2012/03/31

インディゴはインドアイより出でて徐々に薄くなる

4月と言えば新入社員が入ってくる季節♪
それまでの学生生活からはがらっと変わるよね。
生活リズムもそうだけど、服装も変わるのだ。
多くの人はスーツで職場に行くことになるけど、それこそ学生時代はジーンズとTシャツでもよかったわけだから、最初のうちはその窮屈さに辟易とするのさ(笑)

でも、むかしはジーンズで学校に行くと怒る先生もいたんだよね。
それは、ジーンズがもともと作業着として作られたもので、作業着で神聖な授業に来るとは何事だっ!、ということなのだ。
日本の場合は戦後に米国文化の象徴のように、憧憬を伴って入ってきたからそんなイメージはあまりないけど、米国の大学ではそうだったみたい。
むかしは米国帰りでそういうのに感化された先生がいたんだろうね。
今でも米国の大学ではジーンズじゃダメなことがあるから注意が必要なのだ。

このジーンズが生まれたのはゴールドラッシュに沸く19世紀後半の米国。
1870年に仕立屋のヤコブ・デービスさんが馬車の幌やテントに使われていた丈夫なデニム生地でズボンを作ったのだ。
金鉱山で働く鉱夫からはすぐにすれてズボンがすり切れてしまうので丈夫なものが求められていたんだよね。
これが好評を博したので、類似商品が出回らないうちに特許を取ろうとしたんだけど、お金がない!
そこでデニム生地のメーカーと権利を折半することにして、メーカーを通じて特許を取ったのだ。
そのメーカーこそ、今もジーンズの一大ブランドであるリーバイス社。
リーバイ・ストラウスさんの会社なので「Levi's」なのだ。
こうして、ジーンズの原型が生まれたわけ。

ところが、この当時のジーンズはまだ青くないのだ。
幌とかテントとかの生地の転用だったので白っぽかったんだよね。
これが青くなるのはインディゴという染料で染められるようになったから。
当時、インディゴで染めると虫除け・蛇除けになると考えられていて、開拓時代のフロンティアでおそれられていたガラガラヘビ対策とか言われているよ。
ところがどっこい、すでにこの時代のインディゴにはそういう効果はなかったというのが通説。

天然のインディゴはインドのコマツナギから取られてものが有名で、欧州ではインド・東南アジアから輸入していたのだ。
ローマ時代から知られていたらしく、香辛料と並んで超貴重品だったみたい。
大航海時代になって海路も開拓されるとかなり広がりを見せるようになるけど、まだまだ貴重品なのだ。
ところが、19世紀の終わり、インディゴの化学合成に成功するのだ。
こうして、安価にインディゴが使えるようになり、ジーンズのような作業着にも使えるようになったわけ。
もともと天然インディゴにはジョチュウギクに含まれるような殺虫成分のあるものが微量に含まれているので「虫除け」になったんだけど、すでに合成インディゴになった時点でその効果は望めないのだ。
もはや「気持ちの問題」だね。

インディゴ自体は水に溶けないので、まずは水に溶ける形にしてから染める必要があったんだよね。
これもインディゴ染めが高価だった原因の一つで、毒性のあるインディゴを多段階の危険な作業が伴う染め方で染めていたんだそうだよ。
さらに、そういう性質なので選択で色落ちしやすい染料でもあるのだ(>o<)
古来からいろいろと工夫されているようだけど、欧州で18世紀までに使われていたのは腐った尿に溶かして染めるというもの。
尿中の尿素などによりインディゴが還元され、水溶性のインディゴ白という状態にしていたのだ。
このときは黄緑色の染料で、布を染めて乾かしていると、その間に再びインディゴ白が空気中の酸素で酸化されて青くなっていくんだって。
19世紀になると尿素が合成できるようになったので、尿素と合成インディゴで工業的に大量に染められるようになったのだ。
英国では、還元剤としての硫化ヒ素(III)と混ぜてから染めるペンシルブルー法(濃く染めることが可能)、直接繊維に不溶性のインディゴを塗りつけてから硫酸鉄(II)のそうに浸して繊維に浸透させるチャイナブルー法(色は薄いが細かい模様が描ける)などが19世紀に出てきたんだって。
化学が発達して、いろいろと工業的に工夫できるようになったのだ。

このインディゴを使った染めは日本でも発達していたのだ。
それは藍染めで、日本に自生するタデアイもインディゴの前駆体であるインディカンを含んでいて、その色素を利用して染色を行ってきたのだ。
ちなみに、アイヌの人たちが利用していたのはウォード、琉球で使われていたのはリュウキュウアイというもので、別の植物なんだって。
6世紀ころに中国から伝わり、江戸時代の徳島で大きく発展したんだって。
それまでは薄くしか染められなかったものが、「藍玉」が作られるようになってから、今の藍染めの作務衣なんかで見るような濃い色での染色ができるようになったんだよ。

古くは生葉染めといって生葉をたたきつけたり、生葉の絞り汁で染めたりするんだけど、インディゴは水に不用なので淡くしか染まらないのだ。
これは前駆体のインディカンは水に溶ける性質を利用して、インディカンのうちに繊維に染みこませているんだよ。
次に出てきたのが乾燥葉染め。
これではもうインディゴになってしまっているので、還元反応をしながら染める必要があるのだ。
古来どうやってきたかはよくわからないけど、おそらく木灰汁や石灰などのアルカリ溶液で還元しながらやったんじゃないかな?
でも、これもやっぱり淡い色にしか染められないのだ。

そこで登場するのがすくも染めという方法。
乾燥した葉を室の中で発酵させ、それをつき固めて「藍玉」を作るのだ。
この藍玉は持ち運びもでき、乾燥・発酵過程を経ることで色素も濃縮されているので便利なんだ。
ちなみに、インドの場合は、生葉を水につけて発酵させ、石灰で色素を抽出して固めるんだって(こっちの方法の方が不純物は少ないらしいよ。)。
やっぱり木灰や石灰で還元してから染液を作るのだ。
藍玉を木灰汁(草木の灰を熱湯に入れて上澄みをすくったもの)に入れ、そこにふすま、石灰、日本酒などと瓶に入れて攪拌すると染液ができるのだ。
10日くらい経つと、水面に藍色の泡「藍の華」が出てくるんだけど、これが染め頃。
何度もこの染液に染めることで日本独特の藍染め「ジャパン・ブルー」ができあがるのだ。

藍染めは布や糸を何度も染めて青く青くするけど、ジーンズに使うデニム生地の場合は縦糸だけ染めてあって、横糸は白いままで綾織りにするんだ。
なので、表は青いけど、中は白いというようになるわけ。
使い込みによる色落ちは藍染めやジーンズの醍醐味だけど、ジーンズの場合は過度に色落ちしないように裏返してから漂白剤を含まない洗剤で洗うのがよいそうだよ。
剣道着なんかはあんまりあざやかな色だと素人っぽいから早く色を抜きたいかもしれないけどね。

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