2010/10/23

木はむかしを知っている!

先週テレビでインディー・ジョーンズを見たのだ。
言わずと知れた考古学者が主役のアドベンチャーだけど、あんな行動的な考古学者って想像がつかないよね。
実際はもっと地味に、土をはらったりしながら発掘してそうなのだ(笑)
そもそも、あんな迷宮みたいな遺跡はほとんどないだろうし。

で、そんな(?)考古学分野で重要なのは年代測定。
それがいつの時代のものかを判別することなのだ。
ときどき、世界最古が変わったりしてニュースになるよね。
思ったより古い時代よりこの文化があった!、なんてのは大発見だし、年代を詳細に測定してみると実は案外新しいものだった、なんてのも。

この年代測定として現在広く行われているのが炭素年代測定。
遺跡から発掘された木材や木製の道具、土器などに付着している穀物のかすや炭なんかに含まれる炭素原子から年代を測定する方法だよ。
金属とかだけじゃわからないのが難点だけど、炭素はいろんな形で存在しているので、そんなに困らないのだ。

その方法というのは、自然界にわずかに存在している放射性同位元素の14Cの量を測定すること。
14Cは大気の上層部で宇宙線から発生する中性子が窒素に当たり、水素を放出してできるのだ。
この14Cは半減期約5,730年というスピードでゆっくり崩壊して、β線を出しながらもとの窒素にもどるんだ。
植物は生きている間は光合成をして大気中の二酸化炭素を取り入れていくので14Cの存在率は大気中と同じなんだけど、死んでしまうと新たに取り込まれないので、このゆっくりとしたスピードで減っていくのだ。
大気中の14Cの存在率はほぼ一定なので、どれだけ減ったかでどれくらい前に死んだか新たに14Cを取り込まなくなったかがわかるわけ。
切り倒されて木材として使われたり、収穫されて煮炊きして食べられた時代がわかるということなのだ。

14Cの検出にはβ線を測定するわけだけど、どうしても検出限界があるので数万年前くらいまでしかさかのぼれないんだって。
また、ごく微量のβ線を検出しているので誤差もあって、数十年~百年ほどずれることもあるのだ。
(今では加速器をつかって直接14Cの数を数える方法もあって、それだとより性格に測定できるそうだよ。)
さらに、実際には大気中の14Cの存在率は一定ではないので、その値で較正する必要があるのだ。
1950年代以降は核実験のせいで大きく14Cの存在率が変わっているとのことで、基本は1950年の値をもとに、そこから何年さかのぼるか、という調べ方をするんだって。
ちなみに、この原理を発見したリb-博士はノーベル化学賞を受賞しているのだ。
日本では理化学研究所と学習院大学で最初に研究が始められて、今でも拠点になっているみたい。
学習院って意外だよね。

で、年代の較正に使われているのがやっぱり木を使ったもので年輪年代測定というもの。
温帯や冷帯に生えている樹木には年輪ができることが知られていて、その年輪を数えると樹齢がわかる、というのは小学生でも知っていることなのだ。
この年輪を使って年代を測定するのが年輪年代測定(そのままだけど・・・。)。
年輪を数えるだけだと樹齢しかわからないけど、年輪の幅のパターンを比べることで、その年輪がいつくらいに形成されたものかわかるようになるというのだ。

年輪の幅はその年に成長して太くなった部分だけど、これは日当たりや雨量などの気候や、樹木の種類によっても変わってくるよね。
これを複数の資料を調べて年輪のパターンを平均して標準化していくと、もっとマクロな気候の影響だけが抽出できるのだ。
これは猛暑とか冷夏とか、、暖冬とか厳冬とかそういうレベルの大きな気候の影響だよ。
で、そのパターン曲線と、年代を調べたい年輪の幅のデータをつき合わせると、一番パターンが合致するところがその年輪の年代だとわかるわけ。
これをクロスデーティングというそうなのだ。

これを繰り返していくと、新しい方、古い方ともにパター曲線を延長していくことができて、現存しないような古い樹木の年輪パターンもわかるんだ。
年輪だと1年刻みで年代がわかるわけだけど、その年輪の部分から試料を取り出して炭素年代測定をすると、14Cのレベルも較正できるというわけ。
これでかなり正確に年代が測定できるのだ!
技術の進歩はすごいねぇ。

ただし、木材にしても穀類にしても、伐採や収穫した時期にすぐに使う・食べるというわけじゃないので、そこでも年代がずれるのだ。
食べ物の場合はせいぜい数年のレベルなので大きくきいてくることはないけど、お寺や神社などの建築物にはわざと古い材木を使ったりすると、仏像や神像は流木や朽ち木を使うことも多いので、そういうものはどうしても正確に製作年代は特定できないのだ。
ま、これは仕方がないんだけどね。
それでも、どのくらい古い木が使われているのかだけはわかるのだ。

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