2014/08/09

水難事故注意!!

この時期になると川や海での事故のニュースが多くなるよね。
子供が亡くなったりと痛ましい事故が多いのだ。
もともと遊泳禁止のところで泳いだりするのも悪いんだけど、本人に非がなくても起きるから事故なわけで。
現代ではこうした事故について、なぜ発生したのかを科学的に考えるんけど、むかしはよくわからないから、超自然的な存在を仮定して、そこに原因を求めたんだよね。
川の事故の場合、多くは「カッパ」に関係づけられたのだ。

今となっては「カッパ」というのが代表的な名称になっているけど、実際には、様々なバリエーションの怪異が各地方でそれぞれの名前で呼ばれているんだよね。
カワタロだったり、ガタロだったり、ガラッパだったり、ケンムンだったり。
この地域性というのは習性の違いでもあって、川に住んでいて相撲が好き、キュウリが好きなんてのが共通的な性質でこれがカッパという共通認識につながっているのだ。
で、そんな中の一つに、人や牛馬を川に引き込むなんてのもあるんだよね。

おそらく、人や家畜にまつわる川の事故の原因を説明するために、カッパという怪異に仮託されているところがあるのだ。
つまり、カッパが川に引き込んだから、或いは、カッパが水の中で足を引っ張ったから、と理由をつけて、なぜその事故が発生したのかを納得しようとしたわけ。
実際には、浅瀬だと思って渡っていたところに深みがあってそこに足を取られた、だったり、川の中程に急に流れが速いところがあった、だったりするんだよね。
そうなると、何か別の力が働いて転んだ、という思考パターンになって、その「正体不明の原因」が「カッパ」に関連づけられるのだ。
これは雷は雲の上で雷神が太鼓をたたいている音が聞こえてきている、と考えるのと根本は一緒だよ。

そうなると、今度はそういった水の事故を引き起こす原因としてふさわしい性質がカッパに反映されてくるのだ。
話は逆なんだけど(笑)
例えば、カッパは「尻子玉」が好物で、これを抜かれると人はふぬけになったり、場合によっては命に関わるなんて言われているのだ。
これは、水死体は多くの場合肛門括約筋が緩んでいるので、生きている間はびしっと(?)しまっているはずの肛門が丸く開いているのを見て、「玉状の何かが抜かれたに違いない」という発想から来ているんだよね。
「尻子玉」というものが存在しているわけじゃなくて、水死体を見ると肛門がぽかんと広がっているのだ、そこにあった「はず」の何かを仮定して、かつ、水の事故を引き起こす原因であるカッパが抜いた、という発想につながっているのだ。

また、カッパは人の肝が好物という伝承もあるんだけど、これも同じようなものだと考えられているよ。
水死体は内臓から腐敗してきて、腹腔にその腐敗で発生したガスがたまることで浮力が発生して浮いてくるんだけど、これを引き上げてみると、腐敗しているからおなかの中に内臓がないんだよね。
すると、またまた「カッパが食べた」ということになるんだよね。
肛門から尻子玉をぬいて、そこから手を入れて内臓を取って食べた、となると、話もわかりやすくつながるし。
こうして、水難事故の原因として「特定」されたところから、逆にカッパの性質が付加されていくんだよね。

馬や牛を皮に引き込む、という性質は、実際に牛馬が皮で転んだりする事故もあったし、また、家畜を水神に生け贄として捧げていた古代の風習が習合しているとも言われているんだ。
キュウリ好きなのも同様で、疫病神である牛頭天王(祇園神)にキュウリを捧げる風習があって(これは祇園社の紋がキュウリの切り口に似ているからとか。)、その眷属であるカッパはキュウリが好き、となっていったようなのだ。
牛頭天王は水神とも考えられているんだけど、疫病というのは基本的には人か水によって運ばれてくるものなので、水神としての性質も併せ持つんだよね。
水を介して感染する感染症が多いので、水神に生け贄を捧げれば、そうした疫病の蔓延を防げる、と考えるのが普通だったのだ。

ちなみに、人を介して伝染する疫病を防ぐためには、村の入口に道祖神を置いて「道返し」の呪法による悪いものが道を通って村に入ってくるのを防ごうとしたんだよ。
その名残が辻々にある道祖神、庚申塔・庚申塚、地蔵など。
むかしの人も原因はわからないまでも、道や川を伝って外界から感染源が来ることは経験値として理解していて、それを当時の知識と文化的背景により理解する理屈が疫病神とかそういうものを想像することだったんだよね。
実際問題としても、人の行き来を遮断したり、危ないと思われる川の水を使わなくすれば疫病は収まっていくわけで、あながち対処法まで考えると、このように考えることに大きな不合理はないんだよね。

というわけで、水難事故を防ぐためにも、この川や池にはカッパがいて人を引き込むから入っちゃダメ、というのも不条理ではないんだよね。
もともと事故が多発するような危ない場所がそう言われているだけなので、迷信だと排除せず、耳を傾けるべきなのだ。
もっとも、遊泳禁止と言われているにもかかわらず入って泳ぐような人にはそもそも何を言っても通じないのかもしれないけど。

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