2012/12/29

きっちり納めましてございます。

昨日で官公庁は御用納め。
原則として、12月29日~1月3日が年末年始のお休みなのだ。
三が日が明ければ御用始めで、また新たな年のお仕事が始まるんだよね。
欧米人がクリスマス休暇だと言って12月をほぼまるまる休むのに比べると、日本人は謙虚だよね・・・。

官公庁の休みは、行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)で定められていて、土曜日曜、祝祭日に加え、第1条第1項第3号で「十二月二十九日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。) 」と別に定められているのだ。
ちなみに、わざわざ括弧書きがあるのは、1月1日の元旦は国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)で定められている祝日なので、すでに休みであることが規定されているため、重複を防ぐために入っているのだ。
ややこしいね(>o<)
なお、今後天皇誕生日がこの期間中に入り込むことがあれば、その日も除外されることになるよ。

一般企業については、普通に仕事納め・仕事始めと言われるよね。
大概は官公庁の休みに合わせているところが多いけど、銀行なんかは年末は12月30日まで窓口が開いているし、おもちゃ屋さんなんかはお年だめ目当てで元日から営業していたりするよね。
ま、最近では年中無休でそもそも年末年始に休みがないコンビニやスーパーなんかも多いけど。
金融業界、特に証券取引所だと、これが大納会・大発会になるのだ。
大納会では手締めの様子がニュース映像で流れるし、大発会では女性が着物姿で取引所で働いているよね。
昭和の時代は仕事始めの日は実際には集まるだけで通常モードの仕事はなしで、女性職員は着物で出社したりもしたらしいけど、平成の御時世ではもういきなり通常のお仕事が始まってしまうので、そういうのもなくなってしまったよね(ToT)

大掃除はもともと煤払いと呼ばれる年中行事で、1年間の間に積もりに積もった煤を払い、家を清めて歳神を迎えるためのものだったのだ。
門松は歳神の依代、鏡餅は歳神への供え物だよ。
で、江戸時代なんかは基本的に徒歩で帰省する必要があるので、今のように年が押し迫ってから大掃除をするのではなく、旧暦の12月13日に行われるのが一般的だったのだ。
つまり、そこでもう年内の商売は締めてしまって、地方から出てきている手代や丁稚が帰省して故郷でお正月を迎えられるようにしたものなのだ。
今ならもう国内なら1日あればたいていのところには帰れるから、もうそんなに長い休みは取れないね・・・。

年が明けての年中行事は初売や初荷。
消防関係者の出初式なんてのもあるのだ。
デパートの初売、中でも福袋はもはや風物詩となっているよね。
今では正月2日からが当たり前なのだ。
かつては官公庁と一緒で、三が日は休むのが当たり前で、下手すると松が明けるまで休み(=7日まで休み)も多かったのに、最近では元日しか休まないことも多いのだ。
便利だけど、正月らしいゆったりとした雰囲気はもうなくなりつつあるよねorz

郵便業界は年賀状の配達があるから、元旦の朝早くから配達出発式というのをやっているのだ。
実際には大晦日から徹夜で準備しているんだろうけどね(笑)
その代わり、郵便関係は2日がお休みなんだよね。
年賀状は元日の次は3日に届くのだ。
2日は何曜日だろうと、いくらポストを見張っていても年賀状は入ってこないよ(笑)

2012/12/19

世界はまだ、生きているか?

とうとうやってきたのだ!
その名も「イヤー・ゼロ」。
なんでも、マヤ暦では、2012年12月21日で暦が終わるとしていて、地球の滅亡を予言しているんだそうだよ。
いやあ、まいったなぁ(笑)
1999年の年末も、ノストラダムスの予言だとか、コンピュータの2000年問題だとかいろいろあったけど(その組み合わせで、コンピュータの誤作動で全面核戦争に、なんてのもあったっけ。)、今回も世界中で騒いでいる人がいたみたいだね・・・。

マヤ文明は、中米に栄えていた文明のひとつで、巨石建築で知られるのだ。
チチェン=イツァーの遺跡なんかは世界遺産にも登録されているよね。
その特徴は、青銅器や鉄器などの金属器を持たず、太陽信仰に基づく生け贄の儀式が盛んに行われていたこと。
そして、それより注目したいのは、天文学と数学が発達していて、かなり正確な暦を作っていたということなのだ!
一時期はグレゴリオ暦より正確、なんて話もあったけど、実際にはそこまでではなかったみたい。
でも、肉眼で太陽と星を観測するだけで暦と実際の季節のずれを相当正確に計算していたみたい。
これが都市伝説のもとにもなっているんだよね。

マヤ文明については、あまり文書は残っていないものの、遺跡にたくさんの石碑があって、そこから歴史や文化を知ることができるのだ。
暦のことがわかったのもそれで、石碑の文を解読して、マヤの人々が暦年をどこまで正確にはあくしていたかが判明したんだよ。
で、それを読み解く中で、マヤの暦には地球の公転(太陽の運行)をもとにした約360日周期のほかに、儀式などに関係する13と20を組み合わせた暦が存在していたようなのだ。
太陽暦の方はハアブ、儀式暦(神聖暦)の方はツォルキンと言うんだって。

さらに、紀元前3114年に置かれた基準日から、この太陽暦と儀式暦を組み合わせたさらなる長周期の暦が考えられていて、それは長期暦と呼ばれているのだ。
マヤ文明で歴史的なことを記述するのに使われていたようで、石碑や壁画などに現れるんだ。
これのおかげでマヤ文明の年代決定はけっこう簡単にできるみたいだよ。
この長期暦は20進法になっていて、1日=1キン、20キン=1ウィナル(20日)、18ウィナル=1トゥン(~1年)、20トゥン=カトゥン(~19.7年)、20カトゥン=1バクトゥン(~394.3年)、20バクトゥン=1ピクトゥン(~7885年)、・・・となっているんだ。
(太陽年と合わせる関係で途中で1回だけ20進法から外れるところがあるのだ。)

これは単なる時間の数え方に過ぎないんだけど、マヤの現存している暦では、「第五の太陽」(今の時代)は、13バクトゥン(5125年あまり)続く、となっているんだって。
これがどこから数えるかよくわからないんだけど、さっきの長期暦の基準日から計算すると、だいたい2012年の冬至付近(12月21日~22日)になるそうなのだ。
で、ここから、マヤ暦では、これ以降の歴史を想定していない=>世界が終わる、ということにつながっていったみたい。
実際には、ずれた日付で計算されている例もあるんだけどね(2011年10月28日だから、もうとっくに過ぎているけど。)。
もともとある終末論と合わさって変な感じになっているけど、マヤ文明では一切世界が終わる予言はしていなくて、マヤ文明の末裔とされるホピ族の予言なんて言われているけど、それも眉唾みたい・・・。
ま、ノストラダムスの予言と同じように、終末論大好きな人が世界が滅亡するようにしたかっただけなんじゃないかな。
さらに、最新の研究の結果、マヤ人は少なくとも20バクトゥン=1ピクトゥン=約7885年くらいの暦は計算していたようなので、まさしく基準日から5000年程度で終わるとは考えていなかったこともわかっているのだ。

というわけで、まだ世界は続きそうだね(笑)
ちなみに、かの高名な雑誌「ムー」でもこのマヤ暦の特集をしてあおっていたけど、しっかり来年号の宣伝もしているから、きっと大丈夫だよ。
きっとオカルト関係者は次の終末論を探しているのだ。

2012/12/15

たたいて、耳を澄ませば

中央道の笹子トンネルの崩落事故は大きな波紋を生み出しているね。
同じくらいの時期に行われた公共工事全体の健全性や、その胃jきかんりの安全性疑問が持たれているのだ・・・。
建設ラッシュになったバブル期の質の悪いコンクリートには海砂が使われているのでもろくこわれやすい、なんていうけど、多少コストはかかっても、人命優先できちんと調べ直してほしいものだよ。
検査自体が「ずさん」に行われていた、なんていう疑惑もあるのだけど・・・。

今回話題になった検査が「打音検査」。
非破壊検査のひとつで、専用のハンマーでたたいて、その反響音で見えない内部の様子を探る手法なのだ。
ニュースなんかで試しにやっていたけど、音が違うな、というのはわかっても、それがどういう理由でそうなっているのかがわかるようになるまでには熟練がいるだろうね。
実はトンネルだけじゃなく、橋梁や建造物など、非破壊で内部の様子を知りたい場合によく使われているみたいなのだ。

たたいて調べる、といううのでボクがすぐに思いつくのは缶詰の工場。
「打検士」という特殊なスキルを持った職人さんたちがいて、パチンコ玉大の金属の玉がついた棒で缶詰をたたいて、不良品を見分けているのだ。
昭和51年以降は資格試験が実施されていないので、どんどん減ってきているらしいけど・・・。
缶詰の場合は、ベルトコンベアーにX線による非破壊検査を入れればいいので、今はそっちにシフトしてきているんだろうね。
でも、今でもたたいて調べている工場もあるのだ。

缶詰の場合、中に大きな空隙があったり、異物が混入していたりすると、たたいたときの反響音が変わってくるのだ。
その原理はいいし、おそらく、素人でも時間をかけて何度もたたいて音を比べてみればわかるのかもそれないけど、プロはベルトコンベアの上を流れて来る缶詰を次々とたたいて、「異音」がする缶詰だけを除いていくのだ。
実際に開けてみると、果たして、中身が半分しか入っていなかったり、異物が混入していたり、実がなくて液だけだったりするみたい。
X線だと画像で見られるので、便利は便利だよね。
ただし、魚群探知や海底の地形把握にも音波の反響音をソナーで見ているんだけど、これは画像化できているから、自動でたたいて反響音で分析するような装置を作れば、缶詰の打検も画像化できないわけじゃないはずなのだ。
ま、無理してやる必要がないだけだろうけど(笑)
(缶詰の中身が放射線の影響を受けるようなものの場合なら需要はあるかな?)

で、トンネルなんかの打検も原理は同じで、たたいてみると、ボルトが緩んでいたり、中でボルトが割れていたり、あるいはコンクリート内部に亀裂が入っていたりすると反響音が変わってくるんだって。
一般に、健全な状態だと高くすんだ音がするけど、中に異常があると鈍く低い音がするそうだよ。
ま、そんなこと言っても、これは経験を積んで覚えるしかないわけだけど。
げんりてきには、X線や電磁波(遠赤外線とマイクロ波の間のテラヘルツ波など)、中性子線などを使って非破壊検査をすることもできるけど、ポータブルなよい機会がないことが問題。
人の手でやると、人が潜り込めるスペースがあれば検査できるのが魅力だよね。

反響音については、イメージ的に管楽器を思い浮かべるとよいのだ。
管に穴が開いていて、その穴をふさぐことで音の高低を変えられるよね。
誰もが通る道であるリコーダーで考えると、穴を全部ふさぐと低い「ド」の音になって、最上部の裏と表の2つの穴だけふさぐと「シ」の音になるのだ。
これは穴をふさぐことで「共鳴管」の長さを変えているんだよね。
共鳴管が長くなると、共鳴波長が長くなる(共鳴周波数が低くなる)のでより低い音になるし、共鳴管が短くなると逆に高い音になるのだ。

おそらく、打音検査も同じで、内部に亀裂が入っていたりすると、通常許容されている隙間より大きな隙間がコンクリート内部に発生していて、共鳴する空間が広くなるから、より低い音で共鳴するはずなのだ。
ボルトも、緩んでいるとその分ボルト穴に隙間ができて、共鳴空間が広くなるんだよね。
トロンボーンのように共鳴管が長くなって低い音がするのだ。
その他、均一な構造ならしないはずの雑音も発生するはずだよね。

原理的にはよくわかるんだけど、実際にトンネル内で作業していて音を聞き分けるのはまた難しいんだろうなぁ。
どれくらいのポイント数で調べればいいかという問題もあるしね。
なかなか奥が深いのだ。
これも熟練の技だろうから、しっかり検査を継続しつつ、後継者を育てていかないと。

2012/12/08

太陽系を越えて、無限大の彼方へ

最近ニュースで知ったんだけど、米国の探査機ボイジャー1号が太陽系の「へり」を航行していて、まもなく太陽系を脱出するらしいのだ。
ここで言う「太陽系」というのは、太陽風の影響が及ぶ範囲のことで、その外側に行くと星間物質のみで構成される宇宙空間になるよ!
これこそまさに未踏のフロンティアなんだけど、そもそもどこまで太陽風が来ているのかもわかっておらず、思ったより太陽系が広くってまだ出られていない、っていうのが米国航空宇宙局(NASA)の発表なんだよね(笑)

ボイジャー1号が現在飛んでいるあたりはへリオポーズと呼ばれる領域。
ここは太陽風(太陽から出ている超高温で電離したプラズマ)と星間物質が混じり合っている領域で、境界面にあたるそうなんだ。
身近な例で言うと、河口付近の汽水域みたいなものかな?
太陽から発せられる太陽風は、外側に行けば行くほど薄まって弱まっていくけど、星間物質と衝突したり、星間地場で減速されたりして、やがて速度がゼロになる=太陽風が止まる地点があるのだ。
そこが末端衝撃波面。
そこから先は星間物質と太陽風が混ざり合う領域のヘリオシース。
完全に混ざり合って均一な状態になっているのが今いるへリオポーズ。

へリオポーズは太陽の周りにあって、太陽と一緒に銀河の中を公転しているんだけど、このへリオポーズが公転する際に星間物質と衝突して、バウショックと呼ばれる衝撃波面が形成されるのだ。
これが正真正銘の太陽系の境界面で、この先に行くと、太陽からの磁場の影響がなくなり、星間物質からの磁場の影響のみを受けるようになるので、磁力線の向きが変わるはずなのだ。
なので、その時点で太陽系を脱出したかどうかがわかるらしいよ。
ただし、バウショック自体も100~1000kmくらいの厚さがあると考えられているので、ある一瞬を越えるといきなり磁場の向きが変わるということではないみたい。
いずれにせよ、ボイジャー1号は太陽から最も遠いところにある人工物なのだ!

もともとボイジャー計画は惑星探査計画であるマリナー計画の一部として始まったもので、たまたま惑星の配置がよく、木星・土星に行くついでに天王星、海王星にも寄れる可能性があったことから、より遠くの外惑星を探査することも視野に入れて計画されたのだ。
後にも先にも天王星や海王星の画像を撮ったのはボイジャーだけだよ。
この計画では、マリナー計画に引き続き、惑星の重力をうまく使ってか減速するスイングバイ航法が採用されていて、それによって木星を越えてさらに航行することが可能となっているのだ。
ボイジャー計画では、1号と2号の2つの探査機が昭和52年(1977年)に打ち上げられ、以来ずっと宇宙を旅しているんだよ。
両方とも750kgくらいの大きさだから、はやぶさとあんまり変わらないんだね。

でも、はやぶさの場合は太陽電池搭載で、太陽光発電で電力をまかなっていたけど、ボイジャーはそうではないのだ。
通常太陽光発電で電力がまかなえるのは火星と木星の間の小惑星帯くらいまで。
がんばれば木星あたりでもいけるらしいけど、その先の土星となるともう光が弱くなってしまってだめなのだ(>o<)
そこで、さらに遠くに行くボイジャーに採用されているのは原子力電池。
プルトニウムが熱源として搭載されていて、アルファ崩壊するときに出てくるアルファ線が吸収されるときに出てくる熱を熱電変換素子で電気に変えているのだ。
発電効率は悪いのだけど、長期間にわたって安定的に電力を供給できるんだよね。
どうしても火星より先に探査機を飛ばそうとすると必要な技術なのだ。

この電池は、打上げが失敗すると放射性物質がばらまかれるおそれがある、という大きなリスクがあるのだけど、電源としては優れもので、ボイジャーも2020年くらいまでは観測したデータを地球に送るくらいの電気がまかなえるらしいのだ。
ということは、50年くらいもつんだね。
ちなみに、地球から一番遠いところ、太陽から約180億km離れたところにいるのだ。
すると、地球と通信するだけで片道13時間超。
実は、携帯電話より弱いくらいの電波を出しているだけで、地上の超大型アンテナでその微弱な通信電波を補足しているんだとか。
ちなみに、太陽から最も近いとされる恒星はケンタウルス座のアルファ星で、太陽から約4.37光年の距離なんだけど、今のスピードで飛び続けても、ボイジャーが到達するには8万年以上かかるらしい・・・。
宇宙って広い!

現在は太陽系脱出ミッションになりつつあるボイジャーだけど、もともとは外惑星探査ミッションで、初めて天王星や海王星の鮮明な画像を撮ったり、木星・土星の新しい衛星を発見したりと大活躍。
それが、ろくにコンピュータもない、1970年代に開発されているんだからすごいよね・・・。
2号の方はトラブルもあったみたいだけど、まだ現役でデータを送っているんだからすごいよ。
日本ではちゃんと帰ってきて「おつかい」を果たしたはやぶさが人気だけど、ボイジャーも別次元ですごいのだ!
太陽系の外側がどうなっているのか、ボイジャーが教えてくれる日も近いよ♪

2012/12/01

命がけの交流

最近、井上靖作「天平の甍」を読み始めたのだ。
入唐した留学僧が、日本に正式に戒壇を設置し、戒律を伝えるために、鑑真和上を招来した話だよ。
淡々と書かれているんだけど、これがなかなか興味深いのだ。
鑑真和上の渡日以降、日本でも正式に受戒が行えるようになり、仏教がさらに交流していくことになるのだ。
その後、戒壇院設立でもめて頼豪阿闍梨が妖怪の鉄鼠になった、なんて話も出てくるのだけど・・・。

遣唐使は、遣隋使に引き続き、大和朝廷が大唐帝国に国使として使者を送るとともに、留学生を送り込んで最新の技術や文化を学ばせるためのものだったわけだけど、中国側からはあくまでも「朝貢」とみなしていたんだよね。
日本は対等の立場で国使をやりとりしていた、というスタンスだったのかもしれないけど。
で、通常朝貢は年1回が原則なんだけど、日本の場合は海を隔てていて遠いこともあり、20年に1度で言い、と言われていたのだ。
ただ、日本側としてはパイプも作っておきたいし、最新の情報もほしいので、それより高い頻度で送っていたみたい。
数え方はいろいろあるようだけど、だいたい十数年に1回の頻度。
これだと少ないようにも思えるけど、実際には身命を賭した航海が必要だったし、莫大な費用もかかるので、けっこうすごいことだと思うよ。

遣唐使船として使われていたのは、西洋式の竜骨が中央にある船ではなくて、東洋式の「ジャンク船」と呼ばれる船に似た箱形の船だったようなのだ。
大きな箱が海に浮かんでいるイメージ。
非常に不安定な船で、強風や波浪に弱かったと考えられているのだ。
宋代以降のジャンク船は技術も発達し、同時代の西洋船舶より優れたところもあったんだけどね・・・。
この当時の日本では、百済から伝わったと思われる技術で独自の様式で作っていたようなのだ。

大きさは、幅7~9m、長さ30mほどの船で、通常は100~150名が乗り込んで、4隻で出港したのだ(当初は1~2隻だったみたいだけど。)。
造船技術の問題もあるけど、航海技術も未熟ということもあって、すべてでなくてもどの船かが到着できればいい、というリスク回避の意味もあるのだ。
乗り込んでいたのは、国使であるところの大使や副使などの官僚のほか、船を航行させる技術者や水夫(かこ)、訳語(通事)、船大工、医師・薬師、陰陽師(主に吉凶の占いを担当)、鋳物師・画師などの職工などが乗り込み、留学生や留学僧が加わっていたみたい。

留学組で有名どころだと、阿倍仲麻呂、吉備真備、空海、最澄なんかだけど、歌人としてもメジャーな山上憶良も行ったことがあるみたい。

遣唐使の派遣が決まると、派遣する人(留学生・留学僧を含む。)を決めるとともに、大型船の建造が始まるんだよね。
朝廷が命令して各国に作らせるので、大きさと形状はだいたい同じでも、船自体は4隻ともばらばらだったようなのだ。
この準備に数年かけ、いよいよ出港となるわけだけど、中国側からは「朝貢」と見なされていることもあり、年賀(旧暦)の祝賀に参加するべく、夏前に出港することが多かったようなのだ。
2~3ヶ月かけて海路を行くんだけど、まさに台風シーズン。
基本は暴風雨に見舞われることになるんだよね・・・。
もともと、もっと多くの人を連れて行きたい、もっと多くのものを持ち帰りたいと積載オーバー気味だったこともあり、転覆しやすかったようなのだ。
まさに命がけで渡っていったんだよね。

もともと遣唐使船は、大阪の難波津を出た後、瀬戸内海を航行し、福岡から朝鮮半島西側沿岸を通って遼東半島・山東半島に向かっていたらしいんだけど、任那日本府が消滅し、新羅が朝鮮半島を統一してからは日本はまったく半島に足がかりがなくなったので、この航路がとれなくなったのだ。
この北路だと途中で何度も朝鮮半島沿岸部で碇泊・補給できるし、安全なルートだったんだけどね・・・。
そこで考え出されたのが危険な南路。
福岡から五島列島に出て、そのまま東シナ海を横断、中国の蘇州当たりを目指す、というものなのだ。

東シナ海は、春夏に西南の風、秋冬に北東の風が季節風として吹くので、通常は秋冬に大陸に向かい、春夏に帰ってくるのがよいのだ。
帰りは対馬海流もあるので、順風であればわりと安全に航行できるはず。
ところが、出発が夏前なので、まさに逆風の中を進むことになっていたんだ。
順風や凪になるまで碇泊し、ちょこっと航行して、暴風雨や強い波浪に耐えながら中国まで漂着する、という感じだったみたい。
風向きが悪いと、更に南の奄美諸島を通ったルートもあったみたい。
当時は羅針盤もなく、星を見て方角を定めているだけだし、航海技術も未熟なので、ねらった港に行き着くことはほぼ不可能で、なんとか近辺にたどり着ければ御の字だったのだ。
場合によっては、もっと南のヴェトナム(チャンパ)やインドネシアに行ってしまうこともあったみたい。
なので、中国にうまく辿り着けた場合は、その地の役人に自分が国使であることを伝え(長汀からの信書などを見せる等々)、陸路で長安又は洛陽に向かったようなのだ。

平城遷都1300年記念の時には平城京跡に遣唐使船が復元されたみたいだし、上海万博に併せて、実際に海を航行する遣唐使船が復元されるプロジェクトもあったみたいだよ。
ボクもちょうどそのころ、ゴールデンウィークを活用して大阪に遊びに行っていて、天保山のアリーナに碇泊している遣唐使船を見ていたのだ!
この船は日本国内は自分で航行し、最後は貨物船に引かれながらだけど上海まで行ったみたい。

この遣唐使を終わらせたのは菅原道真さんだけど、実は最後の遣唐使大使に任命されているんだよね。
命の危険があるにもかかわらず、当時の唐は衰退し始めていて、すでに危険を冒してまで施設を送る必要はないのではないか、ということで終わらせたのだ。
きっと自分も行き着く気がしなかったんじゃないかな?
全船が往復できることはまずなく、行きや帰りで何名も亡くなっているからね・・・。
それに、文化・技術の交流という点では、すでに民間ベースの交易もあったみたいだし(こっちは季節風をうまく使って行き来できるので比較的安全。)、わざわざ国の使節として送る必要性は乏しくなっていたんだろうけど。

それにしても、当時のことを考えると、感慨深いよ。
中国大陸は文明の頂点にあって、そこに技術と情報を求めて命がけで人々が渡り、日本に持ち帰ったのだ!
今の日中関係はというと、なんだかなぁ、というところだよねorz
でも、中国には潜在力があるはずで、今は政治状況の問題もあっていろいろ難しいけど、やっぱりアジアを代表する大国だから、日本との関係は続いていくはずなのだ。
遣唐使を廃止したときのように、今現在も中国とのこれからのつきあい方を考えていかないといけないターニングポイントに来ているような気がするのだ。

2012/11/24

吉兆か凶兆か

島根で白いカラスが見つかって話題になっているのだ。
こういうのはままあることなんだろうけどね。
ただ、もっと神々しい姿を想像していたら、意外にこきたない、じゃなくて、普通のカラスでおどろいたけど(笑)
これは都会でも見かけるハシブトガラスのようで、目は青いが特徴のようなのだ。

白い動物というと真っ先に思い浮かぶのはアルビノ。
アルビノは先天性の色素欠乏症で、遺伝的にメラニン色素を作ることができず、体毛などの色が真っ白なんだよね。
実際には色がついていないんだけど、透明な毛は光を乱反射するので白く見えるのだ。
有名なのは実験用のラットやマウスだよね。
日本でメジャーなシロウサギ(ジャパニーズ・ホワイト)もアルビノだって。
懐かしいところではウーパー・ルーパーも(笑)

アルビノの場合は、メラニン色素が作られないので皮膚も透明感があるんだけど、そのせいで下の血管がすけて薄赤く見えるんだよね。
通常ならメラニン色素が紫外線を吸収してくれるので、日焼けやDNA損傷から身を守ってくれるんだけど、アルビノはそれができないから、日光に弱いのだ(>o<)
すぐに皮膚が赤く腫れちゃうし、紫外線によるDNAへのダメージも大きいので、皮膚がんのリスクが高まるんだ。
自然界では白くて目立つことの方が生存競争上は不利だろうから、これがどこまで寿命に影響を与えるかはわからないけど。

それに、目の瞳(光彩)の色はメラニン色素の色なので、それがないと目も透明になるわけ。
実際には裏の血管が透けて見えるので赤くなるのだ。
シロウサギや実験用マウスの目は赤いよね。
でも、光彩で色素が欠乏しているということは、視覚障害を伴っているということなのだ。
目に色がついているのには分けがあって、光彩の中の色素が光を屈折させてうまく網膜状に光を集めて像を結ぶようにするんだけど、それがうまくできず、光が散乱するので、網膜に届く光が少なくなってしまうのだ。
よって、アルビノの場合はたいてい弱視になるよ。
そのわりに、眼球内には光が散乱されるので、普通よりも光をまぶしく感じるみたい。
不便だなぁ(ToT)

でも、今回見つかったカラスは目が青いので、おそらくアルビノではないのだ。
青い目は極端にメラニン色素が少ない場合に見られる瞳の色なんだけど(なので青い目の白人はブラウンの目の日本人より光をまぶしく感じるし、サングラスが必須になるのだ!)、今回のカラスの場合も、メラニンはゼロではなくて、多少はあるってことなんだよね。
メラニンが作れないのと、作れるけど作らないのは違うのだ。

で、この色素を作らないことで白くなってしまうのを白変種と呼んでいるよ。
ホッキョクグマみたいにほぼすべての個体が白いのもいるけど、ホワイトライオンやホワイトタイガー、シロクジャク、シロフクロウなんかがわりと有名かも。
目の色がきちんとついているのでアルビノと区別がつくんだけど、ホワイトライオンとかホワイトタイガーは純白でなくて、ちょっと薄い色がついている感じがするよね(ホワイトタイガーなんかは縞もあるし。)。
今回のカラスも、おそらくはこの白変種だと思われるのだ。

雪の中に生息するので保護色として白を選んだがホッキョクグマやキタキツネ、ハクチョウみたいな、ほぼすべての個体が白いもの。
白馬の場合は、なんか笑えるけど、白い斑が体全体に広がっている、ということみたい(笑)
白いネコも、本来は白と黒、白と茶とかの斑なんだけど、その斑が体全体に広がっているのだ。
たまに出てくる白変種は、なんらかの理由で色素を作らなくなっているんだけど、理由はよくわからないんだよね。
そういう個体が出てくることだけが知られているのだ。

今回の白いカラスも何かの予兆か、みたいな感じで報道されているけど、古来より白い動物は瑞祥として捕らえられることが多かったんだよね。
有名なのは、日本書紀にも出てくる「白雉」という元号の由来。
長門国(当時は穴門)の国司が朝廷に白いキジを献上し、これが瑞祥だと言って最初の元号である「大化」から「白雉」に変えたんだよ。
白雉の後はしらばく元号が絶えてしまうんだけどね・・・。
そのほかにも、白い亀が見つかったときには、宝亀や神亀なんて元号も使われているよ。
今でも白い蛇は神の使いとか言うよね?

というわけで、今回もなんだか解散・総選挙が決まったときに見つかるというタイミングから、何かの予兆では?、的な取りあげ方がされているのだ(笑)
ま、あんまり関係ないと思うけどね。
でも、こういうのって、白いカラスが発見された後の選挙の結果、政治が良くなれば吉兆だったって言われるし、悪くなれば凶兆だったって言われるってだけなんだよね。
印象に残る出来事がその後の社会状況とまるでまるで因果関係かのように結びつけられているだけなのだ。
何にせよ、これが瑞祥とされることを祈るばかりだけど(-人-)

2012/11/17

な・ご・み

11月15日は七五三。
着物を着たちびっ子をよく見かけるよね。
ボクは2歳離れた兄がいたので、まとめてだったみたいだけど、最近は一人っ子が多いし、子どもにお金をかける家が多いから、豪勢なんだろうなぁ。
おじいちゃん・おばあちゃんががんばっちゃうのかもしれないけどね(笑)

七五三は、文字どおり、3歳、5歳、7歳のそれぞれのタイミングでするお祝いだけど、古来からある「髪置き」、「袴着」、「紐落とし」又は「帯解き」として行われていたものがシステム化されたみたい。
「髪置き」というのは、それまで剃っていた髪を伸ばし始めるお祝いで、2~3歳で行われていたんだって。
むかしは、赤ちゃんのうちは髪を剃る習慣があったのだ。
ちなみに、これは男女共通なので、七五三も3歳は男女共通らしいよ。
ボクは女の子だけと思っていたよ・・・。

「袴着」は男の子のお祝いで、文字どおりはじめて袴をはくというもの。
男性の和装の正装は袴がいるからね。
これは3~7歳だったみたい。
それまでは着流しだけのバカボンスタイルなのだ(笑)
「紐落とし」・「帯解き」は女の子のお祝いで、それまでは着物を留めるのに紐を使っていたのを帯に変えるというもの。
これも女性の和装の正装にするということなのだ。
こっちは5~9歳だったみたい。

「髪置き」は別として、「袴着」や「紐落とし」はともに和服に関する儀式なので、呉服屋がこの行事を商業的に取り入れて、江戸中期に広めたのが今の七五三の原型と言われているのだ。
なんだか、クリスマスやバレンタインと同じにおいがするねぇ(笑)
歴史的には、第5代将軍綱吉公の長男で、2歳にして上州館林藩の藩主になった徳川徳松の健康を願う催しが嚆矢と言われているんだ。
盛大に行われたそのイベントにヒントを得て、呉服屋さんが広めたのかもね。
これが武家や有力な商家に広まり、明治以降は一般庶民にも普及したのだ。
でも、基本は関東圏のもので、それが全国区になっていったみたいだよ。
ちなみに、子宝に恵まれなかった綱吉公待望の長男だっただけに、根津神社に豪華な社殿を寄進したりといろいろしたんだけど、残念ながら徳松は夭逝してしまうのだ・・・。

徳松の例もそうなんだけど、むかしは衛生状態・栄養状態も悪く、乳幼児の死亡率も高いし、幼くしてなくなる子どもも多かったのだ(ToT)
なので、「7つまでは神のうち」なんて言って、7歳を過ぎるまでは人別帳にも載せず、地域コミュニティの構成員としてもカウントされていなかったんだよね。
なので、無事に子どもが成長しているというお祝いでもあるのだ。
今ではだいぶそういうのは薄れてきたけどね・・・。

でも、その残滓が残っているのが、七五三に欠かせない千歳飴。
名前のとおり、長命を寿ぐ縁起物なのだ。
細く長く生きるようにと、切らずに細長く伸ばした飴を、「かまずに」食べさせるんだよ。
紅白に着色し、袋には鶴や亀などの図案もあって、まことにめでたいのだ。
ボクはミルキーの印象だったんだけど、本来的には日本式の水飴を練って作る甘いだけの飴のはずだよね。
七五三の原型のできた江戸中期の元禄・宝永のころ、浅草の飴売りの七兵衛さんが売り出したらしいのだ。
当時は甘いものは高級品だから、子どもの無事な成長を祈る親の気持ちが込められていたのかも。

そんなわけで、七五三は子どもの健康な成長を祝い、社会の構成員として迎え入れる儀式だったのだ。
ただ子どもにきれいな服を着させて写真を撮る日じゃないんだよ(笑)
社会状況はだいぶ変わったけど、本来の意味を忘れず、残していきたい伝統なのだ。

2012/11/14

【号外】いきなり解散でどうなる?

総理が党首討論でいきなり16日解散を打ち出したのだ!
年内解散が確定して、12月4日公示、16日投票だって。
いやあ、いきなり動いて驚いたねぇ。
でも、問題となっていた特例公債法とかってどうなるの?、ということで調べたよ。

もともと、特例公債法というのは赤字国債を発行するための法律。
我が国では、財政法第4条第1項で「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と規定していて、借金をして歳出をまかなってはいけない原則が存在しているのだ。
でも、そのすぐうしろに「ただし書」として「但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」とも規定していて、公共事業などに使われる建設公債は例外的に認められているんだ。
これは、後世に渡って国民が広く利用できる社会インフラを整備するものだから、という理由なんだけど、対象経費は厳密に予算で定められていて、人件費や事務経費は使えないのだ。

で、その原則の下で、財源に充てるために国債を発行してまかなうのが赤字国債。
財政法では原則禁止されていることなので、特別法でオーバーライドする必要があるのだ。
それこそが特例公債法だよ。
昭和40年にはじめて成立したもので、その後10年間はなかったんだけど、昭和50年から平成元年までは連続して制定されたのだ。
その後しばらくバブルの時期は税収が大幅増だったので赤字国債を発行しなくても大丈夫だったんだけど、バブル崩壊後は、いきなり歳出が絞れない一方で歳入が減っていったので、またまた特例公債法の出番となり、平成6年から毎年制定されているよ。

これがないと赤字国債が発行できず、歳出に見合った歳入が期待できないので、「執行抑制」をする必要が出てくるのだ・・・(>o<)
これが「特例公債法を盾に国民を苦しめる・・・」と言われる所以なんだよね。
国民生活に必要な予算であっても「ない袖は振れぬ」で支出できない、と脅すことになる、というわけ。
実際には本当に必要なところ(例えば警察や消防の活動費など)は優先的に支出していくはずなんだけど。
一応、去年今年の反省もあって、政争の具とならないよう、今回の与野党合意で平成27年までの赤字国債発行が見込まれる予定なのだ。

実際に平成24年度の政府予算の歳入歳出を見てみると、歳入は、税収や雑収入のいわゆる真水の収入が46兆円で、国債を発行してまかなう公債金が44兆円で、全体は90兆円規模(つまりは半分は借金でまかなっている!)。
そのうち、特例公債金(=赤字国債)は38兆円にもなるよ。
歳出で見ると、国債の償還や利払いに使われる国債費が22兆円で、残りの68兆円が基礎的財政収支対象経費と言われる、国が事業を行う予算。
44兆円借金しておきながら、22兆円しか返済に回していないので、借金はふくらむばかり・・・。
いわゆる「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の均衡」というのは、国債を発行する額と返済する額が釣り合っている状態(=それ以上借金が増えていかない状態)をさしたものだよ。
それでも自転車操業なんだけど(ToT)

で、この特例公債法を通さないと国の財政は立ちゆかないので、なんとか通さないといけない、という話になっていて、今週から野党の協力の下で質疑が始まっていたのだ。
で、今日の党首討論で、定数削減を次期通常国会で確約してもらえれば今週末にも解散すると言いはなって、それが実現することになったんだけど、そうなると、特例公債法はどうなるの?、ということになるよね。
憲法では、第54条第2項で「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」としていて、衆議院が解散されると国会が自動的に閉会になってしまうので、法案が成立できなくなるのだ。
ただし、この条項にもただし書があって、「但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」となっていて、衆議院が解散されても重要な議題があるときは参議院だけが緊急集会を開いて審議することもできるのだ。
これは解散総選挙の間に国会機能が完全に不能にならないようにするセーフティガードだよ。

ただし、今回は参議院でも成立させてから、ということのようなので、金曜日までに仕上げる必要があるのだ・・・。
今日は衆議院で財務金融委員会の審議・議決が終わったばかりで、明日衆議院本会議で議決をするので、明日中に参議院に送っても1日で仕上げる必要があるわけ。
通常は国会での審議は本会議だけで議論するのではなく、委員会に付託して議論を尽くしてから本会議で議決するんだよね(重要広範法案は先に本会議で議論してから委員会に付託するよ。)。
でも、これにも例外規定があって、国会法第56条第2項で「議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。但し、特に緊急を要するものは、発議者又は提出者の要求に基き、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。」と定めていて、原則は委員会に付託するけど、本会議だけで議決してもよいことになっているのだ。
おそらく、今回はこれを使って委員会審査を省略すると思われるのだ。
※けっきょく15日(木)に衆議院で可決された後、夕方から参議院の財政金融委員会で審査をしたみたい。

というわけで、明日明後日と国会議員の先生はけっこういそがしい日程になるんじゃないかな?
当初はTPP解散なんて言われていてけど、また今日の状況を踏まえて、「いきなり明後日解散」とかなんとかそんな名前がつくかもね(笑)
このまま民主党がそのまま政権にとどまるとも思えないので、政局はまた流動化するんだろうなぁ。
米国は大統領が再任したのにね。

2012/11/10

爆歩兄弟!タッチ&ゴー

駅のポスターを見て知ったんだけど、今日から明日にかけてSUICAとPASMOはシステムメンテナンスのために一部のサービスが停止されるんだって。
で、改めて気づいたんだけど、SUICAやPASMOが使えなくなって電車に乗れなかった!、っていう事態ってないよね?
どれだけ堅固なシステムなんだろうって感心するよ。
その仕組みを調べてみると、意外な(でもいつはけっこう有名な)ことがわかったのだ。

SUICAとかPASMOって実は使うたびにセンター・サーバーと情報のやりとりをしていないんだって。
クレジットカードの場合、通信にけっこう時間がかかるよね。
あれはカードの認証をするのにセンター・サーバーに問い合わせていて、そのとき、限度額を越えていないか、不正なカードでないか、盗難などで使用停止になっているカードでないかなどなどを確認しているんだ。
でもでも、SUICAとかPASMOはまさに「タッチ&ゴー」でピッっていう間に決済が終わるんだよね。
これは、センター・サーバーまで問い合わせをしていないからこそできる芸当なのだ。

では、どうしているかというと、各端末(駅で言うと自動改札機)とICカードとの間だけで情報のやりとりをしているんだって。
で、カードにも端末にもそれなりに履歴を蓄積することができて、後でそれを照合しながらまとめていって、最後にセンター・サーバーに集約するみたい。
自動改札の場合は、通信が生きている限りは一定時間ごとに各改札機から駅のサーバーに情報を上げ、駅のサーバーはまた通信が生きている限り一定時間ごとにセンター・サーバーに情報を上げていくのだ。
最後に全部の情報を集約して矛盾がないかどうか確認して、最終的に電子的決済が完了する、という仕組みのようだよ。

駅で運賃が引き落とされたり、コンビニで代金が引き落とされたりしても、その時点ではカードに記録されているチャージ情報が書き換えられているだけで、まだ確定していないのだ。
なんらかの理由で不都合が出てきて、数字が合わない場合は、それぞれの取引をさかのぼって確認することになるんだろうね。
ちなみに、紛失時の再発行や、カード内のデータが死んで復旧するときに時間がかかるのは、まさにこのため。
センター・サーバーに情報を集約して処理し、取引の決済が完全に完了するまでは「確定」できないからなのだ。

これがSUICAとPASMOのシステムを難攻不落にしている要因で、通信が死んでいても、端末やローカル・サーバーに情報が蓄積しておけるので、しばらくは使い続けることが可能なのだ。
これはセンター・サーバーやローカル・サーバーが落ちた場合も同じ。
後でまとめて情報を送ってやって処理できればいいわけ。
これが自律分散型システムなのだ!
最近では電子マネーとしての利用も増えているし、相互利用も進んできているから取引量がのびているけど、だいたい3日くらいまでならサーバーが落ちても使い続けられるらしいよ。
なんというロバストネス(堅牢さ)♪
今回はまさにサーバーのメンテナンスをするため、情報を確定しないとできない手続である再発行や払い戻しができなくなるみたいだね。
普通にサーバーは落ちているみたいだけど、こういう手続はそんなに頻繁じゃないし、そもそも乗車券や電子マネーとしては使い続けられるから問題にならないというだけなのだ。

そもそもこの非接触型のICカード利用が検討されたのは90年代なんだって。
ちょうど磁気カードを挿入する自動改札が普及してから10年くらい経つと、読み取り部の摩耗やら機器の更新やらでメンテナンス費用が高くつき、システムの拡張性も乏しいので、磁気カードが本格導入されたそのタイミングから検討が始まったみたい。
ちょうどそのころそういう技術も出てきていたんだよね。

磁気カードの場合、挿入してからデータの読み出し、正規なものかどうかの判定、データの書き込みと確認という処理を0.7秒でやっていたらしいのだ。
ところが、すーっと自動改札の横をストレスなく歩き過ぎる速度は都心部では1.2m/s、毎分72mくらいの早さで、改札の横を通る時間はなんと0.2秒しかないのだ。
しかも、カードとの通信(往復)で0.1秒かかるので、データの処理を0.1秒以内に行う必要があるんだって。
この一瞬間に、認証、読み出し、判定、書き込み、確認という処理をしているらしいよ。

現在カードと端末の間で使われているのは無線通信で、実際は「タッチ」する必要はなく、10cm以内に近づければいいんだって。
でも、この0.2秒を確実に稼ぐために「タッチ&ゴー」を推奨しているそうだよ。
無線通信は準マイクロ波と呼ばれる、1~3GHzの周波数の極超短波。
今の第三世代携帯(3G)の通信帯域と同じだね。
だからモバイルSUICAなんてのもできるのかな?

それにしてもなんとなく使っていたけど、これはすごい技術だねぇ。
そう言えば、出始めのときはおどろいたっけ。
慣れっていうのはこわいこわい。
でも、これってデータ処理の分野で言うと、画期的なシステムだったらしいよ。
開発者はこのシステム構築で博士論文を書いたらしいけど、こんなのが現実に動くわけがない、と批判する学者もいたとか(笑)
でも、この各端末が自律的に動くシステムを組み上げることで、堅固なシステムと高速処理を実現したのだ。
ちょっとこれからは自動改札を通るときもその技術に敬意を表さないとね。

2012/11/03

かわぎしがおいしいんだよ

最近、ローソンでパンを買うとき、「ふすまパン」をよく買うのだ。
低カロリーで食物繊維とミネラルが豊富なんだよね。
これはありがたい!
ちょっと食感はかたくてざらつくけど、もともとライ麦パンとかが好きなボクには気にならないもんね。
で、「ふすま」ってなんじゃらほい?、と調べてみたよ。

ふすまは小麦の表皮の部分で、米で言うとぬかに当たる部分なのだ。
イネ科の穀物は、種子が硬い表皮で覆われていて、その中に胚乳と胚芽があるのだ。
胚乳が精白して食べる部分で、白米本体や小麦粉になる白い部分。
胚芽は芽になって発芽する部分で、ここにも栄養素が多いから、胚芽米なんてのもあるくらいだよね。
米などの場合は、表皮がわりともろいので、ついてやると表皮が細かく割れ、はがれて落ちるのだ。
それが精米だよ。
これをふるいにかけると、一番大きい白い粒が白米、細かい粒が胚芽、微細粉がぬかだよ。

小麦の場合はちょっと特殊で、表皮が硬くてはがれにくいのだ。
なので、小麦をからごと荒くひいてあげると、中の白い胚乳部分は粉になり、外側の硬い表皮は大きな破片として残るんだよね。
これをふるいにかけて小麦粉を取り出すのだ。
米の場合は粉になる部分と残る部分が別なんだよね。
で、その残った大きな表皮の部分だけを集めたのがふすま。
粗挽きではなく、最初から細かく表皮ごとひいたのが全粒粉だよ。

一般に穀物のぬかには繊維質と鉄、亜鉛、銅などのミネラルが豊富で、しかも、糖質をほとんど含まないのでカロリーは低いのだ。
繊維質も不溶性の食物繊維なので、便秘にもいいし、腸の中で余分な油脂を吸着してくれたりもするとか言われているよ。
米ぬかなんかはぬか床に使ったり、かつては洗剤代わりに使われたりもして大活躍だけど、小麦ふすまは健康食品とかシリアル食品に使われるくらいしかあまり使い道がなかったんだよね。
やっとふすまを使った食品が出始めたのだ!

もともと全粒粉のパンは存在していて、小麦粉で作ったパンに比べて栄養素が豊富なので一部で好まれていたのだ(ホールウィートというやつね。)。
でも、ちょっと硬くてざらつくので、避ける人も多いんだよね。
クッキーなんかだとわりとましなので、全粒粉クッキーはけっこう普及しているけど。
さらに、ふすまで作るとなると・・・。

さらに問題はあって、ふすまの中にはほとんど糖質とタンパク質が含まれていないので、そのまま水でこねても形にならないし、それを焼いてもパンとしてうまくふくらまないのだ(>o<)
こねて形にならないのはタンパク質のグルテンが少ないため。
いわゆる麺類のこしを出すタンパク質だよね。
多ければもっちりとし、少ないと食感はやわらかくなるのだ。
なので、もちろんふすまでは麺類は作れないよ・・・。
それと、イーストで発酵させようとすると、中に糖質がないとダメなんだよね。
イーストは糖質を分解して炭酸ガスを作り、ふわふわ感が出るのだ。
イーストが発生させた炭酸ガスの泡がパンの生地の中に行き渡って、焼くとそのその泡が大きくなるので、ふわふわにふくらむんだよ。
で、ふすまだけだと糖質も足りないわけ。

なので、ふすまパンをつくるときには、別に小麦粉グルテンを足したり、大豆粉や小麦粉を少し入れて糖質を加えたりするのだ。
それでも、普通に小麦粉で作るパンよりは糖質が少ないので、糖尿病の患者さんでも食べられるパンができるんだ。
ふすまだけをこねて焼くと、ケロッグの「オールブラン」のような食感。
それはそれでよいんだけどね(笑)

というわけで、おいしいふすまパンを作るにはブレンドが大事なのだ。
おそらく、それがコツにもなっているんだろね。
とりあえず、ローソンで売っているふすまパンはなかなかいけるよ。
最近ではホームベーカリーで作る人もいるみたい。
ふすま粉も売っているんだって。
ボクはとりあえずは買う派だけどね。

2012/10/24

混沌と雲を呑む話

最近、よくワンタンを食べるようになったのだ。
もともとワンタン麺はわりと好きなんだけど、それ以上に、マルちゃんのワンタンの存在が大きいよね(笑)
お弁当とかを食べるときにどうしても汁物がほしくなるけど、お値段も手頃だし、けっこうおいしいし、選びがちなのだ。
カップ味噌汁ってそんなにバリエーションがないんだよね・・・。

そんなワンタンだけど、中国の華北を代表する料理の一つ。
中国大陸の場合、温暖な南の地域(華南)では稲作中心で米食文化だけど、寒冷な北の地域(河北)では小麦中心で、麺や饅頭などの点心が発達しているのだ。
ワンタンもその一つで、一般には、小麦粉で作った薄めの皮で肉や魚介類からなる餡を包み、ゆでてからスープの具として食べるよね。
四川省の方では、ゆでたワンタンにラー油をからめて食べることもあるのだ。
そのほか、揚げワンタンなんてのもあるよね。

なんでも2000年以上の歴史があるそうだけど、もともと小麦粉の皮で餡を包むという意味において餃子とあまり区別されていなかったそうな。
それが、食べ方の違い等で分化していったみたい。
平安時代に日本に伝わってきたものでは、「饂飩」と書いて餅状の皮で具を包んだスープ料理が照会されていたみたい。
当時は唐代だから唐音で「ホントン」と呼ばれていたんだけど、これの呉音が「ウンドン」と読まれることから、うどんの起源ではないかとも言われているんだよ。
「ホントン」という音がほうとうやはっとに似ているというのもあるみたい。
途中で小麦だけになっちゃってるけどね(笑)

この「饂飩」が主に北に広まって定着したのが餃子。
丸い厚めの皮でたっぷりの具を包んで、蒸したりゆでたりして食べるんだけど、基本的には主食として食べるものなんだよね。
お祝いの席で食べる料理でもあって、縁起物だよ。
日本で主流の焼き餃子は戦後満州から引き上げてきた人々が広めた食べ方で、本場中国ではあまりやらない方法なんだよね。
ニラまんじゅうのようにそのまま蒸し焼きにするものもあるけど、餃子の場合はゆでるのが基本で、残り物をさらに焼いて食べることがあったみたい。

一方、南に広まってできたのがワンタン。
雲呑という表記は広州で生まれたもので、広東語だって。
ワンタンは四角い皮で少量の具を包み、ゆでてからスープの具にするのだ。
なので、北の餃子と違って主食ではないんだよね。
このワンタンが広州で麺と一緒に食されるようになってできたのがワンタン麺。
もともと麺の具としては鶏や豚のつみれ団子が入れられていたんだけど、その代わりにワンタンを入れてみた、ということみたい。
やがて、広州から香港へ人が流れると、香港料理としてのワンタン麺が発達するのだ。

香港のワンタン麺は、固めにゆでた細めの縮れ麺に丸いぷっくりしたワンタンが特徴。
ワンタンの上に麺を載せ、そこに熱いスープをかけて作るのだ。
麺がのびないように、ということなんだそうだけど、最初に香港で食べたときはワンタン麺を頼んだつもりが別のものが出てきたのかと焦ったよ(>o<)
スープは薄めで、ワンタンや麺の味そのものを楽しむんだそうだよ。
日本のワンタン麺はラーメンにワンタンが具として入っているのが基本なので、だいぶ趣が違うんだよね。

このワンタンは、中国から日本以外にも広まっているのだ。
ヴェトナムはもちろん、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイなんかにも似たようなものが。
音も「ホントン」に比較的近いものなので、やっぱりワンタン起源。
ワンタン麺的な料理として広まったものと、スープとして広まったものがあるみたい。
餃子・ワンタンのように餡を皮で包むという手法はシルクロードを経由して欧州まで至り、イタリアのラビオリになったと考えられているけど、それだけ人類に愛される料理法ということなんだろうね。
実はグローバルスタンダードの料理なのだ!

2012/10/20

正しく使おう!

山中教授のノーベル生理学・医学賞受賞のすぐ後で、大問題が発生したのだ。
そう、iPS細胞研究の臨床研究に関するねつ造疑惑・・・。
まだ調査中というのが公式スタンスなんだろうけど、限りなく黒に近いグレーだよね。
本人はウソをついているうちに、自分でも本当だと信じ始めちゃっているのかな?
前には韓国の研究者がES細胞でねつ造した事件があったけど、そのときは世界中でES細胞研究が止まる事態にもなったんだよねorz
今回は断罪すべきところは断罪するとして、そういう「伸び盛り」の分野に負の影響を及ぼすことがなければいいけど。

で、この人、社会的制裁はあるとして、研究者としては他にもペナルティがあるのだ。
というのも、国から研究費をもらっていたんだよね。
虚偽申請で研究費を獲得していたり、研究費の成果として虚偽の実績報告をしていると処罰の対象になるのだ(>o<)
例えば、国の研究費のほとんどを持っている文部科学省では、研究活動の不正行為についてガイドラインをまとめているんだよね。
よく話題になるのは研究費の不正使用で、空出張やら預け金やら横領やら、信じられないような話が出てくるけど、それは研究費の使い方の話なのでこのガイドラインの対象外。
むしろ、今回のようなねつ造・でっち上げ、盗用・ぱくりなんかも対象だよ。

研究費の使い方の方は、基本的に個別の制度ごとに会計・経理の仕方が違うので、それぞれで定めているんだ。
ただし、結果的に正しくない使われ方をしていたとしても、「故意」と「過失」があるので、切り分けるのが普通なのだ。
例えば、研究費の使用については、知らずにやってしまった、或いは、手続き上のミスがあった場合で結果的に研究費が正しく使われなかったものについては「不適正経理」という扱いにあるんだよね。
悪意を持って研究費を不正に使う「不正使用」とは峻別しているのだ。
当然過失でも許されない部分があるのでペナルティはかかるわけだけど、故意のものに比べれば相対的に軽くなるのだ。

今回は文部科学省の科研費をもらっていたようだけど、科研費の場合は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の対象になるので、法令による罰則も適用される可能性があるのだ。
不正な手段により補助金の交付を受けた場合は罰金だけでなく懲役刑もあるんだよ!
「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令」で対象となる国の補助金や委託費が定められていて、その経費についてはこの法律が適用されるのだ。
科研費もその一つだよ。
で、不正などがあった場合は、第17条の規定で「交付決定の取消」が行えることになっていて、さらに、その次の第18条でその場合に「補助金等の返還」を求めることができるようになっているんだ。
今回は事実関係を調査した上で、不正行為が認められれば、交付されていた科研費の一部又は全部の返還が求められることになるよ。

具体的な手続については、科研費の交付要綱科研費取扱規程に定められているよ。
交付要綱は適正化法とあまり変わらない表現ぶりだけど、重要なのは取扱規程。
不正行為が発覚した場合、ペナルティとして以降2~5年間は科研費が申請できなくなるのだ。
いわゆる「みそぎ」だね。
取扱規程の細則で、不正行為の内容に従って定めるけど、規定ぶりはあいまいなので、個別に判断しているみたい。

ちなみに、文部科学省の場合は、「水平展開」ということで、科研費で不正行為をした研究者は、他の文部科学省の研究費をもらえないルールになっているそうだよ。
その期間にもよるけど、研究者としての生命線である研究費が止められることになるので、相当つらいよね・・・。
ま、それだけのことをしてしまった、ということだけど。
今回のように大々的に報道されずとも、そういう制裁は受けることになるのだ。

さすがに今回の人はもう研究者としてはやっていけないだろうね。
一時の過ちでで一生がダメになってしまうのだ(ToT)
国民の税金を使っているということを意識して、正しく使ってほしいね!

2012/10/13

アップルがプレイステーションを買収したわけじゃない

めでたいことに、今年は日本人のノーベル医学・生理学賞が出たのだ!
1987年の利根川進博士以来の快挙♪
もちろん、京都大学の山中伸弥教授だよ。
受賞理由は言わずとしれた「iPS細胞」。
最初の研究発表から6年という短期間で、50歳という若さでの受賞はその成果がすばらしさを物語っているのだ。

このiPS細胞というのは、成体の体の細胞に細工をしてあげると、体中の様々な種類のどの細胞にも分化できる能力を持つ細胞になるというもの。
induced Pluripotent Stem cellsの略で、日本語では「人工多能性細胞」とも呼ばれるのだ。
これまで再生医療の研究に使われていたのは受精卵由来のES細胞(Emryonic Stem cells)。
受精卵が細胞分裂を始めてから16細胞~32細胞くらいになったとき、単に細胞がくっついている桑実胚から中空の胚盤胞呼ばれる形状になるんだけど、球状の細胞の層の中にぽつぽつと細胞が転がっているイメージなんだよね。
その中の細胞を取り出して培養してできるのがES細胞で、受精卵を使わないと作ることができないのが難点だったのだ(実際的にも、倫理的にも)。
一方、iPS細胞は体の細胞を使って作れるので、その点はクリアできるし、何より、自分と遺伝情報が全く同じクローンの細胞が作れるのが魅力なんだよね。
ES細胞の場合は、どうしても核移植などをしないとクローンにできないのだ・・・。

ES細胞は受精卵から取り出して培養するだけなんだけど、iPS細胞の場合は細胞に処理をしないといけなくて、それが「induced」と呼ばれる所以。
2006年に山中教授がマウスでiPS細胞を樹立したときは、4つの遺伝子を導入することで実現しているのだ。
ES細胞に特異的に発言している遺伝子を導入すれば、幹細胞になるんじゃない?、という発想の下、そういう遺伝子を洗い出し、さらに組み合わせ実験で絞り込みをして、これだ!、という4つの遺伝子を突き止めたのだ。
その後、これは薬剤をうまく使えば3つの遺伝子でできることもわかったんだけどね。
この成果の後、世界で大競争が起こってヒトのiPS細胞の樹立が行われることになるんだけど、ここでも山中教授は実際に患者さんの細胞を使って樹立するという偉業を成し遂げるのだ。
今のところ、本当の意味で世界No.1の実力なんだよ。

iPS細胞やES細胞の「万能性」というのは、体に存在するどんな種類の細胞にも分化できる可能性を秘めている、という意味。
この先駆的な実験を行ったのが、今回の共同受賞者のジョン・ガードン博士なんだ。
ジョン・ガードン卿は、腸の細胞の細胞核を卵細胞の細胞核と交換する、という実験を行ったところ、腸細胞の細胞核を入れた卵細胞は普通の卵細胞同様に発生の過程を経てオタマジャクシになった、という発見をしたんだ。
これは、成体の体細胞であっても、発生の過程に必要な遺伝情報のすべてを持っていて、うまく発生という場に送り込めればひとつの個体を形作る「全能性」を獲得できる、ということを意味しているんだ(「全能性」という場合には個体まで発生できるポテンシャルを指し、すべての細胞に分化できるポテンシャルは「万能性」と呼ばれるのだ。)。
すなわち、どの細胞も基本的には遺伝情報は同じで、遺伝子の発現制御などの遺伝情報の使い方(こういうのを「エピジェネティック」というのだ。)で発生というプロセスがコントロールされていることを示したわけ。
(後に利根川博士は免疫細胞ではDNAの組替えをすることで多様性を確保している、という発見をし、すべての細胞が同一の遺伝情報を持っているわけではない、ということが証明されるのだ。)
ちなみに、ガードン卿のこの発見が論文になったのは1962年で、なんと山中教授が生まれた年の成果だよ!

で、このガードン卿の発見から、どうやったら成熟した細胞がいろんな細胞に分化する能力を取りもどせるか、という研究が始まるのだ。
イモリなんかは手がちぎれても再生するけど、ヒトではそうもいかないからね。
しかも、がんという病気は、もともと分化して成熟していた細胞が未分化な状態になり、制御不能な状態で勝手に増殖して起こるものなんだよね。
すると、逆に身勝手に増えるこの未分化の細胞を、うまく分化させ、成熟した細胞にもどしてあげれば治すことも可能なのだ。
その意味でも、ES細胞やiPS細胞の研究は重要なんだよ。
現在は、いろんな種類の細胞に分化させることには成功し始めているけど、一方で、中途半端な状態で人体に移植してしまうと、けっきょくそれががん細胞のようにアンコントローラブルに増殖してしまうおそれもあるので、その安全性の確保も急がれているんだ。
特に、iPS細胞は遺伝子導入をしているので、注意が必要だと言われているよ。

とにかく、また日本からノーベル賞が出たのは喜ばしいことなのだ。
これで19人目。
臨床応用まではもう少し時間がかかると思われるので、タイミング的には少し早いような気もするけど、この世界は日進月歩であっという間に進捗があるのもまた事実だから、これを機にまた一気に実用化に近づくかも。
まだ50歳だし、まだまだ最前線で活躍してもらいたいね

2012/10/06

揚げたら別物

ボクはもともと豆腐が好きなんだけど、その加工品も好きなのだ。
そう、厚揚げとか、油揚げだよ。
夏の暑い間は冷や奴がいいし、冬の寒い時期は湯豆腐がうれしいけど、春や秋なら少し焼いて温めた厚揚げなんかは最高なのだ。
生姜醤油で食べるとおいしいよね。

厚揚げと油揚げって、単に揚げる前の厚さの違いだけと思っていたらさにあらず!
厚揚げは水切りをした豆腐を一丁そのまま、又は半丁に切ってから、表面がきつね色になるまで揚げたもの。
仲間で火を通すことはせず、外はかりかり、中はなめらかな豆腐のまま、というものなのだ。
豆腐の食感が残ったまま香ばしくなっているのがポイントで、だからそのまま食べてもおいしいんだよね。
江戸時代には、厚揚げを網で焼いて縞状に焼き色を付けたものが酒の肴の定番で、青ネギをちらした「竹虎」、大根おろしをそえた「雪虎」として親しまれていたそうだよ。
表面を揚げてあることで煮くずれしづらく、味もしみやすいので、煮物にも使われるんだ。
しっかりと煮込まなくても表面に味が染みこむので、小松菜と炒め煮にしたりしてもおいしいよね。

一方、油揚げは専用の豆腐を作ってから、それを薄く切って揚げたもの。
仲間でしっかり火が通っていることがポイントで、独特の食感が出るのだ。
豆腐とはまったく違うよね。
厚揚げが高温の油でさっと揚げるのに対し、油揚げは低温で揚げて膨脹させてから、高温の油でもう一度揚げてかりっとさせるんだって。
よく膨脹するように、揚げる前の豆腐はもともと薄めの豆乳でしっかり堅めに作るようなのだ。
よく揚げることで中までスポンジ状になって、味がしっかりと染みこむわけ。
いなり寿司やきつねうどんの揚げなんかはおいしい汁を吸ってなんぼだからね(笑)
袋状に開くことができるのもミソで、それでいなり寿司や巾着などが作れるのだ。
でも、厚揚げに比べると油がよく染みこんでいるので、しっかりと油抜きをしないとしつこいよ。
ここで手を抜くとおいしくないのだ(>o<)
ちなみに、新潟名物の栃尾揚げは油揚げと厚揚げの中間のように感じるけど、中までしっかり火が通っているので、分厚い油揚げという位置づけなのだ。

豆腐の伝来自体は奈良時代と古いけど、食材として広く使われ始めるのは室町時代の終わりから。
実際に庶民の食卓に並ぶようになるのは江戸時代からで、そこから全国的に普及したみたい。
肉食をあまりしなかった江戸時代の人にとっては重要なタンパク源で、納豆や豆腐といった大豆加工品は重要な食材だったのだ。
油揚げはすでに江戸時代初期の文献にも登場しているそうで、同時期に料理として発達した天ぷらからの着想ではないか、という説も。
おそらく、もともとは豆腐をそのまま揚げてみて厚揚げが生まれて、その後、薄切りの豆腐をしっかり揚げて油揚げができたんじゃないかと思うのだ。

油揚げと言えばおいなりさんの好物だけど、もともとキツネが好きだったのはネズミを油で揚げたもの。
でも、そんなものはお供えしづらいので、精進ものの豆腐を揚げた油揚げが供えられるようになったんじゃないかと考えられているのだ。
さらに、そこから油揚げがキツネの好物に変わり、それで市にメタ油揚げが入ったうどんはきつねうどんとなっていくのだ。
でも、本当は稲荷神はインドの荼枳尼天(だきに)天なので、乗っているのは野干(やかん)。
野干は野狐などとも言われるけど、本来はジャッカルのことなのだ。
日本にはジャッカルが生息していないので似ているキツネが当てられただけ。
そういう意味では、稲荷と油揚げは実はそんなに関係していないのだ。

また、油揚げで巻いたものを信田(しのだ)巻き、きつねうどんの別名をしのだうどんなどと呼ぶことがあるけど、この信田というのは「葛の葉」伝説から来ているのだ。
平安時代に安倍保名(やすな)が信田の森を訪れた際、猟師に追われていた白狐を助けるのだ。
実はこのキツネを年を経て妖力を持つに至ったキツネで、「葛の葉」という女性に変じて、その際にけがをした保名の見舞いにやってくるのだ。
やがて二人は結ばれ、生まれた子どもが後の安倍晴明。
安倍晴明が5歳になる年に保名に正体を気づかれ、葛の葉は森へと帰っていった、という話だよ。
天下に名だたる陰陽師の安倍晴明の力の源を空かすエピソードとして有名なのだ(けっきょく人外の力、という整理なんだけど。)。
で、その連想で、キツネ=>信田、となるわけなのだ。

こういった言葉遊び的な名前が付けられるのも、それだけポピュラーな食材だったという証拠なんだろうね。
肉を食べるのもよいけど、たまには揚げでヘルシーにすますのもよいことなのだ♪
ただし、豆腐って意外とカロリーが高いし、油揚げや厚揚げは油で揚げた分さらに高いので、そんなにダイエット効果は期待できないよ(笑)
コレステロールなんかはだいぶ抑えられるけどね。

2012/09/29

しとしとぴっちゃん、ときにざあざあ

秋分が過ぎて涼しくなってきたねぇ。
で、天候も不安定になってきているのだ。
まさに「秋雨模様」だね。
この雨のおかげで北関東の利根川水系ダムの貯水率が上がっているようだからよいことなんだけど。

この秋雨、むかしは「秋霖(しゅうりん)」と呼ばれていたのだ。
「霖」はしとしと降る雨のことで、曇りが続いて降ったりやんだり、しとしとと降るから。
梅雨と違って始期も終期も明確でなく、なんとなく雨模様が続いて、いつの間にか秋晴れの天候になっていくんだよね。
なので、気象庁でも秋雨については、予報では「雨が続く」なんていう言い方で、天気の解説にしか用いないんだって。
季語にはなっているし、日本ではむかしからおなじみの現象なんだけど、なんか変だね。

この秋雨、実は梅雨と同じように、二つの高気圧のせめぎ合いの結果として発生するのだ。
梅雨の場合は北の湿ったオホーツク海気団と南の湿った小笠原気団(太平洋気団)がぶつかるところに梅雨前線が生まれ、この2つの高気圧の力が拮抗している間に日本に停滞するんだ。
でも、実際には、中国内陸から来る移動性の揚子江気団や、フィリピンあたりにある熱帯モンスーン性気団なんかもからんでいて、東南アジアから東アジアまで広域に発生するものなんだけど、秋雨は日本周辺のみで見られるものなんだ。

秋雨の場合、夏の間勢力が強く、日本に高温多湿な気候をもたらしていた小笠原気団がなんかすることから始まるのだ。
すると、そこに移動性の揚子江気団が通り過ぎるんだけど、移動性高気圧の間には気圧の谷というか、低気圧ができてしまうのだ。
それで天候が不安定になって、雨が降りやすくなるわけ。
これが8月の後半くらいで、秋雨のはじまり。

続いて、北半球で日照時間が短くなっていくと、乾燥したシベリア気団が強く張り出すようになるのだ。
すると、偏西風もなんかしてきて、オホーツク海気団も南下してくるのだ。
 これで停滞型の秋雨前線ができてくるんだけど、実際には停滞前線ができない場合もあって、ただ単に寒冷前線があるだけの場合もあるとか。
梅雨と違ってまとまった雨が降り続く、というよりは、弱い雨がしとしと降ったりやんだりで続く、と言うのが近いみたい。
むしろ、季節の移行に伴って天候が不安定になる時期ができる、とイメージした方がよいみたい。

10月に入ると、小笠原気団は完全に南太平洋に引っ込み、シベリア気団が強く張り出してくるのだ。
すると、いわゆる冬型の気圧配置である「西高東低」の状態になって、日本海側では天候が崩れやすく、太平洋側では晴天が続く冬の天気になるんだ。
春が近づいてシベリア気団が後退すると、また大陸から移動性高気圧が通過するようになるので、やっぱり天候が不安定になって雨が降ったりやんだりするのだ。
これが春の雨、菜種梅雨と呼ばれるものだよ(二十四節気では「穀雨」だよ。)。
春と秋には高気圧の勢力が逆転するので、それに伴って天候が不安定になるのだ。
なので、夏の始まりと終わりで梅雨と秋雨を対比させるんじゃなくて、春の雨と秋雨を対比させるのが正解?

 秋雨の特徴はなんと言っても降った後に気温が下がること。
北の高気圧が下がってきているから、当たり前と言えば当たり前なんだけど、
梅雨の場合は明けると一気に暑くなるから、ここは対照的なのだ。
ここのところも雨が降ると一気に気温が下がって秋っぽくなっているよね。
 それと、台風の時期と重なるので、秋雨が降っている中で台風が来ると大雨になるおそれがあるのだ。
この時期は水害が発生しやすくもあるんだ。
でもでも、実は秋の収穫を目前としたこの時期にまとまった雨が降ることが稲作には重要だったりもするんだよね。
 夏から秋になっていきなり乾燥した冷たい気候になられても困るというわけなのだ。


女心と秋の空とは言うけど、この時期は突然雨が降りやすいのも事実。
晴れていてもいきなり雨が降ることもあるのだ。
しかも、雨が降ると気温が下がるから、カゼをひきやすくもあるんだよね。
備えあれば憂いなし、で常にカサを持ち歩くのがよいのかも。
秋雨はぬれてまいろう、というわけにはいかないのだ(笑)

2012/09/22

お見舞い申し上げます。

まだまだ暑い日が続くねぇ・・・(ToT;)
スコールみたいな強烈なにわか雨も降るし。
なんだか東京は熱帯気候になったみたい。
今年は異常気象なのかなぁ?
いつもこんな暑かったっけ?

ちょうどこの9月の暑さが「残暑」。
1年のうちでもっとも暑いとされるのが「暑中」で、一般には夏の土用の18日間を指すんだよね。
立秋前の18日間がこれにあたるのだ。
今年で言うと7月19日~8月6日だったんだって。
夏バテしやすいこともあって、「土用の丑の日にうなぎを食べて元気を出そう♪」ということになるのだ。
暑中見舞いはこの期間に出すんだけど、通常は梅雨が明けてからなので、もう少し期間が短いのだ。

で、立秋を迎え、徐々に暑さのピークを過ぎて徐々に涼しくなっていくはず・・・、なんだけど、暑さのピークを過ぎただけなのでまだまだ暑いんだよね(笑)
それが残暑。
通常は秋分までを言うので、1ヶ月以上あるのだ。
実は暑中より長いんだよね。
確かに朝夕は少し気温が下がるけど、湿度も気温も高くて蒸し暑い日が続くんだよね。
なので、残暑見舞い、というのがあるのだ。

 立秋、処暑、白露と来ると次がやっと秋分。
さすがに秋分まで来ると秋っぽくなるよね。
白露は朝晩が冷え込んで草に露がつく、ということなので、夏と秋の境界。
今はちょうどその頃に当たるはずなんだけど、普通に入道雲とかも見えるし、夏真っ盛りという印象だよね。
どうなっているんだろう?

 年賀状は年始のあいさつで、むかしの数え年では元日に歳をとるので、おめでたいことだったのだ。
それで簡易にはがきで賀詞を交換する習慣が年賀状だよ。
一方、暑中見舞いは暑さの中で相手の健康を気遣う、という趣旨のものなのだ。
日本人の季節感と心配りが現れている習慣なのだ。
今ではだいぶ儀礼的になってしまっているけどね。
寒中見舞いというのもあるけど、これは相手が喪中で年賀状が出せなかったりするときに出すイメージが強いよね。
寒さの中で相手の健康を気遣う意味合いもあるんだろうけど、年賀状のすぐ後だからね。

残暑の間は早く涼しくならないかなぁ、と思うけど、実りの秋が始まるのはこの時期なのだ!
早いところではお米の収穫も 始まるし、ブドウ、桃、梨、イチジクなどの果物も出始めるよね。
残暑の季節にみずみずしい梨なんかは最高においしいのだ!
スイカが消えていくのが残念だけどorz
そういう意味では、相手が暑さで体調をくずしていないか気にしつつ、自分は出始めの秋の味覚で元気を出す時期だね!
とりあえず、おいしいものをたくさん食べよう♪

2012/09/15

世界のスパイス王

インドカレー屋さんの中には、レジのところにクミンシードが置いてあるところがあるよね。
糖衣になっているやつ。
食後に食べると口の中がさっぱりするのだ。
口の中につぶつぶが残るけどね。
そんなクミン、実は世界中で使われているスパイスなんだって。

クミンはもともとナイル川の渓谷に生育していた、エジプト原産のセリ科の1年草。
和名は馬芹、インドではジーラと呼ばれるようなのだ。
古代エジプトではミイラの防腐剤としても使われていたそうだよ。
そのむかし、エジプトのミイラは粉にして薬として使われていたこともあったんだけど、これはミイラを製造する際に使われているクミン、没薬(もつやく、ミルラ)、歴世(天然アスファルト)などが多少なりとも効果をもたらした可能性があるんだよね。
それぞれ民間療法で薬として使われるものだし。

エジプト原産のクミンは古くからエジプトや西アジアで栽培され、様々な料理に使われていたらしいのだ。
今でもそうだけど、油で熱すると独特のすがすがしい香りが出るんだよね。
この香り成分はクミンアルデヒドというものだって。
それと、少しだけ辛みを与えるので、スパイスとしてちょうどよいのだ。
アラビア料理やトルコ料理でのクミンの使用はここから端を発するんだよ。

このクミンがメソポタミア地方に伝わり、さらにカルタゴ経由でアルプスを越えることとなるのだ。
まずはイベリア半島南部に建国された新カルタゴ王国(今のスペインのあたり)に広まり、そこから欧州全体に広がったんだって。
こうして、古代ローマの時代にほかのスパイスと同様に欧州世界にも伝わり、珍重されることになるのだ。
一方で、アラビア世界からインドにも伝わり、インドではほぼ必須と言ってもよいくらいのスパイスになるんだよ。
ガラムマサラやチャツネには欠かせないのだ。
このせいで、いわゆるカレーの香りはクミンの香りなんだよね(ちなみに、カレーの色はターメリックの黄色。)。
アラビア料理やトルコ料理などのオリエント料理がカレーのようなにおいと感じるのはこのため。
ソーセージなんかでもクミンを使うとちょっとカレーっぽいにおいになるんだよね。
むかしの魚肉入り皮なしウインナーなんかがそうだったのだ。

スペインでは、他の欧州諸国と違って、一時期イスラム勢力に占領されていたこともあり、より根強く料理に取り入れられているとか。
でも、スペインはやがて強国となり、大航海時代に世界帝国になるので、スペインから新世界へも広がっていくのだ。
まずはメキシコに伝わり、そこから南北へ広がっていくんだ。
南米のテクス・メクス料理に欠かせないチリパウダーもクミンが入っていて、これがチリコンカーンの香りになっているのだ。
メキシコ料理もちょっとカレーのにおいがするときあるよね(笑)

もちろん、インドに伝われば中国にも伝わるもの。
中国では中医薬(いわゆる漢方)取り入れられ、健胃・消化促進などの効果が期待されたのだ。
特有の香りで食欲が増進されるのもあるけどね。
中国の中でも、ヒツジ肉などちょっと臭みのある肉をよく食べる満州料理でよくつかわれるみたい。
もともと騎馬民族で中央アジア一帯を支配していたというのもあるんだろうね。
というわけで、世界中に広まっていったのだ。
和食にはそんなに取り入れられていないけどね(>o<)

古代ギリシアではそのまんま食欲をそそるので食欲のシンボルだったらしいんだけど、中世欧州ではなぜか「貞節」を象徴するようになったとか。
恋人の心変わりを防ぐ特効薬と信じられていて、戦場に赴く若い男性に持たせたり、恋人同士が結婚式を挙げる際にポケットにクミンを忍ばせる風習なんてのもあったらしいよ。
ということは、恋人同士でインド料理を食べに行ったら、確実にクミンをかじるようにしなきゃね(笑)
浮気っぽいパートナーは、クミンの香りのする料理で胃袋をつかむのが大事だよ!

2012/09/08

♪インドの山奥で、修行して

この前、浅草で印傳の小銭入れを買ったのだ。
前にちょろっと見たときにほしいと思ってたんだよね。
「勝ち虫」として縁起のよいトンボ柄で、こじゃれた感じなのだ。
お金も貯まるかな?

この「印傳」というのは、なめしたシカ(又はヒツジ)の皮に漆で模様を付けた工芸品。
こじわがあってしなやかなシカ皮は手になじむし、特殊な製法で防水性や耐久性もアップしているのだ。
現代では巾着やがま口、印章入れ、小銭入れ、財布などなどの製品があるよ。
かつては馬具、胴巻きなどの武具、羽織、たばこ入れなんかにも使われていて、江戸でもはやっていたんだとか。
今でも弓道の道具にはその名残があるみたいだよ。

一説にはインド伝来のものだから「印傳」と呼ばれる、と言われるんだけど、南蛮貿易がさかんになった江戸前期に東インド会社から輸入されたインド産の皮革製品「インデヤ革」に由来があるとか。
でも、日本で独自の発展をとげて、漆で模様を描くようになるのだ。
小桜や亀甲、トンボ、菊などがメジャーな柄。
これが小粋だというのではやるんだ。
さらに、異なる色の顔料を重ね塗りすることで、「更紗」のように極彩色にもできるのだ。
手間はかかるけどね。

インド伝来というのだけど、きれいな色に染色された革製品というだけで、それにインスピレーションを受けた日本人が独自の技術で作り上げているのだ。
特に、「ふすべ」と言われる染色技法は日本古来のもの。
推古朝というから、聖徳太子の時代にはもうあった技術なのかな?
そのままでは白いシカの皮を、わらと松脂を燃やしていぶし、黒い色をつけるのだ。
皮を「燻製」しているような状態だけど、煙でいぶすことで皮革のタンパク質が変性して腐らなくなるとともに、松脂中の樹脂成分が黒煙とともに皮の表面について、そこで熱化学反応をして高分子コーティングになるのだ。
これにより耐水性・耐久性が上がるらしいよ。
特殊な皮なめしの方法ということだね。
染液につけない皮革の染色方法って非常にめずらしいらしいよ。

この鮮やかな色のなめし革が一段と化けたのが甲州において。
もともと甲州は皮革製品が特産だったみたい。
重ね塗りの手法もすでにあったようなのだ。
で、その伝統も活かして、「インド伝来」の鮮やかな皮革に漆で柄をつける製法が始まるのだ。
今でも甲州印傳が有名で、伝統工芸品に指定されているよ。
甲州以外でも印傳の技術は一部あるみたいで、ボクが買ったのは江戸に伝わる技法で作った印傳だって。
それでも、やっぱり甲州印傳が本場みたい。

なめして染色した皮に手彫りした型紙を押しつけて、その上から漆を塗るのだ。
型紙は小桜やトンボなどの柄が穴状に「ぬかれて」いて、そこだけ皮に漆がつくわけ。
これを丹念に塗り込んで、熱と蒸気で漆を乾燥させるとできあがりなのだ(漆は熱と湿気で化学反応を起こして固まるのだ。)。
複数の型紙を使って顔料で様々な模様をつける技法もあるよ。
浮世絵のように一色ずつ色をつけていくんだよ。

漆で柄をつけるのは見た目だけの問題じゃないんだ。
細かな柄がなめらかな皮の表面につくことで、それが滑り止めになるのだ!
いぼいぼ付の軍手と同じかも(笑)
弓道の弓や馬具、たばこ入れ、小銭入れ、札入れなんかの用途だとそれが発揮されることになるのだ。
実用的でもあるんだよね。
皮のなめらかさを活かしながら、見た目もよく、実用的でもあるっていうのはなかなかすばらしいよね。

皮革製品っていうとどうしても欧米のものが思い浮かぶし、確かに染色も鮮やかなんだけど、日本の技術もあなどれないのだ。
印傳は和装小物としてしか見かけないけど、実は海外に発信すべき日本の皮革製品なのかも。
漆を使っているというだけで海外の興味は引きそうだし、柄もかわいいからいい線行くと思うんだけどなぁ。

2012/09/01

ぶんべつぶっんべっつ♪

集合住宅で暮らしていたときは、いつでも自分が好きなときにゴミをゴミ捨て場にすれられたのだけど、新居に引っ越してからは地域のゴミ捨てルールに従って、決められた曜日に決められたゴミを出す必要が出てきたのだ!
当たり前のことなんだけど、まだ慣れなんだよねぇ(笑)
地域ごとに微妙に分類の考え方も違うしね。
でも、我が家はけっこう分別をしっかりする方なので、早く新ルールに慣れて分別するのだ!

そう言えば、子どものときって燃えるゴミと燃えないゴミくらいの分別しかなくて、空き缶の回収が後から加わったような気が。
そして、ペットボトルや古紙の回収やら、いつしかいろんな分別をするようになったんだよね。
一時期横浜市では、燃やせるゴミとどうしても燃やせないゴミに分けていて(笑)、燃やせるものは高温の炉で焼却し、燃やせないものは破砕した後に埋め立てていたみたい。
さすがに環境問題が注目されるようになってからは分別が進んでいるようだけど。

このゴミの分別、「沼津方式」と呼ばれる手法のようなのだ。
昭和50年度から沼津市が導入したのでそう呼ばれているらしいんだけど、現在のゴミ出しの基本、燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミ等にゴミを捨てる人が自ら分別して、指定された日に出すというもの。
それ以前は特に家庭などではゴミを分別せず、ゴミ処分場に集めてから手作業で分別・処理していたんだって・・・。
この「沼津方式」の導入により、ゴミ処理にかかる人件費・設備費が節約されるだけでなく、自分で分別するのでゴミ出しに対する意識を高め、ゴミの量自体も減るというのだ。
通常は燃えるゴミが週2回、プラスチックゴミが週1回、その他金属・陶器などの燃えないゴミ、古紙・ペットボトル・缶などの資源ゴミは月に数回という感じだよね。
このほか、自治体や町内会独自の取組として、古布・古着、乾電池、発泡スチロール製トレー、牛乳の紙パックなどの回収が行われることもあるよね。

この分別のときに参考にするのがリサイクル識別表示マーク。
「アルミ」、「スチール」、「紙」、「プラ」などの字が○や□、△の矢印に囲まれているマークだよ。
資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)により表示が義務づけられているのだ。
あんまり気にしたことないけど、電池にはNi-Cdとか、Li-ionとかいうマークもあるみたい。
このマークがつくまでは、空き缶を分けるのに、磁石につくかつかないかでアルミとスチールを分けたりしたんだよね。
硬いとスチール、もろいとアルミというイメージもあるけど、技術が進んで薄いスチール缶ができてからは、スチール缶でもつぶせるようになったので区別が難しくなってきたんだよね。

リサイクルされるゴミで有名なのはペットボトル。
△矢印に「PET」のリサイクルマークもおなじみだよね。
でも、これはガラスびんとは違って、もとと同じペットボトルにリサイクルさせる割合は1%に過ぎないんだって。
どうしてもペットボトルとしてリサイクルしようとするときれいに洗ってから破砕し、化学分解して元の素材にもどしてもう一度高分子に合成する、ということになって、コストも手間もかかるのだ。
それより、簡単な化学変換で、たまごのパックやポリエステル繊維にできるので、そっちに活用した方がよい、というわけ。
実際に回収されたペットボトルのほとんどはこの方法で再資源化されるのだ。
ペットボトルは高温で燃えるためゴミ焼却炉が傷む、ということでリサイクルが進んで面もあるんだけど、逆に、火力発電所で燃料にされることもあるみたい。

それより以前からリサイクルされているのはガラスびん。
むかしはコーラやサイダーのびんを酒屋さんに持って行くと数円もらえたりしたんだよね(笑)
ラムネなんかはびんを返すとお金が一部もどってきたりしたのだ(実際には買ったときにデポジットとしてびん返却の保証料を払っていて、それがもどってくるだけなんだけど。)。
ガラスびんは丈夫なんで、そのまま同じ用途で使われることも多いよ。
今では「リターナブルびん」と呼ばれるのだ。
一方で、そのままリユースせず、いったん破砕してカレットと呼ばれるガラス原料にしてからガラス製品にリサイクルすることもあるよ。
こっちはワンウェイびんと言うもので、ゼロからガラスを作るよりはるかに安価なので、ガラスびんの多くはカレットを原料にしているらしいよ。

これと同じような状況はスチールやアルミ。
それこそ鉄くず回収は戦前からのことだけど、日本は鉄のリサイクル率が世界一なのだ!
アルミはボーキサイトから精錬するとめちゃくちゃ電気が必要なんだけど、アルミ製品のリサイクルだと数%程度の電力量ですむようで、きわめて重要なのだ。
アルミ製品が増えたのも、リサイクルが進んでいるからかもね。

そして、最近いろんなところで力が入ってきているのが紙。
むかしから古紙をトイレットペーパーや段ボールにリサイクルしているのは有名だよね。
「再生紙を利用しています」という注記もよく見かけるようになったのだ。
コピー紙の場合は「原料の70%に古紙を使用しています」なんて環境に配慮したものが好まれる傾向も。
通称「グリーン購入法」と呼ばれる国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)では、国や地方が購入する物品は環境に配慮されたものを購入することが求められていて、それで古紙70%以上のコピー紙が使われていることもあるんだよね。

牛乳の紙パックの回収はむかしから行われているけど、あれっていっさいリサイクル素材を含まないバージンパルプで作られているんだって。
なので、紙としての品質も高く、リサイクルにもってこいだそうだよ。
一方、シュレッダーしてしまった書類は、すでに紙の繊維が寸断されてしまっているので、紙としてのリサイクルはむずかしいみたい・・・。
ただし、紙のリサイクルってそれなりのエネルギーが必要なので、必ずしも環境にやさしいかどうかは疑問なんだって。
熱帯雨林などを伐採してパルプを作るとなるとマイナスだけど、管理した植林地から木材チップをとって、それを原料にする場合はリサイクルより環境に優しいみたい。
とは言え、それで紙の需要が全部まかなえるわけでもないだろうから、リサイクルは必要だと思うけどね。

というわけで、ゴミの資源化の問題はなかなか興味深いのだ。
このほかにも、使い古したテレビや携帯電話を回収してレアメタルを回収・リサイクルする「都市鉱山」なんてのもあるよね。
まだまだ奥が深いのだ。

2012/08/25

ぎっくりくりくりくーりくり

引っ越しの後片付けで、小さなタンスを動かしたんだけど、ちょっと無理な姿勢で持ち上げたから腰を痛めてしまったのだ(>_<)
ま、寝違えたくらいの軽傷なんだけど。
すわっ、これがぎっくり腰か!?、と一瞬焦ったよ。
父親なんかがなったときを思い出すと、しばらく動けないくらい痛がっていたからね。

このぎっくり腰、「急性腰痛」と言われるんだけど、これってそのままの名前だよね(笑)
この名称自体は何も説明していなくて、現象を言っているだけなのだ。
急に発生する腰痛、ということだけど、原因は様々で、内臓の疾患による疼痛(すい臓、腎臓など)、皮膚の疾患、椎間板ヘルニア、脊椎の圧迫骨折、腰回りの筋肉損傷(いわゆる「筋肉痛」と同じ。)などなど。
中には腫瘍によるものもあるようなので、気をつけないといけないのだ。
このうち、重いものを持ち上げようとしたとき、立ち上がろうとしたとき、無理な姿勢をとったときなどに発生するのを俗に「ぎっくり腰」と呼ばれるのだ。

欧米では「魔女の一撃」なんて呼ばれるらしいけど、確かに、いきなり腰に「ぐきっ」という効果音がなったかのように痛みが発生するのがぎっくり腰の特徴。
そして、あまりの痛さに立ち上がれなくなったりするんだよね。
ところが、軽ければ3日もすれば直るし、2~3週間でだいたい痛みは消えるのだ。
長くても3ヶ月以内で治ることが多いみたいだよ。
不思議だよねぇ。
基本的に原因が特定できていないのでどうすればいい、と安直なことは言えないけど、一般的には炎症が起きているのは確かなので、痛みがない姿勢で安静にして冷やすのが効果的みたい。
炎症がひどくなるので、お風呂などはNG。
そもそも浴槽に座って入れないくらい板意味を伴うこともあるだろうけど。

椎間板ヘルニアや脊椎圧迫骨折だと自然に痛みがなくなることはないので、きちんと病院に行って治した方がよいのだ。
と言っても、これらもそんなに有効な治療法があるわけじゃないんだけど。
自然に治るのは、筋肉や靱帯などの損傷、つまり、筋肉痛のような状態が発生していて、それが解消されることになるから。
骨や関節まで痛めてしまうともう慢性症状になるよ。
ただ、靱帯が損傷した場合は「くせ」がつく可能性があるので、ぎっくり腰になりやすくはなるのだ。

仕組みは簡単で、無理な姿勢で力がかかるので、負担に耐えきれず筋肉や靱帯が損傷したり切れたりするのだ。
それでそのまわりで炎症が起こって痛みが発生するわけ。
損傷によっては、完全に元通りになる場合もあるし、痛みは治まっても完全には治らず、動きに制限が出たりと後遺症が起こる場合もあるのだ。
ぎっくり腰の「くせ」もその一つだよね。
で、治療法としては、炎症を抑え、筋肉・靱帯の損傷が自然に治るのを待つだけ・・・。
なので、通常の筋肉痛と同じく、痛み止め(インドメタシンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤)を使ったり、場合によってはコルセットなどで動きを制限することになるのだ。
ちなみに、筋肉や靱帯に損傷があるわけで、肩こりのようなうっ血・血流の滞留という症状ではないから、マッサージは厳禁だよ!

ぎっくり腰を防ぐには、普段から腰回りの筋肉・靱帯を柔らかくするしかないのだ。
でも、そんなに難しいことじゃなくて、毎日腰をひねる、回す、前屈・後屈の運動などをして体をやわらかくしておくとだいぶ違うみたい。
それとともに、無理な姿勢で無理な動きをしないことも大事。
冷えていると余計に硬くなるので、重いものを持つときなどは事前にストレッチをすることも大事だよね。
それでも、加齢による筋肉・靱帯の劣化は避けられなくて、場合によってはくしゃみをしただけでもぎっくり腰になることがあるようなのだ。
筋肉・靱帯の場合は鍛えていれば経年劣化はある程度遅らせられるので、やっぱり普段から気をつけて動かすしかないんだね。

2012/08/18

光のスピードで

最近のネットは高速化・大容量化したよね。
むかしは電話線をモデムにつないで、ネットにつなぐときに「ぴ~ひゃらひゃら・・」なんて音がしたものなのに(笑)
その後、ADSLが来て、そして、光回線が来たのだ!
電話線モデムだと54kbpsとかいう速度だったのに、一気に100Mbpsの世界だからね。
約2,000倍なのだ!
ネットで動画がさくさく見られるわけだよ。

この光回線は、光ファイバーを使った光通信。
かつてはランプの光でモールス信号なんかをしていたわけだけど、そんなのとはわけが違うよ(笑)
従来の伝染や電波を使った通信に比べ、傍聴されにくい(秘密保持しやすい)、電磁誘導ノイズの影響を受けず安定した通信が実現(逆に、伝染や電波は強地場が近くにあったりすると影響を受けて信号にノイズが入るのだ。)など。
さらに、レーザー光を使えば高速に長距離の伝送ができるのだ!
といいことずくめ。

ところが、そんなメリットばかりではないんだよね。
今でも電線であるところのLANケーブルは普通に使うし、無線LANやWiFiといった電波による通信もむしろ伸びているよね。
これは光通信にとって比すような光ファイバーの特徴によるところが大きいのだ。
光ファイバーは高速・長距離・大容量通信が得意だけど、電線や電波に比べてデメリットもある、ということ。

まず、最大のデメリットは、光ファイバーは硬いので、曲げに弱い、ということ。
光ファイバーは、コアとクラッドと呼ばれる透明な光を伝送する部分が軸なのだ。
コアとクラッドでは微妙に屈折率が違うので、コアの中を通る光はクラッドと接するところで全反射又は屈折をして、ジグザグにコアの中を進んでいくことになるんだ。
コアやクラッドの透明度が高く、不純物が少ないほど、減衰も少なく、きれいに遠くまで情報が伝えられるという仕組み。
で、そうなると、その素材が問題で、一般的に使われているのは石英ガラス(シリカ・ガラス)。
ようはガラスの細い線なので、大きな曲率では曲げられるけど、電線のように自由自在に曲げられるわけではないのだ(>o<)
これが配線の自由度を狭めていて、長距離を結ぶなら問題ないけど、近距離を結ぶときには制約になるんだよね。
実際、光回線のルーターに来ている光ファイバーは強く曲げるとおれてしまうので曲げないように、と言われるのだ。
最近はプラスチック製の光ファイバーもあるので、ある程度融通が利くようになってはきているんだけど、プラスチックはガラスに比べて赤外線や紫外線を吸収する性質があるため、伝送損失が大きくなるのだ。
ガラスに比べると、軽く、安価で、曲げられるので使いやすくはあるけど、限界はあるんだよね。

電線だとかなり自由に曲げられる、というのもあるけど、つなぐのも比較的簡単。
素人でもできるのだ。
光ファイバーも熱で端を溶かしてつなぐことはできるけど、専用の工具がいるのだ。
プラスチック製ならわりと簡単らしいけど、ガラス製の場合はコアの軸を合わせるのが難しいみたい。
ちゃんとつなげないと結合部分でロスが大きくなるので、なかなか素人にできるものではないみたい。

上でもちょっと触れたけど、次に大きな原因は光ファイバー自体が高価なこと。
しかも、自由に曲げられないので、どうしても通信網の敷設にはコストがかかるのだ。
最近はそれで無線が増えてきているんだよね。
もともと携帯電話用の基地局があって、スマホの普及でその通信料の増強を図っているので、それを使おうというわけなのだ。
三大携帯キャリアもそれぞれその部分を強化しようとしているし、e-mobileなんかもがんばっているよね。
当然光通信に比べれば遅いけど、電波が入れば通信が可能になるので、自由度が高いのだ。
壁に穴を開けたりしなくてもすむしね。

我が家で光回線を選んだ理由は、ネットも電話もテレビも全部まとめてできること。
テレビアンテナを設置するのも大変だし、高層建築も多いから都内では電波が入りづらかったりするんだよね。
反射電波による干渉もあるのだ。
光電話も電話回線に比べると安いし(停電時は使えないなどの制約はあるけど)、まとめればお得、という判断さ。
家では光回線の開通まで不便していたけど、むかしはこんなのなかったんだよなぁ、と思うと、一度教授した文明はなかなか捨てられないんだなぁ、と思うよね。

2012/08/11

赤い惑星を捜索せよ

8月6日に米国の火星探査ミッション「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL)」のローバー「キュリオシティ」が無事に火星表面に軟着陸したのだ!
今回は中継なんかもあって、宇宙大好きな米国人は大興奮。
日本でもそれなりに報道されていたよね。
火星に生物の痕跡を見つける、という重要な任務を持っているのだ。

火星探査車といえば、今でも稼働しているオポチュニティが有名だよね。
これは双子の探査車で、「マーズ・エクスプロレーション・ローバー(MER)」というミッションで、1ヶ月弱を挟んで二つの探査車を送り込んだ計画の片割れなのだ。
火星の離れた場所に二つのローバーを下ろして、広範囲を探索しようというものだよ。
相方のスプリットも実は長持ちで、2010年1月までは元気に動き回っていて、その後動けなくなってから2011年4月にミッション終了が宣言されたんだ。
史上もっとも長く稼働し続けた惑星探査車じゃないかな?
何より、丈夫に作っているよね。
今回のキュリオシティにもそれくらいの活躍をしてほしいし、できれば、2台が出会うなんてのも夢があるよね(笑)

人類による火星探査の歴史は古くて、1960年の冷戦下で米ソによる宇宙開発競争が活発化している時代、付の次の目標として設定されたのが火星だったのだ。
ソ連も1970年代前半までに何機も探査機を送っているんだけど、たどり着けなかったり、探査車が着陸してもすぐに通信途絶になったりとうまくいかなかったのだ・・・。
その後も何度かトライしているけど、やはり運がないのかうまくいかないのだ(>o<)
月の探査も地球からは見えない裏側の探査がメインだし、このあたりではどうしても米国の一人勝ちなんだよね。

一方、米国は1960年代中盤から惑星探査を本格化し(ちょうど有人月面探査が軌道に乗り始めたところだから、次の目標ということだろうね。)、マリナー計画が始まったのだ。
マリナー計画は地球のおとなりの惑星を探査する計画で、金星と火星が対象なんだ。
最終的には太陽系外に出て行くボイジャー計画につながったんだよ。
このマリナー計画の3号・4号、6号~9号が火星探査に当てられているんだけど、最初の3号は失敗するものの、4号は火星の近傍(それでも9600km地点)を通過して、接近撮影に成功しているのだ。
さらに、5号・6号は3550kmまで近づき、表面写真を撮ることに成功したんだ。
8号の打上げ失敗をはさみ、9号では初めて火星の周回軌道へ入れることに成功し、火星表面の約70%を撮影したのだ。
これが1971年のできごとで、有人月面探査のアポロ計画ももう終盤にさしかかっているころだね。
で、この周回探査の成功を踏まえ、今度は火星表面へ探査機を送ろう、ということになったのだ。

その最初がバイキング計画。
小型の探査車(ランダー)をパラシュートと逆噴射ロケットで火星表面に軟着陸ことに成功し、世界で初めて火星表面の鮮明な写真を送ってきたのだ!
バイキングは1号も2号も1976年に軟着陸してから5年間ほど活躍したのだ。
火星の周回軌道に残ったオービターもトンデモ系で有名な「火星の人面岩」の写真を撮っているよね。
これは大成功を収めた探査だったのだ。

その後しばらくはスペースシャトルの開発に集中していたので火星探査はとぎれるんだけど、1990年代に再開。
火星探査の場合、地球と惑星の公転周期の違いから780日(約2.135年)の間隔で打上げの良タイミング’少ないエネルギーで火星に到達できるタイミング)が訪れるんだ。
ここからNASAは本気になって、このタイミングごとに火星ミッションを送ろうと計画することになるよ。
国際宇宙ステーションは着々と進んでいったけど、やはり地球の重力圏外に出たいという欲求が強いんだろうね。
ところが、1992年打上げのマーズ・オブザーバーは失敗orz
それを挽回したのは1996年に打ち上げられたマーズ・グローバル・サーベイヤーで、翌年に火星に到達し、詳細な地図の作成に成功したのだ。

これと対となる火星探査車ミッションもあるのだ。
マーズ・グローバル・サーベイヤーの1ヶ月遅れで、けっこう有名なマーズ・パス・ファインダーが打ち上げられ、なぜかマーズ・グローバル・サーベイヤーより4ヶ月早く火星に到達し、ローバーを軟着陸させたんだよね。
マーズ・グローバル・サーベイヤーはきれいに周回軌道に入れる必要があるけど、こっちはローバーを届けるだけだからかな?
マーズ・パス・ファインダーが有名になったのは、パラシュートとロケット噴射で減速した後、エアバッグをふくらませて火星表面で弾ませて衝撃を抑える、という着陸方法だよね。
すごいことを考えるものなのだ。
ローバーは1ヶ月程度の寿命の小型のもの(10.6kgと大きなラジコンくらい!)で、けっきょく3ヶ月弱にわたって探査したのだ。
火星にかつて水が存在した証拠を発見したことが功績だよ。
ちょうどこのころのNASAの長官はゴールディンさんで、「Faster, Better, Cheaper」の方針を提示し、バイキング計画の1/5の資金で、3年という短い開発期間で達成されたミッションだよ。

この成果をもとに、今度はもっと大きな探査車を送って大々的に探査しよう♪、と出てきたのが先ほどのスピリットとオポチュニティ。
その前にも1回探査機を送っているんだけど、それは着陸に失敗しているんだ・・・。
で、このスピリットとオポチュニティでもエアバッグ方式を採用。
今でも動いているオポチュニティは平坦な場所でなく、クレーターの中心付近に着陸したんだけど、なんとか抜け出したんだ。
着陸したときは「ホールインワン」とか言って喜んで、そのクレーターを「イーグルクレーター」なんて名付けたらしいけど・・・。
これらは火星の広範囲にわたって土壌と岩石の分析をし、火星に水があった証拠集めをしていたのだ。
今では火星に水が存在したことはほぼ定説なんだけど、液体の状態で水があったかどうかが焦点なんだよね。
地球型生命の場合、液体の水が存在することが重要なので。

そして、さらに大型の分析を行うべき開発されたのがマーズ・サイエンス・ラボラトリー。
名前が示すとおり、火星の表面で岩石や土砂をすくい、そのままそれをサンプルとして科学分析をしてしまおうという計画。
探査車のクリオシティも巨大で900kgくらいあるのだ(スピリットとオポチュニティは174kgなので約5倍!)。
軽自動車ほどの大きさかな?
過去と現在の火星で地球型生命が保持できるかどうかを確かめるのがミッションの目的なのだ。
コスト超過、計画遅延で打上げが危ぶまれたけど、去年の11月に打ち上げられ、つい先日ローバーが火星に降り立ったのだ。
さすがにこの大きさだとエアバッグは無理なので、パラシュートと逆噴射で軟着陸するんだけど、探査車を火星表面に送り届ける機構がまた複雑なんだ。
はやぶさで使われたような耐熱シールドのエアロシェルの中に入って火星の大気圏に突入。
その後パラシュートを開いて耐熱シールドを分離するのだ。
さらに、ローバー自体が逆噴射するんじゃなくて、逆噴射する降下ステージというのがあって、ローバーはそこにクレーンでぶら下げられているんだよ。
地表すれすれまできたところでクレーンからローバーを分離、降下ステージはそのまま逆噴射して別のところまで行ってから落ちるので、ローバーを傷つけないのだ!
よくこんなのを成功させたものだよ。

でも、これはいわばやっと目的地にたどり着いたところ。
ここから1火星年(約2.2年)は探査をすることになるのだ。
今度はどんな成果が出るのかな?
楽しみだよね。

2012/08/04

いつまでも続けられると思うなよ?

最近は家庭菜園をやっていたり、ベランダでプランター農業をやっていたりするけど、肥料をやっているのに育ちが悪くことがあるのだ(>o<)
1年目はしっかり収穫できたのに、2年目、3年目とできが悪くなってくる・・・、ということも。
でも、これって実は農業としては当たり前のことかもしれないんだよ。
それは「連絡障害」というやつなのだ。

農業の素人であるボクらは、それこそ農家の人は同じ田・畑で同じものを作り続けていると思っているけど、さにあらず。
同じ作物を育て続けると、土壌に変化が起こったり、病害が蔓延したりして収穫量ががくんと落ちるのだ。
これを連絡障害と言って、むかしから対策が講じられてきているんだよ。
日本の主要作物である水稲の場合は、湛水(たんすい)していることもあって連絡障害を起こしづらく、たまに休耕田はあっても常に同じ稲を作り続けているからそのイメージが薄いんだよね。
でも、畑作の作物なんかは同じものを作らず、複数の作物を循環させて作ったりするんだよ(これを「輪作」と言うのだ。)。

連作障害の主な原因は、作物を生育させることに起因する土壌の変化と、土壌における病害の蔓延。
例えば、土壌の変化でいうと、作物によって吸収しやすい栄養素が違ったりするので、特定の微量元素やミネラルが不足したり、過剰に余ったりするのだ。
これが適切に生育する範囲を越えると生育不良が発生し、連作障害となるわけ。
病害の方は、細菌や虫、ウイルスなど原因はいろいろとあるけど、同じ作物を育て続けるとその作物につく病害の原因が土壌に蔓延しやすくなり、病気にかかりやすい土壌となってしまうのだorz
これは灌漑用水や農具・農業機械で伝播するおそれもあって、けっこう危険なんだよ。
こうなるともう消毒しかないので、燻蒸したり、黒いビニールで表面を覆って太陽熱を集めて土壌温度を高くしたり(これってけっこう見かけるよね。)、熱湯をかけたりといろいろ方法があるみたい。

で、病害の方はなんとか防ぐとしても、土壌の変化は作物を育てる以上避けられないのだ。
稲も水稲だと連絡障害は起こりにくいけど、陸稲だとダメなのだ。
これは水をはっているかどうかの違いで、水が張られている田んぼは多様な生物が生息していてひとつの生態系が構築されているので、天然に有機物が供給されるシステムになっているのだ。
冬の間に水を抜いても、そこにはミミズなどが繁殖し、土をよくかき混ぜてくれるんだよね。
そう考えると、水田というのは実によくできた農業システムで、まさに米ばかり食べていた日本を支えていたのだ。

水田のようなシステムを持っていない場合は、他から土を持ってきて入れ替えたり、深く掘り返して土壌の室改善をしたりもするよ。
もっと極端なものだと、南米で問題になっているような焼き畑農業になるのだ。
もともと栄養分に乏しい赤土の層が薄くしかないのが熱帯雨林の特徴で、その上にシダやこけ、下草が生えることで保水性が維持され、ジャングルを支えているのだ。
でも、そのまま開墾したのでは農業には適していないので、それらを焼き払って一時的に有機物を添加し、農業に使うんだよね。
とは言え、すぐにその有機物は枯渇してしまうので、連絡障害が起こり、次の農地を獲得するためにまた火をつける、ということで森林がどんどんなくなっていくんだ・・・。

そのような消耗戦をし続けるわけにもいかないので、古来からローテーションで作る作物を変える、ということが行われてきたんだ。
これが輪作。
例えば、コムギ、オオムギなどの穀物は土壌の窒素分をよく吸収するので、土壌がやせ衰えていくのだ。
そこで、空気中の窒素を固定する根粒菌と共生するマメ科の植物を途中で栽培すると、土壌中の窒素が増え、地力が復活するわけ。
家畜用飼料作物であるクローバーやダイズ、白インゲンなどの豆類が栽培されるのはこのためだよ。
キャベツや白菜などのアブラナ科の結球する野菜は、連作するとまるまらなくなるので、同じアブラナ科であるダイコンやカブ、コマツナなどもダメなんだ。
セリ科のニンジン、ナス科のピーマン、ナス、トマト、ジャガイモ、ウリ科のキュウリ、シロウリ、マメ科のダイズ、エンドウマメ、ソラマメなどに変える必要があるよ。
おそらく、家庭菜園でうまくいかないのはこの辺なのだ。
アブラナ科は栽培しやすいからついつい連作になってしまうのだ。
その場合は、ウリ科のゴーヤや、マメ科のダイズやエンドウマメなんかを栽培したらいいんじゃないかな?

欧州で中世から行われてきたのは三圃式農業。
コムギのような冬穀(春に収穫する穀物)、オオムギ、ライムギのような夏穀(秋に収穫する穀物)、休耕地でローテーションを回すのだ。
には家畜(ウシ、ヒツジ、ヤギ)を放牧し、その排泄物で土壌を回復させるんだよ。
これがさらに発展したのが、農業革命とも言われた英国のノーフォーク農法。
夏穀=>クローバー=>冬穀=>カブの4周期で回すんだけど、これだと休耕地がいらないし(クローバーは家畜の飼料にもなるし、蜂蜜もとれるのだ。)、カブは不足しがちな冬季の家畜用飼料になるんだ。
これで一気に農業生産力が上がったんだって。

連作障害を防ぐには肥料や有機堆肥をどんどん追加していくっていう方法もあるんだけど、どうしても余計なものが残ったりして土地がやせていくことになるので、やっぱりむかしながらの輪作が持続可能な形態みたい。
今ではそれこそいろんな栽培用植物があるから、うまく回せればもともと土地がやせている場所でも農業が可能になっているのだ。
どこまで人口が増えるのか、増やしていいのかはよくわからないけど、現に食糧難は存在しているから、ローテクでもこういう技術がもっと発展して広がっていけばいいんだけどね。
持続発展型農業というのはこれからの課題なのだ。

2012/07/28

つーるりつーるりぴーかぴかぴか

小学生だったころ、学期の終わりの大掃除の時には床のワックスがけをさせられたものなのだ。
床をいつも以上にきれいに掃いてから、いっせいにモップで白い液体を塗っていくんだよね。
乾くまでは立入禁止になって、塗った直後はつるつるでおもしろかったのだ。
体育館なんかは長期休みの間に業者さんがやっていたみたいだけどね。
で、最近知ったんだけど、この床の「ワックス」も進化していて、今ではコーティングと言う方が普通のようなのだ。

いわゆるむかしながらのワックスは文字どおり床の表面に固形状の脂の層をコーティングするもので、それこそ最初はスキー板の裏側のように蝋などを塗っていたんだろうけど、今ではアクリル樹脂を使うのが一般的なんだって。
床の表面に薄いプラスチックの膜を作るイメージなのだ。
もの自体は安いんだけど、すぐにはがれてしまうので1年に1回塗り直すなどのメンテナンスが欠かせないことと、塗るときに有機溶媒を使わないといけないので、くさいことがデメリットなのだ(>o<)
特有のワックス臭ってあるよね?
耐薬品性や撥水性もないので、床表面に光沢を与え、軽微な傷から保護する程度のものだよ。
塗り直しはめんどくさいけど、すぐにはがせるのはメリットで、見た目をきれいに保つにはよいのだ。

ここから少し進化しているのがウレタン樹脂を使ったもの。
アクリルは炭素、酸素、水素のみからなるけど、ウレタンはそこに窒素も加わるのだ。
アクリルがエステル結合(アルコール基の-OHとカルボン酸基の-COOHの間の結合)であるのに対し、ウレタンはアミド結合(アミノ基の-NHとカルボン酸基の-COOHの間の結合)だよ。
ウレタンの場合は耐摩耗性・耐油性に優れているので、油をはじくようになる=表面に油汚れがついてもすぐに拭き取れる、ということなのだ。
ただし、アクリル樹脂とは違って空気中の酸素や水分と反応して徐々に分解していく性質があるので、耐候性という観点では劣るんだよ。
ウレタンの場合は、高濃度に濃縮したものを塗るか、固める際にUV照射をするのだ。
UVの場合は、低分子のウレタン分子を有機溶媒に溶かした塗料を床面に塗布し、そこにUVを当てることでウレタンの低分子を重合させ、床表面でポリウレタンにするから。
アクリル樹脂の場合はもともと液体状に重合させることができるので(アクリル絵の具はまさにこれで、床に塗るワックスは透明なアクリル絵の具なのだ。)、塗って自然乾燥させるだけだよ。

UVで固めるウレタン樹脂の最大のメリットは、その場で重合させるので、分厚く、丈夫にできること。
耐用年数は一番長いみたい。
(耐用年数は皮膜がはがれない期間であって、その間中床がぴかぴかで保護されているとは限らないよ・・・。)
とは言え、あまり厚くしすぎると硬くなりすぎて引っ張り力に弱くなるので、ひび割れたりするんだって。
高濃度のウレタンを塗る場合はアクリル樹脂ほど簡単とは言えないまでもはがせるからいいとして、UVで固めるものははがせないので、適度に厚く、というのが重要なのだ。
体育館なんかはウレタン樹脂でコーティングするのが主流みたいだけど、はがせる方の高濃度のウレタン樹脂で、2年に1回とか定期的にメンテナンスするみたい。

これよりさらに強度が強くなるのはシリコン樹脂。
二酸化ケイ素(-O-Si-O-)の長い鎖状の分子に様々な有機官能基がついたものだよ(官能基の種類で性質が変わってくるのだ!)。
今ではいろんなところに使われているよね。
硬さもありながら弾力性もあって、水と油をはじき、薬剤などにも強いのだ。
しかも、10~15年はもつみたい。
ただし、はがすことはできないので、それ以上経つと床の張り替えになってしまうのだ・・・。
それはUVのウレタンも似たようなものだけどね。
とは言え、シリコンの場合は多少のでこぼこを気にせず塗れるので、塗り直しはある程度できるみたい(見た目の問題があるんだろうけど。)
時に光沢が強く、ぴかぴかてらてらになるみたいなのだ。

このシリコンよりさらに硬くなるのがガラスコーティング。
まさに二酸化ケイ素(SiO)だけでコーティングするんだ。
むかしは技術的にできなかったけど、今はナノコンポジット技術というのを使って、ナノメートルのオーダーの微少なガラスの粒子を液体の中に均一に分散させ、それを塗布して液体部分を乾燥して飛ばしてコーティングするようなのだ。
弾力性はシリコン樹脂に比べて落ちるけど、ガラスなので硬さは抜群。
耐用年数も20年以上と長期間持つのだ。
こっちは塗り直しがきかないので、原則張り替え。
でも、長い間持つし、表面に傷もつきづらいのだ。
光沢も抑えめにすることができて、床が適度なてかりになるみたいだよ。

というわけで、何度も塗るワックスから様々なコーティングと時代は進化しているのだ。
シリコン樹脂やガラスだと、薬剤にも強いので、子どもがマジックやクレヨンで床にいたずらがきをしても、除光液やベンジンで拭き取ることも可能なんだ!
防汚特性と言って汚れがこびりつきにくい特性もあるので、お掃除も楽々。
こうなると、つるつるの床はどんなコーティングになっているのか知りたくなるよね。

2012/07/21

きのこの名は?

スーパーで安売りをしていたので、白いブナシメジのブナピーを買ったのだ。
なんだかとっても人工的だよね。
しゃきしゃきしているし、味もいいんだけど、やっぱり白いといかにも人工栽培っぽいからちょっと人気ないのかな、と思ったり。
真っ白だから料理の彩りに使ったりするにはよいし、それなりに評判がよいから商品として売られているんだけど。
同じ値段なら普通の茶色いブナシメジを買ってしまうのだ(笑)

このブナピーは紫外線による品種改良をしたブナシメジで、「♪きのこのこのこげんきのこ」でおなじみのホクトの商品。
品種の登録名は「ホクト白1号菌」というらしいよ。
発売日が7月10日だったので、同日を「ブナピーの日」に設定しているんだとか。
一般的(?))には「納豆の日」だよね(笑)

ボクが子どものころは、ブナシメジという名称は一般的ではなくて、普通に「シメジ」だとか「ホンシメジ」という名前で売られていたのだ。
でも、「香りマツタケ、味シメジ」の天然のシメジは非常に貴重なきのこで、そうそう流通に乗るものではなかったんだ。
というのも、ホンシメジは外生菌生菌という種類のきのこで、植物の根の細胞の間に菌糸を伸ばし、植物と共生しているきのこなので、人工栽培が難しかったんだよね。
土中からリン酸や窒素などを吸い上げてある代わりに植物から光合成でできた炭化水素をもらって成長するのだ。
むかしから味がいいと言われるだけあって、グアニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などのうまみ成分に富んでいるんだって。
今では技術が向上したので、菌床栽培もできるようになっているのだ。
ときどきスーパーで見かける「ホンシメジ」はこの人工栽培のホンシメジで、むかしみたいにブナシメジではないのだ。
ただし、やっぱり人工栽培だと天然物とは違うみたい・・・。

で、ホンシメジは人工栽培できないので、似たような食感、味を持っている、人工栽培できるきのことして普及したのがブナシメジ。
こっちはもともと木材腐朽菌で、倒木や切り株に生えるきのこなので、シイタケと同じようにわりと簡単に原木栽培できたのだ。
今は菌床栽培が多いみたいだけどね。
20世紀までは「ホンシメジ」の名称で売られていたんだけど、もともと違う種類のきのこでまぎらわしい、ということで、21世紀からは「ブナシメジ」として売られるようになったのだ。
今では「ブナシメジ」の名前もかなり一般化したよね。
ブナシメジにも天然ものはもちろんあって、写真で見る限り、スーパーで並んでいるものとが違うよ。
カサが大きく広がっているのだ!

ブナシメジとは別にスーパーで見かけることがあるのはハタケシメジ。
畑地などでも生えているのでこの名前があるみたい。
形状や食味はホンシメジにかなり似ていて、そもそも系統上はブナシメジよりホンシメジに近縁なのだ。
ホンシメジ・ハタケシメジがシメジ科シメジ属なのに対して、ブナシメジはシメジ科シロタモギタケ属だよ。
ホンシメジに近くても、菌生菌ではなく、腐生菌なので、落ち葉や埋もれ木に生えるのだ。
それで畑地や路傍なんかにもあるわけ。
堆肥による菌床栽培が可能なので、人工栽培されたものが流通しているのだ。
ブナシメジと比べると子実体(いわゆる「きのこ」の部分)が大きいんだよね。

これらシメジ類とはまったく関係ないのに、かつてはヒラタケ(ヒラタケ科ヒラタケ属)も「シメジ」として栽培品が流通していたことがあるんだって。
味にも香りにもくせがなく、どんな料理にも合うので人気だったのだ。
「信州シメジ」などの名前で今もあるらしいけど、ブナシメジの人気が高まっているのでほぼ見かけないね。
そう言えば、子どものころによく食べたカサの部分が黒いシメジはこれだったんだ!
きのこの種類的にはむしろエリンギなんかが近縁みたいだよ。
ヒラタケなんかはそれこそむかしから食べられていたんだから、わざわざシメジの名称を使わなくてもよかったような気もするんだけど。

というわけで、以外と商品としてのシメジの世界は奥が深いのだ。
ぷりっとしたくせのないきのこ、ということでは共通なんだけどね。
食べちゃえば同じ、ではなくて、ちょっと気にしてみるとおもしろいのだ♪

2012/07/14

つぶさずにすぱっと解決

朝ごはん用のパンを切っていたら、パン切り包丁で指を切ってしまったのだ(ToT)
意外にぐっさりやっていて、しばらく血も止まらなかったからびっくりしたよ!
それにしても、よく切れるものだねぇ。
パンみたいにやわらかいものを切るから、そんなに切れ味はよくないんだろうと勝手に想像して油断していたのかも・・・。

このパン切り包丁。
独特の形状なのだ。
主な特徴は、刃が波形であることと、片刃であること。
これによりパンやスポンジのような空隙があってやわららかいものをつぶさずに切ることができるのだ。
普通の包丁で切ろうとするとどうしてもつぶれてしまうよね。
どんなに切れ味がよくてもダメなのだ(>o<)
いったん冷凍させたりすればなんとかなるけど。

秘密その1は波形刃。
刃がぎざぎざの波形になることで、刀身あたりの刃の長さが長くなるのだ。
なんでそんなことをするかというと、刃にかかる力を分散するため。
刃が長ければ、それだけ切ろうとかけた力が分散されることになるので、やわららかいパンでもつぶれにくいというわけ。
切られる方から見ると、力がかかっていないように見えても切られているわけ。
このせいでボクも指をやられたような気がするんだよねorz
指に刃が当たってるな、くらいでもずばっときれてしまうのだ!

秘密その2は片刃の刃。
よく日本刀は片刃、西洋の剣は両刃、とかいうけど、ここで言う「片刃」・「両刃」とは意味が違うよ。
こっちの「片刃」というのは刀身の片側だけに刃がついているという意味で、両刃は逆に刀身の両側が刃になっているという意味。
あまり意識していないとわからなくなっちゃうので紛らわしいんだよね(>_<)

パン切り包丁の「片刃」というのは刃の作り方。
刀身を片側のみからといで片側だけに刃ができるのが片刃。
この場合、刃の裏面は平面で、表面は斜めになっていて、断面は「∠」の形なのだ。
逆に、刀身を両側からといで中心線に沿って刃をつけるのが両刃。
刃の断面は両面から斜めに削られているので「<」の形だよ。
出刃包丁や刺身包丁などの和包丁では片刃が多くて、鉈や文化包丁、ペティナイフのような牛刀や洋包丁なんかは両刃だよ。

刃のつけ方が違うと切れ方も違ってきて、両刃の場合は対象物を押し開きながら切るので、まさに「切断する」とか「切り裂く」というイメージ。
斧や鉈のように「たたき切る」ということなんだよね。
硬いものを切るのには向いているけど、切り口はちょっとつぶれてしまうのが難点。
ただし、誰でも使いやすく、とりあえず力を入れれば切れるのだ。

一方、片刃は滑らせながら対象物を片側にだけ押しながら(=ずらしながら)切るので、「削ぐ」、「削ぎきる」というイメージ。
カンナが木材の表面を削る、彫刻刀で板を削る、というのと同じなのだ。
薄くきれいに切ることが得意で、だからこそ獣肉よりやわらかい魚を切ることが多い和包丁は片刃が多いのだ。
パンもやわらかいので片刃がよくて、同じくハムやチーズも片刃の方がきれいに切れるのだ。
ひげを剃るカミソリなんかも肌の表面の毛を突起物を削るように切るので片刃だよね。
そぎ切りにするので断面はなめらかで、うまくやればつぶれることもないよ。
まさにパンを切るのと一緒だね。

ただし、この片刃は使うのにある程度の熟練が必要で、滑らせながら切らなくちゃいけないし(日本ではよく「引きながら切る」と言うよね。)、刃のついている側の差で、右利き用・左利き用の別があるよ。
さらに、あんまりぎこぎことのこぎりのように往復させると断面がずたずたになるので、さっと退いたら切れてる、というのが理想的なのだ。
それと、どうしても刃のつけ方の差から、片刃の方がより鋭利になるので、切れ味が増すのだ。
ということは、ボクみたいに指を切ったりすると大変、ということ。
カミソリの切れ味がよいのはそのためだよ。

パンを切る場合も、できれば何回も往復させるよりは、1~2回往復させるだけで切るときれいなのだ。
特にケーキのようなよりやわらかいものだと、1回ですっと切らないとクリームや上に載っているフルーツも崩れちゃうよね。
ただし、切れ味が悪くなってくるとすっときれなくなるので、何回も往復することになって、それだけパンくずも多く出るのだ。
よく切れるパン切り包丁だとあんまりパンくずが出ないんだよ(波形の刃の形状を工夫しているのもあるのだ。)。
なので、パンくずが出始めたら切れ味が落ちてきた証拠。
特殊なとぎ方が必要なので、専門の人に任せるか、新しいものを買うのがよいかもね。

こういうので一番まずいのはちょっと切れづらくなってきた包丁。
切れないなぁ、と思いつつ余計な力を入れたり、ちょっと往復運動を増やしたりするので指をけがしやすいのだ。
でも、まったく切れないわけではないから傷はできてしまって、かつ、そんなに切れ味がよくないから傷口はぎざぎざでなかなか傷がくっつかないで血が出るのだ・・・。
ボクはそのパターンにはまったのかなぁ?
まだほとんどパンくずは出ないから、単に切り方がまずかっただけ、と思うんだけど。

2012/07/07

茶をしばけ!

年齢を重ねてくると気になるのが脂肪。
そもそもあまりに脂っこいものは受け付けなくなっては来るけど、やっぱり脂ものはおいしいよね(笑)
揚げ物なんかは無性に食べたくなるときがあるのだ。
でも、若いときならいざ知らず、代謝も下がってくるから、食べた分だけ脂肪を蓄積してしまうのだ・・・orz
で、最近では、脂肪の吸収を抑えるとか、脂肪の燃焼を高めるとかの効果があると言われる特定保健用食品が注目されているよね。
ボクも、有効性には多少の疑問を持ちつつも、自分へのいいわけ程度に摂取しているのだ。

代表的なのは黒烏龍茶。
これは脂肪の吸収を抑制すると言われているよね。
その有効成分と考えられているのはウーロン茶重合ポリフェノール(OTPP)と呼ばれる成分。
メカニズムとして想定されているのは、このOTPPが脂肪を分解するリパーゼという酵素を阻害することで吸収しづらくする、というものだよ。

脂肪は通常トリアシルグリセロールの形で、グリセリンの3つのアルコール性水酸基(-OH)に3つの脂肪酸がくっついている物質なのだ。
リパーゼは、このグリセリンと脂肪酸の間のエステル結合を切り離す作用を持っているんだよ。
実際には、3つとも切り離されるわけではなくて、グリセリンに1つだけ脂肪酸が結合したモノグリセリドと2つの脂肪酸に分解されるんだ。
これが界面活性作用(=油脂を分離させず、水中に細かく分散させる作用)を持つ胆汁酸がにより乳化され(まさにマヨネーズのような状態)、小腸の表面から細胞内に取り込まれるのだ。
乳化されたミセルの状態(中心に脂溶性・疎水性の脂肪酸とモノグリセリドがあって、そのまわりを界面活性剤の胆汁酸が囲んでいる状態)だと、細胞膜(リン脂質二重膜)を通過して細胞内に入り込めるのだ(脂肪のままだと水中で分離しているので、うまく吸収できないよ!)。
で、細胞内で再びモノグリセリドと2つの脂肪酸が結合して脂肪(トリグリセリド)の状態になって血中に取り込まれるのだ。

胆汁酸は、大きな脂肪のかたまりをほぐして小さくしてリパーゼが分解しやすくするとともに、分解した後のモノグリセリドと脂肪酸を小腸の上皮細胞に吸収させるのに役立っているんだけど、OTPPは、脂肪をからめとって、大きなかたまりにしてしまう作用があるのだ。
すると、リパーゼがうまく反応できないので脂肪は分解されないまま排出されることになるんだ。
これで脂肪の吸収が抑制されるわけ。
ちなみに、あまりに多くの脂を食べると下痢することがあるけど、それはリパーゼの分解が追いつかずに脂肪排出されるため。
OTPPはそんな状況を擬似的に作っているんだけど、そのため、場合によってはちょっとおなかがゆるくなる可能性があるよ!

ちなみに、脂っこいモノを食べた後に烏龍茶を飲むと口の中がすっきりするけど、これは口の中の脂肪を大きなかたまりにしてしまって洗い流してくれるからだよ。
中国でフィンガーボウルの中に烏龍茶を入れることがあるのも同じなのだ。
かたまりが大きい方が落としやすいんだよね。
油べっとりの皿洗いに烏龍茶を使うときれいに落ちたりするのかな?
とは言え、唾液中にもリパーゼが含まれるので、時間が経てば口の中の脂肪は適宜分解・吸収されていくので、いつまでも油まみれなわけじゃないけど。

もうひとつメジャーなのは茶カテキン。
こっちは脂肪の代謝を活性化する、と言われているのだ。
さっきのOTPPとは違ってなぜ脂肪代謝が上がるのか、メカニズムはよくわかっていないんだって(>o<)
ただし、カテキンと胆汁酸にの立体構造の違い(カテキンは芳香環なので平面的だけど、胆汁酸は環状飽和脂肪酸なので立体的にうねっている。)がヒントになるんじゃないのかなぁ、とは個人的に思うのだ。
似たような構造の部分があるけど全体として構造が違うことで、酵素を阻害・活性化したりするのはよくあることだからね。
よくわからないながら、脂肪分解酵素を活性化させるとか、胆汁酸の排出を促進するとかいくつか仮説はあるようなのだ。

カテキンというと緑茶が思い浮かぶけど、もちろん烏龍茶にも含まれているのだ。
なので、烏龍茶の場合は、OTPPで吸収を抑えるとともに、カテキンで脂肪の燃焼も活性化することになるよ。
これはすごい!
だったら烏龍茶だけ飲み続ければいいじゃない?、ってことだけど、烏龍茶はカフェインも含んでいるから、飲み過ぎるのもあんまりよくないんだよね。
それに、確かに作用は認められるけど、それがどれくらいインパクトがあるのか、というのも問題なのだ。
多少吸収を抑えたり、燃焼を上げたりしても、実際にはあまり意味がない可能性もあるんだよね・・・。
そういう意味では、気休め程度のものと思って飲むことも大事だよ。
これがあるからいくらでも脂肪を摂っても大丈夫ということではないので、過信は禁物!

2012/06/30

Every child has a beautiful name!

歌手活動を休止中の宇多田ヒカルさんがツイッターで、「最近日本では風変わりな名前の子供が多いらしいけど、絶対読めない名前とか、日本語っぽくない名前とか、ちょっとかわいそうだなと思う。親御さんたちは愛情をもって名付けたんだろうけど…(原文ママ)」とつぶやいたことが話題になっているのだ。
最近は子どもたちに「変わった」名前をつけることが注目されていて、俗に「キラキラネーム」と呼ばれたりするんだよね。
これは文字どおりキラキラ輝いているというより、皮肉を込めた言い方だけど・・・。
もともとは、2ちゃんねるでよく使われる「DQN」な親が子どもに変わった名前をつけるので、「DQNネーム」と呼ばれていたよ。
ただ、どうしても「DQN」というスラングには蔑称的なニュアンスがあるから、キラキラネームの方をよく見かけるようになったよね。

思い出してみれば、かつては自分の子どもに「悪魔」という名前をつけようとしたところ、市役所に不受理にされるという事件があったのだ。
手続的には明らかな瑕疵はなかったんだけど、市役所が法務省民事局に照会した結果、「子供の福祉を害する可能性がある」として、親権の濫用を理由に不受理にしたものだよ。
このころは、自分の子どもにそんな名前をつけるなんて!、と眉をひそめる人も多かったけど・・・。
今ではかなり予想の斜め上を行く名前もあるようなのだ。

2ちゃんねるで有名なのは「ぽっどる」だけど、これはネタかもしれないよね。
でも、「ゆとり」くんや「ぷもり」ちゃんは実際に存在していて、テレビのニュースや新聞の投書欄に登場しているのだ。
「光宙(ぴかちゅう)」とか「大熊猫(ぱんだ)」、「今鹿(なうしか)」などなどの名前も本当に存在しているそうだよ。
子どもがどう思うかは別の問題としても、まわりの大人、例えば学校の先生は苦労するだろうね(>o<)
思い切って大喜利的に読もうとすればなんとかなるのかもだけど(笑)

で、命名のルールなんだけど、これは戸籍法と戸籍法施行規則(法務省令)に依っているのだ。
戸籍法では、

第五十条 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
2 常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。


と定めていて、ここでいう「常用平易な文字の範囲」というのは、戸籍法施行規則で、

第六十条 戸籍法第五十条第二項 の常用平易な文字は、次に掲げるものとする。
 一 常用漢字表(平成二十二年内閣告示第二号)に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。)
 二 別表第二に掲げる漢字
 三 片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)


となっているのだ。
この省令の第2号で言う「別表第二に掲げる漢字」というのがいわゆる人名漢字表なのだ。

気をつけたいのは、戸籍法の体系では、命名するときに使用する文字のルールは定められているものの、読み方については言及がないこと。
だから、どんな当て字をしてもいいし、まったく関係ない読みをつけてもよいのだ!
極論で言えば、「太郎」と書いて「とむ」と読ませてもよいわけ。
ま、そういう名前の付け方をされると将来苦労するかもしれないけど・・・。
ただし、名字の世界で言えば難読の姓はいくらでもあって、「四月一日(わたぬき)」、「小鳥遊(たかなし)」、「目(さっか)」、「一(にのまえ)」などあるから、読み方に制限をつけるのは日本の伝統・文化に反することだったのかも、とちょっと思うのだ。

そして、よく命名で問題になる、「公序良俗に反する名前」、「子どもの福祉を害する可能性」などなどの「不受理」の理由は戸籍法の体系ではなく、むしろ一般法規から来るもので、出生届を出すときの手続上の問題ではないのだ。
なので、アルファベットや数字を使っている、常用漢字表・人名漢字表外の漢字を使っているなどの明確なルール違反がなければ、受付はしなくちゃいけないんだ。
さらに、不受理にすると、場合によっては裁判所に不服申立てをされてしまうよorz
「悪魔」ちゃん騒動のときはまさにそうだったのだ。

名前は一生のつきあいだから慎重につけないと、ということなんだけど、あまりにも社会生活を営む上で傷害となるような場合には改名することもできるのだ。
戸籍法では、

第百七条の二 正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

とあって、家庭裁判所の許可を得れば改名はできるんだ。
15歳以上であれば本人が、15歳未満であれば法定代理人が家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所の裁判官が「正当な理由」と認めれば改名ができるわけ。
実際に認められるのは、営業の理由による襲名又は代々の当主名への襲名を行う場合、神官・僧侶になる場合又は還俗する場合、難解・難読な名前又は珍奇な名前を変更する場合、親戚や近隣者に同姓同名の者がいて紛らわしい場合、帰化した際に日本風の名前に改める場合、本人の外見と名前の性別が食い違って不便な場合(むかしは異性と紛らわしい場合だけだったけど、性同一性症候群が認められてからは、性別の変更による改名も認められるようになったよ。)、永年使用した通称を本名にする場合、出生届を提出した時の誤りを正す場合などだよ。
ただし、裁判所としては、都合が悪くなったからといってすぐに改名すればいい、という風潮に釘を刺す意味で「親権者がほしいままに個人的な好みを入れて恣意的に命名するのは不当で、子供が成長して誇りに思える名前をつけるべき」との見解を示しているのだ。
まさに今問題になっているキラキラネームをどう考えるかだね。

とは言え、変わった名前をつけるというのは今に始まったことではないみたい。
江戸時代の国学者・本居宣長さんも弟子の中に名前の読みが難解な者がいる、と嘆いているし、作家の森鴎外さん(本名は森林太郎)は国際的に通じるようにと、子供にそれぞれ於菟(おと、Otto)、茉莉(まり、Marie)、杏奴(あんぬ、Anne)、不律(ふりつ、Fritz)、類(るい、Louis)など外国人風の名前を付けたりしているし。
それこそ、今は一般的になっている(?)「翔」とか「彩」みたいな名前はむかしは少し違和感があったわけだよね。
むしろ、現代では「太郎」・「次郎」や「花子」・「菊子」みたいな名前の方がマイナーで、逆に目立つようになっているのだ。
そういうことを考えれば「流行」ということなのかもしれないけど、明らかに読めない名前、別の意味を持つ言葉の読みを変えた名前などなどは将来困るだろうから、よくよく考えた方がよいだろうね。

2012/06/23

トンボのメガネは・・・青色遮断!

最近テレビのCMで気になっているのはパソコン用メガネ。
度なしのメガネで、パソコンからの「有害」な光を遮断し、目を守るというのだ。
確かに、長時間パソコンの画面を見ていると目が痛くなるけど、それって単にパソコンの画面が明滅しているかrだと思っていたんだよね。
でも、どうやらそうではないらしいのだ・・・。

今回のパソコン用メガネの特徴は、可視光のうちエネルギーが高い青い光をカットすること。
「ブルーライト」と呼んでいるけど、もともとはそのまま「高エネルギー可視光線」として扱われているもののようなのだ。
波長で言うと380~530nmくらいで、紫~青くらいの色の光。
この青い光は「加齢黄斑変性」の原因の一つと考えられているのだ。
これは加齢によって網膜の黄斑部が変性して視力が低下し、場合によっては失明に至のなのだ。
この黄斑部は、網膜の中でも特に□という感覚にとって重要な部分で、黄斑部の中心にある中心窩(ちゅうしんか)のまわりには明るいところで色の識別をする錐体細胞がたくさんあって、そのまわりには暗いところで白黒で明暗を判別する桿体細胞がたくさんあるのだ。
どちらの細胞も網膜に広く分布しているんだけど、特に黄斑部に多いので、ここがダメになると視力に大きく影響が出るようなのだ。

症例的には、黄斑部にダメージが蓄積され、眼底部に新生血管を生じたりするのだ。
血管ができてしまうとそれに遮られて光受容ができなくなるので、視力が低下してしまうんだよね。
そのため、治療としては、血管新生を抑える薬を使ったり、できてしまった血管をレーザー光で焼き切ったり、外科的手術で取り除いたりするみたい。
いずれにしても、なんか痛そう(ToT)
ちなみに、血管ができるわけでもなく、単に黄斑部の萎縮などが起こる症例では、有効な治療法がないのでサプリメントの投与くらいしかやることがないんだとか・・・。

まだ原因が明確にわかっているわけではないんだけど、ここに青い光が影響してそうだ、と言われているのだ。
視細胞は光を感知するとき、光受容体の視物質の化学物質の変化で認識しているのだ。
ロドプシンとか有名だよね。
で、一回光が当たると視物質が変化して、それが電気信号に変換されて脳に送られるわけだけど、そのままだと二度と光が感知できなくなってしまうので、再び光が感知器で切るように視物質が回復する代謝経路があるのだ。
視物質が元の状態にもどるまでの時間は一時的に光が感知できないラグは生じてしまうけど。
ちなみに、強い光を見てしばらく視覚がダメになる(いわゆる「目くらまし」)のはこのためだよ。
通常は全部の視細胞が反応するわけでないので残っているものが対応するわけだけど、強い光でほとんどの視細胞が反応してしまうと、もう反応できる細胞がないために一時的に視覚が使い物にならなくなるのだ。

で、この視細胞は基本的には可視光に反応するわけだけど、波長が短くエネルギーの強い、青い光は網膜にも届きやいことが知られているんだ。
すると、この視物質が元にもどるまでのラグの間にさらに光が来て、別の反応を起こして悪さをすることがあるのだ。
そのときに活性酸素なんかが出てくると黄斑部の変性につながってしまうわけ・・・。
青い可視光は太陽光にも含まれているので常に見ているんだけど、パソコンが特に問題視されるのにはそれなりの理由もあるようなのだ。

現在のパソコンのバックライトは多くの場合LEDを使っているんだよね。
人間の視覚では、光の三原色の組み合わせで色の違いを理解しているので、それを逆に応用して、LEDでフルカラーにするには三色のLED発光素子を使っているのだ。
全部の光を混ぜると白色光になるわけだけど、LEDの場合、青色発光が強いみたいなんだよね。
しかも、その波長が網膜に傷害を与えやすいと考えられている波長とほぼ一致するのだとか!
なので、ここ最近パソコンの光から目を守れ、という感じになってきているようだよ。
目の酷使というだけでなく、物理的・エネルギー的・生理学的な原因があるかもしれないのだ。

こうなってくるともう気をつけたくなるよね。
ちょっと危機感を持つのだ。
市場に出ているパソコン用メガネは、一義的には悪い作用を及ぼすかもしれない青い光の透過度を下がることで目を守るんだけど、そのままでは色のバランスが悪くなるので、他の領域の光の透過度も変えることで全体的に見やすくしているんだって。
まずは青い光を遮るフィルターとかをつけるのでもよいけど、画面を見やすくするための工夫でそういうところも大事みたい。

実際どこまでどう影響があるのかよくわからないけど、それこそ仕事をしている間中パソコンとずっとにらめっこしている、という状況は最近になって生じたことだから、リスクは未知数だよね。
10年後、20年後に加齢黄斑変性が増えているかもしれないし、意外に変わらないかもしれないし・・・。
むずかしいところだけど、そういうリスクがあるということは認識しておいて、多少気を遣った方がよいのかもね。
とりあえず、パソコン画面からはできるだけ顔を話すことにしようっと。

2012/06/16

Hey Say Junk!

ボクは普段から割と食べるものには気を遣っているんだよね。
カロリーを抑えたり、野菜が多めのものを選んだり。
でも、どうしても時々ジャンクな食べ物が恋しくなるのだ(笑)
悪そうな油を使った揚げ物とか、脂ぎとぎとのラーメンとかね。

これらはいわゆる「ジャンクフード」。
ジャンクフードには明確な定義はないんだけど、一般論として言えば、熱量(カロリー)は高いが、ビタミンやミネラル、食物繊維などがあまり含まれない食品のことを指すみたい。
その場しのぎのエネルギーは補えるけど、体を維持するのに必要な栄養はそれだけではまかなえない、ということなのだ!
燃料はあるけどエンジンオイルはない、みたいなものかな?
低価格なものが多いけど、「安くておなかはふくれるけど、栄養素としては乏しい」というイメージがつきまとうね・・・。

代表的なものと言えば、ハンバーガー、フライドポテト、フライドチキン、ラーメン、スナック菓子などなど。
日本でもあまり子どもには食べさせたくない、と思われているものが多いよね。
でも、子どもは逆に好きだったりするから困るのだ(笑)
でも、ディズニーなんかは子どもの成長に悪影響を与えるとしてジャンクフードの広告規制をしたりもしているんだよ。
米国の場合、州によってはハッピーセットが禁止なのだ。
おもちゃで子どもを釣ってジャンクフードに触れさせることになるからね。
なので、米国のマクドナルドには、サラダやカット果物、脂肪を抑えたサンドウィッチ(マクドナルドで言うサンドウィッチはいわゆる「ハンバーガー」)、無糖・無脂肪ヨーグルトなんかがメニューにあるのだ。
でもでも、米国のサブウェイはなぜかサンドウィッチとスナック菓子のセットを売っていたりするけどね(>o<)

油脂とか砂糖って人間にとってはおいしく感じる要素で、くせになってどんどんほしくなるのも確かなのだ。
ボクが時々どうしても食べたくなるっていうのも本能的なものなのかも。
特に、黄色人種(モンゴロイド)は脂肪をためやすいので、ジャンクフードばかり食べているとすぐ肥満体型にorz
たいていの場合塩分も多いので、血圧まで上がってしまうのだ!
そんな食生活じゃ体がおかしくなるよね。

でも、貧困だと、どうしてもこれに近い食生活になるのも確か。
米国のジャンクフードを見ていると、やっぱり黒人系の人が好むものが多いのも事実なんだよね。
なにしろ、肉体労働でたくさんエネルギーを消費するけど、所得は高くないのでとりあえずカロリーの高いものを、となると必然的にジャンクフードを食べることになってしまうよね。
フライドチキンやハンバーガーなんてまさにそう。

日本でも、江戸の庶民はおかずなんてそんなに食べられないので、少しの漬け物や納豆・豆腐のような豆の加工品、少量の魚くらいしかなかったんだ。
それでお米をたくさん食べていたんだけど、白飯ばかりを食べるので栄養失調になるのだ。
江戸でビタミンB不足から来る「脚気」が蔓延したのもそれが原因。
一方、農村部ではあまりお米を食べることはできず、食べても玄米。
多くは粟や稗、稷、麦などの雑穀と多くの野菜を使った雑炊なのだ。
なので、栄養面でははるかに都市部より優れていたわけ。
脂肪過多による生活習慣病病とは無縁だったかもね・・・。
(江戸時代は保存性の関係でしょうゆや味噌の塩分が濃かったので、循環器系の病気は多かったかもしれないのだ。)

とは言え、これは食べちゃいけない、というほどのものでもなくて、ようは「節度を持って」というだけなんだよね。
あんまり気にしすぎるとストレスになってしまってかえってよろしくないし。
でも、米国なんかは気にしすぎているので、成分無調整の生乳もジャンク扱いする場合もあるよ。
米国のスーパーに行けばわかるけど、基本はスキムミルク(無脂肪乳)か低脂肪乳しか売っていないのだ!
全乳(ホールミルク)なんてよほど探さないと手に入らないよ。
そのくせピザを1枚まるまる食べたり、砂糖より甘いデザートにたっぷりの生クリーム・チョコレートソースをかけたりするんだから不思議だよね。

ルーマニアには「ジャンクフード税」、デンマークには「脂肪税」、ハンガリーには「ポテトチップス税」なんて感じで欧州ではジャンクフードに課税をしてあまり食べさせないようにする動きもあるくらいなのだ。
それくらい肥満とそれに起因する健康障害、ひいては医療費負担が問題になっているんだよね。
で、ジャンクフードの本場たる米国でもかなり気にする人は木にするんだけど、「わかっちゃいるけどやめられない」というのがこの世界なので(?)、通称「チーズバーガー法」とも呼ばれる食品消費個人責任法という法律がていしゅつされたこともあったのだ。
これは、ジャンクフードを食べ過ぎて肥満になったと言って食品産業を訴えられないようにした法律案だよ。
肥満が大きな問題になっていたため、下院は通過したけど上院で否決されて法律には至っていないけど、好きで食べていたくせに太ったからと医ってファストフード店が訴えられたんじゃたまったもんじゃないよね・・・。

というわけで、やっぱり最後は「自制」あるのみ。
適度に息を抜きつつ、でも、食べ過ぎないようにして、「たしなむ」程度で楽しめばよいのだ♪
禁欲期間を経た後のぎとぎと脂は格別かもよ?

2012/06/09

太陽のほくろ

6月6日(水)は21世紀最後の「金星の太陽面通過」。
東京はあいにくのくもりだったけど、ボクはなんとか雲の合間から見られたよ。
実は先日の金環日食よりレアな現象だったのだ!
いまいちマイナーだけどね(笑)
でも、すぐ前に金環日食があって日食グラスを持っている人も多かったから、観測した人も意外といるかな?

「太陽面通過」又は「日面経過」というのは、太陽と地球の間に内惑星が入って、太陽に影ができる現象。
ボクたちの住んでいる太陽系には内惑星は水星と金星があるので、それぞれあるのだ。
でも、水星の場合は見かけの大きさがきわめて小さいので、望遠鏡で見ないとわからないんだって。
金星の場合は、見かけの大きさが太陽の30分の1くらいなので、太陽の上をほくろのような黒い点が動いていく現象として観測されるんだ。
今回は午前中いっぱいくらい見られるみたいだから、かなり観測の条件はよいね♪
(正確には、午前7時過ぎから午後2時前まで約6時間半あるので、多少雲があってもその合間から見えるかも!?)

もともと、太陽と地球と他の惑星が一直線上に並ぶ現象を「合(ごう)」と言うんだけど、内惑星の場合は、内惑星-太陽-地球という並び順の「外合」と、太陽-内惑星-地球という並びの「内合」があるのだ。
この内合の時に「太陽面通過」が起きるわけだけど、毎回起こるわけではないんだ。
それは、内惑星の公転軌道と地球の公転軌道は同一平面上になくて、少し傾いているから。
金星の場合は3.4度の傾きがあるんだって。
しかも、金星の見た目の大きさは小さいので、内合の状態になっても太陽の上や下を通過することになってしまって、太陽の上に黒い影が投影されないのだ。
うまいこと交点軌道面の交点近くで内合になると晴れて観測できるんだよ。
このためにまれな事象なんだ。

その周期は時代とともに少し変わるらしいんだけど、今のところは8年、121.5年、8年、105.5年という周期で繰り返すそうなのだ。
前回は2004年6月8日だったので、今回はその8年後の周期。
ということは、次は121.5年後の2117年12月11日になってしまうんだ!
というわけで、21世紀で最後のレア・イベントというわけさ。
これは見逃してはならないよ。

この現象を世界ではじめて予測したのはかのヨハネス・ケプラーさん。
さすが惑星の軌道の研究をしていただけあるね。
で、実際に彼が生きていた1631年に発生することを予測したのだ。
でもでも、このときの予測の精度は少し悪くて、数時間程度ずれていたようなんだよね。
日没間際に通過するはず、と思っていたんだけど、実際に通過するのは欧州では日没後の時間で観測できないものだったのだorz
ケプラーさんはその次の通過を1761年と予測していたので、ここで観測をあきらめちゃったんだよね。

ところが、英国の天文学者のエレミア・ホロックスさんが改めて計算したところ、8年後の1639年にも通過が起こりそうだ、ということがわかったのだ。
ただし、この時も計算の精度がよくないので、ホロックスさんはそれこそ1日中観測をしていたらしいよ。
そして、日没の1時間ほど前、雲がきれて晴れ間がのぞいたところで観測できたんだって!
これが人類で最初の予測した金星の太陽面通過の観測だよ。
でも、この観測結果は彼の死後まで発表されなかったんだとか・・・。

この太陽面経過を正確に観測すると、太陽と地球の距離が測定できるんだ。
惑星までの距離は、惑星の天球上の見かけ上の動きから、太陽と地球の間の距離である1天文単位の何倍かで測れるんだけど、問題の1天文単位の絶対値はわからないのだ。
今、金星は動いていないと仮定すると、太陽面通過にかかる時間を計測すると三角測量の原理で地球と太陽の距離が計算で求められるんだ。
でも、実際には金星も動いているので、2地点以上で観測しないと答えが出ないけど。
ホロックスさんも友人と協力して見積もってみたらしいよ。

ところが、この太陽面通過の時間を正確に求めるのが難しいんだ。
入るときと出るときは太陽の縁の光がゆがんで影が水滴状の形に見え、いつ入ったのか、いつ出たのかが正確にわからないのだ。
このため、かなり誤差が出ていたらしいよ。
ただし、これは光学機器の発達でかなり防げるようなので(遮光を強くして光の強度を抑えた上で解像度をよくすればかなり防げるみたいで、当時の望遠鏡ではピントがきちんと合わなかったことが原因みたい。)、今はけっこう正確に観測できるらしいよ。

ホロックスさんの後、18世紀になってからもこの方法による太陽までの距離の見積もりが行われて、あの彗星に名前を残しているハレーさんの提唱で世界で初めての国際的な共同研究で各地で観測が行われたみたい。
19世紀になると、開国から間もない日本にも観測隊が来たみたい。
明治政府は正直「?」だったみたいだけど、長崎や横浜で観測が行われたみたい。
横浜にはそのときの記念碑もあるみたいだよ。

と、けっこうむかしから全世界で注目されていた現象なんだよ。
見られた人はラッキー♪
見られなかった人はなんとか22世紀まで長生きしてもらうしかないね(笑)

2012/06/02

芽が出て甘くなる!

まもなくうっとうしい梅雨の時期がやってくるね・・・。
日本の四季の中でももっともうっとうしい時期なのだ(>o<)
そんなとき、意外にすっきりするのが伝統的な清涼飲料水。
冷やし甘酒なんかの場合は夏ばて対策も含めて飲まれていたけど、純粋に清涼飲料水という意味では、関西でよく見られる「冷やし飴」だよね!
これは今ではすっかり温かい飲み物として定着した甘酒とは逆で、むかしは暖かい状態(「飴湯」と呼ばれるよ。)で飲まれていたものが、明治になって「冷やし」で飲まれるようになったものなのだ。

冷やし飴や飴湯は、伝統的な製法で作った琥珀色の水飴を水又はお湯に溶き、生姜やニッキを少量加えて飲み口をすっきりさせたもの。
ただ甘いだけじゃない、というところが「すっきりさ」を感じさせるんだろうけど、これはジンジャーエールでも同じだよね。
普通の砂糖水じゃカブトムシみたいな気持ちになるし(笑)
最初不思議な味に感じるけど、なかなかおいしいものなのだ。

これに使われる伝統的な水飴というのは、お米のデンプンを麦芽に含まれる酵素で糖化したものだよ。
ヒトの唾液の中にも含まれる酵素のアミラーゼというのが麦芽中に多く含まれていて、それがデンプンを二糖の麦芽糖に分解していくのだ。
口の中でお米をよくかむと甘くなっていくのと同じ。
麦芽糖は甘さも控えめで、わりとすっきりした甘さなんだよね。
そのむかしは発芽玄米を使っていたようなんだけど、麦芽の方が酵素の量が多いので、次第に麦芽が主流になったのだ。
ビールやウィスキーの醸造にも麦芽をつくけど、あれも大麦などに含まれるデンプンを麦芽で糖化し、その後酵母でアルコール発酵させているんだ。
日本酒や焼酎の場合は麹(バクテリア)の力を借りて一次発酵(デンプンを単糖のブドウ糖にまで分解するよ。)させているのだ(実際には麹による糖化と酵母によるアルコール発酵が同じ並行的に起こっているので並行複発酵と言うのだ。)。

工業的な製法では、ジャガイモなどから精製したデンプンにシュウ酸を加え、酸性条件下で加水分解を行うのだ。
加水分解の時間・条件によってオリゴ糖、二糖、単糖というレベルまで分解できて、反応を終わらせるときに炭酸カルシウムを加えるんだ。
すると、シュウ酸はシュウ酸カルシウムという水に溶けない物資になるので、それを濾過して取り除くわけ。
濾過した液体を熱して少しにつめると粘りけのある、透明な水飴ができるよ。
一方、麦芽水飴の場合は、デンプンの供給源であるお米にミネラル分なんかが含まれるので、できあがりは少し茶色がかっているのだ。
これが「飴色」というやつ。

麦芽は、大麦やはだか麦を水にさらしておくと、発芽・発根してくるんだよね。
それをそのまま畑にまけば成長するわけだけど、これをよく乾燥させてから粉々に砕いたのが麦芽。
なんと、乾燥して砕いてからでも酵素の活性はほぼ失われないんだよね!
で、60度くらいにさましたおかゆに乾燥粉末麦芽を加え、よくかき混ぜるのだ。
このまま温度を保ちながら5~8時間くらいおくと、どろどろだったおかゆの上部に透明な駅ができてくるんだって、
これが酵素反応が進んだ証拠で、デンプンが分解されて糖液ができているのだ。
これを布などでこして、そのしぼり汁を根紅入れて泡を鳥ながら煮詰めてやると、褐色の水飴のできあがり♪
ちなみに、60度という温度は経験則からきたものだけど、60度より高いと酵素の糖化力が失われ、50度より低いと他の雑菌が繁殖するようなのだ。
そのぎりぎりのラインを見極めているみたいだよ。
さすが先人の知恵!

ちなみに、原理的には、煮詰める前の絞り汁に酵母を加えればそこでアルコール発酵もできるはずなのだ。
日本でも古代のお酒は口でお米をかんだ後に瓶に入れて発酵させていたんだよ(これを「口噛み酒」と言うのだ。)。
なので、お米を麦芽糖まで分解して醸造する場合もあったのだ。
あんまいr飲みたくないけど・・・。
ただし、日本ではその後麹を使った醸造法が定着したので、口噛み酒はもう残っていないけどね。
でも、小学校の理科の実験では、お米をかんでからヨウ素液を垂らすと紫色になる、なんていうのはやるよね(笑)

これって手間はかかるけど、そんなに特殊な道具を使ったりするわけでないので、高学年であれば夏休みの自由研究でやることができるかもね。
けっこうおもしろそう。
全部を水飴にせず、一部は少量の濁り酒とまぜればおそらくアルコール発酵もさせられるよ。
酒気帯び運転防止用に呼気中のアルコールを測定する機械はわりと簡単に手にはいるので、それを使えばアルコールができているかどうかもわかるはずなのだ(飲んでから息をはいてもいいけど、雑菌が繁殖している可能性もあるので、ビニール袋に少量入れてよく振ってから、その袋の中の空気を調べればよいのだ。)。

2012/05/26

日食を裸眼で見てしまった人は注意!!

5月21日(月)の金環日食が見事だったねぇ♪
当初はくもりで観測できないかも、と心配されたけど、雲の合間から観測できたのだ!
けっこう観測できる地域では広く見えたんじゃないかな?
今回ほど広域で観測できるのは300年くらい後だというから、見られてよかったよ。

でもでも、今回はくもりだったこともあって、けっこう裸眼で見た人が多いのだ・・・。
事前に「裸眼で見ると目を傷めるおそれがあるのでやめてください。」という注意喚起がなされていたけど、そんなにまぶしくなければ見ちゃうんだろうねorz
日食グラスを持ってなくても見えそうだったら見てしまう心理もわかるのだ。
ピンホールで影を見たり、木漏れ日から観測するのは面倒だしね(笑)

でも、そんな人で今頃目になってがしょぼしょぼする、視力が低下した気がする、目が痛い、なんて思っている人は要注意(>o<)/
日食網膜症になっている可能性があるので、眼科にかかった方がよいかもしれないのだ。
ボクも調べてみてしったんだけど、これって見た直後じゃなくて、見てから数時間~数日経って発症するものらしいのだ。
ということは、金環日食を見たときは、「裸眼でも平気じゃん」なんて思っていても、後で痛い目を見ることになるということ・・・(ToT)

太陽などの強い光で目を傷めることは古くから知られていて、あのガリレオ・ガリレイさんも望遠鏡の見過ぎで視力が低下していたと言われているのだ。
さすがに普段だと太陽を直視するのはまぶしすぎるからやる人はまずいないけど、日食になると光が弱まるので、裸眼で見る人が当然出てくるのだ。
で、そんな中に視力が低下したり、目の痛みを訴える人が多く出てきたので、日食網膜症(当初は日食盲と呼ばれたらしいよ。)というものが知られるようになったんだ。
はじめのうちは、太陽の強い光を受け、網膜が熱傷を起こしているのだろうと考えられていたようなんだけど、最近では異なる作用機序が考えられているよ。
というのも、例え太陽の光が強くても、熱で網膜の中のタンパク質がおかしくなるほどの熱が発生するとは想定しづらいことと、日食網膜症の症状が太陽を見てから時間差で生じる例もあることから考えると、別の機構を考えた方がしっくり来るからなのだ。

今想定されているのは、太陽の強い光によって網膜にある視色素が光化学反応を起こし、フリーラジカルや活性酸素が発生して周りにあるタンパク質を変性させるというもの。
人間などの視覚は、網膜に視色素を持つ視細胞が並んでいて、これが光を感知しているのだ。
視色素は、ビタミンAのアルデヒド体であるレチナールとオプシンというタンパク質が結合したもので、光を受けてレチナールの化学構造が変化すると、それをタンパク質部分で感知する仕組みなのだ。
明暗だけ見ている細胞(桿体)と、オプシンの構造の違いにより光の三原色を区別する細胞(錐体)があるんだ。
で、この視細胞の近くにはビタミンB2であるフラビン(黄色)や不飽和脂肪酸の過酸化によってできるリポフスチン(褐色)なんていう色素もあるんだ。
で、あまりにも強い光だと、これらの色素が過剰に反応して、フリーラジカルや活性酸素が出てくるというわけ。
可視光の中でも特に波長の短い青い光が原因になるんだとか。
近赤外線も原因と言われているのは、多少なりとも熱の影響があるかららしいのだ。

間に活性酸素などが介在しているため、強い光を見た直後だけではなく、しばらくしてから症状が出るのだ。
目が痛いと思ったときには実はもう遅いというわけ。
さらに、熱が直接的原因ではないため、途中に休憩を入れたりしてもダメで、活性酸素などが累積していくから、トータルでどれだけの時間見てしまったかが重要なんだよ。
日食とは言えある程度まぶしいからそんなに長い時間は直視できないけど、すぐに目が痛くならないからとちらちらと何度も見るのも危険。
子どもは特に眼球の透明度が高いので、強い光の影響を受けやすいそうなのだ。
なので、事前に予防するために日食グラスのように目に優しいレベルまで遮光する道具を使うとか、ピンホールや木漏れ日、反射光など間接的に観測することが必要なんだ。

似たような症状に「雪目(雪眼炎)」があるけど、これはまったく違うもの。
雪目は紫外線によって角膜の表面がびらん状の炎症を起こしている状態なのだ。
わかりやすく言えば、角膜が日焼けしてしまっているわけ。
角膜の上皮は代謝により入れ替わっていくので、数日以内で回復することが多いのだ(火傷と同じである程度ひどくなると回復できない部分も出てくるけど・・・。)。

でも、日食網膜症の場合は、通常は数週間以内には回復するらしいんだけど、場合によっては網膜に不可逆的な変性が起こってしまって視力障害が残るおそれもあるのだ。
活性酸素ができた先はどこに障害が出るかは確率論の世界なので、常に視力低下のリスクがつきまとうんだよ。
これはおそろしい・・・。
眼科に行って眼底所見を見てもらえばどれだけのダメージが発生しているのかわかるので、危ないと思ったらすぐ受診=3
でも、今のところ有効な治療法はないということなので、ひどくしない、という程度だけどね。
なので、何より予防が大事なんだ。
もう終わっちゃってから気づいたけど、これは大変だよ。
身の回りに目の異常を訴えている人がいたら気をつけてあげよう。

2012/05/19

リングのキング

いよいよ、世紀の天体ショー、金環日食の日が迫ってきたのだ!
日本で観測できるのは江戸時代後期の1839年(天保10年)以来の173年ぶり!!
これは貴重な機会なのだ。
今回は、午前7時32分から5分程度観測できるということで、登校中に事故がないよう、始業時間を早めたり遅めたりする学校もあるほど。
でも、これは見る価値あると思うよ。
あとは、天気を祈るばかりだね。

日食は地球から見て太陽の前を月が横切るときに起きる現象だけど、太陽の天球での見かけ上の軌道である黄道と、月の天球での見かけ上の軌道である白道は約5度の傾きでずれているため、なかなかそういう位置関係にならないのだ。
満月の時は、太陽-地球-月の並びなので、黄道と白道が一致していれば必ず月食が起きるし、逆に新月の時は、太陽-月-地球の並びで日食になるのだ。
でも、太陽の方が圧倒的に大きいので、黄道と白道の交点付近でないと太陽の光が月や地球の影に阻まれずに届いてしまうので、影がうまく重なり合わないというわけ。
交点付近で月の朔望があると日食・月食があるんだけど、地球の公転周期は1年、月の公転周期は約1ヶ月なので、自ずと日食・月食が発生しやすい時期が周期的に出てくるのだ。
太陽がその交点付近にいるときは日食・月食が発生しやすいので、「食の季節」と言うらしいよ。

日食は地域によって見え方が異なってくるけど、それも太陽が大きいため。
観測点から見て、太陽と月の中心がそろっているときに日食が観測できるのだ。
大きくずれていると全く欠けて見えないけど、ほんの少しずれているだけだと一部が欠ける部分日食が観測できるよ。
これはけっこう見られるのだ。
で、かなり中心が合っていると、中心食と言われる、すっぽり重なり合う日食になるのだ。

この中心食のうち、完全に月が太陽を隠してしまうのを皆既日食、同心円状に重なって太陽が環状に残って見えているのを金環日食と言うんだ。
今回はその金環日食。
皆既日食でも白いコロナが黒くなった太陽のまわりに見えるようになるけど、それとは違って、もっと明るく輪が見えるらしいよ。
皆既日食だと夜のように暗くなるけど、部分日食だとけっこう明るいから、それくらいの違いはあるんだろうね。

この原因は、地球の公転軌道も、月の公転軌道も楕円だから。
交点軌道上の位置によって地球との距離が変わるので、見かけの大きさが大きくなったり、小さくなったりするのだ。
月の影が十分に大きければ皆既日食に、太陽の見かけの大きさより小さければ金環日食になるんだ。
もちろん、同じ金環日食でも、リングが肉厚(?)な場合と、ものすごい細い場合とがあるはずだよ。
月と太陽の中心が少しずれていれば、一方が厚く、もう一方は薄い金環日食にもなるのだ(この場合は正確には「同心円状」とは言えないよね。)。

ちなみに、日本語では金環日食というおしゃれな名前だけど、英語では「annular eclipse」で「環状日食」という呼び方をするのだ。
皆既日食は「total eclipse」。
なんか味気ないよね(笑)
皆既日食になる直前に一部だけ太陽の光が残る「ダイアモンドリング」は日英で共通なのにね。

部分日食や金環日食の場合は思っている以上に太陽の光が強いので、観測には注意が必要なのだ(>o<)
裸眼で見たりすると網膜を痛めるおそれがあるよ!http://www2.blogger.com/img/blank.gif
黒っぽい下敷きやサングラスなんかでは十分に遮光できないので、専用の遮光フィルターや日食観察グラスを使う方が無難。
もう売り切れているのが多いけどね・・・。
簡便な方法としては、ピンホールで影の中にできる光の点が「金環」になっているのを見る、鏡で壁などに反射させて見るなどの方法もあるよ。

今回の金環日食に関する情報は、国立天文台が特集ページを作っているので、そこを参照するとよいのだ。
観察方法や撮影方法、どこでいつ見られるかなどの必要な情報がまとまっているよ。
おそらく、生きているうちにもう一度日本で金環日食が見られることはないだろうから、このチャンスを活かさないと。
万全の準備をして臨もう!

2012/05/12

月が綺麗ですね

「I love you.」を「我君ヲ愛ス」と訳した学生に、「月が綺麗ですね」とでも言えば想いは伝わる、と言ったといわれているのは夏目漱石さん。
さすがに明治の文豪は風流だねぇ。
これが現代で通じるかというと「?」だけど(笑)
それでも、そんな「月が綺麗ですね」という現象がついこの間あったのだ。
それは、「スーパームーン」。

これは天文学の用語でもなんでもなく、もともとは占星術で使われていた言葉らしいんだけど、月が地球に近づいていて、いつもより満月が大きく見える、ということなのだ。
月は地球のまわりを回る唯一の衛星だけど、その軌道は真円ではなく楕円なのだ。
遠地点距離(=半長径)は405,495km、近地点距離(=半短径)は363,304kmで、その差は42,000km以上!
そりゃあ大きさも変わって見えるよね。
5月5日~6日にかけての「スーパームーン」(地球との距離が356,955km、去年のスーパームーンの方が近かったみたい。)は月が遠地点にある場合(=一番小さく見える場合)に比べ、14%大きく、30%明るいんだそうだよ(NASA発表資料より)。
※ちなみに、スーパームーン時の地球と月の距離が近地点距離を下回っているのは太陽などの他の天体の影響で、月の公転軌道は地球と月だけで考えたものよりずれるのだ。

もともとの占星術では、月が近い(=大きい)と、それだけ月の影響力が強くなって、いろんなことが起こると考えられていたんだ。
海の潮の満ち引きは月の引力によるので、確かに潮の干満には物理的に影響が出るだろうけど、人間の精神や自然災害の発生にも影響が出ると見なすのだ。
人間の血液も月の引力の影響を受けるので、新月や満月の日に犯罪が多いとか言うよね。
(ちなみに、カニやカメが満月の日に散乱するのは単に干満の差が大きく、それだけ海が近くまで来るからで、精神的な影響じゃないよ!)
自然災害も不吉なことが起きる、というところから来ているみたいなんだけど、これってマーフィーの法則で、たまたま満月や新月の日によくないことが発生したことが強く記憶に残っているだけで、その発生確率に影響を与えているとは思えないのだ・・・。

そんなことはさておき、確かに5日の夜半に外を見たら、やけに明るかったのでびっくりしたのだ。
それも該当とかの明かりじゃなく、月明かりの、ほのかに黄色い明かりだからね♪
これはロマンチックかも。
大きさについては目に見えて多きという気はしなかったんだけどね(笑)
でもでも、それもそのはずで、面積比で14%増ということは、その平方根をとると1.068、つまり、半径では7%弱しか大きくなっていないのだ!
明るさと比べるとちょっと認識しづらいのは確か。
むしろ、明るいからいつもより大きく見える、という効果の方が大きいかも。

これはそこそこまれな現象なんだけど(と言いつつ、去年の3月にもあったし、来月もあるらしいけど。)、非常にまれな現象としてブルームーンというのがあるのだ。
スーパームーンは周期的に起きるけど、ブルームーンはそうではないのだ。
ブルームーンというのは大気中のちりなどの影響で月が青く見える現象。
物理的に言えば、大気中に漂うちりなどにより、長波長の可視光が散乱されやすくなり、短波長の可視光がより多く透過して青く見えている、ということ。
普段は波長の長い葵光の方が散乱されやすいので、昼間の空は青く見えるし、夕焼けは赤く見えるんだけど、それと逆のことが起こるのだ(ちなみに、これと同じ原理で、月が赤く見えることはままあるのだ。)。

火山噴火や大きな隕石の落下の後に見られるということなんだけど、まず見られないんだよね。
なんとなく青い月っていうのはイメージしやすいけど、スーパームーンのように予測してねらって見られるものとは違うのだ。
そのため、英語では「once in a blue moon」なんていう慣用句もあって、これは「非常にまれなこと」、「あり得ないこと」といった意味になるんだよ。
ブルームーンという単語だけでもそういう滅多にないことの代名詞的に使われることも。

ところが、どこで勘違いされたか、一部の人の間では別の意味にとられているのだ。
それは、1ヶ月のうちに2回満月があるときの2回目の満月を指す場合。
太陽暦では太陰暦と違って月の周期(約29.5日)と暦の月がずれるので、30日や31日ある月(すなわち2月以外)の初めに満月が来ると、月終わりにも満月が来ることがあるのだ。
そのときの1回目の満月をファーストムーン、2回目をブルームーンと呼ぶんだって。
でも、実はこれは予測できる話で、珍しいのは珍しいけど、正真正銘のブルームーンほどレアではないのだ。
ま、まれな現象だから勘違いでブルームーンと呼ばれるようになってしまったのかもしれないけど。

というわけで、世紀のスーパーショートまではいかないまでも、けっこう全世界的にスーパームーンは話題にあんったようだね。
ボクは当日まで知らなかったけど(笑)
でもでも、東京でも見られる天体といえば、月や金星くらいしかないから、もう少し気にしてもよいかも。
そうしたら、幸運にもブルームーンに出会えるかもしれないしね。
今度そんな月を見たら、想い人にそれとなく「月が綺麗ですね」って伝えてみるのもよいかも(^o^)/

2012/05/05

じゃじゃーん

香港に行ってきたのだ。
今ではもう中国ではあるけど、食事とかの面ではちょっと安心だよね(笑)
香港の人たちも日本食材を買いたがるそうだから、同じ認識なのかな?
本当は本場物の味って言うのがあるはずなんだけどね。

そんな香港でおいしかったのがXO醤。
日本で中華料理を食べているときには特に意識したことはなかったけど、香港で中華料理を食べてみて、濃厚なコクにびっくりしたのだ!
本当はこういうものだったんだね、と。
最初はただ乾物系の出汁が入っているのかと思っていたのは内緒だけど(^o^;)

このXO醤は、ペニンシュラ香港のシェフが考案したと言われている香港発祥の調味料。
調味料というだけでなく、それだけでおつまみ的に食べられたりもするのだ。
ミソみたいなあつかいかな?
確かにミソっぽいところもあるよね。
レストランによってはお皿にXO醤を入れて出してくれるので、そのままなめてもよいし、料理に足してもいいんだよ。

作り方は秘伝で、各レストランで固有のレシピがあるようなんだけど、主要な材料は干しエビ、干し貝柱、金華ハム、生姜、唐辛子、ニンニク、油。
エビや貝柱、豚肉の出汁が濃厚に出るのだ。
もどした干しエビや貝柱と中華ハムをみじん切りにしてから水分がなくなるまでよく炒め、唐辛子、生姜、ニンニクなどの香味を加えて、紹興酒、オイスターソース、豆板醤などで味を調えるんだって。
できたら瓶詰めにして完成。
特にここから熟成させる、というものでもないみたい。
実は食べるラー油と同じようにごはんにあうかも。

ちなみに、オイスターソースはカキ油とも言われることからわかるように牡蠣のうまみを凝縮したもの。
これも広東料理出身だよ。
牡蠣のゆで汁が捨てられているのを見かね、そこからグリコーゲンを取り出してお菓子のグリコが作られた話は有名だけど、オイスターソースもその牡蠣のゆで汁を原料にしているのだ(牡蠣や貝柱はゆでてから日干しにするのだ。)。
牡蠣のゆで汁を煮詰め、小麦粉やデンプンでとろみをつけてからカラメルで色をつけ、砂糖などで甘みを調節したらできあがり。
グリコーゲンのほか、アミノ酸や核酸が豊富でうまみがたっぷりなんだ。
でも、やっぱりただの調味料なんだよね。
そのままでも高級料理になる高級食材を調味料のために使っているXO醤とは比較にならないのだ(笑)

ボクは「XO」というくらいだから、ブランデーのXO(「Extra Old」)が関係していると思ったんだけど、「最高級の調味料」ということを表すだけなんだって。
ブランデーを使っているレシピもあるのかもしれないけど。
とにかく、高級な食材を使ってぎゅっとうまみを濃縮させた調味料なのだ。
ボクが香港で食べたものは特に干しエビの味が強かったね。
何食べてもエビの味がしたけど(笑)

現在では、上記のレシピを「参考」にして、大量生産品も作られているのだ。
それがスーパーなんかで売っているもの。
でも、正直普通のオイスターソースとの差がよくわからなかったんだよね。
なので、オイスターソース的なものを作るときにブランデーで漬けているとかなんとかと誤解していたのだ(>o<)
本場のものは全くの別物で、確かにこれなら最高級調味料というのもわかるよ、というものだったね!

一説には、XO醤を日本に広めたのは「炎の料理人」周富徳さんとも言われているんだって、
ちょうど「料理の鉄人」なんかの対決型グルメ番組の人気がピークだったから、よく耳にするようにはなったんだよね。
それで多くの日本人の知るところになって、広まった可能性はあるのだ。
ただし、ボクも含めてそうだけど、音で知っているだけで、何であるかはよくわかっていなかったんだけど(笑)

今では世界中に広まっているらしいよ。
香港発の世界の味になったのだ!
飲茶が世界に広がったのも香港からだけど、まさに国際都市の面目躍如。
今の中国ができて社会主義体制になってからは香港とマカオ、台湾だけが開かれた中国だったからね。
その中でも、イギリス統治下で栄えた香港の影響力は大きいと思うのだ。
米国にいたときに見かけた中国料理はほとんど広東料理で、おそらく香港発だろうからね。
今では特別行政区と言いながら中国の一部になってしまって、最近の上海の台頭に比べて影が薄くなりがちだけど、今回のXO醤のように意識していないところで香港の影響が出ていることを知ると、やっぱり世界を代表するアジアの都市なんだなぁと思ったよ。

2012/04/28

本来は女性がダメってことではないんだよ

また再び皇位継承問題が議論され始めているよね。
今上天皇直系に男子皇族が不在だったときに大きく議論され、秋篠宮家に悠仁親王殿下が御誕生になってからは一時期下火になっていたのだ。
ところが、また「女性宮家創設問題」として再燃しているんだよね・・・。
政府は皇位継承問題とは切り離す、と言っているけど、将来的な男系継承の不安が払拭できないこともあって、先に手を打とうとしていると言われているのだ。

そもそも、皇位継承については、日本国憲法第二条において「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」と定められているんだ。
で、その皇室典範では、その第一条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」としていて、さらに第二条で皇位継承順位を定めているよ。
皇長子(長男)=>皇長孫(長男の男児)=>その他の皇長子の子孫(長男系の子孫)=>皇次子及びその子孫 (次男系の子孫)=>・・・。
旧家族制度の嫡男が家を継ぐ、というのと同じなのだ。

これを現在の皇室に当てはめると、皇位継承順位第一位、すなわち東宮(皇太子)は徳仁親王殿下で、皇太子家には他に男性皇族がいらっしゃらないので、第二位は皇太弟たる文仁親王殿下(秋篠宮)で、第三位がその長男になる悠仁親王殿下なのだ。
なので、ここまではとりあえず皇嗣は保たれているんだけど、その先が不安だというんだよね。
というのも、戦後の皇室では側室を廃止しているので、一夫一婦制の元で男児を設ける必要があるのだ。
精子の遠心分離を使った産み分け(精子は♀になるX染色体を持つものと♂になるY染色体を持つもので主さが違うので、ある程度遠心分離で分けられるのだ。)なんかもあるにはあるけど、極力自然な形で皇嗣を保ちたい、ということなんだよね。

この議論でよく誤解されるのが、女系天皇と女性天皇。
保守的な人たちは、皇室は神武天皇以来万世一系を保ってきていて、それがここで崩れる、という主張なんだけど、あれ?、女性の天皇っていなかったっけ?、ということになるのだ。
もちろん、聖徳太子が補佐した推古天皇や、百人一首で「衣ほすてふ天の香具山」と詠んでいる持統天皇は女性天皇として有名だよね。
でも、これまで10代8名在位した女性天皇はすべて「男系」の継承なのだ。
つまる、父方の祖先をたどっていくと神武天皇行き着くというわけ。
「女系」というのは母方だけが皇室の血を引く継承なので、父系をたどっていくとあるところで入り婿の祖先の方に行ってしまうのだ。
ま、実際には実在がほぼ確実と言われているのは15代応神天皇だし、その後25代武烈天皇から26代継体天皇のところはあやしさもあるし、さらに、南北朝のところでもちょっと気になるところはあるけど(笑)
とは言え、父系・男系でつないできているのは確かなんだよね。
古代日本では女性の方が力を持っていた(卑弥呼とか?)とも言われるけど、それとこれとは別みたい。

実際に在位した女性天皇がどうなっているかというと、わかりやすいのは持統天皇・元明天皇・元正天皇の流れなのだ。
41代持統天皇は38代天智天皇の皇女で40代天武天皇の皇后だったわけだけど、皇太子たる嫡男の草壁皇子は即位前に夭折してしまうのだ。
でも、すでに皇太孫たる軽皇子が生まれていたので、この孫に皇位継承をさせようと画策したんだよね。
ここで問題となったのは、当時は父から子へ、子から孫へという直系皇位継承だけなく、兄弟相承と言って兄から弟へという継承のかなりポピュラーだったのだ。
このとき、天武天皇は皇族でない女性との間に生まれた長男の高市皇子という皇族がいたのだ(同じく皇族を母親とする大津皇子は謀反の罪で殺されているのだ。)。
ただし、皇位継承順としては皇女の系統が重んじられたため、草壁皇子が立太子し、高市皇子は太政大臣などとして執政に当たっていたんだよね。
で、普通なら草壁皇子が亡くなると、次に有力な高市皇子が台頭してきてもおかしくないんだけど、天武天皇薨去後しばし皇后として国を治めていた持統天皇は我が孫に皇位を次がせるため、幼い皇太孫に代わって自らがリリーフとして即位し、軽皇子に立太子させたのだ。

軽皇子は後に即位して42代文武天皇となるんだけど、やっぱり幼い子(首皇子)を残して若くして薨去されるのだ。
で、やっぱりその子には皇位継承をまださせられないので、文武天皇の母である43代元明天皇が即位(皇太子妃から皇后を経ずに即位。)。
さらに、その後文武天皇の妹の44代元正天皇(唯一の独身で即位した女性天皇)につないだ上で、首皇子は45代聖武天皇として即位するんだ。
このとき持ち出してきたと言われるのが「不改常典(あらたむまじきつねののり)」というもの。
天智天皇が定めた、ということで出てくるんだけど、実は明文化されたものではなく、元明天皇以降即位の詔で言及されているだけのものなのだ。
これが直系継承の基本となる理論とされていて、兄弟相承でなく直系継承こそが皇位継承の原則である、とするとしているんだ。
当然この間にも有力な男性皇族はいたわけで、やっぱりここまでの継投策はけっこう無理があったようで、こういう理屈を持ち出す必要に迫られたようなのだ。

でも、こうして古代日本社会で皇位継承の原理原則が確立し、以降はそれに則ってつながれてきているんだよね。
とは言え、聖武天皇の後の孝謙天皇のところですでにあやしくなっているんだけど、けっきょくはかなり離れたところからでも男系の皇族を見つけてきて即位させているのだ。
これが現在の皇位継承問題で話題になっている、女性宮家の創設ではなく、皇籍離脱した男性の元皇族の皇籍復帰の議論にもつながるのだ。
実際に、継体天皇なんかは応神天皇の5世孫とか言われるし(ほとんどたどれないよね・・・。)、聖武天皇皇女で皇位を継いだ46代孝謙天皇の次代の47代淳仁天皇は天武天皇の孫にあたるので、聖武天皇・孝謙天皇から見るとかなり遠い親戚になっているのだ。
しかも、淳仁天皇は恵美押勝の乱の後に上皇だった孝謙天皇に退位させられてしまい、その後は孝謙天皇が重祚して48代称徳天皇になるのだ。
でもその次は天智天皇の孫に当たる49代光仁天皇が即位するんだよ。
もう行ったり来たりでわけわかめ(>o<)

そんなわけで、特に古代は複雑に皇位継承をしてきたんだけど、一応男系継承は守られているみたい。
で、上で出てきた「不改常典」は明治維新後、旧皇室典範の第一条「大日本国皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス」という形で明文化され、現在の皇室典範につながるんだ。
これで正式に男系直系の継承が原則として定められたわけ。
この伝統を最大限重視するなら、女系継承につながる女性宮家創設よりは、皇籍復帰で男性宮家の復活をするということになるのだ。
正直、ボクにはどうするのがよいかまだよくわからないけど。
ただ、皇室が日本国の象徴であり、世界に誇れるものであることは確かなので、しっかり皇室制度が維持できるよう考えていかなければならないことなのだ。

2012/04/21

もっくもくにしてやんよ

冬は寒い代わりにからっと晴れることが多かったけど、春の天気は不安定でくもちがちなのだ。
そぼそぼと雨が降ることも多いよね(>o<)
これは、冬はいわゆる「西高東低」の冬型の気圧配置で安定していたのがくずれるから。
冬はシベリアの寒気団が南下してきて乾いた冷たい空気で安定しているのだけど、それが退くと張り出した高気圧がないので、偏西風に乗って熱帯海上で発生した湿った低気圧がやってきて雨を降らすんだよね。

雲ができる仕組みはわりと簡単で、熱帯地域等で海が温められると、その上に湿った暖かい空気の固まりができるのだ。
空気は気温が高いほど密度が低いので軽く、浮力が働いて上昇していくんだよね。
これが上昇気流。
通常の大気は高度が上がれば上がるほど気圧と気温は下がっていくんだけど、気温の低下は100mごとに0.6℃程度。
ところが、空気は熱伝導率がひくので、上昇していく空気は熱交換がほとんど行われないまままわりの気圧の低下に伴って断熱膨張してしまうので、冷却されるのだ。
この断熱冷却による効果は100mごとに1℃程度。
なので、100m上昇するごとに0.4℃ずつ差が埋まっていくのだ。

まわりの空気と上昇してきた空気の温度が同じになったところで上昇は終了。
このとき、通常は露点(空気を冷却していったときに、含まれている水蒸気が凝結して液体の水が出てくる温度。)を下回っているので、温かかった空気の中には小さな液体の水の粒子が分散している状態になるんだ。
上昇した先が零下の気温なら、小さな氷の粒になっていることもあるよ。
これが雲の正体。
水や氷の粒子が光を乱反射するので白く見えるのだ。

例えば、インド洋上空で発生した暖かい空気が日本上空に来ることを考えてみるとわかりやすいよ。
インドは熱帯なので年間を通じて気温はほぼ一定なんだけど、だいたい35~40℃くらい。
今回は計算しやすいように温められた空気の温度は36℃にするのだ。
これが春の日本上空に来るとすると、日本の春の気温はだいたい10~20℃。
これを18℃と仮定すると、温度差は36-18=16℃なので、16÷0.4×100=4,000m=4kmなので、上空4kmまで上昇するのだ!
ただし、途中で空気の気温が露点を下回ると、水蒸気が凝結するときに出る熱のせいで気温の低下率は100mごとに0.5℃に下がるのだ。
含まれていた水蒸気がすべて凝結するとまた100mで1℃ずつの低下率にもどるので、水蒸気がどれだけ含まれているかで上昇高度はもう少し上がるよ。
でも、この時点ですでに富士山よりさらに高いから、童謡のように「頭を雲の上に出し♪」というわけにはいかないね(笑)
これくらいだと、ちょうど雨を降らせる高度(2~6km程度)の雲だね。

しかし、実際には温められた空気が来る以外にも雲ができることがあるのだ。
その場合はもっと低い高度だよ。
例えば、高い山脈が海の近くにある場合、海からの湿った風が山に当たるとそのまま山の斜面に沿って上昇していくのだ。
すると、水蒸気がどんどん凝結して水になり、山の海側の低い高度のところに雲ができて雨を降らしながら山を越えるのだ。
山を越えるころには空気が乾燥しているので、今度は乾いた風として逆側に吹き下ろすわけ。
海側では湿っていたので100mで0.5℃ずつ温度が低下していくんだけど、逆側ではすでに乾燥しているので100mで1℃ずつ上昇していくのだ。
すると、海側で18℃だった湿った空気(すでに水蒸気が飽和していると仮定。)が2,000mの山を越えると、山の頂上で8℃、これが山の逆側の海抜0mに吹き下ろすと28℃になるのだ。
これがいわゆるフェーン現象で、上州名物のからっ風もこのたぐいのものなのだ。

他にも、湖や大きな川の水面上に薄く雲が広がることがあるんだよね。
これは水面上の湿った空気が冷たい外気に冷やされることで凝結するもの。
湖に冷たい風が吹いてきたりするとできるのだ。
昼間の湖で北風が吹くと霧が発生しやすくなるのだ。
逆に、十分に冷えた湖の上に湿った暖かい空気が吹いてくると、そこで霧が発生することもあるよ。
これは朝方に南風が吹いたときなどだよ。

というわけで、雲の発生には風と空気の湿度が大きく関係しているのだ。
それを踏まえて天気図を見ると、自分でもある程度雲ができるかどうかはわかるんだよね。
天気図を見なくても、その場その場で吹いてくる風の暖かさ/冷たさと湿気を感じることができれば、天気の移り変わりはある程度予測できるのだ。
きっと先人の知恵はこういうのを感じ取っていたんだろうね。

2012/04/14

緊急情報発信!

北朝鮮のロケット打上げ(ミサイル?)問題でJ-ALERTが注目されているのだ。
なんかけっきょくうまく打上げも警報もうまくいかなかったみたいだけど(ToT)
これは消防庁が整備した「全国瞬時警報システム」のことで、地震、津波、火山噴火などの大規模自然災害の発災時や、今回のミサイル発射、テロなどの武力攻撃事態が発生した場合、対象地域の国民に瞬時に、一斉に、直接情報を伝達するシステムなんだ。
21世紀に入ってから危機管理意識が高まり、国の主導で導入されたんだよね。
それまでは、自治体ごとに有線放送や行政無線を使っていたんだけど、これはその自治体ごとなので、情報の内容にも質の差があるし、伝わる速度もまちまち・・・(>o<)
そこで、こういうシステムが考案されたわけ。

具体的には、静止軌道上の通信衛星を介して国からの情報を地方自治体に送信し、その内容が市町村役所や公立病院、公立図書館などで館内放送として流されたり、地域衛星通信ネットワークに接続された同報系市町村防災行政無線を通じて屋外にあるサイレンから流れたりするのだ。
このとき、瞬時に、直接伝えるために、自動的に防災行政無線が起動され、誰かが操作しなくても放送が流されるところがミソ。
これにより一律に素早く情報伝達ができるわけなのだ。

情報の流れは、自然災害なら気象庁が、武力攻撃事態なら内閣官房が状況を察知し、システムの運用者である消防庁に連絡を入れるのだ。
消防庁の側ではあらかじめテンプレートとしていくつか「メッセージ」が用意されているので、事態に応じてそれを選び、対象地域向けに発信。
これを自治体側が受け取って館内放送なり、防災行政無線なりでそのメッセージが流れるんだ。
このとき、対象地域やメッセージの内容はコード管理をされていて、消防庁からは全国一律にとりあえず情報発信するんだけど、受け手である自治体側の受信機で自分に関係あるコードのものだけ取り出す仕組み。
でも、今回のミサイル問題に備えた沖縄での試験では、この部分がうまくいかなかったわけ。
でも、それには一定の理由があるのだ。

消防庁のサイトにあるJ-ALERTの概要資料によると、J-ALERTで発信される情報には3種類あって、原則同報無線を自動起動するもの、同報無線の自動起動を選択できるもの、普通に情報を流すだけのものがあるのだ。
必ず自動起動するものには、今回のような弾道ミサイル情報、大規模テロ情報、緊急地震速報、津波警報(大津波・津波)などがあるんだ。
自治体ごとの設定で自動起動が選べるものは、噴火情報、地震速報、津波注意報、土砂災害警戒情報、竜巻注意情報など。
その他は、記録的短時間大雨情報、指定河川洪水情報、噴火予報、気象注意報など。

で、このメッセージの種類と対象地域をコード管理しているわけだけど、受信機側でその設定をする必要があるんだよね。
そこに不備があると対象地域なのに反応しなかったり、選んでいたはずなのに自動起動がうまくいかなかったりするんだ。
今回は事前にわかったからまだ対処のしようがあるけど、1年に一度くらいは確認するようにした方がよいんだろうね。
せっかくのシステムが役に立たないのでは困るのだ(ToT)

でも、実はこのJ-ALERTの普及率はいまいち。
消防庁の資料によると、昨年12月1日現在で受信機の運用は全地方自治体のうちの98.4%まで来ているけど、自動起動できるような端末を整備しているのは66.0%、さらに自動起動を実施しているのは61.8%まで落ちるのだ・・・。
なんでこんな事態になっているかというと、受信設備の整備や、自動起動端末と防災行政無線をつなげるのにお金がかかるから。
単純な話だけど、小さい自治体だとバカにならないんだよね。

そこで活躍しているのが緊急情報ネットワークシステム。
ニュースでも出てくるEm-Netだよ。
これは国と地方自治体を結ぶ総合行政ネットワーク「LGWAN」を利用して、官邸と自治体を双方向通信でつなぎ、緊急情報を流すものなのだ。
これだと、通常のパソコンに専用ソフトウェアをインストールするだけで使えて、後はスピーカーなど情報を流す設備があればよいのだ。
電子メールの一斉送信みたいなものだけど、相手端末に強制的に受信させ、着信と同時にアラームが鳴って注意喚起するようになっているのだ。
パソコン画面上では地域指定でメッセージも送れるので、アラームが鳴ったらパソコンを確認し、メッセージを確認して初動体制がとれるわけ。
送信側から相手端末が起動しているかどうかも確認でき、受信可能な状況かどうかもわかるんだって。

こういうのはひとつのシステムに過度に依存するとそこに障害が発生したときに対応できなくなるから、複数のシステムを整備しておいた方がよいんだよね。
自治体側では複数のシステムを導入して運用するのは大変だけど、ことは緊急事態なわけで、情報の漏れは致命的なのだ。
今回の件を契機に危機意識が高まれば、また整備が進むかな?

2012/04/07

タッチ、タッチ、ここにタッチ♪

4月になって4年間使い続けていた携帯を機種変更し、スマートフォンを導入したのだ!
まだ「便利ぃ~♪」というよりは、使いにくいなぁ(>o<)という感じだけど、最低限の操作は覚えてきたよ。
でも、まだぎこちないのはタッチパネルの操作。
指が太いからか、なれていないからか、ミスタッチが多くて関係ないものを選択することがしばしば。
これが一番いらつくね。

最近はスマートフォンやタブレット型端末が注目されがちだけど、もともとは駅の券売機や銀行のATMなんかに使われていたよね。
意外と歴史はあるけど、大画面じゃなくても使えるようになった、画面の鮮明度が上がった、っていうのが今般の躍進の肝みたい。
ま、券売機やATMだったら最低限の認識でもよいわけだからね。

基本的な原理としては、画面表面に接触される或いは表面が押されることでその位置を認識しているのだ。
ここで重要なのは、その信号発信・認識機構は画面の裏側にあるので、薄く透明である必要があるのだ!
薄く、透明度が高くなるほど、画面の鮮明度も上がるわけ。
タッチパネル式の場合、画面を見ながらの操作が直感的でわかりやすいとか、ソフトウェアの更新でボタンの並びなどに自由度を盛らせられるなどのメリットがある一方、画面が汚れると認識が悪くなる、「押した感」がないのでミスタッチや入力のぎこちなさが出てくる、視覚に障害を持った人には対応していない、というデメリットもあるんだ。
最近はこういった特徴を理解した上で発展が続いているそうだよ。

もともとのタッチパネルは、画面の裏に碁盤の目状に小さな電極スイッチが並んでいて、指などで画面を押すと、その後ろにあるスイッチが押され、どの位置が押されたかがわかる仕組みだったのだ。
これはマトリクス・スイッチよう方式で非常にわかりやすいけど、初期の電子手帳などに使われていただけで今ではほとんど使われていないんだって・・・。
というのも、スイッチの並び方次第で認識の制約が出てくるし(画面の構成をスイッチの並びに合わせる必要がある。)、もともとおおざっぱにしか位置を把握できないのだ。
それでも、透明電極スイッチがないと実現しない技術なので、ブレイクスルーではあったんだけど。

現在の多くの携帯電話に使われているのは2枚の透明電極がプリントされた膜(抵抗膜)を使う抵抗膜方式。
膜の間にスペーサーをかまして隙間をあけておいて、画面に触れたときだけ膜が少しゆがんで2枚の膜が接触して電気が流れるようになっているのだ。
で、その電気が流れた箇所を認識するわけ。
実際には片方の膜だけに電圧をかけておいて、接触するともう片方の特定の場所に電圧が検出される、という仕組みなのだ。
でも、この場合、計測された電圧で膜状の相対的位置がわかるだけなので、画面が大きいと位置特定精度は下がってしまうのだ。
でも、携帯電話くらいの大きさならかなりの高精度で位置特定できるので、スマホには向いているわけ。
今ではかなり廉価に作製できるようになったので普及しているんだって。
ただし、透明電極が比較的硬いのに対して膜のゆがみを使うので、どうしても寿命が短いのだ。
特に、どうしてもタッチパネルって反応してくれないときに強く押しがちだから・・・。
また、2枚の透明電極の膜をかませるので、どうしても鮮明度は落ちるみたい。
圧力だけを検出するので指以外でも反応してくれるのはいいんだけどね。

その透明度の低さと寿命の短さを克服したのが表面弾性波方式というもの。
ガラス基盤の周囲に圧電素子をつけておいて、振動波を発生させておくのだ。
この画面表面に指などが触れるとそこだけ波が吸収されたり、跳ね返ったりするわけ。
その波の吸収や反射は電圧の違いとなって圧電素子に認識されて、逆にどこをさわったかがわかるわけ。
これはガラス基盤そのものなので透明度も高く、構造もしっかりしているので寿命も長いのだ。
指以外で抑えてもかなり認識してくれる(ただし、手袋や爪はダメ)などメリットも多いんだけど、いかんせん高くて重いので、なかなか使いどころが難しいんだよね。

ちまたで大人気のiPhoneで使われているのは静電容量方式というもの。
コンデンサーに電圧をかけるとコンデンサの両側に正負の電荷がたまるけど、それを静電容量というのだ。
この静電容量はコンデンサを構成する物質の導電性(電気の通しやすさ)で変わって、金属のような導電性が高いものでつなげば電子がそのまま電流として流れてしまうのでコンデンサーには為らず静電容量は0。
逆に絶縁体のような電気を通さないものにすれば電荷が多くたまって静電容量が上がるのだ。
iPhoneで実装されているのは投影方式というもので、ガラスやプラスチックなどの絶縁体フィルムの下に透明電極、さらにその下にIC基盤がある構造で、絶縁体の膜に指などが触れると、そこだけ少し導電性が上がるので電圧が変化するのだ。
それをフィルムの下にある透明電極が検出し、位置を特定するわけ。
電極のパターンを複雑にしておくと多点検出(複数箇所さわったときに別々に認識できる!)が可能なのだ。
その代わり、電極の抵抗が大きくなるので大画面には向かないのだ。
むかしは高価だったけど、製造技術の構造で割と安くできるようになったので、小型のiPhoneに採用されたんだそうだよ。
多くのタブレット型端末にも使われているみたい。

このほかにもいろいろと方式があるようだけど、代表的なのはこんな感じなのだ。
ボクも使っているINFOBAR C01はおそらく静電容量方式のマルチタッチだよ。
そんなこと言われても使っている間はわからないけどね(笑)
本当はよくわからないことも多いけど、なんとなくさわっただけで動く仕組みがわかったような気がするから、まいっか、かな?

ちなみに、タッチパネルの基幹とも言うべき透明電極に使われているのがITOこと、酸化インジウムスズ、というもの。
透明なフィルム状に電子回路をプリントするんだけど、普通の金属を使うと線が出てしまうよね。
このITOは可視光領域の透過性がとても高いので、フィルムに蒸着させるとほぼ透明なのだ!
でも、しっかり電気は通すので、フィルム上で透明な回路が構築できるというわけ。
ただ、実際には完全に透明ではないので、ちょっとは可視光を遮ってしまうんだけど。
また、インジウムはとても高価な物質で、安定供給が危ぶまれているし、物性として硬くてもろく、薄膜を作るときも真空でないと行けないなど製造過程もコスト高なので、代替物質の開発も盛んなのだ。
いくつか候補はあるみたいだけど、実際に使われ始めたのは透明な導電性ポリマー(白川博士がノーベル賞を受賞したやつだよ。これのおかげで折りたたみ式の携帯電話が実現したのだ。)を銀行のATMなどに使った例。
半導体レベルなので導電性が低く、位置特定精度は低いんだけど、柔軟性があって耐久力があるので、定型的な操作しかしないATMなんかには使えるのだ。
製造工程も環境に優しく安価なんだって。
今後はこういうのに変わっていくのかも。

2012/03/31

インディゴはインドアイより出でて徐々に薄くなる

4月と言えば新入社員が入ってくる季節♪
それまでの学生生活からはがらっと変わるよね。
生活リズムもそうだけど、服装も変わるのだ。
多くの人はスーツで職場に行くことになるけど、それこそ学生時代はジーンズとTシャツでもよかったわけだから、最初のうちはその窮屈さに辟易とするのさ(笑)

でも、むかしはジーンズで学校に行くと怒る先生もいたんだよね。
それは、ジーンズがもともと作業着として作られたもので、作業着で神聖な授業に来るとは何事だっ!、ということなのだ。
日本の場合は戦後に米国文化の象徴のように、憧憬を伴って入ってきたからそんなイメージはあまりないけど、米国の大学ではそうだったみたい。
むかしは米国帰りでそういうのに感化された先生がいたんだろうね。
今でも米国の大学ではジーンズじゃダメなことがあるから注意が必要なのだ。

このジーンズが生まれたのはゴールドラッシュに沸く19世紀後半の米国。
1870年に仕立屋のヤコブ・デービスさんが馬車の幌やテントに使われていた丈夫なデニム生地でズボンを作ったのだ。
金鉱山で働く鉱夫からはすぐにすれてズボンがすり切れてしまうので丈夫なものが求められていたんだよね。
これが好評を博したので、類似商品が出回らないうちに特許を取ろうとしたんだけど、お金がない!
そこでデニム生地のメーカーと権利を折半することにして、メーカーを通じて特許を取ったのだ。
そのメーカーこそ、今もジーンズの一大ブランドであるリーバイス社。
リーバイ・ストラウスさんの会社なので「Levi's」なのだ。
こうして、ジーンズの原型が生まれたわけ。

ところが、この当時のジーンズはまだ青くないのだ。
幌とかテントとかの生地の転用だったので白っぽかったんだよね。
これが青くなるのはインディゴという染料で染められるようになったから。
当時、インディゴで染めると虫除け・蛇除けになると考えられていて、開拓時代のフロンティアでおそれられていたガラガラヘビ対策とか言われているよ。
ところがどっこい、すでにこの時代のインディゴにはそういう効果はなかったというのが通説。

天然のインディゴはインドのコマツナギから取られてものが有名で、欧州ではインド・東南アジアから輸入していたのだ。
ローマ時代から知られていたらしく、香辛料と並んで超貴重品だったみたい。
大航海時代になって海路も開拓されるとかなり広がりを見せるようになるけど、まだまだ貴重品なのだ。
ところが、19世紀の終わり、インディゴの化学合成に成功するのだ。
こうして、安価にインディゴが使えるようになり、ジーンズのような作業着にも使えるようになったわけ。
もともと天然インディゴにはジョチュウギクに含まれるような殺虫成分のあるものが微量に含まれているので「虫除け」になったんだけど、すでに合成インディゴになった時点でその効果は望めないのだ。
もはや「気持ちの問題」だね。

インディゴ自体は水に溶けないので、まずは水に溶ける形にしてから染める必要があったんだよね。
これもインディゴ染めが高価だった原因の一つで、毒性のあるインディゴを多段階の危険な作業が伴う染め方で染めていたんだそうだよ。
さらに、そういう性質なので選択で色落ちしやすい染料でもあるのだ(>o<)
古来からいろいろと工夫されているようだけど、欧州で18世紀までに使われていたのは腐った尿に溶かして染めるというもの。
尿中の尿素などによりインディゴが還元され、水溶性のインディゴ白という状態にしていたのだ。
このときは黄緑色の染料で、布を染めて乾かしていると、その間に再びインディゴ白が空気中の酸素で酸化されて青くなっていくんだって。
19世紀になると尿素が合成できるようになったので、尿素と合成インディゴで工業的に大量に染められるようになったのだ。
英国では、還元剤としての硫化ヒ素(III)と混ぜてから染めるペンシルブルー法(濃く染めることが可能)、直接繊維に不溶性のインディゴを塗りつけてから硫酸鉄(II)のそうに浸して繊維に浸透させるチャイナブルー法(色は薄いが細かい模様が描ける)などが19世紀に出てきたんだって。
化学が発達して、いろいろと工業的に工夫できるようになったのだ。

このインディゴを使った染めは日本でも発達していたのだ。
それは藍染めで、日本に自生するタデアイもインディゴの前駆体であるインディカンを含んでいて、その色素を利用して染色を行ってきたのだ。
ちなみに、アイヌの人たちが利用していたのはウォード、琉球で使われていたのはリュウキュウアイというもので、別の植物なんだって。
6世紀ころに中国から伝わり、江戸時代の徳島で大きく発展したんだって。
それまでは薄くしか染められなかったものが、「藍玉」が作られるようになってから、今の藍染めの作務衣なんかで見るような濃い色での染色ができるようになったんだよ。

古くは生葉染めといって生葉をたたきつけたり、生葉の絞り汁で染めたりするんだけど、インディゴは水に不用なので淡くしか染まらないのだ。
これは前駆体のインディカンは水に溶ける性質を利用して、インディカンのうちに繊維に染みこませているんだよ。
次に出てきたのが乾燥葉染め。
これではもうインディゴになってしまっているので、還元反応をしながら染める必要があるのだ。
古来どうやってきたかはよくわからないけど、おそらく木灰汁や石灰などのアルカリ溶液で還元しながらやったんじゃないかな?
でも、これもやっぱり淡い色にしか染められないのだ。

そこで登場するのがすくも染めという方法。
乾燥した葉を室の中で発酵させ、それをつき固めて「藍玉」を作るのだ。
この藍玉は持ち運びもでき、乾燥・発酵過程を経ることで色素も濃縮されているので便利なんだ。
ちなみに、インドの場合は、生葉を水につけて発酵させ、石灰で色素を抽出して固めるんだって(こっちの方法の方が不純物は少ないらしいよ。)。
やっぱり木灰や石灰で還元してから染液を作るのだ。
藍玉を木灰汁(草木の灰を熱湯に入れて上澄みをすくったもの)に入れ、そこにふすま、石灰、日本酒などと瓶に入れて攪拌すると染液ができるのだ。
10日くらい経つと、水面に藍色の泡「藍の華」が出てくるんだけど、これが染め頃。
何度もこの染液に染めることで日本独特の藍染め「ジャパン・ブルー」ができあがるのだ。

藍染めは布や糸を何度も染めて青く青くするけど、ジーンズに使うデニム生地の場合は縦糸だけ染めてあって、横糸は白いままで綾織りにするんだ。
なので、表は青いけど、中は白いというようになるわけ。
使い込みによる色落ちは藍染めやジーンズの醍醐味だけど、ジーンズの場合は過度に色落ちしないように裏返してから漂白剤を含まない洗剤で洗うのがよいそうだよ。
剣道着なんかはあんまりあざやかな色だと素人っぽいから早く色を抜きたいかもしれないけどね。

2012/03/24

かっふ~ん

春の訪れは花粉の訪れ。
まだまだ寒いというのに、すでに花粉症の人はつらそうだよね(>o<)
幸いにしてボクはまだそのおそろしさは未体験なので平気の平左なのだけど、苦しんでいる人を見ていると、いつか自分も?、と怖くなるのだ。
そんなくしゃみと涙を誘発する花粉だけど、そもそも花粉ってなんだっけ、ということがいまいちよくわからなかったので調べてみることにしたのだ。

花粉は植物の有性生殖に関与しているので、動物の精子と同じで単細胞なのかと思ったら大間違い!
ことはそんなに単純ではなさそうなのだ。
花粉も生殖細胞なので、まずは減数分裂するんだけど、花粉母細胞から4つの細胞ができるのだ。
動物の場合はここからそのまま生殖細胞へと分化していくんだけど、植物の場合はその先にさらに体細胞分裂をするのだ。
花粉自体は細胞壁で覆われていてひとつの細胞のように見えるんだけど、中は細胞分裂して分かれているというわけ。
これは受粉のメカニズムにも関係しているのだ。

花粉は花粉管細胞と生殖細胞に分かれていて、あわせて小胞子と呼ばれるのだ。
生殖細胞(又はその前駆体細胞)は花粉管細胞の「中」にある状態で、ミトコンドリアのように細胞内に取り込まれている状態なのだ。
花粉はめしべの先端にある柱頭に付着して受粉すると、花粉管という管をめしべの中に伸ばしていって、生殖細胞のある胚珠まで行くのだ。
花粉管が伸びている途上で生殖細胞は分化していくんだけど、常に花粉管の先端に来るようになっているんだって。

イチョウなどの裸子植物の場合は、生殖細胞は精子になり、胚珠中の卵細胞と受精するのだ。
植物で精子が形成されることがわかったのはけっこうな発見で(しかも、東洋にだけ残る生きた化石のイチョウで!)、東大の小石川植物園にはその発見碑があるくらいだよ。
被子植物の場合は、生殖細胞はほとんど原形質を持たない細胞核そのもののようなもので、それが胚珠の中の卵細胞と受精するんだけど、花粉管の中にある間にさらに二つに分かれていて、「重複受精」という特殊な受精の仕方をするのだ。
ひとつはそのまま胚となって固体まで成長するんだけど、もう片方は胚乳となって、趣旨が発芽するときの栄養成分となるのだ。
なので、それぞれを生殖受精と栄養受精と呼ぶみたい。

とにかく、受粉してから受精するまでに雄性生殖細胞を雌性生殖細胞まで届ける必要があるので、花粉管細胞の中に取り込まれていて、それが放出されるという特殊な形態になっているのだ。
ま、動物から見ると不思議だけど、植物から見たら当たり前なんだよね(笑)
なので、花粉は単細胞ではなく、複数の細胞からなる細胞の集合体なのだ。
いやあ、高校生物をとらなかったとは言え、まったく知らなかったよ。

受粉と言えば、自家受粉と他家受粉の2つがあるよね。
自家受粉は同一個体内で花粉がめしべに受粉して受精することだけど、花が開く勢いとか、少し風などで揺れてなどで受粉するのだ。
この場合、楽は楽だけど、遺伝的な多様性の確保の点からはあまりよいことではないんだよね。
近くに同種の植物がいない場合は有利だけど、そうでない場合は単性生殖と同じようになってしまうのだ!
そこで、自分の花粉で受粉しないようにしたのが他家受粉。
自家不和合性というのが発達していて、自分自身が非常に近縁な個体からの花粉では受粉しないメカニズムが構築されているのだ。
そうなると、よその花粉をどうやって受粉するかという問題が出てくるわけ。

被子植物の多くでは、昆虫などの動物によって花粉を運んでもらうという戦略をとっているのだ。
昆虫なら虫媒、鳥なら鳥媒だよ。
ただし、ただで花粉だけ運んでもらうわけにはいかないので、蜜を作ることで動物をおびき寄せ、その蜜を取りに来たついでに花粉を運んでもらう、ということにしているんだよね。
媒介してもらう動物によって花粉がつきやすいように花の構造も様々に発達しているのだ。
イチジクのように特定の昆虫(イチジクコバチ)に特化して花粉を運んでもらうという戦略をとっている植物もいるよ。
商品作物なんかだと人間が綿棒で受粉させたりもしているけど、多くはハチなどに花粉を運んでもらっているのだ。
なので、ミツバチの原因不明の個体数減は大きく農業に影響しているんだよね・・・。

一方で、イネなどの一部の被子植物やほとんどの裸子植物はまさに風任せで「風」に運んでもらうのだ。
これが風媒花。
動物に運んでもらう場合は蜜を作ったり、動物を呼び寄せる花を発達させるなどのコストがあるけど、風媒花の場合はコストのほとんどを花粉を作ることに傾注していて、大量に作って大量にとばして受粉させるようにしているのだ。
花粉症の人からすると迷惑千万な話だけど(笑)
風媒花の場合、風任せなので行き当たりばったり的な要素は多いけど、不特定に広範囲広げることはできるのだ。
ただし、風が吹いてくる方向はそんなに大きく変わらないから、どうしても風下方向にしか広がっていかないけどね。
動物による媒介の場合は動物の行動範囲にもよるけど、間に風を遮る障害物があっても動物に乗り越えてもらえるという利点があるんだよね。

そんなわけで、スギやヒノキが花粉を飛ばすのはけしからんと言いつつも、植物の性質だから仕方がないことなのだ。
ヒトが登場するよりもはるかむかしから続けていたことだしね。
でも、花粉症の原因が、微粘膜に付着した花粉が花粉管を伸ばし、それが粘膜を刺激して・・・、とかだったら少し気持ち悪いよね。

2012/03/17

イスカンダルまではどれくらい?

震災とそれに続く原発事故から1年。
まだまだ復興には課題が多いね。
そんな中でも将来にわたって気にしなくちゃいけないのは放射能の問題。
宇宙戦艦ヤマトの世界だと、放射能を除去できるコスモクリーナーをとりにイスカンダルに向かうのだ。
そんなのがあればいいのに!(原理的にむずかしいけどね・・・。)

そんなイスカンダルまでの距離は148,000光年!
光速で進んでも15万年かかる距離なのでワープ航法を使うわけ。
でも、こういう遠くの星までの距離はどうやって測るのか。
きちんと推定する方法があって求められているんだよ。

もっとも簡単な距離の測り方は、自分で歩いてみて、かかった時間で距離を推測するというもの。
方向が加われば位置も特定できるよね。
これと似たような方法でやられているのがレーザー測距。
月などの比較的地球に近い天体で、光を反射するものに使えるのだ。
原理は簡単で、レーザー光を照射し、その反射光が帰ってくるまでの時間を計測して、そこに光速をかけて距離を求めるというもの。
遠くになればなるほど散乱が多くなって反射光が弱くなるし、もともと大気による屈折・散乱なんかもあるから何度も継続して計測しないと正確には測れないのだ。

火星などの地球に近い惑星はレーザーで距離が測れるんだけど、太陽の場合は光を反射してくれないので測れないのだ(>o<)
そこで使うのが計算式。
惑星の公転運動はケプラーの法則(角運動量保存の法則)に従うので、地球以外の惑星までの距離がわかっていれば、太陽までの距離が計算で求められるのだ。
古典的には、惑星の動きをつぶさに観測し、複雑な幾何学的計算をして太陽と地球、他の惑星の位置関係を推測したんだよ。
その積み上げがあるから、太陽までの距離(=1天文単位)が推定できるのだ。

この太陽までの距離=1天文単位をもとに、もう少し離れた位置にある恒星までの距離も計測できるんだ。
それは三角測量を使ったもの。
地球は太陽のまわりを公転しているので、恒星の見え方は季節的に変動しているのだ。
ちょうど公転面を底辺とした円錐状になるよ。
そうすると、春分と秋分など、公転面の端と端の位置関係でそれぞれ恒星の見える角度を計測すると、その円錐の先っぽの分だけずれることになるんだよね。
それが年周視差と呼ばれるもので、これが正確に測れれば、三角関数を使って公転面の半径=天文単位を使って恒星までの距離が計算できるのだ。

年周視差が1秒(1度の3,600分の1)のときに3.26光年(これを1パーセクと言うそうなのだ。)なんだって。
でも、この1秒なんて角度を正確に測ることは難しいんだよね・・・。
実際にケプラーさんがケプラーの法則を導く基になった詳細な天文観測データを残したティコ・ブラーエさんは、この年周視差が「観測できない」ということをもって地動説を否定したくらい。
当時の観測技術では仕方がないけど、ケプラーさんのようにもう少し近い惑星の動きに注目すると地球が公転していることがわかったんだけどね(>_<)

年周視差は遠くなればなるほど小さい値になるので観測が難しくなるのと、観測対象の恒星も実は動いているという事実があるので、遠くの恒星になるとブレが大きくなるんだ。
そこで別の方法で推定したりするわけ。
例えば、同じような色(表面温度)の恒星と明るさを比べ、見かけ上の明るさは距離の二乗に反比例することから距離を推定したりするのだ。
実際には全く同じ色の星はないから、かなりの推測だけど。
さらに、円盤銀河の回転速度から距離を推定したり、ビッグバン以降の宇宙の広がりを説明するハッブルの法則を用いて光のドップラー効果(遠くに離れていく光は波長が長い方にシフトする=赤方偏移)で推定したりするんだって。

で、年周視差で距離を求めた恒星を基準とし、こうした他の方法を組み合わせてより遠い星までの距離を推定していくのだ。
これを「宇宙の距離梯子」と呼んでいるんだって。
なんか、魏志倭人伝(三国志魏書東夷伝倭人条)とか、山海経の世界における位置の説明のようになっているのだ。
つまり、ある地点までの距離と方角を示し、さらにそこからまた距離と方角を示し、とつなげていくのだ。
なので、どうしても誤差の上に誤差を積み重ねていくことになってしまうんだよね。

そこで考えられているのが、年周視差をより正確に測定しようという試み。
すでに欧州宇宙機関(ESA)は20世紀にヒッパルコスという衛星を打ち上げ、宇宙空間から年周視差の測定を行ったのだ。
宇宙からだと大気の影響も受けないし、地上とは独立した二系の観測データが得られるので、推定誤差を小さくすることができるのだ。
さらに高精度に測定しようという計画もあって、日本でも国立天文台などを中心にJASMINE計画というのがあるよ。
米国航空宇宙局(NASA)やESAも同じようなミッションを検討しているらしいけど、日本の計画では、赤外線で観測することでさらに測定誤差を小さくしようというものなのだ。
ただし、赤外線観測には技術的な課題もあるんだけどね(熱線なのでセンサ部分を極低温に保たないと正確に観測できないのだ。)。

というわけで、実は星までの距離は古代ギリシア時代から連綿と続く三角測量で測っていたのだ!
原理的には単純だけど、むしろ基礎データをきちんと観測することが課題なんだよね。
宇宙空間の壮大なスケールで三角測量をしているってなんだか不思議だよ。