転げ回る草のように
ナショナル・グラフィックスの写真記事を見て知ったんだけど、西部劇とかでよく見かけるころころと転がっていく草の塊は、「回転草(tumble weed:転がる雑草)」というものらしいのだ。
てっきり積んでおいた干し草の山が一部崩れて転げ回っていると思っていたんだけど、あれはああいう生態のようなのだ。
不思議なものだよね。
でも、転げ回るのにも理由があるみたい。
「回転草」は、オカヒジキ属の植物で、日本でもときどき食べられるオカヒジキの仲間。
西部劇でおなじみだけど、実は150年ほど前にロシアから飼料用の草と一緒にタネが米大陸に運ばれてきて、繁殖したみたい。
もともとはウラル山脈東部の草原を転げ回っていた草なんだって。
なんとなく、米国西部のフロンティアのイメージがつきまとうけど、本来は騎馬民族が馬を駆っている間を一緒に転がっていたのかも。
1870年又は1874年に米国に来たと考えられていて、最初に発見されたのはサウスダコタ州とのこと。
そこから一気に広がったらしいよ。
その広がった何よりの理由はその繁殖力の高さ。
もともとユーラシア大陸の乾燥した草原のステップ気候で生きてきた植物なので、北米の乾燥した気候にも適応できたのだ。
しかも、最低気温が零度を越えれば発芽し、少しでも土が軟らかくなっていれば根を下ろし、ちょっとでも水分があれば成長するんだって。
回転草の吸水力は目を見張るものがあって、これが生えてしまうと周りの植物から水を奪ってしまうのだとか。
小麦畑の近くに来ようものなら小麦の生育に悪影響が出るのだ(>o<)
回転草には小さなとげとげがあって、もとはこれが葉なんだって。
で、そのとげの中に小さな花をつけ、実をつけるのだ。
1年草なので秋口になると枯れて茶色くなるんだけど、タネの準備が整うと目元からぽっきりと折れて、米国の秋によく吹く強風にあおられて転がっていくのだ。
このとき、ただ転がるだけでなくて、転がりながらあちらこちらにタネをまいていくんだ。
鳥に実を食べさせてタネを運んでもらったり、グライダーやパラシュートのように風を使ってタネを遠くまで運んだりする植物はあるけど、これは自ら転がりながらタネをまいていくのだ。
数kmころがることもあるようで、相当遠くまで運べるよね。
広い米大陸にはびこるわけだ・・・。
家畜の飼料になるかもしれないとカンザス州などでは栽培も試みられているんだけど、どうもうまくいかないみたい。
むしろ、転がってくる草の塊で民家が埋もれることになったり、非常に乾燥したよく燃える塊なので火事のもとになったりと、けっこう迷惑な存在なのだ。
場合によっては軽自動車くらいの大きさになるものもあるそうで、そんなのが転がってきたら大変だよね。
動画サイトには巨大な回転草におそわれそうになる(?)自動車なんてのもあるみたい。
西部劇のように小さいのがピューと風に吹かれてころがっているだけならよいけど。
で、これをなんとかしようと、米国農商務省では、もともとの生育地のロシア、ウズベキスタン、トルコの研究なんかと協力して、原産地でこの回転草をえさとしていたダニ、ゾウムシ、ガ、菌類などで駆逐できないか研究しているようなのだ。
ただし、この回転草の天敵もやっぱり外来種になるので、野外に放つようなことはしていないのだ。
日本でも食用ガエルとしてのウシガエルのえさとしてアメリカザリガニが導入されたけど、在来種を駆逐する勢いで広がったことなんかがあるしね。
米国政府も根絶やしにしたいわけじゃなくて、被害を小さくしたいということのようなので、なかなか難しいかもしれないのだ。
それにしても、西部劇で見かけたあのころころ転がるやつがそんなものだったなんて!
ボクも米国には1年ほどいたけど、東側だから知らなかったよ。
一度荒野を転げ回る回転草を見てみたかったなぁ。
もちろん、日本に持ってくる気はないけどね(笑)
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