ないものは証明できない
理研の小保方さん騒動はさらに盛り上がってきているねぇ。
理研側がデータ改ざんの不正行為があった、と認定すれば、悪意のないミスであり不正に当たらない、と小保方さん側が不服申し立て。
なんだか泥仕合の様相を呈してきたような・・・。
個人的に気になるのは、人間関係とかのどろどろしたところじゃなくて、やっぱり化学的成果が妥当なものだったかどうかだよね。
でも、今回の一連の報道を見ていると、どうしても「常温核融合」の話が思い出されるのだ。
常温核融合は、平成元年(1989年)に観測されたと発表された現象で、通常超高温・超高圧下でないと起きないと思われていた核融合反応が常温で確認された、というもの。
英米の研究チームが発表したところによると、重水中にパラジウムとプラチナの電極を入れてしばらく電気を流すと、電解熱以上の熱が発生し、なおかつ、核融合反応の際に生じるトリチウム、中性子、ガンマ線などを検出したというのだ。
発表直後、全世界的に追試が試みられたんだけど、ほとんどの場合は過剰熱すら観測できず、過剰熱が観測できる場合も再現性が低かったんだよね。
中性子線やガンマ線などの核反応を示す証拠もほとんど得られなかったのだ。
このあたりが今回のSTAP細胞の騒動と酷似しているんだけど、大きな違いは、常温核融合の場合は単に研究成果が発表されただけで、査読付の学術誌で公表されたものではなかったのだ。
けっきょく、再現ができないということで学会の権威者からは否定され、メジャーな学術誌では常温核融合関係の研究というだけで掲載拒否(リジェクト)されるような状態になっているよ。
でも、この現象自体に興味を持っている研究者は少なからずいて、国際常温核融合学会なる組織もあって、学術的な研究は進められているのだ。
おそらく、夢のエネルギー源として常温核融合を選択肢のひとつとして考えている研究者はいなさそうだけど、現在の理論だけでは説明しきれない現象が観測されていると考えられる実験結果が得られるので、それは一体何なのかを突き詰めようとしているようなのだ。
ちなみに、現在の物理学・素粒子学理論でも、トンネル効果や宇宙線由来のミューオンにより極低頻度で常温でも水素の核融合反応が起きることは予想できるんだけど、それにしては得られる実験結果は確率が高すぎるんだよね。
何かあるはずだ、というのが研究者の探求心をくすぐっているようなのだ。
この話が出たとき、絶対零度近くでしか発生しないと思われていた超伝導現象が、もっと高い温度(と言っても零下百何十度だけど)でも発生することが証明されたので、研究者の期待は高まっていたんだよね。
ただし、有象無象も混じっていて、データのつじつまが合わない不正確なものなども玉石混交していて、議論が混乱しているのも確かなのだ。
大事なのは、「常温核融合」という現象の有無かどうかというより、現在の理論では説明できない現象が起こっているかどうか、のはずなんだけどね。
常温核融合や、それに近い常温での核変換が実現できる、と言われると一気にうさんくさくなって、疑似科学に近づいていくんだよね(>o<)
この手の研究は、もともと機器の較正がきちんとなされないまま実験しているとか、解釈に誤りがあるとか、いろいろと批判があるんだよね。
しかし、それをさっ引いても、何かありそうではあるのだ。
実際、日本でも米国でも、国費を使ったプロジェクトが実施されたことがあったみたいだけど、高温核融合現象自体は確認できなかったものの、過剰熱が観測されることは否定していないのだ。
中性子やガンマ線がまず確認できないことからも、核反応ではないのかもしれないけど、未知の現象が起きている可能性はあるというわけ。
でも、実はこれは「悪魔の証明」に陥っていて、「何かある」という時はその何かの存在を立証できればそれでいいんだけど、「何もない」ということの証明はどこまで行ってもできないのだ。
常温核融合も同じで、ひょっとしたら現在知られている現象以上のことは何も起きていないのかもしれないけど、一見すると未知の現象と思われる実験結果全てについて説明をつけたとしてもそれでは証明にならないのだ。
「ないということは証明できない」ということなんだよね。
STAP細胞の件もそれに近づいているような気がして、ある・できたと言っている人がいる以上、その人が事実を語っているなら、「何か」は存在して、できているのだ。
それが「STAP細胞」という体細胞を脱分化して作った幹細胞かどうかは別として。
再現性がないからといってそれはないことの証明には何もならなくて、たまたまある研究者だけができる「神業」がないとできないだけかもしれないのだ。
ただし、同じプロトコールに則れば同じ結果が出せる、という再現性が科学の基本だから、「ゴッドハンド」みたいな世界は科学ではなくなるんだけど(笑)
「ないこと」自体が証明できない以上、「ある」と主張している根拠が正当なものかどうかを突き詰めていって、証拠と呼ぶに当たらない、とするくらいが関の山。
だから「泥仕合」になるんだよね。
今回の場合、明らかに研究成果の発表までに至るプロセスには瑕疵があったと思うけど、できれば、「STAP細胞」のもの自体は真実であってほしいけどね。
0 件のコメント:
コメントを投稿