2010/11/20

カプセルの中身はなんじゃらほい?

小惑星探査機「はやぶさ」が地球に持ち帰ったカプセルの中に入っていた微粒子が小惑星イトカワ由来のものらしいということが判明したのだ!
連日大さわぎだね。
「はやぶさ」はもともと工学実証機として、将来の宇宙探査に向けて様々な新技術を宇宙で試すのが主目的だったんだけど、人類初の偉業を成し遂げたのだ。
その長い旅の途中にはさまざまなトラブルもあって、満身創痍での基幹だったから感動している人も多いんだよね。
でも、科学としてはこれからも大きな山があるわけで、これからその微粒子の解析をどんどん進めていかなければならないのだ。

今回イトカワのものらしい微粒子がわかったのはサンプルコンテナと呼ばれるサンプル収納容器のA室。
B室というのもあって、2つに分かれているのだ。
当初の「はやぶさ」の計画では、イトカワにタッチダウンしたときにインパクターと呼ばれる金属の弾丸を地面に向けて発射し、その衝撃で舞い上がった岩石の粒やほこりをサンプラーホーンから吸い上げて集める計画だったんだよね。
でもでも、1回目の着地ではレーザー測距(レーザーの光が反射してくる時間で距離を測る技術)に不具合があって、緩降下してソフトランディングするはずが、どーんと大きな衝撃で衝突し、横倒しになってしまったと考えられているんだよね(映像はなくて電気信号のデータしかないので実際にどういう状況下は想像するしかないのだ・・・。)。
そのせいで化学スラスタが故障してしまってまた大変になるんだけど、なんとかその後回復し、2度目の着地はうまくいったのだ。
ここでもトラブルがあって、弾丸がうまく発射されなかったのだ(ToT)
で、最初に衝突したときにサンプルが入ったのがまだ開けていないB室。
2回目の軟着陸のときに舞い上がったちりやほこりを集めたのがA室。
なので、B室にはさらに大きな粒子が入っているのではないかと期待されていたんだけど、今回、ごくごく小さなA室の粒子(100分の1mmくらいの大きさ、髪の毛の太さの10分の1くらいかな?)を調べたところ、地球のものではないと考えられる、という結論に至ったのだ!

サンプルコンテナの中にはもともと地球のほこりなんかが混入(コンタミ)している可能性があったと考えられていたので、内部からとった微粒子が本当にイトカワ由来かどうかをずっと調べていたんだよね。
で、今回の結論に至った根拠として、いくつか説明されているのだ。
まずは微粒子の鉱物種とその組成で、これは走査型電子顕微鏡や蛍光X線分析などで調べたのだ。
カプセルの中にあった微粒子を顕微鏡で見てみると、地球上でも見られるかんらん石(緑色の半透明の石で、Mg2SiO4とFe2SiO4の混合物。)と輝石(ガラス光沢をもつケイ酸塩鉱物で、XY(Si,AL)2O6という化学組成で、XやYは鉄やマグネシウムが入るのだ。)が存在していたんだって。
でも、X線を照射して蛍光として出てくる特性X線を検出する蛍光X線分析をしてみると、地球上のかんらん石や輝石に比べると鉄/マグネシウム比率がはるかに大きいことがわかったんだって。
これは地上で見つかる隕石に近いもので、宇宙由来のものである可能性を示唆しているのだ。
さらに、「はやぶさ」がイトカワのまわりを飛びながら近赤外線やX線でイトカワ表面の物質を調べたデータとも整合しているので、イトカワ由来だろう、ということになったんだ。

でも、一番最初の発見は、その微粒子の中に硫化鉄の結晶が発見されたこと。
硫化鉄自体は地上にないこともないんだけど、非常に不安定な物質で、すぐに酸化されて硫黄と酸化鉄になってしまうので、地表面では見つからないものなのだ。
「はやぶさ」のカプセルは宇宙から真空状態で地上に帰還し、そのまま地上の物質が混入しないよう真空をたもったまま中身の解析をしていたので、硫化鉄が酸化されずにすんでいたんだ。
特殊な結晶構造をとっているそうなので、専門家の人は見た瞬間に「これだ」とわかったそうだよ。
これが見つかってから本格的に分析を進めて、中で見つかったほぼすべての粒子について上記のような特徴がわかったということなのだ。

ちなみに、当初はカプセル内に地球上の物質が混入している疑いがあったんだけど、けっきょくカプセルの中からは地球上で見つかるような岩石の破片などはなかったとか。
「はやぶさ」は鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたので、火山灰が入っているんじゃないか、とも言われていたんだけど、それもなかったみたいだよ。
豪州の砂漠に落として回収したけど、そこの砂らしきものもなかったようで、まさに宇宙のちりだけを持ち帰ったことになるのだ。
ただし、微粒子をとる課程でカプセル内部をテフロン製の特殊なへらでこすっているんだけど、その作業で生じた金属片は混ざっているみたい。

いよいよこれでアポロの月の石やスターダストの彗星のしっぽのちり以来の宇宙物質の解析が始まるのだ。
イトカワは原始天体と言われていて、太陽系の形成初期の状態が保存されている「化石」と呼ばれているのだ。
ビッグバンが起こってから冷却していく課程で様々な元素や物質が生まれ、そういったものが集まって恒星系やそれが集まった銀河が形成されていくんだけど、イトカワの場合は、太陽系ができていく中で、ちりや岩石が集まってそのまま固まって太陽の周りを回り始めたのだ。
これは「はやぶさ」が解明したラブルパイル構造という中にたくさん隙間がある構造からもわかっているのだ。
一方、惑星のように質量が大きな天体だと、岩石など集まってきた結果、その重力で中心に圧力がかかり、高温になって溶け出してしまうのだ。
地球のマントルがそれで、集まった当初とは岩石の状態・構成が変わってしまうのだ!
なので、イトカワの岩石と地球の岩石を比べてみると、もともとはどういうものが集まって、それがどう変化して固体惑星になっていくのかなんていう太陽系の進化の過程がわかるかもしれないのだ。

さらに、宇宙はX線やガンマ線などの多くの放射線にさらされている環境なんだけど、こういう放射線が当たると結晶構造が壊れたり、いびつになったりするんだよね。
それを宇宙風化と呼んでいるんだけど、イトカワでとられたサンプルの決勝がどれだけ宇宙風化を受けているかを調べられると、太陽系の年齢(太陽系の基となるちりやほこりができてからどれくらいの時間が経っているか)がわかるかもしれないんだって。
なんだか壮大な話だねぇ。

今回の発表では、とりあえず地球のものではなく、イトカワのものらしい微粒子だった、ということがわかったんだけど、本当の解析はこれから。
播磨にある大型放射光施設のSPring-8など、最先端の分析機器・設備を使って国を挙げて解析を進めるのだ。
さらに、米国航空宇宙局(NASA)なんかの海外機関とも協力も進めるらしいよ。
まだ開いていないB室にはさらに大きな粒子があるかもしれないし、今後が楽しみなのだ♪
ちなみに、もっと大きな粒子が見つかると、さらに解析の幅が広がるみたいで、関係者はわくわくしているようだよ。

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