2010/09/25

安くおいしく

ついこの間、厚木で第5回B-1グランプリが開催されて、山梨の甲府鳥もつ煮が優勝したのだ。
砂肝やレバー、「きんかん」などの鳥のもつを少量のタレで煮込んだものなんだそうだよ。
甲府あたりの居酒屋さんでは定番メニューとのことなのだ。
優勝してさっそく人気が出ているみたい。

このB-1グランプリはB級グルメの祭典という位置付け。
全国各地の安価でおいしい御当地グルメを集め、投票で優勝を決めるのだ。
B級というとAの次なので二流以下、ということで、もともとは映画界でなんだか安っぽい映画や、いかにも低予算で作られている映画に使われていた言葉。
B級ホラーなんてのが一時期はやったよね。
そう聞くとマイナスイメージなんだけど、最近では肯定的にとれられていて、低予算ながら良くできている、とか、安っぽいが故に味があるなど、費用対効果が高いという意味でも使われがちなんだよね。
確かに低予算でも質の高い映画が出始めていることもあるんだろうね。

これが他の分野にも影響して、いわゆる高級なグルメに比べると安っぽいけどおいしい、庶民でも楽しめる安くておいしい食べ物として注目を集めるようになったのだ。
もともとはフリーライターが本で「B級」と冠して紹介したのがはじまりのようだけど、かなり浸透しているよね。
そのはやりに乗じて5年前から始まったのがB-1グランプリ。
初回と第2回は富士宮焼きそばが優勝し、一気に有名になったのだ。
これを皮切りに町おこしにもつながると、自治体も含めてかなり真剣に取り組まれるようになったのだ。

御当地グルメと言いつつ、郷土料理のようにむかしからその土地の食材を活かして、或いは、その土地柄を活かして作られ、食べられてきた料理とはちょっと違うんだよね。
八戸のせんべい汁は郷土料理っぽいけど、もともと南部せんべいを汁物の具に使ってきた郷土料理が町おこしをかねてB級グルメとして売り出されるようになったもの。
静岡おでんみたいに郷土の食材を活かしたものもあれば、行田のゼリーフライみたいにその土地で生まれ、その土地でだけ食べられてきたようなものも多いのだ。
富士宮焼きそばや横手焼きそば、今回準優勝だった蒜山(ひるぜん)焼きそばなんかだとまったく郷土食はないよね(笑)
地元ローカルで食べられてきた料理というイメージなのだ。

今回のB-1グランプリは初の関東開催で、三連休の最初の2日間だったけど、約45万人もの人が集まった大イベント。
ゆるキャラといい、地方の魅力というのが高まっているのかも。
必ずしも住むのではなくて、行ってみるだけ、というところがまだまだなんだけどね。
それでも、地方活性化にはかなり貢献しているし、地元の人たちの結束力を高める上では大きな意義があると思うのだ。
やっぱり国が上から押しつけるより、こういうじわじわと民間ベースで広まってくるものの方が効果がありそうだよね(笑)

伝統的な郷土料理は文化として認められ、保存会なんかもあるけど、将来的には御当地B級グルメもそういう扱いを受けるようになるかな?
ただし、B級グルメの中には御当地と関係のない、単に安くておいしい料理も含まれるので、今後は差別化が進むのかもね。
世の中不景気で安くておいしいものは人気が出てきているし、安近短で国内旅行が見直されているから、これからもぐんぐん伸びていくかもね。
そのうち、デパートでやるのは駅弁フェアじゃなくて、御当地B級グルメフェアかもしれないのだ(笑)

2010/09/18

店内でお召し上がりですか?

外食をするとよくそのお店の名刺大のカードをもらって帰ったりするんだけど、この前見たやつには、カタカナで「テイクアウト」、英語では「Take Away」と書いてあったのだ!
よく、テイクアウトは和製英語なので英語圏では通じなくて、正式にはテイク・アウェイと言う、なんて言われるけど、そういうことかな?
とは言え、ちょっと気になったので調べてみたのだ。

調べてみると、一般的に言われているのは、Take Outは米語で、Take Awayが英語というもの。
米国ではTake Outと言い、その他の英語圏である英国や豪州ではTake Awayが使われるというのだ。
一部ではCarry Outも使うみたい。
でもでも、ボクが米国にいたときは、Take Outという語はほとんど聞かなかったのだ。
だいたい持ち帰りかどうかを聞くときは「Stay or Go」と聞かれて、「To Go」というのが持ち帰り。
一般的にTake Outは「持ち出す」といった意味があるから、通じないと言うことはないのだ。
このあたりは英語の辞書的な意味と、実際のコミュニケーションの場での使われ方の差なんだろうね。

ちなみに、いわゆる持ち帰り用の食品でも、道ばたにワゴンで出ているホットドッグなどはストリート・フード=歩きながら食べるもので、テイクアウトにはあたらないみたい。
定義は曖昧だけど、きちんと店舗があって、そこで売っているものを持ち帰るのがテイクアウトのようなのだ。
持ち帰り専用のスタンドやウィンドウであってもそれはいいみたい。
持ち帰り専用だったらわざわざ「テイクアウトで」とは言わないけど、持ち帰りの食品のことを「Takeout」と言うので、一応区別が必要なのだ。

そのテイクアウトの一種がドライブスルー。
こっちは英語でもDrive Throughなんだけど、米国では日本よりも多くのドライブスルーがあるのだ。
日本的なイメージだとどうしてもファストフードを思い浮かべがちだけど、自動車大国の米国では、車に乗ったまますませられるものはなんでも車に乗ったまま、というわけで、その種類も多種多様。
ドラッグストア(調剤もあり)や銀行(いわゆるATMでなく、窓口業務もあるのだ!)、日用品などなど。
場所によっては、ドライブスルー・チャペルなんてのもあるようだし、なぜかアルコール販売もあるようなのだ。
日本でも郵便業務や銀行、クリーニング受け渡しなどが一部でやられているようだけど。
町中だったら歩いていった方が便利だよね(笑)

テイクアウトと対立する概念がEat-in。
まさに中で食べていく、ということだけど、明確にテイクアウトと区別するときにしか使わないよね。
持ち帰りが多いようなファストフードをその場でも食べられるよ、というような時に使うことが多いのだ。
米国でもサンドイッチとかハンバーガーとか(特にフードコートにあるもの)はそうなんだよね。
いわゆるイートイン・コーナーっていうやつ。
で、Eat-inに対して、Eat-outという表現もあるようなのだ。
中では食べないよ、ってこと。
あんまり使われないようだけど。

もうひとつの対立概念はデリバリー。
テイクアウトは自分でお店から持ち帰るけど、自分のところにお店から持ってきてもらうのがデリバリー。
日本でもおなじみの出前だよね。
もともとそばやラーメン、寿司などで出前の文化があるので、ピザのデリバリーが始まったときにはあんまり違和感はなかったけど、最近はファミリーレストランやオードブルなんかのデリバリーが増えているよね。
こっちは「仕出し」というイメージが強いけど。

ちなみに、あんまり厳格ではないけど、店舗内に飲食スペースがない場合をデリバリーと呼ぶことが多いそうなのだ。
寿司の出前とデリバリーの違いを考えるとそうかもね。
でも、なんだかむかしからあるものが出前で、新たな業種がデリバリーという方が実態に即している気がするけど。
それと、似たサービスのケータリングとの違いは、完成品を運んでくるのが出前・デリバリー、現場で調理をするのがケータリングなんだとか。
ケータリングの場合、注文主の台所を借りて調理したり、現地に移動調理車を持ってきて仕上げたりするのが基本なんだそうだよ。

2010/09/11

一体誰が・・・

奈良県明日香村の牽牛子塚(けんごしづか)古墳を調査した結果、天智天皇(中大兄皇子)や天武天皇(大海人皇子)のお母さんで、日本史上初の重祚(ちょうそ)したことでも知られる斉明天皇(皇極天皇)の墓所である可能性が高まったのだ。
その時期の天皇・皇族の陵墓に特徴的な八角構造があることがわかったんだとか。
でも、現在宮内庁書陵部が斉明天皇陵として指定し、管理しているのは別の古墳。
続日本紀によると、斉明天皇陵はある時期に修理されたと読める記述があるんだけど、そのときに改装されたのかどうかが論点になるみたい。
今のところ宮内庁は指定し直そうとしていないみたいだけど。

実は、現在でも歴代天皇や皇族の陵墓は宮内庁が管理をしているのだ。
皇室関係の基本法規である皇室典範第27条によると、「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后を葬る所を陵、その他の皇族を葬る所を墓とし」とあって、合わせて陵墓として書陵部で管理しているのだ。
明治維新以降は、天皇・皇后は高尾の武蔵野陵墓地(多摩御陵)に、その他の皇族は護国寺に隣接している豊島岡墓地(豊島ヶ岡御陵)に埋葬されることになっているんだ。
それ以前の陵墓については、むかしからずっと朝廷に管理されているものも少数はあったけど、ほとんどは平安時代以降に十分に管理されず、荒れ放題になってしまったいたんだ。
これを、江戸時代後期に尊皇思想が勃興した頃、本居宣長さんほかの国学者が延喜式や日本書紀等の歴史書をもとに比定していったんだって。
その作業は明治までずれこんだんだけど、今の書陵部が管理している陵墓がそれなのだ。

ただし、この宮内庁管理の陵墓は現在でも皇室が祭祀を執り行っていて、自由に調査研究ができないのだ。
以前は奈良の箸墓古墳が卑弥呼の墓ではないか、という話が出たときに話題になったけど、けっきょく調査許可が出ないんだよね・・・。
最近では修復の時に研究者が立ち会える、くらいのことはできるようだけど。
で、そういう状況なので、本当に誰がそこに埋葬されているかがよくわからないものが多数あるわけ。
今回の発見も、これを踏まえて現在斉明天皇陵に指定されている「越智崗上陵(おちのおかのえのみささぎ)」こと車木ケンノウ古墳を調査できないので、確かめられないんだよね。
宮内庁はどう動くのかは見物だけど。

ちなみに、日本でもっとも有名な前方後円墳の百舌鳥耳原中陵(もずのみみはらのなかのみささぎ)こと仁徳天皇陵の大仙陵古墳も、実際に仁徳天皇陵かどうかはわからないそうだよ。
文献資料での記述の調査や出土品の年代特定なんかから調査をするんだけど、古代の超有力者の墓という以上にはわからないのだ。
ま、中を調べればわかるというものでもないんだけど。
ただし、世界最大級の墳墓として歴史の教科書に載っているくらいのものなので、きちんと調べたい気持ちはあるよね。

宮内庁書陵部は皇室が持っている資料や文献の管理・保存と陵墓の管理を行う部署。
旧宮内省の図書寮と諸陵寮が統合化され、戦後に書陵部になったのだ。
この書陵部の建物は一般参賀などでしか見る機会のない宮内庁の本庁舎にはなくて、普通の人がいつでも入れる皇居東御苑の旧江戸城本丸の一角、天守台の近くにあるよ。
そういう意味では、近くまで見に行けるのだ(当然中には入れないけど。)。
宮殿から離れた位置にあるのは、直接皇室のお世話を担当する他の部署とは役割が違うからかな?
ちなみに、当然陵墓を管理する地方事務所も持っていて、東京に一カ所(八王子)、京都に二カ所(伏見区と東山区)、奈良に一カ所(橿原市)、大阪に一カ所(羽曳野市)にあって、そこがある程度地域ブロックでまとめて管理しているんだ。
地図上で見ると、確かに「陵墓銀座」みたいな密集している地域があって、そこにうまく配置されているみたいだよ。

というわけで、一気に気になる存在になったよね。
高尾の武蔵野寮墓地は多摩森林科学園のすぐ近くでちょっとした散策には向いているところ。
京都や奈良の陵墓も多くは観光地になっているので、近くに行ったら気にして見るようにしてみるとおもしろいかもね。
古代のロマンに思いをはせるのだ!

2010/09/04

Wooden Fish

正座をしていると足がしびれるから耐えられるけど、単調なお経を聞いていると眠くなるよね(笑)
それに大きく貢献しているのが、あの単調なリズムを刻んでいる木魚。
ぽくぽくぽくとなかなか心地よい音なのだ。
最近は楽器としても使われたりするんだよね。

この木魚、実は読経のリズムを整えるだけでなく、眠気防止の意味もあるというのだ。
確かに音は大きいけど、リズムが単調だから心地よい響きになってくるんだよね・・・。
でも、魚はまぶたもなく、眠らないものと認識されていたので、居眠りせずにしっかり励め、という意味が込められているのだ!
とは言え、現在の木魚を見ると、魚っぽい鱗のモチーフはあるものの、必ずしも魚の形はしていないよね。
木製の鈴のような形で、施されている彫刻も竜だったりすることもあるのだ。
日蓮宗で大音声の読経の時に使う木柾(もくしょう)なんかも似たような機能のものだけど、こちらは完全に木製の鉦=柾で、音を鳴らすものに徹しているのだ。

この木魚が日本で広く使われるようになったのは江戸時代からで、そんなに古くはないのだ。
持ち込んだのは日本黄檗宗の開祖である隠元禅師。
中国の禅宗の大本山で、臨済宗を開いた臨済義玄さんの支障に当たる黄檗希運さんも住した黄檗山萬福寺では、魚板と呼ばれる魚の形をした板が使われているのだ。
これはたたいて音を出すことで、人を集める合図に使ったりするんだって。
禅寺では1日のすべての行為が修行で、いちいち動きが決まっているので、こういう合図が重要なのだ。

この魚板は、魚は目を閉じない=眠らない、ということと、魚の腹をたたくことで煩悩をはき出させるという意味が込められているらしいよ。
修行に精進する象徴として使われていたわけだけど、いつしか読経のリズムを整え、同時に眠気を覚まする楽器のような使われ方をするようになり、明代になると今の木魚の原型が完成していたようなのだ。
それは日本にも少しは伝わっていたようだけど、江戸時代に隠元禅師が持ち込むまではあまり広まらなかったみたい。
逆に、江戸時代以降は禅宗だけでなく、天台宗や浄土宗でも使われるようになったのだ。
ちなみに、黄檗宗では他にも仏具としていろんな楽器を使うことで有名だそうだよ。

魚は眠らないというのはまぶたがなく、目を閉じないからなんだけど、これは水中に棲む魚は目を乾燥から守る必要がないので、まぶたがなくてもなんとかなるのだ。
でも、サメの一部では瞬膜と呼ばれる目を守る半透明の膜があって、エサを食べるときなどは一瞬閉じて目を保護するのだ。
これは物理的な刺激から守るため。
まぶたは皮膚と連続的で開閉可能な目を保護する器官で、皮膚と目の間にある瞬膜とは別物なのだ。
まぶたが上下に動くことが多いのに対し、瞬膜は水平に動くことが多いのも特徴なのだ。
カエルなんかだと、まぶたと瞬膜の両方があることもあるのだ。
カラスも瞬膜を持っていて、光っていた目がくもった瞬間が瞬膜が閉じたタイミングなのだ。

ちなみに、魚は眠らない、というのは厳密にはウソなのだ。
目を閉じない、というか、閉じられないだけであって、「原始睡眠」という脳が体を休ませている状態はあるのだ。
人間で言うとレム睡眠にあたるようなもので、この間は泳ぎ方も「覚醒」状態とは違うんだよね。
こっくりこっくりじゃないけど、沈んでは浮かび直し、といった動きをするよ。
金魚なんかを飼っていると時々見られるのだ。

マグロやカツオなんかは体の構造上泳ぎ続けないとえら呼吸できないので、休息しているときも止まれないのだ。
なので、ぶつ切りで意識が吹っ飛んでいるような状態を繰り返して、止まらない程度に体を休ませるわけ。
隠れてじっとしている魚も「寝ている」のかもしれないね。
ということは、目を開けながら寝るのは木魚の意味合い的には許されるのかな?
たまにそういう人を電車で見かけたりするけど(笑)