリスの仲間なんかも冬眠するよね。
でも、そのメカニズムは当然のことながら変温動物とは違っていて、こっちは意図的に代謝を低下させてエネルギー消費を押さえることで冬を乗り切ろうというものなのだ。
体が小さいと体重に比して体表面積が大きくなるので、体温を維持しようとするとそれだけ多くのエネルギーを消費する必要があるんだ。
ネズミが常にエサを食べているのはそういう理由があるのだ。
でも、冬の間は体温を維持できるほど大量のエサが確保できず、さらに、いつも以上に熱生産が必要になるので、いっそのことエネルギー消費をできるだけ抑えて眠っているというわけ。
こっちはまさに「冬眠」なんだよね。

変温動物とは違って、一定程度の体温は保っていて、常に気温より高い温度になっているみたい。
それで必要最小限のエネルギー変換をするんだって。
ほ乳類の場合は、冬眠前に食いだめをして、体にしっかり脂肪を蓄え、それをちょっとずつ燃焼させて生きながらえるんだよ。
普通に生活しているときに比べて代謝のレベルは数十分の一にまで低下するというんだからおどろきだよ!

冬眠をするほ乳類としてはクマのような大型のものもいるけど、実は、その冬眠は小型ほ乳類の冬眠とはまた違ったものなのだ。
クマなどがするのは「冬ごもり」と呼ばれるもので、普通に眠っている状態が長く続くもの。
おなかがすいたりすると途中で起きてエサを食べたりもしていて、飲まず食わずで春を待つわけではないのだ。
リスなんかでも時折目覚めてエサを食べることがあるそうだけど、クマの場合は体温の低下も数度程度で、外気温より少し高い程度まで下がる小型ほ乳類とはやはり違うのだ。
ちょっとした刺激でもすぐに目が覚めるらしいよ。

SFでよく出てくるコールドスリープなんていうものは、人間の体を冷やすことで極限まで代謝を抑え、より長期間生きながらえさせようとするもので、よく不治の病にかかった人が未来に治療を受けられるように、というので出てくるよね。
これはまさに冬眠に発想のヒントを得たものだけど、ずっと安定して冷やし続けることは大変だし(途中に停電があったら大変なのだ!)、どこまで冷やしていいものか実験しないといけないなどの問題もあるんだよね。
いっそのこと冷凍する手もあるけど、細胞の中の水分が凍結してしまってはいけないので、それも簡単ではないのだ。
現在では、精子や卵子、受精卵などの生殖細胞を冷凍保存する技術はほぼ確立されているようだけど、それも100%復活させられるわけではないので、体丸ごとを冷凍して復活させるというのは相当難しいのだ!

2010/03/27

不毛地帯?

職場に置いてあった日経サイエンスをちらちらと見ていたら気になる記事を発見。
それは、なぜサルの仲間のうち、人間だけが「裸」なのか、というもの。
確かに、人間に一番近いとされるサルの類人猿もみんな毛深いよね。
で、気になったので中身を読んでみたのだ。
今回はその紹介だよ。

これまでけっこう信じられていた説のひとつは、人間への進化の過程でいったん半水棲生活を送っていて、その名残で毛がない、というもの。
これは、水棲ほ乳類の中でも、イルカやクジラの仲間には毛がない、という事実から発想を得たものなんだとか。
水の抵抗を少なくするために毛がなくなり、体も魚と同様に紡錘形になっているよね。
でもでも、ここで忘れちゃいけないのが他の水棲ほ乳類たち。
水の中に棲んでいると言っても、また陸上に生活の場を移したということは、水中と陸上を行き来していたはずなのだ。
で、そういう動物でいうと、ラッコ、アザラシ、アシカ、カワウソなどなどがいるわけだけど、どれも毛皮があるんだよね(笑)
イルカやクジラみたいに魚類と同様の生活を送るのならまだしも、陸上にもどった人間が毛をなくすのは考えがたいのだ。
体の形はサルのままだしね。

で、そこで研究者たちは考えたらしいんだけど、着眼点は至ってシンプルで、「裸」である方が毛皮があるよりも有利なことはないか?、ということ。
つまり、毛がない状態の方が有利な生活形態になったので、自然選択で毛の少ない個体が選ばれ、現生人類のような「毛のないサル」になった、という考え方だよ。
一般的な進化生物学の考え方で、当たり前と言えば当たり前なんだけど、これまではどうしても、「毛が必要なくなったからなくなった」と考えがちだったようなのだ。
そんなこと言っても、進化の過程では必要だったけど、今となっては不要なものが「進化の痕跡」として残っていることもあるから、やっぱり無理がある考え方なのだ。

で、結論から言うと、「毛のないこと」のメリットは、発汗による冷却機能が向上すること、なんだそうな。
動物の場合、人間のように汗をかくことはまれで、イヌやネコは暑いときに舌を出して「はぁはぁ」して放熱しているよね。
人間のように汗をかいて体を冷やしているのはウマくらいなのだ。
これは、毛皮にくるまれているとそこに汗が貯まってしまって乾きにくい=蒸発して気化熱を奪ってくれない、ということ。
お風呂に入った後、体はタオルでふけばすぐに乾くけど、髪の毛はなかなか乾かないのでドライヤーを使うよね。
それと同じで、毛皮は体温を保つために保温機能は高めるけど、そのために発汗による冷却機能は下がっているのだ。
つまり、人間はあるときから、体を温めるよりも、冷やすことの方が重要になる生活形態に移行した、と考えられるわけ。
ちなみに、ウマの毛皮をみるとわかるけど、非常に短髪でその上を汗が流れるのだ。
なので、走らせた後のウマはよくワラで汗をふいてあげないとカゼを引いてしまうんだよ!

では、なぜ保温よりも冷却が重要になったのかだけど、それは、人間が森を出て、草原で暮らすようになったことと関係している、と書かれていたよ。
森の中にいる限りは、食べ物もそれなりにあるので、基本的には採取生活ですむのだ。
すると、できるだけエネルギーを節約して、時々食べ物を食べる、という生活の方が有利なわけ。
一方、草原の場合は、食べ物も豊富でなく、何より身を隠すところもないので、常に狩猟や隠れるために動き続けなければならないのだ!
これが冷却機能が重要になった理由で、長時間動き回るからこそ、体から適切に排熱することが求められたんだよ。
人間は短距離走ではほとんどどの動物にも勝てないほど足が遅いけど(100mを10秒で走れても時速は36km/hで、カバの最高時速の40km/hより遅いのだ。)、長距離となると断然人間が有利なんだって。
実際にマラソンのように長時間走り続けることができるのは人間くらいで、それも汗をかいて体を冷やしながら動けるからなんだそうだよ。

記事の中では、この冷却機能の向上がもうひとつの恩恵をもたらした、と考察しているのだ。
それは脳の発達。
あまりにも高熱になると脳機能に障害が出ることが知られているけど、それくらい脳という組織は熱に弱いそうなのだ。
ところが、きちんと体を冷却できるようになったので、熱に弱い脳を大きく発達させることができるようになるのだ。
実際、森に棲んでいたと思われる猿人は脳の容積がかなり小さく、ほとんど類人猿と変わらないけど、草原に棲んでいたと思われる原人まで来ると格段に脳の容積が大きくなっているそうなのだ!
走り回るために毛をなくしたことで、ついでに脳が発達してより高次で複雑な脳機能を持つに至ったというわけ。
これってなんだかすごいよね。

というわけで、なかなか興味深く読めて、感心するところもあったのでついつい紹介したくなったのだ。
こういう研究は考えを巡らせるだけで、検証できないことだけど、いかに矛盾なく説明できるかという点で考えていく、というのは非常におもしろいのだ。
これこそ人間の思考力の極みだよね。

2010/03/20

マグロ問題はマクロな視点で

最近ニュースでよく取り上げられている食材と言えばクロマグロ。
日本人の食生活には欠かせない存在が禁輸措置で価格が高騰するかも、ということだったんだけど、なんとか回避できたみたいだね。
でも、クロマグロって超高級品だから、もともと庶民が口にする機会はごくごくまれだったような・・・。
更に手が出せなくなるってことかな?
で、せっかくなので(?)、今回はマグロについて調べてみたよ。

マグロはあたたかい海を回遊している大型肉食魚類のひとつで、海の食物連鎖でも最上位に位置する海の王様。
日本近海でもとれるけど、多くはインド洋や太平洋、大西洋といった外洋で水揚げされるのだ。
広い海を悠々と、というか、かなりの超スピードで泳いでいるんだよね。
その時速は最大で100ノットと言われるから、時速180kmを超える速さだよ!
おそろしく速く泳いでいるのだ。

でもでも、よく言われるように、マグロは泳いでないと死んでしまうんだよね・・・。
これは、自分でえらぶたを動かして呼吸することができないためで、えらぶたを開いた状態で泳ぎ続けることでえらに海水を通し、呼吸をしているのだ。
止まるとえらに海水が入らなくなり、呼吸できなくなるというわけ。
これはサメも同じだよ。

そのため、マグロは持久力に優れていて、その証拠があの独特の赤身なのだ。
赤身の肉質は筋肉中にミオグロビンが多い証拠。
これは有酸素運動に必要な酸素と結合するタンパク質で、人間でも長距離走のランナーは筋肉が赤いというのだ。
逆に、スプリント型の瞬発力が必要とされるアスリートは筋肉中にミオグロビンが少なくて肉質が白っぽくなるよ。
これが白身の魚で、普段はゆったり泳いでいるけど、とっさの時にさっと急加速や急展開して逃げ回るような魚に多いのだ。
さらに、マグロの場合は独特の紡錘形の体型による水の抵抗を抑え、より少ないエネルギーで泳げるようになっているんだ。
しかも、トロに代表されるように脂肪も蓄えているので、その脂肪を有酸素運動で燃焼させながら長時間の運動ができるようになっているよ。

ただし、常に泳いでいるためか、マグロは水揚げされてからも脂肪の燃焼が続いていて、放っておくと体温が上昇していってしまうのだ。
それにより、すぐに冷やしたり、尾の付け根を切って血を抜いて「活け締め」しめないと身が白っぽくなってしまうのだ。
これがいわゆる「身焼け」という現象で、せっかくの味が損なわれてしまうんだよね。
なので、つり上げられたマグロはすぐに氷水につけられたり、冷凍されたりするのだ。
そうしないと鮮度と味が保てないんだ。
泳いでいる間は海水でどんどん冷やされているようで、この体温上昇は侮れないもののようなのだ。

このマグロにもいくつか種類があって、その中でも最上等のものと言われるのが本マグロ。
今回まさに話題になったクロマグロだよ。
希少価値が高く、なかなか本物にはお目にかかれない高級魚なのだ。
次に高級なのはクロマグロとして市場に並ぶタイセイヨウクロマグロ。
本マグロが日本近海から太平洋にかけて生息しているのに対し、こちらは名前のとおり大西洋に生息していて、大きさもちょっと大きめみたい。
そして、インド洋のあたりにいるのがミナミマグロで、これが寿司屋でもよく名前を見かけるインドマグロ。
身に脂が豊富なので、寿司ネタのトロとして珍重されるのだ。

以上が高級マグロで、そのほかが庶民的(?)なマグロ。
その代表格は目が大きいことから名付けられたメバチマグロ。
日本での流通量は最大で、スーパーなんかで見かけるお刺身はこのメバチマグロが多いよ。
ツナ缶として加工されることが多いのはビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)やキハダマグロ。
小型のマグロで、赤身が多く脂肪分が少ないのでツナ缶に加工されるんだけど、その中でもビンナガマグロはホワイトミートと呼ばれ高級品なのだ。
生食需要の高まりでビンナガマグロが「ビントロ」としてトロの部分が寿司ネタに使われることも増えてきたみたい。

いずれも世界的に食用に供されるようになったのでだんだん漁獲量が減ってきていて、それで絶滅危惧種に指定されているものもあるのだ。
今回のクロマグロの禁輸措置もそういった乱獲を抑制する意味合いがあったわけだけど、マグロを食べている国と輸出している国の意向が合致して賛成・可決に至らなかったようなのだ。
とは言え、そのままとり続けたら減っていくわけで、漁獲量を制限したりする必要はあって、その調整の枠組みはあるのだ。
さらに、ハマチなどの魚のように養殖の技術も開発されつつあって、現在では幼魚を育てるだけでなく、卵を孵化させてからの完全養殖にも成功しているみたい。
ただし、もともと長距離を回遊する性質があるし、皮が弱く、すぐに傷ついて死んでしまう、成熟に時間がかかるなどの課題があって、コスト高みたい。
ただし、とれなくなれば重要な技術にはなるんだよね。
ちなみに、稚魚から育てる養殖の場合、逆に稚魚の乱獲にもつながるので、生体数の維持という点では問題があるのだ。

マグロは日本ではかなりむかしから食べられていたことが知られていて、縄文時代の貝塚からも骨が見つかったりしているんだって。
でも、すぐに実が腐敗してしまって扱いづらく、今のように全国各地で食べられるというようなものではなかったようなのだ。
江戸時代には赤身を長期保存されるために醤油ベースの調味ダレにつけた「ヅケ」がメインで、それが寿司ネタにも使われていたようだけど、今とは違って下魚扱いで庶民の食べ物だったそうだよ。
お金持ちは鯛などの白身の魚を珍重していたのだ(落語の「目黒のさんま」もそうで、むかしは脂がのった魚はどちらかというと下品な食べ物だったのだ。)。
それが戦後になって冷蔵・冷凍保存技術が進んで流通が可能になると全国的に食べられるようになり、更に、味覚の変化で脂ののった身が好まれるようになると、トロがもてはやされるようになり、現在のように高級魚になっていったのだ。
近代化後もツナ缶に加工されることが多かったわけで、大きく扱いが変わったみたい。

ちなみに、俗にカジキマグロと呼ばれるカジキ類はマグロとはまったくの別種で、身の肉質や味がマグロに似ているのでそのように呼ばれるみたい。
カジキは口先が剣状に鋭く延びている分だけマグロより体長は大きいけど、ほぼ同じくらいの大きさの大型肉食魚類。
やはり海の食物連鎖では最上位に位置しているのだ。
カジキの場合、新鮮なものなら刺身も食べられるようだけど、主には焼いたり揚げたりと火を通すことが多いよね。
身は蛋白でありながら適度に脂ものっていてぱさつかないので、普通にソテーにしてもおいしいのだ。

マグロやカジキでもうひとつよく話題になるのは水銀等の生物濃縮の問題。
食物連鎖の頂点に立つので、水質の汚染があると、水銀などの有害物質が体内に貯まってしまうのだ。
これは水銀などの有害物質はなかなか排出されないので、体の中に蓄積されてしまうからなのだ。
マグロなんかは大量の小魚を食べるので、その分がどんどん貯まっていってしまうんだ。
なので、妊婦さんにはできるだけマグロやカジキなどの大型魚類を食べさせない方がよい、と指導されているよ。
最近はそういうところも気をつけないといけないから大変だよ(>_<)

2010/03/12

なめしてガッテン

新婚旅行でイタリアのフィレンツェに行ってきたんだけど、フィレンツェの名産と言えば革製品。
確かに街中にも自分の工場で革製品を作って売っているお店を見かけるのだ。
いわゆるブランドものではないけど、けっこう人気の品みたい。
かく言うボクも、お財布を購入してしまったのだ!
で、気になったのは革製品を作る前段階の皮なめし。
なんかしていることはわかるんだけど、いまいち何をしているかがよくわからなかったので、調べてみたのだ。

皮なめしというのは、動物などからはぎとった生の「皮」を加工して、製品原料となる「革」に加工することを指すんだって。
生きている間は伸縮性も柔軟性もあるけど、死んだ後の皮をそのままにしておくと当然腐ると、徐々に硬化してきてぼろぼろになってくるので、手を加えて腐敗を防ぎ、柔軟性と伸縮性を維持させる技術なのだ。
さらに、水や熱に対する耐性も高め、長持ちするようにするんだよ。
確かにハンドバックやベルト、お財布が腐ってきたらやだよね・・・。

具体的には、生皮から腐敗しやすい動物性油脂やタンパク質を除去し、網目のシート状構造を構成している繊維タンパク質のコラーゲンを安定化させるんだ。
でも、そのままだと少し固いので、そこに後から油脂を加えてしなやかにし、場合によっては表面加工をしたり、染料を加えて色を付けたりするよ。
古い加工法では、火の上で皮を拡げて煙でいぶし、薫製と同じように皮のタンパク質を変質させて長持ちさせるということをしていたようだけど、これだとどうしても固いまま固まってしまうんだよね。
で、できたものをよくたたいたりしていると多少やわらかくなってきて、やっと製品加工できるようになるのだ。
でも、そんなにしなやかな仕上がりとはいかないのは当然だし、煙でいぶしているだけなので中までタンパク質を変質させることはできず、そのためにそんなに長期間もたないのだ。

そこで発明された加工法が皮なめしで、まず生皮を水に浸して柔らかくし、川に着いている肉や脂をよくそぎ落とし、脱毛した後に消石灰を加えるのだ。
そうすると液中で水酸化カルシウムができるんだけど、これにより液性が塩基性(アルカリ性)になって、コラーゲンのような繊維状でない余計なタンパク質を溶かし出すんだ。
これはタンパク質中のアミド結合を加水分解し、より水にとけやすい分子量の小さなポリペプチドに分解する作用があるためだよ。
水酸化ナトリウム溶液を触ると指の表面がぬるぬるするけど、あれは指の表面のタンパク質が水酸化ナトリウムで溶かされているためで、あれと同じようなことが起こるのだ。
さらに、水酸化カルシウムによって皮の中に含まれる脂肪酸が鹸化され、水に溶けるようになるのだ。
こっちは手作り石けんと同じ原理で、脂肪酸と水酸化カルシウムが反応して石けん用の物質ができるんだけど、それは水によく溶けるので皮の中から脂肪分が除去されるということなのだ。

余計なタンパク質と脂肪を取り除いたら、今度は脱灰。
これは酸を加えて中和するとともに、液中からカルシウムを除くのだ。
一般にカルシウム塩は水に溶けにくいものが多く、酸を加えていって液性を酸性にまで持っていくとカルシウム塩が沈殿するんだ。
最初に入れて消石灰由来のカルシウムを除くので脱灰というわけ。
さらに、液性を酸性にしておくと、次のなめし工程に使うタンニンが皮に浸透しやすくなるのだ。

今では工業的に作られたものが使われることが多いようだけど、むかしは柿渋などの天然植物由来のタンニンを使ってなめしを行っていたのだ。
酸性溶液でもタンニンはなかなか皮に浸透していかないので、薄い溶液から徐々に濃い溶液に何度もつけていくことで、皮の中までタンニンがしみ込んでいくようにするんだって。
タンニンがしみ込んでいくと、繊維状のコラーゲンなどのタンパク質と反応し、網目状に絡み合っている繊維タンパク質同士をさらに化学反応で結びつけて、その網目構造を安定化させるのだ。
これにより熱に強く、丈夫で長持ちする革になるというわけ。

でも、このままではまだ固いので、この後に油脂を加えてなめらかさ、しなやかさを出すのだ。
シャンプーした後にリンスをすることでとりすぎてしまった油脂を補充するのと同じようなものだよ。
なめしが終わったら、液性を中和し、よく水洗い。
その後、半乾きのうちにヒマシ油などの加脂剤をまんべんなく塗り込んでいくのだ。
染料をしみ込ませたいときはこの工程と合わせて行うみたい。
で、引っ張ってよく乾かしたら、たたいて伸ばしてやわらかくするのだ。
最後に表面を磨いてできあがり。

このタンニンなめしの場合、何度も溶液につけないといけないのでどうしても工程数が多くなるのだ。
そこで考案されたのが化学的になめしを行うクロムなめし。
これはタンニンの代わりに塩基性硫酸クロムなどの化学薬品(いわゆるミョウバンのようなもの)を使ってなめすんだけど、よく浸透するので一度ですむのだ。
この場合、クロムイオンが間にはさまって繊維タンパク質同士を錯体として架橋することで、網目構造を安定化させるのだ。
タンニンでなめすと自然と仕上がりは茶色くなり、型くずれしにい、染料で染めやすい、吸湿性がよい、使い込んでいくうちにつやが出てなじんでくる(柔らかくなってくる)などの特徴のある革ができあがるんだけど、クロムなめしの場合は、仕上がりが青白く、伸縮性が翼柔軟でソフト、吸水性が低く水をはじく、耐久力があり熱に強い、といった特徴の革になるんだって。
ただし、クロムなめしをした革を焼却処分すると有害な物質が出てくるので、最近では原点回帰でタンニンなめしが見直されているらしいよ。

ようは余計なタンパク質と脂肪を除いてから、繊維タンパク質を変性させて安定化させればよいので、他にもアルデヒド・ホルマリンやジルコニウムなどの金属イオンでなめすこともできるみたい。
さらに、むかしながらの手法としては、油をよくしみ込ませてなめす方法もあるのだ(ただし、耐久力などは低め。)。
さらに、日本の伝統的な白なめしという方法では、生皮を川に着けてバクテリアの力を借りて脱毛し、その後塩入れ、菜種油による油入れを経て、天日干しをしながら足でもんで徐々に柔らかくしていく、という一切のなめし剤を使わない方法もあるんだって!

さらに、なめした革の加工法としては、表面にエナメルペイントを施したエナメル皮(靴などにうよく使われるつやつやのやつ)、毛でなくて肉が付いていた内側の方の表面をヤスリなどでけずって起毛させたスウェード(表面がビロード状になったやつ)、逆に毛のついていた外側をヤスリなどでけずって起毛させたヌバック(いわゆるデザイン目的のダメージ加工)などなどがあるのだ。
上からロゴなどをプレスして型押しもするし、クラッキングと称してわざと最初から表面にひび割れを入れることもあるのだ。
加工品を作ってから脱色・染色をするものもあるみたい。
スプレー缶なんかもあるけど、表面に樹脂の膜を吹き付けてはっ水・防水加工をすることもあるよね。
と、様々な目的・用途に向けて加工されていくのだ。

この天然皮革の対極にあるのが人工皮革。
いわゆる合皮、合成皮革で、これはベースとなる布地に樹脂などを付着させて皮革のようにしたもので、天然皮革に比べて手入れが簡便、品質が安定、水に強いなどの特徴があるよ。
ただし、やっぱり色合いがチープな印象を与えたり、使い込んでいくうちになじんでくる、ということもないので、人工皮革の方がもてはやされるのだ。
さらに、むしろ合成皮革の方が劣化が早い携行があるんだよね。

というわけで、皮なめしについて調べてみたけど、けっこう奥が深い技術だよね。
今となってはどういう化学反応が起こることで丈夫で長持ちな革になっているかがわかっているけど、それを経験的に試行錯誤の末に培ってきたんだからすごいものだよ。
革製品って身近なものだけど、あなどれないよね。