原器ですか~?
先週の土曜日、気になる記事を見つけたのだ。
それは、「キログラムの定義を見直す」というもの。http://www2.blogger.com/img/blank.gif
これまでは1kgの標準となる「キログラム原器」というおもりがあって、それと比較して決めていたのだ。
それが、洗浄したり、ほこりが付着したりして微妙に重さが変わるので、現在の精緻な測定には耐えられない、という判断があったみたい。
そこで調べてみたんだけど、このキログラム原器というのは白金(プラチナ)90%・イリジウム10%で作られた円柱形の分銅。
フランスで40個作り、それが世界に配布されているのだ。
おおもとの「国際キログラム原器」(=一番正確なもの)はパリ郊外のセーヴルにある国際度量衡局にあるのだ。
日本ではつくばにある産業技術総合研究所計量標準総合センター(旧工業技術院計量研究所)にあるよ。
米国の場合は米国国立標準技術研究所(NIST)が管轄しているのだ。
で、フランスのおおもとの原器と各国に配布されている原器を約10年ごとに比べて校正するんだって。
当初は単純に水1リットルの質量として定義されたのがキログラムなんだけど、水の堆積は温度や気圧で変化するので、改めて特定の温度・圧力下での、空気の溶けていない蒸留水1リットルの質量として定義されなおしたんだって。
その重さを体現したのが白金・イリジウム合金の原器というわけ。
これは真空中に厳重に保管されているんだけど、洗浄すると少し軽くなったり、ほこりがつくと少し重くなったり(と言ってもマイクログラム=100万分の1グラムのオーダーだけど)するので、もっと普遍的な定義に見直そう、というのが決まったのだ。
一番有力なのは、ケイ素(Si)原子○個分の重さ、という定義で、ケイ素は非常に安定な物質で、不純物をほとんど含まず単結晶を作ることができるので(純度の高い水晶のことだよ。)、一番向いているだろう、と選ばれたわけ。
一般に、1モルことアボガドロ定数(6.02×1023)の個数の原子があると、質量数にグラムをつけた質量になるんだよね。
例えば、自然界に最も多いケイ素の安定同位体だと28Siだと28g。
でも、これはそうなるような数をアボガドロ定数と定めているので、むしろ本当に何個でそうなるかを精度よく決める研究が必要なのだ。
それを今後4~5年やって、新しいキログラムの定義に活かそうというわけ。
一方、メートル原器というのはすでに使われていないんだよね。
かつては長さの基本単位としてキログラム原器と同様に使われていたんだけど、もっと普遍的な定義を置いたことで使われなくなったのだ。
やっぱり白金90%・イリジウム10%の合金製で、両端についている目盛りの間の距離が、摂氏零度のときにちょうど1メートルになるように作られているんだ。
やっぱりフランスが30個製作して、各国に配布していたんだよ。
日本ではキログラム原器と同様に産業技術総合研究所に保管されていたのだ。
ところが、この白金・イリジウム合金は比較的化学変化が少ないとはいえ、熱で膨張・収縮したり、ちょっとゆがんだりと不具合もあるんだよね。
長さについても高い精度が求められるようになったことを受け、より普遍的な定義を置くことになったのだ。
ちなみに、米国のNISTがそもそも最初のメートル原器に誤差があることを見つけているそうだよ(>o<)
そこで19世紀終わりに出てきたのは、特定の光の波長をもとに定義しようという考え。
20世紀になってからも議論を続け、やっと光の波長に基づく定義を見直したのだ。
具体的には、希ガスのクリプトン86(86Kr)の真空中での電磁スペクトルであるオレンジ~赤色の発光スペクトルが示す波長の1,650,763.73倍と等しい長さ、ということになったんだよ。
ただし、メートル原器はそれなりに使いやすいこともあって、1960年までは使われたみたい。
でも、やっぱりまだ不確実性が残るので、より普遍的なものが求められるようになったのだ。
それは光を使った定義。
相対性理論でも光速は一定という前提を置いているけど、これを使って、光がある時間に真空中を進む距離、という形式で1メートルを定義したのだ。
宇宙では「光年」という距離の単位を使うことがあるけど、こっちは「光秒」だよ。
光速が299,792、458m/sなので、逆にして1/299,792、458光秒ということになるのだ。
ほぼ同時期にセシウム原子時計が確立されていて、時間の単位の「秒」が精度よく定義できるようになったことも影響しているみたい。
ちなみに、原器が廃止された後は、測定結果が基準になるため、基準となる計量器が特定されるようになるんだって。
これはキログラムも同じだろうね。
メートルはもともと海抜0mの地球の子午線の4万分の1の長さと定義されていたんだよね。
実は、これはフランス革命に前後する時代。
キログラムの定義もほぼ同じ頃に検討されているのだ!
ちょうど世界的視野でものごとをとらえる転換点だったんだろうね。
度量衡の統一というのは中国の古代王朝でも行われたけど、国際的な取引をする際には避けては通れない道で、その途を拓いたのはフランスだったのだ。
スペインとかオランダ、ポルトガルなんかは世界を股にかけて交易していたけど、そういう発想はなかったんだよね。
逆に、フランスでは革命が起こって共和制になったので、古い絶対王政の時代に使っていた度量衡を使わず、新しい単位を作りたい、それも国際的に通用する単位が作りたい、という機運があったのかもね。
実際、フランスでは欧州で使われていたグレゴリオ暦に代わって、革命後に新しい暦(革命歴、熱月とか霧月とかあるやつだよ。)を作ったりもしたからね。
暦は広まらなかったけど(笑)
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