2024/06/15

淑女の読み物

 最近の若者は、わりと本を読むらしい。
といっても、ライトノベルが読まれているだけのようだけど・・・。
いわゆる「なろう系」やら「異世界転生もの」が量産されていて、アニメや漫画に展開されてメジャー化していくのだ。
古く言えば、「スレイヤーズ」、その後の世代だと「涼宮ハルヒシリーズ」、最近のだと「転スラ」、「無職転生」、「シャンフロ」、「オーバーロード」とか。
「涼宮ハルヒ」の時代まではプロ作家が書いていたのだけど、最近は小説投稿サイト(「小説家になろう」とか「アルファポリス」など)で素人作家さんが投稿して、人気が出ると書籍化、というぱてーんが増えてきているよね。
こういう形にすると玉石混交だろうけど、編集者が「何が受けるか」をあまり考えなくても、実際に人気のあるコンテンツを見つけられるという利点があるのだ。
携帯小説もそうだけど、けっこう何が受けるかわからないというのはあるんだろうね。
小説としては表現がけっこうメタメタでもストーリーや設定が面白い、キャラクターが魅力的、なんだか読ませる文章で続きが気になる、とかとか。

で、それはまだ理解できるんだけど、いまいちよくわからないのが、なぜか売れ続けている「ハーレクイン・ロマンス」。
こういう言い方をすると愛好者には怒られるかもだけど。
男性であることもあって、ほぼ触れたことはないので、よくわからないんだよね。
岩波文庫並みに本屋の一角を占めていて、売れ筋の書籍の一軍であることは知っているのだけど。
なので、少し調べてみることにしたのだ。

基本的には、ハーレクイン社が出版している主に女性をターゲットとした大衆恋愛小説のペーパーバックが「ハーレクイン・ロマンス」なのだ。
書いているのも女性、読んでいるのも女性で、男性には近寄りがたい雰囲気を持っているのが特徴。
日本では翻訳版が月2回刊行されているらしいけど、それくらい頻繁に出版されるもので、書籍の大量生産・大量消費の代名詞であるペーパーバックの雄なのだ。
っていうか、現在ではぱーぱーバックはもう「ハーレクイン・ロマンス」くらいしか売れないらしい。
かつてはスティーブン・キングのミステリなんかが良く売れたわけだけど、他のコンテンツが充実してくるにしたがってそういう伝統的なペーパーバックは軒並み売れなくなって、「ハーレクイン・ロマンス」だけが残ったようなのだ。
どうも、これは「ハーレクイン・ロマンス」の特徴から来ているらしいことがわかったよ。

先に書いた通り、基本は女性が読む女性作家による大衆恋愛小説。
ヒーローと呼ばれるイケメンや大金持ち(19世紀前半の英国摂政時代の貴族とかアラブの富豪とからしい。)の男性が、ヒロインと呼ばれる主人公の女性と恋に落ち、ハッピーエンドで終わるのだ。
かつ、女性をターゲットにしているので、女性が読んでいて不快になるような展開はまずなくて、浮気とか不倫とかではなくて、あくまでも純粋な恋愛が成就する、というものらしい。
日本ではドロドロした昼ドラが主婦層に好まれていたけど、欧米文化はキリスト教的な価値観もあって、王道のれないがよいらしい。

内容的には3つのシリーズがあって、日常では怒らないようなドラマティックな恋愛の話の「ロマンス」、身近に起こりそうな恋の話の「イマージュ」、情熱的な恋の話の「ディザイア」に分かれるそうで、背表紙もこのシリーズごとに色分けされているみたい。
で、舞台設定でもパターンがいくつかあって、歴史もの(ほとんどは英国摂政時代、日本の異世界転生ものの異世界のほとんどが中世欧州をベースにしているようなものか?)、アラブ王国もの(シークというアラブの王族と恋する話らしい、これはシャムの王様と子供たちの英語家庭教師の恋を描いた「王様と私」みたいなものか?)、現代もの(キャリアウーマンだったり、平凡な女性だったり)がメジャーみたい。
こういう基本的な枠組みの中で、いろんな女性作家が「順列組み合わせ」のような定型パターン・エピソードをつなぎ合わせてハッピーエンドになるれ内を描くようなのだ。
逆に言うと、こういう基本コンセプトがあるからこそ、どんどん大量に刊行できるわけだよね。

正直、これだけ聞くと、「そんな小説を読んで面白いのか?」と思うわけだけど、実はそうではないらしい。
これは、ターゲットである女性読者がその読書体験で何を求めているか、ということにつなげっているのだ。
基本的には、読書体験では、まだ見ぬ世界を知って知識が広がったり、登場人物に感情移入して喜怒哀楽を疑似体験したりするわけだけど、どうも女性の読書体験は後者、感情移入の方に重きが置かれるらしいんだよね。
女性は教官を求める、と言われているのと同じ。
逆に男性は理屈っぽく知識を求める傾向にあると言われ、自己啓発本みたいなやつはほとんどが男性読者なんだそうで。

そうなると、女性読者としては、読書を通じて疑似恋愛を体験して、ドキドキしたい、ワクワクしたい、と思っているわけだ。
でも、個人個人で趣味嗜好がことなるから、せっかくなら現実では味わえないようなラブ・ロマンスを求める人もいれば、実際には体験できていない日常の中でも起こり得そうな恋愛を求める人もいるのだよね。
で、自治はそのほとんどすべてのパターンがそこにはあるのだ!
つまり、読者にしてみれば、自分がどの疑似恋愛体験をしたいのかを探りながらいろんな作品を読んでいくことになるよ。
これが数多くの作品を次々と打ち出して読者をひきつけてやまないコツ。
最初はこういうのが好き、と思っていても、読んでみたら別のジャンルもよかった、みたいなのもあるし、一度はまればどんどん手に取るのだ。
こう考えると、なんだか「なぜ売れているのか」がわかった気がするよね。
ボクは恋愛小説はあまり好みでないので読まないけど(笑)

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