「ぽん」か「ほん」か
オリンピックになると、「ニッポン」という文字をよく見かけるようになるし、「ニッポン」というかけ声もよく聞くよね。
そうなると、「日本」という字は正式には「ニッポン」と読むのかというと、どうもそうなってはいないらしいのだ・・・。
平成21年6月にに当時民主党に所属していた岩國哲人元衆議院議員が提出した質問主意書への答弁を見ると、どっちでもいいと書いてあるのだ!
より正確には、
「にっぽん」又は「にほん」という読み方については、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はないと考えている。
だって。
そうだったのか。
日本の紙幣を見ると、「NIPPON GINKO」と書いてあるように、「日銀」こと「日本銀行」は「にっぽんぎんこう」なのだ。同様に、「日本放送協会(NHK)」は「にっぽんほうそうきょうかい」、「日本武道館」は「にっぽんぶどうかん」なんだって。
政党で言うと、「日本社会党」は「にっぽんしゃかいとう」と読むそうなのだ。
ところが、公的組織でも「日本オリンピック委員会」は「にほんおりんぴっくいいんかい」と読むし、公益法人だと「日本相撲協会」は「にほんすもうきょうかい」、国策会社でも「日本航空」は「にほんこうくう」が正式。
なんとなく、こういう場合は「にっぽん」、こういう場合は「にほん」というルールがあるわけじゃなく、語感で選ばれているような気がしないでもないよね(笑)
けっきょくどちらも圧倒的に使われているわけではなく、それぞれ通用しているので、今更政府としては決められない、といのが正解なのだ。
ただし、戦前には「にっぽん」に統一しようという動きもあったみたい。
昭和9年(1934年)の文部省臨時国語調査会で「にっぽん」に読みを統一し、外国語表記も「Japan」をやめて「Nippon」にしようとしたんだけど、不完全に終わったみたい。
「大日本帝国憲法」も、正式に「だいにっぽんていこくけんぽう」と読み仮名をつけようとした動きもあったそうだけど、けっきょくは公式には読みは定まっていないようなのだ。
戦前ですらそうなんだから、現代においてどちらかに統一する勢いはないだろうね。
語調を強めたいとき、勢いをつけたいときは破裂音がいいから「にっぽん」と言うし、よりマイルドに、平板に言いたいときは「にほん」と言うようにした方が使い分けできるしね(笑)
では、むかしはどうだったか、というのが問題だよね。
研究によれば、飛鳥時代後期、7世紀後半くらいの国際的な漢字の読みは呉音で「にっぽん」と読むか、漢音で「じっぽん」と読むかのどちらかだったのではないかと推測されるのだ。
漢字文化圏の場合、文字自体は変わらなくても、時代によって読みが変わるので複雑なんだよね・・・。
国際的には、当時の中国の王朝における主流の読みに従うんだろうけど。
で、ここでわかるのは、「じゃぱん」というのは、この漢音の「じっぽん」から来ているであろうということ。
「黄金の国ジパング」とかもおそらく同じ。
マルコ・ポーロさんは元代の中国を訪れているから、そのころの読みがそれに近かったんじゃないかな?
ところが、平安時代の仮名書きでは、「にほん」と表記されているんだって!
仮名の読み方字体が異なっている可能性もなくはないけど、確実に「にほん」と読む習慣はあったんだよね。
室町時代では、対外的には「にっぽん」とか「じっぽん」とか言うけど、普段は「にほん」と言っていたのではないか、というような説もあって、そうなると、かなりむかしから強いこだわりもなく、場面場面で読みを使い分けていたことに・・・。
これが日本の文化性かな(笑)
今と全く変わらない!
むしろ、中国では漢字の読みが時代で変わるのが普通だったから、大きなこだわりを持っても国際的に通用しなくなるだけだし、意味がなかったのかな?
ちなみに、我が国の国号は「日本国」とする、と定めている法律は特になくて、日本国憲法において、「天皇は、日本国の象徴であり・・・」というように使っているので、「日本国」が事実上の国号となっているのだ。
国旗と国家はもめたのでちゃんと法律で定めたんだけどね。
実は、戦前も「日本、日本国、日本帝国、大日本国、大日本帝国」などの様々な国号がばらばらに使われていたようで、昭和10年(1935年)に帝国議会で不統一が問題視され、以降は「大日本帝国」で統一されるようになったんだって。
それに比べれば今はほぼ「日本国」で統一されているから、デファクト・スタンダードとしてはうまく機能しているかな。
ま、読みは定まっていないのだけどね。
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