2014/02/01

バクテリアの力で中はとろとろ

日本でも水筒のように使われてきたひょうたん。
実はアフリカ原産で、その有用性から世界に広まった植物なのだ。
最古の栽培植物とも呼ばれ、アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカとそれこそいろんな地域で容れ物や楽器などに利用されているのだ。
ヒョウタンのみから加工されるひょうたんは、軽くて丈夫で、水が漏れないから便利なんだよね。
タネも乾燥に強く、海水にさらされても高い発芽力があるという植物としての強さも広まった要因のひとつなのだ。

ヒョウタンの果実にはククルビタシンという苦み成分があって、これは有毒で嘔吐や下痢などの食中毒症状をひきおこすものなのだ。
なので、食べるのではなく、日用品の材料として使われるわけ。
ちなみに、海苔巻きでもおなじみの干瓢は、ククルビタシンの含有量の少ないヒョウタンであるユウガオを加工したもの。
普通のヒョウタンの実を薄くむいて干しても干瓢にはならないので注意!
やる人はなかなかいないだろうけど・・・。

ヒョウタンからひょうたんへの加工は意外と手間がかかるのだ。
完熟したヒョウタンの実のへたの部分を切り落とし、そこから棒を中に突き入れて果肉を崩すのだ。
ヒョウタンは果肉が硬いことでも知られているので、けっこう大変みたい。
で、ある程度中をぐちゃぐちゃとかき回したら、重しをつけて水につけておくのだ。
そうすると、ヒョウタンの果肉や表皮はバクテリアにより分解され、表皮の下の硬い殻の部分だけが残るんだ。
これには1週間~1ヶ月くらい必要で、さらに、ものすごい腐敗臭がするので、いったん腐った果肉等を取り去った後、さらに1週間ほど水につけ、その後陰干し。
それでもまだにおいは残っているので、水筒や食器として使う場合は、さらにお酒や番茶を内部にみたして臭みを抜くんだって。
お酒を使うのは、臭み成分をアルコールに溶かして溶出させるため。
番茶を使うのは、大量に含まれるタンニンが臭み成分を難溶性塩になって不溶化されるのでにおいを感じなくなるのだ。
実は化学的に理にかなっている手法だよ!
最後に柿渋や漆、ニスなどを表面に塗って仕上げ。

このひょうたんになる部分は、セルロースとリグニンでできているんだけど、セルロースは植物性の繊維。
ヘチマたわしや綿糸もセルロースだよね。
まったくバクテリアに分解されないわけではないけど、分解には相当時間がかかるのだ。
ヘチマたわしもヒョウタンと同じように、完熟したヘチマの果実を腐らせて取り出すんだけど、果実は腐敗するけどセルロースの網目部分は分解されない状態で取り出すのだ。

リグニンは別名木質素とも呼ばれるもので、これは白色腐朽菌でしか分解できないのだ。
白色腐朽菌は、ヒラタケ、シイタケ、エノキ、ナメコなどのきのこのことで。茶色いリグニンを分解して、腐朽した木が白っぽくなるのでこの名前があるんだ。
パルプ製造の副産物として出る黒液には大量のリグニンが含まれているのだけど、まさにその色。
ポリフェノールの一種なので茶色いのだ。
で、こっちはセルロースよりさらに分解されにくいので、容れ物などにも使えるわけ。
ただし、表面にカビが生えたりはするから、適切にメンテナンスはしなくちゃいけないんだけど。

それにしても、果実を腐らせて、硬い部分だけ取り出すって言うのは誰が考えたんだろうねぇ。
自然に地面に落ちたヒョウタンの実が長い年月で果実が腐って、硬い部分だけが残されていたのを発見したのがはじまりなのかなぁ。
こういう先人の工夫には驚くものが多いよね。
それなりの年月をかけて洗練していったんだろうけど。

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