2012/06/30

Every child has a beautiful name!

歌手活動を休止中の宇多田ヒカルさんがツイッターで、「最近日本では風変わりな名前の子供が多いらしいけど、絶対読めない名前とか、日本語っぽくない名前とか、ちょっとかわいそうだなと思う。親御さんたちは愛情をもって名付けたんだろうけど…(原文ママ)」とつぶやいたことが話題になっているのだ。
最近は子どもたちに「変わった」名前をつけることが注目されていて、俗に「キラキラネーム」と呼ばれたりするんだよね。
これは文字どおりキラキラ輝いているというより、皮肉を込めた言い方だけど・・・。
もともとは、2ちゃんねるでよく使われる「DQN」な親が子どもに変わった名前をつけるので、「DQNネーム」と呼ばれていたよ。
ただ、どうしても「DQN」というスラングには蔑称的なニュアンスがあるから、キラキラネームの方をよく見かけるようになったよね。

思い出してみれば、かつては自分の子どもに「悪魔」という名前をつけようとしたところ、市役所に不受理にされるという事件があったのだ。
手続的には明らかな瑕疵はなかったんだけど、市役所が法務省民事局に照会した結果、「子供の福祉を害する可能性がある」として、親権の濫用を理由に不受理にしたものだよ。
このころは、自分の子どもにそんな名前をつけるなんて!、と眉をひそめる人も多かったけど・・・。
今ではかなり予想の斜め上を行く名前もあるようなのだ。

2ちゃんねるで有名なのは「ぽっどる」だけど、これはネタかもしれないよね。
でも、「ゆとり」くんや「ぷもり」ちゃんは実際に存在していて、テレビのニュースや新聞の投書欄に登場しているのだ。
「光宙(ぴかちゅう)」とか「大熊猫(ぱんだ)」、「今鹿(なうしか)」などなどの名前も本当に存在しているそうだよ。
子どもがどう思うかは別の問題としても、まわりの大人、例えば学校の先生は苦労するだろうね(>o<)
思い切って大喜利的に読もうとすればなんとかなるのかもだけど(笑)

で、命名のルールなんだけど、これは戸籍法と戸籍法施行規則(法務省令)に依っているのだ。
戸籍法では、

第五十条 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
2 常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。


と定めていて、ここでいう「常用平易な文字の範囲」というのは、戸籍法施行規則で、

第六十条 戸籍法第五十条第二項 の常用平易な文字は、次に掲げるものとする。
 一 常用漢字表(平成二十二年内閣告示第二号)に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。)
 二 別表第二に掲げる漢字
 三 片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)


となっているのだ。
この省令の第2号で言う「別表第二に掲げる漢字」というのがいわゆる人名漢字表なのだ。

気をつけたいのは、戸籍法の体系では、命名するときに使用する文字のルールは定められているものの、読み方については言及がないこと。
だから、どんな当て字をしてもいいし、まったく関係ない読みをつけてもよいのだ!
極論で言えば、「太郎」と書いて「とむ」と読ませてもよいわけ。
ま、そういう名前の付け方をされると将来苦労するかもしれないけど・・・。
ただし、名字の世界で言えば難読の姓はいくらでもあって、「四月一日(わたぬき)」、「小鳥遊(たかなし)」、「目(さっか)」、「一(にのまえ)」などあるから、読み方に制限をつけるのは日本の伝統・文化に反することだったのかも、とちょっと思うのだ。

そして、よく命名で問題になる、「公序良俗に反する名前」、「子どもの福祉を害する可能性」などなどの「不受理」の理由は戸籍法の体系ではなく、むしろ一般法規から来るもので、出生届を出すときの手続上の問題ではないのだ。
なので、アルファベットや数字を使っている、常用漢字表・人名漢字表外の漢字を使っているなどの明確なルール違反がなければ、受付はしなくちゃいけないんだ。
さらに、不受理にすると、場合によっては裁判所に不服申立てをされてしまうよorz
「悪魔」ちゃん騒動のときはまさにそうだったのだ。

名前は一生のつきあいだから慎重につけないと、ということなんだけど、あまりにも社会生活を営む上で傷害となるような場合には改名することもできるのだ。
戸籍法では、

第百七条の二 正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

とあって、家庭裁判所の許可を得れば改名はできるんだ。
15歳以上であれば本人が、15歳未満であれば法定代理人が家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所の裁判官が「正当な理由」と認めれば改名ができるわけ。
実際に認められるのは、営業の理由による襲名又は代々の当主名への襲名を行う場合、神官・僧侶になる場合又は還俗する場合、難解・難読な名前又は珍奇な名前を変更する場合、親戚や近隣者に同姓同名の者がいて紛らわしい場合、帰化した際に日本風の名前に改める場合、本人の外見と名前の性別が食い違って不便な場合(むかしは異性と紛らわしい場合だけだったけど、性同一性症候群が認められてからは、性別の変更による改名も認められるようになったよ。)、永年使用した通称を本名にする場合、出生届を提出した時の誤りを正す場合などだよ。
ただし、裁判所としては、都合が悪くなったからといってすぐに改名すればいい、という風潮に釘を刺す意味で「親権者がほしいままに個人的な好みを入れて恣意的に命名するのは不当で、子供が成長して誇りに思える名前をつけるべき」との見解を示しているのだ。
まさに今問題になっているキラキラネームをどう考えるかだね。

とは言え、変わった名前をつけるというのは今に始まったことではないみたい。
江戸時代の国学者・本居宣長さんも弟子の中に名前の読みが難解な者がいる、と嘆いているし、作家の森鴎外さん(本名は森林太郎)は国際的に通じるようにと、子供にそれぞれ於菟(おと、Otto)、茉莉(まり、Marie)、杏奴(あんぬ、Anne)、不律(ふりつ、Fritz)、類(るい、Louis)など外国人風の名前を付けたりしているし。
それこそ、今は一般的になっている(?)「翔」とか「彩」みたいな名前はむかしは少し違和感があったわけだよね。
むしろ、現代では「太郎」・「次郎」や「花子」・「菊子」みたいな名前の方がマイナーで、逆に目立つようになっているのだ。
そういうことを考えれば「流行」ということなのかもしれないけど、明らかに読めない名前、別の意味を持つ言葉の読みを変えた名前などなどは将来困るだろうから、よくよく考えた方がよいだろうね。

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