栄養のかたまり
どこにそんなに住んでいたのか、というほどクマが出てきているのだ。
どうも、今年は山の中に餌が少ないらしく、街中にまで出てきて探している、ということらしい。
でも、いざやあを降りてみれば、そこそこ食べ物もあるわけで。
クマの冬眠は両生類や爬虫類が仮死状態になるような冬眠とは違って、単純に代謝を極限まで落として寝ている冬ごもりの状態なので、十分い餌があればしなくてもよいんだよね。
極域にいるホッキョククマ(シロクマ)は冬眠しないわけだし。
で、一度町まで出て餌があることがわかると冬眠せずにずっと出てくるのではないか、みたいなことを言っている人もいるよ。
そうなると大変だ。
では、クマは冬眠の前に何を食べているのか?
まず重要なのは、ドングリなどの木の実。
クマは冬眠前にできるだけ皮下脂肪を蓄え、それを超低燃費で消費しながら春を待つのだ。
で、このときの餌集めで重要なのは、最終のコストはあまり高くなく、栄養価は高いこと。
実は、縄文人も採集生活の時はたくさんドングリを食べていたように、森林に拾いに行けば栄養価の高い木の実が手に入るという点でドングリは非常に優秀なんだよね。
その主成分は炭水化物(デンプン)や脂質。
適度にタンパク質やビタミン、ミネラルもあるようなのだ。
人間が食べる場合はあく抜きが大変だけど、健康食品業界では、ドングリは栄養価の高いスーパーフード扱いらしいよ。
なぜ栄養価が高いかというと、乾燥していて(=水分含有量が少なくて)エネルギー密度が高い食べ物だから。
単純に100gあたりのカロリーを比較してみるとわかるんだけど、
①スイカ 40kcal
②うどん(ゆで後) 100~130kcal
③ごはん(炊飯後) 170kcal
④食パン 250kcal
⑤ドングリ(シイの実) 240kcal
となっていて、ドングリは食パンに並んでグラム数当たりの熱量が大きいのだ。
ゆで前の乾麺のうどんや炊飯前の精白米はともに100gあたり350kcalくらいなので、デンプンなり脂質なりのカロリーのあるものの濃度の問題なんだよね(からっからの乾パンに至っては100gあたり400kcalくらいあるのだ!)。
いくら甘く感じても水っぽいスイカはカロリーが低く、水分量が減っていって相対的にデンプンや脂質の重量比が上がるとカロリーは高くなるのだ。
ま、当たり前だけど。
これに、最終が簡単というのもポイントが高いのだ。
クマは肉も食べるけど、肉を食べようとすれば借りが必要なわけで。
そうなるとけっこう体を動かさないといけないわけだけど、ドングリは拾うだけだからね。
短期間でとにかく栄養を取ろうと思うと極めてコスパの高い食料ではあるのだ。
でも、競合相手として、リスやネズミのようなげっ歯類なんかもいるので、ドングリが不作になってしまうと、冬眠前に十分な皮下脂肪が貯められなくなってしまうよ。
川沿いだと、遡上してきたサケというのも重要な栄養源で、日本では、ちょうど9~12月の増量期に「カモがネギしょった状態」で遡上してくるのだ。
産卵行動を終えたサケは力尽きてぷかぷか川に浮かんでいるけど、おいしいかどうかは別として(遡上してきた紗枝は脂が落ちに落ちていて食べてもおそらくおいしくない。)、超簡単に手に入るたんぱく源ではあるんだよね。
こっちも肉食の鳥だとかヤマネコのような競合相手はいるけど。
こういう冬眠前の食べだめ食料が不足すると、次の食料を探しに山を下りてくるのだ。
ちょっと前までは、里山の栗とか柿に手を出す程度なのでそこまで人と接触することはなかったわけだけど、さらに食料不足が深刻になると、人間がいようが構わずにさらに街中まで入ってきてしまうわけだね。
今がその状況。
で、襲われる人も出てきているのだけど、もっと怖いのは、こういう山を下りてきているようなクマは、山での餌の取り合いに勝てなかった、比較的弱いクマだということ。
つまり、山の中にはもっと強いクマがまだいるのだ・・・。
下手に餌を上げるのもよくないし、やっぱりある程度間引きして適正な生息数に落ち着けないと共存は蒸すかしいんだろうなぁ。
シカが増えすぎて餌がそっちに取られているんじゃないか、みたいな話もあるし、都市部周辺の山間部の生体全体を適正に管理しなくちゃダメなんだろうなぁ。
そういう点では、かつての日本の「里山」というのはわりとよくできたシステムだったんだと思うよ。
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