生ハムは「生」だけど豚肉を生食してよいのか
最近はどこに行ってもメニューに生ハムを見かけるよね。
そんなに流通していないから高級品という扱いだったと思うんだけど、それこそサイゼリヤにもおいてあるくらいなのだ!
一気に日本でも広まったよね。
それでも、スペインのハモン・セラーノやイタリアのプロシュートは今でも高級品として流通しているから、リーズナブルな生ハムが生産されるようになったということかな?
いずれにせよ、庶民でも生ハムを食する機会が増えたわけだけど、ちょっと気になったのは、豚肉って生で食べて大丈夫だったっけってこと。
一般には、豚には寄生虫がいることがあるので、生食せずにしっかり火を通してから食べないとダメ、と言われるよね。
これは有鉤条虫のことで、眼球や神経にも規制する恐ろしい寄生虫・・・。
重篤な症状につながることもあるので忌避されてきたのだ。
最近ではそういう寄生虫は減っているんだけど、寄生虫だけでなく、ヘルペスやトキソプラズマ、E型肝炎などの病原微生物がいる可能性があるので、加熱してから食べるべきと言われているよ。
というわけで、原則としてやっぱり豚肉は生で食べない方がよいみたい。
ハムやソーセージ、ベーコンなどの豚肉の加工食品は、多くの場合燻製されているんだよね。
その燻蒸効果で内部のタンパク質が変性するので、加熱したのと同じような効果が出てくるわけ。
ハムの場合はしっかり塩漬けしてから燻製するわけだけど、塩と燻製の二重の保存技術を使っているのだ!
ちなみに、よく口にするプレスハムはくず肉を集めて大豆由来のタンパク質などの接着剤でくっつけ、圧力をかけて円柱や直方体に成形してから蒸したりゆでたりして加熱しているのだ(ロースハムはもう少し高級な肉を使っているけど、肉を集めて成形して作るのは同じだよ。)。
いずれにしても、燻蒸や加熱をしているのだ。
ところが、生ハムの場合は、燻蒸せず、そのまま冷暗所で乾燥させながら熟成させるだけなんだよね。
生ハムの場合は普通のハムよりかなりきつめに塩をしているので、その保存効果は高まるんだけど、さらに乾燥させることで水分を飛ばすので、その保存効果が高まるのだ。
細菌(バクテリア)なんかは高い塩分濃度と乾燥で増殖が抑えられるので十分に効果があるんだよね。
ウイルスの場合は、自分で増えるものではなく、感染した宿主のメカニズムを使って増えるので増殖を抑えるとかそういうことでは防げないのだ。
ただし、ウイルスは乾燥状態や高い塩分濃度の環境下ではそんなに長い間活性を保てないので、生ハムのように長期間熟成させる場合にはウイルスも感染力を失っているようなのだ。
すべてのウイルスがそういうわけではないだろうけど、むかしから食べられてきて問題になっていないので、たぶん大丈夫なんだろうね(笑)
生ハムのみそはこの熟成というやつで、熟成させることでうまみが増え、凝縮するのだ。
熟成課程でうまみのもとであるアミノ酸や核酸が増え、さらに水分が抜けていくことでそれが濃縮されるのだ!
この肉の熟成は生肉でも同じで、よく牛肉なんかでは2~3週間冷蔵庫で熟成されてから出荷されるというよね。
死んだ直後は死後硬直が起こっていて肉が硬いんだけど、その後に自家消化が始まると肉がやわらかくなってくるのだ。
これは細胞の中に残っている酵素が死んだ後も働き続けることから起こる現象で、タンパク質なんかは分解されてアミノ酸が出てくるというわけなのだ。
高分子のコラーゲンも分解されて分子量が小さくなることで回りの水分を吸って膨潤するのだ。
それらの反応の結果として肉がみずみずしく、やわらかくなるのだ。
ただし、死後直後に食べるとまだグリコーゲンが分解されずに残っているので、肉は硬いけど独特の甘みを楽しめるらしいよ。
生ハムの場合は、この熟成を長期間かけて行うのだ。
塩分と乾燥で細菌の増殖を抑えているので、腐らせることなく長期間熟成させることが可能になっているんだ。
それでも、この熟成は2~4度くらいの冷暗所で行うみたいだよ。
ずっと冷蔵庫に入れておくイメージなのだ。
さらに、中華ハムとしておなじみの中華火腿は、途中までは生ハムと作り方が一緒なんだけど、乾燥させる過程で表面にカビを生えさせるのだ。
そうすることでさらに熟成が進むと言われているんだ。
高級な鰹節の表面にカビを生えさせて熟成させるのと同じみたい。
こうして、生ハムの場合は塩と乾燥で腐敗を防ぎ、長期間熟成させることで豚肉のうまみを凝縮しつつ、生食できるようにしたすぐれた加工食品だったのだ。
最近では冷蔵保存技術が高まったので、燻製食品でも塩や燻蒸が弱めであんまり保存食品になっていないものも多いけど、生ハムの場合はそういうわけにはいかないので、しっかり作らないと食べられないのだ。
低価格なものもあるけど、それなりのお値段がするのもうなづけるね。
今後は、むかしの人が積み上げてきた保存技術に敬意を表しながら食べないとね。
1 件のコメント:
>むかしから食べられてきて問題になっていないので、たぶん大丈夫なんだろうね(笑)
スギヒラタケのように長年食べられてきたのにある時突然毒だったと判明(それまで関連性に気づいていなかっただけ)というパターンもあるので怖いですけどね…
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