2024/12/28

現代の口入屋

 「闇バイト」関連で「スキマバイト」紹介業が注目を集めているのだ。
明かにやばいバイト求人が普通に載っていると・・・。
「闇バイト」に応募・従事しているひとたちは、なにもアンダーグラウンドな掲示板などにアクセスしているわけではなく、普通にスマホアプリで単発・短期間バイトを検索していただけ。
で、異様に好条件なものを見つけ、その裏にあるものなどあまり考えずに、ということのようなのだ。
そこまで割の良いバイトがそうそうあるわけじゃないんだけど。

そういうチェック機能が働いていないんじゃないか、という点に加え、このサービスは「雇いたい人」と「働きたい人」を結び付けるだけであって、それ以上でもそれ以下でもないので、雇用者・被雇用者間で何かもめごとがあっても責任を持たない=知らんぷりをする、という問題点があるのだ。
これは食品デリバリーでも同じような話があったけど、雇用者側から雇った人が〇〇みたいなクレームが来ても、今後気を付けますが最終的に選んだのはあなたですよね、こっちはサービスを提供しただけです、となるんだよね。
逆も然りで、バイトに行ったら相手がやばい業者だったんですけど!、っていうクレームについても、紹介しただけで雇用契約を結んだのはあなただから自己責任で、という話になるのだ。

これは、このサービスが職業安定法に基づく「有料職業紹介事業」というカテゴリで行われているものであるため。
無料の「職業紹介事業」は、国が提供している「職業安定所(ハロー枠)」や大学事務局による就職あっせんのようなサービス。
で、有料の方は、もともとは専門スキルは要するような職業であって、常時抱え込まなくてm日常業務は回せるような人材、例えば、エンジニアや法務や財務のエキスパート、通訳などを紹介するようなものだったのだ。
御大尽の生活をのぞき見しちゃう家政婦さんを紹介する「家政婦紹介所」もこれと同じ。
で、この制度を短時間・短期間の単発仕事のマッチングに使い始めたのが、タイミーやシェアフルのようなスキマバイト紹介サービスなんだよね。

俗に「派遣さん」と言われる労働者派遣法に基づく労働者派遣事業においては、派遣会社は派遣する労働者を有機又は向きで雇用していて直接の雇用関係があるんだよね。
なので、その労働者に対して一定の責任を持たなくてはならないのだ。
それは社会保険のような制度もそうだけど、派遣労働者が派遣先で損害を出した場合など、一義的には派遣会社がその責任を取る必要があるよ(ただし、その後、派遣会社からやらかした派遣労働者に求償をするだろうけど。)。
なので、ある程度の身元保証を派遣会社がしてくれる、というところが大きく違うのだ。
雇用を柔軟にしたいけど採用・罷免の自由度は制限されたくない、という雇用者側のわがままに応じるものなのだ。
ただし、派遣労働者の手取りは別として、派遣会社には一人当たり高コストな費用がかかっているわけで、その「マージン」こそがビジネスなのだ。

一方、職業紹介の場合は、マッチングさせるだけなので、派遣先についても、派遣される労働者についても、必要書類等で一定の確認はするけど、身元保証までするわけじゃないんだよね。
さすがに明らかに公序良俗に反するような仕事(ダイレクトに強盗してほしいなど)を掲載することはしないけど、強盗の実行犯を探す「闇バイト」のカモフラージュされた求人ははじけなかったりするみたいなのだ。
で、仮にそれが事後にわかったとしても、もともとマッチングさせることのみが提供すべきサービスなので、最後は知らぬ存ぜぬになってしまう、というわけ。

シフトに入っていたバイトが急病で来られなくなったけど、他のバイトはそのシフトを埋められない!、みたいな事態になったときには非常に便利なサービスではあるんだよね。
また、本当にその日だけ単発で手伝ってほしい、みたいな需要にも合っているのだ。
だからこそこのサービスも広がっていったんだと思うけど、世の中には悪い人もたくさんいるわけで・・・。
甘利にもきつい仕事でどのバイトも長続きしないようなものをこれで埋めたり、なんてもあるらしいし、「闇バイト」的な求人も入ってきたりと荒れてきているのだ。
また、雇用側からすると、働きに来た人に支払う賃金とは別にサービスの利用料がかかっているわけで(通常は給食している側は無料でサービスを使っているので)、他のバイトと比べて上乗せで雇ってこれか、という思いも出てきてしまうし、他のバイトからすれば何もわからないぽっと出の人がいきなりやってきて、という感じだから、通常バイトと混ざるような場合はぎすぎすしやすいのだ。

当たり前の話だけど、サービスは使いようとはいえ、トラブルが頻発するようなら変えていかなきゃいけないよね。
まずは「闇バイト」みたいな求人は載せないか、発覚したら即刻削除することをきちんと義務付ける、みたいな規制を入れるんだろうけど、その判断の線引きは難しいよね。
加えて、間をつなぐだけ、という業態に対して、どこまで雇用者・被雇用者間のトラブルの責任を求めるかも難しいんだよね。
正直、食品デリバリーの方もそこの改善はうまくいってないから、なかなかうまくいかないだろうなぁ、とは思う。

2024/12/21

立ちはだかる壁

 三党幹事長合意というのがあったけど、けっきょく自民党税調は国民民主党の提案「178万円への引き上げ」について渋い回答を出したのだ。
合意がまとまったすぐ後に「目指すだけ」とか「いつまでにとは明言していない」とか日和った発言があったわけだけど、国民目線で見れば、萎えるよねぇ・・・。
もともと税調は「聖域化」していて素人は簡単に手が出せないとかなんとか言うけど、そういう古いやり方が限界に達していて前回の選挙結果になったんだろうから、多少は歩み寄りが必要と思うんだけどなぁ。
で、さんざん選挙の時から聞いている「103万円の壁」だけど、わかっているようでよくわかっていなかったので、自分でも調べてみたよ。

端的に言えば、所得税の控除の問題で、年間で103万円を越える収入があると所得税を支払う必要が出てくるので逆に手取りが減ってしまう、という問題なのだ。
なので、多くの場合は103万円を越えないようにパートやバイトを抑えて働く、ということになるんだよね。
そう聞いただけでも昨今の人手不足問題に影響がありそうだよね。
しかも、この「103万円」という数字はだいぶむかしに決めたきりで、その後の物価上昇率や最低賃金の上昇などの要素が加味されていないんだよね。
すなわち、むかしよりさらに働く時間を抑えないといけない状況になっているのだ!
これが批判される主な理由かな。

この所得税の控除については、所得税法で決まっているよ。
103万円の内訳は、48万円の基礎控除と55万円の給与所得控除に分かれるんだ。
基礎控除については、所得税法第86条第1項で「合計所得金額が二千五百万円以下である居住者については、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を控除する。」とされていて、さらに場合分けで、「その居住者の合計所得金額が二千四百万円以下である場合 四十八万円」(第1号)となっていることに由来するよ。
これは全員がまず最初に控除される部分なので「基礎控除」というのだ。
休止世所得控除については、同じ所得税法の第28条第3項で「前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。」となっていて、さらに場合分けで「前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円)」(第1号)となっていることから来ているのだ。
実際に180万円の収入がある場合の給与所得控除は62万円で、そこから収入が下がると減っていくわけだけど、下限として55万円という数字が規定されているんだ。
103万円の収入だと、103×40/100-10=31.2となって55を下回るので、55万円が給与所得控除の額になるというわけ。

このように、法律の本文で規定されている数字なので、見直そうとすると法律改正が必要という非常にハードルが高いものではあるんだよね。
でも、今回は政治主導の話であり、実際に与党2党と国民民主党との間で合意があって、この3党合わせれば過半数を越えるのだから、普通は実現するものだと思うよね・・・。
けっきょく幹事長同士の合意をなかば反故にするような議論を党内でしていて、結論もそっちに持って行ってしまうのだから(少し引き上げることにしたので中的にはだいぶ譲歩しているつもりかもしれないけど)、さすがにこれ以上は議論できないと席を立たれてしまうわけだ。
これで来年度予算案は無事に国会を通るのか?

で、実際にどのあたりの数字が適正か、という問題もあるよね。
単純に二つの指標で計算してみるよ。
まずは物価上昇率。
総務省統計局の公表している統計データである消費者物価指数(2020年基準、全国平均、総合、年度平均)で見てみると、103万円のかべがせっていされた1995年は95.8で、これを最新のデータである2023年度の106.3と比べると、物価上昇率は11%増くらいになるよ。
そのまま103万円にかけると、114万円ということになるのだ。
でも、国民民主党が主張しているのはこの数字ではなくて、最低賃金なんだよね。
こっちは1995年当時は611円で、今は1,054円なので、73%増、103万円にかけると178万円という数字が出てくるのだ。
確かに、給与所得についてかある税金なので、その給与水準を示す司法である最低賃金で計算するのは妥当性があるよね。

でも、これってさらに政府は1,500円に引き上げたいんだよね・・・。
というこおは、103万円との関係で言うと、2倍以上にする計算になる。
そこまではやらないんだろうなぁ。

2024/12/14

みこみこハウス

 皇位継承順位第二位の悠仁親王が来春から筑波大に進学あそばされることが決まったようなのだ。
新学制下では原則として元官立の学習院ということになっていたんだけど、秋篠宮家ではその慣例には習わず、内親王お二人は大学から国際基督教大学(ICU)に進学されたし、今回の悠仁親王に至ったっては、幼稚園・小学校・中学校はお茶の水女子大付属、高校は筑波大付属で徹底的に学習院を避けているんだよね。
もともと学習院という学校は、幕末に公家の師弟の教育機関として京都に創設されたんだよね。
江戸時代最後の天皇となる孝明天皇より、「学びて時にこれを習う」という論語の一文から「学習院」という勅額が下賜され、学習院と名乗るようになるのだ。
それが御一新後に東京に移ってきて、皇族・家族の教育機関として宮内省管轄の官立学校になるのだ。
宮内省が解体された戦後は私立学校として再出発するんだけど、ずっと皇室との関係は続いてたんだよね。

話はそれたけど、この悠仁親王のお住まいは赤坂御用地内の秋篠宮邸。
本来は皇位継承順位第一位の人物は「皇太子」として呼ばれ、お住まいは「東宮御所」となるんだよね。
今回は今上天皇の弟にあたるので「皇太弟」と呼ばれてもおかしくないんだけど、令和の譲位の際に、そういう呼び方ではなく、「皇嗣」と呼ぶことになったんだよね。
これは皇室典範の規定の中では、第4条で「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」としていて、皇位継承順位第一位は「皇嗣」にしているのだ。
下って第8条前段で「皇嗣たる皇子を皇太子という」として、それが天皇の息子に当たる場合は「皇太子」と呼ぶ、とするとともに、後段では「皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という」として、子世代に皇嗣がいなくて孫世代まで行ってしまった場合は「皇太孫」と呼ぶ、と定めているんだ。
で、ここで問題があって、弟が皇嗣になる場合が法律上は想定されてないんだよね・・・。
むかしからよくあることなので俗に「皇太弟」という呼び名はあるのだけど、法律上定めていないので使えないようなのだ・・・。
珍しくないことだからこの際足したらいいのに、とは思うけど、そうもいかなかったのかな?

これがいろんなところにはねていて、皇太子のことは「東宮」ともいうので、天皇のお世話をする侍従職に対比して、皇太子のお世話をする東宮職というのがあったわけだけど、それもいまは「皇嗣職」となっているのだ。
とはいえ、宮内庁の内部組織を規定している宮内庁法には「東宮職を置く」規定しかなかったので、生前退位の手続きを定めた「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」により附則を追加し、「皇嗣職を置く」規定を追加したんだよ。
さらに、皇太子でないから東宮御所とは呼べず、かといって、「皇嗣御所」とかいうのも変なので、皇嗣になる前からの呼称の秋篠宮邸という従前からの呼び方を継続しているのだ。
ただし、お住まいの呼称はけっこう流動的で、譲位後すぐは皇居に移れなかったので、赤坂御用地内の東宮御所を「赤坂御所」と名前を変えて使っていたよね。
今は上皇・上皇后両陛下のお住まいにするためにバリアフリー化などの必要な改修がなされて、「仙洞御所」となっているよ。
ちなみに「仙洞」というのは仙人の住処のことだけど、上皇・法皇の御所のことを「仙洞御所」と呼ぶんだって。

皇太子を東宮と呼ぶのは中国の風習にしたがっているのだけど、伝統的な中国の応急の場合、「君子南面」なので、皇帝の宮殿は南向きに作る、その東側に皇太子の宮殿たる東宮を作る、となっているのだ。
五行思想では「東」は「青龍」であり「春」であるので、「東宮」は「春宮」とも書くのだ。
確かに赤坂御用地は皇居=江戸城から見て東に位置しているよね。
でも、今の御所は実は南向きではなく、東向きに建てられているのだ。
明治になって最初に宮殿を造営したときは伝統にならって南向きで作ったんだけど、今の御所を作る際、無理やり南向きにして設計をゆがめるより、きちんとした宮殿を作りたいという設計者の思いがあり、昭和天皇の了解も得て南向きでない宮殿にしたそうだよ。
さすがに赤坂御用地のほかに新たに皇室のための用地を用意するわけにはいかないから、皇嗣に当たる人の邸宅は皇居から見て東にはあり続けるだろうけどね。

ちなみに、江戸時代は、皇太子も内裏の中に住むことが通例になっていて、御所とは別に東宮御所を設けることはなかったようなのだ。
皇室財政が相当厳しかったというのもあるだろうけど。
で、京都御所では、儀式などに使う正殿の裏手(北側)に天皇の日常の居所である御常御殿というのがあるのだけど、皇太子の住まいはその北西に位置する建屋に住まわ荒れていたようなので、もはや「東宮」ではなかったんだよね。
むしろ、せっかく御所を新たに東京で造営するからしっかり東宮は御所の東に作りたいと思ったのではないかと考えるんだ。
ちょうど江戸城のから見てすぐ東側には旧紀州藩の上屋敷があって用地としても使いやすかったしね。

2024/12/07

えらいこっちゃ

 韓国で大統領が「非常戒厳」を発動して議会ともめて大変な騒ぎになっているようなのだ。
おとなりの国はこれから少し政治が不安定になるみたいだね。
それにしても、議会を止めるとか、街中に軍隊を展開するとかすごいことができるんだね、と改めて思ったよ。
各国でも似たような制度はあるんだけど、どこまで何ができるかはそれぞれ。
で、その中でも日本はかなりマイルドなようなのだ。
ま、それも戦前の体制を反省して、ということなんだろうけど。


戦前の日本では、帝国憲法において「天皇ハ戒厳ヲ宣告ス。戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム」とされていて、実際にその要件や効力を規定していたのは「戒厳令」という名前の太政官布告だったのだ。
憲法には「別に法律で定める」規定になっているんだけど、帝国憲法に先行していた太政官布告がその効力を有する、という解釈でいたみたい。
この戒厳令は11条しかな短いもので、その内容は第一条の「戒厳令ハ戦時若クハ事変ニ際シ兵備ヲ以テ全国若クハ一地方ヲ警戒スルノ法トス」にすべて語られているんだよね。
戦争や事変のような非常事態が起こったとき、全国又は一部地方で軍隊を展開して警戒に当たれるようにする、ということなのだ。
今回の韓国の例に近いのかも。

帝国憲法の規定にあるとおり、天皇が宣告するものなので、基本的には天皇の親裁事項(天皇が自ら裁定するもの)。
日清・日露両戦争の際は勅令により戒厳の宣告が行われたようなのだ。
時代が下ってからは「公式令」というのが整備されて、「戒厳の宣告」は「詔書」によって行うこととし、天皇の親署に御璽を押印して、内閣総理大臣が年月日を記入したうえで、内閣の前国務大臣が副署する、というように体裁が整えられたんだけど、こうなってからは正式には戒厳の宣告は行われなかったみたい。
でも、そうなると、太平洋戦争中は戒厳体制に入っていないということなんだね・・・。
治安維持法によりかなり締め付けが厳しく、特高なんかも跋扈したわけだけど、内地に軍が展開されたというわけではないのか。

で、戦後になって日本では「戒厳」について定めた法令は一切なくなってしまったんだよね。
当たり前と言えば当たり前なんだけど、新憲法において交戦力を放棄し、軍隊を持たないという整理になったので、軍隊を街中に展開するという事態は想定されないのだ。
その代わり、よりマイルドな統制強化の枠組みとして「非常事態宣言」というのが導入されているのだ。
「非常事態宣言」というとコロナの時を思い出しがちだけど、あちらは「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」のことで、「非常事態宣言」と通称されていただけなのだ。
正式に法律で「緊急事態宣言」を規定しているのは警察法で、第七十一条第一項で「内閣総理大臣は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について緊急事態の布告を発することができる」となっているのだ。
警察法にあることからわかるとおり、ここで緊急事態の対処に当たるのは警察官だよ。

問題は、緊急事態になるとどうなるか、ということだけど、緊急事態宣言が出ると、内閣総理大臣が一時的に警察組織を統制することになっていて、警察庁長官は都道府県警の警視総監及び警察本部長に直接指揮できるようになるんだよね。
平時では、都道府県に置かれる都道府県警察本部は地方の組織になるわけだけど、緊急時だけは、それが国の機関である警察庁を頂点として指揮命令系統が一本化される、ということなのだ。
刑事ドラマではよく見るような都道府県警の縄張り争い(?)みたいなのがなくなるということかな?
でも、逆に言うと、警察法で定めているのはそこまでで、強制力を持って何かをする、というものではないんだよん。
軍隊が展開される瀬愛から、党勢が一本化された警察組織が展開される、というような大転換だよ。

コロナの時に「非常事態宣言」のときも問題視されていたけど、日本の現行法の世界では、強制力を持って国民の権利を侵して何かさせる、というのが最小限になるようになっているのだ。
それあ戦後の民主主義ということなんだろうけど、危険な地域から強制的に移住してもらったりとか、国の重要施設の整備に当たって用地に居座り続ける人たちを排除したり、とかいうのもできないんだよね。
海外では普通に行われるようなことでも。
それがいいのかわるいのかはいろいろと議論があるわけだけど、何か起こったときにちょっと心配ではあるよね。
日本人は災害の避難時にもわりと行儀よく行動するとは言われているけど、それを過信しすぎるのもなぁ、というところ。
乱用されないという大前提はありだけど、もう少し強制力はあってもいいように思うんだよなぁ

2024/11/30

コスパよい飯

 個人的に意外なニュースだったんだけど、ふりかけの売上げが伸びているらしい。
一般に米の消費量は下がっていると言われているけど、ふりかけ業界はずっと右肩上がりなんだそうで。
米の消費量だけで行くと、1962年(昭和37年)のピークで一人当たり年間118.3kg。
1日あたりだと320gくらいで、これは2合ちょっとにあたるのだ。
お茶碗でいうと4杯くらいかな。
これが2022年(令和3年)になると、一人当たり年間51.5kgで半分以下。
それでも、1日に1合、茶碗2杯分くらいは食べている計算なのだ。

というわけで、意外(?)とごはんを食べているんだけど、このごはんを食べる量が減った原因がふたつあって、ひとつはごはん以外の主食の選択肢が増えたこと。
よく言われるのは、給食によるパン食の普及や麺類による代替だよね。
朝や昼だけでも一食分がパン又は麺になればだいぶ消費量は落ちるはずなのだ。
でも、そうは言っても感覚的にはもっと置き換わっているような感じがしながら、実際には最大で半分しか置き換わっていなということンあだよね。
これにはもう一つの理由があるからなのだ。


それは、おかずを多く食べるようになったこと。
昔は塩辛い漬物やらめちゃくちゃしょっぱい塩鮭、濃い味付けの煮物とかで、少しのおかずでたくさんごはんを食べる、というスタイルだったのが、肉や魚を主菜としてきちんと食べるスタイルになって、その分だけご飯を食べる量が減ったというわけなのだ。
これは日本の食事が炭水化物偏重型の途上国スタイルから、主催・副菜が充実した先進国スタイルに切り替わったことを意味するのだ。
もともと日本でも高級な懐石料理とかだとごはんは最後の最後に少し食べるだけだよね。
おかずよりもごはんの方が安価なので、安上がりにおなか一杯にするにはごはんをたくさん食べるのがよいというわけなのだ。

ところが、ここにきてふりかけの需要が伸びているというのは、それにちょっとした反動が起きているということなんだよね。
というのも、ふりかけの売上げが伸びている要因として専門家が指摘しているのが、不況によりおかずが一品減った代わりにふりかけを使っているのでは、というものだから。
ごはんばかりたくさん食べていた時代は、それこそ「ごはんのとも」といわれるようなものがたくさん食卓に常備されていたわけだけど、おかずが充実してきてからはそういうものは徐々に家庭から消えて行っているのだ。
主菜がちょっとしょぼくなった分、他で補う必要が出てくるわけだけど、漬物や佃煮などよりはふりかけの方が安価で保存もきくし、何より味のバリエーションが多い、ということみたい。
こどもがおかずだけ先に食べてご飯が残ったときはのりたま、なんてのがボクが小さいころよくあった光景だけど、最近は大人もいろんな味のふりかけを楽しむようになってきているらしいよ。
確かに、少し高級なラインナップも見かけるような。

こう聞くと、日本の副菜が文化的に消えて行くようで少しさみしい気もするけど、そのかわりにふりかけは進化していっているのだ。
それと、ふりかけはグローバル展開もしているんだよね。
海外の人はごはんといかずを一緒に食べるというのが苦手で、どうしても先におかずだけ食べてごはんが残るという形になってしまうのだとか。
ボクがパリにいたころは、ごはんに甘めのしょうゆをかけているフランス人をけっこう見たけど、そういう不健康そうなことをしなくても、ふりかけがあればおいしく食べられるのだ。
で、ついに海外の人にも気づかれてしまったらしい(笑)
すき焼きふりかけなんかは味的に人気でそうだよね。

というわけで、むかしほど貧相ではないけど、それほど豪華にもできないという微妙なバランスの食糧事情ではふりかけが勢力を伸ばしてきているのだ。
でも、これはごはん食にこだわるからであって、パンや麺ならおかずも少なくすむし、もっと安上がりにできるんじゃないか、と思って、ちょっと調べてみたんだよね。
とりあえず、わかりやすいように、イオンのネットスーパーの商品(ほとんどがトップバリュ製品)で、単位単価あたりの熱量(カロリー)を比較してみたのだ。
それぞれ100円でどれだけの熱量が得られるかで比べたんだけど、
(1)食パン                 861.7kcal
(2-1)生うどん        569.7kcal
(2-2)冷凍うどん     534.2kcal
(2-3)乾麺うどん     906.5kcal
(3-1)米                 778.1kcal
(3-2)パックごはん   277.0kcal
(4)乾麺パスタ         1,437.6kcal
となったのだ、
トップは圧倒的にパスタで、まさに桁違い。
びりはレンジで温めるパックごはんで、ここまでくると貴族の食べ物だ(笑)

よくネット掲示板で最強の貧乏飯はパスタと言われることがあるけど、数字的にはそうみたい。
これにふりかけ的な安いパスタソースをあえるのが最も安上がりだね。
乾麺うどんもそれに近くてなかなかいい感じ。
これらに次ぐのは食パンだけど、さすがに毎食はつらいだろうなぁ。
で、米は4番手で、悪くはない感じ。
バリエーションとかまで考えると、米というのはかなり良い選択肢かもね。

想定外だったのはうどんのスコアの低さ。
業務スーパーのひと玉20円未満とかのうどんまでいくと米に追いつくんだけど、普通にスーパーで売っているようなやつではまだまだ。
コスパの良い自炊はうどんとか言ってるのはにわかということだね。
パスタ最強はそのとおりだったんだけど。

2024/11/23

乾いた氷

 最近は要冷蔵品を買っても楽しみが減ったのだ。
それは、ドライアイスではなく、保冷剤がついてくることが多くなったから。
子供のころはドライアイスに水をかけてスモークごっこをするのが好きだったんだよなぁ。
そんなドライアイスだけど、二酸化炭素がかたまったもの、といこと以外はよく知らなかったので、ちょっと調べてみたよ。


ドライアイスは二酸化炭素の固体状態のものなんだけど、常圧下では液体になることなく、固体から気化するのだ。
昇華というやつだよね。
このとき、まわりの空気がわりと湿っていると、その冷機で空気中の水分が凝固して細かい氷ができるんだけど、それがドライアイスから立ち上る白煙の正体。
水をかけてあげると周りの水分量が増えるので、白煙が出やすくなるのだ。
乾燥地帯にドライアイスを放置しても白煙は出ないよ。
やったことないけど。

ドライアイスの冷却能力は、同重量の氷の2倍、同容積の氷の3倍以上らしいのだ。
かつ、氷のように融けた後に水が残らないので、びしょびしょにならない!
だから「ドライアイス」と呼ばれるわけだけど、使い勝手もよかたんだよね。
逆に、融けていくと炭酸ガスが発生するので、密閉容器の中には入れられないというデメリットはあるのだ。
最近はゲルを使った保冷剤が多いけど、凍らせれば再利用できるし、何より、ドライアイスより「冷やし過ぎない」というメリットがあるのだ。
冷却能力が高すぎるのも困ることがあって、水分が凍結したりすると風味が府しなわれたり、ぱさぱさになったりするんだよね。
なので、ドライアイスを裸で入れるのではなく、不織布に包んだりして直接触れないようにしたりするのだけど。

そんなドライアイス、作り方は僕のイメージとはちょっと違ったのだ。
加圧しながら冷却していくと塊のドライアイスができると思っていたんだけど、そうではないんだよね。
まず、加圧したうえで冷却していって、液体状態の二酸化炭素を作るんだって。
これを常圧状態に戻してあげると断熱膨張により一気に固化してパウダー状のドライアイスができるんだって。
断熱膨張というのは、外界と熱のやり取りをしないで体積が膨らむこと。
液体二酸化炭素が炭酸ガスになる際には気化熱が必要なんだけど、それを周りから熱を奪うんじゃなくて、自分の温度を下げてまかなうことになるんだよね。
で、液体から固体になるわけ。

同じような現象は、密閉容器に水の入ったコップを入れておいて、そこから真空ポンプで減圧していくと、いきなりコップの中の水が沸騰し、その後いきなり氷になる、というのがあるのだ。
よく科学実験で紹介されたりするから有名なもの。
水は蒸発する際にまわりから気化熱を奪うよね。
だから汗をかくと冷却効果が出てくるのだ。
ところが、瞬間的に体積を膨張させると、まわりと熱のやり取りをしている暇がないから、自分の温度が下がってしまうのだ。
スプレー缶でずっと噴射し続けると感が冷たくなってくるのもこれと同じ現象だよ。
で、この方法だとパウダー状のドライアイスができるんだけど、あらかじめ液体の二酸化炭素に水を少しだけ混ぜておくと、さらさらの粉状ドライアイスの周りに氷の粒もできて、それがつなぎのように働いて成形しやすくなるそうな。
なので、それを型に入れて押し固めてあげるとペレット状やブロック状のドライアイスになるんだって。
落雁を作っているようなイメージだね。

ドライアイスの意外な利用方法は、遺体の保存。
腐敗しないようにするエンバーミングという処理もあるけど、ドライアイスは冷やして腐敗を遅らせるだけとはいえ、簡便かつ安価で、さらに、棺に入れっぱなしでもそのまま火葬してしまって問題ないのでよく使われるんだそうだよ。
最近はあんまり人を呼ば核なったとはいえ、通夜・葬式とやる場合はけっこう亡くなってから時間がかかるからね。
そういうのもあって、製造業者は減っているけど需要はそこまで落ち込んでおらず、国内製遺贈だけでは間に合ってなくて一部輸入しているそうなのだ。
そんなに使っているものなんだねぇ。

2024/11/16

塩の力

 ステーキを焼くときに塩をあらかじめふるけど、それって実は、下味をつけるという意味だけではないみたい。
どうも、塩で表面を「ひきしめている」んだとか。
なので、塩を振る量や塩をふってからおいておく時間なんかも大事らしい。
ステーキみたいな料理は焼くというプロセスだけが大事なんだと思っていたけど、どうも、焼く前からもう勝負は始まっているらしい。

科学的にみると、肉の表面に塩をふると、その塩が肉表面の水分でかなり濃い水溶液になるんだよね。
そうなると、浸透圧の差で、肉表面の水分をさらに吸い上げるのだ。
どうもこの効果が大事らしくて、肉表面の水分が吸われていく過程で、肉の表面の筋組織が引き締まるんだとか。
でも、それはあくまでも表面だけの話というのがポイント。
肉の内部の水分まで奪ってしまうと焼いたときにじゅしーさが亡くなってパサついてしまうから。
なので、表面だけ塩に水分を吸われて引き締まっているのだけど、表面以外の内部にはさほど影響がない、という状況に持っていきたいわけ。
この作用を知っていると、どれくらい塩をふればよいのか、焼く前にどれだけの時間をあけて塩をふっておくべきなのかが決まってくるよ。
鉄板焼きなんかにいくと無造作に塩をふっているようにも見えるけど、おそらく長年の経験に基づくノウハウみたいなのがあるはずなのだ。

一方で、そうやって表面に塩をふるだけでなくて、塩水につけて肉を柔らかくする、というのもあるのだ。
それが最近時々ネット見かける「ブライン液」というやつ。
レシピによって濃度は変わるんだけど、塩と砂糖を混ぜた水だよ。
塩と砂糖をそれぞれ重量濃度で5%としているのもあるけど、これは相当あまじょっぱいなのだ。
モデレートなやつだと塩3%、砂糖2%でトータル5%の重量濃度。
生理食塩水は0.9%なので、十分に高張な液なので、長く漬け込んでおくとに気が内部から引き締まるはずなのだ。
ちなみに、海水は約3.4%の濃度なので、このモデレートなものでもそれよりも濃いよ。
人間は味覚的に生理食塩水に近い濃度のものをちょうどよい塩気と感じるので、から辛い液ということになるのだ。

で、なんでこんな甘辛い液につけると肉が柔らかくなるのか?
ネット上ではいろんなことが書かれているんだけど、おそらくこういうことだと思うんだよね。
まず、このブライン液の場合は表面処理ではなくて長時間漬け込むタイプなので、肉中の水分とこのブライン液の間で塩と砂糖の平衡状態になるのだ。
つまり、肉からは余計な水分が出てくる、漬け込み液からは塩と砂糖が浸透していく。
十分に長い時間が経過すると、漬け込み液と肉中の水分の塩・砂糖の濃度がほぼ同じになってバランスするのだ。
この状態を目指しているんだよね。
このとき、おそらく肉の方はもとより水分が抜けていて全体的にちょっと引き締まっているんだけど、一方的に水分を搾り取っているわけではないのでぱさぱさにはならないのだ。
さらに、塩だけでなくて砂糖も入っていて、加熱する過程でこの砂糖が保水効果を発揮して肉から水分が抜けにくくなるので、結果としてぷりぷりに仕上がると考えられるのだ。
これが鶏むね肉のようなパサつきやすい肉でもおいしくふっくらと仕上げられる、と言われている所以ではないかと思うよ。

さらに、筋原線維を構成しているミオシンとアクチンは、塩の存在下ではアクトミオシンという形で一つになって水ぬ溶けやすくなるのだ。
これは、ひき肉を練っていくとき、塩を加えると粘り気が出てくるのと同じ現象。
ハンバーグでも餃子の種でも、塩が存在していないとあの粘り気は出ないのだ。
ブライン液の場合は漬け込むだけなので練ったひき肉のおうに粘り気が出るわけではないけど、筋原線維のいち部は浸透していった塩分の濃い漬け込み液の効果で一部アクトミオシンが形成され、水に溶けやすくなっている状態になっているはず。
これは現象的には、筋原線維の一部が融解して肉が柔らかくなっている、ということにほかならないのだ。
なので、普通は加熱すると肉は固くなっていくけど、この効果で柔らかさがプラスされる、ということだね。
さっきの佐藤による保水効果と合わせると、やわらかくふっくらと仕上げるということなのだ。

考えてみると、漬け込み型のから揚げなんかは実はこういう現象が起きていて、漬け込み液には塩分が含まれているし、砂糖やみりんを入れる場合もあるので糖分もあるのだ。
で、店によってはその漬け込み液に半日程度漬け込むとかいうので、まさにこのブライン液漬け込みとほぼほぼ同じ状況になっているわけ。
で、この唐揚げの漬け込み液は、鶏肉に味をしみこませる、という以上に、火を通してもふっくらジューシーというのにも「貢献していると考えられるのだ。
下味付けずに唐揚げ粉で、というのもあるけど、こういうメカニズムを知ると、じっくり漬け込むタイプのから揚げの魅力が増すね(笑)

2024/11/09

どちらに入れました?

 日本では衆議院総選挙、米国では大統領選挙がちょっと驚きの結果で終わったのだ。
選挙は水物、ふたを開けてみるまでわからない、とは言うけど。
日本の場合、投票率は低めだけど、注目度は高いわけで、マスコミは投票締め切り後すぐに開票速報を出し始めるのだ。
で、いきなり「当選確実」が出たりするんだよね。
これには「出口調査」のデータが重要なのだ。

出口調査はその名のとおり、投票所の出口で待ち構えて「どこに投票しましたか?」というのをアンケートで聞いて、その結果を集計したもの。
当落予想には、各マスコミが独自の基準を持っていていろんなデータを加味するようなんだけど、出口調査の結果は最重要なものと位置付けられているよ。
ボクも一度だけ聞かれたことがあるのだ。
でも、日本では、公職選挙法第52条で「投票の秘密保持」が定められていて、「何人も、選挙人の投票した被選挙人の氏名又は政党その他の政治団体の名称若しくは略称を陳述する義務はない。」ということなので、出口調査のアンケートには必ずしも答える必要はないよ。
で、そういう回答率が100%ではないということも踏まえて、おおむね実際の選挙結果を推定できるようにアンケートを行う必要があるのだ。
テレビの視聴率は統計学的にはけっこういい加減なところがあるというけど(サンプルの絶対数が少ない。)、こっちは当落予想をしていて大きく外すと問題になるので、各社工夫しているようなのだ。

一般的には、統計学でいうところの二段階抽出で、まずは対象の選挙区の中のどの投票所でアンケートするかを選ぶのだ。
このとき、統計学上必要なサンプル数は決まっているので、あまりにも小さい規模の投票所は最初から除外されるよ(例えば、東京都の選挙区の離党の投票所など)。
さらに、選挙の場合は特定の地域で特定の政党や候補の支持が異様に高いということがあるので(いわゆる組織票)、小規模投票所を除いて完全にランダムで投票所を選んでしまうと、確率的にこういう全体の分布より偏った分布を持つことが容易に想定される投票所が多く選ばれてしまう可能性も出てくるのだ。
なので、そこも補正が必要なんだよ。

そうして投票所を選んだら、そこに調査員を派遣して、投票所から出てきた人を無作為抽出で捕まえて投票先を聞くのだ。
だけど、ここでも完全にランダムにやってしまうと、年来や性別等が偏ってしまうので、そういうか頼りに配慮しながら声をかける人を調節するみたい。
てゃいえ、年代別でけっこう投票率は変わるので、実際には高齢者は多めに聞かないといけないはず。
なので、その辺はけっこう選び方が難しいはずなのだ。

それと、最近の傾向として、期日前投票がけっこう増えている、というのも重要な要素。
期日前投票についても時々出口調査をするんだけど、投票日だけ張り付けばよいのと違って、あまり人が来ない期日前投票に1週間以上も人を張り付けるわけにはいかないので、初日と中日と最終日と、とか日を決めて調査するみたい。
この間の総選挙でも期日前投票のデータでは・・・、と選挙速報で言っていたので、それなりの規模ではやっているみたい。
こっちは見たことないけど。

で、こうして投票先の動向を予測するんだけど、実際に当落の予想をするときは、他にもいろんな要素を加味するんだって。
そのひとつが、あらかじめ行っている世論調査。
支持する政党だとかなんだとか聞いておいて、全体のトレンドをつかんでおくのだ。
投票の動向とは完全一致しないけど、どの政党が人気で、どの政党がそうでないかはわかるよね。
実際には、各選挙区にすべての政党が立候補者を立てるわけではないので、入れる先がない、ということで必ずしも指示していない政党に投票するケースもあるので、そのあたりも考慮に入れる必要があるよ。

さらに、開票が始まると、まずはな目だけ確認して各候補者ごとに投票用紙の山を分けるんだって。
で、いくつかの山に分けた後で、一票一票名前をさらに確認しながら集計していくのだ。
マスコミはこの作業を見ていて、その山の大きさで、圧倒的な差がついているのか、僅差で接戦になるのかを判断するとか。
これができると数分以内で「当選確実」が打てるんだよね。
でも、t表締め切り直後に出ているものもあるような・・・。
どうも、そういうのは世論調査などの結果で明らかに「圧倒的有利」になっていて、かつ、出口調査でも問題なく大きく優勢、ということみたい。

こんな感じでデータを集め、あとは各社の判断で「当選確実」を出していくんだけど、選挙特番をはしごすると、微妙にずれているのがよくわかるのだ。
これは、世論調査や出口調査は各社の独自データであるため(世論調査はニュース配信会社のものを使う場合もあり。)。
まさに腕の見せ所なわけだけど・・・。
大きく間違うと責任問題になるので、けっこう大変みたい。
ま、当選確実をいつ出すかで大きく視聴率が変わるとも思えないので、早い、よりは、より確からしい、方が大事なんだと思うけど。
でも、投票結果が数十票差で当落が分かれる、なんて大接戦も過去にはあったようで、なかなか難しい作業なのだ。

それと、最近は比例との重複立候補で「復活当選」もあるので、さらに難しいんだよね。
「復活当選」するかどうかは、選挙区での惜敗率(当選者の獲得した票数に対してどれだけ迫っていたか)が関係するので、やはり「票読み」が大事なのだ。
(比例の順位は同率が認められているため、惜敗率が高い方から当選になっていくのだ。)
この辺は開票が進まないとなかなか全容がつかめないものではあるんだけどね。
だれが当選するかはそうなんだけど、比例で何人当選しそうかは票数に依存するので、選挙後の各党の勢力図変化はわかるのだ。
今回も「与党は過半数割れしそう」、「立件民主党や国民民主党が躍進しそう」というのは締め切り直後から出ていたしね。

2024/11/02

指名No.1

 衆議院の解散総選挙があったので、まもなく新たな内閣総理大臣の指名が行われるんだよね。
今回は任期満了前の解散だったので、召集されるのは特別会(マスコミは「特別国会」と呼ぶよ。)。
基本的には内閣総理大臣の指名を行うことだけを目的にしていて、今回は11月11日召集、会期は4日間を見込んでいるみたいだね。
解散総選挙後30日以内に国会を召集しないといけないのだけど、今回は自公の議席が伸びず、「少数与党」という微妙な状況になっているので、わりとゆっくり目に召集されるのだ。
与党側も野党側も連立する市内とかの駆け引きがあるからね。
で、せっかくなので、改めて内閣総理大臣が指名されるプロセスについて調べてみたよ。

内閣総理大臣の指名は日本国憲法第67条第一項に「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と定められていて、これに基づいて行われるのが内閣総理大臣指名選挙。
通称「首班指名」と呼ばれるもの。
同条項の後段で「この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。」となっているので、最優先で審議される議題なんだけど・・・。
今回のように解散総選挙後に改めて特別会が開催される場合、改めて議長・副議長の選任や議席の確定などの議事進行上必要不可欠なことを決めないといけないので、それが終わった後に首班指名が行われることになるよ。
例えば、すでに国会の海中で、首相が病気などを理由に内閣総辞職した場合は、他に審議中の法案などがあっても、それは差し置いてまず首班指名をする、ということなのだ。
第一次安倍政権のときは臨時会での所信表明演説後に総辞職だったからそんな感じだよね。

国会における首班指名の選挙は、予算のように衆議院先議などのルールもなく、それぞれ独立して行うことができるのだ。
このとき、この「指名」という議事は特別の定めのあるものではないので、日本国憲法第56条第二項「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。」に従うのだ。
でも、実際には、最初の指名投票では、連立を組んでいる場合を除いて、各党は自分のところの代表者(多くの場合は党首)を指名するので、ここで過半数を超える候補がいきなり出てくることはまれなんだよね。
選挙前のように自民党が一党で過半数を越えている場合はそこで終わりになるんだけど。

で、最初の投票で過半数を越える候補者がいなかった場合、上位2名による決選投票になるのだ。
これは各議院の議院規則で決まっていて、例えば、衆議院の場合は、第18条第三項で「 投票の過半数を得た者がないときは、第八条第二項の規定を準用して指名される者を定め、その者について指名の議決があつたものとする。」としていて、これのもととなる第8条第二項では「投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者二人について決選投票を行い、多数を得た者を当選人とする。但し、決選投票を行うべき二人及び当選人を定めるに当り得票数が同じときは、くじでこれを定める。」となっているのだ。
日本の法律だとわりとよく出てくるけど、同数で決められない場合、最後はくじ引きなんだよね・・・。

ここで重要なのが、決選投票の票の数え方。
ここでも過半数を取らないとダメ、というルールになると、いつまでの指名を一本化できなくなる恐れがあるよね。
でも、実際にはそんなことにはならないようになっているんだ。
ここで着目すべきは、衆議院規則の規定ぶり。
「決選投票を行い、多数を得た者」となっているのがポイント。
この書き方だと、白票などの無効票を除外し、一番投票数の多かった人、ということになるのだ。
なので、第一党と第二党の代表で決選投票になった場合、他の党は双方とも応援したくなくて無効票にしても、第一党の代表が指名されるような仕組みになっているのだ。
おそらく、今回も「野合」が成立しない以上は、自公連立の候補者が決選投票で選ばれることになるはず。


このプロセスでそれぞれの議院で指名する者が決まるのだけど、衆参で指名者が一致しない場合があるのだ。
今回も「野合」が起こると数の上では衆議院は野党代表を指名することもできるので、与党が過半数を占めている参議院とは確実に指名者が異なることになるのだ。
報道で「野合」にはならなさそうだけど。
このときは、他の議案と同様に、両院協議会が開催されることになっていて、そこでの話し合いで一本化できればその人が最終的な指名者になるよ。
ここでも議論が分かれる場合、決を採って、両院協議会の出席者の2/3以上が指示した人がいればその人が指名されるんだ。
それもかなわない場合は、「衆議院の優越」により衆議院で指名された者が最終的に選ばれるよ。
※日本国憲法第67条第二項「衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」
ま、プロセスはともかく、基本的には衆議院での指名者が次の首相になるのだ。
過去に「ねじれ国会」となったときには両院協議会でも調整つかず、ということはあったけど、ルール上プロセスは規定されていても、それだけの話になっているのだ。

ちなみに、先も出てきた憲法第67条第一項の規定では、内閣総理大臣は国会議員の中から選ぶとだけ規定されているので、参議院議員でもいいはずなんだけど、実際には衆議院議員から選ぶことが通例となっているのだ。
理論的にはOKだとしても、首相は衆議院の解散権を持つので、自らの職を賭さずに解散権と持つのはどうかというのが根底にあるのと、憲法では何かと衆議院の優越性を認めているので、というのもあるらしい。
過去に指名投票では参議院議員の名前があがったことは何度もあるわけだけど(そもそも党首が参議院議員である場合など)、実際に指名されているのはみな衆議院議員なのだ。

2024/10/26

パンを先に食べるにあらず

 今更ながら、という気がしないでもないけど、さんざんあれだけ推奨してきた「ベジファースト」が否定され始めたのだ。
厚生労働省の作成している「食品摂取基準」にも、「野菜から食べるとよい」という記述があったんだけど、それが最新版では削除されたことがきっかけ。
実は、意味がないことではないんだけど、言葉の独り歩きと拡大解釈で「デマ」が蔓延してしまったという不幸な話なんだよね・・・。
問題は、きちんとその効果を理解することなのだ。

もともとこの話は、とある実験結果に由来するのだ。
それは、食べる順番が血糖上昇にどういう影響があるかを調べるもので、野菜を食べてから10分後にお米を食べた場合と、お米を食べてから10分後に野菜を食べた場合の血糖値の刑事変化を調べたもの。
お米から先に食べると一気に血糖値が上昇し、その後インスリンが分泌されて急激に血糖値が下がっていくんだよね。
一方、野菜から食べると、血糖値の上昇が緩やかで、乱高下がない、ということがわかったのだ。

血糖値の急激な上昇にひどいものは「血糖値スパイク」と呼ばれ、ぐんと上昇した後にがくっと下がるんだけど、、この時反動で下がりすぎてしまい、低血糖状態になることがあるのだ。
こうなると、急激なふらつき、眠気などの症状が出てくるよ。
ネットでは「ドカ食い気絶部」なんてのがあるし、最近話題の漫画「ドカ食いダイスキ! もちづきさん」は大量に食べた後に恍惚の表情を浮かべているけど、その原因がまさにこれ。
サウナの「ととのう」以上にやばい状態なので、本当は避けなければいけないんだよ。

一般に血糖値の乱高下は体に負担があると言われていて、特に血管系にダメージを与えるので循環器系の生活習慣病のリスクを高めると考えられているのだ。
なので、できるだけ血糖値の上昇を穏やかにするために食べる順番を工夫しましょう、という話だったわけ。
もちろん、一口目に野菜、二口目にお米、というのではあまり意味がないわけで。
コース料理や懐石料理のように、料理ごとに多芯たーばるを開けて食べる場合において、まずは炭水化物があまり入っていない、野菜中心のメニューから食べるといいよ、ということ。
日本では給食をはじめとして「三角食べ」が推奨されているので、実は本当の意味での「ベジファースト」はやりづらいのだ。

この「ベジファースト」は、野菜に含まれる食物繊維が糖の吸収を抑制するので急激な血糖上昇を抑える、と説明されてきたんだよね。
これが単純化されて独り歩きし、かつ、拡大解釈されたのが、「ベジファースト」は「やせる食べ方」という受け止め。
難消化性デキストリンなんかを含むトクホ製品でも「糖の吸収をだやかにする」と書かれているけど、量的に糖の吸収を大きく減らすわけではないのだ。
っていうか、糖尿病の治療に使われるSGLT2阻害薬は実際に腎臓での糖吸収を阻害するんだけど、そこまで作用の強い薬なので当然処方せん薬。
それと「同等の効果が食べ方の工夫や普通に誰でも買えるトクホで実現されるわけはないのだ。

なんだけど、血糖値スパイクを防いで生活習慣病リスクを下げる、というのは忘れ去られ、糖の吸収をyるやかにする=>糖の吸収を抑える=>食べても糖が吸収されないから太りにくくなる、とどんどん拡大解釈が広がっていったわけ。
で、町医者なんかも、厚生労働省の指導もあって、生活習慣病リスクを下げる効果があって、非常に単純にできること、ということで、「ベジファースト」を勧めることが多かったのだけど、最近では、医師であっても「ベジファーストはやせる食べ方」という認識を持ってしまっている場合があるようなだよね・・・。
きちんと理解したうえで実践するのはよいのだけど、さすがにこの状況は看過できず、ということで、厚生労働省は食品摂取基準から記述を削除したようなのだ。

で、この「ベジファースト」のほかにも、わりと簡単にできる血糖値スパイクを抑える食べ方というのはあるのだ。
もっとも単純なのはゆっくりよく噛んで食べる、ということ。
もう少し気にしたい人は、GI値ことグリセミック指数の低い食品を積極的に食べる、ということ。
このGI値というのは、食後どれだけ血糖を上昇させるかの指標になっていて、野菜や豆類、肉類は低く、でんぷん質の白飯、パン、うどんなんかは非常に高いのだ。
なので、白飯ではなく玄米、食パンではんく全粒粉パン又はライ麦パン、うどんではなくそば、とすることで、けっこう血糖値スパイクは避けられるよ。
若いうちはあまり気にしなくてよいのだけど、ある程度の年齢になったらこういうのを気にしないといけないんだよね。

2024/10/19

柳の上に猫がいる、だからネコヤナギ

 外国の女性が神社の鳥居で懸垂をしている動画をインスタグラムにアップしたことが炎上しているらしいのだ。
日本人にとってみると鳥居は神社と一体不可分に結びつくもので、つまりは神聖なものなので、そんな不敬は許されない、という内容。
程度の差こそあれ、異文化交流ではこういうことがよくあるよね。
郷に入っては郷に従えで、やはり現地の文化を尊重し、そういう失礼と思われるようなことがないようにするのがベストなのだ。
で、思ったんだけど、そうは言っても、実はそこまで鳥居について知っているわけでないんだよね。
神社にある、形状はわかる、というくらいじゃないかな。
というわけで、少しだけ調べてみたのだ。

とはいえ、起源や由来が詳細に判明しているわけではなくて、諸説はあるみたい。
そんな中で、いくつか拾ってみると、おおよそこんな感じ。
まず、鳥居は神域の境界を示すもので、鳥居の先は神聖な場所という扱いで、一種の門になっているのだ。
どうも、鳥居は神社建築より古くから存在しているようで、何か神聖な場所やモノがあった場合、その周辺の神聖な区画(結界の内側)を示すものとして使われていたみたいなのだ。
現代の神社は本殿の中に御神体があって、その手前に参拝や儀式をするための拝殿があるよね。
で、神社の境内の境界や拝殿・本殿の前に鳥居が置かれるのだ。
つまり、神聖な区画である境内の境界を示すとともに、神社の中でも特に神聖レベルが高い拝殿や本殿の前にも二十バリアのように置かれているわけ。
鳥居をくぐるために神聖レベルが上がっていくイメージだね。

でも、古い振興においては、自然物や自然現象を神聖視して、崇めていたようなのだ。
岩石や樹木、山、海、川、池などの自然物の場合は、それを神聖なものと示すために注連縄や鳥居が使われたのだ。
古い神道の進行形態を保存しているといわれている、奈良の大神神社や京都宇治の宇治上神社は山体そのものが御神体なので、本殿を持たず、その山のふもとに拝殿だけが置かれていて、その一帯の神域の境界を示すためのものとして鳥居が置かれているのだ。
拝殿が必要になるのは、そこで参拝をしたり儀式をしたりするからで、そのもっと手前、ただただ山に畏敬の念を抱いて拝む、捧げものをする、みたいなもっと原始的な進行形態の場合は、拝殿も不要で、神域を示すもの=鳥居や注連縄だけあればよいはずなのだ。
これが鳥居が神社建築より古くからあると考えられてる理由だよね。
で、時代が下ってくると、鳥居が神聖な場所・モノと切っても切れなくなて、立小便禁止のために鳥居のマークを塀に書くみたいな風習も生まれてくるのだ。
これは主客が逆転してしまっているけど、応用編だね。

なぜ鳥居というのか、というのも諸説あるようだけど、ボクが個人的に気に入っているストーリーは、字のごとく、「鳥の居る場所」という意味。
記紀神話の天岩戸から天照大神を誘い出す際、常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を鳴かせ、天鈿女に躍らせて騒ぐわけだけど、それにちなんで、神域の前に鶏の止まり木を置いたことに由来する、というもの。
八幡神社の場合は神使が鳩だからちょうどよいし、実は、伊勢神宮などでは鶏が神使なんだよね。
熊野神社の場合は烏。
古代日本では鳥は魂に例えられたりもするけど、空を飛ぶという行為が、人間の世界である地上と神々の世界である天井(高天原)を結ぶものと直感的にとらえられていたんじゃないかな。
なので、神使としての鳥は素直なもので、鳥の止まり木を神社に置くのは自然な流れになるのだ。

止まり木なのかどうかは別としても、鳥居と言われると代替イメージする形はあるのだ、
「形」の地の左側だよね。
でも、実は鳥居の形には様式があって、伊勢神宮や全国の天祖神社・神明宮にある神明鳥居、鹿島神宮の鹿島鳥居、八幡神社の八幡鳥居、街中で見かける稲荷神社の明神鳥居などなど。
実は、鳥居の形状を見ただけで大体の御祭神の区別がつくのだ!
ちなみに、安芸の宮島の厳島神社のような「支え」がついた鳥居は両部鳥居という名前だよ。
あれは地面に埋まっておらず、自立しているという点でも特徴的なんだよね。

2024/10/12

金のひび

 なんでも鑑定団とかを見ていると時々出てくるけど、陶磁器の修復方法で「金継ぎ」というのがあるのだ。
割れたかけらをくっつけるのだけど、そこの境界部分が金色になっているやつ。
目立たないように修復するのではなく、それもまたひとつの「味わい」として楽しむ、というものなんだよね。
千利休がそういう考え方を打ち出したらしい。
ものを大事にしつつ、さらにそこに新たに芸術性を加えるというのはすごい発想なのだ。
日本発で「モッタイナイ」の次に広めたいよね?

そんな金継ぎなんだけど、これははんだのように金属を溶かして間をつないでいるわけではないのだ。
当たり前だけど、陶磁器と金属ではそこまできれいに接着しないし。
ここの接着で重要なのは、「うるし」なのだ。
うるしは一度固まってしまうと水にも油にも酸にもアルカリにも強いので、食器として使う場合でも安心。
漆器は木地物のそういう弱点を克服するものだしね。
一方で、極度の乾燥や継続的な湿気、それから紫外線が大敵。
陶磁器はこういうのには強いけど、金継ぎが修復した場合は気を付けないといけないよ。

で、具体的な方法だけど、一般に公開されているものはあるのだけど、細かなコツや美しく仕上げる手法などは師弟関係の中でのみ伝達されるので、よくわからない部分が多いのだ。
ま、職人仕事だからそういうものだろうけど。
ただ、そういう一般レシピでよいのであれば、金継ぎ体験なんかもできるみたい。ちょっと興味あるかも。
そういうのの公開されているプロトコールを見てみると、次のようなものなのだ。

(1)接着したい断面にうるしを塗り、よく乾燥させる(これは後で接着剤をつけやすくするため)。
(2)小麦粉を水で練って作ったのりと生うるしを混ぜて「麦うるし」を作り、これを接着剤としてくっつける。
(3)(一般的な漆器の場合と同じように)高温多湿の室の中に入れてうるしを固める(~2週間)。
(4)修繕した部分にさらに黒うるしを塗り、乾燥させた後磨く、という固定を数回行う。
(5)仕上げとして修繕部分に金粉(金箔を粉にしたもの)を赤うるしと一緒に塗り、乾燥させる。
(6)最後の仕上げとして透うるし(水分の多い生うるしから不純物をろ過して除いた透明度の高いうるし)をコーティング剤として塗り、乾燥させる。

うるしはウルシオールという成分がラッカーゼという酵素の作用により周辺の水と反応して重合し、固まるんだよね。
なので、「乾燥」と言いつつ、高温多湿のところにおいておく必要があるのだ。
で、固まったとき、少しだけ体積が減って縮むのだ。
コーティング剤として使う分にも気にする必要はないのだけど、金継ぎのような修復に使う場合は、そのままにしておくと修復部分が少しだけへこんでしまうんだよね。
人間の触覚はなかなかすぐれたもので、割とそういうのを知覚してしまうので、さらに修繕部分にうるしを重ね塗りし、平たんにしていく作業が必要なのだ。
これが(4)以降の作業の意味。
で、修復部分をひびが目立たないようにすることもできるけど、最後に金色にしてむしろ新たな味わいを出す、という工程になっているよ。
ここで金粉を使わず、陶磁器の地の色と近い感じの色合いで塗ってあげれば日々を目立たなくすることもできるのだ。

接着剤に使っている「麦うるし」も特徴的なもので、これはのりの成分にもなるでんぷんをあえてすべて取り除き、(麺のコシのもとである)グルテンだけを残して使っているのだ。
でんぷんのりだと一度固まっても水気があるとすぐにふやけてしまってはがれてしまうので、高温多湿な環境で固める必要のあるうるしと相性が良くないのだ。
グルテンのりの場合は、もともとの接着力も強く、固まった後も水気で柔らかくはなるけど接着力は強いままなのでちょうどよいわけ。
こういうのも昔の職人さんが工夫しながら見つけたんだろうね。

2024/10/05

みんなで、朝食に、食べよう

 最近、MCTオイルというのをよく見かけるのだ。
体脂肪の燃焼を助け、ウエストを補足する効果がある、ということで、機能性表示食品になったので、よく宣伝しているかららしい。
CMでもよく見かけるよね。
でも、けっきょくよくわからないので、ちょっと調べてみたのだ。

MCTは中鎖脂肪酸トリグリセリド(Medium Chain Triglyceride )のこと。
炭素数が6~12の中鎖脂肪酸3つとグリセリンが結合したもの。
食用油の中に含まれているオレイン酸やリノール酸はともに炭素数が18の長鎖脂肪酸(炭素数が13~21)だから、それよりも小さな分子。
具体的にはココナッツオイルやパーム核油に含まれるラウリン酸(炭素数12)のような脂肪酸のこと。
当たり前だけど、炭素数が少ないということは分子も小さい。
でも、それ以上に、脂肪酸は炭素数が増えるほど疎水性が増すので、炭素数が少ない脂肪酸は比較的水と混ざり合うのだ。
なので、炭素数の多い長鎖脂肪酸は水の中で油としてまとまっちゃうのだけど、中鎖脂肪酸くらいだとうまいこと分散してくれるよ。

この効果は絶大で、長鎖脂肪酸から構成されるトリグリセリドは界面活性剤として作用する多重産で入荷されないとリパーゼで分解されないのだけど、MCTだと胆汁酸がなくてもリパーゼで脂肪酸とグリセリンに分解されるのだ。
しかも、分解されて出てくる脂肪酸も、長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸で扱いが変わるのだ。
血液中には基本的に低分子のものしか入り込めないので、長鎖脂肪酸は腸管で吸収された後、いったんリンパに入り、そこから静脈に入っていくんだって。
で、すぐに大差されることはなう、中性脂肪としてエネルギー貯蔵に回されるのだ。
腸管から脂肪をたくさん吸収した琳派は白く濁っていて、「乳糜(にゅうび)」と呼ばれるんだけど、確かにこんなどろどろのものが血液に入ったら大変だ・・・。
一方、中鎖脂肪酸は糖やアミノ酸とともに門脈(腸管から吸収した栄養を肝臓に運ぶ静脈)からすぐに肝臓に運ばれて代謝されるんだよ。
これがMCTは消化・吸収が早く、すばやくエネルギーになるといわれる所以。

将来のエネルギー源として蓄えられてしまうと、信望はなかなか燃焼されないんだよね。
瞬発的な運動の場合はグリコーゲンが優先的に使われるので、じっくりと継続的にエネルギー消費をする有酸素運動でないと脂肪は減らないのだ・・・。
これが一度ため込んでしまうとなくすのが大変な理由なんだよね。
その意味では、MCTは非常に魅力的なものだけど、全部これでよい、というわけでもないんだって。
やっぱり摂取量には限界があるし、必須脂肪酸はみんな長鎖脂肪酸なんだよね。

とはいえ、同じ脂質を摂取するにしても、MCTの方が脂肪として貯まりにくく、すぐにエネルギーになって効率的、ということ。
また、胆汁酸を必要としないで消化・吸収できるので、その点では「もたれ」にくいのだ。
というわけで、当初は病院で効率的な脂質吸収のために使われていて、その後、スポーツの分野でエネルギー補給用の脂質として活用され始めたらしい。
で、そうやって使っていくうちに、どうもMCTを摂取すると、脂質の代謝自体が高まったり、食欲が抑えられたり、という効果が報告され始めたんだって。
今でも詳細のそのメカニズムは解明されてはいないのだけど、そこに目を付けたのがダイエット業界というわけで、それで一気にはやり始めたのだ。

中鎖脂肪酸を燃焼させてエネルギー源にする場合、いわゆる「ケトン体」が出てくるのだけど、ケトン体はインスリンの分泌を抑制するなどの効果があるので、そういうのが絡み合ている可能性はあるのだ。
現象として見えていることはプラセボ効果(「思い込み」)でもないようなので、おそらく何か複雑なプロセスできいてる可能性はあるのだ。
でも、機能性表示食品だと、実際に効果が認められればOKなので、詳細な作用機序は不明のままでもよいのだよね。

MCTの利点としては、脂である割にはさらっとしていていろんなものに混ぜやすいこと、そして、それ自体が強い風味があるわけでもないので、味をこわさないことがあげられるよ。
なので、とりあえずなんにでもかけちゃえ、という感じで宣伝されているよね。
飲み物やヨーグルトに入れたりもするのだ。
そうでないとサラダのドレッシングとか用途が限られるから、これも重要な特徴だよね。
もうちょっと評価が固まってきたら、この新たなアブライフに手を出してみてもよいかも。

2024/09/28

やめへんでぇ

 兵庫県知事は不信任決議を受けても辞職はしない、ということを表明したのだ。
でも、議会を解散するわけではなく、期日までに議会を解散せずに自動的に失職したうえで、その後に行われる知事選挙に改めて立候補するんだって。
ん?なんだこれ・・・。
だったら辞職したうえで、いわゆる「出直し選挙」をしたらいいんじゃないの、と思うのだけど、それは違うようなのだ。
さすが元総務官僚。
こういうところのルールには詳しいみたいだよ。

いわゆる「出直し選挙」の場合、当選後の任期が「もともとの任期満了までの残余の期間」となるのだ。
今回の場合、2021年8月1日付で知事に就任しているので、もともとの任期は2025年7月31日まで。
なので、いったん辞職して「出直し選挙」に出て、当選した場合の任期は、この来年7月末までのままなのだ。
そう、「出直し選挙」をしても1年弱しかないわけ。
せっかく選挙をするのにコスパが悪い!

で、失職してからの知事選の場合、当選後の任期は4年きっかりもらえるのだ。
今の見込みだと11月中旬くらいの投開票のようなので、2028年の11月中旬まで知事でいられるわけ。
「出直し選挙」だろうが仕切り直しの知事選だろうが、有権者の受け止めは変わらないだろうから、現職の知事にとっては厳しい選挙であることは必至。
それを勝ち抜いた後に待っている任期の長さが4倍も違うんじゃね。
この選択はそこだけ見ると頭がよいように思う。

このルールの隙間をついたような話は、公職選挙法の規定によるものなんだ。
公職選挙法第259条の2は「地方公共団体の長の任期の起算の特例」を規定していて、「地方公共団体の長の職の退職を申し出た者が当該退職の申立てがあつたことにより告示された地方公共団体の長の選挙において当選人となつたときは、その者の任期については、当該退職の申立て及び当該退職の申立てがあつたことにより告示された選挙がなかつたものとみなして前条の規定を適用する。」となっているのだ。
何が書いてあるのかわかりにくいけど、現職の地方公共団体の主張が辞職して行われる選挙にその現職首長が「出直し選挙」として立候補し、当選した場合は、その任期はもともとの任期のままとする、ということだよ。

首長の辞職はいつでも任意でできるわけで、任期満了の前に他の候補予定者が十分に準備できないうちに「出直し選挙」に持ち込むことが可能なので、その場合は圧倒的に現職が有利なのだ。
それなのに、その当選後に人気がリセットされるとけっきょく現職が居座り続けることにもなりかねな、ということで1962年(昭和37年)の改正で導入された条項なんだそうだ。
なので「条の2」ということなんだけど、公職選挙法(1950年公布)とか地方自治法(1947年公布)は戦後すぐの法律だから、10年くらい運用してすでに悪いことをし始めた不埒な首長がいた、というこなんだな・・・。

ちなみに、現職の知事が辞職又は失職し、改めて選挙で選ばれた場合、地方自治法では不信任決議が可決された場合にしか首長は地方議会を解散できないので、県議会の構成は変わらないまま。
つまり、民意がどうであろうと、首長と議会の対立は続くんだよね・・・。
今の議会は昨年4月の統一地方選で選出されているので、残りの任期は2年半ある。
その間、ずっと知事と議会が対立し続けると・・・。
まだ知事を続けたいなら、本来は議会を解散したうえで自分も辞職して、すべてを民意に問う、というのがいいのかなぁ。

2024/09/21

三番目のやつ

 確か中学校で習うのだけど、大気の構成で、一番多いのが窒素の役78%。
ついで酸素が約21%。
で、残りの1%の中に光合成に使われる二酸化炭素などが入っているのだけど、実は、堂々の三位は「アルゴン」なのだ。
アルゴンは約0.9%で、残りの1%枠のほとんどはこれなのだ。
で、アルゴンって何?って気になるよね。

化学的には、アルゴン(Ar)は不活性ガスである貴ガスの一つで、原子番号は18。
(ボクは「希ガス」と習ったけど、最近は「貴ガス」というらしい。)
第18族元素と呼ばれるもので、ネオン(Ne)の下、クリプトン(Kr)の上だよね。
この縦のラインは最外殻の電子殻のうちs軌道とp軌道が閉じている(電子がすべて埋まっている)ので、反応性が低く、「不活性ガス」とも呼ばれるのだ。
なので、基本は反応することなく、空気の中で孤高の存在として漂い続けているわけだよ。
でも、それってどこから来たんだって?、というのが疑問になるよね。

その出自も明らかで、こえは地殻中にあるカリウム(K)の放射性同位体であるK40が放射性崩壊することでできるのだ(半減期は12.48億年)。
40は、約9割がベータ崩壊で電子を放出してカルシウム(Ca40)になるのだ。
で、残りの1割が電子捕獲で、原子核中の陽子が最内殻のs軌道から電子を一つ取り込んで中性子になって電子ニュートリノを出すことでAr40になるんだ。
このAr40は安定同位体で、かつ、化学反応もしないので、そのまま空気中に残り続けるわけ。
ということは、ちょっとずつアルゴンの量は増えているのだろうか?
宇宙全体では同じ安定同位体でもAr36が圧倒的に多いみたいだけど、地球や火星のような岩石型惑星の場合、岩石中に多量に含まれるK40からの供給でAr40が増えるみたい。

ちなみに、地球全体の自然放射線としては、このK40の崩壊による寄与が大きいんだって。
エネルギー的にはトリウムやウランのような核燃料に使われる元素の方が大きいのだけど、存在量が半端ないので、これら二つと並んで自然放射線の約1/3を占めているみたい。
カリウムを多く含む鉱物は長石で、中でも、花崗岩は長石を6割ほど含むのでカリウム含有率が高いのだ。
というわけなので、花崗岩は比較的多くの放射線を出しているんだ。
花崗岩は墓石に使われることが多いので、ガイガーカウンターなんかで測ってみると、墓場は少しカウントが高いんだよね。
東日本大震災の後、福島の影響を見る、とか言って街中でガイガーカウンターをもってうろついていた人がいるけど、もれなく墓場付近でカウントが高くなっていたはずなのだ。
ちなみに、かつて(昭和から平成に代わる直前)東京大学病院の敷地内で不法投棄された放射性同位元素が見つかった、という事件があって、そのインパクトから、東京大学キャンパス内を反原発の運動家がガイガーカウンターをもってサーベイしまくったらしいんだよね、
そのとき、ここはカウントが高い、汚染されている、と騒いだ箇所にはやはり花崗岩が大量に使われていたらしいのだ。
バックグラウンドレベルから少し高い程度なんだけど、知ナマコになって探すとそういうことになるのだ・・・。

で、このアルゴンは、化学反応性が低いのでふっ活性ガスとして工業分野で割とよく使われるのだ。
空気から取り出すのも比較的楽で、空気に圧力をかけながら冷却していって液体窒素と液体酸素を作るんだけど、この液体酸素から分留することで得られるんだって。
古いデータだけど、2004年には約40万トン生産されていたというからけっこうすごいよね。
ちなみに、もっとよく見かける貴ガスのヘリウムは、天然ガスと一緒に算出するんだよね。
日本は長らくほぼ全量を米国からの輸入に頼っていたんだけど、米国の生産量が減ってからは供給源の多様化を図っているみたい(生産量が減って「ネズミの国」で風船が販売停止になったこともあったよね・・・。)。

2024/09/14

ハンバーグは、やっぱり食べ物です。

 「飲めるハンバーグ」というキャッチフレーズのお店で食中毒が発生したのだ。
ここのハンバーグは半生というか、中がまだ赤い状態で提供されるんだよね。
で、割るとそこからじゅわっと大量の肉汁があふれ出す、というもののようなのだ。
ボクはひき肉料理は「よく焼き派」なのであまりそそられないんだけど、最近はやりのハンバーグだよね。
有名なのは、大行列もできるという静岡拠点の「さわやか」。
でも、実は「さわやか」のハンバーグはブロック肉を専門の工場で表面を焼いて殺菌してからミンチにし、その場で真空パックして各店舗に短時間で届ける、というスタイルなんだよね。
つまり、可能な限り、肉が最近に汚染されないように細心の注意が払われているのだ。
そこまでしているからこそ「生焼け」で提供できるわけだけど、必ずしも「インスパイア系」はそうではないのかも・・・。

今回の食中毒の原因は腸管出血性大腸菌ことO157とされているよ。
この細菌は通常はほとんど病原性がない大腸菌は、赤痢菌が持つ毒素である志賀毒素(滋賀トキシン)を獲得したことにより、赤痢と同じように腸管内で出血させ、ひどい下痢を起こさせるものなのだ。
いつものことだけど、高齢者は子供は特に危険で、急性腎不全になる場合もあるのだとか。
かなり前だけど、すごい話題になった菌だよね。
それが再びの注目なのだ。

もともとこのO157は、ウシの町内風呂^らに普通にいる菌なんだって。
ウシに対しては病原性がなく、ベロ毒素が悪さをしないため、ウシが無症状キャリアになるのだ。
そんなわけで、牛肉、特に、ホルモンを扱うような場合、O157汚染のリスクは極めて高いのだ。
かつて焼き肉屋でユッケ食中毒が発生して生肉の提供が禁止になったけど、ずさんとは言えないようなものでも、細心の注意を払わないとダメなのだ。
問題になった焼き肉屋の場合はかなりずさんな扱いだったようだけど・・・。
で、先に紹介した「さわやか」の場合、そもそもブロック肉だけをもってきて、細菌に汚染されている可能性がある表面は焼いて滅菌したうえでそこをトリミングしてひき肉にするんだよね。
こうすると、十分に清潔な環境であれば、ひき肉が再起の線される可能性は極めて低いのだ。
それを真空パックにして各店舗に届けるので、あとは、各店舗でまた最新ンお注意を払って取り扱うことになるよ。
焼き肉屋と違って各店舗では内臓系の肉を切ったりもないだろうから、キッチンを清潔に保っていればいのだろうけど。

そういうわけで、やっぱり生に近い肉というのはリスクがあるのだ。
九州ではメジャーな鳥刺しも、鶏の腸管に普通に存在しちぇいるカンピロバクターに汚染されると食中毒になるんだよね。
よほど新鮮なのをきちんと取り扱わないとダメなのだ。
レバ刺しも同じで、まわりで腸管などの別のホルモンを扱っていれば当然汚染のリスクがあるわけで。
ウシの生レバーが禁止された後に豚レバーを出す店もあったけど、そもそもブタは寄生虫がいるので生食はダメなんだよね・・・。
食文化としては、きちんと扱っていれば大丈夫なので発展してきたわけだけど、ずさんなことをする人たちが出てきて食中毒のリスクが看過できなくなったので禁止になるのだ。
でも、フランスなんかはもっと適当に扱ってそうだけど、普通に生肉のタルタルステーキを食べているような。
風呂にもあまり入らないし、普段から不潔だから耐性があるのだろうか?

というわけで、よく火を通しましょう、ということに尽きるんだけど、食中毒の場合、火を通せばよいというものでもないんだよね。
有名なのは翌日のカレーは危険がいっぱいという話。
ジャガイモが入ったカレーを常温保存すると、ウェルシュ菌に汚染されている場合は食中毒を起こすのだ。
また、ちょっと前に話題になった「5日前のパスタを食べたために死亡した事件の通称「チャーハン症候群」。
こっちはセレウス菌が原因。
ウェルシュ菌もセレウス菌も、芽胞を作ることができるんだけど、この芽胞状態だと沸騰させたくらいでは死滅しないのだ。
なので、芽胞状態で耐え忍んで、冷めてきたところで増殖、となると、食中毒につながるんだよね。
常温で長期間放置せず、冷蔵庫に入れた方がいいよ、ということなんだけど、セレウス菌の場合、作り出した毒素も熱に強いので、温めなおしてもその毒素は無効化できないという罠があるのだ。
なので、冷蔵保存する場合は、冷めやすくなるように小分けにして、というのが大事らしいよ。

2024/09/07

やめないのをやめて

 兵庫県知事の問題が連日報道されているのだ。
それにしても、よく毎日毎日新しエピソードが出てくるものだ。
知事本人は「記憶にない」とか「そのような認識はない」とか答えているけど、職員やまわりの人から見たらいろいろと「お世話」が大変な人みたいだね・・・。
しかも、都道府県において知事の権限は強いし。

今回はいろんなことがあってから、兵庫県議会が地方自治法に基づき、通称「百条委員会」を設置して調査を進めているんだよね。
これは名前のとおり、地方自治法第100条に規定されているものなのでそう呼ばれるんだけど、地方議会が地方自治事務について調査を行うことができる、と定めているもの。
これは、憲法第62条の国政調査権の地方自治版と言えるもので、憲法上の規定の「証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」に対応して、地方自治法では、「選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる」と規定されているのだ。
今回は知事はまさに「関係者」として議会から出頭を命じられているわけ。

で、呼ばれるだけなら適当にはぐらかす、ということもできないわけでないのだけど、この表情委員会の場合、地方自治法第100条第7項で「宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを三箇月以上五年以下の禁錮に処する」と規定されているのがポイント。
裁判所と同様、この百条委員会の調査において嘘をついた場合、刑事罰があるのだ。
なので、今回の知事の対応でも、「事実無根」のような反論は一切していなくて、「記憶にない」、「そのような認識はない」と言っているわけだよね。
さすがに知事としても自分の行為が全く問題ないとは思っていないということだと思うのだ。

この百条委員会はあくまでも調査をするものなので、仮に、この調査によって「知事はパワハラをしていた」と結論付けられた場合は、その次の対応があるのだ。
議会としてそういう人物が知事としてふさわしくないと思えば、不信任決議を出すことができるのだ(地方自治法第178条)。
これも憲法第69条の内閣不信任決議と同じで、地方議会で首長の不信任決議が出た場合は、その議会を解散するか、解散しない場合は失職するかしないといけないわけ。
今回の兵庫県知事についても、すでに議会では不信任決議案を提出しようという動きが出ているみたいだね。
ちなみに、都道府県知事の不信任決議は過去に4件あって、議会は解散せずに失職しているみたい。
ただし、うち2件は失職した後に改めて知事選に「出直し立候補」をしていて、一人は当選(2002年長野県田中知事)、もう一人は落選(2003年徳島県大田知事)ということだよ。

もうひとつの可能性としては、県民による辞職請求(リコール)があるのだ(地自法自治法第81条)。
これは国政には該当する者のない、地方自治だけの制度だけど、原則として有権者の総数の1/3以上の署名があれば、選挙管理委員会に地方自治体の首長の解職を請求することができるのだ。
ちなみに、有権者の数が多い場合は、「(有権者数-80万)×1/8+40万×1/6+40万×1/3」という数式で必要な署名数を決めることになっていて、兵庫県は昨年12月時点で選挙人名簿上450万人の登録があるので、必要な署名数は662,500にんるよ。
普通に1/3とすると150万必要なので、その半分以下でよいみたい。
といっても、都道府県レベルで知事の解職請求が成立したことは過去になくて、今回はもう議会も動いているし、60万以上も署名を集めるのは大変だから、こっちの線はないね。
ちなみに、1954年に鳥取県知事に対してリコール運動が起こったことがあったけど、そのときは先に知事が辞職したみたい。
それと、これはのちに刑事事件になっているけど、2020年に愛知県知事にリコール運動が起こったときは、集められていた署名に大規模な偽造が発覚しているんだよね。

というわけで、今後の動きに注目だけど、これまでの対応を見ているとこの知事は相当メンタルが強いよね。
今のところ辞職の意向はないみたいだけど、議会の解散とか出直し選挙に行くのだろうか?
さすがにその選挙戦は辛そうだけど、対立候補がちゃんと出てくるかも問題なんだよね。
まだしばらく注目が集まりそうだ。

2024/08/31

クォ・ワディス

 台風10号がすごいことになっているのだ。
非常に強い勢力なのに遅々として進まず、日本中に強い雨を降らしているよ・・・。
しかも、予報を見ていても進路がなんかふらふらしていて、つかみどころがあいんだよね(>_<)
で、気になったのが、台風の進路予想図。
わかるようでわかっていないので、ちょっと調べてみたのだ。

天気予報の台風進路予想図のメインの情報は5つ。
一つ目は現在の中心位置で、まさに台風が現時点でどこにいるかだよね。
今回は台風の勢力が強いこともあって、衛星画像を見ても中心部に「目」があって、分厚い雲にぽっかりと穴が開いているのがよくわかるのだ。
予報で発表されるまでには観測時点から1時間かかるらしいので、「最新の」と言っていても、1時間前の位置らしいよ。
実際はもう少し進んでいるのだ。

二つ目は暴風域。
風速が平均して25m/s以上になっている範囲。
円で示されるけど、台風の目が中心になっているわけではないよ。
実は、台風の進行方向右側は、中心に向かって反時計回りにふきこむ風と、台風自体を動かしている風との2つが同じ方向になって合わさるので風が強くなるそうなのだ。
逆に、進行方向左側は、互いに打ち消しあうので弱くなるのだとか。
なので、暴風域の円の中心から進行方向左にずれたところに台風の中心位置が来るよ。
これって、台風の進路の右側の地域の方が影響が大きいということなんだよね。
この時期に日本に来る台風は、多くの場合南からきて北東へ移動していくので、東日本側が常に風が強くなるということだよ。

三つめは強風域。
こっちは平均風速が15m/s以上になる範囲。
基本的には上の暴風域と同心円になっているよ。
風速15m/sというのは「強い風」で、樹木が大きく揺れる、人は風に向かって歩けなくなうr、屋根瓦が外れ始める、といった強さ。
これってけっこうなものだよね。
さらに、風速25m/sの「非常に強い風」だと、人はモノにつかまっていないと立っていられない、樹木が倒れ始める、車を運転するのが困難暴風域のになる、というほど。
これは思っていた以上にすごい風だ。

四つ目は予報円。
これは、その時間に台風の中心位置がどのあたりに移動しているかの目安で、この予報円で示された範囲内に台風の中心位置が70%の確率で入ると想定される、というもの。
当然、先の時間であれば予測精度が下がるので、予報円は先の時間の予報ほど大きくなっているよ。
大体のルールがあって、台風の進路予測の信頼度(これは周りの状況で決まってくるのだ。)により5段階に分けられていて、それぞれ〇時間後の予報円の半径はどれくらい、という標準があるみたい。
今回のようにふらふらしている台風はどっちに行くか予測しづらいので予報円が大きくなるのだ。
また、大事なこととして、精々70%の確率、ということなので、この予報円のさらに外側に来ることもあるよ。

最後の五つ目は暴風警戒域。
上の予報円の中に台風の中心が来るとした場合、暴風域に入る可能性がある範囲、ということで、まさに台風対策をしっかりとしておかなくちゃいけないところだよね。
台風の勢力によって暴風域の大きさは変わるので、強いまま移動していくと、必然的にこの暴風系海域は広く取られるし、台風が徐々に弱くなっていくとせまくなるよ。
温帯低気圧になる手前ですでに暴風域がなくなっていると予想される場合はこの暴風警戒域はひょうじされなくなるのだ。

ちなみに、この地図上に表示される情報とともに大事なのが、台風の強さと大きさ、という概念。
当然、これらは上の5つの情報にも反映されているんだけど、その台風の脅威度を知るのは、まずは強さと大きさを知ることが大事なのだ。
強さは最大風速で規定されていて、54m/s以上で「猛烈な」、44~54m/sで「非常に強い」、33~44m/sで「強い」とされているよ。
大きさは風速15m/s以上の強風域の半径で規定されていて、800km以上が超大型(非常に大きい)、500~800kmが大型(大きい)となるよ。
ちなみに、超大型の場合、東京に台風の中心が来ると、本州がほぼ全部強風域の中に入るくらいの大きさ。
大型でも、関西までと青森を除く東北が入るくらいの広さだよ。

というわけで、これくらいわかっていると台風情報も理解しやすくなるはず。
今度注意深く天気予報を見てみよう。
と思っていたら、10号は急速に衰えてしまった・・・。

2024/08/24

友だち20人いるかな?

 岸田総理が次の自民党総裁選に不出馬を表明したので、次のリーダーを選ぶ自民党総裁選挙が盛り上がってきたのだ。
現時点で立候補を考えている人は11名!
なんでも、総裁選に出るには20名以上の所属国会議員の推薦がないといけないので、本人が出たくても出られないケースがあるんだよね。
過去にはそれであきらめた人も。
ちなみに、現在の自民党所属の国会議員は、衆議院254名、参議院115名の計369名なので、仮に11名の立候補予定者がそれぞれ20名ずつ推薦人を得ることは可能ではあるのだ。
でも、この自民党総裁選のルールってよくわからないんだよね(>_<)
というわけで、少し調べてみることにしたのだ。

自民党の基本ルールである党則では、第6条で総裁選について規定しているのだ。
第1項では、「総裁は、別に定める総裁公選規程により公選する」となっていて、総裁選挙専用のルールがあることがわかるのだ。
ただし、第2項と第3項で例外を定めていて、総裁が任期途中で欠けた場合(第一次安倍政権の時のような健康問題による辞任や首相在任中に逝去した大平正芳首相のようなケースがあるよ。)で、かつ、特に緊急を要する場合は、この公選規定によらず、党大会に代わる両院議員総会で後任を選ぶことができることになているよ。
その場合、よくテレビでも出てくる一般党員の投票は行われず、所属の国会議員と各都道府県連代表による投票になるんだ。
このとき、都道府県連代表の票数はそれぞれ3ずつ割り当てられるので、全部で141票分あることになるのだ。
実は、いまくらいの国会議員数だと、あとで見る公選規定と比べると、国会議員の影響力がより強く出る方式になっているよ。

で、通常の場合のルールが総裁公選規程で、その実施細則もあるよ。
ここでは投票できる人(選挙人)の資格やら、選挙の実施方法、得票数の数えからなんかをルール化したもの。
まず、選挙人資格だけど、これは単に党員であったり、所属の国会議員であったりすればいいわけではないのだ。
実は、前2年にわたってきちんと党費(党員の場合や会費(国会議員の場合)を納めていることが条件。
つまり、なりたての党員だったり、よその党から移籍してきて2年未満の国会議員は投票資格がないというわけ。
なので、今から党員になっても今回の総裁選には参加できないよ!

これとはうらはらの被選挙資格は、党所属の国会議員であること。
ただし、立候補に当たっては、20名以上の党所属の国会議員の推薦が必要。
これが一番最初に出てきた「推薦人集め問題」の根拠規定。
ちなみに、こっちの場合は会費についての規定はないので、会費を納めていなくて選挙人にはなれない国会議員であっても、総裁選に立候補したり、その推薦人になったりすることはできるみたい。
ちょっと不思議。
それと、細かいことで気になったのは、推薦人名簿は総裁選の告示日当日に党本部に届け出ないといけないらしいのだ。
なので、推薦人集めあ総裁選が告示されるまでに終えていなくちゃいけないというわけだ。

選挙の実施方法としては、党員投票と議員投票というのがあって、党員投票は各都道府県連取りまとめで議員投票の投票日の前日までに終わらせておくことになっているよ。
で、その党員投票の数え方は、、国会議員の議員投票と同じ一票、ではなくて・・・。
党員投票全体を所属国会議員数ちょ同数の票数にドント方式で分配するのだ。
ドント方式というのは比例代表制の当選者を決めるときに使っているのと同じ方法。
さっきの前任者の任期途中で緊急にやる場合は党員投票の票数は141しかなかったわけだけど、こっちでは議員票数と同数あるので、党員投票がけっこう重要な意味を持つのだ。


とはいえ、過去の総裁選でもあったように、一人の候補が党員投票と議員投票の合わせた票数の過半数を取れなかった場合は決選投票になってしまい、その決選投票では、各都道府県連は1票ずつしかもらえないんだよね。
なので、党員に人気で票数を稼いでいても、決選投票で票が伸び悩む、ということになるのだ。この決選投票は緊急の場合よりさらに党員の影響力が地位小さくなるんだよね・・・。
こういうのも勝負どころでは大きく聞いてくるから、選挙運動もどこを十手的にやるかで戦略が分かれてくるわけだ。
まあ、政けにょ等をリーダーとして引っ張っていくわけだから、国政を担う党所属の国会議員に支持されていないと話にはならないんだけどね。


2024/08/17

かかるのは水代だけ!

 休みの日にテレビを見ていると、ジャパネットのCMをよく見るよね。
その中でも気になったのがウォーターサーバー。
初期費用、毎月のサーバーレンタル代などすべて無料。
必要なのは毎月の水代だけ、しかも、その送料は無料、というのだけど・・・。
そんなんで利益が上がるのだろうか?
ということで、ちょっと試算してみた。

そもそものサーバーがどれくらいの価格のものなのかよくわからないので、とりあえず、月々どれくらい費用がかかるのか調べてみたのだ。
ジャパネットの場合、家族3~4名だと、9.5L入りのボトルを6本消費する想定みたい。
お値段にして7,200円ほどで、1Lあたり約128円だそうだよ。
一方、イオンのネットスーパーで天然水のボトルを買おうとすると、2L入りボトル6本(1ダース)で600円ほど。
これだと1Lあたり約50円。
でも、価格コムで調べると、2L×6本の相場は800円くらいみたい。
すると、1Lあたり約67円。
つまり、倍くらいの値段ということだ。
ネットスーパーだと別途配送料がかかるので、もう少し差は縮まるかな?

つまり、この差こそがサーバー代や初期費用の回収に当てられるということだよね。
3~4名の標準の月7,200コースだと、1Lあたり60円ほど、3,400円くらいになるよ。
月に3,400円の分割払いで回収ということになるのだ。
初期設置費用は16,500円とあるから、その分の回収には5ヶ月ほどかかることになるね。
2年以内の解約の場合は中途解約手数料がかかるということなので、サーバー代は概算で60,000円くらいなんじゃないかと思うよ。
単純計算すると65,000円になるんだけど、ジャパネットの場合はジャパネット通販で使えるクーポン券やタンブラーなどの特典もついてくるので、それくらいかなと推測したのだ。

こういう風に考えていくと、実はこのウォーターサーバーというビジネスはそこまでリスクは高くないように思えるのだ。
契約者が少ないとコスト単価が上がるけど、ある程度数が稼げればそれは下げていけるからね。
大手で宣伝しまくればおいしい商売なのかもしれない。
だからこそ、いろんな会社がウォーターサーバーをビジネス化しているんだろうけど。

2024/08/10

3番目のやつ

 オリンピックが開幕した。
なぜか、というと怒られるような気もするけど、日本が調子が良い。
思った以上にメダルを取っている。
不思議だ。
そんなメダルだけど、3位の人がもらえるのは「銅メダル」だけど、英語では「ブロンズ」なんだよね。
つまり「青銅」。
純銅の「コッパー」ではないのだ。
ま、同の加工品って多くの場合は青銅(ブロンズ)だけれども。

この青銅というのは銅の中に錫が混ざった合金。
錫の含有量が少ないと十円玉のような赤っぽい銅らしい色なんだけど、錫が増えていくと金のような黄色みがかった色になり、さらに増やすと白銀色になるらしいのだ。
名前から引きずられてどうしても緑色を思い浮かべるけど、あれは空気中の炭酸により参加してできた「緑青」=錆の色なんだよね。
発掘される「銅鏡」てピカピカに磨かれた十円玉のイメージがあったんだけど(笑)、実際には錫の含有量が多く、白銀職だったみたい。
そうでないと鏡としては使いづらいよね。

なぜ錫を混ぜるのかというと、強度が増すから。
銅はやわらかくて伸ばしやすい(=展延政がある)んだけど、すぐにぐにゃっと曲がってしまうのだ。
だからこそ電線には使いやすいのだけど。
でも、形状を維持したいものだと使いづらいので、強度を増しつつ、銅特有の展延性を残したバランスの取れた金属が青銅という合金なのだ。
鉄よりも低い温度で溶かせることもあり、人類ン歴史ではまずは青銅器が金属加工に使われたわけだよね。
かつ、ちょうどよく錫を混ぜれば金色になるので、祭具にも使えるのだ。
確かに魅力的な金属ではある。


加えて、アルミニウムなんかと同じで、表面に酸化膜ができるとそれが保護膜になって中身がさびにくくなるという特徴があるのだ。
なので、あえてさびを落とさず、そのままにするので「青銅」と呼ばれるんだよね。
鉄なんかはさびが内部に侵攻していくのでボロボロになってしまうから錆とりや防錆が重要だけど、青銅の場合は錆てからが本番みたいな感じだよね。
武器や農具につくならより強度がある鉄の方が優れているのだけど、さびにくく保存性が高いという青銅は利便性が高いので、建築資材などには使われ続けるのだ。

貴金属というのは化合物を作りづらい金属ということだけど、現在のように化学が発達する以前は、錆びにくくて朽ちにくい、ということこそが価値があったのだ。
金は錆びないし、銀は硫化により黒ずむけどボロボロにはならない、で、銅は緑になるけどボロボロにならない、という感じで、ちょっとずつ変化はあるものの、朽ちないという点で利点があるのだ。
これが貨幣に使われる理由だよね。
アジア圏には鉄銭もあるけど、やはり効果というと金銀銅が世界でメジャーなんだよね。

今では金よりも高価な白金(プラチナ)があるけど、白金は融点が高く、加工しづらいのだ。
スペインは南米大陸に侵攻したときに見つけて銀と間違えて持って帰ったけど、加工できないので捨てたこともあるとか。
これが貨幣には使われなかった理由。
すでに古代エジプト時代には知られていて、一部加工されて作られた装飾品なんかも見つかっているようだけど、当時の技術力では相当苦労して工夫しないと加工できなかったみたい。
当然、そんな姻族は貨幣のように大量生産が必要なものには使えないよね。
色合いも銀と紛らわしいし、やはり、黄色の金、白の銀、茶色の銅と分かりやすい今の形がよいみたいだ。

2024/08/03

熱風注意

 先ごろ、小型のハンディファンについて、気温が35度以上ある場合は健康を損なう恐れがあるので使用しないでください、というメッセージが出たのが話題になったのだ。
ここ最近はやっているけど、猛暑日の日に外で使うとかえって体温上昇につながり、脱水を起こすおそれもありとかなんとか。
風が来れば鈴しいわけではないんだよね。
少し考えるとよくわかるのだ。

もともと扇風機やうちわの風が涼しく感じるのは、汗が蒸発するときに気化熱を奪っていくために体表面温度が下がるから。
冷房の場合は、まわりの空気の温度を実際に下げているわけだけど、扇風機やうちわは空気をかき回しているだけ。
ここがポイントなんだよね。
お風呂に入っているときもそうなんだけど、あまり動かないでいると、自分と外界(外気やお風呂のお湯)との間に温度的な中間層ができるんだよね。
水も空気もそこまで熱伝導度は高くないので、体表面温度と外気温・お風呂の水温との間の中間くらいの温度の薄い膜のような層ができるのだ。
で、体を動かすとこの層が解消されるので、改めて外気温やお風呂の水温との間で熱い・冷たいを感じるようになるのだ。
サウナの中で空気をかき回す「アウフグース」というのがあるけど、あれはその中間層を吹き飛ばして、熱気を直接肌に感じさせるものなのだ。
ちなみに、焼けた石に水をかける「ロウリュ」の方は湿度を上げることで汗の蒸発を阻害し、体感温度を上げるものなのだ。

で、外気温が30度くらいの場合、人間の体表面温度は34~36度くらいなので、間に32~33度くらいの温度の層ができるのだ。
空気は温度によって密度が変わるので、外気の層とこの中間層との間には「空気の壁」みたいなのができてしまうんだよね。
すると、体表面から汗が蒸発していくとき、水蒸気の拡散はこの「空気の壁」に遮られるので、中間層の中だけ湿度が上がっていってしまい、やがて汗をかいても涼しく感じなくなるのだ。
この状態まで来たとき、外から風を当ててあげると、この中間層が壊れ、水蒸気が外気中に拡散していって、いったん滞っっていた汗の蒸発も活発になり、涼しく感じるようになるよ。
これが背bンぷ浮谷うちわで風を当てると涼しく感じる原理。
逆に言うと、うっすらとでも汗をかいていないような状態で風を当ててもほとんど涼しく感じないのだ。
春の終わりのぬるい風がそれだよね。

一方、外気温が体温を超える勢いの猛暑日の場合。
仮に外気温が37度まで行ったとすると、35度くらいの温度の中間層ができることになるのだ。
ここに風を当てると、汗の蒸発は進むのだけど、実は、体表面温度より高い温度の「熱風」を当てていることになるので、弱いヒーターの熱を当て続けているのと同じような状況になってしまうわけ。
汗を無限にかくことができれば気化熱とある程度は相殺できるけど、実際は汗をかきすぎると脱水になってくるわけで、だんだんと気化熱で涼しくなる効果が出せなくなるのだ。
これがまさに猛暑日に扇風機を使うとかえって体温が上昇して脱水に陥る危険がある、という理由。

体温より少し高い温度の熱をずっと風で当てられ続け、それに加えて夏の強い日差しなんかあると、体温上昇は危険なレベルまで行くのだ。
かつ、汗蒸発もどんどん進むので、体の中の水分もぐんぐんと失われていく。
やがえて汗が書けなくなると体温上昇のスピードは加速され、熱中症まっしぐら、という感じ。
なので、猛暑日なので窓を開けて扇風機だけでなんとか、というのはほぼほぼ自殺行為。
お年寄りは冷房を使うのを嫌がるけど、猛暑日まで行くとそんなことを言っていると命にかかわるのだ。

ハンディファンでそこまでひどくなるとは想像できないけど、リスクがあるのは確か。
そして、ついつい顔に当てがちだけど、人間の体の中でも頭、というか脳は一番熱に弱い臓器でもあるので、実際に危ないんだよね。
そういうときは、水で濡らした倒れで頭を覆ったり、首まわりにつけるネッククーラーのようなものが効果的らしいよ。
水で濡らした田尾rは汗の代わりに気化熱を奪っていってくれるし、ネッククーラーは実際に体表面を冷やす効果があるからね。
まだまだ暑い季節は続くから気を付けないと。

2024/07/27

実は日本式

 当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
テレビのクイズ番組か何かでパン粉工場の様子を見ていたら、まずは普通に食パン様のパンを焼くんだよね。
で、それを粉砕して乾燥させるとパン粉。
普通の食パンよりはちょっと白っぽいかな、というくらいだけど、これは耳がこんがりしちゃうとパン粉にしたときにむらができるからだろうね。
ちょっとパン粉に砕く前のそのパンを食べてみたい(笑)

パン粉の起源は、古くなり、硬くなったパンを食材として再活用するに当たって、ハードチーズをおろすように細かめの粉状にしたのが最初。
ほかにもパンがゆにしたり、クルトンのように汁物の具材にしたり、或いは、フランスのパン・ペルデュ(フレンチ・トースト)のように加工して食べたりするけど、粉にするのが一番簡便ではあるよね。
シチリアではこの硬くなったパンから作ったパン粉をかけたパスタがあって、アンチョビとニンニクを聞かせて作るらしい。。
パルメザンチーズの代わりにパン粉をかけて、というコンセプトだそうだけど、パン粉で香ばしさを、アンチョビとニンニクでパンチを追加した料理なのだ。
料理をおいしく食べようと追及する姿勢がイタリア的だ!
で、同じイタリアでは、ミラノ風カツレツ(コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ)やライスコロッケ(アランチーニ)なんかの揚げ物料理の衣にも使われているよね。
ほかに、肉団子のような料理を作るときに「つなぎ」に使うのだ。
どれも基本は固くなったパンを細かく削ったものを使うみたい。

これが日本に渡ってきて、養殖文化の中で使われていくうちに、魔改造されるのだ。
まず、当時の日本は米ばかり食べる食習慣で、そもそも福なって硬くなったパンはない!
なので、パン粉用のパンをあえて作ることが必要だったのだ。
ただし、日本式のブレッドはそのまま食べても奄美島を感じるように、パン粉と塩とイースト以外に、バターまたはマーガリンのような油脂成分、牛乳や脱脂粉乳のような乳製品、砂糖などが加えられているんだ。
この一般的な食パンをほぐしたものを揚げ物の衣に使おうとすると、副材料の油脂や乳、糖類が焦げ付いたりして邪魔をするので、あえてフランスパンのようにシンプルな材料で作るそうだよ。
おそらくふんわりしたフランスパンのような感じのはず。

で、どうせならまだ柔らかいうちに使おう、というのが「生パン粉」。
ハンバーグのつなぎなんかの場合は、余った食パンを牛乳につけて、みたいな自家製生パン粉を使うこともあるよね。
今案パン粉は揚げ物の衣にすると、水分がさっと飛んでそこが空隙になり、絶妙なサクサク感が出るのだ。
有名な洋食屋さんなんかはその食感のために生パン粉を使う例が多いみたい。
ふんわり、サクサクの衣。
でも、生パン粉は保存性が悪いので、あらかじめ乾燥させて水分を飛ばしたのが乾燥パン粉。
よくスーパーなんかで売っている普通のパン粉だよね。
さらに、その中間形態で、ちょっとだけ水分をとばしたセミドライパン粉というのもあるらしい。

さらに、日本では使い方によってパン粉の粒の大きさも買えるらしいのだ。
粗目、中目、細目と別れていて、揚げ物の衣に使うのは粗目。
ふんわり感が出るのだ。
そういえば、イタリアの揚げ物の衣のパン粉はなんか日本と違うなぁ、と思っていたけど、パン粉の粒の大きさが異なっていたのだ。
逆に粒の細かい細目は、ハンバーグやミートローフのような肉料理のつなぎや、肉や魚のパン粉焼きのような料理で使われるもの。
パン粉焼きの場青はふんわりサクサクではなくて、こんがりカリカリといった触感だよね。
で、その両方に使える万能タイプが中目で、普通に家庭にあるパン粉は多分これだよ。

で、こんな風に日本のパン粉は「あまりもの」ではなく、料理の材料としてあえて製造するものという位置づけになり、独自の発展を遂げたのだ。
そのおかげか、会では日本のパン粉を「panko」と呼ぶこともあるらしい。
自分たちの知っているもの、使っているものとは別物、ということだね。
なんか「なろう小説」の「俺またなんかやっちゃいました」みたいな展開だ。

2024/07/20

里帰りの国産

 近所のウナギ屋さんで、「シラスウナギの価格高騰により値上げします、すんません」という張り紙を見たのだ。
先般、水産庁が完全養殖のコスト御幅削減につながる技術の開発に成功した、という報道もあったけど、これは「伸びしろ」の話であって、卵のふ化からの完全養殖への道はまだまだ遠いのだ。
詳細は水産庁のこちらの資料
で、実際の養殖では、幼体であるシラスウナギをとってきて、それを養殖池で半年から1年半肥育して出荷しているんだよね。
それが、愛知産や鹿児島産、宮崎産と表記されてスーパーで売っているウナギたち。
浜松の名物だけど、浜名湖は汽水湖なのでカキの養殖はしているけど、ウナギの養殖はそのまわりにある淡水の養殖池で行っているよ。
でも、むしろ愛知の一色の方が生産量は多いのだ!

スーパーなどで売られている加工ウナギ(「長焼き」など)で「国産うなぎ」と書いてあるのはこれ。
ここでいう「国産」は国内で肥育された、というような意味なんだけど、複数個所で養殖がおこなわれている場合、国内での肥育期間が最も長ければ「国産」と表記でいるのだ。
これは国産牛も同じ。
つまり、まずはコストの安い中国などで半年ほど養殖して、ある程度大きくなったのを日本に持ってきて半年を超える期間養殖すれば「国産うなぎ」になるのだ。
日本で水揚げされたシラスウナギが中国に行ってから日本に戻ってくるので、俗に「里帰りうなぎ」と言うらしい。

実際問題としては、生物の体は常に新陳代謝をしていて、構成要素は時々刻々と入れ替わっているので、国内での養殖期間が長ければ基本は国内で与えたエサ由来の元素に置き換わっているはずなんだよね。
例えば、生物の基本構成要素として最も重要な炭素は、約40日で入れ替わることが分かっているので、1か月半もすれば中国で与えていたエサ由来の炭素は半分未満になっているはず。
仮に8か月=240日養殖した場合、1/2の4乗で1/16=6.25%まで減っているのだ。
ただし、骨にあるカルシウムのような元素はこの生物学的半減期が長くなるのでかなりあとまで残るけど。
それと、仮に重金属汚染があった場合なんかは、なかなか抜けていかないので、けっこうシビアなのだ。
さすがにそこまでひどい汚染があれば検査で引っかかるとは思うけど。
おそらく、体の構成要素でいえば、この「国産」の定義でもさほど問題はないはず。

むしろ、ウナギの場合の問題はその種類なんだよね。
日本で食べているウナギはニホンウナギ。
これがマリアナ海溝にいるというやつ。
一方で、欧州で燻製にしたりして食べているのはヨーロッパウナギ。
ニホンウナギに比べて太く短くて、脂がのっているといわれているよ。
これはサルガッソーでふかして欧州やアフリカに行くらしいけど、このシラスウナギをとってきて中国で養殖しているのだ。
それが多くの「中国産うなぎ」。
「中国産うなぎ」として売られている長焼きが「国産うなぎ」の長焼きより大きいのはそもそも種類が違うから。
もちろん、種類が異なるので味も違うはずで、養殖地の違いで味が大きく異なるわけではないんだよね。

この「中国産うなぎ」はずっと中国で養殖され、長焼きなどに加工されてから輸出されるのだ。
で、気をつけるべきは、やはり汚染問題。
かつて残留農薬が多いことが判明しているんだよね。
「里帰り」の場合は日本の養殖池にいる期間が長いのでそのリスクは下がるわけだけど、すでに加工品として輸入する「中国産うなぎ」は養殖の状態がブラックボックスなので、よくよく気を付けて検査しないといけないんだよね。

2024/07/13

遊興は自由料金で

 最近少し収まってきたといわれるけど、コロナ禍を経てサウナブームがあったのだ。
ネット記事でもサウナの入り方、有名なサウナの紹介なんかがよく見られるようになったし、それにとどまらず、日帰り系の温泉施設なんかも注目度が高まったような気がするのだ。
テレビでもよく紹介されるようになったよね。
日本人はもともとお風呂好きだからね。
で、そんなときに気になる名称が、「スーパー銭湯」。

そう、街中にある「銭湯」よりは何やら施設的にすごそうなもののはず。
実際、いろんな種類のお風呂があったり、サウナがあったり、休憩スペースが充実していたりとちょっと豪華なお風呂なのだ。
でも、スパ施設や健康ランドと言われる施設よりはリーズナブルな価格で利用できて、数時間滞在くらいを想定しているみたい。
スパ施設だとそれこそ半日から終日という感じだよね。

この健康ランドは、船橋ヘルスセンターがはしり。
いまはららぽーとになっているところに大規模な浴場施設があったのだ。
温泉、サウナ、マッサージ、食堂などなどが充実した施設だったのだ。
さらにそこにプールやショーなども加えてリゾート施設にしたのが常磐ハワイアンセンター(今のスパリゾート・ハワイアンズ)。
で、規模的にそこまではいかないけど、いわゆる普通の銭湯よりは設備面が充実した浴場施設として銭湯を超えた施設、スーパー銭湯が出てくるんだよね。
ざっくりいうと、日帰り系の浴場施設で大規模だとスパ施設、中規模だとスーパー銭湯くらいのイメージだね。

で、じつはこれらの浴場施設は、公衆浴場法で規定する「その他公衆浴場」になるんだ。
街中の銭湯は「一般公衆浴場」。
声が大きな違いで、公衆浴場法の枠組みにおいては、「公衆浴場における衛生等管理要領」による分類があって、「一般公衆浴場」は、「地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される施設」とされていて、国民の生活を支えるべきものと位置付けられているんだよね。
一方、「その他公衆施設」はそういう生活必需サービスみたいなものではないものが含まれるわけ。
実は、これは制度上大きな違いになっているんだよね
それは、料金規制。
銭湯は都道府県条例で一律料金が定められているのだ。
東京都の場合は7月から値上げされて大人は520円。

これは戦後すぐに発布された物価統制令による規制で、物価の急激な上昇により国民生活が立ちいかなくなることがないよう、主要な生活必需品・サービスは規制料金になっていたんだよね。
戦後10年で多くのものの物価統制は撤廃されて、その後しばらく米価や工業用アルコールなども残っていたのだけど、平成14年以降は一般公衆浴場(銭湯)のみが対象になっているんだ。
すでに風呂なしの集合住宅は少なくなってきているし、漫喫でシャワーを浴びられたりするので、銭湯も自由料金でいいのでは、という意見もあるようだけど、このシステムはまだ維持されているのだ。
逆に言うと、そこからはずれて施設・設備面で魅力度を上げて自由料金の世界でビジネス展開をするのがスーパー銭湯ということになるよ。
多くの場合は1000円以下の入浴料で、貸タオルは別料金みたいな料金体系。
スパ施設だと2000円を越えるから、そのくらいの料金体でどこまでできるか、ということ。
実際、いろんな業種の大手事業者が自己の事業との相乗効果が見込めそうという子でフランチャイズも増えているみたい。
鉄道や不動産だけでなく、遊興施設事業者がラインナップの一つに加えることも。
そういう意味では、日本の娯楽文化の一角になっているのかもね。
お風呂を嫌う文化の国もあるけど(仏など)、日本人のお風呂好きに根差したものなのだ。

2024/07/06

倉庫の父

 30年ぶりに紙幣がリニューアルされるのだ。
その前から続投していた福沢先生ともついにお別れ。
そして、新たな万札の顔は、日本近代経済の父と言われる渋沢栄一翁。
銀行、商工会議所、証券取引所など、近代経済を支える様々な仕組みを明治期に整備したことでおなじみ。
日本を代表する研究機関の理化学研究所の設立の際も渋沢翁が尽力して帝国議会に建議したんだよね。
で、そんな渋沢翁の偉業の一つに、倉庫業の創設、というのがあるのだ。

なんだかそれだけ季久としょぼいような気もするけど・・・。
実は、このときに渋沢翁が倉庫業というものを作ってくれたおかげで我が国の近代物流が確立されたんだよね。
そうでなければ、広域流通は少なく、地域消費を中心としたスタイルから脱却できなかったのだ!
ちなみに、倉庫業というのは単にがらんどうの建物を場所貸しするという単純なものではなく、国土交通省所管の法律である倉庫業法で規制されている業態なんだよ。
施設要件や保管の基準などがあるようで、かつては許可制だったものが規制改革で登録制になったみたいだけど、それでも、誰でも簡単に行えるようなものではないのだ。
ちなみに、倉庫管理主任者は国家資格だよ。
物流における倉庫は一つの拠点で、いったんそこに荷物をためておいて、配送先ごとに分別したり、港や空港であれば通関の手続をしたりと、けっこういろんな業務があるんだって。

では、なぜ明治期になって倉庫業をきちんと確立する必要があったのか。
ポイントはそこなのだ。
主要な原因は地租改正。
江戸時代までは年貢米を納めていたので、国の収入は米による物納だったのだ。
で、それを米問屋のネットワークが引き受けて換金したりしていたんだよね。
このときのリスク管理のために「米相場」というのができて、世界に先駆けて先物市場が掲載されたのだ。
でも、明治近代化の中で、地租改正により納税は現金で行われることになり、米を中心とした経済システムが崩壊するのだ。


幕府の場合は、御天領から納められた米は「御蔵」と呼ばれる場所でいったん保管し、それを御家人に給与として渡していたんだよね。
主な御蔵は、浅草(今の蔵前)、大阪、京都二条。
実際には米俵をそのまま給与としてもらうわけでもなく、その引き取り権を米問屋に売って現金化していたのだ。
そのように、米問屋を仲立ちとした経済システムだったんだけど、地租改正により、農家も自分で収穫した米は自分で現金化した上で納税をしなくちゃいけないわけだよね。
こうなると、根幹から江戸時代のシステムが崩壊するわけ。

で、この崩壊は、物流にも大きな影響を与えるのだ。
江戸時代の最大の広域物流はまさにこの米。
幕府だけでなく、各藩も年貢米を現金化する必要があるので、基本は大阪の米問屋を仲立ちとした経済システムになっていたのだ。
それは何を意味するかというと、全国の米のほとんどはいったん大阪に集まり、それがまた全国各地に行く、という物流システムになっていたんだよね。
その拠点として米倉があったわけ。

ところが、地租改正のあおりでこの物流システムも崩れてしまうわけ。
一方で、近代化のための物流システムの構築においては、鉄道の整備以上に新たな物流拠点の整備が必要だったのだ。
渋沢翁は、銀行の設立や保険業の創設とともに、日本の近代化にとって物流の近代化の重要性を認識していて、さっそく倉庫業の創設に向けて動き出したんだよ。
そのときに創業されたのが澁澤倉庫で、創業の地は門前仲町の駅のそばの深川福住町。
かつては材木問屋がたくさんあった、江戸の水運の拠点のひとつだよ。
その後、住友や三菱のような財閥系企業も自身のグループの一環として倉庫業を始め、物流の発展とともに倉庫業も発展していくことになったんだって。

2024/06/29

神宮のMORIMORI

 都知事選の中で、神宮外苑の再開発問題を取り上げている人がいるのだ。
でも、これってすでに言われているように、宗教法人である明治神宮の私有地を純粋民間で再開発する話で、公金は一円たりとも投入されないモノなんだよね。
景観が崩れるとか、日照権が脅かされるとか、周辺住民が反対するのはわかるとしても、都政の争点になるような話ではないはずなんだよね・・・。
でも、なんだか着目を集めてきたので、ちょっと調べてみたよ。

もともと、新宿区や渋谷区のあたりは江戸時代は何もないところだったのだ。
明治神宮内苑は家康公の入府後、肥後熊本藩加藤家の屋敷になるのだ。
内苑にはパワースポットで有名な「清正井」があるけど、それはそういうわけ。
加藤家の改易後は、彦根藩井伊家の下屋敷になるんだよね。
それが御一新で政府に接収されて、代々木御料地になるのだ。

内苑の方はまだ木々があったようだけど(「代々木」地名の由来となるモミの大木があったみたいだよ。)、外苑があったあたりは原野。
何もない野っ原。
そこが御一新後は青山練兵場として陸軍の軍用地になるのだ。
とにかく広大な原っぱだったので、いろんな用途に使われていて、戦前の方の東京オリンピックのスタジアムの候補地だったり、戦前に東京で万博を開こうとするときの候補地だったりするのだ。
それらは実現しなかったわけだけど、太平洋戦争時には学徒出陣の壮行会記念行事なんかも開かれているんだよね。

で、現在につながるような位置づけになったのは、明治天皇崩御後のこと。
明治天皇の御陵は御遺言により、京都の伏見桃山御陵が造営されることになるんだけど、東京府内でも何か残せないか、という話になったのだ。
ちょうど大喪の儀を青山練兵場で開いたこともあり、この近辺に記念施設を創設する計画がまとめられたよ。
その時提案されたのが、国家事業である明治天皇を祭神とする神社施設の創設と、その周辺地域における民間主導の公園施設の整備。
そうして代々木御料地に創設されたのが明治神宮(内苑)で、その外側、青山練兵場跡に作られたのが神宮外苑なのだ。
外苑の整備時には、奉賛会が組織され、各都道府県の支部を通じて国民からの寄付を募ったそうだけど、どの地域も目標額を達成するという大成功のクラウド・ファンディングだったみたい。

宗教施設である内苑と違い、外苑はあくまでも公園なので、記念館としても聖徳記念絵画館(大喪の儀の際に使った葬場殿の跡地に建築)のほか、各種スポーツ施設などが作られたよ。
そう、神宮球場、秩父宮ラグビー場、旧国立競技場(国立霞ヶ丘競技場陸上競技場)なんかだよ。
このほか、景観をよくするために外苑前の銀杏並木が整備されたりしたのだ。
再開発計画に不動産事業者だけでなく、国立スポーツ振興センターが入っているのはそのためだよ。
明治神宮自体は日本で一番初詣の人出がある神社ではあるけど、その収入に御ほとんどは外苑にあるこれら施設の利用料なんだって。
ドル箱は結婚式場の明治記念館と神宮球場みたい。
でも、スポーツ施設群はとにかく古く、老朽化も激しいので、民間の資金を入れて再開発しようという計画のようなのだ。

外苑再開発の批判の中には、「百年の森を守れ」というのがあるけど、これは内苑の方なんだよね。
外苑は緑地面積はあるけど、最初から公園として整備されているので銀杏並木の他はそんなに大きな森はもともとないのだ。
しかも、再開発計画では植樹も行うので、緑地面積はかえって微増するらしい。
樹木が代替わりすることにはなるので体制ベースでは一時的に減ることになるけど。
で、この再開発を止めようという訴えは最高裁まで行って棄却されていて、すでに司法判断も下されているのだ。

ちなみに、「百年の森」と言われている内苑の方も、もともとは人工林。
約100年後に自然林に移行するように、と綿密に計画されて作られた森なのだ。
通常、神域の森はスギやヒノキなどの針葉樹林なんだけど、東京の気候や煙害などを勘案し、カシやクス、シイなどの広葉樹が中心になっているのだ。
基本的には手入れはあまりせず、自然な変異に任せているので、今ではほぼほぼ自然林のような景観になっているのが特徴。
こちらは神域の「鎮守の杜」なので、もちろん再開発の対象にはなっていないよ。

2024/06/22

宣言はしません。

 東京の梅雨入りが遅れているのだ。
天候的にはそれっぽいような、そうでもないような。
で、どういう判断基準で梅雨入りしたかどうかを決めているか調べてみたんだよね。
衝撃の結果が!
次回、梅雨入りはディナーの後で、というのはウソで、単純に言うと、「判断基準はない」というのが気象庁の正式な回答。

そもそも、気象庁は梅雨入りの時期を推定しているだけで、「宣言」はしていないのだ。
よくよく報道を正しく聞いてみると「梅雨入りしたとみられる」と発表しているだけ。
かつ、実は事後に実際の天候の移り変わりから日付を確定し、記録に残しているというのだ。
なので、報道で「今年は昨年より1週間ほど遅い梅雨入り」とか言っていても、比べているものが違うんだよ。
今年のは推定の日付、昨年のは確定の日付。

気象庁によれば、「梅雨」を「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が現れる現象、またはその期間」と定義しているのだ。
これがすごいのは、この時期に話題になる梅雨前線は定義上は関係ないということ。
あくまでも特定の時期に雨天・曇天が続くことを指しているんだよ。
つまり、梅雨前線が関係ない雨(例えば台風による影響の雨)が続くと、梅雨が明けないらしいのだ!
逆に言うと、こういう定義なので、あるときまでは晴天が続いていたけど、どこかのタイミングで雨天や曇天が続くようになると「梅雨入り」になるわけ。
実際には、すっきりとクリアカットで線が引けるわけでもなく、「移り変わり」と呼ばれる期間が5日間ほどあって、その中日を「梅雨入り」の日とするんだそうだよ。

気象庁では、週間天気予報でそういう傾向が強く見えてくると「梅雨入りしたとみられる」と発表するのだけど、先日したように、実際の天候を踏まえて後で確定させて記録に残すのだ。
かつては気象庁も桜の開花と同じように「宣言」という形で発表していたんだけど、梅雨入り当日が晴天になったりすることもあってクレームが来たそうで、一切発表をやめたらしいんだよね。
でも、そうすると、今度は何で発表しないんだ、とたたかれたので、今のように「みられる」という推定の発表をするようにしたんだとか。

ここ10年の関東甲信地方の梅雨入り時期を見てみると、ほとんどが6月第1週、遅くても6月中旬までには梅雨入り。
過去30年の平均である「平年値」では6月7日なので、6月20日を越えているのは珍しく遅いのだ。
ちなみに、気象庁のHPで確認できる範囲(=1951年以降)で、関東甲信越地方の梅雨入りが6月20日以降になっているのは、1967年と2007年だけ。
1967年のときは、梅雨明けはその後割とすぐ後の7月18日なので、1ヶ月なかったのだ。
一方、2007年のときは梅雨明けもずれ込んで8月1日なので、1ヶ月半くらい梅雨が続いたのだ。

報道では、今年の梅雨は期間はそんなに長くないけど、強い雨がざーっと降ることが多い、みたいな予想をしていたけど、どうなんだろう?
雨の総量は農作物に大きく影響する(空梅雨だと不作になりがち)けど、最近は雨の降り方も問題だよね。
あまりにも強く降ると土砂崩れとかにつながるから。
それなりの期間、しとしとと降って、相応の量の降雨がある、というのが理想なんだけどなぁ

2024/06/15

淑女の読み物

 最近の若者は、わりと本を読むらしい。
といっても、ライトノベルが読まれているだけのようだけど・・・。
いわゆる「なろう系」やら「異世界転生もの」が量産されていて、アニメや漫画に展開されてメジャー化していくのだ。
古く言えば、「スレイヤーズ」、その後の世代だと「涼宮ハルヒシリーズ」、最近のだと「転スラ」、「無職転生」、「シャンフロ」、「オーバーロード」とか。
「涼宮ハルヒ」の時代まではプロ作家が書いていたのだけど、最近は小説投稿サイト(「小説家になろう」とか「アルファポリス」など)で素人作家さんが投稿して、人気が出ると書籍化、というぱてーんが増えてきているよね。
こういう形にすると玉石混交だろうけど、編集者が「何が受けるか」をあまり考えなくても、実際に人気のあるコンテンツを見つけられるという利点があるのだ。
携帯小説もそうだけど、けっこう何が受けるかわからないというのはあるんだろうね。
小説としては表現がけっこうメタメタでもストーリーや設定が面白い、キャラクターが魅力的、なんだか読ませる文章で続きが気になる、とかとか。

で、それはまだ理解できるんだけど、いまいちよくわからないのが、なぜか売れ続けている「ハーレクイン・ロマンス」。
こういう言い方をすると愛好者には怒られるかもだけど。
男性であることもあって、ほぼ触れたことはないので、よくわからないんだよね。
岩波文庫並みに本屋の一角を占めていて、売れ筋の書籍の一軍であることは知っているのだけど。
なので、少し調べてみることにしたのだ。

基本的には、ハーレクイン社が出版している主に女性をターゲットとした大衆恋愛小説のペーパーバックが「ハーレクイン・ロマンス」なのだ。
書いているのも女性、読んでいるのも女性で、男性には近寄りがたい雰囲気を持っているのが特徴。
日本では翻訳版が月2回刊行されているらしいけど、それくらい頻繁に出版されるもので、書籍の大量生産・大量消費の代名詞であるペーパーバックの雄なのだ。
っていうか、現在ではぱーぱーバックはもう「ハーレクイン・ロマンス」くらいしか売れないらしい。
かつてはスティーブン・キングのミステリなんかが良く売れたわけだけど、他のコンテンツが充実してくるにしたがってそういう伝統的なペーパーバックは軒並み売れなくなって、「ハーレクイン・ロマンス」だけが残ったようなのだ。
どうも、これは「ハーレクイン・ロマンス」の特徴から来ているらしいことがわかったよ。

先に書いた通り、基本は女性が読む女性作家による大衆恋愛小説。
ヒーローと呼ばれるイケメンや大金持ち(19世紀前半の英国摂政時代の貴族とかアラブの富豪とからしい。)の男性が、ヒロインと呼ばれる主人公の女性と恋に落ち、ハッピーエンドで終わるのだ。
かつ、女性をターゲットにしているので、女性が読んでいて不快になるような展開はまずなくて、浮気とか不倫とかではなくて、あくまでも純粋な恋愛が成就する、というものらしい。
日本ではドロドロした昼ドラが主婦層に好まれていたけど、欧米文化はキリスト教的な価値観もあって、王道のれないがよいらしい。

内容的には3つのシリーズがあって、日常では怒らないようなドラマティックな恋愛の話の「ロマンス」、身近に起こりそうな恋の話の「イマージュ」、情熱的な恋の話の「ディザイア」に分かれるそうで、背表紙もこのシリーズごとに色分けされているみたい。
で、舞台設定でもパターンがいくつかあって、歴史もの(ほとんどは英国摂政時代、日本の異世界転生ものの異世界のほとんどが中世欧州をベースにしているようなものか?)、アラブ王国もの(シークというアラブの王族と恋する話らしい、これはシャムの王様と子供たちの英語家庭教師の恋を描いた「王様と私」みたいなものか?)、現代もの(キャリアウーマンだったり、平凡な女性だったり)がメジャーみたい。
こういう基本的な枠組みの中で、いろんな女性作家が「順列組み合わせ」のような定型パターン・エピソードをつなぎ合わせてハッピーエンドになるれ内を描くようなのだ。
逆に言うと、こういう基本コンセプトがあるからこそ、どんどん大量に刊行できるわけだよね。

正直、これだけ聞くと、「そんな小説を読んで面白いのか?」と思うわけだけど、実はそうではないらしい。
これは、ターゲットである女性読者がその読書体験で何を求めているか、ということにつなげっているのだ。
基本的には、読書体験では、まだ見ぬ世界を知って知識が広がったり、登場人物に感情移入して喜怒哀楽を疑似体験したりするわけだけど、どうも女性の読書体験は後者、感情移入の方に重きが置かれるらしいんだよね。
女性は教官を求める、と言われているのと同じ。
逆に男性は理屈っぽく知識を求める傾向にあると言われ、自己啓発本みたいなやつはほとんどが男性読者なんだそうで。

そうなると、女性読者としては、読書を通じて疑似恋愛を体験して、ドキドキしたい、ワクワクしたい、と思っているわけだ。
でも、個人個人で趣味嗜好がことなるから、せっかくなら現実では味わえないようなラブ・ロマンスを求める人もいれば、実際には体験できていない日常の中でも起こり得そうな恋愛を求める人もいるのだよね。
で、自治はそのほとんどすべてのパターンがそこにはあるのだ!
つまり、読者にしてみれば、自分がどの疑似恋愛体験をしたいのかを探りながらいろんな作品を読んでいくことになるよ。
これが数多くの作品を次々と打ち出して読者をひきつけてやまないコツ。
最初はこういうのが好き、と思っていても、読んでみたら別のジャンルもよかった、みたいなのもあるし、一度はまればどんどん手に取るのだ。
こう考えると、なんだか「なぜ売れているのか」がわかった気がするよね。
ボクは恋愛小説はあまり好みでないので読まないけど(笑)

2024/06/08

丸善にしかける

 地味に好きなお菓子がある。
それはレモンケーキ。
甘酸っぱくて、懐かしい味。
子供の時に最初に食べたのは近所のケーキ屋さんのやつ。
大人になってからは主にコンビニやスーパーで買える山崎のレモナック。
時々百貨店で高級なやつを買うとぜいたくな気分になる。

そんなレモンケーキ。
発祥は大正時代だそう。
広島県の物産陳列館(被爆後に「原爆ドーム」になった建物)で大正8年(1919年)3月に開催された「似島獨逸俘虜技術工藝品展覧會」の菓子即売所で、日本初のバウムクーヘン(ユーハイムのもの)とともにレモンケーキが販売され、大好評を得たのだとか。
この時のレモンケーキは今のような紡錘形でコーティングされたものではなく、レモンピールなどで風味をつけた生地をパウンドケーキ型で焼いて、上部にアイシングしてからカットしたものだったみたい。
当時の広島県内では一大ブームで、御使い物や仏壇に供える菓子と言えばこれ、というくらいになったとか。
それが全国に広まっていったらしいけど、そこまでメジャーにはならなかったのだ。

転機が訪れたのは戦後になってから。
葛飾区にある製菓・製パン用型製品を作っている千代田金属工業が、レモンをかたどった紡錘形の型を作ったのだ。
これまではサクで焼いてカットしていたわけだけど、フィナンシェなどの焼き菓子のように、最初から一つ一つ紡錘形の焼き菓子ができるのだ。
これにレモン風味のホワイトチョコレートでコーティングすると、現在一般的に認知されているようなレモンケーキになるわけ。
これが昭和40年代から50年代にかけて一大ブームになり、全国メジャーなお菓子になったわけ。

まだこのころだとあまりにもしつこいバターの風味は苦手な人が多いだろうし、少し酸味があってさっぱりしているほど良い甘さが受けたのかも。
フォルムもかわいらしいしね。
焼き菓子なので生ケーキより日持ちするので「おもたせ」なんかにもできる点もよかったのだ。
で、その後は「ちょっと懐かしいお菓子」程度になっていくんだけど、最近またブームが来ているようなのだ。
平成の後期くらいからだけど、レモン風味のお菓子が流行ってから、伝統的(?)なタイプにひと手間加えたものが出て来るんだよね。
中にレモンマーマレードを入れてみたり、レモンピールをお目にしてよりレモン風味を出したり。
これらが高級路線のレモンケーキなのだ。

でも、ちょっと気になるのは、なぜ広島発祥なのか?
そう、我が国ではレモン栽培は広島が全国一なんだよね!
というのも、レモンの木は寒さに弱く、国内で栽培できる個所は限られるのだとか。
その一大産地が広島県の瀬戸内海沿岸部なんだよね。
レモン自体が日本に伝わったのが明治6年(1873年)、広島県で最初に植えられたのが明治31年(1897年)と言われているよ。
最初は買ってきたネーブルの苗木の中にレモンが混ざっていて、間違って植えたらしい・・・。
で、レモンの実がなるのだけど、どうやって食べたらよいのかわからないので、港に寄港する船乗りたちに聞いたりしていたのだとか。
そういう背景があって、レモン味のものが広島の名物になったのわけなのだ。

2024/06/01

がる

 実際の会話ではあまり使うことがないけど、ネットなんかでは良く見る表現、「イキる」、「イキり」。
(ネガティブな意味で)格好をつけている、調子に乗っている、虚勢を張っているなどの意味。
不良やチンピラがオラついて絡んでくる様子がまさに「イキって」いる状態だよね。
そういう時に限って、こういう人の方から「イキって」じゃねぇぞ、と言われるわけだけど。

「イキ」は「粋」又は「意気」で、「いきがる」の「が」が抜けた口語表現ではないかと考えられているらしい。
接尾語の「がる」は、形容詞又は形容動詞の語幹や名詞にくっついて、そのように振る舞う、そのようはふりをする、という意味を持たせる言葉。
「強がる」とか「賢がる」とかの「がる」で、本来はそうでないのにそのように見せている的なネガティブなニュアンスを持っているのだ。
で、「粋」にくっつけば、「粋」なふりをする、「粋」であるかのように振る舞う、ということになるよね。

もともと江戸時代で使われていた「粋」という概念はざっくりという今の「cool」と同じでなんかかっこいい、というイメージ。
なので、「いきがってんじねぇ」という場合は、かっこうつけているんじゃねぇ、ということになつよね。
おそらくこれがもともとの意味なんだと思うけど、これが「イキる」になっていく過程で、便利な言葉として様々なシチュエーションで使われていくことで、広がりを持った意味になっていくのだ。
ええかっこしい・かっこうつけている=>調子に乗っている/虚勢を張っている、的な。

ネットとの相性が良いのは、匿名性の高い場においては、自らの本質を隠してなんでもかんでも「盛れる」ので、まさに「イキっ」た人が数多くいる、ということなんだろうね。
少しでもぼろを出したり、あまりにも見え透いた虚勢であれば「イキり」認定されるわけ。
有名な2ちゃんのコピペでこんなのがあるけど、最後まで「イキっ」ていて清々しく、ほほえましいのだ。

33 風吹けば名無し 2016/06/22(水) 12:46:30.27 ID:ISNFTZMe0
まーたしょうもない人生送ってるやつが成功者を叩いてるのか

45 風吹けば名無し 2016/06/22(水) 12:48:16.70 ID:Y8g+JM3E0
>>33
税理士一発合格、早稲田卒、身長182、都内85階タワマン住みがしょうもない人生なんですか・・・(唖然)

73 風吹けば名無し 2016/06/22(水) 12:50:56.00 ID:+61AL8Z50
>>45
東京都内に85階建てのマンションなどない
今建設中の新宿の60階が東京の最高層だ

109 風吹けば名無し 2016/06/22(水) 12:53:53.53 ID:Y8g+JM3E0
>>73
お前が知らないだけだろにわか
俺が言ったのは海外の都内マンションの事。海外住みだからね
日本住みなんていついった?にわか


ちなみに、「生きる」は同音異義語だけど、「イキる」とは活用が違うんだよね。
「生きる」は上一段活用、「イキる」は五段活用。
否定の助動詞の「ない」に接続させるために未然形にすると一目瞭然で、「生き・ない」と「イキら・ない」に分かれるのだ。
なので、文脈を組まずとも音声だけでも区別することができるのだ。
ま、あんまり「生きる」と「イキる」が混同されるような場面は想定されないけど。
アンジャッシュかなんかがコントにしてくれればおもしろいけどね。
世界の黒澤も「イキる」の方で映画を撮っていたらだめだったかも。

2024/05/25

最期はどちらか

 俳優の中尾彬さんの訃報が流れたのだ。
前に一度大きな病気をしてからかなり仕事はセーブしていたらしい。
その死因は「心不全」。
つまりは最後は心臓が機能しなくなって亡くなった、ということなんだけど・・・。

こういう著名人の不法で発表される死因って、事故死などの外因性でない場合、たいていは「心不全」か「呼吸不全」なんだよね。
つまり、心臓が機能しなくなったか、呼吸ができなくなったかのどちらか、というだけの意味。
人間の生命活動の根幹なのでそれはそうなんだけど、問題は、なぜ心臓が動かなくなったり、呼吸ができなくなったか、ということだよね。
とはいえ、死因についてもプライバシーだから何でもかんでも公表すればいいというわけでもなく、病死か、自然死(老衰など)か」、事故死かくらいわかればいい、と言えばそれもそうなんだよね。
でも、医師又は歯科医師が書くことになる死亡診断書(最終的にその人が死亡したということを医師又は歯科医師が判断した証拠の書類)では、そうもいかないのだ。
なんと、ネット上にはこうせいろうどうしょうによる死亡診断書の書き方マニュアルがあるよ。

この死亡診断書には死因について記入する欄があって、①病死・自然死、②外因死(交通事故、転倒・転落、溺水、煙・火災及び火焔による傷害、窒息、薬物による中毒、自殺・他殺等)、③不詳の3つに大きくカテゴライズされるのだ。
②の外因死の場合はかなり検案をする必要があって、火災現場で焼死体が見つかったときは、火災でなくなったのか、先に殺されていて死体が焼かれたのか、で話が変わってくるわけだよね。
そういうのは監察医が司法解剖をして確認することになるよ。
マニュアルを見ると、例えば、てんかん発作が起こって川に転落して溺死した場合、外因死の「溺水」でなくて「てんかん発作による病死」と書かないといけないらしい。
で、どうやってもなくなった原因がわからないのは③で、これは穴を掘っていたら白骨が出てきちゃって、ものすごく古いもので特に外傷の跡も見られない、なんてもの。
困ったときの分類だよね。

で、問題は「病死・自然死」の死因の書き方。
そのむかしは、心臓が止まったら「心不全」、呼吸が止まったら「呼吸不全」と書いていたみたいなんだ。
でも、こういう書き方だと、世界保健機関で集めている死亡原因の統計データに使えないため、もうちょっとなんで死に至るようになったのかをわかるように書くべし、ということになったみたい。
なので、例えば、がんの末期で最後に心臓が止まって亡くなった場合、かつては「心不全」と書いてしまったんだけど、「〇〇がん」と書かれるようになったのだ。
そうすると、これは統計上の死因は「悪性新生物」に分類されることになるよ。

現在の死亡診断書の様式においては、「直接の死因」、「それに至った原因」、「さらにそれに至った原因」と最大で4段階まで原因をさかのぼって書くようになっているんだ。
なので、最終的に心筋梗塞で心臓が止まった場合、直接の死因は「心筋梗塞」でよいのだけど、その心筋梗塞に至った原因として「冠状動脈硬化症」を書く、という感じになっていて、心臓の冠状動脈の状態が悪くてそれが心筋梗塞につながった、というのがわかるようになっているのだ。
がんの場合だと、原発は「大腸がん」でそれ「肝臓に転移」で「肝不全」みたいな感じになるよ。
ここまでくると、書く方もきちんと把握したうえでじゃないと書けないからけっこう大変なような気がする。

病院で亡くなった場合はカルテ情報やらなにやらあるからこういうのは書けると思うのだけど、問題は、自宅療養している場合だよね。
特に、高齢者の場合はいろんな疾病・症状を抱えていて、朝起きたら亡くなっていた、みたいなのもあるだろうから、そうなると死因を調べて特定する必要があるのだ。
せめて病院のベッドの上ではなく畳の上で死にたい、なんて言うけど、そうなると事後の処理が大変だったりするわけだよね・・・。
しかも、なんで亡くなったかけっきょくよくわからない場合もあって、その場合だけ「老衰」というのを死因にできるらしいよ。
もう体全体が弱っていて、ということだよね。

2024/05/18

まじ寝てねーわ

 この時期の大学生あるある。
「寝てない自慢」!
地獄のミサワではないけど、なぜか寝てない自慢をするよね。
でもって、そんな寝てない状況でも普通に過ごせている俺すごい的な。
ところが、これってイキリ大学生だけの話じゃなくって、社会に出てからも同じような人たちがいるんだよね。
さすがに「寝てない自慢」をストレートでするわけでなく、「ショートスリーパーだから睡眠時間が短くても大丈夫」というように進化するのだ。

実際にショートスリーパーと呼ばれる人たちは存在するらしい。
歴史上の人物ではナポレオンなんかが有名だけど、睡眠時間が短くても平気な人。
具体的には、人間は6時間は睡眠をとらないと不調になって脳や肉体のパフォーマンスが落ちると言われていて、それより未ジカンジカンシカ睡眠をとっていないのにパフォーマンスの落ちない人というのがいるらしいのだ。
2時間寝ればスッキリで、むしろ、4時間以上はどんなにがんばっても寝られない、みたいな。
それでいて、日中に眠気に襲われるわけでもなく、記憶力や判断力にも問題がないそうな。
確かにそういうのはちょっとうらやましい(笑)

一方、普通の人が6時間未満の短時間睡眠を繰り返すと、「睡眠負債」というのがたまっていっていくのだ。
この状態では、記憶力や判断力が鈍って作業効率が落ちていくわけだけど、あまりにも睡眠時間が少ないと身体的な能力も低下していくよ。
徹夜続きの状態がまさにそうだよね。
でも、どうも感覚が鈍い人もいるようで、明らかに睡眠不足状態に陥っているのに、それを認識していない人がいるようなのだ。
軽度なものに限るのだろうけど。
常にそうやってパフォーマンスが低い状態で安定しちゃっているので、パワーマンスが落ちている、ということも感覚的にわからなくなっているんだろうね。
で、こういう人たちが「自称ショートスリーパー」のようなのだ。
体調的には不調を来しているんだけど、それに気づいていない人。
どうも、世に「ショートスリーパー」と自称している人のほとんどがこれではないか、というのが睡眠の専門家の言。
実は、それだけ真正のショートスリーパーというのは珍しい存在なのだ。
自分を特別な存在だと思ってしまうイキリぐせはなかなか抜けないわけだね(苦笑)

では、真正のショートスリーパーは何が違うのか。
体調に不調があるかどうかは個人的・主観的な感覚のようだけど、実は、客観的に観察できる事実でも判別できるみたい。
それは、寝ている間の状態。
真正のショートスリーパーの場合、睡眠時にほぼほぼレム睡眠がないということが知られているんだって。
このレム睡眠というのは、まぶたの奥で眼球がぐりぐり動いている浅い眠りの状態。
Rapid Eye Movementの頭文字をとってレム。
この状態では、肉体は弛緩していて休んでいる状態だけど、脳は割と活動的な状態なんだ。
夢を見ているのもたいていはレム睡眠の間と考えられているよ。
なんでこういう状態があるのか不明だけど、頭の中で記憶の整理をしているのではないかなどと言われているのだ。

で、普通の人は、睡眠時に深い眠りであるノンレム睡眠(眼球の動きがなく、脳の活動もかなり抑制されて、体全体が休んでいる状態)と浅い眠りのレム睡眠を周期的に繰り返しているんだよね。
たいていは90分周期くらいで、6時間睡眠では4サイクルくらいしていることになるのだ。
これは眼球の動きだけでなく、脳波を測定した場合もこの周期性は観測できるよ。
どうも、ショートスリーパーの人は、ほぼほぼずっと深い眠りのノンレム睡眠の状態で、かつ、ノンレム睡眠の時間だけを比べると通常の人と変わらない、ということのようなのだ。
つまり、レム睡眠をスキップできる人がショートスリーパーというわけだ。

ネットで検索すると、「どうやってショートスリーパーになるか」みたいなのを見かけるけど、どうもこれは訓練でどうにかなるものではないらしいよ。
生まれ持っての性質、遺伝的要素が強いようなのだ。
なので、短時間睡眠でならしていこうとしようが、単に睡眠不足になるだけなのだ。
なので、イキってみても仕方がないので、生来のショートスリーパーでないのなら、心身の健康のためによく寝ることとが大事なのだ。
ついつい夜更かししてしまうから、ショートスリーパーになれれば便利なんだけどね。
無理なものは無理ということで。

2024/05/11

この思い届けて!

 大型連休明けと言えば、会社や学校に行きたくなくてゆううつな気分になりがち。
まさにそれが社会現象として表れているようなのだ。
それは・・・。
退職代行の盛況。
テレビのニュースでも取り上げるほどなのだ。

民間事業者のやっている退職代行サービスは、基本的には「〇〇さんが退職したいとの意向をお持ちです」と会社などの雇用側にお伝えするだけ。
それ以上でもそれ以下でもないのだ。
自分で言い出しにくい人向けのサービス。
気を付けないといけないのは、退職する前に残っている有休を使いきりたいとか、業務上の引継ぎをどうしたいとかの退職に当たっての雇用者・被雇用者間のやりとりは仲介できないということ。
「有休を使いきって〇月×日付で退職されたい意向です」とか「業務の引継ぎについては整理してある書類や電子ファイルを見てもらえばわかります」みたいなのを伝言するところまではできるけど、間を取り持って調整はできなのだ。
なぜなら、それは雇用者・被雇用者間の労働契約上の権利・義務に関することで、本来的には弁護士資格がないと代理人となれないから。
つまり、そこまでやってしまうと「非弁行為」になるのだ。

なので、けっきょくその手の手続きは自分でやるか、別途弁護士に依頼することになるよ。
ま、直属の上司には話しにくいけど、事務的なやりとりを会社の人とするのはOKみたいなこともあるだろうから、それはそれでよいのかもだけど。
それにしても、そういうサービスがそこまではやるとは・・・。
実際にはもう少しいろいろ手続きをしてもらえると思って頼んでいる人もいるとは思うけどね。
まずは有無を言わせず雇用者に退職の意向を伝えたい、ということに特化したサービスになっているのだ。

退職代行というと、ブラック体質の企業に勤めていて、やめたいと思っても退職届・辞職願を受け取ってもらえないとか、ここでやめたら損害賠償政協すると脅されるとか、そういう辞めたいのにやめられない人が使うのかと思うよね。
でも、実際にはそういうケースの場合は、退職代行サービスに依頼するだけでは解決しないのだ。
お金はかかるけど弁護士に丸投げするというのもあるし、雇用者側とある程度戦う意向があるなら、労働基準監督署や労働組合と相談して自分で交渉するということをしないとだめなんだ。
そこまでしようとする人はなかなかいないのだけど。

では、どういう層がこのサービスを使っているのか?
テレビのニュースによると、150件近い申し込みのうち、30件ほどが新卒者らしい。
つまり、働き始めて1か月程度の人。
むかしは3年はこらえないと、なんてことを言われたものだけど、最近は合わないと思ったらスパッとやめるのだそうで。
確かに、病んでしまう前に違和感を感じたところで「損切り」ができるのが理想的だけど、ちょっと前までは前の職場を数か月でやめてる、なんてのが職歴として残っているとなかなか再就職できなかったりするんだよね。
それこそ、新卒一括採用の終身雇用制が一般的な会社だと特に。
でも、現在はそういう雇用状況も変化してきているのだ。

まだまだジョブ型雇用は採用されていないけど、現在は慢性的な人で不足で「売り手市場」なんだよね。
しかも、能力が高い人だけが引く手あまた、というのではなく、普通程度の能力であってもとにかく人手が不足しているから来てほしい、というくらい。
政府が一生懸命「第二新卒」なんて概念を広めようとしてもうまくいかなかったけど、今となってはある程度以上の能力のある(というか、足を引っ張ることなく一応の戦力にはなる)人材であれば、いつでも来てほしい、という企業が多くなっているのだ。
そうなると、昔はまさに「折り紙付き」の扱いだった「新卒カード」の意向は低下していて、前の職場をすぐにやめていても問題なさそうなら雇いたい、と考える企業が出てきているので、再就職するのに不利にならない状況なんだよね。
確かに一定数の「やばい」人がいるのは確実だけど、一方で、「やばい」会社がいまだに存在しているのも事実なわけで・・・。

つい先月の報道でも、チュールでおなじみの企業で新卒者が大量離職、というニュースがあったけど、あれは詳細が明かるになればなるほど企業側が「やばい」よね。
なので、そういうところでこらえて勤めるのではなく、早々に見切りをつけて次の就職先を探す、というのはある意味「見る目がある」人材でもあるのだ。
ただし、ジョブ型雇用でキャリアアップのために転職を繰り返す、というのでもなく、なんとなく合わないから、という理由ですぐに転職しようとする人も含まれるだろうから、雇う側もその人の人となりを見ておかないと危ないんだよね。
どうしても働き始めはスキル習得のために一定のコストがかかるわけで。
やっと戦力になると思った矢先にまた転職されてしまうと大変だから。

2024/05/04

まつられ

 最近は神社本庁による啓蒙のおかげもあって、「二拝二拍手一拝」(又は「二礼二拍手一礼」)のお作法も広まってきているけど、一般に神社に参拝に行くのは「社頭参拝」で、拝殿の前でお賽銭を賽銭箱に入れて参拝するのだ。
神道の考え方だと、神様は音に反応して気づいてくださるので、意識をこっちに向けてもらえるように拍手や鈴を鳴らすのが大事なんだよ。
一方、政治家の参拝で問題になるのは昇殿参拝と呼ばれる正式な参拝の方。
厄払いや七五三などの儀式のときには一般の人もやるけど、拝殿に上がって御神体のある本殿の方を向いて、祝詞なんかをあげながら儀式を行うのだ。
このとき、玉串奉奠(ほうてん)というのがあって、榊の枝に紙垂(しで=雷のような形の紙)がつけられたものを奉納するんだけど、本人は参拝せず「玉串料を収めた」というのはこれの代わりにお金を出した、ということなのだ。

で、基本的には我々は神社に参拝するときに訪れるのは拝殿。
そこが神様を拝む場所なんだよね。
一方、神様が宿る、依り代の「御神体」があるのが本殿。
神社的にはそちらが本体なのだ。
でも、基本的に御神体は秘匿されるので、目に触れることはないんだよね。
御開帳もなくはないけど。

この御神体にもいくつか種類があって、オーソドックス(?)なのは、鏡、刀剣など。
伊勢神宮の内宮の御神体は八咫鏡だし、熱田神宮の御神体は天叢雲剣になってるよね。
この人工物の御神体はわりと時代が下ってからで、その前、古神道の時代は、自然界にある畏敬の念を抱かせるようなものが御神体=神の宿るもの、だったのだ。
代表例は奈良の三輪山にある大神(おおみわ)神社。
この神社は三輪山それ自体が御神体なので、山の前に拝殿があるだけ。
同じようなものは福岡の宗像神社で、御神体は玄界灘に浮かぶ「沖ノ島」そのもの(=沖津宮)で、宗像市にある神社(=辺津宮)はそれ自体が拝殿扱いだよ。
石上神宮は布都御魂剣(ふつのみたまのつる=武御雷神が葦原中国を平定するときに使った刀剣)をまつっているけど、もともとは神宝が埋められているという禁足地に拝殿が設けられているスタイルだったんだよね。
本殿を立てようと明治期になって禁足地を発掘してみたらものすごく古い鉄剣が見つかり、それを布都御魂剣や天羽々斬(あめのははきり=素戔嗚尊が八岐大蛇を切った剣)に比定されているものだよ。

それよりもう少し身近になるのが、大きな石、大きな木、きれいな湧水などの自然物。
これはいまでもわりとよく保存されていて、しめ縄をかけて賽銭箱が置いてあったりするのだ。
もともとはその自然物が信仰を集めていたんだけど、やがてその信仰対象の神様に名前が付き、その性質の神様にふさわしい御神体が選ばれ、本殿と拝殿が作られる、みたいな感じで神社が形作られていくんだよね。
どこからか勧請してくる場合を除いては、もともと神秘的な場所・ものがあって、そこにあとから名前の付いた神様があてられるケースが多いのだ。
山の神様とか水の神様とかは自然に対する畏敬の念が信仰の本質であって、特定の神様を信仰しているわけじゃないからね。

でも、記紀神話が取りまとめられ、神道が整理されてくると、特定の神様への信仰が増えてくるのだ。
航海の安全であれば宗像三女神や住吉三神であったり、五穀豊穣の神様だったら稲荷信仰にも結び付いている宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)や保食神(うけもちのかみ)であったり。
で、このころには仏教が伝来していて、仏像や仏画と同じようなノリで、神の像や絵も作られたりするんだよね。
場合によってはそういうものが御神体になっているケースもあるのだ。
神道の神様は「感じる」ものであって「見る」ものではないから、本来は形がないはずなんだけど、具象化されてしまうのだ。

で、もうなってくると、公開してもよさそうなものだよね。
なので、御神体の御開帳というのもなくはないけど、仏教の本尊が絶対非仏で非公開を貫くように、そういうものでも公開しない、というのもあるわけで。
後から神様に祭り上げられて天神様こと菅原道真公については神像がわりとよくあるけど、御神体である神像は非公開であることが多いよ。
っていうか、神様が宿る真正なものなので、基本的には人の目に触れないようにするものなのだ。
湯志保がある神社ならなおさらね。

ちなみに、近所にあるような小さい神社の場合は、本殿と拝殿が分かれていないことも多く、社殿の奥の方に御神体がまつられていることが多いよ。
多くはほかの神社の神様を勧請してきたもので、そこの御神体はいわば電話の子機のようなものだから、そういう扱いでもよいみたい。
真正なものなので低調に扱わなければいけないのはそのとおりなんだけど、そもそも神様を勧請してくるときに自ら用意しなきゃいけないわけで、絶対的に秘密御いうわけにもいかず、そのコミュニティの中では口に出さないだけで知られたことではあったはずなのだ。

2024/04/27

実は年2回

 衆議院の補欠選挙があるのだ。
今回は、島根1区(細田衆院議長が死去したため)、長崎3区(谷川議員が裏金問題で辞職したため)及び東京15区(柿沢議員が公選法違反で逮捕・起訴され、辞職したため)の3つ。
これってそこそこ数が集まってからやるものだと認識していたんだけど、それは当たらずも遠からじ。
実は国政選挙の場合はルールがあって、例外を除いて、原則として4月と10月の第4日曜日に実施することになっているのだ!
知らなかった。
9月16日~翌3月15日に補欠選挙の実施事由が発生した場合は4月、3月16日~翌9月15日に補欠選挙の実施事由が発生した場合は10月なんだそうだ。

まず、「補欠選挙の実施事由」とは何を指すか?
これにも明確にルールがあって、
①衆議院小選挙区(=議員定数1)は欠員が生じたとき
②参議院選挙区(議員定数が1~6)は定数の1/4を超える欠員が生じたとき(=東京・神奈川・埼玉・愛知・大阪の5選挙区は2名の欠員、それ以外の選挙区は1名の欠員)
③比例代表は再選挙が必要な当選人不足数と合わせて定数の1/4を超える欠員が生じたとき(ただし、参議院は全国比例で定数100なのでまず発生せず、衆議院は最大の近畿ブロックだと定数28で8名欠員が出た場合、最小の四国ブロックは定数6で2名欠員が出たとき)
ということになっているよ。
基本的には、多くの選挙区では一人でも欠員が出ると補欠選挙が行われるようになっているのだ。

このルールに従って行われる補欠選挙を「統一補欠選挙」と言うのだ。
これは衆議院に小選挙区制が導入されたため。
以前は補欠選挙の実施が必要な事由が発生してから40日以内という規定。
1996年に衆議院選挙に小選挙区制が導入されると、当選人が一人しかいないので、なんらかの事由で議員がいなくなるとすぐに補欠選挙をせざるを得ず、回数が増大したのだ。
選挙事務に係るコストも増したので、2000年の公選法改正で現在の年2回のルールができたそうだよ。

例外的に補欠選挙が行われる例としては、統一地方選と同時に行われる場合。
統一地方選は、4月7日~13日の間の日曜日に実施される前半戦で都道府県知事と都道府県議会議員、政令指定都市の市長と地方議会議員を選び、4月21日~27日の」間の日曜日に実施される後半戦で政令指定都市以外の市町村の首長と地方議会議員を選ぶのだ。
この統一地方選がある都市は、4月の補欠選挙は統一地方選後半戦と同時に実施されることになっているよ。
ま、ルール上決まる日程とほぼほぼ被るんだけど。
それから、参議院の場合は解散がなくて通常選挙が行われる日程が通例6月~7月になっているので、参議院通常選挙のある年は、10月の補欠選挙は参議院の通常選挙と同時に行われるのだ。
逆に、衆議院総選挙は解散があるのでいつ行われるか決まっていないから、たまたま投票日が重なることはあっても、合わせにはいかないみたい。
いきなり参議院の補欠選挙も一緒にやります、とかなっても準備も大変だしね。

このほか、「再選挙」と一緒にやる場合、というのがあるのだ。
再選挙は、公選法違反で当選が取り消された場合は、選挙したけどどの候補者も法定得票数が得られなかった場合、比例代表で名簿のリストが足りなくて繰上補充で当選人が確保することができなくなった場合などに行われるもの。
この再選挙も原則として補欠選挙と同じルールで日程が設定されるのだけど、例外的に統一ルールから外れる場合があって、その時一緒に補欠選挙もしてしまう、というもの。
国政選挙の場合は、当選人がいなかった、或いは、定数に満たなかった場合、選挙無効訴訟の結果選挙無効となった場合(「1票の格差」など)はその事由が発生した日から40日以内に再選挙することになっていて、その場合はその時一緒に補欠選挙もすると負いうことなのだ。
ちなみに、現在の選挙区制だと当選人が出ないとか定数に満たないことはまずまず想定されなくて、基本は選挙無効の場合が再選挙になるのだ。
しかも、通常は公選法違反等で逮捕・起訴されるとその訴訟を起こされる前に議員辞職するので、再選挙ではなくて補欠選挙になるんだよね。
最近の例で言うと、河合杏里参議院議員(当時)の場合は、公選法違反の刑事裁判で有罪判決が出るまで議員辞職していなかったので、有罪になった時点で当選無効になり、再選挙することになったのだ。

というわけで、わりと政治ニュースに着目していても知らないことが多いな、と思ったよ。
ま、こんな選挙日程の細かいルールを気にすることはないのだけど。
テレビでコメントしている「選挙のプロ」たちは大前提としてよく知っていることかもしれないけどね。

2024/04/20

ほうなんですか?

 日本の場合、奈良仏教(南都六宗)からはじまって、平安仏教の密教(天台・真言)、鎌倉仏教の浄土信仰(浄土宗・真宗)、日蓮宗、禅宗(臨済・曹洞)などなど、これまで国内で起こった仏教宗派がだいたい残っているのだ。
でも、実は中国ではそうではないんだよね。
というのも、中国では大きな仏教弾圧が何度かあって、その際に衰退、或いは、消滅してしまった宗派もあるから。
日本だと明治期の廃仏毀釈があるけど、宗派が消滅するまでには至ってはいないのだ。
中国の場合、「三武一宗の法難」といって大きな弾圧が過去に4度行われるけど、このときは、寺の財産を没収、強制的な僧の還俗などが行われたのだ。

では、なぜそんな弾圧が起こるのか?
仏教は中国の歴代王朝に反旗を翻したりしていたのか?
でも、そんな話は歴史で聞かなかったような・・・。
ということでちょっと調べてみると、やはり時の王朝の支配に支障が出るような場合に弾圧が起こるのだ。
仏教そのものが憎い、というより、仏教勢力が問題を起こすので、ということらしい。

例えば、中国の皇帝の中には仏教を手厚く保護する政策をとる人もいるわけだけど、そうすると仏教寺院の影響力が大きくなってくるわけ。
すると、他の勢力はこれを排除したいと思うわけで、皇帝の代替わりで弾圧する、という場合はあるのだ。
例えば、唐の時代は、仏教と道教が王朝の支持をめぐって対立をしていて、それが最大の仏教弾圧である「会昌の廃仏」につながったのだ。
完全に派閥争いであって、ポリティクスの世界だよね。
宗教の協議の中身の対立とか、仏教の信仰者が増えると政治に影響があるとか、そういう話ではないのだ。
また、一般に、僧籍に入ると租庸調や兵役が免除されるんだよね。
でも、これを各youして、得度して修業するのではなく、出家だけして「税逃れ」をするようなやからが出てきたので、それを取り締まる必要も出てきたのだ。
仏教弾圧の中で出て来る「強制的な還俗」というのはこういうところに本質があるのだ。


これは日本でも同じで、勝手に僧になられると困れるので、正式に僧籍に入るためのプロセスを用意する必要があったのだ。
それが戒壇の設立で、聖武天皇が唐から鑑真和上を招聘し、唐招提寺を作ったのもここに理由があるのだ。
これにより日本でも正式なプロセスで出家・得度ができるようになるんだけど、この時の整理では、僧になるためのプロセスは国家管理で、国が設置した東大寺、大宰府の観世音寺、下野の薬師寺の3つの戒壇のみに限定したんだよね。
加えて、全国に国分寺・国分尼寺を整理して、仏教の国家管理を進めたのだ。
とはいえ、奈良時代は朝廷への仏教勢力の影響が強すぎたので、平安遷都につながっていくわけだよね。
ここで仏教を弾圧して、とはならなかったのが日本的かもしれないけど、けっきょく、平安時代も密教を国家鎮護のために使っていたわけで、決別するまでではない、ということなんだろうね。
おそらく、大陸には仏教に変わる勢力としての道教があるけど、日本にはそこまでの仏教の対抗勢力がないというのが大きかったのかもね。

日本の朝廷は仏教と一定の距離を取りながらつきあっていくわけだけど、個別の宗派ごとに見ると、「法難」と呼ばれるような話はあるのだ。
例えば、宗派ごとの対立の影響もあって、法然は讃岐に、親鸞は越後に、日蓮は伊豆に入るになっているのだ。
また、日蓮宗のうち「不受不施派」は江戸末期まで弾圧され、強制的に回収させられて真言宗になった寺院などもあるよ。
でも、仏教コミュニティ内の対立なので、仏教自体がけしからん、とはならないのだ。
政治勢力と仏教勢力の対立としては、織田信長による叡山焼き討ちなんてのがあるけど、これも武力集団としての影響力を排除しようとしただけで、信仰を排除しようとしているわけではないんだよね。

なので、明治期の廃仏毀釈までは支配層とうまく付き合ってきたのが日本の仏教だったのだ。
ちなみに、一般的に「廃仏毀釈」とは言われるけど、明治政府が推し進めようとしたのは国家神道体制の確立で、そのために出したのが「神仏分離令」。
神道と仏教の分離というわけだけど、神仏習合が進んでいた日本ではこれはなかなか難しい話だったんだよね。
本地垂迹で日本の神様と仏教の神様がつながっているし。
でも、このとき、神職者の中で仏教に圧迫されてきたと考えている勢力が「廃仏」を言い出し、世間のムーブメントがそっちに移って行ってしまったんだよね。
なので、必ず寝所政府が意図したところではなかった、ということなのだ。
そこも中国のものとは少し毛色が違うんだよね。

2024/04/13

においのもと

 テレビで見たのだけど、岡山県はトイレの消臭剤の年間消費量がナンバー1らしい。
その理由をインタビューでさぐっていたんだけど、番組の中で出していた結論は、洋式トイレで男性が小をする場合に座らず立ったままする人の割合が全国平均に比べて圧倒的に高いから、ということだったのだ。
つまり、まわりに飛沫が飛び散っていて、それがにおいのもとになっているというわけだ。
トイレ用洗剤のCMでも思ったより飛び散っている、みたいなのがあったよね。

でも、実は尿素のものが臭いわけじゃないのだ。
もともと腎臓の中で血液をろ過して老廃物を取り除いた廃液が尿になるわけで、基本的に膀胱から尿道を経て外に出るまでは無菌状態。
っていうか、膀胱や尿道にある時点で細菌が中にいる場合は、膀胱炎や尿道炎を起こしているのだ(>_<)
問題は体外に排出された後。
つまり、検尿の時などの出したての尿は臭いわけではないのだ。
でも、検尿カップから提出用容器に移した後、残ったのをそのままにしておくと臭いが出て来るよ。
残りのほとんどはお入れにそのまま流すと思うけど、検尿カップにこびりついて残ったものは後々臭いが出るので、水ですすぐとかしないとまずいわけだ。

では、なぜ臭いが発生するのか。
尿臭のメインはアンモニア臭。
もともとアンモニアは毒なので、体内で発生するアンモニアは尿素にして無毒化されるんだよね。
それが尿中に排出されるわけ。
でも、体外に排出された尿素は、まわりにいる最近に分解され、再びアンモニアが発生するのだ。
これがにおいの発生源。
特有の刺激臭が出て来るよ。

このほか、尿中には微量ながらタンパク質も含まれているので、それが分解されるとやはり腐敗臭のもとになるような物質もできているのだ。
卵や肉が腐ったようなにおい。
とはいえ、尿中のたんぱく質はごく微量なので、大量のアンモニア臭を押しのけてまで感じられるようにはならないんだよね。
犬なんかは人間より嗅覚が鋭くて、アンモニア臭の奥にある別の物質のにおいまで完治できるのでおしっこでなわばりをマーキングするんだけど、さすがに人でそこまでできる人はあまりいないはず。

でも、おしっこのにおいが強くなる、というのはあるんだよね。
これはむしろ病気の兆候。
なんらかの原因で普段は尿中に排出されない物質が大量に尿中に排出されることでにおいのもとになっているのだ。
わかりやすいのは、栄養ドリンクを飲むと大量の水溶性ビタミンのビタミンB2(リボフラビン)が尿中に排出されるので、尿が真っ黄色になって少し薬臭くなるのだ。
で、腎臓の病気とかで、血液のろ過機能が弱ってくると、本来は尿中に出てこないタンパク質が排出され、それがにおいのもとに。
健康診断の検尿も基本は尿中のたんぱく質を測定しているんだけど、これが多いと腎機能が低下しているというシグナルになっているんだよね。
ちなみに、泡だってその泡がなかなか消えない、というのもタンパク質が多めに排出されてしまっているシグナルの一つ。

では、臭い対策はどうするか。
単純に言えば、尿の飛沫が飛んでいるのが問題なので、それをきれいにふき取っておけば臭いは発生しないのだ。
でも、トイレを使うたびに毎回毎回掃除はできない・・・、となると、別のにおいが悪臭をごまかすしかないわけ。
いわゆる「ベルサイユ方式」。
昔のトイレの芳香剤はこれ。
「芳香剤」とはよく名付けたもので、より強い、でも、人にとっては良いにおいに感じるものでアンモニアを中心とした悪臭をごまかすのだ。

でも、現在普通に使われているのは消臭剤。
名前のとおり「悪臭の原因を消す」のだ。
では、どうやって除去するか。
代表的なものは、化学的方法と物理的方法。
化学的方法というのは、別の化合物と反応させて臭いのしない化合物に変化させてしまう、という発想。
トイレの場合はわかりやすくて、においの原因はアンモニアなので、このアンモニアに何かを反応させて悪臭の原因にならない化合物にしてしまえばよいのだ。
アンモニアは塩基性なので、多くの場合は何らかの酸性物質と反応させるよ。
ただし、なんでもいいかというか、そういうわけでもないのだ。
例えば、そこら辺にある二酸化炭素と反応させて炭酸アンモニウムにしても、炭酸アンモニウム自体が強い刺激臭を持つので意味ないのだ。
塩酸と反応させて塩化アンモニウムに変換すれば無臭になるけど、この物質は強い吸湿性があるので、べとつくのだ。
トイレでそれは使えないよね。
というわけで、ちょうどよいものというのを探すのは大変で、だからこそいろんな商品があるわけ。

物理的方法の方は、多孔性の単体に臭いの原因物質を吸着させるというもの。
素焼きの陶器や活性炭にアンモニアを吸着させるのだ。
冷蔵庫や靴箱用の消臭剤は主にこれだよね。
トイレのようなある程度の広さがある空間だとこれだけだと間に合わないので、トイレ用消臭剤の場合は上の化学的方法と組み合わせになることが多いよ。

2024/04/06

間違うと大変

 小林製薬の紅麹問題はなかなか収まるところを知らないね・・・。
プベルル酸というカビ毒の混入があったことは判明したけど、これってまだ原因と特定できているわけじゃないんだよね。
もともとあんまりよく知られていない物質で、そもそも腎毒性があるかどうかも不明。
仮に、今回の健康被害はこのプベルル酸が原因だったとしても、なぜ混入したのかがわからないと対処できないのだ。
まだまだ未解明なことが多すぎる。
でも、ここをおざなりにしてしまうと、あとで大変なことになるのだ。

歴史的有名な疫学上の大失敗は「脚気」の問題。
日清・日露戦争では多くの戦死者が出たわけだけど、陸軍は活計苦しんで亡くなった方も多いんだよね。
っていうか、神経がマヒして動けなくなるから、軽く症状が出ただけでも戦場では致命的。
当時からいかに脚気を克服するかが大きな課題だったんだけど、陸軍はその対応策を間違ってしまったんだよね。
その中心人物が軍医中将の森林太郎。
そう、「舞姫」の作者、森鴎外その人だよ。

「脚気」の症状は古代の文献にすでにみられるのだけど、広く認知されるようになったのは江戸時代から。
これは白米中心の食文化になったことが影響しているのだ。
主に都市部で発生していて、「江戸わずらい」なんて呼ばれたわけだけど、その本当の原因はビタミンB1の欠乏症。
江戸をはじめとした都市部では、大量の白米にごくごく少量のおかず、という食事スタイルだったので、欠乏症が発生しやすかったのだ。
箱根を越えると江戸わずらいが治るなんて言われていたけど、これは田舎では玄米や麦飯、雑穀などを食べていてビタミンB1を摂取できるようになるからなんだよね。
江戸時代にぬか漬けが普及したのも、ビタミンB1が補給できて脚気にかかりにくくなる、というのがあったと言われているよ。

明治になって、近代軍事組織が整備されると、またこの脚気が問題になるのだ。
というのも、軍人を募集する際に「腹いっぱい白米が食べられる」とアピールしたから。
江戸のような都市部を除いて白米はぜいたく品だったので、当時としてはこのコピーはすごく魅力的だったんだよね。
でも、その結果、軍隊で脚気が大量発生したのだ。
というのも、陸軍の場合だと、1日の食事として支給されるのが、白米6合+少量のおかず、という感じで、まさに脚気リスクがたまるメニューだったから。
で、どげんかせんといかん、ということになったんだけど、陸軍と海軍で対応が分かれるんだよね。

海軍の方は、英国軍では脚気が極めて少ないことに着目し、ひょっとすると日本式の食事が悪いのでは、ということで、兵食に洋食を導入することにしたのだ。
海軍軍医の高木兼寛は、おそらく炭水化物とタンパク質のバランスが悪い、もっとタンパク質を取らないとだめだ、と考えたんだよね。
でも、パンと肉の西洋食(例えばパンとシチュー)はあまり評判がよくなく、肉を使ったおかずにごはんという日本式の洋食スタイル(例えば肉じゃがとごはん)をとることに。
ただし、群で支給する食事に使える金額には上限があったので、肉多めのおかずにするとそっちにコストがかかり、高価な白米が使えず、安価な麦飯になったのだ。
でも、実際はこれが功を奏し、オオムギからビタミンB1が摂取できるようになって脚気が減ったのだ。

これに対し、陸軍は最近原因説をとるんだよね。
森林太郎をはじめとする陸軍軍医はドイツ留学組が多く、ちょうどそのころドイツでは多くの感染症の原因が最近によるものであるというのが盛んに研究されていたから。
また、実際に海軍では食事を変えて脚気が減っているのだけど、そういう経験則的なことではなく、理論的に脚気を駆逐したかった、という対抗心もあったみたい。
で、衛生環境の向上などの取組を始めるわけだけど、食事は依然のままの、脚気の高リスク食・・・。
結果として、日清戦争で数千人、日露戦争では3万人弱が脚気でなくなったといわれているよ(>_<)

当時の技術力では限界もあるのだけど、このように原因を見誤るとかえって被害が拡大したりするのだ。
なので、今回の紅麹の件も、プベルル酸が悪い、と短絡的に考えてはだめで、慎重にじっくりと検証することが必要なんだよね。
そうしないと、また次に同じようなことが起きてしまいかねないのだ。

2024/03/30

紅の衝撃

 小林製薬の紅麹の件がすごいことになっているのだ。
まだまだ正確なところはわからないけど、現実問題として、100名を超える人数が健康被害で入院していて、死亡例まで出ているわけだからね。
事案を認知してからの小林製薬の対応の遅さも指摘されているよね。
かつ、水から売っているものだけじゃなくて、原料として他社製品に使われている例が多いと言いうのだから大変だ。
でも、ネットを見ていると、けっこう勘違いに基づくコメントなんかもあるのだ。
そこで、現時点で分かっていることを頭の整理のためにもまとめてみるよ。

まず、今回問題になっているのは、紅麹のサプリで、健康食品としてこのサプリを飲んでいた人のうち、腎臓に悪影響が出ている人がいる、というのが問題の根幹。
腎臓は機能がダメになると基本は回復することはなくて、悪化すると人工透析になったりするわけだけど、そういう事例も報告されているばかりか、死亡例もあるのだ。
ただし、この時点では「関係がありそう」というだけで、直接的な原因かどうかはまだ調査中、というステータスだよ。

じゃあ、何が悪さをしているのか?
もともと紅麹はカビ毒のシトリニンというのを賛成する菌株があることが知られていて、これは腎毒性を持つ物質なのだ。
そのせいで、欧米では紅麹の食品等への利用に制限がかかっているのは報道されているとおり。
一方、アジア文化圏では、台湾では紅酒の醸造に、沖縄では豆腐ようの発酵に使われるなど、紅麹が伝統的に食品分野で使われてきているんだよね。
仮にカビ毒を産生する菌株でも、そんなに大量に紅麹を摂取するわけでないので、「ただちに健康に影響するレベルではない」ということで使われてきていたわけ。
ところが、この紅麹を調べていくと、どうもコレステロールを下げる働きのある物質も作っていることがわかり、健康食品としての利用につながっていくんだけど、今回問題になっているサプリのように、一度の大量に摂取するような使い方になると、産生量が微量であってもシトリニンを産生すること自体が問題になるのだ。
そこで、小林製薬は、シトリニンを産生しない菌株を開発し、安全に使える紅麹として製品化していたのだ。

ところが、今回こういう事案が発生したので、すわっ、やっぱりシトリニンが混ざっているのか、ということになったんだけど、どうもそれは違うみたいなんだよね。
今回健康被害が報告されている製品(サプリメント)を後から調べてみても、シトリニンは検出されていないのだ。
こはファクトとしてそう。
なので、健康被害の原因はシトリニンではない、ということ。
これにより、突然変異の先祖返りで小林製薬の紅麹の菌株が再びシトリニンを産生するようになった、というのは否定されるのだ。
では、何が原因なのか?

よくよく調べてみると、今回の健康被害が報告されている製品は、特定のロットに偏っているようなんだよね。
つまり、その時その工場で筑われた製品が問題である可能性が高いのだ。
そうなると、いくつか可能性が絞られてくるわけだ。
製造プロセスに問題があって、まだよくわからないけど、何か腎臓に悪影響を及ぼすような毒物が混入してしまった可能性。
この場合、どこからどうやってそれが混入したのか、というのが次の問題になってくるよね。
逆に言うと、これだと対策はしやすいのだ。
これとは別の可能性としては、このロットの製造過程において紅麹の菌株に突然変異が起こって(有意に表現型が変わるかどうかは別として、遺伝情報的には一定の確率で常に変異は入っているよ。)、シトリニンと似たような腎毒性を持つ新たな未知の物質が作られるようになってしまった、というのも考えられなくはないのだ。

こっちは影響がさらに拡大する可能性があって、他社製品の製造過程でも同じような突然変異が起こる可能性があるので、小林製薬だけの問題ではなくなってしまうのだ!
もともとそんなピンポイントで変異が入る確率は極めて低いのだ他の製造会社では発生していないんだと思うけど、小林製薬の製造ラインでそういう事象が起こったのであれば、他社の製造ラインでも同様のことが起こる確率はゼロではないのだ。
この場合は、その未知の物質に対するスクリーニングを横展開していくことが求められるよ。
すでに、一部紅麹関連製品を扱っている企業で、「当社の紅麹は小林製薬のものではありませんので安心してください」みたいなアナウンスをしているところもあるけど、そういうことではなくなってしまうのだ。
ちなみに、紅麹から抽出した色素はシトリニンの有無を確認しているので、色素だけしか利用していない場合は安全、という情報もあるけど、仮に未知の物質が原因だった場合、それは式粗抽出の過程で紛れ込んでいないのかどうかは未確認なので、これも否定されてしまうんだよね・・・。

いずれにしても、まずは原因の究明が待たれるのだ。
風評被害にもつながりかねないから、かなりの確度を持ったものでないとだめだけどね。
そういう意味では、この騒動はまだまだしばらく続くだろうなぁ。

(追記)
厚生労働省が小林製薬の大阪工場に立入検査に入ったけど、どうも、問題のロットに青カビが作るカビ毒の「プベルル酸」というのが混入しているのがわかったみたいだね。
この天然化合物自体の身体への毒性はまだよく分かっていないみたいだけど、これが真犯人とすると、紅麹の問題ではなく、製造過程の問題ということになるね。

2024/03/23

ただ純粋に

 最近かなり減ってきたけど、昭和レトロブームで取り上げられている飲食店で、「純喫茶」というのがあるのだ。
「純」があるからそうでないのもあるわけで。
それが「特殊喫茶」。
こちらは大きく業態が異なるんだよね。
なにしろ、「風俗営業」なのだ。
ちなみに、ほかにも「歌声喫茶」とか「名曲喫茶」なんてのもあるけど、これは「純喫茶」のバリエーション。
「歌声喫茶」ではみんなで合掌し、「名曲喫茶」ではクラシック音楽に耳を傾けるのだ。

今でいう喫茶店のような業態は開国前から「茶店」や「茶屋」と呼ばれる携帯で存在していたんだよね。
水戸黄門でうっかり八兵衛がお茶の身ながら団子を食べているところ。
日本茶と軽食を提供していたのだ。
これは完全に現代の喫茶店に近いよね。

明治になって、海外の文化が入ってくると導入されたのが「カフェ(喫茶店)」というもの。
パリなんかでは芸術家が集まってサロンとして文化の中心として機能していて、それを持ってきたかったみたい。
でも、最初キハコーヒーを飲む文化がまるでなかったので、牛乳や清涼飲料、軽食を出す業態として「ミルクホール」ができたのだ。
牛乳を飲み始めるのも明治以降だから、それだけでも十分ハイカラだったわけだ。

最初にコーヒーを提供した店と言われているのが、上野黒門町にあった「可否茶館(かつひーさかん)」。
どら焼きで有名なうさぎやのすぐそばだよ。
今でも喫茶店発祥の碑があるのだ。
でも、「カフェー」の名を関する店が出てくるのは明治も終わり。
銀座に3軒のカフェーがほぼ同時にオープンするのだ。
プランタン、パウリスタ、ライオンの3つ。

パウリスタはわりとガチンコスタイルで、本場パリと同じように男性給仕(ギャルソン)がコーヒーと歌詞を提供するスタイル。
震災後に一時撤退したけど、1970年に銀座店は復活しているよ。
「銀ブラ」は「銀座でブラジルコーヒー」の略だなんて説もあるけど、このブラジルコーヒーを提供したのがパウリスタなのだ。
プランタンとライオンはコーヒーだけでなく、アルコールや養殖も提供していたみたい。
それ以上の違いが、女給さんがいたこと!
まさに茶屋の看板娘同様、それ目当てにくるお客もいたとか(洋装の女性自体が珍しい時代だしね。)。
ちなみに、ライオンは今もある銀座ライオンのことで、プランタンは震災後に移転して戦中に営業停止しているのだ。

で、お客を帯び寄せようと、女給さんにサービスさせる店が出てくるわけで。
となりに座ってお酒をお酌したり、会話をしたり、という感じになってきたのだ。
これが震災後くらいのこと。
まさに現代のスナック的な感じかな。
キャバクラとかだと給仕は男性がやっているからね。
で、こうなってくると取り締まりが必要だ、ということになって、戦前には「特殊飲食店」として警察による取り締まりの対象になるよ。
これが戦後の風営法第1号営業の取り締まりにつながるのだ。
※風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項第1号「キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」

こうなると、純粋にコーヒーを楽しみたい人が行く店とすみわけがなされてくるわけで。
そこで生まれた概念が「純喫茶」。
基本は女給が接待せず、アルコールを提供しないことが多い業態だよ。
で、うちは健全な店ですよ、ということをアピールするために、自ら「純喫茶」と名乗るわけ。
現在では「カフェー」という響きに風俗営業のイメージが伴わなくなったのもあってすたれてきているわけだけどね。
むしろ、接待を伴わない店なんだけど、女給さんなどの従業員とコミュニケーションが楽しめて触れ合える店、という、風俗営業ではなく飲食業だけどなんかちょっと不健全な店も出てくることになるのだ。
その代表例がガールズバーやコンセプトカフェ。
どちらも従業員が隣に座ったりしたらアウトなのだ。
ガールズバーなら基本はカウンター越しに会話しないといけないし、コンカフェの場合は飲食物の提供や食器を片付ける際に「ついでに」軽くコミュニケーションをとる、というのが基本。
ずっと張り付いて相手をしちゃうと「接待」になっちゃうので、風営法にひっかかるのだ。

2024/03/16

いわゆる一般的な

 最近ちょっと話題になっているけど、来年から、いよいよキラキラネーム(旧DQNネーム)が規制されるようになるのだ!
世の中はだいぶポジティブに受け止めているみたいだよね。
これでかわいそうな子は減るんだ・・・。
「泡姫(ありえる)」とか「金星(まあず)」とかはさすがに問題あるしね。
「悪魔ちゃん」以来くすぶっていたこの問題もやっと決着しそう。


これは、戸籍法の改正によるもので、令和7年6月8日施行で、戸籍法第13条が改正され、これまで戸籍上は必須ではなかった氏名の振り仮名を記載しなくてはいけなくなったのだ(第一項)。
しかも、この読み方は、「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」とされているよ(第二項)。
具体的には、「氏名の振り仮名に用いることができる仮名及び記号の範囲は、法務省令で定める」となっているので(第三項)、今後しめされていくことになるはずだよ。
この改正自体は、マイナンバー法等の一部改正法(令和5年法律第48号)による戸籍法の改正。
マイナンバーカードには戸籍上の指名が記載されることになっているけど、これにより、その振り仮名も合わせてマイナンバーに記載されるようになるのだ。

で、この経過措置として、現在いっさい振り仮名が記載されていない戸籍に振り仮名を追加する必要があるのだ。
これはこの施行日から1年以内ということになっていて、基本は「一般的な読み方」で記載されることになるんだけおd、現時点で、「一般的でない読み方」をしていて、それを継続したい場合は、個別に振り仮名を届出できる、という仕組みになっているよ。
つまり、「光宙(ぴかちゅう)」君の場合、「光」で「ぴか」は一般的な読み方ではないので、放っておくとこの振り仮名は登録できないのだ!
なので、令和8年6月7日までに「ぴかちゅう」という振り仮名を登録する必要があるよ。
その際、「光宙」で「ぴかちゅう」と呼びならわしてきた実績を示す書類が必要なんだって。
これは、既得権益は保証するけど、このついでに新たに変な読み仮名を登録させないため。

逆に言うと、漢字は普通だけど読み方だけが変な場合は、このときに「一般的な読み方」に直せるわけだね。
「太郎(まいける)」なんて例があるみたいだけど、これは「まいける」にこだわらず、「たろう」でよいということなら、この際「たろう」を正式な読み方として登録できるようになるわけだ。
漢字の字面からしてシャイニングな場合はそうもいかないわけだけど。
ちなみに、いったん読み仮名が正式に登録されると、その変更には、これまでの氏名変更の手続きと同様の家庭裁判所の許可がいつyouになるので、注意が必要。
普通とちょっと読み方が違うんだけど、気に入っている、みたいな場合は、きちんと読み仮名の届け出をしておかないと危ないよ。
(最初の1回だけはミスもあるので許可なしで訂正できるようにはするみたい。)

この作業、膨大な作業が発生しそうだけど、届け出の受付は郵送のほか、マイナポータルでもできるようにするらしい。
この、ほぼほぼ使わないアプリをまた使う日が来るとは。
マイナンバーカードの普及率を考えれば、郵送や窓口受付が殺到しそうだから、デジタルにできればその方が安心な気がするなぁ。
まだちょっと先の話だから、忘れないようにしておかないと。

2024/03/09

漏れ注意

 いよいよ、日本でも4月から肥満治療薬が一般販売されるのだ。
まさに話題になっているのは、大正製薬が一般用医薬品(OTC)として製造承認を受けたアライ(薬品名はオルリスタット)。
ガスターと同じで、薬剤師がいないと売ってもらえないタイプだよ。
一応適用に条件があって、薬剤師から確認を受けたうえで販売されるようなのだ。
でも、飲むだけで痩せる薬と言われると魅力的だよね。
ところが、そうそううまい話がころがっているわけはないはず・・・。

この薬の作用機序は、腸管での脂肪の吸収阻害。
脂肪の多くはグリセロールに3つの脂肪酸が結合したトリグリセリドの形で摂取されるんだけど、これは膵臓から分泌されるリパーゼ(脂肪分解酵素)によりグリセロールと脂肪酸に加水分解され、それぞれが小腸から吸収されるのだ。
この薬は、そのリパーゼの分解を阻害し、体外から摂取した脂肪の吸収を抑えるというもの。
ということは、そもそも糖質は関係ないので、デンプンなどの糖質については自分で節制しないといけないわけだ。
でも、それだけならまだよいのだけど、この作用はほかにも影響してくるのだ。

ひとつは、ビタミンA(βカロテン)やビタミンD、ビタミンEなどの脂溶性のビタミンの吸収率が下がること。
この薬を服用中は気を付けて多めに摂取しないといけないんだけど、これらの脂溶性ビタミンはもともと過剰摂取の弊害もあるので、その辺のバランスをとることが必要だよ。
まあ、OTCで売られる場合はそこまで有効成分が多いわけじゃないから欠乏症が出るほどではないと思うけど。
なので、これは気にしておけばいいくらいの話。

もう一つの方が、けっこうクリティカル。
それは、便がゆるくなる、ということ。
吸収されない脂肪がそのままにゅるっと出ることになるのだ。
よく、深海魚のアブラソコムツやバラムツを食べると、人間に消化できない脂(ワックス)のせいで無意識で大きい方をもらSぢてしまう、という話を聞くけど、それと似たようなことが起きるらしい。
なので、服用当初は、おむつシートの利用も含めて気を付けた方がいいんだって。
おならだと思ったら、の危険性もぐんと上がるようなのだ!
これは人間の尊厳として危険。

なので、購入時には薬剤師から、あまり脂肪の多いものは食べないように、という注意喚起があるんだって。
でもでも、その脂肪の吸収を抑制して痩せる原理なわけで、脂肪の摂取を抑えられるくらいの人ならこのくすりにそこまで頼らなくてもいいんじゃないのか、という気はするよね(笑)
それに、脂肪を抑えて糖質を増やすとけっきょく太るし。
なので、実は販売の条件で、もともと運動や食事制限など生活習慣改善の取組を行っていること、というのが入っているのだ。
ずぼらな、だらけた生活でも、この薬さえ飲めば、ということではないらしいよ。
ま、「漏れ」さえ気にしなければ、いくらでも脂モノを食べられる、ということかもしれないけど・・・。

ちなみに、1日3回1錠ずつで90カプセル入りが8,800円。
年10万円くらいの負担なのだ。
けっこうそそる値段設定ではあるよね。
購入に向けてのチェックシートや生活習慣記録シートなどを記入したうえで薬剤師に確認を受ける必要があるそうなので、購入したい場合は今から用意しておく必要があるよ。
https://brand.taisho.co.jp/alli/

2024/03/02

うるおいを測る

 冬の乾燥に弱いボクとしては、天気予報の湿度情報が非常に大事。
乾燥してくるとすぐに手がカサカサになるんだよね。
指先はざらざらになる。
なので、乾燥しそうな日は、よくよくハンドクリームを塗りこむのだ。
今のお気に入りは馬油入りクリーム。
これがしっとりするんだなぁ。

で、ふと思ったんだけど、デジタルの湿度計ってどうやって計測しているんだ?、ってこと。
小学校高中学校の理科で習ったのは、緩急温度と湿球温度の温度差から湿度を求めるもの。
普通の温度計と、常に水にぬれている状態の温度計の温度差を比べることで、湿度=水の蒸発のしやす=気化熱の奪われやすさがわかるんだよね。
湿球温度の温度が低めに出れば出るほど乾燥しているのだ。
これはわかりやすい。

ちょっと調べてみると、思い当たるのがあった。
それは、髪の毛などの湿度によって伸び縮みするものの長さを測定して湿度を測るもの。
そう、博物館や美術館で展示ケースの中に入っているやつだ!
これは機械式測定器というらしい。
常にぴんと繊維を引っ張っておいて、その引っ張りに要する力で湿度を計測するのだ。
湿度の経時変化を用紙に記録できるのも便利なんだよね。
これもわかりやすいっちゃわかりやすいけど、伸び縮みと湿度の変化を較正(キャリブレーション)するのが大変そうだよね。
ピアノの調律みたいに放っておくとずれてくるんじゃないのかなぁ?

こういうものにたよらないのが、空気の熱伝導率で測る方法。
湿度が高くなる(=空気中の水蒸気量が多くなる)と、熱伝導率が少し下がるんだって。
湿った空気の方が熱を伝えづらいのだ。
熱は赤外線によって伝えられるけど、この赤外線を水分子が吸収してしまうんだよね。
同じように、赤外線よりもう少し波長の長いマイクロ波(電子レンジで使う周波数帯)も吸収されるのだ。
なので、赤外線やマイクロ波の吸収度合い(=空気中でどれだけ減衰するか)を見ると、空気中の水蒸気量がわかるのだ。
人工衛星の中には地球の大気中の水蒸気量を計測しているものもあるんだけど、それはこの方法だよ。


でもでも、さすがにこの方法ではスマホやスマートウォッチで湿度を測れないのだ。
中に髪の毛が入っているわけじゃないし、熱伝導率や赤外線・マイクロ波の減衰も計測するのにそれなりの装置がいるからね。
どうしているかというと、湿度センサというものがあるらしい。
大きく分けると抵抗式と容量式で2種類だって。
これらは素子化できるので、小型電子機器に組み込むことも可能。
やっと計測できる!

抵抗式は、セラミックや高分子の素材で、吸湿・脱湿により抵抗値が変化するものを使う方法。
まわりの水蒸気を吸うと抵抗値が変わるのだけど、ばらつきが大きく精度に欠ける点があるのと、どうしても応答性が悪く、リアルタイム計測できないみたい。
大量に安く作れるんだけどね。
もうひとつの容量式は、吸湿・脱湿により静電容量が変化する高分子膜を使う方法。
こちらは薄い膜なので応答性もよく、静電容量と水蒸気量がきれいに相関しているので、センサとして優秀みたい。
当然、コストは少しお高めとか。

というわけで、デジタルの湿度計はきっとこういうセンサを使っているのだ。
これらセンサだと電気的に計測できるから出力もしやすいしね。
iPhoneの中に温度計が二つ入っているわけではなかった!

2024/02/24

高菜、食べてしまったんですか?

「高菜、食べてしまったんですか?」と言えば、有名な意識高い系のラーメン屋さんコピペ。
スープの味を大事にしているから、まずはスープから飲んでほしい云々。
で、ラーメンを待つ間にテーブルに置いてあった高菜をつまんでしまったお客は食べさせてもらえず帰されるのだ。
高菜を食べてしまうと、繊細なスープをきちんと味わえないからとか。
で、同じような話として、寿司屋ではまず淡泊な白身から初めて、トロやウニのような濃厚なものは後、穴子なんかは最後、みたいなのがあるよね。
先に濃厚なもの、味の濃いものを食べてしまうと、鯛や平目のような白身の魚の味のうま味は感じられなくなる、ということらしい。

確かに、その間に何も口の中に入れな蹴れればそうかもしれないけど、鮨の場合は途中にガリやお茶を口に入れるからねぇ。
ガリはショウガの辛味で口の中をすっきりさせるとともに、ショウガの辛味で唾液の分泌を高めるのだ。
もともとは殺菌効果を狙ったものだろうけど、口の中がさっぱりするよね。
寿司屋特有の熱いお茶も、口の中の前のネタの味を洗い流すため。
脂ののったネタの場合、それが口の中に残っていると次のネタの味に混ざるからね。
これを熱いお茶で洗い流すのだ。
もともと水に溶けにくい物質なので、熱いお茶がいいというわけ。

いわゆる魚の生臭みの下は、腐敗の過程で出てくるトリメチルアミン。
これは水によく溶けるので、水分を拭き取ってあげるとかなり軽減するのだ。
塩を振って水分を表面に出し、それを拭き取ると臭みがとれるよ。
口の中が生臭くなったなぁ、と思ったら、とりあえず水を飲めばいいわけだ。
今ほど冷蔵技術や流通が発達していなかった頃は、どうしても鮮度が落ちたネタしかないので、この腐敗やそれに伴って出てくる臭み対策が重要だったわけだよね。

なので、塩や酢、昆布で締めたりして水分リョを減らして腐敗を進みにくくする。
或いは、塩分濃度の高いタレに漬けることで腐敗を防ぐ。
こういうのがネタの基本。
トロみたいなネタはすぐに腐るので江戸時代は食べずに捨てていたとか。
ウニなんかも新鮮な状態で長距離運べないので、山地から遠いところでは塩ウニとかにしないとダメなのだ。
ま、江戸時代はウニの寿司はないだろうけど。

で、この頃は寿司は軽食、ファストフード扱いで、基本は立ち食い。
おにぎりくらいの大きさの寿司を包丁で二つに切ってもらって食べていたらしいよ。
なので、寿司は一皿2貫が基本と言われるよね。
で、そういう食べ物なので、お酒とともにゆっくり楽しむ、というものでもなく、さっと来てさっと食べる、みたいなものだったらしい。
なので、寿司に合わせるのは、簡単に出せる粉茶が基本で、ネタもそんなに鮮度がよくないのもあって、口の中に残る臭みを洗い流すのだ。
食べた後はのれんで指先を拭くのが基本だったので、はやりの寿司屋はのれんが汚れていたとか。

というわけで、もともとはそういう食べ物なので、あんまり順番とか考えるようなものでもなかったんだよね(笑)
好きなものをつまめばいいだけ。
なので、こういう味が濁るみたいな話は、寿司が高級化してからの話なのだ。
そういう意味では、このコピペはラーメンが高級化する過渡期なのか。
たしかに、海外ではラーメンってけっこう高級な食べ物なんだよね・・・。

2024/02/17

リリース&キャッチ

 ネパールの地元政府は、エベレスト(チョモランマ)の登山者に対し、排泄物の持ち帰りを義務付けることにしたそうなのだ。
ちなみに、登山前に、中で排泄物を固形化・無臭化する特殊な袋を渡し、ベースキャンプまで持って帰ってもらうのだとか。
これまでもゴミの持ち帰りを求めてきたけど、今回はさらにその上を行く話。
プラスチックのような生分解性でないものについての持ち帰りは当然と思うけど、なぜ排泄物も持ち帰らないといけないのか?
ちょっと穴を掘って埋めておけばかえって肥料になるようなきもするけど・・・。
これには、8,000mを越える高さを誇る高山であるが故の理由があるのだ。

そもそも、エベレストの山頂付近のような超高度の場所だと、ものが非常に腐りにくいのだ。
バクテリアやカビがいないということはないけど、年中低温なので腐敗反応が進みづらいんだよね。
なので、生ごみのような放っておけばくさるようなものでも、エベレスト山頂付近ではほぼほぼずっとそのまま残って、水分だけ抜けていくんだよね。
昆虫の類もいないので、かじられたりすることなく、しぼんでいくだけ。
冷蔵庫の奥の方で見つかる、数年前の食材のように・・・。

つまり、し尿についても同様で、穴を掘って埋めておいても冷やされた、或いは、氷漬けになったし尿のままなのだ!
臭いはとんでいるだろうけど、自然に帰るわけではないわけ。
実際、エベレストのような高山の場合、山頂付近で人がなくなると、担いでは下りられないケースも多く、そのまま放置するしかないんだよね。
でも、その死体は腐らないので、そのまま残るのだ。
エベレストの場合は年中氷点下なので氷には覆われるらしいけど、近年は温暖化の影響で再び露出してきた死体もあるみたい。
っていうか、死体の中には「グリーンブーツ」よ言われるもののように目印になっているものとあるんだって。
天然にミイラができちゃうわけだよね。
アルプスの氷河で見つかったアイスマンのように。

地上で死体を放置した場合は、仏教で諸行無常を説くために使われる九相図(くそうず)にあるように、徐々に腐敗していくのだ。
内臓から腐り始めて発生するガスでおなかが膨らみ、肉や皮膚がボロボロになって溶解しだすのだ。
その後、ウジがわき、鳥獣がついばんで骨についた肉もこそげていき、最後は白骨が残る、という感じ。
こういう過程が進まず、そのまま少しずつ水分だけ抜けていくんだよね。
エベレストの場合は、そもそも近年になってからしか登山者の事故死が発生していないので、ミイラと呼べるほどには乾燥はしてなくて、普通に氷漬けの死体があるみたい。
アルプスのアイスマンの場合は、数千年の時を経て乾燥して自然ミイラになっているのだ。
おそらく、エベレストの死体もこのままだと数千年後にはそうなる感じ。

エベレストくらいの高度になると、空気が薄すぎて浮力が得られず、ヘリコプターが使えないそうな。
なので、重いものでも人力で運ぶしかないのだ。
そうなると、なかなか死体を下ろす、という感じにはならないんだよね。
ボランティアでゴミを持ち帰る運動はしているみたいだけど、今のところは死体には手つかず。
ばらしたりしたらひょっとしたらが運べるかもしれないけど、それはそれで死体の尊厳の話が出てくるよね。
そんなこんなでそこは手を付けないみたい。

一方で、山頂付近で発生するごみや糞尿は、もともと登山者が持ってこられたほどの重量のものなので、当然持って帰ることができるもの。
だからこそきちんと持ち帰りましょう、ということなんだよね。
この山からのごみの持ち帰りはエベレストのような高山の話だけではなくて、日本では富士山でも問題になっているんだよね。
富士山では入山料(任意)をとってバイオトイレを整備したりもしているけど、世界遺産登録されてから観光客も増えてごみ問題が大きくなってきているみたい。
さすがに富士山は山頂付近にもトイレはあるみたいだけど、せめてごみは持って帰らないとね。

2024/02/10

草を食む

 ドンキで安売りしていたので「ヴィーガン・グミ」というのを買ってみたのだ。
完全植物由来原料なんだって。
味はというと・・・。
なんかちょっと固くて、もそっとしてる。
普通のグミの方がおいしいと思うけど、グミの主成分であるゼラチンは、塗擦された家畜の食肉に加工されなかった部分(牛豚の骨や皮、鶏の足とか)を原料にしているので、ヴィーガンには食べられないのだ。
なので、グミは食べたいけど、というニーズに基づいた商品なんだよね。
とはいえ、あまり売れなかったからドンキで安売りされているんだろうけど。


ヴィーガンは完全菜食とも呼ばれるけど、単に、その思想の根底に、「人間が生きるために動物を犠牲にするのに反対する」というコンセプトがあるので、牛乳やハチミツもだめなのだ。
動物から搾取してはいけないんだって。
毛皮や革製品もだめ。
むかしなら到底生きていけないようなライフスタイルになるけど、合成皮革とかもある現代だと何とかやっていける感じだね。
で、そういう思想だからこそなのか、自分がそういう生き方をするというだけでなく、まわりの人にも「啓蒙」しようとしてくるのだ。
これがネット上とかでヴィーガンが嫌われる原因でもあるんだよね。
欧州では肉屋さんを集団で襲ったりもするらしいから本当に過激なんだけど。

で、どの世界にも「行き過ぎ」は出てきて、ヴィーガンの例で言うと、赤ちゃんや子供に親がヴィーガン食を強制することで、栄養失調になったり、場合によっては亡くなったりする例が知られているよ。
牛乳もだめな中で植物しか食べないと、どうしてもタンパク質が不足するのだ。
これは子供には痛い話。
大人であっても、ヴィーガン食では必須脂肪酸(特にω3系)やビタミンB12、ビタミンDが不足しがちだと言われているよ。
なので、現代のヴィーガンはこれらの栄養素をサプリで補給するとか。
一応、そのサプリの原料も動物由来でないことを確認しているそうな。

で、ふと思ったんだけど、日本の禅宗における精進料理って、ヴィーガン食なんだよね。
もともと牛乳を食材としていないからそこもOK。
でも、けっこう禅宗のお坊さんって長い間修行しているけど栄養失調になったみたいな話は聞かないような・・・。
隠れて食べている、なんてことを言う人もいるけど、日本の精進料理の場合は、大豆加工食品を大量に使うことで、タンパク質の不足問題は解決しているのだ。
豆腐や油揚げ、がんもどき、湯葉は豆乳を加工して作る食品で植物由来食品としてはタンパク質が豊富。
今でいう代替肉の大豆ミートみたいなものだからね。
さらに、味噌やぬか漬けのような発酵食品をとることで、ビタミン類も補給しているのだ。
わりとキノコもよく食べるので、シイタケからビタミンDも摂取できるのだ。

問題はビタミンB12。
これは動物性食品だとわりと含まれているのだけど、逆に、植物性食品にはほとんど含まれていないのだ・・・。
そんな中、」植物性で比較的多く含んでいるのが海苔。
禅宗の精進料理で海苔がたくさん出てくるようなイメージはないけど、食材として使わないわけではないよね。
おそらくはこれが鍵だと思うのだ。
それでも、不足しがちにはなるんだろうけど、重篤な欠乏症にはならない程度じゃないかな。

精進料理の方が欧米式のヴィーガン料理より栄養学的には優れているようにも見えるけど、そうでないところも当然あるわけで。
欧米式では生野菜や果物を摂るので、ビタミンCは全く問題なく摂れるのだ。
ところが、日本には生野菜を食べる習慣がほとんどない。
精進料理の野菜はゆでたり煮たりされている!
なので、実は緑茶でビタミンCを補給しているんだよね。
禅宗で常にお茶を飲むのには合理的な理由があるわけだね。

2024/02/03

100億年の孤独

 仏教には、弥勒菩薩(マイトレーヤ)という仏様がいるのだ。
現在は兜率天で修業中の身だけど、釈迦牟尼の次にブツになることが約束されている「未来仏」。
なんと、釈迦の入滅後56億7千万年後にあらわれるとか!
っていうか、地球が誕生したのが46億年前、地球に原始生命が現れたのが40億年前と考えられているので、これまでの地球の歴史以上の長さののちにやってくるのだ。
100億年単位の話だよ!
その前に太陽の膨張によって地上に人類はいないような気がする・・・。

一応これには計算があって、弥勒菩薩が修業をされている兜率天での寿命は4千年。
兜率天での1日は地上の400年に当たるので、4,000兜率天年×400年/兜率天日×360兜率天日/兜率天年=576,000,000年となって、5億7千6百万年になるのだ。
ところが、途中で記載ミスがあって伝承されたのか、一桁上がって7と6が入れ替わり、56億7千万年になったらしい。
インド人はそういう細かいところは気にしないんだよ(笑)
気の遠くなるような永遠の時間の果てにやってくる、というイメージなんだろうなぁ。

もともと、古代インドの伝統的なコンセプトとして、輪廻転生(サンサーラ)というのがあって、今の人生を終えても次にまた別の生命として生まれ変わる、今の人生の前も別の生命として生を全うしていて、それが繰り返される、とされているのだ。
はじまりがどこかはよくわからないけど、前世と来世が今世とセットになっているわけだよね。
でも、どの世界にどんな生命で生まれて来ようとも、六道(天・修羅・人・地獄・餓鬼・畜生)はすべて苦しみのある世界であって、そこから抜け出すこと(=解脱)でのみ苦しみから解放される、ということになっているんだよね。
そのために修業する必要があって、抜け出せた人は悟りを開いた人(=仏陀)になるのわけ。
でも、実はこの輪廻転生の考え方って、おそらく「死」というものへの恐怖、漠然とした不安の裏返しなのだ。

生命活動の終わり=死であるならば、死んだらそこで終わり、その先は何もないわけ。
そもそも意識が途切れるので、死は無になることなのだ。
これが「怖い」わけで、死んだらそこでぷっつりと何もかもが切れてしまって、自分というものが無になる、これが受け入れがたい。
なんとか死んでから先も自分というものが保持できないか。
そんな思想から、生と死を繰り返すみたいなアイデアが出てきているはず。
であれば、このサイクルから抜け出すことは恐怖で、死を避け、生に執着すればするほどこの輪廻転生サイクルを意識してしまって、出ることはできないのだ。
だからこそ、その執着を捨て、すべて、すなわち、無になることを受け入れないと、解脱はできない、という考え方にもなるのだ。

で、いつかは抜け出したいんだけど、それはまだいまではない、みたいになるわけで。
救済が来ることが分かっているからこそ苦しみに耐えられる、でも、その過程で生も謳歌する、ということ。
そうなると、ゴールは設定するんだけど、それは意識の外にあるような遠くにある方が都合が良いわけで、こういう途方もない数字、現実的に想像できないような遠い未来に設定してしまうんだよね。
最終的にはそこで救われることが確定しているという安心感と、今すぐに無に帰するわけではないというもうひとつの安心感を同時に得たいわけなのだ。
こういう考え方をしてしまうことこそが煩悩の塊なのかもだけど。

釈迦を中心とした原始仏教集団ができる前からこの思想は古代インドにあったらしいので、相当古いというか、人間の根源的なところに根差している考え方かもしれないのだ。
でも、もう少し時代が変わっていると、もっと近くに救済があってほしい、と思う人々が増えてくるのだ。
それはきっと戦乱とか飢饉とか社会不安が大きくなって、現世の苦しみがより耐え難いものになってきて、すぐにでも救いが欲しい、ということなんだよね。
そうして出てくるのが浄土思想。
阿弥陀如来の主催する西方浄土に生まれ変わって、弥陀の導きで解脱したい、というもの。
これは末法思想が広まってからのことのようなので、やはり社会不安が増大している時期に出てきた考え方だと思うんだよね。

浄土思想では、弥勒仏の到来を待つことなく、ただひたすら阿弥陀仏にすがって、他力本願で極楽浄土を目指すのだ。
今世は何とか我慢するにしても、もう我慢できない、次は苦しみから逃れたいう、という切なる願いだよね。
しかも、ポイントは、自分でどうこうできるレベルを越えているので、ひたすら弥陀の力にすがる、ということなのだ。
そこまで追い詰められていて、ただただ救われたいと願うのみ、もうほかにしようがない、というくらい。
その最たるものが「補陀落渡海」で、南方にある浄土、「補陀落」に行くため、南方に臨む海岸から死出の船旅に出るのだ・・・。
今の人生を生き切って弥陀に巣くってもらうのも待ちきれない、ということなんだよね。

さて、令和の今も社会には大きな不安があるよね。
特に今年になってすぐにいろんなことが起きているのだ。
こういう時代に心の安寧を保つためにはどうするのがよいのか。
気長に待つか、ちょっとがまんするか、もうがまんできないとすぐに逃げ出すか、考えどころだよね。

2024/01/27

朝の定番も脂がのってきた

 日本の朝ごはんの定番と言えば、塩鮭、納豆、海苔、生卵なんかだよね。
さすがにこの御時世にこれらをフルセットで食べている家庭は少ないけど、外食の朝食セットでは良く見る顔合わせ。
ちょっとした旅館の朝ごはんはこんな感じで、少し豪華になると、朝から鍋とか出てくるんだよね(笑)
でもでも、世代的に、朝食べる魚と言えば、塩鮭がまず思い浮かぶのだ。
でも、おそらくボクが子供のころに食べていた塩鮭と、現在スーパーで普通に売られている塩鮭は異なるものなのだ。
なにより、塩分量が違う!

むかしの塩鮭はとにかくしょっぱかったよね。
身もぎっしりとしまっていて、脂もあんまりのっていないイメージ。
その塩辛い鮭で白ごはんをいっぱい食べるのだ。
お茶漬けなんかにも合うんだよね。
っていうか、戦前までの日本式の食事は、とにかく塩辛いおかずで大量の白飯・米を食べるんだよね。
佃煮でも漬物でも、今よりはるかにしょっぱかった記憶があるのだ。
最近は健康志向で減塩が流行っているし、そもそも糖質を取りすぎないようにとか言って白飯・米を食べる量が減っていて、塩味が薄れているのだ。

でも、鮭の場合はそれだけではないのだ。
っていうか、モノが違うのだ。
むかしの塩鮭は、天然物の白鮭。
産卵期に川に遡上してきたもの、或いは、川に遡上しようと河口付近に来たものを獲って塩漬けにしたものが塩鮭だったのだ。
わかりやすいのはお正月の新巻鮭。
もともと保存性を高めるために内臓をとってそこに塩を詰め込んでいるんだけど、脂がのりすぎていると腐敗しやすくなるので、冷たいオホーツク海を回遊している脂がのっている状態よりは、川の手前まで来るくらいで適度に脂が落ちている方がよかったのだ。
そもそも、かつては脂がのりすぎていない方が好まれていたしね。

しかし、ここで転換期が訪れるのだ。
それは、養殖鮭の登場。
一般に養殖鮭は銀鮭が多いけど、これは本来は千島列島以北のカムチャッカやアラスカの川で生まれた鮭。
成長が早く、脂ものりやすいのが特徴で、塩鮭にしてもよいけど、完全養殖の場合は寄生虫フリーなので生食できるのだ。
つまり、刺身や半生の状態でも食べられるというわけ。
もともとサーモンの生食はタイヘイヨウサケを養殖したノルウェーサーモンから始まっているけど、国産では、養殖の銀鮭が食べられるようになってきていて、国債のサーモン刺身と言ったらこれだよ。
それまでは、アイヌ伝統のルイベのようにいったん冷凍して寄生虫を殺してからじゃないとだめだったのだ。

養殖物の銀鮭の場合、その特徴はとにかく脂がのっていること。
養殖マグロは全身がトロと言われるけど、基本的に、いけすの中であまり運動せずとも十分な餌が与えられるので、肥満状態になるのだ。
で、その身は、刺身やスモークサーモンに向いているんだよね。
焼く場合も、そのままソテーなんかにするのは脂がのっている方がおいしいのだ。
でも、塩鮭の場合は、あんまり脂がのっていると向いていないんだよね・・・。
ところが、塩鮭に塩をきかせなくなったので、今度はこういう脂がのったものを甘塩でふっくら焼く焼鮭が増えてきたんだよね。
牛丼チェーンの朝食メニューに出てくるようなやつ。

なので、スーパーで売っている甘塩の塩鮭はたいてい銀鮭。
ソテーやフライ用の大ぶりの切り身はアラスカ産のキングサーモン(マスノスケ)。
高齢者向け(?)に売られている、塩味がきつい、昔ながらの塩鮭は白鮭なのだ。
そういう目で巣商品をきちんと見てみると面白いよ。
鮭も適材適所で別種が選ばれているのだ。

個人的には、健康には悪いと言いながらも、塩鮭は塩がきいている、ちょっと固いくらいの鮭がいいんだよなぁ。
脂がのっている鮭はときどき生臭いやつがあって苦手なのもあるけど。
これはもう別物なので、きちんと選びましょうってことだね。
ただし、なかなか塩がきいた塩鮭は見なくなってきているけど。
売れないんだろうなぁ。