2024/06/08

丸善にしかける

 地味に好きなお菓子がある。
それはレモンケーキ。
甘酸っぱくて、懐かしい味。
子供の時に最初に食べたのは近所のケーキ屋さんのやつ。
大人になってからは主にコンビニやスーパーで買える山崎のレモナック。
時々百貨店で高級なやつを買うとぜいたくな気分になる。

そんなレモンケーキ。
発祥は大正時代だそう。
広島県の物産陳列館(被爆後に「原爆ドーム」になった建物)で大正8年(1919年)3月に開催された「似島獨逸俘虜技術工藝品展覧會」の菓子即売所で、日本初のバウムクーヘン(ユーハイムのもの)とともにレモンケーキが販売され、大好評を得たのだとか。
この時のレモンケーキは今のような紡錘形でコーティングされたものではなく、レモンピールなどで風味をつけた生地をパウンドケーキ型で焼いて、上部にアイシングしてからカットしたものだったみたい。
当時の広島県内では一大ブームで、御使い物や仏壇に供える菓子と言えばこれ、というくらいになったとか。
それが全国に広まっていったらしいけど、そこまでメジャーにはならなかったのだ。

転機が訪れたのは戦後になってから。
葛飾区にある製菓・製パン用型製品を作っている千代田金属工業が、レモンをかたどった紡錘形の型を作ったのだ。
これまではサクで焼いてカットしていたわけだけど、フィナンシェなどの焼き菓子のように、最初から一つ一つ紡錘形の焼き菓子ができるのだ。
これにレモン風味のホワイトチョコレートでコーティングすると、現在一般的に認知されているようなレモンケーキになるわけ。
これが昭和40年代から50年代にかけて一大ブームになり、全国メジャーなお菓子になったわけ。

まだこのころだとあまりにもしつこいバターの風味は苦手な人が多いだろうし、少し酸味があってさっぱりしているほど良い甘さが受けたのかも。
フォルムもかわいらしいしね。
焼き菓子なので生ケーキより日持ちするので「おもたせ」なんかにもできる点もよかったのだ。
で、その後は「ちょっと懐かしいお菓子」程度になっていくんだけど、最近またブームが来ているようなのだ。
平成の後期くらいからだけど、レモン風味のお菓子が流行ってから、伝統的(?)なタイプにひと手間加えたものが出て来るんだよね。
中にレモンマーマレードを入れてみたり、レモンピールをお目にしてよりレモン風味を出したり。
これらが高級路線のレモンケーキなのだ。

でも、ちょっと気になるのは、なぜ広島発祥なのか?
そう、我が国ではレモン栽培は広島が全国一なんだよね!
というのも、レモンの木は寒さに弱く、国内で栽培できる個所は限られるのだとか。
その一大産地が広島県の瀬戸内海沿岸部なんだよね。
レモン自体が日本に伝わったのが明治6年(1873年)、広島県で最初に植えられたのが明治31年(1897年)と言われているよ。
最初は買ってきたネーブルの苗木の中にレモンが混ざっていて、間違って植えたらしい・・・。
で、レモンの実がなるのだけど、どうやって食べたらよいのかわからないので、港に寄港する船乗りたちに聞いたりしていたのだとか。
そういう背景があって、レモン味のものが広島の名物になったのわけなのだ。

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