2012/12/15

たたいて、耳を澄ませば

中央道の笹子トンネルの崩落事故は大きな波紋を生み出しているね。
同じくらいの時期に行われた公共工事全体の健全性や、その胃jきかんりの安全性疑問が持たれているのだ・・・。
建設ラッシュになったバブル期の質の悪いコンクリートには海砂が使われているのでもろくこわれやすい、なんていうけど、多少コストはかかっても、人命優先できちんと調べ直してほしいものだよ。
検査自体が「ずさん」に行われていた、なんていう疑惑もあるのだけど・・・。

今回話題になった検査が「打音検査」。
非破壊検査のひとつで、専用のハンマーでたたいて、その反響音で見えない内部の様子を探る手法なのだ。
ニュースなんかで試しにやっていたけど、音が違うな、というのはわかっても、それがどういう理由でそうなっているのかがわかるようになるまでには熟練がいるだろうね。
実はトンネルだけじゃなく、橋梁や建造物など、非破壊で内部の様子を知りたい場合によく使われているみたいなのだ。

たたいて調べる、といううのでボクがすぐに思いつくのは缶詰の工場。
「打検士」という特殊なスキルを持った職人さんたちがいて、パチンコ玉大の金属の玉がついた棒で缶詰をたたいて、不良品を見分けているのだ。
昭和51年以降は資格試験が実施されていないので、どんどん減ってきているらしいけど・・・。
缶詰の場合は、ベルトコンベアーにX線による非破壊検査を入れればいいので、今はそっちにシフトしてきているんだろうね。
でも、今でもたたいて調べている工場もあるのだ。

缶詰の場合、中に大きな空隙があったり、異物が混入していたりすると、たたいたときの反響音が変わってくるのだ。
その原理はいいし、おそらく、素人でも時間をかけて何度もたたいて音を比べてみればわかるのかもそれないけど、プロはベルトコンベアの上を流れて来る缶詰を次々とたたいて、「異音」がする缶詰だけを除いていくのだ。
実際に開けてみると、果たして、中身が半分しか入っていなかったり、異物が混入していたり、実がなくて液だけだったりするみたい。
X線だと画像で見られるので、便利は便利だよね。
ただし、魚群探知や海底の地形把握にも音波の反響音をソナーで見ているんだけど、これは画像化できているから、自動でたたいて反響音で分析するような装置を作れば、缶詰の打検も画像化できないわけじゃないはずなのだ。
ま、無理してやる必要がないだけだろうけど(笑)
(缶詰の中身が放射線の影響を受けるようなものの場合なら需要はあるかな?)

で、トンネルなんかの打検も原理は同じで、たたいてみると、ボルトが緩んでいたり、中でボルトが割れていたり、あるいはコンクリート内部に亀裂が入っていたりすると反響音が変わってくるんだって。
一般に、健全な状態だと高くすんだ音がするけど、中に異常があると鈍く低い音がするそうだよ。
ま、そんなこと言っても、これは経験を積んで覚えるしかないわけだけど。
げんりてきには、X線や電磁波(遠赤外線とマイクロ波の間のテラヘルツ波など)、中性子線などを使って非破壊検査をすることもできるけど、ポータブルなよい機会がないことが問題。
人の手でやると、人が潜り込めるスペースがあれば検査できるのが魅力だよね。

反響音については、イメージ的に管楽器を思い浮かべるとよいのだ。
管に穴が開いていて、その穴をふさぐことで音の高低を変えられるよね。
誰もが通る道であるリコーダーで考えると、穴を全部ふさぐと低い「ド」の音になって、最上部の裏と表の2つの穴だけふさぐと「シ」の音になるのだ。
これは穴をふさぐことで「共鳴管」の長さを変えているんだよね。
共鳴管が長くなると、共鳴波長が長くなる(共鳴周波数が低くなる)のでより低い音になるし、共鳴管が短くなると逆に高い音になるのだ。

おそらく、打音検査も同じで、内部に亀裂が入っていたりすると、通常許容されている隙間より大きな隙間がコンクリート内部に発生していて、共鳴する空間が広くなるから、より低い音で共鳴するはずなのだ。
ボルトも、緩んでいるとその分ボルト穴に隙間ができて、共鳴空間が広くなるんだよね。
トロンボーンのように共鳴管が長くなって低い音がするのだ。
その他、均一な構造ならしないはずの雑音も発生するはずだよね。

原理的にはよくわかるんだけど、実際にトンネル内で作業していて音を聞き分けるのはまた難しいんだろうなぁ。
どれくらいのポイント数で調べればいいかという問題もあるしね。
なかなか奥が深いのだ。
これも熟練の技だろうから、しっかり検査を継続しつつ、後継者を育てていかないと。

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